27品目 『イカサマ? お嬢様?』
「ロザリー! またイカサマしたわね!?」
「リン、負け惜しみはみっともないですわよ?」
「だ、だって! 8回連続でロイヤルストレートフラッシュなんてあり得ないでしょ!?」
「いいえ、そんなことはありませんわ。それは単に、わたくしの持って生まれた強運がそうさせているに過ぎませんわ。さぁ、早く1枚お脱ぎなさい」
「うぅ…理不尽過ぎるわよ……」
「何を言いますの? サンダル1足を2敗分と数えているだけ、ありがたいと思いなさい」
リンは渋々とノースリーブの裾に指をかけ、万歳するように服を脱ぎ始める。
「ちょ、ちょっと待った! それはさすがに目のやり場に……」
「ちゃんと下に水着きてるわよ!」
「あ、そっか。なら安心だ」
「はぁ…半裸のお兄ちゃんに『安心だ』なんて言われたくないんだけど……」
僕達は今、列車の中にいる。
目的地であるビーチまでは半日かかるそうなので、それまでの間トランプでもして時間を潰そうという流れになった。
しかしただ遊ぶだけでは面白くないということで、僕・リン・店長・ロザリーさんの4人の内、ポーカーでビリになった者(最も役が弱かった者)が『1枚ずつ脱いでいく』というルールが課せられた。
最初は人の目もあるのでどうかと思ったが、どうやらこの列車は貸し切り&目的地までノンストップということらしいので、その辺りの心配は無用だった。
ちなみに現在の状況はというと……
ファ→ハーフパンツのみ(計2回ビリ)
リン→ローライズジーンズ+上半身水着(計3回ビリ)
イチ→ほぼ無傷(計2回ビリ)
ロザ→無傷
夏場で超軽装のため、数敗しただけでも危機的状況に陥ってしまう。
というか、下に水着を着ていない僕はもう既に後がない。
「ほら、脱いだわよ! 次こそロザリーに一泡吹かせてやるんだから!」
「フフ、それは楽しみですわ♪」
ビリだったリンはカードを集め丹念に切り始める。
「いやーほんとお嬢様は強いっすねー。まったく勝てる気がしないっすよー」
「煽てたって何も出ませんわよ? それよりあなた……既に2度ほど負けていますわよね?」
「っすー、お恥ずかしながらー」
照れくさそうに頭をかく店長だが、どうにも違和感がある。
「見た目がまったく変わっていないのは、一体どういうことですの?」
「確か店長、頭の葉っぱを1枚とカウントしてましたよね?」
「その通りっすけどー、別にールール違反ではないっすよねー?」
「いや、まぁそうなんですけど……」
そう、そうなのだ。
店長の横には頭から外した葉っぱが2枚置かれている。
これは装飾品の1つということなので別に問題はない。
しかしそれにも関わらず、なぜか店長の頭の上には今だに葉っぱが健在している。
おかしい……新しく乗せ直したような仕草は見せなかったはずだけど……。
元々店長の服装はリンと同じくノースリーブにショートデニムと軽装。
下に水着を着用していない分、店長の方がやや不利であるといえる。
「配ったわよ」
5枚ずつ配られたカードを4人同時に拾いあげる。
まずは手札の確認だ。
(ふむふむ、7のワンペアか。それにクローバーが3つ…フラッシュも狙えるけど後がないし、ここは堅実にいこう)
僕は手札から7以外の3枚を切り、山札から切った分の3枚を引く。
すると……
(……! フォーカード!)
幸運にも、山札から7を2枚引き当てた。
(最悪ワンペア、良くてスリーカードを想定してたけど…これは期待以上だ!)
しかし、激運のロザリーさんがいる限り1位は狙い難い。
でも今は負けないことが最優先。
そう、要はビリにならなければ良いのだ。
フォーカード程の役ならまず負けることはないだろう。
(さて、他の人は……)
周りを見渡すと、渋い顔をしたリンが見える他、まったく表情の読めない店長。
そして鬼門であるロザリーさんは……
「フン、今回はツイていませんわね」
5枚全てのカードを切った。
「!」
それを見たリンは、手札から3枚のカードを切り、山札から3枚を引く。
なるほど…リンも恐らくワンペアの状態で判断に困っていたのだろう。
そこにロザリーさんが全切りとくれば、確実に勝利を掴みにくるのも頷ける。
仮にここでリンの手札がワンペアより進展しなかったとしても、全切りしたロザリーさんの手札は高が知れている。
間違ってもロイヤルストレートフラッシュなんて悪魔じみた役はこないだろう。
「………」
しかし、その中でただ1人動きを見せない者が。
(あれ? 店長は捨てないのかな?)
