連載小説
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第三話 生きる術あり
「う、ぐぅ……」
体がだるい。
当然だ、昨晩あれだけイヴにねちっこく搾り取られ、精根尽き果て意識すら失うほど大量にぶちまけたのだ、疲労が残らないはずはない。
そのイヴはと言うと私に抱きついた姿勢のまま寝息を立てている、もちろん何も着ていない。
そして鼻をつく私と彼女の体液が混じり合ったにおいが何があったのかを雄弁に語っている。
少しだけ考えてから、彼女を起こさないように慎重に起き上がり、脱がされた服を着直す、風呂のような気の利いたものはないが、とりあえず川で水浴びくらいはしておきたい。
川までたどり着いてからまた服を脱ぎ、無言で水を浴びる。
意識すると昨夜の快感を思い出してしまうので、努めて無心を維持するように心がける。
全身を洗い終え、丁寧に体を拭ってから替えの服を着る。
木の切れ端を削っただけの木剣を手に取り、素振りをする。もうこんなことをする必要性などないのだが、今はなんとなくそうしたかった。
武人として、戦士として戦い、そして負けた末に今はこの有様。
決して失った時間や、奪った命を取り戻せるわけではない。それでもなお止まない後悔は、どうすれば拭えるのだろうか。
「メル?」
いつの間にかイヴも目を覚ましていたらしい、服もきちんと着て、私の背後に佇んでいる。
「メル、辛いですか?  すごく、悲しそうな顔でした。」
こんな少女にどうやら心配されているらしい。
「なんでもない。」
ごまかそうと彼女から顔を背けるとてくてくと歩いて私の顔を覗き込もうと位置を変えてくる。
それを振り払うように手を動かすと、本当に誓って偶然なのだが彼女の小ぶりな胸に手が当たってしまう。
「んっ♥ メル、したいんですか?」
「す、すまんそうではないんだ。」
ほんの少しだけ顔を赤らめ、しかし嫌悪感どころかその顔には喜色が宿っている。
「そうですか? じゃあまた、今晩に続きですね?」
そう言う行為をすることはもう彼女の中では確定してしまっているらしい。
とはいえ、不意打ちさえ避けられれば彼女の力で私を取り押さえることは難しいだろう、警戒しておけばこれ以上過ちを重ねずに済む。
だがそうやって、彼女を突き放して何になるのだろうか。
クルツからやってくるあの男に預けても、翼のある彼女を縛り付けるとしたら閉じ込めておくしかないだろう、クルツがそれをする集団だとは思いづらい。
彼女の幸福を願うのならば、私はどうするのが一番良いことなのだろうか。
「メル? どうかしましたか?」
思案に耽る私の姿を気にしたのか、またイヴが声をかけてくる。
「イヴ、私のことは忘れて、遠くで」「いやです」
全て言い終えるより前にきっぱりと言い切られてしまった。
「メルのことを忘れたら、イヴは今度こそひとりぼっちです、だから、いやです。」
そうだ、彼女が今誰かに頼れることができるとしたらそれは私一人しか居ない。
「メルは、どうしてイヴと離れたいんですか? イヴが嫌いですか?」
私が言わんとしていることを察知したのだろう、明らかに不満を顔に出して尋ねてくる。
そうではないのだ、彼女の幸せを願っているからこそ、彼女がここに私と一緒に居るべきではないと思っているだけなのだ。
「メルはいつも悲しそうな顔をしてます。泣きそうな顔をしてます。辛いことは、全部イヴが忘れさせてあげますから。」
その言葉とともに、彼女は私に身を寄せて、唇を奪ってくる。
「イヴは……メルを連れてどこにだって行けます、誰も知らないところに、メルが悲しい顔をしなくて良いところに。」
「………」
涙を流しながら懸命にうったえてくる彼女に何も言うことが出来ず、私はただ彼女を抱きしめた。
こんなにも誰かから、ひたむきにただ幸福を願われたことは、初めてかも知れない。
