連載小説
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授業四日目!採掘実習!-午前中での出来事-


朝 自室


眠気まなこで目が覚めた。
頭を起こすためにもカーテンを開くと、部屋が光で照らされる。
外の景色を見ると、木々は雫を垂らし、地面は湿ったままである。

「昨日の夜は結構な豪雨だったからなぁー・・・」

昨日はユキカゼ先輩と別れた後・・・飯を食って、シャワーを浴びて・・・
そんで疲れがドッと来たからすぐ寝たんだっけ。

時刻は現在7時。いつもよりは少し早い時間に起きたみたいだ。
いつもなら一時間ほど二度寝をするんだが・・・何故かそういう気分ではない。

「・・・妙に目が覚めてるな・・・なんでだろ」

いつもと違う自分の感覚に違和感を覚える。
別にどうでもいいようなことなんだが、何故か気になってしまうものである。




あ、そうか・・・





「今日はあの『夢』、見てないのか・・・」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



朝 食堂

せっかくいつもより早く起きたので、早めに朝食をとることにした。
ちなみにリントも一緒である。
・・・俺が7時に起きた頃にはすでに起きていて、色々と準備してた。
なんか悔しい。

「さーて、何食うかな・・・」

「おや?あれシューゼンじゃないですか?」

ん?どれどれ・・・
確かにシューゼンだな。あんな銀白髪で今の時期手袋してる奴なんて他にはいないだろう。
どうやら注文しようとしてるみたいだ。

「よう、おはよー」
「おはようございます」

「ん?あぁ、お前らか。おはよ。朝早いじゃないか」

「お互い様だろ。で、何を頼むつもりなんだ?」

「焼き鮭定食。に・・・・・・しよと思ってる。いやぁ、ジパングの飯が食えるなんてレシイ(嬉しい)限りだね」

「うまいのか?それ」

「食べ慣れてるもんは美味しいと感じてるが、そんなの人によるし、食ってみないと分からんな」

よーするに説明が面倒くさいんだな・・・

「ふーん・・・じゃ、俺もそれにすっかな」

「僕もそれにします」

「ん、おっけ。すいませーん、焼き鮭定食3つくださーい」

「毎度有りー!よく味わって食ってくれよ!」

中でそう答えたのは食膳委員長のセリ先輩。
この人も一体何時起きなのかね・・・。


・・・・・


「さて、と。席はどこ空いてっかな」

少し早めに来たといっても、学生の数はそれなりにいる。
空いてる席を探すのにも手間がかかるのだ。

そんなこんなで探していると、知ってる人物に出くわすわけで・・・

「あら?昨日もお会いしましたね。その節はどうもありがとうございました!」

「い、いえいえ・・・大したことはしてないんで頭を上げてください・・・」

「出会ってすぐの人のお手伝いをするなんて、普通に出来ることではありませんわ!」

出会い頭に、お礼とともに頭を深く下げられてしまった。
ユキカゼ先輩・・・目立ってて恥ずかしいんでやめてください・・・!

「この人は誰なんですか?」

「剣撃部の先輩だよ。昨日リティと二人でこの人の手伝いしたんだ」

「その方達は・・・?」

「俺の友達です・・・」

何かこの板挟み状態がつらい・・・!!
何とかせねば・・・

「あ、俺たち朝食をこれから食べるんでこれで」

「まぁ・・・!それならば御一緒しませんか?大勢でお食べになった方が美味しいと思いますわ!」ニコニコ



こ、断れねぇ!
受けない理由もないし、何よりその笑顔でお願いたら、断ってから罪悪感しか感じないし・・・!

