小高い丘を登っていると、草むらから野ウサギが顔をのぞかせていた。狩猟は嫌いではないが、このような場で銃を撃つほど無粋ではないつもりだし、そもそも拳銃では当たらないだろう。私と目が合うと、ウサギは坂道を駆け上がって行った。
　風が吹き、草や野花が揺れる。足下では蜂が桃色の花に頭を潜り込ませ、蜜を吸っては次の花へと飛んで行った。こいつらも見ている分には可愛らしい生き物だ。生命が陽光に照らされ、大地では長閑に時間が流れている。

「いい所ですね」
「うん」

　隣を歩くレミィナは朗らかに応えた。白い尻尾が私の腕に巻き付き、鏃型の先端が楽しそうに揺れている。彼女が二日酔いから復活し、ある程度機嫌を直してくれたようなので、昨日の約束通り出かけることとなった。時計師の老人が眠るこの丘へ……。

「姫、今更ですが……」
「言わないで」

　姫君は柔らかな微笑を浮かべ、私の手を握る。真っ白な手から温もりが伝わってきた。酔い覚ましを口移しで飲ませるという暴挙に及んだというのに、私という奴はこの期に及んでその手を握り返すことができない。その手が離れるのが、怖くなってしまうからだ。

「ヴェルナーも辛いんだってこと、分かってたから。……でも」

　手を握る力が強くなった。

「でもね、もっとわたしに甘えて欲しかった。辛いこともわたしに言って欲しかった。貴方の心の拠り所になりたかった」

　……やはり、彼女には分かっていたのだ。私が元の世界に未練を持たない理由も、飛行機に固執する理由も。そして彼女はそんな私を、必死で癒そうとしてくれていたのだ。
　だが、私はそれが怖かった。

「ちょっと、おこがましかったかな……？」
「……ヤマアラシのジレンマ」
「え？」
「いえ、祖国の哲学者の言葉です」

　寒空の下、二匹のヤマアラシが温もりを求めて身を寄せ合おうとするが、互いの棘のせいで近づけない。あいつの毛皮は温かそうだ、あいつも寒そうだから温めてやりたい。だが近づきすぎれば、棘が刺さってしまう。誰もが『自立』と『一体感』という二つの欲求の間で苦悶しているのだ。
　もっとも我々の場合、棘に覆われていたのは私だけだった。

　緩やかな坂道を上り、ようやく目的地が見えてきた。灰色の墓石の羅列。このような清々しい空気の中で墓地を訪れるのは初めてだ。死体が残るかさえ怪しい仕事に就いてからは、特に。
　レミィナは私を、それらの墓の一つへと導いた。白い墓石は厳かな雰囲気の造りで、奇麗に磨かれているところを見るにクラウゼ氏が丁寧に管理しているのだろう。

「……本当に、いい所だ」
「うん。私も死んだら、ここに眠りたいかな」

　彼女の言葉に、私の心臓が跳ねた。

「……姫は少なくとも数千年は生きられるという。人間の寿命からすれば無限にも近い。それでもやはり、自分の死について考えることがあるのですか？」
「いつも考えてるよ。この人の最期を看取ったときから」

　レミィナはゆっくりと、墓石の前にひざまずく。普段の彼女には見られない儚げな、触れたら壊れそうな佇まいだ。これもまた男を魅了する力の一端なのか、魔性の美貌はこのような姿さえとれるとは。

「わたしにあの時計を託して、お茶を飲んで……すごく安らかな顔で。あの日から、私もいつか死ぬかもしれないって思うようになった」
「怖くありませんでしたか？」
「怖いよ。でもね、おじいさんが教えてくれたの。大切なのはそれまでの時間を、どう使うかだって」

　彼女の口元が僅かに緩んだ。懐かしそうな微笑み。赤い瞳が、空で眺める夕焼けの色に見えた。

「あの人が時計を作って、クラウゼさんにいろいろ教えて。楽しい時間も辛い時間も味わい尽くして、それが全部あの安らかな死顔と繋がっていたのよ。八十年自分の道を追い続け……時間を悔いなく使い切ったのね」
「……姫はその老人と、私を重ねていた」

