第十一話 『次にそんなことを言ったら、怒るぞ』
据え膳食わぬは男の恥とは言うが、俺はそうホイホイ食ってしまうような男ではない。一応許婚もいたからだ。逃げられたけれども。
だが食わねばならない膳というのもある。ここで食ってしまえばもう後戻りはできなくなるだろう。しかし元より戻る場所のない俺だから、食ってしまおうという気になる。
今、ナナカは全裸で布団の上に身を横たえている。普段から露出の多い格好をしているくせに、裸になった途端顔に恥じらいの色を浮かべている。先ほど垂れ流した汁を見せつけてきた女の穴、巨大な二つの肉まんも手で隠し、潤んだ単眼で俺を見つめていた。隠しているつもりだろうが、胸の大きさからすれば無駄な抵抗だった。むしろ青い胸がひしゃげて腕からはみ出している様子が余計に淫らだ。一緒に風呂に入ったし、淫行も何度かしたというのに、いよいよ本番となるとこうなるとは。そもそもこの前までは男の前で素っ裸になっても平気だったというのに。
俺もすでに服を脱ぎ捨て、男根もすね毛も銃創も全て晒している。すでにスタンしているのは言うまでもないが、ナナカの様子に余計に興奮してしまう。こいつは食われるのを待っていた。
股間を隠すナナカの手を掴み、ゆっくりとどかす。青い割れ目が露わになったが、それはほんの一瞬。すぐにもう片方の手で隠されてしまう。
「……おい」
「……あぅ」
蚊が泣くような声で呟くナナカ。目に涙をため、ちらりちらりと俺を見る。
「ここまできて止めることはできんぞ、俺は」
「……本当に、いいの……? 私で……?」
この期に及んでそれを言うか。
頭の中で何かがぷつりと切れた俺は隠された股間の代わりに、丸出しの胸を鷲掴みにした。
「やぁ……っ」
ナナカが声をあげようと構いはしない。掌からはみ出すそれを揉み続ける。やはり柔らかい。潤んだ単眼で俺を見つめながら、ナナカは強張った体を徐々に脱力させていく。そんな彼女を抱きしめ、髪をそっと撫でた。紫がかった髪は滑らかな手触りで、良い香りがする。女の香りが。
「次にそんなことを言ったら、怒るぞ」
そう言ってやると、ナナカは大きな目を閉ざした。体を隠すのを止め、瞼と唇をきゅっと結んでいる。ようやく覚悟が決まったようだ。
それにしても、女の体というのは不思議なもんだ。こいつはいつも槌を片手にカンカンやっているのに、体がこんなに柔らかだ。もちろん女にしては筋肉もついているのだが、それも男の筋肉とは明らかに違う。体全体が適度な柔らかさと弾力を帯びて、それに加えて何か良い匂いがする。そしてこいつの場合、人外の青い肌が意外に温かい。俺の命を救ってくれた温もりだ。
こいつが今から、俺のものになる。
やり方は分かっている。もう女の穴からは汁が垂れ流されているし、十分だろう。指で押し広げてみると、穴の中は桃色だった。外側は青いのに、不思議な光景だ。より一層強く女の匂いが漂い、胸が高鳴る。
怒張したモノをその穴へ、そっとあてがう。
「あ……」
ナナカが声を漏らし、うっすらと目を開けた。瞼のわずかな隙間から、藍色の瞳が俺を見つめる。
男根の先で感じた入り口の感触はとても温かく、柔らかい。しかも吸い付くように亀頭に密着し、中へ咥えこもうとしているかのようだった。
今一度、深呼吸。
「入れるぞ」
一声かけて返事を待たず、ぐっと腰を突き出す。男根に抵抗を感じた。
「きゃ……あっ♥」
艶かしい声と共に、ナナカが熱い吐息を漏らした。俺の手を握り、瞳を潤ませて震えている。彼女の中は予想以上にきつかった。半ば入った男根がぬめりを帯びた肉に締め付けられ、うっかりすると押し戻されそうになる。だがさらに腰を進めると、根元までずぶずぶと潜っていった。
「お……こりゃ……」
