見学!剣撃部!-強さと誇りと守るモノ-
「いや〜!うまかったなぁ!」
「本当においしかったですね。また機会があったら食べたいですよ」
俺たち2つの班は食事を終え、一息ついていた。
料理を作った当の本人であるシューゼンは、先程からキッチンでまた何かを作ってるようだ。
・・・何故かレーヴァも負けてはいれられないといった感じでキッチンで何かしているようなのだが・・・
「みんな食い終わってるな」
「お、シューゼン。今度は何作ってきたんだ?」
何やら甘く香ばしい匂いとともにシューゼンが戻ってきた。
「ザイリョ(材料)が余ってたんで・・・ちとお菓子をな」
「何!?おかし!オカシ!(´∀`*)」
「よしよし、ルーク。待て」
「犬か俺はッ!Σ(゚д゚; )」
「お手」
「わんっ・・・て、やらすな!!」
「うわぁ気持ち悪い」
「ストレートにひどい!?( ;Д;)」
ルークはいつも通りである。
「で、何作ったんだ?」
「スフレ」
「スフレ?」
「軽くてふわふわしたケーキみたいなもんだ」
「そんなものまで作れるでありますか・・・」
「作るの久しぶりだったから心配だったがな。さて・・・」
するとシューゼンはゴホンとひと呼吸おき・・・
「デザート作ったけど、食べる人ーーー!!」
『はーーーーーーーい!!!』
いきなり大きな声で言われたが、ノリ良く返事をする俺たち。
景気のいい声で促されたら元気よく答えたくなるよね。
「うん、それじゃ召し上がってくれ」
・・・・・
スフレを食べ終わる頃にはそれなりに時間が過ぎていた。
時計を見つつ、レシア先生が話を始めた。
「みんな、少し作業を中断して聞いて欲しい。
そろそろ終了の時間なので、片付けを始めてくれ。
使った道具や食器は洗った後、よく拭いてから調理台の上に置いておくように。
テーブルもよく拭いておいてくれ。
それが終わり次第、私たちに報告すれば各自退出してくれて構わない。
今日の午後は自由だ。選択授業の見学がてら参加するのもいいし、活動しているサークルの見学に行くのもいいだろう。
今の時期は新入生の見学用に、午後の時間からサークルの活動が許可されているから、上級生はみんな待っているな。
もちろん外に出るのも構わない。好きに過ごしてくれ」
『はい!』
「ああ、それと料理部がここを引き続き使うだろうから、見学したいのならこのままいるといいだろうな。
それじゃ各自の作業に戻ってくれ」
「さーて、それじゃ片付け始めますか」
「みんなは午後、どうするのでありますか?」
片付け始めようとすると、ネイビーが尋ねてきた。
「俺たちは剣撃部の見学に行くつもりさ。昨日からみんなで行ってみようって話でな?」
「おお!ふむ・・・自分もついて行ってよいでありますか!??」
「別にいいよ。みんなもいいよな?」
満場一致で頷く。
「ありがとうであります!恩に着るであります!!」
そんな大袈裟な。
「実は、エイミィがそのまま料理部の見学でここにいるから、一緒に行く人がいなかったであります・・・」
「なるほどね・・・」
「よかったねぇ〜、ネイビーちゃん〜♪」
「うし!ちゃっちゃと片付けて見学に行ってみよーぜ!」
ルークが張り切った様子で片付け始める。
頼むから皿割らないでくれよー・・・?
・・・ん?そういえば・・・
「シューゼンが見当たらないなぁ」
「シューゼンなら先ほどトイレに行くと言っていたぞ?済まないが片付けはみんなで頼むとな」
レーヴァがそう答える。
もしや剣撃部に行きたくないからあいつ逃げたんじゃないだろうな・・・
乗り気じゃなかったし・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
片付けはみんなで協力してやったので思った以上にすぐ終わった。
まあ自分の班で使ったお皿と調理器具を洗って片付けるだけだったからね。
すでにシューゼンたちの班は調理器具が綺麗に片付けられていた。
誰がやったのか聞いてもみんな知らないそうなので、おそらくシューゼンがやっておいたのだろう。
家事スキル半端ないなあいつ。主夫か。
「さーて!それじゃ剣撃部に向かうとしよーぜ!」
「あ、ちょっとトイレ行ってきていいかな」
「んだよ、早く行ってこいよー」
「ああ、悪いな」
恥ずかしながら少し我慢してたんだよね。
・・・・・
えーと、ここかトイレ。
・・・なんか少し異臭がするんだが。
あそこの個室からだな。あれ?開いて・・・
「おろろろろろろろろ・・・」ドボドボドボ・・・
「えぇー!?大丈夫かお前!!?」
見かけないと思ったらここにいたのかよシューゼン!?
しかもなんで血吐いてんの!? しかも出てきてる量が尋常じゃないんですけど!?
「・・・ああ、セイン・・・元気そだな・・・飯は・・・どだった?・・・」
「うまかったよ、いやホントご馳走様・・・ってそうじゃねぇよ!!
