二眼
回想終了。原因判明。
そうだ、そうだった。俺は、あの後気を失ったんだ。そして気がついたら、今みたいに鎖に繋がれて監禁されていたのだ。
俺が記憶の呼び起こしに成功し、煩悶としている中、ちょうどドアが開く。
そこにはあの魔物娘が。蛇のなりをした魔物娘となった石神瞳がいた。
やっぱり、そうだ。あの魔物娘は瞳だった。瞳が俺をここに連れてきて監禁したんだ。どうやって気を失わせたかは知らないけれど、それは間違いない。
魔物娘になった瞳は、起きた俺の姿を見ると一瞬だけ頬を緩ませるが、すぐまたいつもの無表情というか無愛想な表情に戻る。
ツインテールの蛇はそれぞれが生きているらしく、世話しなく動いたり、蛇同士で絡み合ったりしていた。
「瞳、どういうつもりだ、俺をこんなにして」
目の前までやってきた瞳に俺は言う。
「早くこの首輪取ってくれよ。俺を家に帰せ、……?」
まただ。俺の声が出ない。瞳の眼を見た瞬間、俺の身体が動かなくなった。
どうしてだ。でも今回は意識が失うようなことはないらしい。
「龍郎」
瞳は不機嫌な表情と反して、甘えるような柔らかい声音で俺の名前を呼ぶ。
瞳は、ベッドにその蛇の身体を乗せると、俺の隣に来た。しかもただ来ただけじゃない。
俺の身体にぴったりと寄せるようにしてだ。
…………うわぁ、柔らけぇ。しかも、なんかいい匂いするし。
身体は石のようになっても感覚は残るようだ。それどころか、むしろ敏感になっているような気がする。瞳の身体が触れているところが、ほんのりと熱くなって心地いい。体温がじっくりと伝わってくる。
鼻もだ。瞳から香る甘い匂いが鼻腔くすぐって、なんとも言えない心地よさを与えてくれる。
……って、ちょ!蛇、蛇!顔に蛇が来てる!噛まれるって!
「大丈夫」
俺の焦る気持ちが伝わったのか、瞳はそんなことを言う。
確かに瞳が言ったように大丈夫だった。
瞳の蛇は、俺に噛みつくような素振りは見せない。それどころか、俺の顔に頬擦り?したり、その長い先の別れた舌でチロチロと優しく舐めたりしてくる。表情は心なしか蕩けているようで、瞳の無愛想な表情とは真逆に思えた。
蛇に好かれたのか、俺は。
そんな時間がしばらく続く。
瞳は俺にぴったりと身体を寄せてなにも言わず、俺は身体が動かないのでそれを甘んじて受ける。動いているのは瞳の髪の蛇だけで、俺の顔を這ったりや、耳に絡み付いたり、唇をチロチロ舐めたりしてくる。蛇に対する気味の悪さはなかった。最初は怖かったが、噛んだりしてこないのならかわいいものだ。不快感はない。
……しかし、にしてもこの状況。あまり好ましいとは言えない。不満があるかと言えばそんなことはないのだけれど、何故俺がこんなことをされるのかわからないから素直に喜べない。それに、瞳の触れる身体は柔らかくて、いい匂いがして、温かい。しかし、安心するという感じではなくて、こう、情欲をそそるような、エッチな気分にさせてくるのだ。そして、俺は身体を動かせない。この気分から逃げることもましてや爆発させることもできず、ただ生殺しにされるのだ。
まさしく、蛇に丸呑みにされた蛙のごとく。
ごとく、ではなく本当に蛙と同じなのかもしれない。瞳が触れる箇所はどこもまるで、瞳のお腹の酸を浴びているようにピリピリと溶けるような刺激がするのだ。俺は、緩慢に緩慢に瞳に溶かされている。そんな気がしてならなかった。
どれだけ時間が経っただろうか。窓からの光はまったくない。つまりは夜なのだろう。問題はこの夜が、俺が監禁された日の夜なのか、それとも翌日の夜なのかということだ。もし翌日なら、俺は家に帰ってないことになる。親が心配するじゃないか。誘拐されたと思われるじゃないか。いや、実際誘拐だけども。最悪、警察沙汰になるかもしれない。そんな面倒なことはごめんだぞ。
身体は動かない。しかし、目は動くみたいだ。俺の身体は石みたいに動かないが、石になったわけではないらしい。唾液も出るし、涙も出る。まばたきはできるみたいだ。よくよく考えれば石になっているなら、瞳の感覚が伝わるとは思えない。つまりはただ単に俺の身体が、金縛りにあっているみたいなものか。とは言え、それがわかったからとはいえ、金縛りを解除する手段が見つかったわけではないが。
しかし、目だけでも動かせるなら。
俺は蛇の顔を見つめる。訴えるような感じで。
「…………?」
伝わった、か?
「…………なに?」
どうやら俺が言いたいことがある、ということは伝わったらしい。ぶっきらぼうに瞳は返事する。
「口、解いた、よ」
「えっ?…………おお、喋れる」
声が、声が出るぞ。なんか妙にうれしい。解放感がある。
「あ、身体は動かないのか……」
「龍郎、なに?」
目の前に瞳の顔が。って近い近いっ。
蛇のような蒼い眼がまっすぐに俺に見据える。なんだろうか、その眼には光がないように見える。正気を失っているような。恥ずかしさを覚えているはずだけど、俺はどうしてか目を離せなかった。
「なにか、言うこと、あるんでしょ?」
抑揚のない、感情というものが欠落したような口ぶり。昔と変わっていない。こいつは昔から感情を表にほとんど出さなかった。
「お、おう。お前、なんで、俺をこんなことするんだよ」
「………………チッ」
「……おい。舌打ちしたか?今、舌打ちしたか?」
「…………」
無視かよ。
ああ、蛇がなんか頬擦りしてくる。チロチロ舐めてくる。なんだよ、そんな媚びた眼で見るな。
「なあ、どうやったかは知らないけど、俺を動けなくして、ここから出さないとか監禁だぞ。犯罪だ犯罪。冗談じゃ済まない。警察も来るかもだぞ」
「……警察、来ないよ」
「へ?」
「私と、龍郎の、お父さん、お母さん。温泉、旅行行った、から。一週間、帰って、こない」
「はぁ!?」
ちょ、なにそれ聞いてないんだけど!
そんな素振り昨日全く見せなかったけど!
「だから、こうしてる、こと。誰にもバレ、ない。皆、知らない」
「いやいやいや、待て待て。学校はどうするんだ。何日も連絡なしに休むのはおかしいだろ」
「大丈夫、私、が勉強教える」
「それ、休む理由の解決になってないから!」
怒鳴るけど瞳はなんのその。全く気にしていない風だった。
「勉強は、教える。出席は、知らない」
瞳は無表情でさらっと言い捨てる。
「お前ってやつは……はぁ。じゃあ、最初の質問に戻るけど、どうしてこんなことを?」
「チッ」
またか。また舌打ちしたか。しかも、また蛇が愛らしい眼で俺を見てくるし。なんだこの対比は。全く逆に見える。
「じゃあ、この理由は後回しだ。質問二つ目。なんでお前は魔物娘になったんだ?どうやって?」
いきなり。朝は人間だったのに、放課後になればラミアみたいな魔物娘に変わっている。その変化が俺は気になった。それが、今のこの現状を指し示しているのかもしれない。
「……見知らぬ真っ白な、お姉さんにやってもらった。親切に、してくれた」
見知らぬ真っ白なお姉さん。誰だよ。しかし、魔物娘化させることができるってことはそいつも魔物娘ということはほとんど間違いないな。
「それで、理由はなんだ。なんで魔物娘になったんだ」
「……………………」
また無視か。でもこればかりは譲れないぞ。
「早く答えろ」
「………………私は、メドゥーサに、なった。メドゥーサ、かわいい?」
「ああ、かわいい……ってそうじゃあねえって」
こいつ話を逸らしに来やがった。
頬を染めてなんだか恥ずかしげだ。なんでだよ。
「メドゥーサは、目を合わせることで、人を固まらせることができる、の」
唐突に瞳はそんなことを言い出す。蛇がくねくねと嬉しそうにうねっている。
「……じゃあ、俺が今身体が、動かないのはお前の眼を見たからか?」
こくりと瞳は頷く。髪蛇たちが誇らしげに身体を反り返した。なんだかシュールな図だ。
「本当は完全に、石にできる、んだけど。石にしちゃうと硬い、から。動けない、だけにした。石化は私の自由で解け、る」
「ふぅん。俺が目を合わせなきゃ、その技にはかからないってことだな」
ぎゅっと目を閉じる。ふふん、これで俺に石化は通じんぞ。
「…………龍郎」
「なんだ」
「龍郎……」
「だから、なんだ」
「龍郎」
「だからなんだ!」
「ふふ、見てくれた」
ついつい目を開けてしまった。そこにあったのは瞳の眼。蒼く、暗く、どこまでも沈み込んでいってしまいそうなほどに深い、そして妖艶なまでに蕩けた眼。
俺は、見てはダメだと、早く逸らさなければならないと思いつつも、そうすることができなかった。
まるで、その眼に囚われかのように、吸い込まれてしまったかのように、食い入って見てしまう。
……きれいだ。
眼に光はない。蒼く淀んでいる。なのに、どうしてもきれいに見えてしまう。逸らすことなんて、できない。
「龍郎、私の、もの」
「私のものって、お前な」
なんだよ、その物言い。まるで瞳が俺のことを好きみたいな。いやいや、ないだろ。あれだけ、俺を毛嫌いしていた瞳だぞ。これも俺への嫌がらせの一環に違いない。
惑わされてはダメだ。
ダメなんだけど、なぁ。
「まあ、俺はどのみちお前が石化を解かない限り、家に帰られないわけだ。瞳はいつまで俺をこんなにしとくつもりだ?」
「……いやなの?」
「なにが」
「監禁」
いやだけど?
