サソリが針をみがいてた/白のワルツ
サソリが針をみがいてた
うた:ヤラナイカ
CGデザイン:アルアルとナイナイ
映像:シエラ・ハザード
♪
鋼の騎士をのせた竜が
静かに空を 西へゆく
竜はどこへ帰るのか
ひとりの夜を見つめながら
サソリが針をみがいてた
おいでおいで子羊たちよ
眠れ眠れこの手の中で
長い旅の終わるところ
私の下でお休みなさい
こころを針で辿ってゆけば
震えた声で君が歌うよ
ラル・ライラ・ルラ
ラリ・ライラ・リラ
ララ・ライラ・・・
♪
砂の道ゆくゴブリン
巨獣の背には宝物
魔界の果実に 蜘蛛の絹
ときに素敵な人までも
♪
人無く荒れた村跡で
月夜に光る君を見た
とても綺麗な黒い肌
“ついて行きたい。どこまでも”
僕は小さく首を振る
君を連れてはいけないよ
“せめて今夜は壺の中、旅の疲れを癒しましょう”
♪
東の空に鳥の群れ
手紙と共に飛んでくる
遺跡に犬の声ひびき
明けてく夜を見つめながら
サソリが砂に潜ってく
* * * * * * * * *
白のワルツ
詩:白髪麗子
曲・歌:白髪美尾
アニメーション:シラガジャ・ナイヨ
♪
こんなに月が赤い夜は
素敵なことが起きるよ
どこか見知らぬ森の中で
目覚めるあなた
角の生えた少女が来て
ミルクはいかがと搾り出す
褐色タイツのダークエルフは
踵をならす
♪
貴方はどこにいるの?
魔界の闇の迷子
私の声が聞こえないの?
ずっと呼んでいるのに
眠れぬこの魂は
あなたを探し夜の中
まっ白な髪の王女様が
翼ひろげダンスに誘う
♪
金色毛並みの獣たちが
九本の尻尾をふりふりと
紫池の水の上で
踊りが始まる
求めるものはなあに?
私? それとも愛かしら?
ピンク色の霧を抜けて
本当の私見つけて
冷たいその指先を
純白の羽でくるんで
まっ白な髪の王女様は
月の色の瞳で笑う
満ちては欠ける
空をゆく真紅の月
離れてもまた会えると
語りかけてくるよ
♪
こんなに月が紅い夜は
素敵なことが起きるよ
どこか見知らぬ森の中で
目覚めるあなた
♪
こんなに月が明(あか)い夜は
すてきなことが起きるよ
愛する人は未だ遠く
いつかその胸に抱かれ
永遠の夢を見る
* * * * * * * * *
曲解説
・サソリが針をみがいてた
夜の砂漠と魔物の美しさ、恐ろしさを静かに歌った名曲。
ジパングでは放送された時期が悪く、あまり話題にならなかった。
・白のワルツ
魔王の娘として強大な魔力と魅力を持って生まれた、リリムの孤独をテーマとした曲。製作にはリリムが関わっているという噂があるが、真偽は不明。
なお、冒頭に出てくる墓標のような建物が林立する不思議な街は、最近魔界で噂されるジパングによく似た異世界“ニポン”をイメージしたもの。アニメーターは実際にニポンを見てきたと言っているが、真偽は不明。
─────────────────────────
穴埋めのおまけ
まもののうた名曲絵コンテ集・13
・サソリが針をみがいてた
・白のワルツ
絵コンテ『サソリが針をみがいてた』
監督注:
カメラは急激に動かさない。曲調に合わせてゆっくりと動かすべし。
それと作画チーフは少し頭を冷やすこと。
0:00
(前奏)
壁にかかった絵。
月を見上げる女性(逆光で影になってる)が描かれている。
月にズームしていき額縁が消える。
0:19
『鋼の騎士をのせた竜が』
絵ではなく本物の月になっている。
音も無く、月を横切るドラゴン。(真下から見上げる構図)
0:23
『静かに空を 西へゆく』
カメラ、ドラゴンの後方に回りこむ。
ゆったりと飛んでいくドラゴン。時おり翼や尾を動かす。
ドラゴンの背中に人影。
0:31
『竜はどこへ帰るのか』
画面、地上(砂漠)でドラゴンを見送る女(ギルタブリル)の後ろ姿。
砂の上に座り込み上半身だけ起こしている。
0:37
『ひとりの夜を見つめながら サソリが針をみがいてた』
構図そのまま。
ギルタブリルはドラゴンを見るのをやめ、下を向いて包丁を研ぐような動き。
(尻尾の針を研いでいる。尻尾は脱力させ、体の横から前に回している)