青い肌が意外にも温かいのはすでに知っていたが、内側の熱さはそれ以上だった。きつく締め付けてくる膣は火傷しそうなまでに熱い。
これはナナカの本性の表れではないか、という考えがふと浮かぶ。彼女の表情からしてそうだと思った。大きな単眼から大粒の涙をぽろぽろとこぼし、膣に入ってきた異物の感触に身を震わせている。だが見開かれた目に、熱い吐息を漏らす口元に、確かに歓喜の色があったのだ。
「……ナナカ、どうだ?」
問いかけると、彼女はにこりと笑顔を浮かべる。涙を流したままで。
「気持ち……いい……♥ ジュンと、繋がれた……♥」
返事は掠れた声だった。腕を握ってくる青い手にも力が篭る。そんなナナカがたまらなく愛おしい。恋をしたことが今までなかったわけではない。だが女をここまで愛おしく思ったのは生まれて初めてだ。俺の戦争が終わったからだろうか。それとも魔物の力なのか。
理由なんてどうでもいい。俺は今、ナナカと愛し合っている。
「……締め付け、もうちょい緩めろよ」
「そ、そんなこと……言ったってぇ……」
無茶なことを言いながら、どうにか腰を引く。膣の襞が男根を捕まえて引っ張ってくるが、力づくで何とか引き抜いて行った。
「ふわああっ……♥」
「うっ!?」
嬌声と同時に、ナナカの体がびくびくと震えた。穴の中も男根を抱きしめたまま脈動する。まるで多数の小さな舌で男根を舐められているような刺激だった。うっかりするともう漏らしてしまいそうになるが、ぐっとこらえた。今度は突き入れる。
「ひゃっ♥」
ナナカの体が布団の上で跳ねた。活きの良い魚を甲板に放り出したかのように。
暴れる豊満な女体を抱きしめ、腰を前後させる。強い締め付けと、襞のうねりが男根を擦り立てる。それがたまらなく気持ちいい。話に聞いていた通り、魔物は総じてギアナイスのようだ。ナナカのようなホワイトでさえこれなのだから。生物として体の構造がそうなっているのだろう。
だがナナカより上だという魔物がいたとしても、俺にとってはこいつが最上の女だ。潤んだ単眼も、温かな青い肌も、抱きついてくる腕も、全て俺のものだ。
今度こそは。こいつだけは離さない。
「ふあっ、んっ……♥」
引き抜いては突き入れる。それを繰り返すほどにナナカはよがり、喘ぎ、涙を零す。男根が膣を擦る度に、奥を突き入れる度に、彼女は快楽の色を深めていった。
大きな単眼の瞳は吸い込まれそうなほどに深い藍色。見つめていると、何もかも忘れそうになってくる。今はこいつのことだけ考えていればいいのだ。
「ジュンっ! ……好き、好きぃ……♥」
快楽に蕩けた口調で、ナナカは訴える。俺は青い手をそっと握り、その言葉に応えた。
「ああ、俺もだ……!」
今はこいつのことだけを考えていよう。今だけは。
青い肌がじっとりと汗ばんでいるのが分かった。それがたまらなく淫らだ。肌を重ねれば汗で張り付き、ねっとりと密着する。
時折大きな乳を揉んで楽しみながら、腰を動かす。そうしているうちに、徐々に抑えが利かなくなってきた。ナナカの膣も激しく蠢き、玉袋の中身を吸い出そうとしてくる。
藍色の瞳が、じっと見つめてくる。言葉がなくても分かった。彼女も絶頂を迎えようとしているのだと。
ふいに、ナナカが上体をぐっと起こした。顔が急接近し、唇が触れ合う。
柔らかい。胸とはまた違う、儚げな柔らかさだ。
腰の動きを止めた。膣の一番奥で。
「んんんーーッ♥」
合わさった唇から、ナナカの声が漏れた。その途端彼女の体がびくびくと震え、青い乳が艶かしく揺れる。卑猥な水音が耳に響いた。
これが女の絶頂というやつか。体内の締め付けもより一層きつくなる。口付けを交わしたまま、俺も達してしまう。
口や乳で抜かれたときより、遥かに激しい脈打ち。