なにを言い出すのだこの娘は。
俺はため息をつく。瞳は無表情でなんの変化も見られないが、蛇たちは頭を落として、しょんぼりしているように見えた。
「はぁ。もうお前の気の済むようにしてくれ。ただし、捕虜の待遇はよくしてくれよ」
「大丈夫」
と胸を張ったのは少し面白かった。同時に哀れだった。残念なことに、瞳がいくら胸を貼っても強調される部位はないのだ。
とか、失礼なことを思っていたら髪蛇たちに噛まれた。ほとんど痛みの感じない甘噛みだったが、なんとなく怒っているのはわかる。悪い悪い、と俺は軽く瞳に謝ると、蛇たちは機嫌が治ったのか今度はペロペロとその噛んだところを舐め始めた。かわいいな。
などなど。久々に瞳とまともな話をした。と言っても俺が質問して、それに瞳が答えるだけだったけど。聞いてばかりなのもあれなので、俺のことを聞けよと言ってみたら、キッと睨まれた。「必要ない」と言われた。蛇たちはご機嫌な様子で擦り寄ってくるのに。酷い差だ。
でもよかった。瞳は昔からあまり変わっていないようだ。表情こそ無愛想だけど、きちんと返事してくれる。いやなことを愚痴っぽく聞かされて、子供の頃に戻った気分だった。昔から、瞳はいやなことがあったら俺に泣きついてきてたからな。
ちなみに質問でわかったが、今日は拐われた日と同じ日のこと。さすがに丸一日気絶しっぱなしといったことはなかったようだ。ひとまず安心。
そして安心したら来る驚異がある。
閉鎖空間に囚われたら食料の次に気にするもの。
万人が行わなければならない、不純なるものを身より排すための不可欠の行為。
俺は、天地がひっくり返るほどまでに衝撃的な圧倒的強制力を持つ衝動に襲われていた。
そう、尿意である。
「……瞳」
俺はメドゥーサな彼女を呼ぶ。無表情でこちらを見てくる。このときばかりは瞳が感情をあまり表に出さないことがうれしい。
俺は遠回しにトイレに行きたいと伝えた。だから、この鎖を外してほしいと。
俺の言葉にすぐに合点がいったのか、瞳はうんうんと頷く。
そして、スススと俺の隣から離れ、俺の前に床に座る。ちょうど、俺の股間の前辺りに瞳が来ると行った感じだ。
俺はそうした瞳の行動に、いやな予感しかしなかった。
そして完全にその予感は的中する。
「ちょ、瞳!?なにしてんだよ!」
瞳は俺のベルトに手をかけると、素早い手つきで俺のズボンを脱がしてしまった。あまりの手早さに抵抗する間もなかった。
そして、パンツに手をかける。
「や、やめ!おい、瞳マジでやめろ!洒落にならな、」
抵抗むなしくパンツは脱がされ、俺の愚息は白日の下に晒された。
尿意により半勃ちとなった俺の逸物。
瞳の目の前に俺の逸物は恥ずかしげもなく露になっていた。
「大きい」
そんなこと言わないでくれ……恥ずかしくて死にそうだ。
「おしっこ、出させてあげ、る」
「へ?」
気の抜けた俺の返事。しかし、次の瞬間、俺は逸物が晒されたことが大したことでないと思われるほどに驚愕した。
大きく開き、喉の奥まで見える瞳の口。唾液まみれのドロドロとした瞳の口。うねうねと舌が蛇みたいに動く瞳の口。それで、俺の逸物を咥えたのだ。
途端、俺の脳が甘美かつ破滅的な衝撃に見舞われる。まともに喋ることすらできない。
亀頭の尿道が瞳の喉奥にぶつかり、竿が長い舌で巻き付かれる。それだけでもおかしくなりそうなくらい気持ちいいのに、瞳はさらに口をストロークさせ、舌と頬で俺の逸物をしごきあげたのだ。そして、亀頭が喉奥にぶつけられ、頭を打ち付けられたような衝撃を味わわせられる。
「あ、うぁ、ひと、みぃ……だ、めだ、きもち、よすぎ、ぃぃぃ……」
呂律が回らない。頭にぼんやりと霞がかってくるようだ。このままじゃあ、出してしまう。おしっこを瞳の口に。瞳の口を、俺の逸物から出るおしっこで汚してしまう。黄金色の液体で顔中べちゃべちゃにしてしまう。そんなこと、ダメなのに。ダメなのに、瞳の汚れた顔を想像すると、何故か興奮してしまう。なんで。
「ほっひふ、なっふぁ……」
俺の逸物は半勃ちから完全に勃ってしまった。いや、それどころか、いつも自分でする以上に大きくなっている気がする。
瞳は口を動かすのをやめない。それどころかさらにストロークの動きを早くし、俺の逸物をマッサージするかのように口の中をモゴモゴと動かし始めた。上下だけじゃなく、左右斜めと全方位による快楽攻めは俺の頭を焦がし尽くしていく。
さらに瞳の髪蛇たちは俺の太股やおへそを舐めたりして、さらにその快楽を高めさせていく。
我慢しないと。我慢しなければ、瞳の口に……。
「っ!」
しかし、俺はとどめを刺された。瞳は我慢させてはくれなかった。
俺を見つめる瞳の眼。蒼く、深く、暗く、淀んで、それでも妖艶なまでに熱を帯びた瞳の眼。
俺はそれに見据えられ、眼で命令される。
尿意なんかとは比べ物にならないほどの強制力。さらに言うなら、瞳のフェラよりもずっと強力で、俺の興奮は最高潮に達した。
――女は男を目で犯す。
その言葉が頭をよぎる。
そう俺はまさに犯されていた。瞳の眼で。背筋を舐めあげられるようなゾクゾクする快楽を味わわされ、抵抗なくした蛙のようにされたのだ。
蛇に睨まれた蛙はただ呑み込まれるだけ。
俺は蛙なのだ。
そして、蛇の瞳は言う。
言葉でじゃない。
眼で俺に命令するのだ。
『出しなさい』
その瞬間、俺は瞳の口に漏らしていた。情けなくもあえぎ声を漏らしながら、瞳の口に不純なるものを漏らしてしまったのだ
「んぐぅ!」
瞳の頬が膨らむ。けれど、口から俺のが漏れ出ることはなく、喉を早く鳴らして、飲み干していった。
俺のが飲まれている。そう考えるだけで言い様のない興奮が沸き起こる。征服感?いや、その逆だ。飲ましているのではなく、飲まさせられている。俺は瞳に支配されているのかもしれなかった。
瞳は飲み終えるも俺の逸物から口を離さなかった。いや、それどころかまたもフェラを続けた。
「うむゅ、ずる、じゅるるるるるる、じゅぶじゅぶじゅぶぶぶぶぶ」
やばい、気持ちよすぎる。尿意とはまた違う欲望が沸き起こってくる。瞳はその欲望の塊を求めている。白い白濁したそれを。
「ダメだ!」
「うちゅるるる……?」
「離せ!瞳、それだけはやめろ!離せ!」
俺は理性をフル動員して快楽を頭から追い出す。一番有効なのは母親の裸。うぅ、気持ち悪い。だけど、理性は戻る。
「トイレに行かせてくれ、マジで!」
「ちゅぽん……トイレした、でしょ?」
瞳が口を小さく開けて、その中を見せる。俺のを飲み干した口だ。やばい、ムラムラしてきた。
「っ、ダメダメ!そっちのトイレじゃないんだよ!」
「……大きい、方?」
恥ずかしくて顔から火が吹き出そうだ。
「じゃあ、こっちも」
……はい?
瞳は俺をいきなりひっくり返した。つまり、俺の尻が瞳に見られるわけだ。
「龍郎の、お尻、かわいい」
「やめろ!冗談になってないから!」
見られてる見られてる。逸物を見られるよりもさらに恥ずかしい。
「いいよ、出して」
おいおいおいおい。それはダメだろ、常識的に考えて。いや、おしっこはいいというわけじゃないが、それでもダメだろ常考!
「今すぐ離さないと絶交だ!嫌いになるからな!」
俺はただただ叫ぶ。身体を動かそうとはするけどやっぱり動かないので、できることは叫ぶことだけだ。それでもあらん限りの声を出して、俺の気持ちを訴える。
「……きら、い?」
「ああ!嫌いになるぞ!」
「きら、い。私のこと、嫌いに……いや、そんなの、いや」
「…………?」
瞳の雰囲気が変わる。さっきまでの蕩けるような淫乱なものじゃない。触れれば壊れてしまいそうなガラス細工のような雰囲気。
瞳は俺の身体を起こすと、床に座った。下半身の蛇をぐるぐると丸めて小さくし、怯えたように眼を伏せる。
「ごめん、なさい。嫌いになら、ないで。嫌いに、ならないで。ごめんなさいごめんなさい」
蛇柄模様のパジャマの裾を握り締め、瞳は涙を眼にたたえながら謝る。髪蛇は死んだように力なく垂れ下がり、動く気配がなかった。
「ごめんなさいごめんなさい、嫌いにならない、で。ごめん、なさい。私を嫌いにならない、で。なんでも言うこと聞くから、ごめんなさい」
瞳は壊れたように「ごめんなさい」と言い続ける。ついには、泣きじゃくり始めた。まるで世界が終わってしまうかのように、生きる希望を失ったかのように、瞳の顔は絶望に染められていた。そして、それが現実なものとならないよう、俺に謝り続けている。それが俺には痛ましかった。見ていられなかった。
「悪かった。嫌いになるって言って。冗談だから。瞳を嫌いになんかならないから」
俺は瞳に、なるたけ優しくなるよう努めて声をかけた。身体が動かず、瞳を抱き締められないのがもどかしい。
「俺はこれからも瞳とは仲良くやっていきたいと思ってるから。絶対に嫌いになんないから。だからそんな顔するなよ」
そんな顔されると、俺まで悲しくなる。瞳のそんな顔は見たくない。
ややあって瞳の顔がこちらを向く。涙で眼は真っ赤だけど、そこには光があった。
「ほんとう?」
瞳は弱まりきった声で言う。
「うん」
「私のこと、きらいじゃ、ない?」
「嫌いじゃないって」
「だいすき?」
「ん……う、うん、まあ」
「……えへへ」
そこで珍しく瞳は笑う。いつも無表情な彼女には珍しい、はにかみ顔だ。本当に、本当に昔に戻ったようだった。
「えへへ……ぎゅう」
瞳は俺の腰に手を回し、胸板に頭を預けて抱き締めてくる。柔らかい瞳の感触と、髪からほのかに香る甘い香りが芳しい。本当に珍しいことだ。こんな風に甘えられたのはいつぶりだろう。
瞳の幸せそうに綻ぶ笑顔。それを見ていると、こっちも幸せになる。心が暖まっていく。そして、お腹が苦しくな、る?
「ってトイレ!そうだよ、俺、トイレ行きたいんだった!こんな、抱き締められてる場合じゃないんだって!マジで瞳、俺の身体を解けって!頼むからホント。嫌いにならないから解いてくれ!このままにされたら俺、終わるから!人生終了だから!諦める前に試合終了だから!頼むから瞳さん、いや瞳さま、俺のことが嫌いじゃないなら石化を解いてくれ!」
捲し立てる、捲し立てる。あることないこと思い付く限り全部並べ立てて、瞳に訴える。さすがの瞳も俺の剣幕には圧された様子で、慌てた風に何度も頷いた。
「と、解いた、よ、首輪も」
「助かった!トイレの場所って変わってないよな!?」
「う、うん」
「借りるぞ!」
俺はパンツとズボンを持って、部屋を飛び出る。もう一秒と我慢できなかった。人体でもっとと汚いものが、そこまで迫ってきている。
どうにかそれを体内に閉じ込め、俺はトイレに駆け込んだ。
―♪―
「あーん」
「あ、あーん」
「ん。…………はい、あーん」
「う、あ、あーん」
俺は今、肉じゃがを食べている。いや、違うな。食べさせてもらっている、か。トイレから戻った俺はただちに空腹を覚えたのだが、瞳は俺がそのことを訴える前にもう食事の用意をしたのだ。そして、俺をまた眼と首輪で拘束すると、俺に肉じゃがを食べさせてきたのだ。
もちろん、自分で食べれると言ったのだが。
「私が、食べさせる……龍郎、お口開けてればいい、から」
何度言ってもこの一点張りである。聞く耳持たずだ。
高校生にもなって、他人に食べさせてもらうなんて、恥ずかしくて仕方ない。赤ちゃんかっての。
しかも、ただ食べさせてもらっているわけじゃないのだ。
俺は今、ベッドの上に座っているわけだが、腰と脚が瞳の下半身の蛇に巻き付かれている。瞳は俺の背中にぴっちりと身体をくっつけて、俺に身体を預けているのだ。慎ましやかな胸の感触が生々しくて、気が気でない。
瞳は俺の脇から通した両手で肉じゃがの大きめのお椀を持ち、髪蛇が巻き取ったスプーンで肉じゃがの具を取るという器用なことをしている。端から見たらシュールな絵面だが、当の本人の俺からしたら心臓がバクバクものだ。なにせ背後から抱きつかれているようなものだから、瞳の顔は俺の真横にある。食べているところは見られるし、しかも髪蛇はたまに瞳の口にもスプーンを運ぶ。つまり、
「もぐもぐ……うん、おいし、い。はい、龍郎、あーん」
「ああ、うぅ」
「あーん」
「あ、あーん」
「おいし、い?」
間接キスである。俺は、瞳と間接キスしたのだ。緊張して味なんてわかるか。
さっきキスよりももっとハードル高いことされたけど、思春期の男子にとってキスはまた別次元の問題なのだ。うう、恥ずかしい。
「龍郎、おいしく、ない?」
「え、ああ、おいしいおいしい!瞳って料理上手かったんだな!初めて知った」
「…………」
ぷいっと顔を明後日の方向に向けるが、顔が赤いので照れ隠しかもしれない。髪蛇が俺にすりすりと身体をすり寄せてくる。
「龍郎は、目玉焼きも作れない、もんね。この前、焦がして、た」
「な、なんで知ってるんだよっ」
家で挑戦してみたらあえなく真っ黒な太陽になったので、誰にもバレないように処分したはずなのに!