なんでこんなことになってんだよ!?」
「いや・・・なんつーか・・・腹下し?・・・」
「そんな腹の下し方あってたまるかぁ!!てか下すどころかこみ上げてきてんじゃねぇか!!」
「ははは、それも・・・そガフっ!ゴハァっ!」
「ちょちょちょぉい!?しっかりしろ!今保健室に・・・!」
「・・・あ゛ー・・・ダイジョブだ・・・少しはマシになった・・・」
「口のまわり見てからいいやがれ。どこがマシだよ!」
血がべっとりついててスプラッタだよ!ホラーだよ!
「で、一体何があった?」
「言わなきゃダメか?」
「当たり前だ。友達がトイレで血ぃ吐いてて気にならん方がおかしいだろ」
「・・・みんなには黙っておけよ?実はな・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シューゼン視点
1時間前 シューゼンがスフレを出した後のこと・・・
「よし、一通り片付け終わったな。こんなもんか」
みんなが美味しそにスフレを食っている間に、オレは使った器具とかを片付けてた。
そんな時だ。
「お、おい!シューゼン!」
声をかけてきたのはレーヴァ。いつの間にかにキッチンに来てたようだ。
「ん?どした?」
「私もちょっと料理を作ってみたんだが・・・」
「ひ、一人でか・・・!?」
「そうだ!負けていられないしな!・・・女として」
なんでタイコ(対抗)意識燃やしてるのかねぇ。このお方は。
あとリョリ(料理)初心者が作ったものとか全くいい予感がしない。
「それで・・・料理のうまいシューゼンに、評価をお願いしたいのだが・・・」
「それはいいが・・・どれだ?」
「こ、これなんだが・・・」スッ
オォォォォォォォォォォン・・・
ドロドロドロ・・・
皿にはもはや食べ物として原型を留めていない何かが乗っていた。
怨念やら呪文やらが聞こえてきそだ。
オレの顔は今、冷や汗が滝のよに流れていることだろ。
「・・・・これは。・・・なんだ?」
「卵を作った料理だ!」
そだな、確かに色は黄色い。
ただ、外見は「風の谷かどっかで使われた巨大な神と呼ばれし兵」的な何かである。
「・・・見た目について何か疑問は持たなかったか?」
「し、仕方ないだろう!自分一人で料理をしたのは初めてなんだ!!」
仕方ないってレベルじゃねーぞ!?どしよもないレベルだよ!
「あ、味の方に自信があるんだ!食材も色々使ったしな!」フンッ!
「え゛え゛・・・」
あえて、も一度言おう。全くいい予感がしない。
むしろここから早く逃げ出したくなってきた。
「さぁ!食べてみてくれ!」
「ぐっ・・・」
とりあえず、スプーンですくってみる。
オォォォォォォォォォォン・・・
ドロドロドロ・・・
わぁ・・・何かリュド(流動)してるー・・・
「た、食べて・・・くれないのか?」ウルッ
「ぬぐ・・・・ええい、ままよ!」
な、涙目になるのはヒキョ(卑怯)だぞ・・・全く・・・
あとこんなこと言いながら物を口にしたのは初めてである。
パクッ
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ど、どうだろうか・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「シュ、シューゼン??」
「なんとも独特で一言に言い表せられないなこれは味の方は味覚全部刺激されてて判別がつかないがこんなドロドロしてるのになんかゴリゴリしてるし喉元を過ぎても爆発的な存在感が一切消えてくれないよなんというか凄まじいよ全くああそだ今度からは一人でじゃなくて誰かとリョリしよな絶対だぞオレとでもいい教えてやるからこれはオレが責任を持って全部食べるからあと今からオレはトイレに行ってくるたぶん戻ってこれないかもしれないからみんなで片付けはお願いするよそれじゃぁなぁ」
「え?えっ?ああ、分かった・・・?」
残りも口の中にかきこみ急いでオレはトイレに向かった。
カンソ(感想)?そだな・・・一言で伝えるならば・・・
生ってやがる・・・・早すぎたんだ・・・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
セイン視点
「まあそゆ訳だばばばばばばばばばb」
「おあ!?溢れ出してる!!口から溢れ出してるから!!!」
話を一通り話し終わった途端にシューゼンの口から血液がリスタートした。
たぶん限界だったんだろう・・・
でもすぐさま便器の方に顔を向けて、床とかは血まみれにはなっていない。
もう何か咄嗟の気遣いが尊敬に値する。
「・・・・まさか・・・・食材から兵器ができるなんてなぁ・・・ベンキョ(勉強)になったよ・・・・・・・」コヒュー・・・コヒュー・・・
「そこから学ぶとこなんて一個もねぇよ!?」
「はっはー・・・・胃の中がバブルスライムジョタイ(状態)だぜー・・・」ゼー・・・ゼー・・・
「全然うまくねぇからな!?一大事だからな!?」
「ゲホっ・・・もしばらくしてから自分で保健室に行くよ・・・・なあに、心配するな・・・」
その自信は一体どこからきてるんだよ!?
