オチルアナ
裏山へと分け入って運動部が使う道を途中で外れ、雑草を踏みしめて小川へと抜ける。
幼い頃に一度しか歩いたことの無い道は必要に駆られて大人になろうとしていた少年時代を取り戻すかのように、この数日の間で馴染んでしまっていた。
(……草は、踏み固められてはいない、か)
リリの体は小さく軽い。足跡が残らないのも不思議ではない。そう理屈では理解しているが確信できるものがない以上、秘密基地に彼女が居ないのではないかという不安を完全に消し去ることはできなかった。
(俺が何日か前に歩いた跡だってない。枯れかけの草だってあるのにこれなら、もしかしたら道にもリリの魔法が影響を与えているかもしれない)
人間どころか魔物たちの意識からもその存在を隠すことができてしまうレベルの魔法だ。物理的な道を隠すことだって十分できるだろう。
不安要素を打ち消すように思考を回し続けながら、礼慈はやがて秘密基地の扉の前に立った。
汗を拭い、リリが中に居てくれることを祈るように目を閉じて扉を開く。
ヒカリゴケだけでは心もとない秘密基地の通路は、魔力灯の明かりに照らされていた。
魔力灯に魔力を供給しているものが居る。礼慈は咄嗟に奥に向かって呼びかけた。
「おーい、リリ!」
返事はなく、しかし内部のどこかで物が動くような音が聞こえた。
トイレの扉を壊してしまったために空気の流れができて基地内部は換気されているようだが、空気の動きは埃が堆積してしまう程度の緩やかなものだ。前に掃除した際も、リリとまぐわう前に基地内はしっかり片付けたので物が自然に動くとは考え難い。
彼女はここに居るのだ。
「リリっ!」
名を呼びながら居間に出る。
まず目に入るのは手の込んだ刺繍の施されたクロスがかけられたテーブル。
そこから背の低い本棚。二つの木の扉と一つの壊れた扉へと目を移していく。
テーブルクロスは綺麗に洗われており、この前掃除した本棚にも乱れはない。そんな動くもののない静謐の中で椅子が一つだけテーブルから離れているのが目立っていた。
椅子に目が引き寄せられたのと同時に、土の気配が強い空気の中に甘い香りがほんの微かに滞っていることに気付いた。それと意識していなければまず気にすることのない微香だが、礼慈にははっきりとその正体を判別することができた。
(リリだ……)
彼女の香りを嗅ぎ分けることができる自分に今更疑問はない。もう一度基地内で呼ばわった。
「リリ……! 俺だ、礼慈だ!」
返事は返らなかった。が、倉庫の方で何かが軋むような音が聞こえた。
身を隠そうというのなら、扉を壊してしまったトイレや、隠れる場所がない水場の方に行くというのもないだろう。
ある程度物があって身を潜められる場所があるのはこの基地の中には倉庫しかない。
「リリッ」
扉を開けた礼慈は、中に誰もいないことを見てとって言葉を詰まらせた。
倉庫の中は掃除の折に整理されたままで、小さいリリといえども完璧に姿を隠せるだけのスペースは存在しない。
(間違えたか……?)
別の部屋に隠れているのだろうかと考えかけ、思い出した。
この部屋には隠し扉がある。
初めてリリが隠し扉を開けた時の記憶は中に収められていたエロ本によって発情したせいで消えているはずだった。
だが、アレから何度かリリも秘密基地に来ているし、掃除を手分けして行っていた時にはずっと傍についていたわけではない。リリがその間に隠し扉を再発見していてもおかしくはなかった。
思えば、先程耳にした何かが軋むような音は、隠し扉の開閉音だったのではなかったろうか?
「たしか。この辺り」
壁には扉があるような継ぎ目は見当たらない。が、隠し扉があった位置に手を押し当てて力を込めながら壁をなぞるように動くと、ある箇所を支点にして板状にくり抜かれた岩壁が回転した。
そうして姿を見せた、魔力灯で照らされた小部屋の中に頭を三角座りの膝の中へと埋めたリリが居た。
「リリ……」
小部屋の中に一歩踏み入れる。
華奢で白い脚と蜂蜜色の髪で顔を覆って周囲を拒んでいるリリは、礼慈の声にも顔を上げず俯いたままだった。
「リリ……ここに居たのか。皆捜していた」
「……」
沈黙を続けるリリの横に腰を落ち着けて、礼慈は続ける。
「まあ、居場所を知ってて誰にもその場所を言わなかった俺も俺だな」
垂れ下がった髪のヴェールがわずかに動く。リリの尖り気味の耳が動いたのだろう。
無視はせずにいてくれるようだった。
「秘密の場所だもんな。他のヒトには分からなくても、俺とリリだけには分かる。そういう場所だから」
ほっと息をつく。
「リリが本当に怒っていて、俺を許してくれる気がないってことになってなければ居てくれると信じて、願ってた」
リリはゆっくりと顔を上げて礼慈を見た。
常磐色の瞳は潤んでいるようで、つい手が頭に伸びてしまう。
彼女に触れられてほっと安心するのが自分の方な辺りが情けないが、
「居てくれてよかった」
安堵を口にするとリリが小さく言った。
「おこってなんて、いませんでした……」
頭を撫でられるまま、彼女は続ける。
「朝、レイジお兄さまと会えなくて……さがしても会えなくて、レミお姉さまにおねがいしてお家にいてもお兄さま、かえってこなくて……わたし、こわかったんです。
なにかレイジお兄さまがいやだと思うようなことをしてしまっていて――もしかしたら大事なことをわすれてしまったりしていて、それでお兄さまにきらわれてしまったのかなって思ってました」
話すうちに感情が決壊したのか、しゃくりあげ始めた小さな頭を引き寄せる。礼慈の胸に頭を擦り付けるようにして彼女は嗚咽混じりに続けた。
「それで、わたしレイジお兄さまと会えないままこれから過ごさなくちゃいけないのかなって思ったら、お友だちだって、お母さまやお父さまやお姉さまたちだっているのにこわくって、さびしくて、だから、わたし――」
「ここに、俺たちの秘密基地に来たんだな」
「はい。……もしここで待っていてレイジお兄さまが来てくれなくても、ここでならこわいのも、さびしいのも全部わすれて、楽しかったってことだけをおぼえていることができるかもって思って」
礼慈と秘密基地に来た時、リリはいつも記憶を失っていた。耐え難いことを忘れるためにここを選んだのはその経験からいえば当然のことで、
「ここできおくがなくなっても楽しかったことはおぼえていられたのはお兄さまのおかげなのに、それを分かっていてお兄さまにきらわれてしまったかもしれないわたしがここに来てしまったのはずるいことだってわかってて、そんなわたしなんて消えちゃえばいいのにって思ってました」
彼女の行き先の候補である学園の裏山を誰も認識することができなかったのは、彼女自身が消えてしまいたいと望んだからだったのだろうか。
優しい彼女をそうまで追い詰めてしまった自らの行いに礼慈は歯噛みする。
「恐がらせてごめん。なあ、リリ。俺の話を聞いてくれるか?」
小さな頭から手を離して、礼慈は自分がリリを避けるような行動をとっていた理由を話した。
「リリに依存してしまいそうな自分が、物のように君を扱ってしまうかもしれない自分が怖かったんだ。自制できない自分にならないように、せめてリリの友達との仲が元通りになって落ち着くまでは距離を置いて、その間に自分を制御できるようになっておこうなんて、そんな自分勝手なことをリリの気持ちも考えずに思っていた……。だからリリは自分を責めちゃいけない。悪いのは自分のメンツのために君を蔑ろにしてしまった俺なんだから」