「わ、分かりました・・・。いいよな?」

「僕は構いませんよ」ニコッ
「ん」

「それではこちらにどうぞ・・・」ニコッ

ユキカゼ先輩は俺の少し後ろに微笑みを向けた。
その視線の先は・・・シューゼンがいるな。
だってシューゼンも目逸らしてるし・・・

お前また何かやらかしたんじゃないだろうな・・・?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ん?おいシグレ。後ろの奴らは何だ?」

「見かけない顔だね〜」

ユキカゼ先輩に案内された席には、すでに先客がいた。
おそらくこの人達と朝食をとりに来てたんだろう。

「昨日お伝えした、私を手伝ってくださった子と、そのお友達です♪」

いつの間にやら話が広められている!?
そう何度も助けたことを伝えられるとすっごい恥ずかしいんですが・・・
しかも本当に大したことない内容なだけに、反応に困るし・・・

「ご紹介いたしますね。
こちらの眼鏡をかけている青鬼さんが『アイザキ キゾメ』、
そして黄金色の髪をしている稲荷さんが『クインジ ヒメ』と言いますわ」

「よろしく頼むよ、後輩達」
「よろしくね〜♪」

付け足すと
やや固い口調の方がアイザキ先輩、
比較的柔らかい方がクインジ先輩である。

「あ、俺はセイン・アストラダーって言います」
「リント・ヒーリンスです。よろしくお願いします」
「スオウ シューゼンです」

自己紹介をしつつ、頭を下げる。
なんというか、ここまで丁寧に扱われると緊張してしまう。

「それではこちらにおかけになってください・・・」

多分大体ユキカゼ先輩の話し方のせいだと思うんだけどね・・・


・・・・・


「でも、ここまで上位ランカーが集まっていると、緊張してしまいますね・・・」

まず口を開いたのはリント。
ユキカゼ先輩は強さ的に上位ランカーだと思ってたけど、残りの二人もそうなのか・・・?

「へえ、よく覚えてるな。確かに私は17位だよ」

「私も18位だよ〜。こんなに早く覚えられてるなんて何だか嬉しいなぁ♪」

「そういえば、確か私は12位でしたね。あまり順位というものを気にしたことはありませんでしたけれども・・・」

つまりは、あのリフィリア先輩と同格か、ユキカゼ先輩に至ってはそれ以上ってわけだ。
って、かなりガチじゃん・・・
今考えるともの凄いラインナップだな・・・(・ω・;)


「なるほど・・・それで、お三方はどういう関係でいらっしゃるんですか?」

おいおいリント君攻めるなぁ!?俺ヒヤヒヤしてるんだけど!?
てかお前『有名人に会えて興奮する』ような奴だったっけ?
そうでなかったら聞き方がまるで記者だよ!

「友達でもあるし、同じチームのメンバーだな」

「同じチーム?」

「課外実習とか〜、イベントとか、あと依頼クエストとかも一緒にこなしたりするんだよ♪」

「つまりは、『良き仲間』と言うべき間柄でもありますの」


「俺たちもいずれはチームを組まなきゃいけないってことですかね?」

「そうなるだろうな。今のうちにいい仲間は見つけておけよ?」

「それなら、僕たちは大丈夫ですね!」

リントが笑ってこっちを向いている。
仲間、か・・・

「ああ、そうだな・・・!」

まだこの学園に来て数日しか経っていないけど、色々な奴と会えた。
それにまだまだそれは増えてくることだろ・・・。
きっと、大丈夫だな。

「ルークはどうするかな〜・・・」

「ふふっ、入れてあげましょうよ」

「冗談だよ。あいつも何だかんだで頼りになるしな」








「で、なんでお前はさっきから黙ってるんだ?シューゼン」

「むぐ?」

先輩たちと話し始めてしばらく経つが、こいつは黙々と飯を食い進めてる。
全く、話を聞いているんだがいないんだか・・・

「んぐっ・・・ぁあ、スマンスマン。考え事をしてて、ついな」

「おいおい・・・」


「よく、お食べになるんですね」

「え?・・・まぁ、はい。そですね」

ユキカゼ先輩が気を使って話しかけてるようだが、素っ気無い返事を返すシューゼン。

「・・・もしかして私達とお話するのは嫌でございますか?」

「そんなことないですよ。キョミ(興味)深いですよ、実に」ズズー ←お茶をすする音

「それなら良いのですが・・・」

・・・多分シューゼンのことだ。
あまり魔物とのコミュミケーションで失敗しないように慎重になってるんだろ。
今もお茶を飲みつつ話を探ってる感じだしなー・・・




「私も『命の恩人』である貴方と、色々とお話したいと思っておりますから・・・♪」






「ブフゥーーーーーーーーーーーーーーーーー!??(; ゚3゚)・;'.、」

『おおぅっ!?』一同(・□・;)





きたねぇなシューゼン!?
いきなりお茶吹き出すなよ!!
・・・あれ?今先輩何か妙なこと言わなかったか?