　私の言葉に、レミィナはくすりと笑う。

「うん……ヴェルナーにはあの人の面影がある。でもね」

　尾を地面に垂らしたまま、彼女はゆっくりと立ち上がった。白い髪がさらりと揺れ、そよぐ風に波打つ。闇より生まれた悪魔であるにも関わらず、黒い衣と白い肌は陽光によく映えていた。レミィナはくるりと私の方を振り向いたかと思うと、赤い瞳でじっと見つめてくる。熱と、魅力と、狂気を秘めた魔性の赤。しかし目を逸らしてはならない、逃げてはならない。今から彼女が言う言葉からも、だ。

「今、わたしが愛している男の人は……貴方よ、ヴェルナー」

　……今のレミィナの表情は、どう表現すべきだろうか。真剣な眼差しで見据えてきているようにも、優しく微笑み答えを待っているかのようにも見える。そんな彼女の口から発せられた言葉は鐘の音のように、私の脳内へ響き渡った。
　ただ一つ確かなことがある。私は彼女から、むしろ自分から逃げてはならないということだ。彼女の想いに対して、自分の答えを吐き出さなくてはならない。そう、私は……

「私も貴女を、レミィナ姫を愛しています」

　彼女を泣かせてしまってからようやく気づいた、自分の本心。彼女の魔性の美貌、自由奔放な生き方、優しい微笑み。その全てをすでに愛してしまっていた。

「貴女から目を逸らしていたのは、貴女が怖かったからではない」
「……怖かったのは？」
「別れです」

　過去に想いを馳せる。敵も味方も、いくつもの死をシュトルヒに乗って眺めてきた。不時着した味方を助けたことは何度もあるが、彼らが生き残れたかどうかは定かでない。
　航空兵にとって、空での戦死は名誉……むしろそう考えねばやっていけなかった。夜には今日死んだ戦友のため、生き残ったものたちで乾杯。一緒に飲んだ奴が次の日には死に、そいつのために乾杯。櫛の歯が欠けるように戦友が死んでいくのは日常だったし、自分がそうなる日が来ることも覚悟していた。無論死ぬ気はなかったが、どれだけ生還の信念を持とうと死ぬときは死んでしまう。そしてそれは全て自分の責任、それが航空兵だ。

　だが私は生き延びた。撃墜されて地を這うはめになろうと、どれだけ多くの友を失おうと、ひたすら生き抜いてきた。あるいは死に損なっただけか。
　そしてその先に待っていたのは……更なる別離だった。

「シュトルヒの倍以上ある巨大な飛行機に、爆弾を満載したとします」

　私はトーラガルドの町を振り返った。丘の上から見下ろしてみると、古い町並みが青空によく映えている。争いも差別もない、本当の平和がある町だ。だがそんな平和も、あっけなく崩れる。

「それが何百という数で飛来し、この町の上に爆弾を落としたら……どうなります？」
「……やっぱり、そういう世界なんだ」

　私の後ろで、レミィナは静かな感想を述べた。彼女も旅の中で、いろいろと嫌なものも見てきたのだろう。私は軍用機の用途について詳しく語ったことはないが、大体予想できていたのかもしれない。

「人間同士で……そこまでやるのね」
「多くの戦友を亡くし、祖国に帰ったかと思えば家族も喪いました。尽く、ね」

　親父が事故で死んだ後、母と妹を守っていた長兄は空爆の後も遺体が見つからなかった。使用人の少女は妹の隣で死んでいた。次兄は戦車の中で、すぐ上の兄は海の底で……。
　私はひたすら飛行機乗りとしての誇りにしがみつき、正気を保っていた。飛ぶことだけが心の支えだった。

「この世界に来て、姫に会い……確かに惹かれていました。しかし貴女に近づいて、また喪ったら……」

　レミィナ……奔放で美しく、優しく、幻想的な魔王の娘。男を惹き付けてやまない魔性を持ちながらも、風の如く爽快に生きている不思議な悪魔。

　彼女に手を伸ばし、私の棘が彼女を刺したら。
　この世界でも大事な人を、それも彼女のような女性を喪ってしまったら。

　私の中に空く穴は、誇りだけでは埋められないだろう。

　だがもう駄目だ、レミィナという存在は私が考えていたよりもずっと、私の中で大きなものになっていた。もう目をそらすことも、逃げることもできない。

「女々しい男だと、笑っても構いませんよ」
「笑わない」

　自重気味に出した言葉を、彼女はなめらかな声で否定する。
　風に木の葉が舞うかのように、レミィナがふわりと私の前に立ち、目が合った。存在感のある赤い瞳が逃避を許さぬかのように、私を釘付けにする。