懺悔を口にした礼慈に、リリは膝立ちで正面に来ると、目元を拭って言った。
「わたしも、お兄さまの言う、いぞん、してました。
レイジお兄さまと会えないことがいやになってしまって、せっかくお兄さまがみんなとまた遊べるようにしてくれたのに、そこにお兄さまがいてくれないのがいやで、ぜんぶぜんぶ置いてきちゃったわたしの方が、いぞん、していますね」
礼慈の手をとって、泣き顔に淡い笑みを浮かべ、
「すっごくわがままなこと、しちゃいました」
「かまわないさ。リリはまだ子供なんだから。誰かに寄りかかっているのは普通のことだ」
「わたしは、オトナになりたかったんです。みんなといっしょにいられるような……ううん。お兄さまにお似合いな。そんなヒトに……でも、お兄さまに好きって言ってもらえて、わたし、今のままのわたしでもいいのならたとえきおくが無くなってしまうままでも、コドモのままでいいかもって思ってしまって……はじめはお友だちのみんなとうまくあそべなくなってしまったのがいやだったのに、それなのにお友だちよりもお兄さまがいつのまにか好きで、がまんできなくて……わたし、本当にすごくわがままなコなんです……ごめんなさい。ありがとうございます、見つけてくれて」
「俺も、君が思ってくれているような立派な大人じゃない。大切な、俺のことをどう思ってくれているのかを知っている相手から目を逸して建前を整えるのに必死になってしまうくらいに馬鹿な、そんな半人前だよ」
リリが言っていることは、数日前に聞いたことだ。
彼女は記憶を失ってからも変わらず自分の本心を素直に伝えてきてくれている。
礼慈が姿を隠すような卑怯な真似をしなければ今回の件、きっと彼女は姿を隠すこともなく、素直に寂しいと訴えていたことだろう。それすら数日前に事後の脱力と多幸感の中で訴えてきてくれていたことなのだから。
(覚えているはずの俺の方がすっかり取りこぼしていたんだな……)
この先、間違えることがないようにこのことは強く胸に刻んでおこうと思い、誤ってしまった中において、それでも忘れることがなかった想いを伝えた。
「君の友達の前ではお茶を濁してしまったけど、改めて言わせてくれ。リリ。君が好きだ。愛してる」
リリはぴくんと体を反応させ、それから礼慈の手をにぎにぎと揉みながら、可憐な笑みで応じた。
「わたしも、どこの世界のだれよりもあいしてます。レイジお兄さま」
その笑顔にほっとすると共に、申し訳無さでどことなくこわばっていた自らの表情が溶けていくのが分かる。
それを隠すように目を逸していると、視界に滑り込むように、リリが膝でにじり寄ってきた。
下から見上げるようにしながら、常磐の瞳はまっすぐに勇気を滲ませて問う。
「わたしは、オトナじゃないわたしは、お兄さまといっしょにいていいですか?」
「俺にはもったいないくらいだよ。大人じゃないってなら俺もそうだって言ったろ?」
むしろ、
「リリの方こそ、恋人をほったらかしにしてた俺と一緒に居てくれるか?」
恋人。と聞いて、リリは顔を紅潮させ、「でしたら」と呟いてから、
「あの、もう一つ。わがままを言っちゃいます」
「リリのわがままならなんでも聞くよ」
その返事にむん、と気合を入れて、リリは礼慈の膝に手をついた。
「お兄さまといっしょに居られなくて、いやでした。さびしかったです。だから、もうはなれたくないです。みんなにはごめんなさいなんですけど、お母さまよりも、お父さまよりも、お姉さまたちよりも学園のだれよりも、わたしはお兄さまといっしょにいたいんです。
いっしょにいられるなら、きおくだって消えてしまってもいいんです。もののようにあつかわれるのだってステキです。だってお兄さまはきっと、その“もの”を大事にされる方ですから。だから、もしかしたらすっごくめいわくをかけてしまうかもしれませんけど、お兄さま……いっしょにくらしてください」
至近距離に迫ったリリの唇から紡がれた欲望の懇願に、礼慈は名付けられない種類の感情の高揚を感じた。
このやり取りは、互いを互いの一番として生を共にしようという誘いであり、互いがもはや相手がなくてはいられないのだという告白であった。
もう礼慈はリリという少女なしではまっとうではいられない。
彼女と生活を共にするということが夫婦になるということで、その中にはこんな幼い娘を相手に子作りをするという行為が当然の営みとして含まれていても、彼女無しで行われる礼慈の生活はリリと出会う前の礼慈から見てもまっとうではなくなってしまう。こうなってしまった自分を一月も前の自分が見たら驚愕するだろう。だが礼慈は彼女が運んできたそんな変化を今この時心の底から愛おしいと感じていた。
「ね。おねがいです」
これが生命を捧げ合うという誓いなのだと、それが生涯にわたって影響を与えるほどに重いものなのだと、幼い彼女はしかし聡明に識っていることだろう。
だからその決断にコドモやオトナというガワの部分は関係ない。愛を掲げて生きる生物として、自分たちの恥部ともいえる弱さを晒した上で、今ここで対等にリリは誓いを立て、礼慈は応じた。
「お願いされなくても、俺の気持ちは決まっているよ」
半ば衝動的に小さな体を抱きしめる。
彼女の香りを、ぬくもりを、肌触りを、その存在を確かに実感しながら、敬虔な気持ちで願いを受け取る。
「ああ、一緒に暮らそう。半人前同士、一緒に暮らして、一緒にオトナになって、一緒に生きていこう」
「やくそく、ですよ? うそついたら」
「ああ、針の千本でも万本でも飲むよ」
「あの、それは、いたそうなので……何か、べつの……」
そんな甘いことを言ってくれるリリが愛しくてたまらない。
こんな子によりかかられて、こんな子によりかかることができる自分の幸福を想いながら、礼慈はより強くリリを抱きしめた。
●
リリは腕の中に収まり、頭をもたせかけて決壊する感情を全て流し出すように泣いていた。
甘い香り、小さく柔らかい感触、胸にある蜂蜜色の色の色彩、嗚咽を漏らす声。
そんなリリを数日ぶりに感じながら、礼慈は全身に巡る熱に鼓動を早くしていた。
それは抑えようと思っても止められるものではなく、隠そうとしても男である限り隠し切ることは不可能な熱――性欲だった。
リリの腹には固く張ったズボンが押し付けられていて、僅かな身動ぎがあるたびに、布越しとはいえ陰茎が刺激されて快感が伝わってくる。
神聖な誓いをしたばかりだというのに体の疼きが止められない状態を恥じてリリを一度腕から離そうとして、礼慈は思いとどまった。
誓いは、こういうことも隠さずに一緒にやっていこうというものだったではないか。
(ここで隠すのは、これまでと変わらないな)
ルアナが言うところの格好をつけるというやつだ。
そういうのも大事な時はあるだろうが、覚悟を決めて告白をしたはずが、リリに更に先を行くお願いをされてしまった先程のように、きっとそれは今ではない。
これまでの礼慈が持っていた品よりも、愛欲を伝える誠実さこそが下品だろうがなんだろうが、今この場では正しいのだ。
気持ち腰を突き出してリリの腹に強く剛直を押し付けるようにしながら、これからどうアプローチをかけようかと思案していると、リリがこちらを抱きしめ返していた腕を解いた。
そのままリリは礼慈から身を剥がす。理性を働かせていたがために大事なタイミングを逃してしまったかと残念に思っていると、リリは涙を拭って立ち上がった。どうしたのか、と礼慈が聞く間もなく、彼女は軽く勢いをつけて礼慈にのしかかってきた。