ジッと自分の手札を見つめる店長。
そして、
「うちはーホールドっす」
結局、店長は配られたままの手札で勝負することを選んだ。
これで舞台は整った。
「それじゃぁ、準備はいいですか?」
全員が黙って頷く。
そして、皆一斉に手札を広げる。
「「「「………」」」」
僕は、衝撃的な光景を目の当たりにした。
ファ→フォーカード
リン→フォーカード
イチ→フルハウス
ロザ→ファイブカード
「こ、これは……」
「恐ろしくハイレベルな展開ね……」
「ですが、わたくしがトップであることに変わりはありませんわ!」
「はわー負けたっすー。自信あったんすけどー」
確かにどれも非常に出にくいレアな役だが、順位だけ見れば店長のフルハウスがやや劣る。
しかし、驚くべきは他にある。
ワンペアの状態からフォーカードを手繰り寄せた僕とリンは強運。
しかし僕達を強運と言うなら、ノーチェンジでフルハウスを揃えた店長はそれを上回る激運。
そして極めつけはロザリーさんのファイブカード。
手が悪く5枚全てを切った状態からのこの役は、もはや神の領域と言っても過言ではない。
仮に山札が均等にシャッフルされていなかったとしても、同じ数字が4枚重なる確率・ジョーカーを引く確率・それをタイミング良く自らが引く確率など、様々な奇跡が絡んでくるはず。
それらを難なくかいくぐった今回の結果を見れば、リンでなくともイカサマを疑いたくなる。
しかし……これが彼女、ロザリーさんの実力なのである。
「フフ♪ やはりギャンブルはこうでなくてはいけませんわね♪」
「うぅ〜……お兄ちゃん! やっぱりロザリーイカサマしてるわよ!」
「いやいや、これはロザリーさんの実力だよ。僕も昔、彼女の勝負運に散々血の気を引かれたよ」
「血の気を引かれたと言うとー、けっこうなモノを賭けていたんすかー?」
「あぁいえ、そのままの意味ですよ」
「?」
店長はどういうことかと頭を捻る。
「単純に、『負けたら血を吸われる』という意味です」
「……血の気を引かれるってそういう意味っすかー。本当にそのまんまっすねー」
「おかげでその当時はずっと貧血気味でしたよ……」
確か僕が中等部のときだったか。
あの頃を思い出すと、今でも自分の無謀さ加減に呆れかえる。
いつかは勝てるだろうと淡い希望を抱いていた時期があったんですはい……。
「確かに、そんなこともありましたわね」
「はい。その事もあってか、賭け事にはちょっとしたトラウマが」
「微妙に切ない話っすねー……」
店長は頬をかきながら同情の眼差しを向けてくる。
「コホン……それはそうとタヌタヌ、さっさと罰を受けてはどうですの?」
「あーそうだったっすねー」
色々あったが、今回ビリだったのは店長。
脱衣ルールに則り、身につけているものから1枚脱ぐ罰が課せられた。
「まー、これっすよねー」
そう言うと店長は先程と同様、頭の上の葉っぱに手を伸ばす。
「「「………」」」
その光景を固唾を呑んで見守る3人。
ちょうど良い。店長の葉っぱがどうして定位置に出現するのか、しかとこの目で見届けよう。
なにか怪しい動きがあったとしても、さすがにこの状況で見過ごされることはないだろう。
ロザリーさんも眼をギラギラとさせていることだし。
そして……
「よーい、しょっとー」
「「「……あああ!?」」」
なんてことはない。
葉っぱはただ単純に…………『幾重にも重ねられていた』だけであった。
「……あ、海だ!」
列車の車窓に写るのは、太陽の反射によって惜しげもなく煌めくエメラルドグリーン。
「うわぁ…綺麗〜」
「この大陸にこんな綺麗な海があったなんて……」
その景観に圧倒される兄妹。
「海が見えたということはー、あと小1時間ってとこっすねー」
「はぁ…ようやくですわね」
「ねぇお兄ちゃん! 着いたらすぐに泳ぎに行きましょうよ!」
「え? ちょっと休憩してからでも……」
「すぐに行くの! わかった!?」
「あ〜はいはい、わかったわかった……」
平静を装うファルシロン。
「……海、か」
しかしその実リンと同様、彼も興奮を隠し切れずにいた――――――
〜店長のオススメ!〜
『エクスカリパ〜』
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お値段据え置き
価格→2980エル
「リン、負け惜しみはみっともないですわよ?」