「龍郎のこと、なんでも、知ってる」
「な、なんでも、だと?」
「エッチな、本の隠し場所、とか」
「やめて!?俺のプライバシー侵害しないで!?っていうか、なんでそんなこと知ってんだよ!」
「龍郎のお母さんが、言ってた。隠し事、ダメ、皆に、平等に教えるべき、とか、なんとか」
おのれコミー!
「エッチな、本。巨乳ばっか、り。龍郎は、巨乳好き?小さいの、嫌い?」
とか言って、ぐいぐいと胸を押し当ててくる。小さいからこそなのか、当たる胸の真ん中に小さなしこりの感触があった。言わずもがな。それは乳首で間違いないのだろうが、胸の小さいせいか、そこの触れる部分が敏感に感じられて、情欲をそそられる。
正直なところ、俺は小さいよりも大きい派であるのだが、この感触だけはどんな巨乳にも負けているとは思えなかった。
「お、俺は別に、瞳のなら大きさとか関係ない、からな」
ってなにを口走っとんだ俺は!
そんなこと言ったら、俺が瞳のことを。
「そ、そう、なんだ。……べ、別に、龍郎にそう言われても、嬉しくない」
じゃあ、聞くなよと内心でつっこむ。
顔は見えないけど、きっと無表情なんだろうなと思った。声が若干上擦っていたのはきっと気のせいだろう。
「まあいいや。じゃあ、もっと食べさせてくれよ。腹減った」
もうやけくそだ。どっちにしろ食べさせられるのだから、こっちからせがむことにしよう。徹底的に食べさせてもらってやる。
髪蛇が俺に汁の染み込んだ肉とじゃがいもを運ぶ。思いきりもよくなると緊張も薄れるらしい。俺はようやく味がわかるようになってきたのだった。
うん、おいしい。
―♪―
食器洗いをしてくるとのことで、俺は暇になった。なので帰る、ということはできないので身体を解いてもらい、部屋の中では自由に動けるようにしてもらった。さすがに首輪までは解いてもらえなかったけど。
改めて部屋を見渡して見ると、無愛想な割には部屋を女の子らしくしていると思った。昔と変わらず、デフォルメされたかわいいもののぬいぐるみは好きのようだ。
変わったといえば本棚。少年漫画や少女漫画など多岐に渡ってあるが、下の方の一角に、魔物娘関連の書籍がある。魔物娘図鑑という、魔物娘の種類や特性などが書かれた辞書のようなものまであった。
これには興味がある。瞳がなったメドゥーサというものがいったいどんな魔物娘なのか、それが気になる。
俺はその辞書を手に取り、メドゥーサの項目を探した。大した労力もなく、メドゥーサの挿し絵と説明文が載せられたページを発見。挿し絵は少しエッチで、瞳よりは大人びた雰囲気があった。少々その挿し絵に目を奪われながらも、俺はベッドに腰掛けてそこを読む。
そして、絶句する。
「マジか……」
髪の毛の先が蛇となっていること。眼を合わせると石化させてしまえること。基本的には一人でいる種族だということ。石化させて行為に及ぶことが多いということ。
ここまではまあいい。さっき瞳に教えてもらったことも含まれている。
しかし意地っ張りで強がりな性格に反するように、蛇たちが素直な行為を見せるだと?
つまり、表面上は嫌っているように見えても、蛇たちが敵意を露にしていなければそれは嫌っているわけではない。そして、もしも蛇が好意を寄せている素振りを見せているのならそれは……。
「それが瞳の本心……蛇たちが瞳の、本心」
蛇の好意。さすがに心当たりがありすぎる。すり寄ってきたり、優しく舐めてきたり、身体を絡ませてきたり。瞳を誉めたりしたら、本人の無表情とは裏腹に嬉しそうに身体をくねらせたり。敵意のない、優しげな表情で見てきたり。
これに気づかないほど、俺も鈍感じゃない。心当たりがありすぎる。
それに、蛇だけじゃない。顔では無表情ぶっていても、行動でわかるだろ。赤の他人の逸物を普通、舐めるか?あり得ないだろ。
もしかして、本当にもしかして。
「瞳が、俺のこと……」
「龍郎?」
「っ……」
ドアがゆっくりと開き俺は呼ばれた。
瞳が部屋に入ってくる。
俺は魔物娘図鑑をすばやく閉じる。しかし、本棚に直す余裕はなかった。
「龍郎、それ」
「え?ああ、暇だったから、さ」
「なに、見てた、の?」
「へ?あ、ええっと、色々と」
メドゥーサの欄だけしか見てないけど、さっきの内容を読んでそれを言うのは恥ずかしかった。
しかし、失敗だったかもしれない。
「それ、一応、エッチな、本……」
「え?」
これ、18禁なの?いや、魔物娘関連なのだから当然か。っていうか、そんなものを普通に本棚に置いとくなんて。
「色々、見たんだ。ふー、ん。エッチな、挿し絵、いっぱいだ、もんね」
「えーと、」
怒ってる、のか?無表情でわからん。
でも確か見極めるには髪蛇たちを見れば。
シャー!
どぎついほどまでじゃないけど、声を荒げて牙を見せている。瞳が怒っているのは確定だ。
「じゃあ、エッチな、龍郎。お風呂、行こう、か」
瞳は俺の目の前にするすると近寄り、目を合わせてきた。つまりはその能力を使うためだろう。たちまち俺は身体が動かなくなる。心なしかいつもより固まったような気がした。しかし慣れないものだ。
瞳は首輪を外し(何故か鍵は使っていない。なので魔力の籠ったものなのだろう)、俺をいわゆるお姫様だっこした。……普通逆じゃないか?
「重くないか?」
「魔物娘は、力持ち。龍郎の一人、や二人、簡単」
誇らしげに蛇は身体を反り返らせる。わかりやすい。
やっぱり、そうなのだろうか。
うぅ、そう考えると顔が熱くなる。
「龍郎、顔、赤い、よ?熱?」
「!!!」
顔、顔!顔近い!おでこ同士が当たって、顔が!
「……熱、ない。じゃあ、お風呂、大丈夫」
半ばオーバーヒートしている俺は、力持ちになった瞳にお風呂場へと運ばれるのであった。
―♪―
風呂場に運ばれて俺は正気に戻る。今更だがこの流れ、やばくないか?
だって、トイレも食事もしてきた瞳だぞ?風呂で身体を洗ったりするのだって。
「あのー、つかぬことお聞きしますが、風呂に誰が入るんですか?」
「私、と龍郎」
ですよねー。
「いや、あのさ、男と女は風呂に一緒に入るべきじゃないと思うんだけど。裸、見られるし」
「魔物娘は、いいの」
いいの?
「裸、見られても、気にし、ない」
「俺は気にするんだけど」
「気にしたら負け」
うん、そう言われる気がしてた。
俺の口での抵抗むなしく、俺は瞳に服を慣れた手つきで脱がされ、産まれたときのままの裸一貫にされた。
瞳もその裸体を惜しみ無く晒す。髪蛇たちは瞳の身体に隠れた。やっぱり恥ずかしいんじゃないか。
でも、やっぱりきれいだ。髪止めを取ってほどかれた水色の優しい髪と蛇たち。色合いの病的なまでに真っ白な肌、肩から腰にかけての流麗な曲線。蒼い鱗に包まれた蛇の下半身。慎ましやかな胸とそこに乗る赤い果実。そして、瞳のもっとも大事な、ピンクの唇でぴっちりと閉じられた秘部。
俺はついつい食い入るようにして見てしまう。
惚けている俺をお風呂場に連れ込み、瞳は俺の後ろにまわった。風呂場の広さは二人ならまだ余裕がある。一般家庭でなら広い方じゃないだろうか。
そして、瞳は石鹸とスポンジを手に持つ。
「なぁ、自分で洗わせて、」
「龍郎、ゆっくり、してて。私、洗う、から」
なんかもうね。わかってたから。驚かない。でも、恥ずかしいのに変わりはない。恥部を隠さず、女の子の前で晒すなんて、どこの変態だ。俺には露出して興奮する性癖など持ち合わせていないというのに。ただただ恥ずかしいばかりである。
瞳は俺を風呂場に立たして、適温調整したシャワーで俺を自分を濡らす。瞳は興味なさげだが、髪蛇たちは食い入るように俺の身体を舐め回すがごとく見ていた。つまりは、瞳も興味津々なのだろう。
瞳は手に取った石鹸とスポンジで泡立てたものを自身の身体に乗せていく。鏡で見えるが、手や胸などに重点的に泡を乗せているようだった。もしかして、
瞳は俺の背中に抱きつくと、胸についた泡で俺の身体を擦り始めたのだ。
「ひ、瞳さーん?洗い方がおかしいよーな」
「私も、龍郎も、一緒、に洗える……効率的、かつ、画期的な方、法」
いや、これただのソープだから。風俗と変わらないから!