「――っと」
壁に肩を突っ張って倒れるのをこらえると、リリは脚を礼慈の腰に絡めて全身で抱きついた。
無意識の行動なのか、ズボンを押し上げている陰茎に下腹部をこすりつけるように身を捩らせる彼女は、首に鼻を押し当てて満足げに深く息をついた。
「お兄さま、大すき」
言葉にすることで気分が高まったのか、抱きつく力が強くなって密着度が上がる。
擦る動きに加えて圧をかけられる形になった陰茎は、彼女の温みを感じて張りを限界にまで高めた。
抱き返した礼慈の手は彼女の尻尾の付け根を挟みつつ小振りな尻に伸び、揉み込むようにしながら下腹部を陰茎に擦り付ける動きを強くさせる。
数秒そうしていると、リリ本人がその動きをトレースして下半身全体を押し付けるように腰をくねらせ始めた。
尻に添えるだけになった手で尻尾の付け根を指で擦り刺激しながら、礼慈は徐々に高めるようなゆったりとした愛撫を享受する。
この行為の意味をリリは理解していないだろう。
だが、やはり彼女の体はどうすればよかったのかを憶えているようだった。
その証拠に尻尾をいじられてか、それとも陰茎と下腹が布越しに触れ合うことでか、リリの呼気に艶が混ざり始めている。時折発される「ぁ」という音の断片は、初めて性感帯を刺激されるリリが戸惑うばかりではなく愉しんでもいることを如実に感じさせた。
棚に収まっているエロ本のような外部からの影響なしで、リリと礼慈の二人だけでどんどん盛っていく。
獣が獲物に食らいつくのを我慢するような低く荒い呼吸をしながら、礼慈はもう片方の手で彼女の髪を梳いて、
「リリ、キスしようか」
「……ん、はい」
より直接的な接触を求めた言葉に、リリは性感にぼんやりとした声で応じて礼慈の首から顔を上げた。
その時にちゅ、と吸い付く音がする。
リリに吸われた首に手をやってから、礼慈は優しく彼女の後頭部に手を添え、目を瞑って少し唇を突き出した彼女の唇を自分の唇で食んだ。
リップもなしに瑞々しい唇を上、下と挟んでプニプニとした感触を愉しむ。
「……ふ、……む」
下唇を食んだまま少し引っ張っては離す。
抗議のためだろうか、リリが目を開いたところで礼慈は正しくキスをした。
リリの目が見開かれ、次いで涙の残滓が一筋流れる。
それを視界に映し、礼慈は重ねた唇の間へと舌を差し込んだ。
「――んむ?」
突然侵入してきた礼慈の舌にリリが驚く。その響きを口蓋で味わいながら、礼慈はリリの舌を自らの舌でなぞった。
ぬる、とした感触と味蕾を通して脳に響く甘露を一嘗め削いだのをかわきりに、硬い歯、それらを支える歯茎、柔らかな頬裏に襞のある口蓋と順々に味わっていった。
リリの味に体が歓喜する。
肺の中の空気をリリの呼気に置き換えるように彼女を吸いながら、彼女を求める味覚の欲求に従い口中を蹂躙する。
唾液を呑むインターバルを考えない、がっついた動きのせいで涎が二人の口の間から零れて口周りを汚していくが、礼慈は気にならない。リリも気にしていないどころか、のしかかっている彼女は最初の驚きが引くと積極的に礼慈に口を差し出していた。
これも体が覚えていたものか、初めはおっかなびっくり触れるふうだったリリの舌は、すぐに礼慈の舌と絡み合った。
隙を窺っては礼慈の口の中へも舌は差し込まれ、お返しのように熱い舌が礼慈の口内を味わっていくのを甘美な愛撫として楽しんだ。
ひとしきり互いの口を堪能し、リリが吸い上げた礼慈の唾液をこくり、と飲み込んだのを契機に、二人は口を離した。
銀糸を引きながら紅潮した顔が離れ、先程までとは違う、官能に潤む瞳になったリリに視線を吸い寄せられる。
じっと見つめられることに照れたのか、リリは礼慈の胸に額を押し付けて顔を隠してしまった。それでも脚は絡めたままで、尻尾が礼慈の手に触れてきた。 キスをしている間に止まってしまっていた尻尾を愛撫する動きを再度促そうとする動きだ。それに礼慈は応じ、それに艶めいた吐息をこぼしたリリは満足したように顔を上向けた。
礼慈の胸に押し付けられたままの口が吐息交じりに動く。
「チュウーってするの……ん、すごく……っ、あの、ほわってしました」
もはや積極的に腰を礼慈に押し付けて快楽を自分から味わうリリに、礼慈も頷く。
「ああ、すごく気持ちよくて、おいしかった」
「……あ、わたしも、ですお兄さま、すごくおいしかったです」
「これからもずっとごちそうしてくれるか?」
「はい。何度でも、いつでも。わたしもまた……お兄さまの、ごっくんしたいです」
お互いの味を評価しながらそんな約束を交わす。
その間にも片や意図した、片や本能と体の記録に導かれるままに愛撫は続けられ、
「……っ、リリ。もっとリリと深く繋がりたい。もっと俺の欲も、精もリリに受け取ってもらいたい」
先に抑えきれなくなったのは自覚的に悶々と溜め込んでいた礼慈の方だった。
「……っは、はい……ん、お兄さま、もっともっと深く、いっぱいしたいこと、してくださいっ」
許可を得た礼慈が尻尾を弄んでいた手を滑らせて、エプロンドレスの裾から手を滑り込ませる。
広げられた脚の間。ショーツに触れた手は確かな湿り気を感じた。
汗だけではないだろうそれをより確実なものとするために、礼慈は指を押し込むようにしてリリの股間を揉み込んだ。
「――っんぃ! あ? え? ぅあっ、へ、へんな……お兄さま?!」
リリの方も精神がついていけていないだけで、体の方はほとんど準備を整えていた。
この戸惑いはこれまでもリリが感じていたことだ。だから、大丈夫、と繰り返して言い聞かせる。
「おかしくなんかない。濡れてるけど、これはおしっことは違う。自然で……ああ、俺とリリの間ならこれまでもこれからも当たり前に起こることだから」
強めに指を押し込む。
グチュ、と潤った音を鳴らしながら、指はショーツごとリリの恥丘に食い込んだ。
「だから気持ちいいのに全部任せてくれ」
「――――っ!」
突っ込んだ指をグリグリと動かす。
入り口を浅く責める指に、リリは全身をビクリと震わせた。
断続的に小さく震えながら、礼慈の服を握りしめて快楽の波にまかれるリリを、頭を撫でて見守る。
「――っ、ぁ、あ、ん……おにいさま」
「うん、いきなりだったからびっくりしたか? でも気持ちよかった……と思うけど、どうだ?」
「ん、は、はい。びくってして、それからお兄さまがすごく近くに感じられました」
顔を上げてとぎれとぎれに絶頂の感触を告げるリリに、スカートから抜いた手を、その指先に絡んだ愛液の糸を見せてやる。
「これが愛液。気持ちよかったり、好きな相手といる時に出てくる液だ。おしっこの穴の少しお尻側から出てくる。分かるか?」
「ん、はい。大事なところだって、お母さまに教わりました。すきな……レイジお兄さまといると。こうなっちゃうんですね。どうしましょう。わたし、オムツしなくっちゃ……とまらない」
困った顔をするリリを撫でながら「大丈夫、大丈夫」と礼慈はまた繰り返す。
「これは、精が満たされると止まる。だから、そうすればオムツは、まあ要らない」
「セイを……?」
「そう、セックスをして……」
言いかけて、きっと間違いではない別の表現で言い直す。
「愛を確かめあっていれば。それで満たされれば愛液がどんどんあふれてくるのも収まる」
だから、
「リリのその大事な所に、俺の一番欲望――やりたいって気持ちに正直なモノを入れて赤ちゃんができるくらい思いっきり精を吐き出してもいいか?」