「今、ヴェルナーは這い上がろうとしているもの。途中で足を滑らせても、また登ろうとする人は素敵だと思う」

　そっと、手を握られる。傷や火傷の跡が残る私の手に、レミィナの白い掌が触れた。

「きっと這い上がれる。わたしも手伝う。百年でも千年でも、ヴェルナーを守ってあげる」
「私はそこまで生きられません」
「生きられるよ……わたしを抱けばね」
「……！」

　レミィナの赤い瞳に妖しい光が宿り、背筋がぞくりとする。だが不思議だ、私に恐怖心はなかった。むしろこれは快感……自由に空を飛んでいるときのようなスリルだ。

「わたしはヴェルナーを離さない。ヴェルナーもわたしを離さないで。ずっと一緒に歩いて、一緒に飛ぶのよ」
「……百年でも、千年でも？」
「そう！　一緒にこの世界を巡って、いろいろな物を見るの！　退屈なんて大嫌い！」

　ぱっと朗らかな笑顔を浮かべるレミィナを見て、私も思わず口元が緩んだ。
　そう、やはりこの悪魔は魅力的な女性だ。最も退屈から縁遠く、スリルを求めて生きている自由な女。
　私と共に歩み、共に飛んでくれる相手。私を置いて逝かない相手。

　だから私は彼女に……

「……姫がそう言ってくださるのなら」

　レミィナの手を握り返し、引き寄せる。彼女の魔性を秘めた体が私に触れ、そっと抱きついてきた。

「これからはずっと、姫と共に飛びましょう」

　相変わらず、このような単純な台詞しか吐けない。だがレミィナは幸せそうに微笑んでくれていた。
　彼女を強く抱きしめる。喪うことへの恐怖をかき消すために。レミィナは私の腕の中で背伸びして、肩に抱きついてきた。赤い瞳が紅玉のようだ。ぐっと顔が近づき、私も彼女の望みを察した。

「んふふっ……最初のキスだよ？　恋人の誓いだからね？」
「キスでしたら先ほど……」
「あんなロマンのかけらも無いのはノーカン！」


　……彼女の白い髪を撫で、滑らかな頬に手を添える。

　そのまま引かれ合うように顔が近づき唇が触れ合った。

　互いにゆっくりと味わいながら、私は時間が止まったかのような錯覚を感じていた。









　………





　……





　…




「で、結局こうなるのですか」
「当然でしょ」

　……町に戻った我々は、小さな宿屋を尋ねてその一室を借りた。そしてさすがの私もレミィナがそのような行動をとったときから、こうなるのだと予想はしていた。私は寝室の清潔なベッドに腰掛け、目の前にはレミィナが立っている。そして我々は二人とも裸だ。

「これはね、ヴェルナーがわたしの眷属になるための儀式。わたしたちの時間を共有するのに必要なことなの」
「とか言いつつ、ただ淫らなことをしたいだけでは」
「うん、もちろんシたいけど」

　他愛もない会話を続けながらも、私は彼女の裸体に見とれてしまっていた。普段から胸元の開けた服を着ているが、完全に露出した豊かな乳房はとても柔らかそうで、美しい丸みと桃色の乳首は芸術的なほどだった。魔王の娘に相応しい、魔性と母性を兼ね備えた美しさを放っている。
　その谷間から真っ直ぐ下へ目をやると、可愛らしいへそにたどり着く。本来性的な器官ではないにも関わらず、そのすらりとした腹部にぽつんとできたくぼみが、レミィナの肌の艶やかさを強調していた。脚もまた言うまでもなく美しい。普段のニーソックスに包まれた脚も魅力的だが、裸の男相手に惜しげも無く晒される素足というのはある種背徳的な魅力さえ持っているようだ。