※骨格について深く考えてはいけない。予算と納期の問題でモデルが用意できなかった。つまり上が悪い
0:53
『おいでおいで子羊たちよ』
場面変わって夜の砂漠の街道をひとり歩く男。
背中に荷物を背負い、顔は布やターバンで隠れ、目元のみ。
0:59
『眠れ眠れこの手の中で』
立ち止まり、上を見る。吐く息は白い。
(少し疲れたな、といった様子)
また歩き始める。
1:05
『長い旅の終わるところ 私の下でお休みなさい』
男の輪郭が砂に描かれた男の絵(上半身)に変わる。
描いているのはギルタブリルの指。
上半身を倒し、砂の人物画に頬ずりするように寝そべる。
1:18
『こころを針で辿ってゆけば 震えた声で君が歌うよ』
尻尾の先が男(絵)の顔→首→胸とたどっていく。
ギルタブリルはその反応を想像して満足そうな笑みを浮かべる。
1:30
『ラル・ライラ・・・』
風が吹き、砂の絵は崩れていく。
ギルタブリルは笑みを浮かべたまま瞳を閉じる。
1:45
(間奏)
舞い上がる砂で画面が覆われる。
砂をスクリーンにして壁画調の砂漠の魔物の絵
・人間を地面に引きずりこむ赤い手(グール)
・球体を転がすケプリ
・獲物に襲いかかるサンドワーム
・アヌビスに心臓を捧げる男
・太陽と月を背負い向かい合うファラオとアポピス
2:03
『砂の道ゆくゴブリン 巨獣の背には宝物』
砂嵐晴れ、夜の砂漠。
画面右側、砂が舞う。
画面奥へ進む魔界豚の足。
荷物を左右に満載し、またがっているゴブリンの足。
2:15
『魔界の果実に 蜘蛛の絹』
魔界豚の手綱を握り、揺られているゴブリンの後頭部。
ゴブリンの先に広がる夜の砂漠。
2:21
『ときに素敵な人までも』
ゴブリン、後ろ(画面側)を振り返り、画面(の向こうにいる誰か)に向かって笑いかける。
2:29
『人無く荒れた村跡で 月夜に光る君を見た』
場面変わって廃墟の村、枯れたオアシスの植物が生えている。
2:41
『とても綺麗な黒い肌』
屋根が半分崩れた廃屋の中、月光に照らされている壺。
2:47
『“ついて行きたい。どこまでも”』
壺を持ち上げる男の横顔(影)。
(影絵の壺と男が向かい合い、壺の凹凸が人の横顔に見える。)
※壺の魔物について
当初は普通の人型つぼまじんとして登場させる予定であったが、作画チーフにデザインを任せたところ凄まじい書き込みと20項目以上の脚注を入れた“ぼくのかんがえたさいきょうのつぼまじん”をデザインしてきたので、諸事情あって没となった。
3:06
『僕は小さく首を振る 君を連れてはいけないよ』
壺を置く男。壺に背を向け立ち去ろうとする。
3:18
『“せめて今夜は壺の中、旅の疲れを癒しましょう”』
壺がやわらかく光を放つ。
(周りを照らすような明るい光ではなく、ボウッと蛍や鬼火のように)
振り返り壺を見る男。壺の光がぼんやりと男の顔を照らす。
※男の顔
アーモンド型のパッチリした目。南国風の整った顔。
夜かつ影になっているので、若いイケメンとわかる程度。冒頭の一人旅の男と同一人物別人。服装がちょっと違う。
・注意)男の描写について作画チーフが注文をつけてきたら無視すること。
3:40
『東の空に鳥の群れ 手紙と共に飛んでくる』
廃墟の村。画面右側から明るくなってくる。日の出。
廃屋の中、天井の穴から落ちてくる手紙。
廃屋はがらんとして、壺がひとつあるだけ。
3:52
『遺跡に犬の声ひびき』
三角形の遺跡を遠くから眺めるギルタブリル。
上空には配達のハーピーたち。
4:00
『明けてく夜を見つめながら』
太陽が少しずつ明るさを増し、夜が消えていく。
日光に照らされるギルタブリル。
4:04
『サソリが砂に潜ってく』
陽の光に追われるように、下半身で砂を掘り潜っていく。
潜った後には少しへこんだ地面。
4:14
sabak-unyamamo nogayousa nosoro-siya piya
乾いた風が砂を巻き上げ、全てを平らに覆っていく。
絵コンテ『白のワルツ』
〜表紙裏の殴り書き〜
“クソ監督、書き込みゃいいってもんじゃねーぞ!動かす人間のことも考えろ!”