「赤ちゃん……」
「それをすると、たぶんまた記憶が消えてしまうけど、それでも、俺はリリと愛を確かめたいし、俺の精でそのお腹をいっぱいにしたい」
欲望を隠すことなく告げると、リリは自分に分かる範囲で言葉をゆっくりと飲み込んでいった。
「……はい。わたし、お兄さまとの赤ちゃんがほしいです。それに、さっき言いました。お兄さまとなら、きおくがなくなってしまっても、わたし、平気です。たとえきおくがなくなってしまっても、お兄さまがやりたいように、わたしも、してほしいです」
リリは想いを示すように礼慈に絶頂後の体を擦り付けて、それから悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「……あの、レイジお兄さま。わたし、お兄さまのやりたいって気持ちに正直なところがどこなのか、分かっちゃいました」
彼女は礼慈を見上げながら、ソコを意識して腰を強く押し付けた。
「おちんちん、ですよね?」
色気よりも重大な発見を伝えたい。というような風情のリリに礼慈は「あー、まあ……」と強くなった刺激と無邪気な調子の微妙なミスマッチに戸惑いながら応える。
リリは嬉しそうに笑んで、
「ここ、かたくて、あつくて、なにかはれてるみたいで……これ、わたしのおまたと同じなんです。こうやってこすると……ん、ほら、ほわってして気持ちよくって、びくってきちゃいそう……。お兄さまもそうなんですか?」
「そうだ。熱くて気持ちいいんだ」
「じゃあ、あいえきも出てきてるんですか? おちんちんにもおしっこのあな以外の穴があったりするんですか?」
礼慈が気持ちよくなっていることを知ったためか、下半身の動きを大胆にしながらリリが問うてくる。
このままだと下着の中で射精にまで達してしまいそうだった。
礼慈はリリの背と尻に手を回して彼女を抱えて立ち上がった。
問いに対して抱え上げられたことに戸惑うリリに礼慈は唾を飲み込んで言う。
「じゃあ、見せてあげよう。どっちにしろ、脱がないとこれ以上深く繋がれないからな」
「おちんちん。見せてくれるんですね? それで、あかちゃん、作るんですね? 大好きなお兄さまとの赤ちゃん」
「そうだ。リリが好きで、欲しくてたまらないから全部見せる。受け取って欲しい」
「わたしの大好きって気持ちをもらってくれて、お兄さまの大好きって気持ちをもらえるんですね」
夢に浮かされたように口にするリリが不意に礼慈にしがみついてブルっと震えた。
「ぁ……ん、……っ!」
「リリ?」
体の震えが去ると、リリははにかんだように笑んだ。
「お兄さまとあいし合えるって思ったら、なにか、おなかの中がキュッてなっちゃいました」
想像だけでイったのだ。あの告白だけで背筋がゾクゾクする程快い。性交の知識を持たないリリをそうさせるだけの性欲の迸りに礼慈もまた中てられたように先走りが溢れてくるのを感じる。
「じゃあ、ちょっと机のある所まで」
言って、礼慈は隠し部屋から居間に移動した。
途中。倉庫にある裁縫セットの中から端切れをありったけもって行って居間の床に敷く。
リリを椅子に座らせると、更に礼慈は自分の服を脱いで端切れの上に投げ出した。
「お兄さま?」
「ベッドの代わりというか、まあ、ありもので悪いけど」
最後に机の上のテーブルクロスを布切れの山に被せると、それなりに場は整った。
(そういえば、リリとこれまでベッドでやったことないな……)
秘密基地の中や風呂場での性交しかしていない。
セックスといえばベッドでというイメージがあったものだが、気が付けばそんな固定観念はとっくに逸脱していた。
(この即席ベッドも普通って感じじゃないな……)
公園の茂みで励むカップルが居るのをちょっと信じられないと思ったこともあったが、これも外でヤるのと変わらないような気がする。
(……セックスの現実を知らなかっただけなのか、俺が特殊なのか……)
相手が相手なのでその両方、というのが正解だろうか。
「お兄さま?」
「あ、いや……うん。こんなもんだろう」
リリのような幼女相手に性交するのがそもそも普通ではないといえばそうだ。この先も幼艶な魔物であるリリとなら、これまでの人生で考えたこともないような性交をすることもあるかもしれない。そう考えればこれもその内普通の範疇に数えることができるようになるのかも。
そんな妄想に胸を高鳴らせつつ、礼慈はリリを椅子から抱えて即席のベッドに下ろし、彼女の目の前でズボンを下着ごと脱いだ。
「これが男の……俺がリリと一緒に居て気持ちよくなって欲望が止まらなくなった時に一番正直になる所の、その反応」
リリの常磐の瞳は、礼慈が服を脱いでズボンに張ったテントが露わになった時から既にそこに集中していて、ソレがさらけ出された時に感嘆の息を吐いた。
リリと出会ってから勃起の最大値が増えた雄の証――陰茎はその魁偉な姿を彼女の眼前に晒していた。
「…………っ」
見つめるリリの喉からゴクリと音が漏れる。
彼女はそっと顔を近づけて、臭いをかぎながら上目遣いに礼慈を見た。
「あの、すごい……これ、いたくはないですか?」
「大丈夫だ。むしろこの状態の方が気持ちよくなれる」
そうなんですか。と頷いたリリはまた陰茎に視線を戻した。
「おちんちん。むわってするくらい熱くなってます。すごい……とうめいなおしっこ? が出てます……あなは、これ、一つだけ?」
「そう。女の子と違って男はおしっこと同じ穴から精液――精の籠った赤ちゃんの元を出すんだ。今出てるのは先走りで……気持ちよかったり好きなヒトと一緒にいると出てくる。愛液と同じようなものだよ」
「そうなんですか」
陰茎の血管が浮き出た姿や、精液が出てくると説明された鈴口に対する拒否感は一切ないようで、リリはそれをひとしきり眺めた後、顔を上げた。
「お兄さまも、わたしといて、あいえきが出るんですね」
「ああ、そうだよ」
「あの、さわってみてもいいですか?」
「自分の中に入るものを確認しておきたいだろうし、いいよ」
許可すると、リリは小さな手でそっと触れてきた。
繊手が亀頭にふれる感触に陰茎全体がビクリと震える。
「わ!? あ、あの……」
「大丈夫。触られて嬉しいんだ。ほら、先走りだって増えてるだろ?」
「あ、ほんとです」
リリは指に絡んだ先走りを指の間で広げて確かめ、両手で陰茎を扱いた。
「……っ、リリ」
「あ、はい」
「……リリも服脱いで」
腰を震わせながら言うと、リリは陰茎から手を離して、エプロンドレスに手をかけようとした。
その手を礼慈は掴んだ。
「手を上に挙げて」
「……ん」
バンザイの形になったリリのドレスを掴んで上に引き抜く。
衣服の中に溜まっていたリリの甘い香りが礼慈を吹き抜け、先走りがまた一滴零れていく。
受け止めるものがなくなった先走りは即席のベッドの上に落ちようとするが、その前に上半身裸になったリリが膝立ちで雫を両手に受けた。
彼女は陰茎を見上げてスン、と鼻を鳴らしてから、掌の中の雫に舌を伸ばした。
「――――っ?!」
肩が震える。
「これ……おいしいです」
彼女は陰茎の先端に浮かぶ次の雫を見やって、
「ステキです。さっきのチューの時もそうでした。いろんなひとにお兄さまの味を知ってもらいたいかもです」
「これの味をそんなに美味しく感じられるなら、それはリリだけの特権だよ。魔物の皆は好きな人ができるとそういうふうに味覚が変わるって聞くしな」
