連載小説
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淫気の交歓会

 ようやく射精が収まる。
 礼慈は荒い息を吐きながら、長い射精の間中股間に押さえ付けていたリリの頭を放した。

 当のリリは股間から顔を上げようとはせずに、呼吸に合わせて跳ね回る陰茎を咥え続けている。

「リリ、リリ……っ」

 名を呼んで彼女の注意を惹くと、こちらを見上げるために頤が反らされて口蓋の辺りまで先端が引き抜かれた。

 目が合う。

 その頬には涙が伝っている。やはり喉奥まで陰茎を突っ込まれるのは苦しかったのだろう、憐れを誘うが、それ以上に無垢性を残した濡れた瞳から漂う幼艶さに礼慈は自分がまたもや奮い勃ちそうになっているのを悟った。

 跳ねた先端が口蓋を擦る感触で瞳の魅了から目覚めた礼慈は、慌て気味に陰茎を引き抜いた。

「――んぷぁ――、っ、」

 咳き込んで空嚥下を繰り返すリリに謝るように、あるいは何かしらを誤魔化すようにリリの頭を撫でて落ち着くのを待ちながら、礼慈はあの小説のその後の展開はどういうものだったか思い出していた。

 物語では口淫の後、いきなりのことに戸惑っている男への説明と休憩のために、女の方が体を触るように誘いながら男へと事情の説明をしていたのだ。

 これはある意味、先にキスをしながらやってしまったことでもある。

(順番を逆にしてしまっていたのか……)

 ではその次は何をしていただろうか。

「レイジお兄さま」

 リリが頭を撫でていた手をそっと取って頬ずりして、

「あの、続き……」

(続き……)

 あの物語では、触り合いと語り合いによって互いに想いを伝えた二人は歓喜のままに初めて心と体を交わらせた。

 その様子は同じ言語で書かれたものとは思えないほどに激しさと情熱を感じるもので、身分も俗世も忘れた二人だけの世界が凝縮されていた。

 その描写を思い出すと、既に元気を取り戻しつつあった陰茎に、更に活力が漲ってくる。

 あの本の中では活力を取り戻した男は女に先導されながら女陰への愛撫を行い、入念に体の準備をして覚悟を定めてから挿入。という構成だったのだが、礼慈とリリはその段階を先にこなしてしまっている。

 もう一度リリの女陰をいじるのは望む所ではあるが、目の前で続きを待っている少女は落ち着いた後も熱っぽい呼吸が続いているし、礼慈だってもうその気になってしまっている。
 どちらにせよ、ここまで発情してしまっている以上、リリは中で射精されなければ収まるまい。

 寒くなりつつもある。日が暮れた後の山道を通ったせいで体調を悪くしてしまってはリリの両親に顔向けもできない。
 早く、それでいて彼女が満たされるように。欲望と体面の折り合う点を熱に浮かされた頭でそう結論した礼慈は汗ばむ少女の脇に手を通した。
 軽い体を持ち上げて膝の上に乗せる。

「ぁ……つい」

 スカートの中の太腿に向き出しの陰茎が触れる。もぞもぞと膝の上で脚を動かして陰茎へ刺激を与えてくるリリの背に手を回し、その体を引き寄せた。

 頭に手を置いて、それから髪の流れに沿ってうなじに手を潜り込ませ、頚椎の位置を確認すると、もう一度リリの背を辿って下に降りていく。

 熱を帯びたリリの表情が心地よさそうに変化するのを見ながら、腰にある羽の間に至る。手が通りやすいように羽が畳まれるのが分かり、その気遣いを褒めるように羽の皮膜に指を突っ込んで撫でてやる。

「――ッ」

 快楽の波が強くなったのか、リリはこらえるように口元を引き結んだ。
 その口を舐めたい。と本能で思った礼慈は口に吸い付いていた。

「――ッ?」

 驚きのような息が漏れるが、拒否はされない。指を下げていきながら、礼慈は彼女の唇を舐めるように接吻を交わした。

 そうする間に指は尻尾の付け根に辿り着く。
 エプロンドレスの装飾のリボンに巧く隠れているが、彼女の尻尾が出ている部分にはそれ用の穴が開いている。リリの尻尾は先端が他と比べて少し幅広のハート型になっているため、服を着るために尾を穴に通すと尻尾穴からは少し肌が見えるような塩梅になる。