見てるだけでこっちが辛いわ!
「あと一つ聞きたいことがあるんだが・・・」
「・・・なんだ?・・・」ヒュー・・・ヒュー・・・
「なんでそんなものを一気に口へかきこんだんだ?」
「決まってるじゃないか・・・・お前らに残りを食べさせず、あいつを尚且つ傷つけさせないためさ・・・」ガクッ
「シュ、シューーーゼーーーーーーーーーーーン!!?」
「・・・・・あ、やっぱりカラマツ先生呼んできて・・・・」
「格好つかねぇなおい!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「やっと来たな!遅かったじゃないか・・・」
「ああ、色々、あってな・・・」
「ん〜?もしや面白トラブルのヨカーン!?(´∀`*)」
「・・・・違うから、黙れ」ギロリ
「・・・・すまん(´・ω・`)」
シューゼンは保健室のカラマツ先生に任せたから大丈夫だろう。
フィザ先生に見つからなくてよかったわ・・・
でも先生も「えぇ・・・・何なのコレ・・・」とか言ってドン引いてたけど。
「遅れて本当にごめん。それじゃ行こうか」
「待て、シューゼンが来ていないぞ」
レーヴァが尋ねてきた。
さて、どうしようか・・・
「ああ、あいつなら・・・・・・・・・用事を先に済ませるらしい」
「そうか・・・・」
う、レーヴァがシュンとしてしまった。
でも事実をそのまま伝えるわけにもいかない。
「まあ、用事を済ませてから来るだろきっと」
「そうですね。先に行ってましょうよ」
「むぅ・・・」
どうしても連れて行きたかったらしく、しょんぼりしているレーヴァ。
あの状態のシューゼンを連れてくるわけには、ねぇ・・・
「・・・仕方ない。ではこれより、剣撃部の見学に行こう!」
『おー!』
・・・・・
場面は切り替わり、やってきました!
剣撃部が活動する『剣撃武道場』!
なんと剣撃部専用の武道場だ。
大きさも普通の武道館よりも大きめのサイズで、本気度が伺える。
「うおぉ!広ぉーーーー!?」
中に入るとその広さに驚かされる。
道場の床が一面に広がり、奥にいるであろう人が小さく見える。
「これが剣撃部の道場か・・・」
「お、おっきいね・・・!」
「さすが、戦闘分野の看板サークルであります!」
「お、新入生だな!」
出迎えてくれたのは燃え盛る尻尾を持つ赤い髪の魔物だった。
「剣撃部にようこそだ。見学かい?」
「はい、そうです。あなたは?」
「アタシは『アスレイ・ザードナー』さ。ここの副部長をさせてもらってるよ」
「アスレイ・ザードナーって・・・思い出した!この人ランキング8位の『紅蓮剣士』さんだよ!」
リティが突然大きな声を上げる。
「お、嬉しいねぇ。もう覚えてくれてる後輩がいるなんてね」
「いえ、そんな・・・///」
「『紅蓮剣士』のサラマンダー・・・あなたがそうですか」
「お前さんは・・・そうかシーグの妹だね?」
「噂は兼ねがね姉から聞いていました。剣撃部には手練の剣士が多いと」
「あいつめ、自分がナンバー2だろうに。確かに強い奴も多いが、TOP5と比べられるとどうもねぇ・・・」
「それでもアスレイ先輩は8位で、しかも副部長じゃないですか」
「本来ならあいつが副部長なんだけどねぇ。風紀委員長になっちまったから仕方なくさ」
クククと苦笑いしつつ、アスレイ先輩はそう言っていた。
「まー、その辺の事情はいいよ。それより見学しに来たんだろう?だったら自由に見ていくといい。案内とかは特にないしねぇ」
「剣撃部の説明とかはないんですか?」
「説明しなくても、見てれば分かるからねぇ。
ここは剣とか近接武器を好む奴が自由に相手を選んで戦ってるような場所さ。
部長に頼めば直々に指導してくれることもあるが、あれは参考にならんさね」
戦闘分野のサークルだから結構厳しいのかなって思ってたけど、そんなことはなさそうかな?
「強くなるには実践が一番早いからねぇ。まぁ、入るんだったら上級生に気をつけな。実力差があっても勝負を申し込まれるかもねぇ?」
ですよねー。
そー簡単にはいきませんよねー。
「ククク・・・そんな嫌そうな顔しないどくれよ。冗談さ。
無理強いはしないように部長もアタシもしっかり見てるから、大丈夫さ」
えぇー・・・この人どこまで信用していいの・・・
「まぁ、部長が毎回課題出すから、それをこなしてもいいかもねぇ。
面倒見のいい奴らはちゃーんと指導もする。安心しとくれ」
「課題?」
「型に当てはめた素振り何回だとか、打ち込み何本だとか、そんなもんさ。
一番早くこなした奴は部長に指導してもらえるとかね」
基本的には自由なんだな。
分かりやすくていいや。
「もし、戦いたい奴とかいたら試合を申し込んでも構わないよ。審判に上級生を一人つけるけどね。
持参した武器を使ってもいいけど、武器も道場内なら貸出してるからね」
・・・・・
「試合を申し込んでもいいって言われてもねえ」
道場内を歩いて見て回っているが、戦ってる人とそのギャラリーが多く、まさしく『戦いの場』って感じだ。
俺たちと同じ新入生もいるけど、試合を同じく見て回っていて、とてもじゃないがいきなり「戦おう」なんて言えるわけないよねぇ。
「あら、君たち新入生かしら?」
道場内2回目となる声かけ。
そこには、いかにも育ちの良さそうな貴族といった感じの金髪の女性が立っていた。
なんで貴族って分かったかって?