「そうなんですか……よかったです。ほんとは、お兄さまの味は、わたしだけのヒミツにしたかったんです」
「そっか。俺も、リリがどんなに素敵な味をしているかは誰にも教えないつもりなんだ」
「わ、わたしおいしいですか?」
「極上だよ。本当に」
「あ、ありがとうございます。あの! わたしも! お母さまやお姉さまたちのお料理よりもお兄さまのお味がすきです!」
「ちょっとそこは比べるものの問題があるかな。エッチなことはエッチなことだけで比べていこうか」
さすがに苦笑した礼慈にリリが首を傾げる。
「えっち……?」
「好きで、ドキドキして、体が熱くなって、そうなる人と気持ちよくなりたくて、そんな人との子供が欲しいと思う。そういう気持ちを全部ひっくるめた言い方、かな?」
「じゃあ、わたし、レイジお兄さまに一番。ううん。レイジお兄さまだけに一番エッチです!」
一切の邪気がない声でそんなことを言われてしまうと素直に受け取らざるを得ない。
どうにも斜に構えてきた自分はリリのこれに弱い。リリに性行為のなんたるかを教え直す過程をすっ飛ばして早く挿入しろと急かすように先走りを垂れ流す陰茎を軽く突き出し、礼慈はちょっと自分でも擁護できない笑みでリリに言った。
「俺も、リリだけにエッチになるよ。ほら、こんなに勃起するのもリリにだけだ」
「ぼっき……おちんちんがおっきくてあつくなることをぼっきって言うんですね?」
「そう。ただ、勃起はコレが無い女の子の体でも起こるんだ」
「そうなんですか?」
「そう。今リリにも起こってるよ」
「あれ……どこでしょうか?」
「例えば、ここだ」
疑問符を浮かべるリリと視線の高さを合わせるように膝を折り、礼慈は両掌でリリの剥き出しの胸に触れた。
「んっ」
平らなそこは、だがしこりを感じさせる突起が二つある。
胸全体を揉み込むようにしながらその部分を刺激した後、礼慈は指でツンと存在を主張している乳首をつまんだ。
「んぃっ!」
存在を分からせるために少し強くつまんだためか、冷水でもかけられたかのようにリリは胸を反らし気味に反応し、
「これ……おっぱい、びくってしてます」
「分かるか? 乳首が勃起して、敏感になってるんだ」
存在を認識したならば、と今度は優しく乳首を指の間で転がすようにしてやる。
リリは鼻を鳴らしてその刺激を受け止めて、
「レイジお兄さま……ボッキって、すっごく、気持ちよくなるんですね。お兄さまの指のあたたかさがうれしくて、体、ひくひくしちゃいます。これが女の子のボッキ」
「女の子が勃起するのはそこだけじゃない」
言って、礼慈はリリの両脇に四指を這わせ、親指で乳首をこね回すようにしながらゆっくりと押し倒した。そうして即席ベッドに彼女が寝転んで脱力したのを確認してから胸をいじるのをやめ、華奢な膝裏に手を回して持ち上げる。
されるままに身を委ねるリリの靴を脱がしてソックスを剥ぐと、彼女の肌を覆っているのは白いショーツだけになっていた。
姉の手によるものだろうフリルがあしらわれた可愛らしい下着のクロッチには先程礼慈が恥丘に押し込んだせいもあって、隠しようがない染みができていた。
股の間に体を入れて正面からその染みを眺めていると、リリが腰をもじもじさせた。
「あの、お兄さま」
「ああ、悪い」
隠そうとしているのか、はたまた早くショーツを脱がしてくれてと懇願しているのかは確認せず、礼慈はリリのショーツに手をかけて引き抜いていく。
リリは顔を赤くしながらも腰を浮かせて、最後にして一番大事な所を隠していた布が取り払われるのを助けた。
裏返ったショーツと陰部の間に粘液の糸が引き、閉じた恥丘が晒されて、外気に驚いたようにヒクリと震える。礼慈の鼻には覆いから開放されたためか、より濃厚なリリの匂いが香ってきた。
幼女の発情した背徳の香りに脳を犯されながら、礼慈はショーツを細い足から抜き去った。
無毛でつるんとした、まるでビスクドールのように作り物めいて綺麗なそこは、確かに生物の一部であり、繁殖行為のための準備を整えているのだと知らせるように愛液でねっとりと濡れ輝いている。
これからこの割れ目を開いて自分の陰茎を押し込むのだと考えるだけで官能が高まり、鼻息が荒くなっていく。
ショーツを脱がせるのに協力し終えてベッドに落ちようとする細脚を捕らえ、片手ずつそれぞれの脚を持ってリリの頭の方へと持っていった。
尻尾の付け根が礼慈の正面を向き、尻が天井を、そして女性器は、
「ほら、見てみな」
リリの顔の真上にきていた。
「ぇ……あ、このかっこうは……丸見え、です……」
そう言って控えめに尻を下ろそうとするのをやんわりと、だが力を緩めずに止め、せめて排泄孔だけでもと思ったのか、尻の谷間に沿うように動いた尻尾も体を密着させて挟み込むことで動きを止めた。
その間に顔を跨ぐように脚が広げられたせいで割り開かれた秘裂から湧き出た愛液が、リリの顔にトロっとした雫を落とした。
「隠そうとしなくてもいいだろう。俺のだって顔を近付けてよく見てたじゃないか。それと同じだ。何より、俺だってリリが俺のためにこんなになってくれて、すごく嬉しい。いつまでだって見ていられる」
「――っ」
お尻の穴がキュ、と窄まって、リリが尻を下ろそうとするのをやめる。
そんな反応が可愛く、同時に性欲が掻き立てられていく。
礼慈はツー……、ツー……、と糸を引いてはリリの顔に愛液を注ぐ秘裂を両手でより大きく割り開いた。
ヌチ、という音を伴って開かれたそこを上から覗き込みながら、人差し指を伸ばして挟むように包皮に包まれた陰核を示す。
「ここが、女の子のもう一つの勃起する所。クリトリスだ」
リリは間近に来た自身の性器を赤い顔でまじまじと見つめ、
「わたしのおしっこのあなの近くにこんなものがあったんですね」
「男で言うちんちんとものとしては近いらしい」
「くりとりす。わたしのおちんちん……こうやって近くで見たことがないから知らなかったですけど。よろしくね。わたしのクリトリス」
自らの性器に挨拶しているリリにおかしみを感じながら、礼慈は指先を包皮にかける。
愛液が濡れた音を立てて、リリの顔が驚いたように歪む。
「ふぇ……っ、あ、びくんってきました。クリトリスのぼっきも、感じやすくなるんですね」
「まだ、ここからだ」
言って、礼慈は包皮を剥いた。
「――――ッ!」
息を飲むリリの悲鳴が上がり、クリトリスが露出した。
小さいながらも精一杯勃起しているのだろう肉の幼芽は、真珠の如く艶めいている。
礼慈は見とれ、リリもまたそれに感動しているようだった。
「お兄さまは、わたしよりもわたしの体のことを知ってますね」
「違うな」
礼慈は言下に否定して、リリに言い聞かせるように告げた。
「俺が知ってるのはこれまでリリと一緒に知っていったことだけだ」
「わたしは、じゃあ前もクリトリスを見たことがあって、でもきおくを無くしちゃってるんですか?」
「それはどうだろうな? ここまで間近で見るのはきっと初めてだ」
「じゃあ、よく見ておきます。わすれないように……あいえき、ぼっき、クリトリス……」
教えた言葉を繰り返す間にもリリの顔に彼女の愛液が伝っていく。
クリトリスを周囲の肉ごと挟む指にも愛液が伝って彼女の香りを付けていく。
知らず彼女の性器に顔を近づけて、危うさすら感じる奇跡のような造形を目に焼き付け香りを堪能しながら、礼慈は本格的に動き出した。
「リリ、じゃあ気持ちよくなろうか」