「だ、だって! 8回連続でロイヤルストレートフラッシュなんてあり得ないでしょ!?」
「いいえ、そんなことはありませんわ。それは単に、わたくしの持って生まれた強運がそうさせているに過ぎませんわ。さぁ、早く1枚お脱ぎなさい」
「うぅ…理不尽過ぎるわよ……」
「何を言いますの? サンダル1足を2敗分と数えているだけ、ありがたいと思いなさい」
リンは渋々とノースリーブの裾に指をかけ、万歳するように服を脱ぎ始める。
「ちょ、ちょっと待った! それはさすがに目のやり場に……」
「ちゃんと下に水着きてるわよ!」
「あ、そっか。なら安心だ」
「はぁ…半裸のお兄ちゃんに『安心だ』なんて言われたくないんだけど……」
僕達は今、列車の中にいる。
目的地であるビーチまでは半日かかるそうなので、それまでの間トランプでもして時間を潰そうという流れになった。
しかしただ遊ぶだけでは面白くないということで、僕・リン・店長・ロザリーさんの4人の内、ポーカーでビリになった者(最も役が弱かった者)が『1枚ずつ脱いでいく』というルールが課せられた。
最初は人の目もあるのでどうかと思ったが、どうやらこの列車は貸し切り&目的地までノンストップということらしいので、その辺りの心配は無用だった。
ちなみに現在の状況はというと……
ファ→ハーフパンツのみ(計2回ビリ)
リン→ローライズジーンズ+上半身水着(計3回ビリ)
イチ→ほぼ無傷(計2回ビリ)
ロザ→無傷
夏場で超軽装のため、数敗しただけでも危機的状況に陥ってしまう。
というか、下に水着を着ていない僕はもう既に後がない。
「ほら、脱いだわよ! 次こそロザリーに一泡吹かせてやるんだから!」
「フフ、それは楽しみですわ♪」
ビリだったリンはカードを集め丹念に切り始める。
「いやーほんとお嬢様は強いっすねー。まったく勝てる気がしないっすよー」
「煽てたって何も出ませんわよ? それよりあなた……既に2度ほど負けていますわよね?」
「っすー、お恥ずかしながらー」
照れくさそうに頭をかく店長だが、どうにも違和感がある。
「見た目がまったく変わっていないのは、一体どういうことですの?」
「確か店長、頭の葉っぱを1枚とカウントしてましたよね?」
「その通りっすけどー、別にールール違反ではないっすよねー?」
「いや、まぁそうなんですけど……」
そう、そうなのだ。
店長の横には頭から外した葉っぱが2枚置かれている。
これは装飾品の1つということなので別に問題はない。
しかしそれにも関わらず、なぜか店長の頭の上には今だに葉っぱが健在している。
おかしい……新しく乗せ直したような仕草は見せなかったはずだけど……。
元々店長の服装はリンと同じくノースリーブにショートデニムと軽装。
下に水着を着用していない分、店長の方がやや不利であるといえる。
「配ったわよ」
5枚ずつ配られたカードを4人同時に拾いあげる。
まずは手札の確認だ。
(ふむふむ、7のワンペアか。それにクローバーが3つ…フラッシュも狙えるけど後がないし、ここは堅実にいこう)
僕は手札から7以外の3枚を切り、山札から切った分の3枚を引く。
すると……
(……! フォーカード!)
幸運にも、山札から7を2枚引き当てた。
(最悪ワンペア、良くてスリーカードを想定してたけど…これは期待以上だ!)
しかし、激運のロザリーさんがいる限り1位は狙い難い。
でも今は負けないことが最優先。
そう、要はビリにならなければ良いのだ。
フォーカード程の役ならまず負けることはないだろう。
(さて、他の人は……)
周りを見渡すと、渋い顔をしたリンが見える他、まったく表情の読めない店長。
そして鬼門であるロザリーさんは……
「フン、今回はツイていませんわね」
5枚全てのカードを切った。
「!」
それを見たリンは、手札から3枚のカードを切り、山札から3枚を引く。
なるほど…リンも恐らくワンペアの状態で判断に困っていたのだろう。
そこにロザリーさんが全切りとくれば、確実に勝利を掴みにくるのも頷ける。
仮にここでリンの手札がワンペアより進展しなかったとしても、全切りしたロザリーさんの手札は高が知れている。
間違ってもロイヤルストレートフラッシュなんて悪魔じみた役はこないだろう。
「………」
しかし、その中でただ1人動きを見せない者が。
(あれ? 店長は捨てないのかな?)