 その穴を探り当てて、隙間に指をねじ込んだ。

 彼女の尻尾と皮膚の境界。僅かに違う感触の境を往復していると「ふ――……ふ――……」とリリの口から震える息がこぼれた。その声音に幼い少女にあるまじき艶を感じてまた一段興奮を高めていると、礼慈を掴むリリの手の力が強くなったので指先を離した。

 口も離すと、リリは早まった呼吸を落ち着けるために息を繰り返す。そうしながら涙の滲む目でなぜやめてしまったのかと問うような視線を送ってきた。
 それに答えずにいると、リリは根負けしたように目を閉じて口先を不満であると示すかのように尖らせた。

 その口をもう一度塞ぎながら、本懐を遂げることを望む礼慈はリリの尻尾を握った。

「――」

 リリの鼻から漏れる息を吸い込んで倫理観を蕩かせていきながら礼慈は思う。

(さっきはここで軽くイッてしまっていたから……)

 今回はもっと先に進まなければならない。だから一度休んでもらったのだ。お預けで体や心の準備が冷めてしまう可能性もあるが、

(発情した魔物にはいらない心配だったな)

 これまでの経験からなんとなく予想はついていたが、やはり、リリにとって尻尾は敏感な性感帯であるようだ。
 一時は落ち着いていた呼吸が尻尾を握り込んでいるだけですぐに荒くなっていく。もっと、と求めるように絡んでこようとする尾を手の返しでかわした礼慈は、より下へと手を滑らしていき、尾の付け根のすぐ下に割れ目を捉えた。

 前の割れ目とは違い、スカート越しにもわかりやすいそれはお尻の割れ目だ。合わさった口の間で動いていたリリの舌が止まる。
 これからどうするのか、という期待と焦れる心による停止だ。礼慈はそんな少女に対して舌を舐め上げることでスタートの合図として、指に力を込めた。

 布地に指が食い込み、少女の小ぶりな尻肉の合わせに沿って指で跡が刻まれていく。
 浮き彫りになっているであろう割れ目の形を見ることができないのを残念に思いながら、丸みが頂点を迎えた所で礼慈は動きを変えた。

 いきなり指を尻の割れ目から離して、できる限りスカートの下端を手でわし掴みにしたのだ。

「――?」

 リリから戸惑いの息がこぼれる頃には礼慈はスカートをまくり上げていた。

「あ――?」

 既にそれ以上の行為をしてはいるのだが、それとこれとは違うのか、びっくりした様子でリリは口を離した。

 突然まくられたスカートを反射的に抑えようと手を後ろに回す。
 と、重心が後ろに偏って、リリが膝から落ちそうになった。

「あ――」
「――ッ」

 礼慈は空いていた方の手でリリを引き寄せ直した。
 陰茎が先程までよりも強く腿と擦れて残滓混じりの先走りが少女の肌に広く塗りたくられるのを感じる。
 リリを汚しているという背徳的な満足感を得ると共にスカートがふわり、と落ち、内部の香りが洞窟に溶けた。

 礼慈はスカートの中へと、めくり上げた方の手を滑り込ませた。
 しっとりと汗ばんだ腿肉の感触を得ながら、尻の方へと手を這わせる。掌がショーツに触れた途端。

 グチュ、という多分に水分を含んだ音がして、礼慈は動きを止めた。
 思わず視線をリリの顔に移すと、彼女は礼慈の胸に顔を埋めた。

 股間にぺったりと貼りついているショーツを揉み込んでみると、グチュグチュと湿っているというよりも液体に浸っていたというような音がした。
 手を離してみると、リリの体液が掌にべったりと滲み出している。