ナナカの膣内へ、玉袋の中身が全て吸い出されていくかのようだった。彼女もその感触が分かったのだろう、両手両足でしっかりと俺に抱きついてくる。蠢く膣はまるで精を咀嚼し、汲み上げ、飲み込んでいるかのように、男根に吸い付いていた。
脈打ちが長く感じられる。俺とナナカの体が溶け合い始めたような、気持ちのよい一体感があった。
「……夢、みたい……」
唇が離れ、ナナカは熱い息を漏らした。呼吸を整えながら言葉を紡ぐ。
「単眼で、青くて、角もあって……可愛くない、私が……こんな、風に……」
「何言ってんだ……お前のお袋も、親父殿とこういうことをしてお前を生んだんじゃないか」
射精が収まるにつれ、膣の締めつけも緩くなってきた。甘い快楽の余韻を感じつつ、ナナカの髪を撫でてやる。
「お母さんは……特別、なのかな、って……」
彼女は辿々しい口調で答えた。思わず笑ってしまう。
「俺にとってはお前こそ特別だ、ナナカ」
「……ありがと、ジュン」
頬を染めて、はにかみながら見つめてくる。その視線がたまらなく愛おしい。こいつはもう俺のものだ。俺に限定すれば、敵機撃墜よりも栄えある瞬間だ。
喜びを噛み締めつつ、男根をぬるりと引き抜き、彼女の隣に寝転がった。そのとき、部屋の隅に置いた飛行服が視界に入った。ナナカが綺麗に折り畳んでくれた服の上に、汚れた千人針が乗っている。油だの汗だのが染み付いているが、赤い糸で作られた無数の結び玉は色鮮やかだった。近所のおばちゃんや女学生たちが作ってくれたものだ。千人針と言っても本当に千人分の結び目があるわけではない。「虎は千里を走り千里を帰る」という言い伝えから、寅年生まれの女は自分の歳の数だけ結び玉を作れる。
だが、あれを持って故郷へ帰ることはもうない。俺は今、本当にこの世界の人間になったのだから。
「好きだぞ、ナナカ」
「……ん」
微笑みを浮かべて身を寄せてくるナナカ。そのやわらかな女体を抱きしめながら、俺はまた『死ねない理由』ができたことに感謝するのだった。
だが食わねばならない膳というのもある。ここで食ってしまえばもう後戻りはできなくなるだろう。しかし元より戻る場所のない俺だから、食ってしまおうという気になる。
今、ナナカは全裸で布団の上に身を横たえている。普段から露出の多い格好をしているくせに、裸になった途端顔に恥じらいの色を浮かべている。先ほど垂れ流した汁を見せつけてきた女の穴、巨大な二つの肉まんも手で隠し、潤んだ単眼で俺を見つめていた。隠しているつもりだろうが、胸の大きさからすれば無駄な抵抗だった。むしろ青い胸がひしゃげて腕からはみ出している様子が余計に淫らだ。一緒に風呂に入ったし、淫行も何度かしたというのに、いよいよ本番となるとこうなるとは。そもそもこの前までは男の前で素っ裸になっても平気だったというのに。
俺もすでに服を脱ぎ捨て、男根もすね毛も銃創も全て晒している。すでにスタンしているのは言うまでもないが、ナナカの様子に余計に興奮してしまう。こいつは食われるのを待っていた。
股間を隠すナナカの手を掴み、ゆっくりとどかす。青い割れ目が露わになったが、それはほんの一瞬。すぐにもう片方の手で隠されてしまう。
「……おい」
「……あぅ」
蚊が泣くような声で呟くナナカ。目に涙をため、ちらりちらりと俺を見る。
「ここまできて止めることはできんぞ、俺は」
「……本当に、いいの……? 私で……?」
この期に及んでそれを言うか。
頭の中で何かがぷつりと切れた俺は隠された股間の代わりに、丸出しの胸を鷲掴みにした。
「やぁ……っ」
ナナカが声をあげようと構いはしない。掌からはみ出すそれを揉み続ける。やはり柔らかい。潤んだ単眼で俺を見つめながら、ナナカは強張った体を徐々に脱力させていく。そんな彼女を抱きしめ、髪をそっと撫でた。紫がかった髪は滑らかな手触りで、良い香りがする。女の香りが。
「次にそんなことを言ったら、怒るぞ」