そりゃマントみたいなの羽織ってて、後ろに場違いな執事っぽいのいるんだもん。
なんとなく分かるよ。
「ええ、そうですよ」
「それなら・・・今ここにいる新入生で、一番強い子って分かる?」
「一番強い子?」
今俺が知ってる強い同級生といったら・・・
「?・・・私か?」
思わずレーヴァを見てしまったが、他のみんなも同様にレーヴァを見ていた。
「へぇ・・・君がそうなの。名前は?」
「私はレーヴァ・フリードだ。よろしくお願いする」
「フリード・・・面白そうじゃない」
彼女はそう呟くと顔に笑みを浮かべ
「私と試合してくれないかしら?」
レーヴァに勝負を持ちかけてきた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「まさか、本当に試合をする一年生がいるなんてねぇ。
今年の一年生も面白そうなのが多いね」
レーヴァは二つ返事でOKした。まったくもってレーヴァらしい。
あと審判はアスレイ先輩が務めてくれることになった。
理由は「面白そうだから」らしい。
「それじゃあ両者前に出とくれ」
「試合受けてくれてありがとね。今の一年生がどんなレベルか知りたかったのよ」
「その一年生全体の指標になれるなんて、光栄だな。
ただ下手な試合は見せられん・・・全力でいかせてもらう」
「言うわね。もちろん全力じゃないと恥かいちゃうわよ?」
ギャラリーも続々と集まってきた。
一年生対上級生の対決はみんな気になるようだ。
「準備は出来たかい?そいじゃ・・・
レーヴァ・フリードvsリフィリア・ローゼレイル
試合開始〜」
レーヴァは自分の武器によく似たランス。
対してリフィリアという名の彼女は細身の長剣である。
「お先にどうぞ?先手はあげるわ」
「では・・・」
キィィィィィィィィィィィィィィィィィン!
「お言葉に甘えさせてもらおう・・・!」
あの音は前にも聞いた・・・!
マジで全力だな!
「はぁぁぁああ!『シャイニングロード』!」
光をランスに集中させ、かなりのスピードで相手に突っ込むレーヴァ!
「へえ!いきなりそう来るの!」
シュイン!
ゴォウ!
レーヴァの攻撃は大きな風の音がとともに放たれた。だが・・・
「ヒュ〜♪危ないわね」
あの攻撃をかわしたのか・・・!
「流石に私でも、アレを食らったらひとたまりもないわよ」
ヒュオ!
キィン!
「ぐっ・・・」
避けた一言にさらっと斬り返してくる彼女。
そしてそれをレーヴァは間一髪で受け止めた。
「どうやら嘘じゃなさそうで安心したわ」
「嘘とはどういうことだ?」
「貴方が一年生の中でも強いってことよ!」
ギン!ヒュバッ・・・
一度相手は距離を取り・・・
「お返しよ!『ブラッディ・ショット』!」
彼女の周りにいくつもの魔力塊が浮かび上がった。
それは小さな蝙蝠になってレーヴァに襲いかかる!
ヒュバババババババ!
「くぅう!」 キィン!ガン!ギン!ダァン!
何とかいくつかは防いでるが・・・!
あれじゃ持たないぞ!
「・・・隙あり!」
キキッ!ガァン!
「しまっ・・・うわぁぁぁぁぁ!」
ドドドドドドドドドドッ!
レーヴァは一瞬の隙を突かれ、ランスを弾かれてバランスを崩してしまった!
なすすべもなく無数の蝙蝠の攻撃を食らっている!
・・・あれ?一匹こっちに・・・・って危ない危ない危ない!
バヂィン!
「へ・・・?」
目の前でその蝙蝠は弾け飛んだ。
「あ〜、この道場は試合中、範囲内に防御壁をオートで張るから安心だぞ〜」
「早く言ってくださいよそういうことは・・・」
おっと、そんなことよりレーヴァだ!
レーヴァは相手の攻撃を耐え切ってなんとか立っている。
「ハァ・・・ハァ・・・」ヨロッ・・・
「流石ね。やっぱりあの人の妹だわ」
「何・・・?」
「フリードって言ったら、知らない人はいないわよ。
『蒼月』のシーグ・フリードの妹だってことは名前を聞いたときに分かったわ」
「そうか・・・だが、一つ勘違いをしているぞ・・・」
「どういうことかしら?」
「私は姉上の妹だから強いのではない・・・!私は私だ!