「っ……」
でも、気持ちいい。瞳の柔肌が俺の身体に吸い付くように絡み付いてきて、ローションで身体を洗われているような気持ちよさだ。それをしているのが、俺の幼馴染みの瞳で、俺のことが好きかもしれないやつで。
瞳は背中を擦り合わせるのを終えると、今度は俺の身体に前にやって来た。やることは背中のときと変わらない。ただ、瞳の柔らかい慎ましやかな胸が俺の胸と擦れて、乳首が触れあう。首に回された手に力がこもり、瞳は息を殺したように、ふぅふぅと息を吐いた。瞳も感じているのか。
「ひ、瞳!そこは……うぅ」
瞳は泡まみれになった手で逸物とお尻の穴にあてがう。
「大丈夫、イかせる、なんてもったい、ないことはしない、から」
確かに高められていく快感を与えられている訳じゃないけれども。それでも、幼馴染みに逸物とお尻を触られているこの状況は思うところがある。なんせ心地いい。恥ずかしいけど、蕩けてしまいそうに気持ちいいのだ。身体が動くのなら確実に尻餅はついただろう。そんなくらい。
「終わ、り。次は脚」
もう終わりか。
もう少し、という勇気は俺にはなかった。
泡を乗せた蛇脚に絡まれて脚は洗われた。水と泡にまみれた鱗はほどよい硬さで、俺の脚を擦っていった。
最後に髪をシャンプーで洗われ、終了。
俺はまたもお姫様抱っこで運ばれ湯船に浸からさせてもらった。熱すぎもない適温。身体が動かないから溺れないかと思ったが、能力を解いてくれたみたいだ。ようやくほっと一息つけた。
瞳は残り髪を洗うそうで、まだ湯船には浸からないそうだ。瞳の髪は男の俺に比べれば長い。仕方ないか。
髪蛇がこちらを見ている。微笑み返すと、恥ずかしげに俯いた。やっぱりかわいい。蛇も、だけど。この蛇は瞳も同然で、つまりはそういうことだ。
「おま、たせ」
髪を洗い終えた瞳が湯船に入ってくる。
しかし、立ったまま浸かろうとしない。
「瞳?」
この位置は目の前に瞳の秘部が来るのだ。俺は心臓が無駄に鼓動を速めるのがわかった。
「龍郎、最後に、洗って、ほしぃな」
意外な瞳のお願いだった。意地っ張りで頼むようなことはしない瞳のはずだが。魔物娘化でそれはさらに進んでいるはずなのだが、瞳はそんなことを俺に言う。
「どこを?」
しかし、もう身体は洗い終えたんじゃあ、
「こ、こ」
「……はい?」
瞳が示したのは、俺の目の前にあるもの。つまりは瞳の秘部。オマンコである。
瞳はオマンコの秘唇を摘まむと、横に軽く広げて、穴を俺に晒した。ひくついたそれは半透明な液体をこぷっと音を立てて吐き出している。
「えーと、瞳さん?洗うって、石鹸で?」
「ううん……、龍郎の、」
嫌な予感。
「口で」
瞳は俺の後頭部に手を当てると、一気に俺の口を自身のオマンコに押し当てた。
「んぶっ!」
突然のことで抵抗できるはずもなく、俺の口は瞳のオマンコに覆われる。鼻もオマンコ上部の秘核、つまりクリトリスに押し当てられ、息ができなかった。
息ができない俺は口を開くしかない。しかし、そうしたことで瞳のオマンコの秘唇が俺の口に入ってしまった。オマンコの汁にまみれた秘唇が俺の口に含まれる。
「龍郎、舌、当たって!」
息を吸うためにはどうにかもがくしかないのだが、そうすれば否が応でも下がその秘唇に触れてしまう。その汁が俺の舌に転がってしまう。
その瞬間、俺の頭はピンク色に染まった。
甘い、水飴よりも甘い、瞳のオマンコの汁。舌に絡み付くように残り、溶かすように広がっていく。その広がりは口に留まらず、喉奥へ行き、下ではなく上の脳まで行った。頭が溶ける。溶けて、蕩けて、流れ出て、理性のタガがゆっくりと外されていく。
これをもっと舐めたい。もっと欲しい。もっと瞳のが欲しい。
そんな欲望が解放されていく。
「んじゅる、じゅぶじゅるるる。れろれろ、はむ、じゅるるるるる」
俺は無意識のうちに舌を動かし、瞳のオマンコを舐め回していた。オマンコから湧き出る甘い汁を啜り、甘美な味に酔いしれた。
「たつ、ろう……んん」
瞳のあえぎ声が遠くから聞こえる。それも俺の理性をどんどん崩していく。もっと、もっと欲しい。
「じゅる、ぷはぁ、んむ。れろれろれろれろ、じゅるるるるるるる」
いくらでも出てくる。止まらない。おいしい。止められない。こんなの味わったことがない。瞳、瞳、瞳、瞳、瞳。
「んん、んんっ。たつろ、う。イク、よぉ。イッちゃう、よぉ……」
「じゅるるるるるるる」
いいよ、イケ。イッちまえ。俺にぶっかけていいから。遠慮すんな。
止めと言わんばかりに、俺は瞳のオマンコの穴に舌先をねじ込んだ。
「ああ、ああああああ!」
瞳の叫び。それとともに瞳のオマンコの穴は収縮し、俺の舌を奥へ奥へと引き込んだ。
そして、爆発。
瞳の半透明な汁が穴から潮吹きのように解き放たれ、俺の舌に、口に、鼻に、
頬に、目に、おでこに全てに降り注いだ。
「ハァハァ、ハァ、ハァ」
瞳は力なくしたように倒れ込み、俺にしなだれかかる。
幸い、俺もその潮吹きの衝撃で正気に戻ることができた。瞳の身体を支えて、背中を俺に預けさせる。まだ頭はピンク色が抜けきらないけれど、逸物が恥ずかしいことに勃っているけれども、力なくした瞳に襲いかかるほど理性が消え去ってはいなかった。
「瞳、大丈夫か?やりすぎた、悪かった」
「べ、別に、謝る必要、ない。平気だも、ん。ほとんど、イッてない、し」
肩で息するくらいなくせに。
「意地っ張りめ。まあいい、じゃあしばらくはこうしていようか。しんどくなったら言えよ」
「う、うん……………………あり、がと」
「え?」
最後なんて言った。よく聞き取れなかった。
「な、なんでも、ないっ」
背中を預けられているから顔は残念ながら見えない。
やがて頭のピンク色も取り除かれていき、湯の温かさをやんわりと感じれるほどまでには落ち着いた。瞳も俺に全体重を預け、なすがままである。髪蛇たちが俺に甘えるように絡み付いてきて、それが瞳の本心で、すごくうれしく思えた。
「そういえば、こうやって風呂入るの何年振りだっけか」
八年?九年?もっと?
「十年、と三ヶ月振り」
迷うことなく瞳は言った。
「よく覚えてるな」
「忘れたこと、ない」
「ふぅん。でも、まさかこの歳になって一緒に入ることになるとは」
しかも、さっき俺は、瞳のアソコを。
やばい、理性なくしてたときのこと思い出すとすごい恥ずかしい。殴りたいくらいだ。
「いつでも、」
「ん?」
「これからは、いつでも、一緒に、入れる、から」
「……………………」
やばい。鼻血出そう。
「ま、まあ、瞳がそうしたいときなら付き合ってもいいかなー、なんて……」
気恥ずかしさを隠すために言ったわけだけども、
「じゃあ、毎日になる、ね」
どうやら地雷を踏んだみたいだ。
っていうか意地っ張りどこいった。
「いや、龍郎のために、仕方なく、だけど。龍郎、おっちょこちょい、だから。一人でお風呂、危ない」
ここにいたか意地っ張り。
「俺が風呂場で事故るとおっしゃるか」
「実際、石鹸踏んで、頭ぶつけてた」
いや、あれは。
「一週間に、一回ペース、で」
「なんでそれを!?」
「龍郎のことで、知らない、ことない。最近、服のコーデ変えたのも、知ってる。最近、ちょっと、疲れ気味で、なかなか寝つけられないことも、知って、る」
瞳は、本当に、本当に俺のことを。
なんだよ、なんでそこまで知ってくれてるんだよ。俺は最近の瞳のことなんにも知らないのに。
なんで。
「なぁ、瞳」
「うん」
「色々、質問いいか?」
「どう、ぞ」
そうだよ。知らないなら、知ればいい。
もう瞳は、俺を無視したりしないんだから。これまでの瞳を知ればいいんだ。
俺の中で止まっていた瞳を成長させよう。
そして、俺の中の瞳への気持ちも。
昔の瞳から、今の瞳へ。
―♪―
瞳が家から持ってきたらしい、俺のパジャマに着替え(させられ)て、俺と瞳は床についた。俺の予想通り、寝る場所も瞳と同じで、瞳の部屋の瞳のベッドだった。シングルのベッドなので、身体をくっつけなければ落ちてしまう。とはいえ、瞳は身体をぴったりと寄せてくるので余計な心配だ。
最初は拒否しようとも思っていたけど、どうせ断ることもできないので、素直に受け入れた。一緒に風呂に入ったことを考えれば対した羞恥ではない。
まあ、やはり同い年の女の子と、しかも瞳と同じで場所で肩を寄せあって寝るというのは、ドキドキするものだが。
「いい匂いもするし……」
「なにか、言った?」
「い、いや、なにも」
「……こうして、一緒に寝る、のも久しぶり、だね」
瞳は下半身を俺の身体に巻き付け、上半身は俺の脇の下に潜り込むようにして寝転んでいる。腕枕に近いような感じか。
「そうだな」
「八年と六ヶ月ぶり。小学二年生の頃の冬休み以来だよ」
「ほんとよく覚えてるのな」
「忘れたこと、ないもん」
「そうだった」
部屋はもう暗い。瞳の姿も顔もなにも見えない。ただ、瞳の柔らかい身体の感触と甘い匂いとゆっくりとした鼓動だけが伝わってくる。
「……龍郎」
「うん?」
「龍郎」
「うん」
「私、変わった?」
「それは姿か?それとも中身か?」
返事はない。なにかを期待しているような雰囲気でもなかった。
「俺は瞳がどう変わろうと気にしない。……正直、話せるようになったのはうれしいけどさ。ここしばらくずっと、無視されてたからさ」
「……ごめんなさい」
しまった。少しばかり責める口調になってしまったか。
「謝らなくていいって。理由は、まあ、聞かないでおくよ」
風呂場でも何度聞いても教えてくれなかったし。
長い間離れていたから、一朝一夕で瞳のことを知るのは難しかった。今の瞳に昔の瞳が追い付くのはまだまだかかりそうだ。
「あり、がと」
ぎゅっと俺を締め付ける瞳の腕が強くなる。瞳を感じるものが高まってくる。
「……龍郎は、もし、私が、龍郎を、襲ったら、嫌いになる?」
唐突だった。瞳は感情の籠らない希薄な声音で聞いてくる。
「無理矢理したら、怒る?嫌いにな、る?」
襲うっていうのは、性的な意味でのことなんだろうな。きっと。
しかし、実際の意味だとしても俺の答えは決まっている。
「ならないよ。嫌いになんてなるもんか」
瞳がぴくっと身体を震わす。
だけど、と俺は繋げた。
「もうしばらく待って欲しいのが本音。俺の気持ちの整理がつくまでさ。なにされても後悔しないとおもえるようになるまでは。まあ、今無理矢理されたら俺は抵抗できないんだけど……」
「わかっ、た。待つ」
「待ってくれるんだ」
「私は、心が広い。だから、待てる。甲斐性なしの、龍郎とは、違う」
散々な物言いだな。
だけど、これで一安心か。
あとは俺の気持ち次第。
俺はどうしたいんだ。瞳とどうしたいんだ?