ジッと自分の手札を見つめる店長。
そして、
「うちはーホールドっす」
結局、店長は配られたままの手札で勝負することを選んだ。
これで舞台は整った。
「それじゃぁ、準備はいいですか?」
全員が黙って頷く。
そして、皆一斉に手札を広げる。
「「「「………」」」」
僕は、衝撃的な光景を目の当たりにした。
ファ→フォーカード
リン→フォーカード
イチ→フルハウス
ロザ→ファイブカード
「こ、これは……」
「恐ろしくハイレベルな展開ね……」
「ですが、わたくしがトップであることに変わりはありませんわ!」
「はわー負けたっすー。自信あったんすけどー」
確かにどれも非常に出にくいレアな役だが、順位だけ見れば店長のフルハウスがやや劣る。
しかし、驚くべきは他にある。
ワンペアの状態からフォーカードを手繰り寄せた僕とリンは強運。
しかし僕達を強運と言うなら、ノーチェンジでフルハウスを揃えた店長はそれを上回る激運。
そして極めつけはロザリーさんのファイブカード。
手が悪く5枚全てを切った状態からのこの役は、もはや神の領域と言っても過言ではない。
仮に山札が均等にシャッフルされていなかったとしても、同じ数字が4枚重なる確率・ジョーカーを引く確率・それをタイミング良く自らが引く確率など、様々な奇跡が絡んでくるはず。
それらを難なくかいくぐった今回の結果を見れば、リンでなくともイカサマを疑いたくなる。
しかし……これが彼女、ロザリーさんの実力なのである。
「フフ♪ やはりギャンブルはこうでなくてはいけませんわね♪」
「うぅ〜……お兄ちゃん! やっぱりロザリーイカサマしてるわよ!」
「いやいや、これはロザリーさんの実力だよ。僕も昔、彼女の勝負運に散々血の気を引かれたよ」
「血の気を引かれたと言うとー、けっこうなモノを賭けていたんすかー?」
「あぁいえ、そのままの意味ですよ」
「?」
店長はどういうことかと頭を捻る。
「単純に、『負けたら血を吸われる』という意味です」
「……血の気を引かれるってそういう意味っすかー。本当にそのまんまっすねー」
「おかげでその当時はずっと貧血気味でしたよ……」
確か僕が中等部のときだったか。
あの頃を思い出すと、今でも自分の無謀さ加減に呆れかえる。
いつかは勝てるだろうと淡い希望を抱いていた時期があったんですはい……。
「確かに、そんなこともありましたわね」
「はい。その事もあってか、賭け事にはちょっとしたトラウマが」
「微妙に切ない話っすねー……」
店長は頬をかきながら同情の眼差しを向けてくる。
「コホン……それはそうとタヌタヌ、さっさと罰を受けてはどうですの?」
「あーそうだったっすねー」
色々あったが、今回ビリだったのは店長。
脱衣ルールに則り、身につけているものから1枚脱ぐ罰が課せられた。
「まー、これっすよねー」
そう言うと店長は先程と同様、頭の上の葉っぱに手を伸ばす。
「「「………」」」
その光景を固唾を呑んで見守る3人。
ちょうど良い。店長の葉っぱがどうして定位置に出現するのか、しかとこの目で見届けよう。
なにか怪しい動きがあったとしても、さすがにこの状況で見過ごされることはないだろう。
ロザリーさんも眼をギラギラとさせていることだし。
そして……
「よーい、しょっとー」
「「「……あああ!?」」」
なんてことはない。
葉っぱはただ単純に…………『幾重にも重ねられていた』だけであった。
「……あ、海だ!」
列車の車窓に写るのは、太陽の反射によって惜しげもなく煌めくエメラルドグリーン。
「うわぁ…綺麗〜」
「この大陸にこんな綺麗な海があったなんて……」
その景観に圧倒される兄妹。
「海が見えたということはー、あと小1時間ってとこっすねー」
「はぁ…ようやくですわね」
「ねぇお兄ちゃん! 着いたらすぐに泳ぎに行きましょうよ!」
「え? ちょっと休憩してからでも……」
「すぐに行くの! わかった!?」
「あ〜はいはい、わかったわかった……」
平静を装うファルシロン。
「……海、か」
しかしその実リンと同様、彼も興奮を隠し切れずにいた――――――
〜店長のオススメ!〜
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13/02/01 18:51更新 / HERO
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