0:00
(前奏)
墓標の街。夜。
巨大な建物が林立する都市。
狭い路地を歩く男の影。
男、手首の時計を見る。アナログの文字盤。間もなく深夜0時。
ふと立ち止まり上を見上げる。
カメラ、男の視線を追って建物をなめるように空を見上げる。
空まで伸びた建物の隙間から満月。
音楽の盛り上がりと共に月にズーム。
満月とアナログ時計が重なり、秒針がカウントダウン。
0時を指すと同時に月がフラッシュ。月の光が画面を包み込む。
0:28
『こんなに月が赤い夜は 素敵なことが起きるよ』
光が収まり赤い満月。
カメラ、月を見上げた状態から視線を下へ。
月下に広がる森。
0:35
『どこか見知らぬ森の中で 目覚めるあなた』
森の中、倒れている男。
起き上がり周囲を見回す。何が起こったかわからない。
0:45
『角の生えた少女が来て ミルクはいかがと搾り出す』
ホルスタウロスが描かれたBARの立て看板。
(書いてある文字は男には読めない)
看板の矢印は森の奥を指している。
ホルスタウロスの絵が動き出し、場面はBARへフェード。
0:54
『褐色タイツのダークエルフは 踵をならす』
場面:森の中のBAR
ジョッキを両手に持ち、テーブルへ給仕してまわるホルスタウロス。
舞台の上、暗がりからダークエルフが現れ調教ショー。
※BARについて
店の半分は湖に突き出たテラス席になっており、舞台はそちらにある。
入り口は建物側。
1:02
『貴方はどこにいるの? 魔界の闇の迷子』
場面:城の一室
窓から外を眺めるリリムの後ろ姿。
部屋の中は暗く、窓から月明かりが差し込んでいる。
1:10
『私の声が聞こえないの? ずっと呼んでいるのに』
場面:森の中
何かに追われ駆ける男。
一瞬、後ろを恐怖に満ちた顔で振り返り、また駆ける。
1:18
『眠れぬこの魂は あなたを探し夜の中』
場面:城
窓枠を蹴り、外へ飛び出すリリム。森の上へ飛んでいく。
※飛ぶと言うより滑空するようなイメージで、上昇はしない。迷うように探すように左右に大きく蛇行しながら森の上空へ滑っていく。
1:27
『まっ白な髪の王女様が 翼ひろげダンスに誘う』
BARの上空、眼下の灯り。
髪をなびかせ、舞台に舞い降りるリリム。
1:36
(間奏)
森を駆ける男、髪を振り乱し、服はところどころ破れている。転びかけまた走る
視線の先に小さな明かり。
1:43
『金色毛並みの獣たちが 九本の尻尾をふりふりと』
リリムに舞台を奪われた踊り子衣装の妖狐たち。
「しょうがないなあ」という感じ、
笑ったり観客を誘うような動きをしながら、テラスの枠を踊るように飛び越える。
1:52
『紫池の水の上で 踊りが始まる』
湖の上で踊り始める妖狐たち。
酔っ払った男が踊りに誘われ湖に落ちる。ドッと笑う観客。
リリムは舞台の上でひとりうつむいたまま。
2:00
『求めるものはなあに? 私? それとも愛かしら?』
舞台の上で歌いだすリリム。
観客を誘うように手をさし伸ばす。
その手を自分の胸元に当て、寂しそうな笑顔。
2:08
『ピンク色の霧を抜けて 本当の私見つけて』
陶酔した顔でリリムを見つめる観客たち。
(魔物やその相手。リリムの美しさにぼうっとしている)
観客を割ってまろび出る男。意識は後ろにあり、リリムのことは見ていない。
リリムにぶつかり顔を胸にうずめる。“ラッキースケベ。死ぬがよい”
2:17
『冷たいその指先を 純白の羽でくるんで』
一瞬見詰め合う二人。驚いた顔の二人。
(男はさっきよりもボロボロ。上着は袖が千切れている)
男は我にかえり謝りながら離れようとする。
2:25
『まっ白な髪の王女様は 月の色の瞳で笑う』
思わず男を引き止めるリリム。
リリムの顔。紅い眼。
男に笑いかけ、手を引いて空へ。
2:35
(間奏)