「・・・シグレ?その話は本当か?」
「ふぇ・・・??」

「へ・・・?・・・はぁっ!?」ケホッ
「大丈夫ですか?シューゼン」サスサス・・・

みんなお茶による驚きで何ともはっきりしてないが・・・
今、さりげなく恩人がどうとか・・・

「ですから「あー!しまったー!」・・・」

ユキカゼ先輩が話を続けようとすると、それを遮るようにシューゼンが叫ぶ。

「いきなり叫んでどうしたんだよ・・・」

「ちょっと忘れたことがあってな!」ガツガツ

そう言うとすぐに定食を口にかき込み、「ごちそ様!それじゃこれで!」とだけ残して食堂から出て行った。
何なんだあいつ・・・?いきなり勝手に忙しくなりやがって・・・


「すみませんねホント・・・」

「お気になさらずに・・・私は大丈夫です」




その後は談笑を交えつつ、みんなでご飯を食べ進めていた。
剣撃部の話とか、昨日の話とかを色々聞いたり話したり・・・
他には特に何もなかった。
ただ・・・


「で、さっきの話だが・・・」

アイザキ先輩が再びさっきの話題を振った時

「・・・すみません、それはまた今度に致しましょう」

ユキカゼ先輩はそう言ってどこか寂しそうに笑っていた・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


1−B教室


「んで?お前らは美女3人組とブレェィクファゥストゥ(朝食)・・・としゃれこんでたわけだな・・・?」
ギリギリギリギリギリギリギr・・・

「歯ぎしりうるさい、止めろ。あと何だその発音」

朝の件をルークに話したら案の定だ。やっぱそこに食いついてきやがったか。
重要なのはそこじゃないんだよ。

「ルーク、セインが言いたいのはそういうことではなくてですね」

「んなこたぁ分かってるよ・・・シューゼンが何か隠してそうってことだろ?」

リントがルークに説明しようとするが、こちらの言いたいことは伝わってたらしい。
流石にそこまでバカじゃないようで安心した。

「今心ん中で馬鹿にしなかったか」

「別に」

「・・・まあいい。でもそれなら本人に聞きゃあいいじゃねーか」

「そのつもりだがな。聞けなくともあんまし言及はしないつもりだよ」

「ふーん」


・・・・・


「今日の授業について説明するぞ。

今日の授業は技術分野『採掘学科』の内容、採掘実習だ。
採掘学科とは、鉱山で働く鉱夫、または宝石など珍しい鉱物を見つけ出す採掘屋なんかの職に関連する授業を行う学科でな。本来は鉱物の特徴や性質を学んでから実習に行くんだが、折角の体験授業の期間ということで早速実習を実施することになった。

というわけだから、こちらが用意した作業着に着替えてもらう。流石に制服で行うわけにはいかないからな。もちろん学校内ではできないから移動する。
場所は、鉱山都市ルゼルクスにある『ルゼリア鉱山』だ。

詳しい内容は場所を移動してから説明する」



「毎回毎回いきなりすぎだよな、授業内容・・・」

「俺、昨日のバトルで結構体にキてるんだけどな・・・」

「そういや勝敗はどうだったんだ?」

「負けたよぉ!悪いかちくしょお!!(*`Д´)ガー」

「悪いなんて言ってないだろ・・・」

いきなり大声で怒るなよ・・・レシア先生がこっち睨んでるじゃんか・・・

「・・・・・・・・・・・」ギロッ

「す、すみませぇん!」(やや裏声)

クスクス・・・フフッ・・・

クラス全体から笑い声が聞こえてくる。
最近恥ずかしい出来事ばっかりな気がする・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ルゼリア鉱山

特に何事もなく、1時間ほどで鉱山へ着いた。
昨日の件もあって少し警戒してたんだが・・・杞憂に終わってよかったよ。

「さて、全員いるな?