まだわからない。でも大丈夫だろう。時間はあるのだから。ゆっくりと答えを出せばいい。
昔の瞳を、今の瞳へ。
昔の思いを、今の思いへ。
しかし、俺は知らない。
時間は有限であることを。
俺はきちんと理解していない。
瞳が魔物娘であることを。
そうだ、そうだった。俺は、あの後気を失ったんだ。そして気がついたら、今みたいに鎖に繋がれて監禁されていたのだ。
俺が記憶の呼び起こしに成功し、煩悶としている中、ちょうどドアが開く。
そこにはあの魔物娘が。蛇のなりをした魔物娘となった石神瞳がいた。
やっぱり、そうだ。あの魔物娘は瞳だった。瞳が俺をここに連れてきて監禁したんだ。どうやって気を失わせたかは知らないけれど、それは間違いない。
魔物娘になった瞳は、起きた俺の姿を見ると一瞬だけ頬を緩ませるが、すぐまたいつもの無表情というか無愛想な表情に戻る。
ツインテールの蛇はそれぞれが生きているらしく、世話しなく動いたり、蛇同士で絡み合ったりしていた。
「瞳、どういうつもりだ、俺をこんなにして」
目の前までやってきた瞳に俺は言う。
「早くこの首輪取ってくれよ。俺を家に帰せ、……?」
まただ。俺の声が出ない。瞳の眼を見た瞬間、俺の身体が動かなくなった。
どうしてだ。でも今回は意識が失うようなことはないらしい。
「龍郎」
瞳は不機嫌な表情と反して、甘えるような柔らかい声音で俺の名前を呼ぶ。
瞳は、ベッドにその蛇の身体を乗せると、俺の隣に来た。しかもただ来ただけじゃない。
俺の身体にぴったりと寄せるようにしてだ。
…………うわぁ、柔らけぇ。しかも、なんかいい匂いするし。
身体は石のようになっても感覚は残るようだ。それどころか、むしろ敏感になっているような気がする。瞳の身体が触れているところが、ほんのりと熱くなって心地いい。体温がじっくりと伝わってくる。
鼻もだ。瞳から香る甘い匂いが鼻腔くすぐって、なんとも言えない心地よさを与えてくれる。
……って、ちょ!蛇、蛇!顔に蛇が来てる!噛まれるって!
「大丈夫」
俺の焦る気持ちが伝わったのか、瞳はそんなことを言う。
確かに瞳が言ったように大丈夫だった。
瞳の蛇は、俺に噛みつくような素振りは見せない。それどころか、俺の顔に頬擦り?したり、その長い先の別れた舌でチロチロと優しく舐めたりしてくる。表情は心なしか蕩けているようで、瞳の無愛想な表情とは真逆に思えた。
蛇に好かれたのか、俺は。
そんな時間がしばらく続く。
瞳は俺にぴったりと身体を寄せてなにも言わず、俺は身体が動かないのでそれを甘んじて受ける。動いているのは瞳の髪の蛇だけで、俺の顔を這ったりや、耳に絡み付いたり、唇をチロチロ舐めたりしてくる。蛇に対する気味の悪さはなかった。最初は怖かったが、噛んだりしてこないのならかわいいものだ。不快感はない。
……しかし、にしてもこの状況。あまり好ましいとは言えない。不満があるかと言えばそんなことはないのだけれど、何故俺がこんなことをされるのかわからないから素直に喜べない。それに、瞳の触れる身体は柔らかくて、いい匂いがして、温かい。しかし、安心するという感じではなくて、こう、情欲をそそるような、エッチな気分にさせてくるのだ。そして、俺は身体を動かせない。この気分から逃げることもましてや爆発させることもできず、ただ生殺しにされるのだ。
まさしく、蛇に丸呑みにされた蛙のごとく。
ごとく、ではなく本当に蛙と同じなのかもしれない。瞳が触れる箇所はどこもまるで、瞳のお腹の酸を浴びているようにピリピリと溶けるような刺激がするのだ。俺は、緩慢に緩慢に瞳に溶かされている。そんな気がしてならなかった。
どれだけ時間が経っただろうか。窓からの光はまったくない。つまりは夜なのだろう。問題はこの夜が、俺が監禁された日の夜なのか、それとも翌日の夜なのかということだ。もし翌日なら、俺は家に帰ってないことになる。親が心配するじゃないか。誘拐されたと思われるじゃないか。いや、実際誘拐だけども。最悪、警察沙汰になるかもしれない。そんな面倒なことはごめんだぞ。
身体は動かない。しかし、目は動くみたいだ。俺の身体は石みたいに動かないが、石になったわけではないらしい。唾液も出るし、涙も出る。まばたきはできるみたいだ。よくよく考えれば石になっているなら、瞳の感覚が伝わるとは思えない。つまりはただ単に俺の身体が、金縛りにあっているみたいなものか。とは言え、それがわかったからとはいえ、金縛りを解除する手段が見つかったわけではないが。
しかし、目だけでも動かせるなら。
俺は蛇の顔を見つめる。訴えるような感じで。
「…………?」
伝わった、か?
「…………なに?」
どうやら俺が言いたいことがある、ということは伝わったらしい。ぶっきらぼうに瞳は返事する。
「口、解いた、よ」
「えっ?…………おお、喋れる」
声が、声が出るぞ。なんか妙にうれしい。解放感がある。
「あ、身体は動かないのか……」
「龍郎、なに?」
目の前に瞳の顔が。って近い近いっ。
蛇のような蒼い眼がまっすぐに俺に見据える。なんだろうか、その眼には光がないように見える。正気を失っているような。恥ずかしさを覚えているはずだけど、俺はどうしてか目を離せなかった。
「なにか、言うこと、あるんでしょ?」
抑揚のない、感情というものが欠落したような口ぶり。昔と変わっていない。こいつは昔から感情を表にほとんど出さなかった。
「お、おう。お前、なんで、俺をこんなことするんだよ」
「………………チッ」
「……おい。舌打ちしたか?今、舌打ちしたか?」
「…………」
無視かよ。
ああ、蛇がなんか頬擦りしてくる。チロチロ舐めてくる。なんだよ、そんな媚びた眼で見るな。
「なあ、どうやったかは知らないけど、俺を動けなくして、ここから出さないとか監禁だぞ。犯罪だ犯罪。冗談じゃ済まない。警察も来るかもだぞ」
「……警察、来ないよ」
「へ?」
「私と、龍郎の、お父さん、お母さん。温泉、旅行行った、から。一週間、帰って、こない」
「はぁ!?」
ちょ、なにそれ聞いてないんだけど!
そんな素振り昨日全く見せなかったけど!
「だから、こうしてる、こと。誰にもバレ、ない。皆、知らない」
「いやいやいや、待て待て。学校はどうするんだ。何日も連絡なしに休むのはおかしいだろ」
「大丈夫、私、が勉強教える」
「それ、休む理由の解決になってないから!」
怒鳴るけど瞳はなんのその。全く気にしていない風だった。
「勉強は、教える。出席は、知らない」
瞳は無表情でさらっと言い捨てる。
「お前ってやつは……はぁ。じゃあ、最初の質問に戻るけど、どうしてこんなことを?」
「チッ」
またか。また舌打ちしたか。しかも、また蛇が愛らしい眼で俺を見てくるし。なんだこの対比は。全く逆に見える。
「じゃあ、この理由は後回しだ。質問二つ目。なんでお前は魔物娘になったんだ?どうやって?」
いきなり。朝は人間だったのに、放課後になればラミアみたいな魔物娘に変わっている。その変化が俺は気になった。それが、今のこの現状を指し示しているのかもしれない。
「……見知らぬ真っ白な、お姉さんにやってもらった。親切に、してくれた」
見知らぬ真っ白なお姉さん。誰だよ。しかし、魔物娘化させることができるってことはそいつも魔物娘ということはほとんど間違いないな。
「それで、理由はなんだ。なんで魔物娘になったんだ」
「……………………」
また無視か。でもこればかりは譲れないぞ。
「早く答えろ」
「………………私は、メドゥーサに、なった。メドゥーサ、かわいい?」
「ああ、かわいい……ってそうじゃあねえって」
こいつ話を逸らしに来やがった。
頬を染めてなんだか恥ずかしげだ。なんでだよ。
「メドゥーサは、目を合わせることで、人を固まらせることができる、の」
唐突に瞳はそんなことを言い出す。蛇がくねくねと嬉しそうにうねっている。
「……じゃあ、俺が今身体が、動かないのはお前の眼を見たからか?」
こくりと瞳は頷く。髪蛇たちが誇らしげに身体を反り返した。なんだかシュールな図だ。
「本当は完全に、石にできる、んだけど。石にしちゃうと硬い、から。動けない、だけにした。石化は私の自由で解け、る」
「ふぅん。俺が目を合わせなきゃ、その技にはかからないってことだな」
ぎゅっと目を閉じる。ふふん、これで俺に石化は通じんぞ。
「…………龍郎」
「なんだ」
「龍郎……」
「だから、なんだ」
「龍郎」
「だからなんだ!」
「ふふ、見てくれた」
ついつい目を開けてしまった。そこにあったのは瞳の眼。蒼く、暗く、どこまでも沈み込んでいってしまいそうなほどに深い、そして妖艶なまでに蕩けた眼。
俺は、見てはダメだと、早く逸らさなければならないと思いつつも、そうすることができなかった。
まるで、その眼に囚われかのように、吸い込まれてしまったかのように、食い入って見てしまう。
……きれいだ。
眼に光はない。蒼く淀んでいる。なのに、どうしてもきれいに見えてしまう。逸らすことなんて、できない。
「龍郎、私の、もの」
「私のものって、お前な」
なんだよ、その物言い。まるで瞳が俺のことを好きみたいな。いやいや、ないだろ。あれだけ、俺を毛嫌いしていた瞳だぞ。これも俺への嫌がらせの一環に違いない。
惑わされてはダメだ。
ダメなんだけど、なぁ。
「まあ、俺はどのみちお前が石化を解かない限り、家に帰られないわけだ。瞳はいつまで俺をこんなにしとくつもりだ?」
「……いやなの?」
「なにが」
「監禁」
いやだけど?