フワッと空に昇っていく二人。
(男と一緒なので無茶な飛び方はしない)
月光に照らされた雲の上に降り立つリリム。
おっかなびっくり雲に立ち、ぎこちなく笑いかける男(足元が不安)
2:50
『満ちては欠ける 空をゆく真紅の月』
見つめあう二人。穏やかな表情。
(男の服、いつのまにか礼服に変わっている)
カメラ、二人の周囲をまわる。240度ほど。
赤い満月に薄い雲がゆっくりとかかる。
3:07
『離れてもまた会えると 語りかけてくるよ』
薄い雲の影が二人にかかっていく。
男の体、影がかかった所(月光が当たらない部分)はゴーストのように透けて見える。
(二つの世界をつないでいる門が閉じかかっている)
それに気づくリリム。
3:25
『こんなに月が紅い夜は 素敵なことが起きるよ』
月に向かって勢いよく飛び立つ二人。
踊るように上昇していく。
3:33
『どこか見知らぬ森の中で 目覚めるあなた』
月光の中、足場も無しに踊る二人。
眼下にはどこまでも続く広大な森。
3:41
『こんなに月が明(あか)い夜は すてきなことが起きるよ』
満月をバックに見つめ合う二人。
月の色はやや赤みがかった白。
(月の魔力が薄れている)
二人、抱き合う。
3:50
『愛する人は未だ遠く いつかその胸に抱かれ 永遠の夢を見る』
白い月の光に照らされて、男の体は光の粒へと変わっていく。
リリム、抱いていた男が実体を無くしたため、自分を抱くように小さくなる。
男だった光の粒が、ゆりかごのようにリリムを包む。
(後奏)
墓標の街、路地に落ちている時計。
拾い上げる手。
見上げる先には白い満月。
月下の街。
一瞬景色が揺らめき、森と建物が重なって見える。
〜巻末の殴り書き〜
“さんざんリテイク出しやがって、ポッと出の新人監督が調子乗ってんじゃねえぞ! だいたいお偉いさんと知り合いだか知らねえけど、現場に一度も出てこねえってのはどういうことだ? 俺たちみたいな末端下層アニメーターとは一緒に居たくないってか?ケッ。一度遠目から見たけど、いまどき男のロン毛なんて流行らねーっつーの。いっぺんとっちめてやる!首洗って待ってろ、若白髪野郎!”
─────────────────────────
壺をはいたリャナンシー
「んー・・・はい、OKです。これで当初の予定分は完成ですね」
ある男
「つ、疲れた・・・」
つ「ふふ、お疲れ様です。じゃあお茶入れますね♪」
男「ああ・・・」
男「ズズ・・・ふう。なあ、つぼンシー君、前から気になってたことが一つあるんだけど」
つ「ズzあちちっ・・・え? なんですか?」
男「あのさ、リャナンシーと関係持つと創作能力がものすごい上がるっていうじゃん」
つ「え、あー、うーん、そうですね」
男「ネットで体験談とか見てると“文章が次から次に湧いてきて書く手が追いつかない”とか“寝る間が惜しい”とか書いてるけど・・・でもさ、俺ぜんぜんそんな実感ないんだけど」
つ「そ、そお?」
男「こう言っちゃなんだけどさ・・・つぼンシー君、きみ本当にリャナンシー?」
つ「ギクッ。な、なんですか突然」
男「いや、その腰にいつも着けてる壺を見てるとさ、図鑑で見たつぼま
つ「実は、今まで黙ってたんですけど・・・」
男「うん」
つ「実はわたしは、陶芸系つぼmゲフンリャナンシーだったんです!」
男「ナ、ナンダッテー!?(驚愕)」
つ「だから、私と一緒にいても文章力が上がったりはしないんですごめんなさい!」
男「ソウダッタノカー!(納得)」
うた:ヤラナイカ
CGデザイン:アルアルとナイナイ
映像:シエラ・ハザード
♪
鋼の騎士をのせた竜が
静かに空を 西へゆく
竜はどこへ帰るのか
ひとりの夜を見つめながら
サソリが針をみがいてた
おいでおいで子羊たちよ
眠れ眠れこの手の中で