 表情を見せないリリのぴょこんと伸びた耳が赤いのは欲情故だろうか。それとも羞恥故だろうか。

 そんなことを思っていると、リリが仕返しのように礼慈の陰茎に積極的に腿を押し付けてきた。
 ニチニチという音が新たに洞窟内に混ざる。

 それに合わせて礼慈も手の動きを早めようと思っていると、胸元から見上げてくる常磐の瞳と目が合った。

 焦点の怪しい瞳は昂ぶりを訴えかけるようで、事実、胸を温もらせる吐息の重なりは絶頂に向かって着実に昇り詰めつつあることを如実に表していた。

 彼女には礼慈程余裕もないのだろう。すまない、という気持ちを込めて彼女の背を軽く叩いてやる。

 もう体の準備は出来上がっているのだ。これ以上はお互いにとって焦らし合いにしかならない。手早く、と自分も考えていたではないか。リリの反応が可愛すぎてついいじめてしまいたい誘惑に負けてしまうとは情けない。

 そんなことを思いながら、潜り込ませた手でリリのショーツに手をかけた。
 強く握れば愛液がぼたぼたと絞れそうなショーツを引き下ろしにかかると、リリがこすり付けていた脚を止めて腰を浮かせ、脱がせやすいようにサポートしてくれる。

 膝裏までショーツを下げると、リリはまたぺたんと膝に降りてきた。
 股間部分が直接礼慈のズボンに触れる。
 布が一枚なくなっただけだというのにあった時とは明らかに違う湿気を感じていると、リリが抱きついてきた。

 体を密着させるそれは、礼慈の陰茎を二人の腹で挟むようなもので、礼慈にも言うほどの余裕などないのだと思い出させるのに充分な刺激だった。
 そう自覚した途端に礼慈は一刻も早くリリの中に入りたくなった。

「リ……リリ、続きを、するからな」

 リリへの挿入は、アリスという種族の特性上破瓜を伴うことになる。破瓜のシーンそのものについては物語の中にも描写があった。“続き”を行えばそういった痛みが自分に訪れることはリリも今はまだ知っているはずだ。それでも少女は待ちわびたものが与えられることへの歓喜をたたえたとろける笑みで頷いた。

「はい……。大好きですお兄さま」

 礼慈の中で引き金が引かれた。
 抱きついてくれているリリから一度手を離して両手で彼女の尻と太腿の境を掴んで持ち上げると腹の間に挟まっていたモノがスカートの中で跳ねて上を指した。

 後はその位置に向けて彼女の腰を落とすだけだ。秘蜜の垂れる穴がどこにあるのかは、たとえスカートに覆われて見えなくても礼慈の中でありありと再現できる。
 位置を合わせると、リリから滴る蜜が陰茎に降り注ぐ感触が来る。否応なく興奮が高まり、

「――――」

 礼慈は一思いにリリを串刺しにした。

   ●

 ミチュ、という粘液同士が触れ合う音がして、礼慈の陰茎は熱い幼洞の中へと侵入を果たした。
 潤ってなおキツい入り口を圧し拡いてその身を埋める。次の瞬間には亀頭は処女膜に触れていた。

 もう感触だけでソレだと解る礼慈は、ためらいなくリリの膜を三度破り抜く。
 ブヂッ、という音が陰茎を伝わってくる。それに対して悦の感情を抱き始めている自分をどこか遠くに感じながら、礼慈は突き進んだ。
 竿の半分が埋まる辺りでリリの体が行き止まりであると告げる。

 同時に破瓜に伴うリリの鳴き声が上がって膣内がキュウっと絞まった。
 埋まった陰茎が半分程であろうとも、一度出していたとしても、与えられる刺激はまた高められつつあった礼慈では耐えられるはずもない。陰茎から大量の精が駆け昇ってくるのを感じながら、一見行き止まりであるリリの膣内の更にその奥に進むため、礼慈は強くリリの尻を引き寄せて腰を突き上げた。

 子宮口をノックしていた鈴口から白濁した先走りとも精液の嚆矢ともいえるものを放ちながらコキ、という音と共にリリの胎の奥深くへと陰茎は突き刺さった。

「――ッ゛」
「ひ――ぁぁあ!」

 陰茎が全て埋まり、体液まみれの陰部が飛沫を上げながら打ち合わされた瞬間。リリの子宮底が突き上げられた。
 間髪入れずに子宮へと直接精液が注がれていく。

「――ん"ッ……っく……ッ」
「――っあ、い、あつ――ッ!」


 自分の熱を渡しているかのようにリリの中が熱を帯びていく。体全体の温度が上がってきているようで、少しひんやりしていたお尻がほわって温かくなり、甘い少女の香りが強く香ってくる。