だからこそ、決意は出来た。
イヴが私の幸福を願うのなら、彼女のために私はそうなろう。愛おしい妻のために。

家に帰って、即座に私は背後からイヴを押し倒した。
「悪いがイヴ、我慢が出来そうにない」
小さくて可愛らしい尻を覆うショートパンツを下着ごと剥ぎ取り、昨日は見る余裕もさしてなかった幼い陰部を軽く撫で回す。
と、ぬるっとした液感が指に返ってきた、どうやら既に彼女も準備が出来ていたらしい。
「いつからだ?」
「メルがイヴの胸を触ったときからです。」
そんなに興奮していたのか、あれだけのことだったのに。
これならややこしい前戯など必要ないだろうと判断し、私も陰部を取り出して彼女の陰唇にあてがう。
みちみちと小さな門をこじ開けて、彼女と一つになると腰を動かそうとしたのだが、少しだけその動きにためらいを覚えた。
後ろから押し倒した形の後背位、彼女の体を支えるのは主に私の腕と、そもそも彼女を支えるようには出来ていない翼のみ。
負担がかかるのは喜ばしくない、そう思ってイヴの両足を抱え込むように腕を回し、そのまま彼女を抱き上げる。
当然イヴは大股開きを強制され、正面から見れば私たちの繋がっている部分を隠す物は何もない。
もし誰かが今家に入ってきたら、その全てを見られてしまうだろう。
「メル…これ、恥ずかしいですよ。」
「大丈夫だ、私しか見ていない。」
彼女の体を揺さぶるように揺らしながら下から陰茎で突き上げていく。
ぱんっぱんっぱんっぱんっ
肌がぶつかり合う乾いた音が部屋に響き、一突きごとにイヴの声音が甘くなる。
飛行能力の代償なのだろうか体格以上に彼女の体は軽く、抱え上げて全ての体重を支えているというのに驚くほど体に負担はかからない。
だからこそ乱暴に、力を込めて彼女の膣をかき回す。そうしているのに、彼女は甘い声を上げてもっとしてほしいと言わんばかりに体を淫らにくねらせる。
その事実に確かに興奮しながらも、これ以上どうすれば良いのかはよくわからないために同じような動きを繰り返す。
突いて、抜いて突いて抜いて。その繰り返しは彼女にどう感じさせるのか、もっと彼女を気持ちよくしたいと、そう思っても方法がわからない。
声に出して聞いてみるのもデリカシーがないような気がして戸惑っていると腕の中でイヴがひときわ大きく体を跳ねさせた。
「イヴ?」
「もっと、今みたいにしてください。」
心配をして居たのだが、どうやらこれで良かったらしい。
彼女により多くの快楽を与えるため、私はもう一度彼女を抱きかかえたまま腰を振った。
首を回してこちらを見てくるイヴの、荒い息を吐く唇が妙に扇情的で甘そうに思えて、むしゃぶりつくように彼女にキスしていた。
「んくっちゅるちゅる……ちゅく……」
乱暴なキスだというのに嫌がるどころか官能にとろけたような顔で彼女はそれを受け入れ、逆に私の舌に舌を絡めてくる。
唇が触れあうごとに、二人の舌が淫らな音を立てる度に、甘い息を重ねるほどに加速度的に体の悦びが高まっていく。
きっとイヴもそうなのだろう、それを示すように彼女の膣は絡みつくように収縮し、私から欲しいものを得ようとしてくる。
だからこそ、彼女の期待に応えることにした。
どぷっどぷどぷどぷっ
「んっん……んっっっ♥」
なんの前口上もなくいきなり射精したというのに、それにすら大した驚きを見せることはなかった。
きっとイヴは、私の限界がわかっていたのだろう。彼女が今確かに達していることが私に感じられるように。
私たちは今確かに、心も体も繋がっている。
幸福を全身で味わっていた。



私とイヴは毎日のように快楽をむさぼり合っていた、身も心も一つになるような性交いや交尾が最高の幸福で包んでくれていた。
それから三日後のことだった。
「よう、久しぶり。」