　そして、その足の間……女性器。ぴったりと閉じた割れ目からはすでに液が滴り、目の前にいる獲物への貪欲さが在り在りと感じられた。角、翼、尾、尖った耳……異形の部品全てが女悪魔の貪欲さと美しさを引き立てている。普段押さえ込んでいる魅力を全てさらし、私の前に立っているのだ。

　そう、この姫君は人間ではない。これから行われるのは本来、おぞましいはずの行為。そしてそれを終えた頃には、私も純粋な人間ではなくなっている。魔物と交わる事で、人間の体は魔力に侵されるらしい。そしてレミィナほど高位の魔物ならば、一度の性交で相手を眷属にしてしまうのだという。
　だが彼女は、人間と共に生きて愛し合うように進化した生物。ならば人間も彼女たちに近づくように進化してよいのではないか。人間が増えすぎたあの世界の悲惨さに比べれば、堕落などどうという事でもない。

「ヴェルナーこそ準備万端みたいじゃない」

　レミィナの細い指先が、すでに勃起した男根をつついた。何度かされたことのある行為だが、今回は互いに全裸だという興奮からか、妙に強い快楽を感じてしまう。尚、私の裸体についての説明は不要だと思うのでしない。ただ火傷の跡や銃創が数カ所にあるくらいだ。

「姫ほどではないですよ」

　お返しに、レミィナの胸に手を伸ばした。丸みを確かめるように、柔らかな果実を潰さず肌を撫でる。

「んっ……」

　レミィナはむず痒そうに頬を赤らめた。そのまま右の乳房の上をさすって外側へ、そして少し汗ばんだ裏側に手を入れる。乳房の質量が手に伝わってきた。

「な、撫でるだけじゃなくて、もっと激しく揉んでよ……じゃないと、変な気分になっちゃう……」
「姫が変なのはいつものことでしょう」

　今の台詞は少し酷かったか。だが気にせず、谷間を経由して左の乳房へとさすっていく。
　レミィナが目をぎゅっと閉じ、くすぐったそうに身を震わせる。その様子がなんとも可愛らしい。いつも背徳的な行為を平然とやってのけた淫魔が、うぶな少女さながらに疼きに耐えているのだ。
　彼女の手が自分の股をいじりはじめ、卑猥な水音が鳴りだす。それを耳で楽しみながら、ツンとした乳首を親指の腹で愛撫する。

「あっ……♥」

　短く悩ましい声を上げたかと思うと、レミィナは突然私に飛びついてきた。ぐっと体重を乗せられ、そのまま押し倒されてしまう。我々の体がベッドに受け止められたかと思うと、彼女の乳房が私の胸の上でぐにゃりと潰れた。

「このっ、このっ」

　レミィナの柔らかい双峰が、私の胸板にこすりつけられる。柔らかな感触がひしゃげ、滑らかな肌が心地よい摩擦を生み出した。彼女の手は自慰のせいでぬめりを帯びており、それに肩を触れられ卑猥な感覚を覚える。それだけではない。密着してくる彼女の全身が、快楽を生み出す魔性の塊なのだ。

「もう……我慢できない」

　眼を潤ませてそう告げたかと思うと、彼女は体を密着させたまま男根を掴んできた。私が角の辺りを撫でてやると、レミィナは嬉しそうに微笑む。
　そして、亀頭が柔らかいものにあてがわれた。

「う……」
「ん……分かる？　わたしのアソコに、ヴェルナーのおちんちんがくっついちゃった……」
「ええ……」
「挿れちゃう、ね……♥」

　姫が僅かに腰を沈めたかと思うと、敏感な亀頭にぬめぬめとした温かい感触が絡み付いた。

「あっ……♥　ちょっと入ったぁ……」

　まだ入り口だというのに、彼女の体は私を歓迎する準備が整っていた。肉の穴がゆっくりと収縮し、密着してくる。このままでもしばらくすれば精を漏らしてしまいそうな心地よさだ。

　さらにレミィナは腰を降ろしていく。竿の中程まで入ると、膣壁自体がうねうねと脈動しはじめた。まるで独立した意思を持ち、精を吸い出そうとしているがごとく。
　そしてレミィナの表情もまた、快楽にとろけはじめていた。