なにを言い出すのだこの娘は。
俺はため息をつく。瞳は無表情でなんの変化も見られないが、蛇たちは頭を落として、しょんぼりしているように見えた。
「はぁ。もうお前の気の済むようにしてくれ。ただし、捕虜の待遇はよくしてくれよ」
「大丈夫」
と胸を張ったのは少し面白かった。同時に哀れだった。残念なことに、瞳がいくら胸を貼っても強調される部位はないのだ。
とか、失礼なことを思っていたら髪蛇たちに噛まれた。ほとんど痛みの感じない甘噛みだったが、なんとなく怒っているのはわかる。悪い悪い、と俺は軽く瞳に謝ると、蛇たちは機嫌が治ったのか今度はペロペロとその噛んだところを舐め始めた。かわいいな。
などなど。久々に瞳とまともな話をした。と言っても俺が質問して、それに瞳が答えるだけだったけど。聞いてばかりなのもあれなので、俺のことを聞けよと言ってみたら、キッと睨まれた。「必要ない」と言われた。蛇たちはご機嫌な様子で擦り寄ってくるのに。酷い差だ。
でもよかった。瞳は昔からあまり変わっていないようだ。表情こそ無愛想だけど、きちんと返事してくれる。いやなことを愚痴っぽく聞かされて、子供の頃に戻った気分だった。昔から、瞳はいやなことがあったら俺に泣きついてきてたからな。
ちなみに質問でわかったが、今日は拐われた日と同じ日のこと。さすがに丸一日気絶しっぱなしといったことはなかったようだ。ひとまず安心。
そして安心したら来る驚異がある。
閉鎖空間に囚われたら食料の次に気にするもの。
万人が行わなければならない、不純なるものを身より排すための不可欠の行為。
俺は、天地がひっくり返るほどまでに衝撃的な圧倒的強制力を持つ衝動に襲われていた。
そう、尿意である。
「……瞳」
俺はメドゥーサな彼女を呼ぶ。無表情でこちらを見てくる。このときばかりは瞳が感情をあまり表に出さないことがうれしい。
俺は遠回しにトイレに行きたいと伝えた。だから、この鎖を外してほしいと。
俺の言葉にすぐに合点がいったのか、瞳はうんうんと頷く。
そして、スススと俺の隣から離れ、俺の前に床に座る。ちょうど、俺の股間の前辺りに瞳が来ると行った感じだ。
俺はそうした瞳の行動に、いやな予感しかしなかった。
そして完全にその予感は的中する。
「ちょ、瞳!?なにしてんだよ!」
瞳は俺のベルトに手をかけると、素早い手つきで俺のズボンを脱がしてしまった。あまりの手早さに抵抗する間もなかった。
そして、パンツに手をかける。
「や、やめ!おい、瞳マジでやめろ!洒落にならな、」
抵抗むなしくパンツは脱がされ、俺の愚息は白日の下に晒された。
尿意により半勃ちとなった俺の逸物。
瞳の目の前に俺の逸物は恥ずかしげもなく露になっていた。
「大きい」
そんなこと言わないでくれ……恥ずかしくて死にそうだ。
「おしっこ、出させてあげ、る」
「へ?」
気の抜けた俺の返事。しかし、次の瞬間、俺は逸物が晒されたことが大したことでないと思われるほどに驚愕した。
大きく開き、喉の奥まで見える瞳の口。唾液まみれのドロドロとした瞳の口。うねうねと舌が蛇みたいに動く瞳の口。それで、俺の逸物を咥えたのだ。
途端、俺の脳が甘美かつ破滅的な衝撃に見舞われる。まともに喋ることすらできない。
亀頭の尿道が瞳の喉奥にぶつかり、竿が長い舌で巻き付かれる。それだけでもおかしくなりそうなくらい気持ちいいのに、瞳はさらに口をストロークさせ、舌と頬で俺の逸物をしごきあげたのだ。そして、亀頭が喉奥にぶつけられ、頭を打ち付けられたような衝撃を味わわせられる。
「あ、うぁ、ひと、みぃ……だ、めだ、きもち、よすぎ、ぃぃぃ……」
呂律が回らない。頭にぼんやりと霞がかってくるようだ。このままじゃあ、出してしまう。おしっこを瞳の口に。瞳の口を、俺の逸物から出るおしっこで汚してしまう。黄金色の液体で顔中べちゃべちゃにしてしまう。そんなこと、ダメなのに。ダメなのに、瞳の汚れた顔を想像すると、何故か興奮してしまう。なんで。
「ほっひふ、なっふぁ……」
俺の逸物は半勃ちから完全に勃ってしまった。いや、それどころか、いつも自分でする以上に大きくなっている気がする。
瞳は口を動かすのをやめない。それどころかさらにストロークの動きを早くし、俺の逸物をマッサージするかのように口の中をモゴモゴと動かし始めた。上下だけじゃなく、左右斜めと全方位による快楽攻めは俺の頭を焦がし尽くしていく。
さらに瞳の髪蛇たちは俺の太股やおへそを舐めたりして、さらにその快楽を高めさせていく。
我慢しないと。我慢しなければ、瞳の口に……。
「っ!」
しかし、俺はとどめを刺された。瞳は我慢させてはくれなかった。
俺を見つめる瞳の眼。蒼く、深く、暗く、淀んで、それでも妖艶なまでに熱を帯びた瞳の眼。
俺はそれに見据えられ、眼で命令される。
尿意なんかとは比べ物にならないほどの強制力。さらに言うなら、瞳のフェラよりもずっと強力で、俺の興奮は最高潮に達した。
――女は男を目で犯す。
その言葉が頭をよぎる。
そう俺はまさに犯されていた。瞳の眼で。背筋を舐めあげられるようなゾクゾクする快楽を味わわされ、抵抗なくした蛙のようにされたのだ。
蛇に睨まれた蛙はただ呑み込まれるだけ。
俺は蛙なのだ。
そして、蛇の瞳は言う。
言葉でじゃない。
眼で俺に命令するのだ。
『出しなさい』
その瞬間、俺は瞳の口に漏らしていた。情けなくもあえぎ声を漏らしながら、瞳の口に不純なるものを漏らしてしまったのだ
「んぐぅ!」
瞳の頬が膨らむ。けれど、口から俺のが漏れ出ることはなく、喉を早く鳴らして、飲み干していった。
俺のが飲まれている。そう考えるだけで言い様のない興奮が沸き起こる。征服感?いや、その逆だ。飲ましているのではなく、飲まさせられている。俺は瞳に支配されているのかもしれなかった。
瞳は飲み終えるも俺の逸物から口を離さなかった。いや、それどころかまたもフェラを続けた。
「うむゅ、ずる、じゅるるるるるる、じゅぶじゅぶじゅぶぶぶぶぶ」
やばい、気持ちよすぎる。尿意とはまた違う欲望が沸き起こってくる。瞳はその欲望の塊を求めている。白い白濁したそれを。
「ダメだ!」
「うちゅるるる……?」
「離せ!瞳、それだけはやめろ!離せ!」
俺は理性をフル動員して快楽を頭から追い出す。一番有効なのは母親の裸。うぅ、気持ち悪い。だけど、理性は戻る。
「トイレに行かせてくれ、マジで!」
「ちゅぽん……トイレした、でしょ?」
瞳が口を小さく開けて、その中を見せる。俺のを飲み干した口だ。やばい、ムラムラしてきた。
「っ、ダメダメ!そっちのトイレじゃないんだよ!」
「……大きい、方?」
恥ずかしくて顔から火が吹き出そうだ。
「じゃあ、こっちも」
……はい?
瞳は俺をいきなりひっくり返した。つまり、俺の尻が瞳に見られるわけだ。
「龍郎の、お尻、かわいい」
「やめろ!冗談になってないから!」
見られてる見られてる。逸物を見られるよりもさらに恥ずかしい。
「いいよ、出して」
おいおいおいおい。それはダメだろ、常識的に考えて。いや、おしっこはいいというわけじゃないが、それでもダメだろ常考!
「今すぐ離さないと絶交だ!嫌いになるからな!」
俺はただただ叫ぶ。身体を動かそうとはするけどやっぱり動かないので、できることは叫ぶことだけだ。それでもあらん限りの声を出して、俺の気持ちを訴える。
「……きら、い?」
「ああ!嫌いになるぞ!」
「きら、い。私のこと、嫌いに……いや、そんなの、いや」
「…………?」
瞳の雰囲気が変わる。さっきまでの蕩けるような淫乱なものじゃない。触れれば壊れてしまいそうなガラス細工のような雰囲気。
瞳は俺の身体を起こすと、床に座った。下半身の蛇をぐるぐると丸めて小さくし、怯えたように眼を伏せる。
「ごめん、なさい。嫌いになら、ないで。嫌いに、ならないで。ごめんなさいごめんなさい」
蛇柄模様のパジャマの裾を握り締め、瞳は涙を眼にたたえながら謝る。髪蛇は死んだように力なく垂れ下がり、動く気配がなかった。
「ごめんなさいごめんなさい、嫌いにならない、で。ごめん、なさい。私を嫌いにならない、で。なんでも言うこと聞くから、ごめんなさい」
瞳は壊れたように「ごめんなさい」と言い続ける。ついには、泣きじゃくり始めた。まるで世界が終わってしまうかのように、生きる希望を失ったかのように、瞳の顔は絶望に染められていた。そして、それが現実なものとならないよう、俺に謝り続けている。それが俺には痛ましかった。見ていられなかった。
「悪かった。嫌いになるって言って。冗談だから。瞳を嫌いになんかならないから」
俺は瞳に、なるたけ優しくなるよう努めて声をかけた。身体が動かず、瞳を抱き締められないのがもどかしい。
「俺はこれからも瞳とは仲良くやっていきたいと思ってるから。絶対に嫌いになんないから。だからそんな顔するなよ」
そんな顔されると、俺まで悲しくなる。瞳のそんな顔は見たくない。
ややあって瞳の顔がこちらを向く。涙で眼は真っ赤だけど、そこには光があった。
「ほんとう?」
瞳は弱まりきった声で言う。
「うん」
「私のこと、きらいじゃ、ない?」
「嫌いじゃないって」
「だいすき?」
「ん……う、うん、まあ」
「……えへへ」
そこで珍しく瞳は笑う。いつも無表情な彼女には珍しい、はにかみ顔だ。本当に、本当に昔に戻ったようだった。
「えへへ……ぎゅう」
瞳は俺の腰に手を回し、胸板に頭を預けて抱き締めてくる。柔らかい瞳の感触と、髪からほのかに香る甘い香りが芳しい。本当に珍しいことだ。こんな風に甘えられたのはいつぶりだろう。
瞳の幸せそうに綻ぶ笑顔。それを見ていると、こっちも幸せになる。心が暖まっていく。そして、お腹が苦しくな、る?
「ってトイレ!そうだよ、俺、トイレ行きたいんだった!こんな、抱き締められてる場合じゃないんだって!マジで瞳、俺の身体を解けって!頼むからホント。嫌いにならないから解いてくれ!このままにされたら俺、終わるから!人生終了だから!諦める前に試合終了だから!頼むから瞳さん、いや瞳さま、俺のことが嫌いじゃないなら石化を解いてくれ!」
捲し立てる、捲し立てる。あることないこと思い付く限り全部並べ立てて、瞳に訴える。さすがの瞳も俺の剣幕には圧された様子で、慌てた風に何度も頷いた。
「と、解いた、よ、首輪も」
「助かった!トイレの場所って変わってないよな!?」
「う、うん」
「借りるぞ!」
俺はパンツとズボンを持って、部屋を飛び出る。もう一秒と我慢できなかった。人体でもっとと汚いものが、そこまで迫ってきている。
どうにかそれを体内に閉じ込め、俺はトイレに駆け込んだ。
―♪―
「あーん」
「あ、あーん」
「ん。…………はい、あーん」
「う、あ、あーん」
俺は今、肉じゃがを食べている。いや、違うな。食べさせてもらっている、か。トイレから戻った俺はただちに空腹を覚えたのだが、瞳は俺がそのことを訴える前にもう食事の用意をしたのだ。そして、俺をまた眼と首輪で拘束すると、俺に肉じゃがを食べさせてきたのだ。
もちろん、自分で食べれると言ったのだが。
「私が、食べさせる……龍郎、お口開けてればいい、から」
何度言ってもこの一点張りである。聞く耳持たずだ。
高校生にもなって、他人に食べさせてもらうなんて、恥ずかしくて仕方ない。赤ちゃんかっての。
しかも、ただ食べさせてもらっているわけじゃないのだ。
俺は今、ベッドの上に座っているわけだが、腰と脚が瞳の下半身の蛇に巻き付かれている。瞳は俺の背中にぴっちりと身体をくっつけて、俺に身体を預けているのだ。慎ましやかな胸の感触が生々しくて、気が気でない。
瞳は俺の脇から通した両手で肉じゃがの大きめのお椀を持ち、髪蛇が巻き取ったスプーンで肉じゃがの具を取るという器用なことをしている。端から見たらシュールな絵面だが、当の本人の俺からしたら心臓がバクバクものだ。なにせ背後から抱きつかれているようなものだから、瞳の顔は俺の真横にある。食べているところは見られるし、しかも髪蛇はたまに瞳の口にもスプーンを運ぶ。つまり、
「もぐもぐ……うん、おいし、い。はい、龍郎、あーん」
「ああ、うぅ」
「あーん」
「あ、あーん」
「おいし、い?」
間接キスである。俺は、瞳と間接キスしたのだ。緊張して味なんてわかるか。
さっきキスよりももっとハードル高いことされたけど、思春期の男子にとってキスはまた別次元の問題なのだ。うう、恥ずかしい。
「龍郎、おいしく、ない?」
「え、ああ、おいしいおいしい!瞳って料理上手かったんだな!初めて知った」
「…………」
ぷいっと顔を明後日の方向に向けるが、顔が赤いので照れ隠しかもしれない。髪蛇が俺にすりすりと身体をすり寄せてくる。
「龍郎は、目玉焼きも作れない、もんね。この前、焦がして、た」
「な、なんで知ってるんだよっ」
家で挑戦してみたらあえなく真っ黒な太陽になったので、誰にもバレないように処分したはずなのに!