ベルトニカ学園の一年生!レーヴァ・フリードだっ!!!」
「レーヴァ・・・」
やっぱ少し気にしてたのかな・・・?
先輩たちからずっとシーグ先輩の妹だからって言われてたから・・・
でも、今『自分』を認めてもらおうと一生懸命になってる・・・!
「が・・・がんばれー!レーヴァあ!」
俺の隣で見ていたリティから声援が入る。
「そうだ!頑張れ!」
「負けないでください!」
「いけるであります!」
「まだまだそんなもんじゃないだろー!」
『オラー!まだ終わってねぇぞー!一年!』
『レーヴァちゃーん!頑張ってー!』
俺たちも、そして周りのギャラリーからも応援が入る!
そうだ!みんなちゃんとお前を見てるんだ!
頑張れ!
「みんな・・・・・・ああ・・・!頑張るっ!」
「いい友達じゃない・・・。何だか羨ましいわ」
「ああ・・・私の、誇りだ!」ググッ・・・!
ダダッ
相手に向かって走り出すレーヴァ!
「はぁあ!」ギュオ!
「くっ・・・!」ヒュゥ!
相手はレーヴァの鋭い突きをかろうじて避ける!
「・・・まだだぁ!」
キィィィン!ビュオン! ゴォオ!
「『ブラストエッジ』!!」
その突きの体制のまま避けた相手に向かってランスを振り上げ・・・!
「きゃぁああ!?」 バシュゥウ!
ランスから放たれる光の刃が相手に命中した!
『おおおおおおーーーーーーー!!』
「ハァ・・・ハァ・・・!ぐぅっ・・・!」ガクッ
周りから歓声が上がった。
だが、相手がどうなったかはまだ煙が上がって見えない・・・!
「やるじゃない。レーヴァ・フリード・・・!」
ダメージは負わせたが、決定打には至ってない様子だ・・・!
「でも・・・まだ私には勝てないわよ!」
フォン・・・フォン・・・フォン!
相手の剣には黒い光が集まっていき・・・
「夜に飲まれなさい!『スクリーンハウル』!」 ドォウ!
剣を振り、放たれた黒い衝撃波がレーヴァに向かっていった・・・
ドゴォォォン!
煙が晴れたとき・・・
「フゥー・・・!フゥー・・・!」
そこには片膝をつきつつも、何とか堪えたレーヴァの姿があった・・・!
しかし・・・
「うぅ・・・!」グラッ・・・ ドサッ・・・
「勝者はリフィリア・ローゼレイル!」
『パチパチパチパチパチパチパチパチ・・・!』
見ていた周りの人たち全員から、二人に向けて賞賛の拍手が送られていた・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「レーヴァあっ!」ダダッ
試合が終わると同時にリティが駆け出していった。
「レーヴァ!大丈夫!!?」
リティが心配して尋ねる。
「・・・ああ・・・でも、負けてしまったよ」
「負けたとか関係ないよ!すっごくかっこよかったよ!」
「・・・ありがとう・・・!リティ!」
「レーヴァ」
その時、レーヴァの名前を呼んだのは、先程まで戦っていた相手。
リフィリア・ローゼレイル先輩だった。
「ごめんなさいね・・・。シーグ先輩の妹だから強いって言ったこと」
「・・・私は姉上の妹であることを誇りに思っている。でもそのおかげで貴方のような強い相手と戦えたことを、とても嬉しく思う」
「・・・やっぱり貴方はすごいわね」
「いやぁ〜、いいものを見させてもらったよ」
審判をしていたアスレイ先輩もやってきた。
「まさかあそこまでやるなんてねぇ。15位相手に大健闘じゃないか」
15位・・・?
え?ああ!?まさかリフィリア先輩も上位ランカー!?
「えぇ!?リフィリア先輩そんなに強いんですか!?」
「言ってなかったわね。『宵闇皇女』ことリフィリア・ローゼレイルよ。
よろしくお願いするわね!」
そういえばそんな名前ランキングに載ってた気がする・・・!
「レーヴァすごいな!そんな相手と渡り合えるなんて!」
「よしてくれ・・・一撃与えるだけで精一杯だったんだぞ」
「その一撃を与えられない人が、この学園にはいっぱいいるのよ?