「イイっ……！　おまんこ、気持ちイイよぉ……ヴェルナーの、おちんちん挿れるの、気持ちイイのぉ……♥」
「うう……姫……！」
「ヴェルナーも、き、気持ちイイんだ……？　わたしの処女まんこ、とっておいて良かったぁ……♥」

　恍惚とした笑みを浮かべながら、レミィナは涙を流していた。彼女にしてみれば待ちに待った瞬間……感極まったのだろう。
　そして私も、じわじわと蠢いて刺激してくる魔物の女性器に耐えきれず、下から腰を突き上げてしまった。

「ひゃうぅん♥」
「うっ、うあああ……な、何だこれは……!?」

　男根が根元まで彼女の蜜壷に埋まった瞬間、突然膣内の感触が変異しはじめた。ぬめる膣内に凹凸が生まれ、それがどんどん細かくみっしりとした感触になっていく。やがて肉の粒となったそれらが男根に絡み付き、マッサージするかのように蠢いてくる。特に蜜壷の奥の方は粒が多数密集しており、敏感な亀頭をしつこく刺激していた。

「あはぁっ♥　すごい、すごい気持ちイイっ、おまんこの奥で、何かコリッてしてるぅ♥」

　レミィナも快楽に堪えかねたのか、私にしがみついてきた。その腕の力が、すり寄せられる頬が、快感をいちいち増幅させる。間近で見ると頭の角が妙に可愛らしい。

「ね、わたしの中ぁ………中、どうなってる……？」
「つ、粒が一杯で……ぐああああ！」

　思わず悲鳴に近い声を上げてしまった。レミィナが腰を激しく動かしはじめたのだ。
　上半身は強く抱き合ったまま、腰だけを巧みにくねらせるレミィナ。彼女の中で男根が、ぬめりを帯びた無数の粒にくすぐられ、締め付けられる。甘い快楽が脳を麻痺させ、何も考えられなくなっていく。言葉も満足に紡げない。

　これが、人外の快楽……堕落の味。

「ああんっ！　ねぇ、気持ちイイ？　ヴェルナー、気持ちイイ……？」
「ううっ……ああっ……！」
「答えてよぅ……♥　ほら、イっちゃえ、イっちゃえっ♥」

　彼女の言葉もろくに耳に入らない。ただ脳で美しい音として処理されるだけだ。

「えいっ、えい、えいっ！」
「うっ……」

　リズミカルに腰を振られ、私はついに耐えられなくなった。睾丸からこみあげた物が強烈な快感と共に、尿道を通って迸っていく……

「う、お、おおおお！」
「あひゃぁぁぁぁぁっ♥」

　姫の嬌声を聞きながら、私は射精した。レミィナの膣は精が迸っている間も蠢き、刺激を続けてくる。絞り出すような動きも加わり、男根からは激しく精液が噴き出していった。当然伴う快楽も増幅される。もう彼女の蜜壷から引き抜きたくないと思うほどに。

「あひゃ、にゃ、ふああっ……♥」

　私にしがみついたまま、翼をばさばさと羽ばたかせて絶頂するレミィナ。赤い瞳が煌煌と輝いている。彼女を抱きしめ、蜜壷に男根を咥え込まれたまま……

　私は頭の中が真っ白になっていった。



















　……ふいにそっと頬を叩かれ、私の意識は覚醒した。目の前に見えるのは、柔らかくとろけた笑みを浮かべるレミィナの姿。
　体は別れていたが、彼女は手を握ったまま添い寝してくれていた。快楽の余韻で火照った顔がまた愛おしい。

「……すごかったね」
「ええ、本当に……」

　手を握り返しながら、私は答えた。
　なんと気の狂いそうな快楽だったことか。今まで何度も彼女に淫らな行為をされたにも関わらず、一回の挿入はとてつもないものだった。改めてレミィナが人外であると自覚すると同時に、もう彼女無しではいられないのだと確信する。だが不思議だ、彼女ならずっと私の側にいてくれると信じることができた。
　ゆっくりと角の辺りを撫でてやると、レミィナは嬉しそうに笑った。