「龍郎のこと、なんでも、知ってる」
「な、なんでも、だと?」
「エッチな、本の隠し場所、とか」
「やめて!?俺のプライバシー侵害しないで!?っていうか、なんでそんなこと知ってんだよ!」
「龍郎のお母さんが、言ってた。隠し事、ダメ、皆に、平等に教えるべき、とか、なんとか」
おのれコミー!
「エッチな、本。巨乳ばっか、り。龍郎は、巨乳好き?小さいの、嫌い?」
とか言って、ぐいぐいと胸を押し当ててくる。小さいからこそなのか、当たる胸の真ん中に小さなしこりの感触があった。言わずもがな。それは乳首で間違いないのだろうが、胸の小さいせいか、そこの触れる部分が敏感に感じられて、情欲をそそられる。
正直なところ、俺は小さいよりも大きい派であるのだが、この感触だけはどんな巨乳にも負けているとは思えなかった。
「お、俺は別に、瞳のなら大きさとか関係ない、からな」
ってなにを口走っとんだ俺は!
そんなこと言ったら、俺が瞳のことを。
「そ、そう、なんだ。……べ、別に、龍郎にそう言われても、嬉しくない」
じゃあ、聞くなよと内心でつっこむ。
顔は見えないけど、きっと無表情なんだろうなと思った。声が若干上擦っていたのはきっと気のせいだろう。
「まあいいや。じゃあ、もっと食べさせてくれよ。腹減った」
もうやけくそだ。どっちにしろ食べさせられるのだから、こっちからせがむことにしよう。徹底的に食べさせてもらってやる。
髪蛇が俺に汁の染み込んだ肉とじゃがいもを運ぶ。思いきりもよくなると緊張も薄れるらしい。俺はようやく味がわかるようになってきたのだった。
うん、おいしい。
―♪―
食器洗いをしてくるとのことで、俺は暇になった。なので帰る、ということはできないので身体を解いてもらい、部屋の中では自由に動けるようにしてもらった。さすがに首輪までは解いてもらえなかったけど。
改めて部屋を見渡して見ると、無愛想な割には部屋を女の子らしくしていると思った。昔と変わらず、デフォルメされたかわいいもののぬいぐるみは好きのようだ。
変わったといえば本棚。少年漫画や少女漫画など多岐に渡ってあるが、下の方の一角に、魔物娘関連の書籍がある。魔物娘図鑑という、魔物娘の種類や特性などが書かれた辞書のようなものまであった。
これには興味がある。瞳がなったメドゥーサというものがいったいどんな魔物娘なのか、それが気になる。
俺はその辞書を手に取り、メドゥーサの項目を探した。大した労力もなく、メドゥーサの挿し絵と説明文が載せられたページを発見。挿し絵は少しエッチで、瞳よりは大人びた雰囲気があった。少々その挿し絵に目を奪われながらも、俺はベッドに腰掛けてそこを読む。
そして、絶句する。
「マジか……」
髪の毛の先が蛇となっていること。眼を合わせると石化させてしまえること。基本的には一人でいる種族だということ。石化させて行為に及ぶことが多いということ。
ここまではまあいい。さっき瞳に教えてもらったことも含まれている。
しかし意地っ張りで強がりな性格に反するように、蛇たちが素直な行為を見せるだと?
つまり、表面上は嫌っているように見えても、蛇たちが敵意を露にしていなければそれは嫌っているわけではない。そして、もしも蛇が好意を寄せている素振りを見せているのならそれは……。
「それが瞳の本心……蛇たちが瞳の、本心」
蛇の好意。さすがに心当たりがありすぎる。すり寄ってきたり、優しく舐めてきたり、身体を絡ませてきたり。瞳を誉めたりしたら、本人の無表情とは裏腹に嬉しそうに身体をくねらせたり。敵意のない、優しげな表情で見てきたり。
これに気づかないほど、俺も鈍感じゃない。心当たりがありすぎる。
それに、蛇だけじゃない。顔では無表情ぶっていても、行動でわかるだろ。赤の他人の逸物を普通、舐めるか?あり得ないだろ。
もしかして、本当にもしかして。
「瞳が、俺のこと……」
「龍郎?」
「っ……」
ドアがゆっくりと開き俺は呼ばれた。
瞳が部屋に入ってくる。
俺は魔物娘図鑑をすばやく閉じる。しかし、本棚に直す余裕はなかった。
「龍郎、それ」
「え?ああ、暇だったから、さ」
「なに、見てた、の?」
「へ?あ、ええっと、色々と」
メドゥーサの欄だけしか見てないけど、さっきの内容を読んでそれを言うのは恥ずかしかった。
しかし、失敗だったかもしれない。
「それ、一応、エッチな、本……」
「え?」
これ、18禁なの?いや、魔物娘関連なのだから当然か。っていうか、そんなものを普通に本棚に置いとくなんて。
「色々、見たんだ。ふー、ん。エッチな、挿し絵、いっぱいだ、もんね」
「えーと、」
怒ってる、のか?無表情でわからん。
でも確か見極めるには髪蛇たちを見れば。
シャー!
どぎついほどまでじゃないけど、声を荒げて牙を見せている。瞳が怒っているのは確定だ。
「じゃあ、エッチな、龍郎。お風呂、行こう、か」
瞳は俺の目の前にするすると近寄り、目を合わせてきた。つまりはその能力を使うためだろう。たちまち俺は身体が動かなくなる。心なしかいつもより固まったような気がした。しかし慣れないものだ。
瞳は首輪を外し(何故か鍵は使っていない。なので魔力の籠ったものなのだろう)、俺をいわゆるお姫様だっこした。……普通逆じゃないか?
「重くないか?」
「魔物娘は、力持ち。龍郎の一人、や二人、簡単」
誇らしげに蛇は身体を反り返らせる。わかりやすい。
やっぱり、そうなのだろうか。
うぅ、そう考えると顔が熱くなる。
「龍郎、顔、赤い、よ?熱?」
「!!!」
顔、顔!顔近い!おでこ同士が当たって、顔が!
「……熱、ない。じゃあ、お風呂、大丈夫」
半ばオーバーヒートしている俺は、力持ちになった瞳にお風呂場へと運ばれるのであった。
―♪―
風呂場に運ばれて俺は正気に戻る。今更だがこの流れ、やばくないか?
だって、トイレも食事もしてきた瞳だぞ?風呂で身体を洗ったりするのだって。
「あのー、つかぬことお聞きしますが、風呂に誰が入るんですか?」
「私、と龍郎」
ですよねー。
「いや、あのさ、男と女は風呂に一緒に入るべきじゃないと思うんだけど。裸、見られるし」
「魔物娘は、いいの」
いいの?
「裸、見られても、気にし、ない」
「俺は気にするんだけど」
「気にしたら負け」
うん、そう言われる気がしてた。
俺の口での抵抗むなしく、俺は瞳に服を慣れた手つきで脱がされ、産まれたときのままの裸一貫にされた。
瞳もその裸体を惜しみ無く晒す。髪蛇たちは瞳の身体に隠れた。やっぱり恥ずかしいんじゃないか。
でも、やっぱりきれいだ。髪止めを取ってほどかれた水色の優しい髪と蛇たち。色合いの病的なまでに真っ白な肌、肩から腰にかけての流麗な曲線。蒼い鱗に包まれた蛇の下半身。慎ましやかな胸とそこに乗る赤い果実。そして、瞳のもっとも大事な、ピンクの唇でぴっちりと閉じられた秘部。
俺はついつい食い入るようにして見てしまう。
惚けている俺をお風呂場に連れ込み、瞳は俺の後ろにまわった。風呂場の広さは二人ならまだ余裕がある。一般家庭でなら広い方じゃないだろうか。
そして、瞳は石鹸とスポンジを手に持つ。
「なぁ、自分で洗わせて、」
「龍郎、ゆっくり、してて。私、洗う、から」
なんかもうね。わかってたから。驚かない。でも、恥ずかしいのに変わりはない。恥部を隠さず、女の子の前で晒すなんて、どこの変態だ。俺には露出して興奮する性癖など持ち合わせていないというのに。ただただ恥ずかしいばかりである。
瞳は俺を風呂場に立たして、適温調整したシャワーで俺を自分を濡らす。瞳は興味なさげだが、髪蛇たちは食い入るように俺の身体を舐め回すがごとく見ていた。つまりは、瞳も興味津々なのだろう。
瞳は手に取った石鹸とスポンジで泡立てたものを自身の身体に乗せていく。鏡で見えるが、手や胸などに重点的に泡を乗せているようだった。もしかして、
瞳は俺の背中に抱きつくと、胸についた泡で俺の身体を擦り始めたのだ。
「ひ、瞳さーん?洗い方がおかしいよーな」
「私も、龍郎も、一緒、に洗える……効率的、かつ、画期的な方、法」
いや、これただのソープだから。風俗と変わらないから!