ランスというのだったか、たまにこの島にやってくるクルツの高官。銀髪の魔術師で、クルツの領主クロードの息子。
どうやら海を渡った先に色々と興味があり、南方の海を探索しているらしい。
「で、そちらのお嬢さんはどなただ?」
私の隣に居るイヴを見て、ランスはそう尋ねてきた。
「私の妻、イヴだ。」
はっきりと迷わず、私はそう答えた。
ランスは少しだけ、本当に少しだけ驚いた表情を見せたものの、私に寄り添うイヴの様子を少し見ただけで納得したものがあるらしく、船に戻った。
そしてまたすぐにこちらに戻ってくる、船からどうやら木箱を一つ持ってきたようだ。
「開けて見ろ。」
そう言ってランスが私に木箱を投げたとき、箱の一面に刻まれたローディアナ王家の紋章が一瞬目に付いた。
少なくとも偽造ではなさそうだ。つまり恐らく、私たちをこの島に流した女王から託されたのだろう。
ただの木箱ではなく魔術的な封印と加工が施された品物のようで、どこから開けるのかわからない上に海を渡る船の中にあったというのに濡れるどころか全く湿気を感じない。
魔術師ではない私にこれを開ける術があるのかはわからなかったが、適当に箱を撫で回しているうちに王家の紋章の一部が不自然に出っ張っていることに気付いた。
押し込んでみると箱全体が光り、王家の紋章が刻まれていた面が開くようになった。
内部に入れられていたのは書状が一枚、その書状にも王家の印章が捺されており、そしてそこには赦免状と書いてあった。
「赦免………状?」
「シャメンジョウってなんですか? メル。」
「犯罪を犯した人間の罪を許すことを書き留めた書類のことだ、この場合……私の罪を母国の女王陛下が許したと言うことに……」
そうなのだ、そう書かれているのだ。女王アリアンロッドの名の下、メルフィダ・パージュの犯した罪についてその一切を赦免とする。と書かれているのだ。
つまり私は、もう犯罪者ではないのだ。
「あのお人好しの女王様に感謝しろよ、色々手を回して、『本当はこんなこと許されないと思いますけど』なんて言いながらあんたのためにわざわざ働いてくれたんだ。」
「…………そうか、そうか。」
「まぁ、あんたに関しては戦争当時の部下の証言も大きかったけどな、無茶苦茶な上に引っ張り回された一応の被害者でなければあの姫様もそこまではしてくれなかったと思うぞ。」
手を貸したことも、結局多くの被害を出す形になってしまったことも事実だろうに、それでもこうして形としてわかるように罪を許されたことは私に希望を与えてくれた。
イヴとともにここを逃げ去ったとしても、必ずどこかで犯した罪のことを思い出して立ち止まっていただろう、私はそう言う男だ。
誰かに言われて許されて、そうして罪から逃げ出すことはしていい行為ではないが、それでも今は素直に喜びたい。
「で、ものは相談なんだがお前も嫁さんもクルツに来ないか? うちの法務官がいい加減に領主館と別に警察組織を編成しないと過労で狂うと愚痴をこぼしてるんだ。」
「……イヴはともかく私をクルツに……? クルツの人間はそれで納得するのか?」
「納得しない連中は働きで黙らせろ。今問題なのはお前がどうしたいのかだ。」
ランスははっきりとそう断言した、そう言われるとぐだぐだと悩んでいることが馬鹿馬鹿しく感じられてしまう。

17/03/12 19:41更新 / なるつき
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■作者メッセージ
年単位でしか更新しないとかなんなんだろうね私!
一応言い訳させて貰うと夏頃先代PCが壊れたときにこの話(とは別方向に話が進むはずだった)も消えちゃったのでそこで一度意気消沈してたんですよね

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