「――は、はい――――んぃっ?!」
開始の合図を送ることができたのはリリへの保護欲のおかげだろう。
次から次へと湧いてきて枯れることが無い、リリのあらゆるものを独占したいという強烈な欲求の只中にあって、そう言える自分に礼慈は安堵を得ながらリリの無垢な陰唇に口づけていた。
「――ッ、――あっ、ああ!」
リリが閉じられない脚の代わりに腰を捻って刺激の波を受け流そうとするのさえも体で押さえつけながら、礼慈はリリの秘裂からあふれる愛液の源泉に口付けて音を立てて啜った。
「や、――ん! こんな、音ぉ! おにいさまぁ! はずかし――そこ、赤ちゃんのあなじゃな――っ!」
とろっとした舌触りのそれは彼女の香りを煮詰めたような、果実のような芳香を伴ってキスで唾液を吸われた口内を潤していく。
溜まったそれを嚥下するたびに、身体が熱くなるのはアルコールならぬリリの魔力ゆえだろか。彼女から離れていた間に欠乏してしまった栄養素を取り入れるように、秘裂に隠された穴を残らず舐って、湧き出る液体を陰唇上で混ぜて吸い上げていく。
「あ、あ、あ、あ、あ! わたし、ぼっきしてないとこっ、かんじて、るぅ! だ、め! あ、まって!」
彼女の言葉通り、感じ過ぎているのか、尿道からもちょろ、と液体が吹き出してきている。
上から無理に口をつけている礼慈では吸い上げられなかった液体をかぶるリリは、この格好ゆえにやはり恥ずかしさが抜けきらないのか、なんとか礼慈に一度待ってもらおうと、喘ぎながら訴えている。
もちろんそれに従うつもりはなかった。
おそらく潮だろう尿道からの液体も含みで吸いながら、まだ手を付けていなかった剥き出しのクリトリスに愛液でコーティングした指先を直接触れさせた。
「――――ッ?!」
リリの体が礼慈の下で張り詰めて、浅く膣に潜り込ませていた舌が絞められる。
閉じ合わされる膣道をこじるように味わいながら、クリトリスに本格的な愛撫を始めた。
勃起しているとはいってもリリのそこは本人同様に控えめな珠だ。傷付けてしまわないように気を付けながら両指先で挟んで捏ねる。
「――――んんんっ! あ! これ! あ゛ッ!」
リリの反応は顕著で、押さえつけている体もビクビクと動いて量を増した愛液をこぼれさせた。
クリトリスと膣から来る快感に翻弄されて羞恥を押し流されたのか、リリは音を外した嬌声を盛大に上げて喘ぎまじりに訴えた。
「――ア、あ、また……ッ! なにカ、きちゃう! ビくっていうの……ぉ、きちゃ――ッ!」
ぢゅぅぅ、と陰唇を吸い上げてから口を離した礼慈は、舌でもクリトリスを責めながら、リリに迫る感覚をどう表現すればいいのか聞かせた。
「リリ、それは、イくって言うんだ」
「いく? っぁあ……っい、イく……?!」
「そうだ。そのまま、気持ち良いのが高まってイっちゃうのを我慢しないで、イっちゃえ」
「――ん、ッは、あ! イきそう……イっちゃいます……ぅ、んん! お兄さ、まぁ……!」
「イけ……リリっ!」
切羽詰まっていくリリに引っ張られるように礼慈も興奮しながら、舌と指先の動きを早めていく。
性的な絶頂をどう表現すればいいのかを今一度教え込まれたリリは、吹き出す体液で顔面を艶めかせながら獣のように、されどひどくコケティッシュに響く叫びを鳴いた。
「イく、イくぅ! イっちゃ――――ッ!!」
リリの全身が震え、愛液が勢いを強めて噴いた。
ビクビク震える下半身を抱きしめながら、礼慈はリリの絶頂が収まるまでゆるゆると舌でのクリトリスへの刺激を続けた。
●
クリトリスへの刺激を止めなかったためか、長めの絶頂をしたリリは荒れた息をつきながら礼慈を涙を溜めた目で見た。
「お、おにいさまぁ……」
「ん。かわいいイキっぷりだった」
そう言ってリリの脚を解放してやる。だらりと脚を伸ばす彼女はしばらく休憩を挟みたい所だろう。白磁のような腹に浮いた汗を指先で拭ってその味を確かめながら礼慈はそんな気遣いを思うが、彼の方はリリの絶頂を間近で見た昂りが収まらないでいた。
くて、と即席ベッドに横たわった体からは濃密な少女の香りが香っていて、気遣おうとする心を猛烈に誘惑してくる。
「わたし、エッチでしたか……?」
弛緩した笑みで言われる言葉に、礼慈はただ頷いた。
言葉は出てこなかった。出せばそれはリリを犯したいという類の言葉にしかならないと分かっていた。今この瞬間は、年上の男として待つ、という格好付けが正解だろうと礼慈は判断したのだ。だが、
「じゃあ、お兄さまも、エッチ、しましょう……?」
「ああ――」
幼い淫魔の一言は、男のつまらない気遣いを無邪気に蕩かせた。
思考が介在する余地が無いままに頷いて、礼慈は腰を突き出す。
リリの痴態に興奮しきった陰茎は滴る先走りを、興奮で赤みが差している少女の太ももに垂らした。
背中は既に礼慈の先走りが擦り付けられている。このまま先走りを塗りたくってこの少女を汚すことを妄想してしまうが、そんな悠長なことできるほど礼慈には我慢がききそうもなかった。
「リリ、イったばかりで辛いかもしれないけど、リリのエッチな穴に俺のエッチなモノを挿れたい。いいか?」
ある意味少女への礼慈の雄としての敗北宣言のようなそれに、リリはそれはもう心から嬉しそうに答えた。
「――は、はい! ください! お兄さまのおちんちん。わたしの赤ちゃんのあなにください!」
返事が返り切る前に礼慈は亀頭の先端をリリの膣口に押し当てていた。
粘液同士が接触する音が淫靡に響き、興奮して高まった体温が混ざり合う感覚が体の末端から全身へと広がっていく。
礼慈は最後の理性を溶かしながらリリに言う。
「ここには処女膜っていう、リリが――そう、リリが俺だけに精を注がせてくれるっていう証があるんだ。俺には無いから心の底から理解することはできないが……これを破る時、痛いらしい。それでも、俺はリリの中に挿れたい。リリの一番深い所でイきたい。孕ませたい。犯したい……いいか?」
この欲望を丸出しにした、これ以上ない程に無様で愛情に満ちた懇請に、リリの返答は簡潔で揺るがず、同等以上の愛と淫らさで包み込むものだった。
「はい。お兄さまになら、どうされたってわたしはうれしいですし、わたしだってお兄さまを気持ちよくしたいです」
歯の根が合わなくなるほど必死に欲望を行動に移すのを抑え込んでいた礼慈は、その言葉で解き放たれた。
陰茎を手で支え、解して尚狭い肉洞に自身を突き込む。
ぬかるみに湿した肉棒が押し入るグチュゥ、という音が秘密基地内に響く。
既に限界を越えて我慢を重ねていた礼慈にはリリの体内に入った瞬間から、もうゆっくり、とか優しく、とかいった気遣いは不可能なものになっていた。
「――――ッ!」
もはや彼の中には、距離を置いていたこの数日の間に抑えて溜め込んでいた欲望の滾りを、心から愛する幼い少女の胎の中に受け容れてもらいたいという、およそこれまでの倫理観からは乖離した純粋な欲と想いが溢れていた。
「――あ゛ッ?!」
リリが体内を突き進む熱と愛欲の塊に体を震わせるのと同時に、陰茎の先端がリリの処女膜を僅かの躊躇いもなく突き破った。
「――ッ!」
礼慈はとうに限界を越えて射精に入っていた。
欲望が満足感と愛おしさを伴って下半身で爆発する。
肚の奥で内蔵が収縮するのを感じ、それに押し出される形で尿道を熱い塊がせり上がってくる。
これを先に告げた通りにリリの一番奥へと届けたい。