長い旅の終わるところ
私の下でお休みなさい
こころを針で辿ってゆけば
震えた声で君が歌うよ
ラル・ライラ・ルラ
ラリ・ライラ・リラ
ララ・ライラ・・・
♪
砂の道ゆくゴブリン
巨獣の背には宝物
魔界の果実に 蜘蛛の絹
ときに素敵な人までも
♪
人無く荒れた村跡で
月夜に光る君を見た
とても綺麗な黒い肌
“ついて行きたい。どこまでも”
僕は小さく首を振る
君を連れてはいけないよ
“せめて今夜は壺の中、旅の疲れを癒しましょう”
♪
東の空に鳥の群れ
手紙と共に飛んでくる
遺跡に犬の声ひびき
明けてく夜を見つめながら
サソリが砂に潜ってく
* * * * * * * * *
白のワルツ
詩:白髪麗子
曲・歌:白髪美尾
アニメーション:シラガジャ・ナイヨ
♪
こんなに月が赤い夜は
素敵なことが起きるよ
どこか見知らぬ森の中で
目覚めるあなた
角の生えた少女が来て
ミルクはいかがと搾り出す
褐色タイツのダークエルフは
踵をならす
♪
貴方はどこにいるの?
魔界の闇の迷子
私の声が聞こえないの?
ずっと呼んでいるのに
眠れぬこの魂は
あなたを探し夜の中
まっ白な髪の王女様が
翼ひろげダンスに誘う
♪
金色毛並みの獣たちが
九本の尻尾をふりふりと
紫池の水の上で
踊りが始まる
求めるものはなあに?
私? それとも愛かしら?
ピンク色の霧を抜けて
本当の私見つけて
冷たいその指先を
純白の羽でくるんで
まっ白な髪の王女様は
月の色の瞳で笑う
満ちては欠ける
空をゆく真紅の月
離れてもまた会えると
語りかけてくるよ
♪
こんなに月が紅い夜は
素敵なことが起きるよ
どこか見知らぬ森の中で
目覚めるあなた
♪
こんなに月が明(あか)い夜は
すてきなことが起きるよ
愛する人は未だ遠く
いつかその胸に抱かれ
永遠の夢を見る
* * * * * * * * *
曲解説
・サソリが針をみがいてた
夜の砂漠と魔物の美しさ、恐ろしさを静かに歌った名曲。
ジパングでは放送された時期が悪く、あまり話題にならなかった。
・白のワルツ
魔王の娘として強大な魔力と魅力を持って生まれた、リリムの孤独をテーマとした曲。製作にはリリムが関わっているという噂があるが、真偽は不明。
なお、冒頭に出てくる墓標のような建物が林立する不思議な街は、最近魔界で噂されるジパングによく似た異世界“ニポン”をイメージしたもの。アニメーターは実際にニポンを見てきたと言っているが、真偽は不明。
─────────────────────────
穴埋めのおまけ
まもののうた名曲絵コンテ集・13
・サソリが針をみがいてた
・白のワルツ
絵コンテ『サソリが針をみがいてた』
監督注:
カメラは急激に動かさない。曲調に合わせてゆっくりと動かすべし。
それと作画チーフは少し頭を冷やすこと。
0:00
(前奏)
壁にかかった絵。
月を見上げる女性(逆光で影になってる)が描かれている。
月にズームしていき額縁が消える。
0:19
『鋼の騎士をのせた竜が』
絵ではなく本物の月になっている。
音も無く、月を横切るドラゴン。(真下から見上げる構図)
0:23
『静かに空を 西へゆく』
カメラ、ドラゴンの後方に回りこむ。
ゆったりと飛んでいくドラゴン。時おり翼や尾を動かす。
ドラゴンの背中に人影。
0:31
『竜はどこへ帰るのか』
画面、地上(砂漠)でドラゴンを見送る女(ギルタブリル)の後ろ姿。
砂の上に座り込み上半身だけ起こしている。
0:37
『ひとりの夜を見つめながら サソリが針をみがいてた』
構図そのまま。
ギルタブリルはドラゴンを見るのをやめ、下を向いて包丁を研ぐような動き。
(尻尾の針を研いでいる。尻尾は脱力させ、体の横から前に回している)
※骨格について深く考えてはいけない。予算と納期の問題でモデルが用意できなかった。つまり上が悪い