誇っていいわ!」
なんか自分で言わないでください。そこは貴族らしいんですね。
「あの攻撃もなかなかの威力だったしね。立て続けに食らってたらやばかったわよ」
「・・・次は、追い込んでみせますよ」
「ふふっ、楽しみにしているわ。それと・・・」
リフィリア先輩はやや顔を赤らめながら
「貴女とは、うん・・・そう、友達に、なりたいわね・・・」テレッ
そう言った。
「願ってもないですね。是非、お願いします」
「そう?ありがと!なら敬語じゃなくてもいいわよ。私、堅苦しいのはあまり好きじゃないの」
「それでは、これからもよろしく頼むよ。リフィリア」
「ええ、よろしくね。レーヴァ」
二人は握手を交わし、その表情はとても柔らかかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
レーヴァは簡単な手当を保健室で受けてくるそうだ。
本人は「別にいい」と言っていたが、リフィリア先輩が「何かあったら嫌だし、行きましょ」と言って半強制的に引きずっていった。
ルークもレーヴァに触発されたのか、試合をしたいと言い出し、ネイビーが「だったら自分が相手をするであります!」とそれにのり、試合を始めているところだ。リントはそれを見に行っている。
そして俺はリティとレーヴァたちを見送り終わったところだ。
・・・つまり、俺はリティと二人っきりな訳である。
「さて、どうしよっか」
「俺たちもルークたちの様子を見に行くか?」
「うーん・・・」
何やらリティが悩んでいる様子だが、一体何を悩んでいるんだ?
「うーん、どうしましょう・・・」
何やら別の方からも同じく悩みの声が聞こえてきた。
「ふぇ?・・・・あ!い、いや!えと!ど、どうかしたんですかっ!」
同じような声が聞こえてきて驚いたのか、抜けた声が出て慌てているリティは思わずその声の主に話しかけていた。可愛い。
「あら?貴方がたは・・・?」
「ええと!一年生のリティといいます!今剣撃部を見学中です!」
「あ、俺はセインっていいます。何やら悩んでいる様子だったので思わずリティが声をかけちゃったんです」
俺は自己紹介しつつ、何とかリティのフォローを入れる。
「そうでしたの・・・あ、申し遅れましたね。
私(わたくし)は三年生の『ユキカゼ シグレ』と申します。以後お見知りおきを・・・」
ペコリっ
「これはご丁寧にどうも・・・」ペコ
「よ、よろしくお願いします」ペコッ!
な、なんか随分上品な人だ・・・
髪の毛が銀色で、肌も青いからこの人も魔物なんだろうな・・・
着物がすごく似合いそうな美人さんである。
「それで、何を困っているので?」
「実は私も剣撃部の一員なのですが・・・今からその備品を買い足しに行こうと思って街の方へ伺う予定なんです。ですが、その買出しの人数が足りなくて困っていたのです」
「えーと、他の部員は呼べないんですか?」
「先程の試合で盛り上がりすぎてしまって・・・人が集まらないのです」
あぁー、他の人たちも試合を一斉に始めたもんなぁ。
それで買出し班が集まらなくなったわけだ。
「・・・それじゃ俺たちが手伝いましょうか?」
「えぇ!?ですが見学者である貴方たちに迷惑をおかけするわけには・・・」
「困ったときはお互い様というやつですよ。リティもいいよな?」
「うんっ!大丈夫だよ!」
「それは、とても助かりますわ!では、改めてお願いしてもよろしいですか?」
「「はい!」」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そういうわけで俺たちはユキカゼ先輩に連れられて、転移陣から学園近くの街の一つ、
鉱山都市『ルゼルクス』にやってきました!
ここは近くに鉱石の採れる大きな山があり、そこから成り立っているという街。
その鉱石を使った民芸品や加工して武器にする鍛冶屋が有名だ。
ただ、街の裏の方の治安はあまり良くないという噂もある。
「では、離れずについてきてくださいね?」
「分かりました!」
・・・・・
あ〜、結構歩いてんなぁ。
山が近くにあって傾斜が多いから、足に来るなこれは。
自然と鍛えられそうだ。
もう街のはずれの方まで歩いてきてる気がする・・・
「着きましたわ。お体の方は大丈夫ですか?」
「俺は、大丈夫です。リティは?」
「わ、私も、平気だ、よ」フゥフゥ・・・
ちょっと疲れてるじゃん。無理しちゃって・・・
「ええと、それでここは?」
「ここは鍛冶屋ですわ。『クロード工房』の本店です。
貴方たちは学園内の工房を利用したことがありますか?」
「はい、武器を買わせていただきました」
「学園内の工房は学園の学生でもある、ここのお店の娘さん・・・
クロリアちゃんの経営しているものなんですの」
「へぇ〜」
てことは、ここはあの店員のサイクロプス・・・
『クロリア・クロード』先輩のご両親がこの工房主ってことか。
あとさりげなく今初めてあの先輩の名前知ったわ。
カランカラン・・・
「御免下さーい・・・」
「あぁ、いらっしゃい。剣撃部の学生・・・おや、ユキカゼちゃんじゃないか」
