宿着『寓胎の衣』
寄生とは聞こえは悪いが実際は儚きものだ。 寄って生きる。 つまるところ、寄生する者は宿主に寄り添い全てを託して生存しているといってもいい。 寄生される側としては厄介なことこの上ないが、寄生する側からすれば命がけの行為なのだということを考えていただきたい。 人間だってそうだろう。自らの力では生きることができぬ弱者はより強き者にすがり、安泰を願う。とにかく生きるために必死になる。 その行為に人も虫も魔物にも差はあると思うか?平等に分け与えられた命を守るために行なう当たり前の行為をおかしいと思うか? 思わないだろう。なぜなら偏った命の価値などあるわけがないのだから。 それに寄生した者は宿主が死ねば、自らも死にゆく運命なのだ。 自らの意思とは関係なしに無情に突きつけられた死をありのままに受け入れなければならないのだ。 その潔さたるや、儚さたるや。涙なしでは語ることはできない。 よって寄生とは生物本来につけ備えられた生存防衛機構の一部であり、害ではないということをここに証明する。 あるがままを受け入れ、己の運命を認めた者にこそ、命の価値が見えてくるのだ。 ―狂人の学者― |
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