0:53
『おいでおいで子羊たちよ』
場面変わって夜の砂漠の街道をひとり歩く男。
背中に荷物を背負い、顔は布やターバンで隠れ、目元のみ。
0:59
『眠れ眠れこの手の中で』
立ち止まり、上を見る。吐く息は白い。
(少し疲れたな、といった様子)
また歩き始める。
1:05
『長い旅の終わるところ 私の下でお休みなさい』
男の輪郭が砂に描かれた男の絵(上半身)に変わる。
描いているのはギルタブリルの指。
上半身を倒し、砂の人物画に頬ずりするように寝そべる。
1:18
『こころを針で辿ってゆけば 震えた声で君が歌うよ』
尻尾の先が男(絵)の顔→首→胸とたどっていく。
ギルタブリルはその反応を想像して満足そうな笑みを浮かべる。
1:30
『ラル・ライラ・・・』
風が吹き、砂の絵は崩れていく。
ギルタブリルは笑みを浮かべたまま瞳を閉じる。
1:45
(間奏)
舞い上がる砂で画面が覆われる。
砂をスクリーンにして壁画調の砂漠の魔物の絵
・人間を地面に引きずりこむ赤い手(グール)
・球体を転がすケプリ
・獲物に襲いかかるサンドワーム
・アヌビスに心臓を捧げる男
・太陽と月を背負い向かい合うファラオとアポピス
2:03
『砂の道ゆくゴブリン 巨獣の背には宝物』
砂嵐晴れ、夜の砂漠。
画面右側、砂が舞う。
画面奥へ進む魔界豚の足。
荷物を左右に満載し、またがっているゴブリンの足。
2:15
『魔界の果実に 蜘蛛の絹』
魔界豚の手綱を握り、揺られているゴブリンの後頭部。
ゴブリンの先に広がる夜の砂漠。
2:21
『ときに素敵な人までも』
ゴブリン、後ろ(画面側)を振り返り、画面(の向こうにいる誰か)に向かって笑いかける。
2:29
『人無く荒れた村跡で 月夜に光る君を見た』
場面変わって廃墟の村、枯れたオアシスの植物が生えている。
2:41
『とても綺麗な黒い肌』
屋根が半分崩れた廃屋の中、月光に照らされている壺。
2:47
『“ついて行きたい。どこまでも”』
壺を持ち上げる男の横顔(影)。
(影絵の壺と男が向かい合い、壺の凹凸が人の横顔に見える。)
※壺の魔物について
当初は普通の人型つぼまじんとして登場させる予定であったが、
3:06
『僕は小さく首を振る 君を連れてはいけないよ』
壺を置く男。壺に背を向け立ち去ろうとする。
3:18
『“せめて今夜は壺の中、旅の疲れを癒しましょう”』
壺がやわらかく光を放つ。
(周りを照らすような明るい光ではなく、ボウッと蛍や鬼火のように)
振り返り壺を見る男。壺の光がぼんやりと男の顔を照らす。
※男の顔
アーモンド型のパッチリした目。南国風の整った顔。
夜かつ影になっているので、若いイケメンとわかる程度。冒頭の一人旅の男と
・注意)男の描写について作画チーフが注文をつけてきたら無視すること。
3:40
『東の空に鳥の群れ 手紙と共に飛んでくる』
廃墟の村。画面右側から明るくなってくる。日の出。
廃屋の中、天井の穴から落ちてくる手紙。
廃屋はがらんとして、壺がひとつあるだけ。
3:52
『遺跡に犬の声ひびき』
三角形の遺跡を遠くから眺めるギルタブリル。
上空には配達のハーピーたち。
4:00
『明けてく夜を見つめながら』
太陽が少しずつ明るさを増し、夜が消えていく。
日光に照らされるギルタブリル。
4:04
『サソリが砂に潜ってく』
陽の光に追われるように、下半身で砂を掘り潜っていく。
潜った後には少しへこんだ地面。
4:14
sabak-unyamamo nogayousa nosoro-siya piya
乾いた風が砂を巻き上げ、全てを平らに覆っていく。
絵コンテ『白のワルツ』
〜表紙裏の殴り書き〜
“クソ監督、書き込みゃいいってもんじゃねーぞ!動かす人間のことも考えろ!”