「っ……」
でも、気持ちいい。瞳の柔肌が俺の身体に吸い付くように絡み付いてきて、ローションで身体を洗われているような気持ちよさだ。それをしているのが、俺の幼馴染みの瞳で、俺のことが好きかもしれないやつで。
瞳は背中を擦り合わせるのを終えると、今度は俺の身体に前にやって来た。やることは背中のときと変わらない。ただ、瞳の柔らかい慎ましやかな胸が俺の胸と擦れて、乳首が触れあう。首に回された手に力がこもり、瞳は息を殺したように、ふぅふぅと息を吐いた。瞳も感じているのか。
「ひ、瞳!そこは……うぅ」
瞳は泡まみれになった手で逸物とお尻の穴にあてがう。
「大丈夫、イかせる、なんてもったい、ないことはしない、から」
確かに高められていく快感を与えられている訳じゃないけれども。それでも、幼馴染みに逸物とお尻を触られているこの状況は思うところがある。なんせ心地いい。恥ずかしいけど、蕩けてしまいそうに気持ちいいのだ。身体が動くのなら確実に尻餅はついただろう。そんなくらい。
「終わ、り。次は脚」
もう終わりか。
もう少し、という勇気は俺にはなかった。
泡を乗せた蛇脚に絡まれて脚は洗われた。水と泡にまみれた鱗はほどよい硬さで、俺の脚を擦っていった。
最後に髪をシャンプーで洗われ、終了。
俺はまたもお姫様抱っこで運ばれ湯船に浸からさせてもらった。熱すぎもない適温。身体が動かないから溺れないかと思ったが、能力を解いてくれたみたいだ。ようやくほっと一息つけた。
瞳は残り髪を洗うそうで、まだ湯船には浸からないそうだ。瞳の髪は男の俺に比べれば長い。仕方ないか。
髪蛇がこちらを見ている。微笑み返すと、恥ずかしげに俯いた。やっぱりかわいい。蛇も、だけど。この蛇は瞳も同然で、つまりはそういうことだ。
「おま、たせ」
髪を洗い終えた瞳が湯船に入ってくる。
しかし、立ったまま浸かろうとしない。
「瞳?」
この位置は目の前に瞳の秘部が来るのだ。俺は心臓が無駄に鼓動を速めるのがわかった。
「龍郎、最後に、洗って、ほしぃな」
意外な瞳のお願いだった。意地っ張りで頼むようなことはしない瞳のはずだが。魔物娘化でそれはさらに進んでいるはずなのだが、瞳はそんなことを俺に言う。
「どこを?」
しかし、もう身体は洗い終えたんじゃあ、
「こ、こ」
「……はい?」
瞳が示したのは、俺の目の前にあるもの。つまりは瞳の秘部。オマンコである。
瞳はオマンコの秘唇を摘まむと、横に軽く広げて、穴を俺に晒した。ひくついたそれは半透明な液体をこぷっと音を立てて吐き出している。
「えーと、瞳さん?洗うって、石鹸で?」
「ううん……、龍郎の、」
嫌な予感。
「口で」
瞳は俺の後頭部に手を当てると、一気に俺の口を自身のオマンコに押し当てた。
「んぶっ!」
突然のことで抵抗できるはずもなく、俺の口は瞳のオマンコに覆われる。鼻もオマンコ上部の秘核、つまりクリトリスに押し当てられ、息ができなかった。
息ができない俺は口を開くしかない。しかし、そうしたことで瞳のオマンコの秘唇が俺の口に入ってしまった。オマンコの汁にまみれた秘唇が俺の口に含まれる。
「龍郎、舌、当たって!」
息を吸うためにはどうにかもがくしかないのだが、そうすれば否が応でも下がその秘唇に触れてしまう。その汁が俺の舌に転がってしまう。
その瞬間、俺の頭はピンク色に染まった。
甘い、水飴よりも甘い、瞳のオマンコの汁。舌に絡み付くように残り、溶かすように広がっていく。その広がりは口に留まらず、喉奥へ行き、下ではなく上の脳まで行った。頭が溶ける。溶けて、蕩けて、流れ出て、理性のタガがゆっくりと外されていく。
これをもっと舐めたい。もっと欲しい。もっと瞳のが欲しい。
そんな欲望が解放されていく。
「んじゅる、じゅぶじゅるるる。れろれろ、はむ、じゅるるるるる」
俺は無意識のうちに舌を動かし、瞳のオマンコを舐め回していた。オマンコから湧き出る甘い汁を啜り、甘美な味に酔いしれた。
「たつ、ろう……んん」
瞳のあえぎ声が遠くから聞こえる。それも俺の理性をどんどん崩していく。もっと、もっと欲しい。
「じゅる、ぷはぁ、んむ。れろれろれろれろ、じゅるるるるるるる」
いくらでも出てくる。止まらない。おいしい。止められない。こんなの味わったことがない。瞳、瞳、瞳、瞳、瞳。
「んん、んんっ。たつろ、う。イク、よぉ。イッちゃう、よぉ……」
「じゅるるるるるるる」
いいよ、イケ。イッちまえ。俺にぶっかけていいから。遠慮すんな。
止めと言わんばかりに、俺は瞳のオマンコの穴に舌先をねじ込んだ。
「ああ、ああああああ!」
瞳の叫び。それとともに瞳のオマンコの穴は収縮し、俺の舌を奥へ奥へと引き込んだ。
そして、爆発。
瞳の半透明な汁が穴から潮吹きのように解き放たれ、俺の舌に、口に、鼻に、
頬に、目に、おでこに全てに降り注いだ。
「ハァハァ、ハァ、ハァ」
瞳は力なくしたように倒れ込み、俺にしなだれかかる。
幸い、俺もその潮吹きの衝撃で正気に戻ることができた。瞳の身体を支えて、背中を俺に預けさせる。まだ頭はピンク色が抜けきらないけれど、逸物が恥ずかしいことに勃っているけれども、力なくした瞳に襲いかかるほど理性が消え去ってはいなかった。
「瞳、大丈夫か?やりすぎた、悪かった」
「べ、別に、謝る必要、ない。平気だも、ん。ほとんど、イッてない、し」
肩で息するくらいなくせに。
「意地っ張りめ。まあいい、じゃあしばらくはこうしていようか。しんどくなったら言えよ」
「う、うん……………………あり、がと」
「え?」
最後なんて言った。よく聞き取れなかった。
「な、なんでも、ないっ」
背中を預けられているから顔は残念ながら見えない。
やがて頭のピンク色も取り除かれていき、湯の温かさをやんわりと感じれるほどまでには落ち着いた。瞳も俺に全体重を預け、なすがままである。髪蛇たちが俺に甘えるように絡み付いてきて、それが瞳の本心で、すごくうれしく思えた。
「そういえば、こうやって風呂入るの何年振りだっけか」
八年?九年?もっと?
「十年、と三ヶ月振り」
迷うことなく瞳は言った。
「よく覚えてるな」
「忘れたこと、ない」
「ふぅん。でも、まさかこの歳になって一緒に入ることになるとは」
しかも、さっき俺は、瞳のアソコを。
やばい、理性なくしてたときのこと思い出すとすごい恥ずかしい。殴りたいくらいだ。
「いつでも、」
「ん?」
「これからは、いつでも、一緒に、入れる、から」
「……………………」
やばい。鼻血出そう。
「ま、まあ、瞳がそうしたいときなら付き合ってもいいかなー、なんて……」
気恥ずかしさを隠すために言ったわけだけども、
「じゃあ、毎日になる、ね」
どうやら地雷を踏んだみたいだ。
っていうか意地っ張りどこいった。
「いや、龍郎のために、仕方なく、だけど。龍郎、おっちょこちょい、だから。一人でお風呂、危ない」
ここにいたか意地っ張り。
「俺が風呂場で事故るとおっしゃるか」
「実際、石鹸踏んで、頭ぶつけてた」
いや、あれは。
「一週間に、一回ペース、で」
「なんでそれを!?」
「龍郎のことで、知らない、ことない。最近、服のコーデ変えたのも、知ってる。最近、ちょっと、疲れ気味で、なかなか寝つけられないことも、知って、る」
瞳は、本当に、本当に俺のことを。
なんだよ、なんでそこまで知ってくれてるんだよ。俺は最近の瞳のことなんにも知らないのに。
なんで。
「なぁ、瞳」
「うん」
「色々、質問いいか?」
「どう、ぞ」
そうだよ。知らないなら、知ればいい。
もう瞳は、俺を無視したりしないんだから。これまでの瞳を知ればいいんだ。
俺の中で止まっていた瞳を成長させよう。
そして、俺の中の瞳への気持ちも。
昔の瞳から、今の瞳へ。
―♪―
瞳が家から持ってきたらしい、俺のパジャマに着替え(させられ)て、俺と瞳は床についた。俺の予想通り、寝る場所も瞳と同じで、瞳の部屋の瞳のベッドだった。シングルのベッドなので、身体をくっつけなければ落ちてしまう。とはいえ、瞳は身体をぴったりと寄せてくるので余計な心配だ。
最初は拒否しようとも思っていたけど、どうせ断ることもできないので、素直に受け入れた。一緒に風呂に入ったことを考えれば対した羞恥ではない。
まあ、やはり同い年の女の子と、しかも瞳と同じで場所で肩を寄せあって寝るというのは、ドキドキするものだが。
「いい匂いもするし……」
「なにか、言った?」
「い、いや、なにも」
「……こうして、一緒に寝る、のも久しぶり、だね」
瞳は下半身を俺の身体に巻き付け、上半身は俺の脇の下に潜り込むようにして寝転んでいる。腕枕に近いような感じか。
「そうだな」
「八年と六ヶ月ぶり。小学二年生の頃の冬休み以来だよ」
「ほんとよく覚えてるのな」
「忘れたこと、ないもん」
「そうだった」
部屋はもう暗い。瞳の姿も顔もなにも見えない。ただ、瞳の柔らかい身体の感触と甘い匂いとゆっくりとした鼓動だけが伝わってくる。
「……龍郎」
「うん?」
「龍郎」
「うん」
「私、変わった?」
「それは姿か?それとも中身か?」
返事はない。なにかを期待しているような雰囲気でもなかった。
「俺は瞳がどう変わろうと気にしない。……正直、話せるようになったのはうれしいけどさ。ここしばらくずっと、無視されてたからさ」
「……ごめんなさい」
しまった。少しばかり責める口調になってしまったか。
「謝らなくていいって。理由は、まあ、聞かないでおくよ」
風呂場でも何度聞いても教えてくれなかったし。
長い間離れていたから、一朝一夕で瞳のことを知るのは難しかった。今の瞳に昔の瞳が追い付くのはまだまだかかりそうだ。
「あり、がと」
ぎゅっと俺を締め付ける瞳の腕が強くなる。瞳を感じるものが高まってくる。
「……龍郎は、もし、私が、龍郎を、襲ったら、嫌いになる?」
唐突だった。瞳は感情の籠らない希薄な声音で聞いてくる。
「無理矢理したら、怒る?嫌いにな、る?」
襲うっていうのは、性的な意味でのことなんだろうな。きっと。
しかし、実際の意味だとしても俺の答えは決まっている。
「ならないよ。嫌いになんてなるもんか」
瞳がぴくっと身体を震わす。
だけど、と俺は繋げた。
「もうしばらく待って欲しいのが本音。俺の気持ちの整理がつくまでさ。なにされても後悔しないとおもえるようになるまでは。まあ、今無理矢理されたら俺は抵抗できないんだけど……」
「わかっ、た。待つ」
「待ってくれるんだ」
「私は、心が広い。だから、待てる。甲斐性なしの、龍郎とは、違う」
散々な物言いだな。
だけど、これで一安心か。
あとは俺の気持ち次第。
俺はどうしたいんだ。瞳とどうしたいんだ?
まだわからない。でも大丈夫だろう。時間はあるのだから。ゆっくりと答えを出せばいい。
昔の瞳を、今の瞳へ。
昔の思いを、今の思いへ。
しかし、俺は知らない。
時間は有限であることを。
俺はきちんと理解していない。
瞳が魔物娘であることを。
13/03/28 23:23更新 / ヤンデレラ
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