出てきたのは男性の人だった。少し意外だ。
「ええ、ご依頼の品を受け取りに参りました」
「そうかそうか。重いけど大丈夫かい?」
「はい。頼りになる後輩さんたちが一緒にいますから」
そう言って俺たちの方を向くユキカゼ先輩。
うん、少し・・・いやかなり照れるな・・・
「ははは、入学したばかりだろうに、頼もしいねあそこの学生さんは」
「ええ、私もそう思いますわ」
談笑をする二人。リティも気恥かしそうに顔をやや赤くする。
俺も赤くなってるんだろうなー。
「ところで、クロリアの様子はどうだ?変わりなしか?」
「お変わりなく、とても健やかに過ごしていらっしゃいますよ」
「そうか!それを聞いて安心したなぁ」
なるほど。この人はクロリア先輩のお父さんか。
お母さんはきっと工房で仕事をして、接客はこの人がしてるって感じかな。
夫婦で仕事をするって何かいいなぁ。
「それじゃあ道中気をつけてね。最近は少し物騒だから・・・」
「分かりました。それではまたよろしくお願いいまします」
「こちらこそ、それじゃあね」
「ユキカゼ先輩、これはなんなんですか」
「これは道場でもよく使う模擬剣ですわ。きっと新入部員も増えると思って、部長さんが注文したのでしょうね」
しかし結構な量だな・・・しかも重量もそれなりだ。
「模擬剣と言っても、本来の剣となるべく近いように造られていますの。ただ保護の魔力が込められているから比較的安全なんです」
「うぅ・・・ちょっと重い・・・」ヨロッ
「リティ、少しこっちに剣を貸しなよ」
「え?でもそれだと・・・」
「いいから、ほらっ」ヒョイ
「あ・・・」
リティの持つ分の剣を少し取り出す。
リティに数本だけ持たせて、先輩と俺が半分ずつ持つカタチになっている。
それでも結構重いんだが・・・先輩は涼しい顔をしてる。流石魔物・・・
「・・・ごめんね」
「別にいいって。それじゃ行こっか」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「本当に助かりますわ。一人ではとても持ちきれない量でしたから・・・」
「確かにこれはきついですね・・・この山道をこの荷物って・・・」フゥフゥ・・・
正直に言っていいですか。
山の傾斜舐めてました。
剣を何本も背負って山道歩くのがマジできついです。
でも俺とほとんど同じ条件のユキカゼ先輩が汗一つかいてないってのはどういうことですか。
俺が貧弱なだけなんですか。
「しかし、なんで街中じゃなくてこんなはずれに・・・」
「あの場所は、クロリアちゃんのご両親が出会った思い出の場所だそうです。
だから思い入れがあって、離れられないのでしょうね。
それでもちゃんとお客様は充分にいらっしゃっているご様子ですし、特に困ってもいないようですの」
困っているのはむしろお客さんの方だが・・・
その理由じゃ離れらんないよな。
「おっと、待ちな」
聞きなれない声がした。
それと同時に、今日は知らない人によく声をかけられる日だなーと思っていた。
「へっへっへ・・・ここを通りたきゃ、その荷物と女を置いていきな!」
すると後ろの方からもぞろぞろと男がやってきた。
最近物騒ってのはこいつらのことか。
「抵抗すんなよぉ?人数はこっちの方が上なんだからなぁ・・・?」
ぐっ・・・ざっと10数人くらいはいる・・・
一体どこから出てきたんだよって言いたいくらいだ。
どうする・・・?
「それがどうかいたしましたか?」キョトン
「はぁ?(゜д゜)」
「私達は一刻も早く学園へ戻りたいのです。そこを通してはいただけませんか?」
「おいおい、この状況を分かってねぇのかぁ?」
「?・・・ただ貴方がたが道を通せんぼしているだけではありませんか」
「あぁ・・・!?舐めてんのかテメェ・・・!俺たちゃ盗賊だぞ!」
「ゆ、ユキカゼ先輩・・・あまり刺激しない方が・・・」
何でこの人は全く動じてないんだよ!?
本当に理解できていないだけなんじゃぁ・・・
「あ〜〜〜〜!!もうジレってぇ!やっちまえ!」バッ
チャキ!カチャ!
「くそっ!やるしかないか!リティ!離れるなよ!」
「う、うん・・・!」
幸い模擬剣があるからこれで何とか・・・!
フゥ・・・
ピキーーン
「え?ハァぁぁあぁぁあぁぁぁ!???」
「へ・・・?」
い、いきなり目の前の盗賊の腕が凍りついた!?
「な、なんだぁコリャァ!?う、腕がぁぁああ!!?」
「もう少し静かに驚いて下さいな・・・」
「テメェ!!俺に何をしやがったぁっぁぁぁあああ!!!!」
「お口、閉じてさせていただきます」
「あがっ!?・・・・!??〜〜〜〜!?!?」
そっと手を差し出したかと思えば今度は盗賊の口が凍った。
それでも盗賊の一人がこっちに向かってくる!
ヒュォ! ザシュッ!
「・・・・・・・・!」ドサッ
それにも意を介さずにどこからか現れた二本の刀で斬り伏せていた。
片方は長く、片方は短い双刀である。
「な、なんだこいつぁ!?」
「ひ、怯むな!とにかくやっちまえぇ!」
ザンッ!ズバッ!ザシャッ!