0:00
(前奏)
墓標の街。夜。
巨大な建物が林立する都市。
狭い路地を歩く男の影。
男、手首の時計を見る。アナログの文字盤。間もなく深夜0時。
ふと立ち止まり上を見上げる。
カメラ、男の視線を追って建物をなめるように空を見上げる。
空まで伸びた建物の隙間から満月。
音楽の盛り上がりと共に月にズーム。
満月とアナログ時計が重なり、秒針がカウントダウン。
0時を指すと同時に月がフラッシュ。月の光が画面を包み込む。
0:28
『こんなに月が赤い夜は 素敵なことが起きるよ』
光が収まり赤い満月。
カメラ、月を見上げた状態から視線を下へ。
月下に広がる森。
0:35
『どこか見知らぬ森の中で 目覚めるあなた』
森の中、倒れている男。
起き上がり周囲を見回す。何が起こったかわからない。
0:45
『角の生えた少女が来て ミルクはいかがと搾り出す』
ホルスタウロスが描かれたBARの立て看板。
(書いてある文字は男には読めない)
看板の矢印は森の奥を指している。
ホルスタウロスの絵が動き出し、場面はBARへフェード。
0:54
『褐色タイツのダークエルフは 踵をならす』
場面:森の中のBAR
ジョッキを両手に持ち、テーブルへ給仕してまわるホルスタウロス。
舞台の上、暗がりからダークエルフが現れ調教ショー。
※BARについて
店の半分は湖に突き出たテラス席になっており、舞台はそちらにある。
入り口は建物側。
1:02
『貴方はどこにいるの? 魔界の闇の迷子』
場面:城の一室
窓から外を眺めるリリムの後ろ姿。
部屋の中は暗く、窓から月明かりが差し込んでいる。
1:10
『私の声が聞こえないの? ずっと呼んでいるのに』
場面:森の中
何かに追われ駆ける男。
一瞬、後ろを恐怖に満ちた顔で振り返り、また駆ける。
1:18
『眠れぬこの魂は あなたを探し夜の中』
場面:城
窓枠を蹴り、外へ飛び出すリリム。森の上へ飛んでいく。
※飛ぶと言うより滑空するようなイメージで、上昇はしない。迷うように探すように左右に大きく蛇行しながら森の上空へ滑っていく。
1:27
『まっ白な髪の王女様が 翼ひろげダンスに誘う』
BARの上空、眼下の灯り。
髪をなびかせ、舞台に舞い降りるリリム。
1:36
(間奏)
森を駆ける男、髪を振り乱し、服はところどころ破れている。転びかけまた走る
視線の先に小さな明かり。
1:43
『金色毛並みの獣たちが 九本の尻尾をふりふりと』
リリムに舞台を奪われた踊り子衣装の妖狐たち。
「しょうがないなあ」という感じ、
笑ったり観客を誘うような動きをしながら、テラスの枠を踊るように飛び越える。
1:52
『紫池の水の上で 踊りが始まる』
湖の上で踊り始める妖狐たち。
酔っ払った男が踊りに誘われ湖に落ちる。ドッと笑う観客。
リリムは舞台の上でひとりうつむいたまま。
2:00
『求めるものはなあに? 私? それとも愛かしら?』
舞台の上で歌いだすリリム。
観客を誘うように手をさし伸ばす。
その手を自分の胸元に当て、寂しそうな笑顔。
2:08
『ピンク色の霧を抜けて 本当の私見つけて』
陶酔した顔でリリムを見つめる観客たち。
(魔物やその相手。リリムの美しさにぼうっとしている)
観客を割ってまろび出る男。意識は後ろにあり、リリムのことは見ていない。
リリムにぶつかり顔を胸にうずめる。“ラッキースケベ。死ぬがよい”
2:17
『冷たいその指先を 純白の羽でくるんで』
一瞬見詰め合う二人。驚いた顔の二人。
(男はさっきよりもボロボロ。上着は袖が千切れている)
男は我にかえり謝りながら離れようとする。
2:25
『まっ白な髪の王女様は 月の色の瞳で笑う』
思わず男を引き止めるリリム。
リリムの顔。紅い眼。
男に笑いかけ、手を引いて空へ。