「――ッ」

 射精の脈動の合間に短く息を吸い、次の吐精の間は息もつけずに目を見開いてリリの胎に精を注ぎ込むことに意識を集中させる。
 そうでもしなければ自分という存在がリリの中に溶けてしまいそうだった。

「――ッ、お、にいさ……ま」

 礼慈の首に額を擦り付けるリリが縋るように礼慈を呼ぶ。
 尻から手を離した礼慈は、背と頭に手を回してさすってやりながら、三度目の吐精の脈動で無意識にリリの子宮底を擦った。

「――んぃ!」

 内蔵を撫で上げる行為に、リリは胸を仰け反らせた。
 重心が後ろに傾きかけるのを、突き刺したモノと両腕で保持し、後頭部へと回していた手を強めに引き寄せて、天井を向いて鳴き声を上げていた顔を正面に戻してやる。

 リリは礼慈を見ているのか見ていないのか怪しいとろけた表情で半開きの口から声になっていない音をこぼしていた。そこからはただ快の気配が感じられるだけで、どうやら破瓜に伴う痛みや苦しみの類はないようだった。

 処女を散らした直後にリリの膣が絞まって強烈に射精を促そうとするのは、痛みを打ち消す意味があるのかもしれない。

 手癖のように頭を撫で、多少穏やかになってきた脈動をリリの中に注ぎ込んでいると、夢を見ているようだったリリの表情が不意に歪んだ。

「あ……ふ。あ、ゃ……っ」

 口を小刻みに動かしながら全身を礼慈に押し付けるリリの様子は愛らしいというのに、僅かな身じろぎごとに淫靡な水音が混ざるのがたまらなく背徳的だ。

 リリは他のどの部分よりも積極的に彼女の香りを濃厚にたたえた下腹部を押し付けてきていた。
 腰がひねられるたびにグチュグチュと粘液が混ざり合う音が聞こえる。
 傍から見たら小さい子がグズって全身で不満を訴えているようにも見えてしまうだろうその動作が、漏れる水音だけで倒錯的なモノに成り変わっている。

「れ、レイジお兄さま……わたし、ま、また……あ、……ぅ……ッ」

 切羽詰まったように言うと、腰を押し付けた状態でリリは動きを止めた。そのまま数秒体を固めていたかと思うと、ねじるようにして腰の運動と水音がまた始まる。

「あ……や、とまらない……ッ、あ、あ、あ……っ!」

 子宮底に礼慈の先端を受け止めたまま体を掘らせるような動きを続けていると、落ち着いてきた射精の勢いに合わせて緩やかになりつつあった中の締まりが急に強くなった。

「――ッ!」

 締め上げ搾るような体内の動きに、しかし一昨日のように圧し潰されてしまいそうな恐怖を感じることはなかった。
 竿が固定され、亀頭がリリの胎の奥でグリグリと強烈に刺激される。それはただ礼慈に快楽を促すもので、

「や、あ、あ、あ……ッ」

 リリの鳴き声が高音になっていき、中の締まり具合がぎゅうぎゅうにしがみつくものからヒクヒクと微細な動きを伴うものになる。
 そして、

「あ――――」

 どこか気の抜けた声と共にリリの全身が硬く緊張して力がこもった。
 力んだ体が固まったのは一瞬で、すぐさま体の制御を失ったかのような脱力と緊張の波が来る。

「――ッ! あ、あああ!」

 吐精を続ける礼慈のモノを子宮の奥に咥えこんだまま、リリが絶頂する。彼女の体は痙攣を繰り返して更に礼慈を責めたてた。

 リリが絶頂しているということは、礼慈に精液をせがんでいるということでもある。健気に礼慈を気持ちよくしてくれる彼女によって、鎮まりかけていた射精欲は収まりきる前にもう一度高みへと引き上げられた。

 射精の最中にもう一度射精にまで引き上げられる。

 人生で初めて感じることになる快楽の連鎖の気配に備えて、礼慈はリリの体に強く両腕を絡めた。脚も曲げて小さな体を抱え込み、絶頂の吠声を上げているリリの口も塞いで、彼女の声を呑む。