ドサドサドサッ・・・
一度にかかってきた三人も容易くあしらう。
ちなみに斬られたところは凍りついているため、外傷はない。
つ、強い・・・
「お、お前らァ!?(゚Д゚;≡;゚Д゚)」
「だったら!この弱そうな二人からやっちまえ!」
ヒュゥゥゥゥゥ・・・
ピキピキ・・・
「ひぃ!?足からっ!?凍りついてっ・・・!!?」
ピキピキピキ・・・
「私の後輩に手を出そうというのなら・・・」
ピキピキ・・・
「た、助け・・・!・・・・・・・・・・・」
ピキンッ!
「ただでは済ませませんよ・・・?」
俺たちの近くに冷たい風が通ったと思ったら・・・
襲おうとしてた奴らが全身凍りついた・・・
マジか。
「う、うわぁぁぁぁぁぁあああああぁあぁぁぁああああ!!!!!」
この光景を見ていた一人が錯乱して先輩に突っ込んでいき、そして残りの奴らも襲いかかってきた・・・!
・・・・・
「これで全員ですかね」
数分後には辺り一面凍りついて、全部片付いていた。
俺は2、3人の剣を受け止めていただけで、そのあとすぐに氷漬けにされていた。
「ユキカゼ先輩・・・」
「もう大丈夫ですよ。ご心配をおかけしましたね?」
「・・・は、はい」
むしろ途中から盗賊たちの心配をしちゃったのは内緒にしとこう。
「まさか盗賊に襲われるなんて・・・さぞお疲れになったでしょう」
「俺たちほぼ何もやってないんですけど・・・」
ギュッ
「・・・・・」ガタガタガタガタ・・・
リティが俺の服の裾を引っ張り震えている。
やっぱり怖かったのだろう。
「・・・・ごめんなさい・・・・・・・・怖がらせてしまいました」
「リティ、大丈夫か?」
「・・・うん・・・」ガタガタ・・・
「・・・私はジパングにいる、ゆきおんなという魔物です。
だから空気中の水分を瞬時に凍らせていたのですが・・・・・
やはり、恐ろしいですよね・・・」
「ち、違うんです!私、ユキカゼ先輩のことが怖かったんじゃなくて・・・!
こんな大勢の男の人の囲まれたことなくて・・・!どうなっちゃうのかなって・・・
セインが守ってくれたけど、それでもすっごく不安でいっぱいで・・・
でも、ユキカゼ先輩とセインが一緒にいて!本当にありがとうございます!」
「リティさん・・・それでも謝らなければなりません。本当に申し訳ございませぬ・・・」
「もう終わったんですから!大丈夫です!
私の方こそ、何もできなくて・・・ごめんなさい」
・・・ダメだな俺は。
女の子ひとりロクに守れてないで、怖がらせて・・・
こんなんじゃダメだ・・・!!
「リティ・・・!」ギュッ ←手を握る音
「ふぁわわ!?ななな何かな!?///」
「俺、もっと強くなるから。リティを怖がらせないように、どんな奴が来ても安心できるように、もっと強くなるから!」
「セイン・・・」
絶対に強くなってやる。
そばにいてくれる奴を、泣かせないためにも・・・!
「・・・うん、ありがと・・・セイン・・・!」ポロポロっ
「ううぇい!?な、泣き出さないでくれ!
「うふふっ・・・!私も頑張らないといけませんね・・・」
「これでも食らえ!!」バシュッ!
「!?」
マズイ・・・!
まだ隠れてた奴がいたのか・・・!
しかも弓を射ってきやがった!しかも狙いは!!
「ユキカゼ先輩!危ない!」
「え!?」
ガキィン! ・・・カランカラン
「え・・・・・?」
どういうことだ・・・・・・・?
矢が飛んできたと思ったのに・・・
丸い何かに弾かれた・・・・・?
「ちぃっ!」ダダッ
「ま、待て!」
ドゴォ!
「あぎゃっ!?」
まただ!
何か丸い円盤がその男の後頭部に命中した!?
そしてその物体は不自然な動きで放たれたと思われる物陰に戻っていく・・・
「何なんだ一体!」ダダダッ!
「!」タタタッ・・・
俺が物陰に向かうとそいつはそこから離れていった・・・
「・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「今日は手伝っていただいて本当にありがとうございました」
「いえいえ、こちらも助けられましたから・・・」
あの後、盗賊を街の自警団につきだし、盗賊たちは皆捕まった。
最近ここらで出てきた盗賊らしく、少し手を焼いていたらしい。
「今度何かお礼をさせてくださいね?」
「・・・それじゃぁ、今度指導の方をお願いします」
「え・・・?」
「俺、剣撃部に入りますよ。強くなりたいんです」
俺は強くなりたい。今日心からそう思った。
守りたいものも守れないなんて、そんなのは絶対に嫌だ。
ユキカゼ先輩にも、その思いが伝わったようで
「そういうことなら、いつでも指導して差し上げます」ニコッ
「はい!よろしくお願いします!」
俺のお願いを快く引き受けてくれた。
これから、頑張っていかないとな!
こうして今日の出来事が終わった。
何だか色々あったな・・・
しかし・・・・・
俺たちを助けたあいつは、一体誰だったんだろうな・・・?
12/11/09 04:21更新 / 群青さん
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