2:35
(間奏)
フワッと空に昇っていく二人。
(男と一緒なので無茶な飛び方はしない)
月光に照らされた雲の上に降り立つリリム。
おっかなびっくり雲に立ち、ぎこちなく笑いかける男(足元が不安)
2:50
『満ちては欠ける 空をゆく真紅の月』
見つめあう二人。穏やかな表情。
(男の服、いつのまにか礼服に変わっている)
カメラ、二人の周囲をまわる。240度ほど。
赤い満月に薄い雲がゆっくりとかかる。
3:07
『離れてもまた会えると 語りかけてくるよ』
薄い雲の影が二人にかかっていく。
男の体、影がかかった所(月光が当たらない部分)はゴーストのように透けて見える。
(二つの世界をつないでいる門が閉じかかっている)
それに気づくリリム。
3:25
『こんなに月が紅い夜は 素敵なことが起きるよ』
月に向かって勢いよく飛び立つ二人。
踊るように上昇していく。
3:33
『どこか見知らぬ森の中で 目覚めるあなた』
月光の中、足場も無しに踊る二人。
眼下にはどこまでも続く広大な森。
3:41
『こんなに月が明(あか)い夜は すてきなことが起きるよ』
満月をバックに見つめ合う二人。
月の色はやや赤みがかった白。
(月の魔力が薄れている)
二人、抱き合う。
3:50
『愛する人は未だ遠く いつかその胸に抱かれ 永遠の夢を見る』
白い月の光に照らされて、男の体は光の粒へと変わっていく。
リリム、抱いていた男が実体を無くしたため、自分を抱くように小さくなる。
男だった光の粒が、ゆりかごのようにリリムを包む。
(後奏)
墓標の街、路地に落ちている時計。
拾い上げる手。
見上げる先には白い満月。
月下の街。
一瞬景色が揺らめき、森と建物が重なって見える。
〜巻末の殴り書き〜
“さんざんリテイク出しやがって、ポッと出の新人監督が調子乗ってんじゃねえぞ! だいたいお偉いさんと知り合いだか知らねえけど、現場に一度も出てこねえってのはどういうことだ? 俺たちみたいな末端下層アニメーターとは一緒に居たくないってか?ケッ。一度遠目から見たけど、いまどき男のロン毛なんて流行らねーっつーの。いっぺんとっちめてやる!首洗って待ってろ、若白髪野郎!”
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壺をはいたリャナンシー
「んー・・・はい、OKです。これで当初の予定分は完成ですね」
ある男
「つ、疲れた・・・」
つ「ふふ、お疲れ様です。じゃあお茶入れますね♪」
男「ああ・・・」
男「ズズ・・・ふう。なあ、つぼンシー君、前から気になってたことが一つあるんだけど」
つ「ズzあちちっ・・・え? なんですか?」
男「あのさ、リャナンシーと関係持つと創作能力がものすごい上がるっていうじゃん」
つ「え、あー、うーん、そうですね」
男「ネットで体験談とか見てると“文章が次から次に湧いてきて書く手が追いつかない”とか“寝る間が惜しい”とか書いてるけど・・・でもさ、俺ぜんぜんそんな実感ないんだけど」
つ「そ、そお?」
男「こう言っちゃなんだけどさ・・・つぼンシー君、きみ本当にリャナンシー?」
つ「ギクッ。な、なんですか突然」
男「いや、その腰にいつも着けてる壺を見てるとさ、図鑑で見たつぼま
つ「実は、今まで黙ってたんですけど・・・」
男「うん」
つ「実はわたしは、陶芸系つぼmゲフンリャナンシーだったんです!」
男「ナ、ナンダッテー!?(驚愕)」
つ「だから、私と一緒にいても文章力が上がったりはしないんですごめんなさい!」
男「ソウダッタノカー!(納得)」
16/09/24 01:07更新 / なげっぱなしヘルマン
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