 頭蓋にリリの鳴き声を響かせ、香りと味を受け取って彼女のことを五感で感じながら、それと対となる自分の在り処を確実にする。
 曲げられた脚に引き寄せられて下半身はより強く密着しながら、更にリリの方からも腰が押し付けられてくる。

 子宮底を抉るようにしながら陰茎全体に強烈な快感を与えられた礼慈は、先端を彼女の中に押し付けたまま、また精液をぶちまけた。

 今日三度目の射精がリリの子宮に注がれる。

「―――――ッ!!」

 二人の快楽が爆発した叫びが合わされた口から漏れて洞窟内に反響する。
 礼慈が抱きしめ固め、精液を塗り込めている小さな体は軋むような激しい痙攣に震えている。

 一瞬の弛緩に続く緊張の締め付けが礼慈の陰嚢から精液を搾っていき、そんなリリの求めに対して出し惜しみなく精液が放出されていく。
 互いの絶頂の痙攣の動きが緊張と弛緩が繰り返されるたびに合っていく。

 そして幾度目かの脈動と共に陰茎が胎に己の形を刻みつけようとするかのようにぐりぐりと押し込まれた時、搾り上げる子宮の動きと放つ陰茎の動きが噛み合った。

「――――――」「――――――」

 まるで本当に溶け合ったかのような一体感が多幸感をもたらし、性器が今日一番の吸引と吐精をそれぞれ行う。
 あまりに気持ち良すぎて意識が朦朧としてしまう程のその絶頂は長く、長く続いた。

   ●

 常磐の瞳からまた一筋の涙が溢れる。

 悦の涙。それが伝って礼慈の頬に触れる。

 下半身を中心にして体全体を襲っていた熱い痙攣は充足感と共にようやく収まったようで、リリの中でまだ微かに震えている陰茎は、それでも最大時よりは幾分か小さくなっていた。

 いつの間にか口の中に引っ張り込んでいた小さく滋味あふれる舌を最後に一吸いした後に解放する。

「――っ」
「っは……ぁ……っ」

 快楽の頂からまだ戻ってこれないのか、虚ろな顔で喘ぎ続けるリリの涙とよだれを袖で拭いてやって、礼慈は脚をゆっくり伸ばしていった。

 脚を伸ばしきってしまえばスカートが広がっていることもあって、ちょっと距離感が近めのスキンシップをとっているようにしか見えない二人だが、その下は淫猥なことになっている。

 その証拠のように洞窟内に甘く淫らな香りが漂っている。なんて卑猥なことになっているんだろうと長く続いた快楽の爆発でぼんやりとしたままの礼慈が思っていると、リリの中が最後にもう少しとばかりに震えて、尿道に残っていた最後の精を吸い上げていった。

 敏感な亀頭を不意打ちで吸われ、礼慈は出ていく熱にぶるっと体を震わせ反射的にリリを抱き寄せた。

 子供特有なのか、それとも自分が熱を体液ごと渡したためであるのか、高い体温が身に沁みる。暖をとった礼慈がそろそろ後始末をしてリリを家に送らなければと考えられるくらいに思考力を取り戻していると、こちらも絶頂の後の放心状態から戻ってきたのか、リリが口を開いた。

「お兄さま……」
「ん?」
「これで赤ちゃんができるんですね」

 言葉に詰まる。

 リリが子供を作るということをどの程度理解できているのかが分からない。あの本ではこういう行為をすることによって子供ができるのだということは書いてあった。
 そういう意味では「そうだ」と言うこともできるのだが……。
 ただ、と礼慈は本には書いていなかったことを補足する。

「こういうことをしたからといって確実に赤ちゃんができるというわけではないよ。それに、リリにはまだ体の成長的に赤ちゃんは早いのかもしれない」

 実際、性交するたびに処女に戻るアリスという種は子供ができるのかどうか、礼慈に調べられる範囲では分からなかった。
 ネハシュに今度確認をしてみるかと思っていると、リリがちょっと残念そうに言った。