欲に更に欲を上乗せする形で想った礼慈は、痴れた頭で瞬時に考え、反射的にリリの腰へ両手を伸ばして引き寄せていた。
精液が放たれるまでは一瞬の猶予しかない。
そんな間に自身を少女の奥深くまで突き刺そうとする所業は、傍から見れば凶悪な強姦のようにも見えた。
破瓜の血を纏ったまま陰茎は子宮口へと至り、先端を子宮頸管へと突き入れた。
絶頂して準備を整え、過去に幾度かその奥まで礼慈を受け入れ、おそらくその時の経験は記憶を喪失する彼女の中にそれでも在ってどこかで息づいているとはいっても、処女の、本来性行為ではそれ以上奥まで挿入することは無いはずのそこは、戸惑うように礼慈の乱暴な訪問を受け止め――射精のために膨れた亀頭がその口をこじ開けた。
コキュ、という、リリの体を礼慈の形に変化させる音を立てて陰茎は怒張したその全身をリリの下腹部へ収めた。
リリの一番奥が乱暴な訪問を歓迎するように柔軟に受け止め――精液が噴出する。
「――――――――ッ゛?」
「ぁああああああ゛あ゛あ゛あ゛――ッ?」
礼慈の抑えるような、リリの解き放つような、行われている行為とはそれぞれ逆の方法で二人は絶頂を謳った。
体の全てが精液を送り出すためのポンプになっているかのような錯覚を覚える程に全身の蠕動を礼慈は感じていた。
精を送り出すために体のどこかが動くたびに射精を新たに迎えるような快感が襲い、やがて絶頂に喘いでいるリリと自分以外が五感から消失していった。
「――ッ――……っ……っ」
二人だけになった世界でようやく射精が終わり、満足にできなかった呼吸を再開すると共に、世界が礼慈の中に戻ってきた。
リリの腰を掴んでいた手は力強く握り締められていて、手を離すと細い腰には礼慈の手の跡がくっきりと残っていた。
「り、リリ……」
「――ぁ、っか、は……ぁ、お兄さまぁ……おなか、ぽかぽかです」
そう言って涙をこぼすリリは幸いにして苦痛を感じているようではない。
精液のおかげで破瓜や、子宮奥まで抉る苦痛は全て快楽に変わっているのはこれまでの経験で知っていたが、もしかしたら体表の方も精の補給によって痛みを感じなくなっているのかもしれない。
「射精した。男がイった時に出る精液を、赤ちゃんの元をリリの中に出したんだ。どうだ? 苦しかったりはしないか?」
「ぽかぽかして、気持ちよくて、わたし、ずっとこうでもいいです」
夢心地のリリに思わず笑み返す礼慈は、彼女の幼く淫らな表情に触発されたように、既に次の性欲が溜まっていた。
数日分、溜めに溜めた性欲。射精の勢いは禁欲した後にふさわしい勢いだったし、体感した絶頂感は他の全てを忘れ去るようなものだった。だが、それでも一度で満足するものではなかった。
リリの中に次の精液を吐き出したくて腰が疼いている。
礼慈はリリの腰にもう一度手をかけた。
「リリ。激しく動いてもいいか?」
「んっ、レイジお兄さまがすきなようにしてください。でもわたし、おちんちん、すごく気持ちいいから、どうされてもきっとまたイっちゃいます。あの、ヘンになっちゃったら、ごめんなさ――――んんぅ……っ!」
「もっと変になってくれていい。リリのそんな、これまでと違うような可愛らしさも見たい」
「おに――んんぅっ!」
礼慈は陰茎を膣口にカリが引っかかるまで引き抜いた。
「――――リリの変な所見せて」
竿にまとわりついた赤の色に愛おしさを感じながら、また奥まで突き入れる。
パチュ、という音がして、体液が二人の接合部で飛沫く。
「――――んぁッ!」
悲鳴を上げるリリの様子を確かめながら、肉洞を肉棒で何度も往復する。
「ん、あ、……っ、あ! ん――――見せます、みせて、いっぱいかわいがってもらいます……ん、から……ぁ」
自分の中で礼慈が動くたびに喘ぎ声をあげながら、リリはふるふると震える手で自身の臍下を撫でた。
そこは礼慈が奥を叩くたびにぽこっと膨らんでおり、
「ここ――ん、ここに、お兄さま……っ、入って、わたしの赤ちゃんのできるところ……っ、あ、っ――おしてるの、わかります」
腹越しにリリの手が陰茎を撫でた。
射精の後で敏感になっているためか、リリの中にありながら、リリの手で直接愛撫を受けるような鋭い刺激が襲う。
快楽が凄まじい速さで積み上がっていき、礼慈の抽送は呼吸をするのも難しいほど激しいものになっていった。
「ぉ――おにさ……ま、あ! ああ……っも、ヘンに、なって……あ! あう゛、! わたし、も、みたいから、ぁ――!!」
「――ッ」
滴り落ちる体液がテーブルクロスに大きな染みを作る頃、リリの悲鳴がオクターブを変えた。
「――――ア、アア゛! イっちゃう! イきます! イく! おに゛いさま! イっちゃいま――あア!」
「イけ……イっちゃうんだ……ッ!」
礼慈は片手を離し、親指でリリのクリトリスを捏ねた。
「――――――ッ゛?!」
直後、リリの腰が反った。
陰茎がリリの腹側の天井をゴリゴリと擦り、繊細な襞群が陰茎を受け止めながら複雑に責め立てる。
「――――っ! ッ?!」
「……も、すこ……しっ!」
涙と涎、鼻水をこぼしながらリリが絶頂を叫ぶ中、礼慈も歯を鳴らしながらもう片方の手を腰から引き剥がし、腹を撫でる細腕を掴んだ。
「――――ッ゛!!」
「――――ア゛!!」
腕を引っ張ってリリに体を引き寄せる。
「ヒぐ……ッ!」
乱暴な扱いに、しかしリリの顔は喜悦に輝いていた。
引き寄せたリリの背にクリトリスを捏ねていた腕を回して、手を掴んだ方の手で尻を持ち上げ、そして落とす。
腰を突き上げながらリリの体を上下させると、リリが肩に唇で噛みつきながら腰をグリグリと回した。
「んぐっっううぅぅ――――!」
また絶頂に至ったリリが嬌声を上げて礼慈に全身でしがみつく。
同時にリリの胎内が礼慈を吸い上げた。
礼慈の限界が来ることを知っていたかのような完璧なタイミングでの吸い上げに、
「――――――ッ゛ァ!?」
礼慈もまた絶頂した。
「「――――――――ッ゛!!」」
リリを抱きしめ、彼女の体重で礼慈を咥え込ませたまま精液を吐き出し続ける。
子宮の奥に自分の遺伝子を打ち込んでいる満足感と喜悦に体を震わせながら陰茎が幼い子宮を暴れ狂うに任せ、そんな暴力的な種付けを赦し抱擁するように胎内は優しく礼慈に絡みついてきて、精液を一番奥で飲み続けた。
●
「――……っ…………」
一度目を上回る快楽の爆発が終わった。
ぼんやりとする頭を支えていることができず、礼慈は抱えたリリごと即席ベッドに倒れ伏した。
下になったリリの膣がキュ、と締まって射精の残滓がビュク、と吸い出されて、
「――――んぁ」
それを受け取ったリリが呻いた。
「リリ……」
気怠い頭の中、リリのことだけはしっかり認識できる。それが何故だか涙が出る程に嬉しくて、何度もリリの名を口にする。
「お兄さま……」
くしゃり、と無垢に笑むリリの顔は過度の快感に翻弄されたせいで涙と鼻水、涎と汗に加えて愛液でぐしゃぐしゃだ。
「おなかのおくまでいっぱいで、わたし、これが正しいわたしだって思えます。お兄さまがいて、わたしはわたしなんです」
「俺も、リリが居てくれて、初めて俺は俺で居られるような気がする」
これはきっと思い込みだけではないだろう。
リリとの出会いがなければ過去からの呪縛に囚われたまま、先へと進んでいく同級生たちとも距離が離れていってやがては一人になっていたことは想像に難くない。
(そうなれば前よりもっと酒が欲しくなっていたろうな)
そんな生活が行き着く先は何だったのだろう?
