放蕩王子の放浪記
エヴァンシュタイツ王国。それはどこにでもあるような、平凡な小国。 国土は勿論のこと、軍事力も生産力も並。取り立てるような特産品も無い国。だがそれも、今の代の国王になってから、少しだけ変わってきていた。 現国王であるヴェルト=エヴァンシュタイツァールY世は、優しさと厳しさの両方を兼ね備えた、いわば名君とも呼べる人物だった。 民を思いやり、魔物との共存を目指し、より国と民の暮らしを豊かにすることを目標とし、さらにはそれを脅かす外敵への備えも怠らない、百人中九十八人が名君と認める人物だった。 ところがその息子であるジグヴェルト王子は、父とは正反対の放蕩息子であった。 勉学はサボり、城を日常的に抜け出し、毎日のように大臣達の気苦労を増やす。次期国王候補としての自覚は〇であり、ちっとも王子らしく振る舞おうとしない。それがまた民達に好意的に受け取られているのは、皮肉でもある。 今日もまた、王城には大臣の声が響き渡る。 |
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