「そうなんですか……ちょっとざんねんです。
 やっぱり、早くオトナになりたいな……」

 いじらしいリリの反応に、今の言葉を否定して子供ができるまで何度でもしようと言い出してしまいそうになる。
 あれほどの快楽と充足と安心をもたらしてくれる行為なのだ。礼慈の雄の本能はしたいと訴えているし、もう一度を迫ってもリリは喜んで受け入れてくれるような予感もある。

 だが、と強く心に思ってリリを持ち上げ、彼女の中から礼慈は準備を始めようとしていた自分自身を引き抜いた。

 熱い胎の中から抜けたことで大げさなくらいの寒さと喪失感が襲ってくる。それを押し殺してリリを下ろした礼慈は思ったよりも感じる疲労に一息ついた。
 射精の連続は流石に礼慈の若い体も疲れてしまったらしい。

 もう少しだけ、と思いリリで暖を取りながら、礼慈は言う。

「体の成長があったとしても、赤ちゃんを作るっていうのはまだちょっと早いかな」

 何回も犯しておいて今更だが、と思いつつ礼慈は言う。

「赤ちゃんができたらその子と、そして俺とも、今の家族よりも思い繋がりをもった関係になる。リリが暮らす場所もネハシュさんやラザロスさんの所から自分が作る家族が居る場所が主になっていくと思う」

 あのネハシュと比べれば礼慈など頼りないものだろう。自分自身が大変な状態にあるリリからしてみれば、その上に赤ん坊を抱えるということは相当な負担を得ることになる。

「だから、まずは今のリリがネハシュさんやラザロスさん。それにお姉さんたちの支えなしでやっていけるようになって、それから赤ちゃんのことは考えたらいい」

 酒の時と同じだ。焦って一足飛びに大人を目指さなくてもいい。
 リリの未成熟な体が子を宿せるのかも、処女を取り戻すアリスという種族が子を孕むことができるのかも分からないが、魔物であるのならどちらにせよ子を孕める確率は低いのだろう。

 時間は少女に大人であることを迫ってはいない。
 自分もリリに成長を迫ることがないようにしなければならないと思う。

(となると、秘密基地に来るのはやめておいたほうがいいか……)

 リリには好評のようだが、ここに訪れるたびに彼女と性交する流れになっている。魔物の体は丈夫ではあるが、あの小さな体の、人では到達しえない部分を何度も突くのは未熟な体に負担をかけすぎるのではないかと心の中に残っている罪悪感
が訴えるのだ。

「とにかく、ゆっくりいこう」

 そう言う自分の中に残念と思う心があるのは、せっかく掃除したこの秘密基地にまた埃を積もらせることになってしまうからだと考えることにした。
 リリは少しの間、礼慈の言葉について考えるような間を置いて、それから性交時とはまた違う輝きを放つ瞳で言った。

「お兄さま、わたしの赤ちゃんのお父さまになってくれるんですね」

 今の話を、礼慈は自分が相手だったらという前提で話していた。そのとおりに受け取れば、当然礼慈がリリの子供の父親になるということだが、

(これは……)

 頷いていいことなのか、ためらいが出る。
 だが、否定しようという気はまったく起きなかった。
 つまり、それこそが礼慈の答えということだろう。

 そうなったら良いと思う自分をただただ静かに認めていると、リリがほっと息をついて礼慈の胸に額を押し付けた。

「お兄さま……わがままを言ってもいいですか?」
「なんだ?」

 訊ねると、リリはたっぷりと深呼吸をして、

「まだコドモでいても……お兄さまをひとりじめしてもいいですか?」
「他に俺を欲しいなんて言う奴なんていないぞ」

 リリは否定するように額を擦り付ける。

「でも、その時になったら、わたしは、わたしがしてもらったみたいに赤ちゃんをだいじにします。お母さまやお父さまのようにはできないかもしれませんけど、その時にはレイジお兄さまも助けてくださいね」
「ああ……」

 自分の体が熱く感じられるのは、リリの体温で温もったからだけではないだろう。
 リリは顔を上げ、はにかんだ笑みで言う。

「わたし……あのご本の二人より、しあわせです」

19/04/30 01:33更新 / コン
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■作者メッセージ
早熟なことに子供のことまで考えたりしつつ、まだ自分達が子供で居たりとか、そんな塩梅。

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