そう言ってやると、ナナカは大きな目を閉ざした。体を隠すのを止め、瞼と唇をきゅっと結んでいる。ようやく覚悟が決まったようだ。
それにしても、女の体というのは不思議なもんだ。こいつはいつも槌を片手にカンカンやっているのに、体がこんなに柔らかだ。もちろん女にしては筋肉もついているのだが、それも男の筋肉とは明らかに違う。体全体が適度な柔らかさと弾力を帯びて、それに加えて何か良い匂いがする。そしてこいつの場合、人外の青い肌が意外に温かい。俺の命を救ってくれた温もりだ。
こいつが今から、俺のものになる。
やり方は分かっている。もう女の穴からは汁が垂れ流されているし、十分だろう。指で押し広げてみると、穴の中は桃色だった。外側は青いのに、不思議な光景だ。より一層強く女の匂いが漂い、胸が高鳴る。
怒張したモノをその穴へ、そっとあてがう。
「あ……」
ナナカが声を漏らし、うっすらと目を開けた。瞼のわずかな隙間から、藍色の瞳が俺を見つめる。
男根の先で感じた入り口の感触はとても温かく、柔らかい。しかも吸い付くように亀頭に密着し、中へ咥えこもうとしているかのようだった。
今一度、深呼吸。
「入れるぞ」
一声かけて返事を待たず、ぐっと腰を突き出す。男根に抵抗を感じた。
「きゃ……あっ♥」
艶かしい声と共に、ナナカが熱い吐息を漏らした。俺の手を握り、瞳を潤ませて震えている。彼女の中は予想以上にきつかった。半ば入った男根がぬめりを帯びた肉に締め付けられ、うっかりすると押し戻されそうになる。だがさらに腰を進めると、根元までずぶずぶと潜っていった。
「お……こりゃ……」
青い肌が意外にも温かいのはすでに知っていたが、内側の熱さはそれ以上だった。きつく締め付けてくる膣は火傷しそうなまでに熱い。
これはナナカの本性の表れではないか、という考えがふと浮かぶ。彼女の表情からしてそうだと思った。大きな単眼から大粒の涙をぽろぽろとこぼし、膣に入ってきた異物の感触に身を震わせている。だが見開かれた目に、熱い吐息を漏らす口元に、確かに歓喜の色があったのだ。
「……ナナカ、どうだ?」
問いかけると、彼女はにこりと笑顔を浮かべる。涙を流したままで。
「気持ち……いい……♥ ジュンと、繋がれた……♥」
返事は掠れた声だった。腕を握ってくる青い手にも力が篭る。そんなナナカがたまらなく愛おしい。恋をしたことが今までなかったわけではない。だが女をここまで愛おしく思ったのは生まれて初めてだ。俺の戦争が終わったからだろうか。それとも魔物の力なのか。
理由なんてどうでもいい。俺は今、ナナカと愛し合っている。
「……締め付け、もうちょい緩めろよ」
「そ、そんなこと……言ったってぇ……」
無茶なことを言いながら、どうにか腰を引く。膣の襞が男根を捕まえて引っ張ってくるが、力づくで何とか引き抜いて行った。
「ふわああっ……♥」
「うっ!?」
嬌声と同時に、ナナカの体がびくびくと震えた。穴の中も男根を抱きしめたまま脈動する。まるで多数の小さな舌で男根を舐められているような刺激だった。うっかりするともう漏らしてしまいそうになるが、ぐっとこらえた。今度は突き入れる。
「ひゃっ♥」
ナナカの体が布団の上で跳ねた。活きの良い魚を甲板に放り出したかのように。
暴れる豊満な女体を抱きしめ、腰を前後させる。強い締め付けと、襞のうねりが男根を擦り立てる。それがたまらなく気持ちいい。話に聞いていた通り、魔物は総じてギアナイスのようだ。ナナカのようなホワイトでさえこれなのだから。生物として体の構造がそうなっているのだろう。
だがナナカより上だという魔物がいたとしても、俺にとってはこいつが最上の女だ。潤んだ単眼も、温かな青い肌も、抱きついてくる腕も、全て俺のものだ。
今度こそは。こいつだけは離さない。