「さ、もう一回しよっか」
「え……？」

　予期していなかった言葉に、一瞬思考が止まる。

「え、じゃないよ。わたし、昨日お預け食らったんだから。まだまだ満足してあげないもん。……ヴェルナーも、まだ物足りないでしょ？」

　そう言われ、私は男根が再び性交に望もうとしていることに気づいた。あれほどの快楽を味わったというのに、まだ硬さを保って怒張している。そしてレミィナの裸体を眺めているうちに、性欲が急激に湧き立ってきた。彼女の姿が、今まで以上に美しく、淫らに見える。

「ヴェルナーはもう、わたしの眷属なんだよ。ほら、シてよ……♥」
「……スケベ王女め」

　淫らに私を誘う姫君に、今度は私から覆い被さった。その奇麗な太腿を掴み、脚を持ち上げて股を開かせる。

「やぁっ、こんな格好……！」

　レミィナがそう叫んだのは、羞恥心ではなくプライドからだろう。何せ魔界の王女なのだ。

「姫と繋がる所を、よく見たいと思いまして」
「……ヴェルナーの方がスケベ！」

　顔を背けながらも、彼女は素直に脚を上げたばかりか、両手で女性器を開いてくれた。ピンク色の内部はいやらしくうねっており、こちらを誘っている。
　その開かれた入り口に、亀頭を触れさせる。私の男性器が彼女の女性器を押し広げていく。絶え間なく潤滑液が滴る蜜壷は、スムーズに私を受け入れていった。レミィナはそっぽを向いたまま嬉しそうに微笑む。

　そして根元まで入った時、またあの変質が始まった。奥まで挿入するとスイッチが入るのだろうか、肉粒がみっしりと現れて男根をくすぐりまわす。

「あんっ……お、奥までぇ……きたぁ♥」
「動きますよ……！」

　一度腰を引き、ずんと勢い良く突入れる。

「あああんっ！」

　レミィナが激しくよがった。さらに連続で突入れると、彼女は口元から唾液をこぼすほどに悶える。今までその性技で男を翻弄したことはあっても、男にいいようにされることはなかっただろう。腰を突入れるたびに、レミィナは艶かしい嬌声をあげて悦んだ。

「ひぃっ♥　あん、あんんっ！　ヴェルナー、激し、いっ……♥」
「コウノトリも、肉食、ですから……！」

　小生意気な悪魔の王女が、私の責めでよがっている。そのことが強力な興奮材料になった。
　こちらから一方的に突入れていても、レミィナの蜜壷はしっかりと男根に絡み付き、圧迫し、射精を促してくる。
　レミィナもまた敏感なようで、お互い高まるのは早かった。それでも絶頂に達しそうになると、腰の動きをゆるめて快感を長引かせるようにした。その間は彼女の胸を揉んで楽しむ。

「あふぅぅ……♥」

　最初の望み通り激しく揉んでやると、恍惚とした表情で身をよじらせる。レミィナの乳房は絶品だった。とろけそうに柔らかいが、強く握り込むと弾力がしっかりと押し返してくる。


　――いずれ彼女が、娘を――


　私は想像した。いつか私の精で、レミィナが孕む日がくるのだろう。そして産まれてきた娘を、彼女はこの乳房で育てるのだ。そのことを考えれると、悪魔であるにも関わらず、彼女の体もまた神聖なのだと思えてくる。

　大きくなった腹を撫で、優しく微笑むレミィナ。産まれてきた赤子に乳を吸わせるレミィナ。
　そんな未来のビジョンを思い浮かべながら、私はまた限界に達した。

「出る……！　お、おおぉ……！」
「ふあぅ、き、きたぁぁ♥　いっぱい、いっぱいぃー♥」

　二回目だというのに、むしろ彼女の眷属となった上での二回目だからか、先ほどよりも勢いよく大量に射精した。快楽も強い。私の体は完全に、レミィナという至高の果実を最も楽しめるよう作り替えられたのだ。

　果てがあるのかさえ分からぬ快感に溺れながら、私はまだ彼女と戯れる時間が終わらないことを悟っていた……。