魔物たちが居てくれる以上はそうそう破滅することはなかったろうが、自らを大事にしない生き方には流石に魔物たちだって魅力を感じにくいだろう。
少なくとも、今こうして浸ることができている安心を得ることができるのはずっと先のことだったように思う。
(それに、幸せはこんなに可憐な姿をとってはくれなかったかもな)
その姿に当初躊躇いを覚えていた自分を思って仄かに笑う。
「? どうかされましたか?」
「いや、うん。本当に、リリのおかげで俺は救われているなと思ったんだ」
「それならわたしだって、お兄さまがいなければ今ごろわたしはあちらの世界でさびしい思いをしていました」
「やっぱり、俺たちは半人前なんだな」
「二人なら、一人前ですか?」
「そうかもな」
こうして互いの身体を重ねていることによる一体感が、そんな気持ちを強くさせる。
そういう、見た目の問題ではないだろうと思うが、体の一体感に伴って心が満ちるのもまた事実だ。
そんな状況の滑稽さが愛おしくて、礼慈は本格的に笑いだした。
淫気を含んだリリの香りを心ゆくまで取り込んで、肺が笑みに震えると同時に連動して体が震えた。
その時、粘音をたてて、体が僅かに擦れた。
「――っ」「――んぅっ」
思わず喘ぎ声が漏れて、二人は動きを止めた。
「あの……」「リリ」
次に口を開いたタイミングも一緒で、思わずお互いに顔を見合わせる。
リリの魔力がそう映ったのか、この時礼慈には彼女の深い常磐の瞳にまだ衰えない情欲の炎がちらついて見えた。
リリから見た礼慈もきっと似たような瞳をしていたことだろう。
咳払いをして、礼慈は改めて口を開く。
「リリ。もう一回リリの中でイきたい」
「わたしも、もっとお兄さまとイきたいって思ってました。わたしの赤ちゃんのあな、お兄さまのおちんちんの形にしてください、ね」
絶頂の高みから落ち着いたためか、羞恥心を取り戻した声音で、しかし大胆にリリが応える。
「――言ったな」
そのいじらしい返事で、リリの中で小休止していた礼慈の陰茎はまた張り詰めた。
「――ぁ、お兄さまの、中でぼっきしました」
そんな報告を聞きながら、礼慈はリリの髪を撫でつつ、その顔を引き寄せた。
頑是ない。と言えるその顔に滴る劣情の跡に舌を伸ばして舐め取っていく。
「あ、お兄さま。わたし、かお、ふきますから……ん」
「だめだ」
礼慈はリリが恥ずかしがる様を楽しむように、額の汗から涙の流れた跡、そして鼻に口を付けては水っぽいそれを吸ってみたりした。
唇周りを舐め取りながら、礼慈はくっつけた体をゆっくりと擦り合せる動きを行う。
互いの汗が、下半身においては和合液が二人の間の密着感を強いものにする。
互いの体を確かめて愉しむように、それでいて自分と相手の体の境界が曖昧になるのを望むような睦み合いをしつつ、礼慈はリリに囁いた。
「リリはどこもおいしいな。次はお尻の味もみてみようか?」
「――――っ」
リリが羞恥の限界を越えたような顔で礼慈の顔を引き寄せた。
唇を合わせて、間髪入れずに舌を差し込む。
そうして礼慈が吸い取った彼女の体液を回収しようというように口内を忙しく舐めまわった。
礼慈はその舌に好きにさせ、時折ついばむようにして唾液を受け取りながら、背に回した手で尻尾を扱いて羽をなぞる。
それらにピクピク反応するリリの動きが、互いの体をこすり合わせて溶かし合うような愛撫に別ベクトルの刺激を与える。
不意の刺激は穏やかな睦み合いに燃料を加え、官能は高まっていった。
「――――ッ」
舌を合わせまま、リリが軽くイった。
陰茎を包む肉洞が締められ、ブジュ、と音を立てて前の絶頂の和合液を噴く。礼慈を抱きしめている性器は襞も膣と子宮口も奥の子宮底までもが礼慈に絡みついて次をせがんだ。
礼慈はそのおねだりに抽送をもって応じた。
肥大化した陰茎が子宮から精液と愛液を絡めて膣口付近まで戻り、カリの引っかかる部分で腰を回して入り口をグリグリと内側から擦り、また奥へと戻っていく。
その度に淫液が飛沫いて胎内の熱さが皮膚に伝う。
まるで彼女の体液を引きずり出して自分のもので染め上げてしまおうとしているような感覚を得て陶然としながら、礼慈は抽送を激しくしていった。
「ん゛むぅ゛! ん、っっむ! っむ゛!」
絶頂を重ねて呼吸が苦しそうになりながらもリリは重ねた口を離そうとしない。
礼慈も呼吸が苦しくてもリリから口を離そうという気にはならず、酸欠気味になることさえ快楽として興奮を強めながらリリの最奥を欲望のままに愛した。
「ん゛! む゛ぅ! ――ん゛ん゛ん゛!」
口内に響いて直接脳を揺さぶるリリの鳴き声が質を変えた。
大きな絶頂を迎える時の、彼女の鳴き声だ。
礼慈もまた奥を突き、突き、突き、突き――――
「――――――――ッ!!」
最後に最奥を抉った時、リリの脚が離さないとばかりに絡みついてきた。奥を、リリが望んだように礼慈の先端の形に肉壁を抉ったまま、二人の中で快楽が爆ぜた。
「――――――――ッ!!」
ビクビク、という痙攣が二人を共振させ、全ての感情が互いに共有される。
精液が求められ、それを吐き出し、小さな子宮をあふれたそれがブジュ、とこぼれ、それでも精はせがまれて、射精は止まらない。
「…………っ」
「……ッ……!」
お互いが互いの体液でベトベトになりながら、それを受け入れ自分のものとする。そんな儀式のような性的絶頂を長く長く続け、ようやく二人は口を離した。
「…………お疲れ様、リリ」
「……はい、レイジお兄さま。わたし、すごく、すっごーく、しあわせです。ぜったい……きおくが消えても、このことはおぼえています。だって……わたしの体はもうお兄さまの形になってますもの」
上の口は会話のために離しても下の口は離さないとばかりに脚を絡ませたままのリリに、涙腺を刺激されてごまかすように蜂蜜色の髪の中に顔を埋めた礼慈はただ「うん」と返す。その頭をまるで慈母のように撫でながら、リリは何か真理に至ったかのようなすっきりとした口調で「わたし、分かっちゃいました」と呟いた。
「何がだ?」
「こんなに大切なことをだれにも言わずに約束して、お兄さまとすきって言い合って、あかちゃんだって作ろうとして、だれにも見せてない大事なところも見せちゃって……。ヒミツ基地って、みんなにはヒミツでいろんなことをしゃべったり、したりするところだったんですね」
その言葉に礼慈はああ、と腑に落ちるものを感じた。
自分はこの少女を秘密の穴へと誘い、彼女の運命よりも一足先に愛を育み子を成す不思議な世界を魅せたのだ。
この狭い秘密基地こそが、リリにとっての初めての不思議の国で、
(リリ……俺のアリス。――俺にとってはこの子が不思議の国なのかな)
少女の全てを我がものとした極小国の王様は、腕の中の幼い女王にもう一度口付けをした。
19/11/04 22:14更新 / コン
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