「ふあっ、んっ……♥」
引き抜いては突き入れる。それを繰り返すほどにナナカはよがり、喘ぎ、涙を零す。男根が膣を擦る度に、奥を突き入れる度に、彼女は快楽の色を深めていった。
大きな単眼の瞳は吸い込まれそうなほどに深い藍色。見つめていると、何もかも忘れそうになってくる。今はこいつのことだけ考えていればいいのだ。
「ジュンっ! ……好き、好きぃ……♥」
快楽に蕩けた口調で、ナナカは訴える。俺は青い手をそっと握り、その言葉に応えた。
「ああ、俺もだ……!」
今はこいつのことだけを考えていよう。今だけは。
青い肌がじっとりと汗ばんでいるのが分かった。それがたまらなく淫らだ。肌を重ねれば汗で張り付き、ねっとりと密着する。
時折大きな乳を揉んで楽しみながら、腰を動かす。そうしているうちに、徐々に抑えが利かなくなってきた。ナナカの膣も激しく蠢き、玉袋の中身を吸い出そうとしてくる。
藍色の瞳が、じっと見つめてくる。言葉がなくても分かった。彼女も絶頂を迎えようとしているのだと。
ふいに、ナナカが上体をぐっと起こした。顔が急接近し、唇が触れ合う。
柔らかい。胸とはまた違う、儚げな柔らかさだ。
腰の動きを止めた。膣の一番奥で。
「んんんーーッ♥」
合わさった唇から、ナナカの声が漏れた。その途端彼女の体がびくびくと震え、青い乳が艶かしく揺れる。卑猥な水音が耳に響いた。
これが女の絶頂というやつか。体内の締め付けもより一層きつくなる。口付けを交わしたまま、俺も達してしまう。
口や乳で抜かれたときより、遥かに激しい脈打ち。
ナナカの膣内へ、玉袋の中身が全て吸い出されていくかのようだった。彼女もその感触が分かったのだろう、両手両足でしっかりと俺に抱きついてくる。蠢く膣はまるで精を咀嚼し、汲み上げ、飲み込んでいるかのように、男根に吸い付いていた。
脈打ちが長く感じられる。俺とナナカの体が溶け合い始めたような、気持ちのよい一体感があった。
「……夢、みたい……」
唇が離れ、ナナカは熱い息を漏らした。呼吸を整えながら言葉を紡ぐ。
「単眼で、青くて、角もあって……可愛くない、私が……こんな、風に……」
「何言ってんだ……お前のお袋も、親父殿とこういうことをしてお前を生んだんじゃないか」
射精が収まるにつれ、膣の締めつけも緩くなってきた。甘い快楽の余韻を感じつつ、ナナカの髪を撫でてやる。
「お母さんは……特別、なのかな、って……」
彼女は辿々しい口調で答えた。思わず笑ってしまう。
「俺にとってはお前こそ特別だ、ナナカ」
「……ありがと、ジュン」
頬を染めて、はにかみながら見つめてくる。その視線がたまらなく愛おしい。こいつはもう俺のものだ。俺に限定すれば、敵機撃墜よりも栄えある瞬間だ。
喜びを噛み締めつつ、男根をぬるりと引き抜き、彼女の隣に寝転がった。そのとき、部屋の隅に置いた飛行服が視界に入った。ナナカが綺麗に折り畳んでくれた服の上に、汚れた千人針が乗っている。油だの汗だのが染み付いているが、赤い糸で作られた無数の結び玉は色鮮やかだった。近所のおばちゃんや女学生たちが作ってくれたものだ。千人針と言っても本当に千人分の結び目があるわけではない。「虎は千里を走り千里を帰る」という言い伝えから、寅年生まれの女は自分の歳の数だけ結び玉を作れる。
だが、あれを持って故郷へ帰ることはもうない。俺は今、本当にこの世界の人間になったのだから。
「好きだぞ、ナナカ」
「……ん」
微笑みを浮かべて身を寄せてくるナナカ。そのやわらかな女体を抱きしめながら、俺はまた『死ねない理由』ができたことに感謝するのだった。
15/09/20 22:52更新 / 空き缶号
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