それでは詳しい内容だ。とは言ってもそこまで難しくはない。
各自自由にこの鉱山内を探索してもらい、このツルハシを使って自分の思うところを掘り進めていけばいいだけだ。
だが範囲はこちらで予め決めさせてもらっている。立ち入り禁止の場所には絶対に入るなよ?
この山は資源が豊富だからな。運がよければ少し掘り進めるだけで鉱石が出てくる場合もあるだろう。
色々と出てくることが予想されるため、今回は採掘学科の先輩方にも数人来てもらっている。何か分からないことがあったら、上級生に尋ねるといい。
流石に専門外だからな・・・まあ私たちもこの実習に参加するがな。
ちなみに今日採れたものは各自持ち帰って良いものとする。
以上だ、それでは各自採掘を開始してくれ」


して、レシア先生の格好は作業ツナギにヘルメット、ツルハシを肩にかけて説明をしている。
やる気満々だ・・・
あとなんでこの人はこんなにも色んな服が似合うんだろう・・・


・・・・・


坑道は意外と明るく照らされている。
どうやら光る魔法石が使われているようだ。

「こういう魔法石の原石も、ここで手に入るからかなぁ」

ここ、ルゼリア鉱山は鉱物が多く採れるが、深部の方では魔力のこもった『魔法石』の原石も少量だが手に入るようである。魔法石は加工され、安全に使えるような術式を施されたりして世に出回っている。魔法が簡単に出せる魔水晶なんかも、この原石から加工されたものだ。

「この鉱山は深部の方に魔力が溜まっているそうです。魔界化するほどではありませんが、近くの鉱石には影響を与えているみたいですね」

ちなみにこの知識は、ここに来るまでの道中で、リントから聞いたものだったりする。
博識だなぁ、よく知ってるなと感心するよ。

「よぉーし!どんどん掘りまくるぜぇー!」

「あれ、意外とやる気だな」

「つまりはアレだ、珍しい鉱石が取れるかもしんないだろ!宝石や魔石の原石ってロマンがあるじゃねーか!」

そううまくいくもんかね・・・
珍しい鉱石とか学校側が事前調査とかして学生の手に渡らないようにしてそうだけど。
現に立ち入り禁止とかあるわけだし。

「奥の方ギリギリまで行けば、もしかしたらもしかするんじゃねぇの!?」

「でも奥深くには行っては危ないと思いますよ?」



「それに上級生も多くいるからな。危ないところには近づけんよ」

「お?」

というわけで1−C組とも合流。
会話にさらっと入ってきたのはレーヴァだ。
リティと、レーヴァに首根っこ掴まれてるシューゼンもいる。

「いつもの6人だなー」

「何だかもう定番だね」フフッ


「で、なんでシューゼンは掴まれてんの?」

「昨日はあれ以来姿を見なかったからな・・・逃げ出す前に連れてきた」

「別に逃げてないんだけどなー・・・」ズルズル

女性陣ももちろん作業服を着てるんだが・・・
なんか新鮮でいいな。

「・・・?どうしたの?こっちをじっと見てて・・・」

「あ!いや・・・なんか新鮮だし、似合ってるなぁと」

「そ、そうかな・・・///」

「早速いちゃいちゃかコノヤロウ」

リティの顔が真っ赤になったところで、ルークが茶々を入れてきた。

「ち、違うわっ!さっさと行くぞ!」

俺も多分顔が赤くなってるだろう。
ぬぅ・・・ルークに突っ込まれるなんて調子が狂うな・・・


・・・・・


道すがらで掘るやつ、大きな広場から掘るやつとすでに始めているみんなを横目に奥に進んでいった。

「結構奥まで来たよな・・・ここらで掘るか?」

「いや〜もうちょっと行ってみようぜ」




「あ」

「お?」

行ける範囲の一番奥だと思われるちょっと開けた場所に着いたんだが・・・
すでに人がいた。

「あーっ!お前ら!ここはアタシたちが先に見つけたんだぞ!」

「何ぃ!?ちょっと広けてるんだし別にいいじゃねーか!」

以前ルークと戦ったアンネロとクウだ。
何だか久しぶりに見た気分だなぁ・・・

「むぅ・・・じゃー反対側ならいいよ!でもそっち人数多いなぁ・・・」

「何だ?何か問題なのか?」

「だって掘る量が減っちゃうじゃん!掘るのはアタシの専売特許なのに!」

なんとも面白い理由だな・・・
掘る仕事をしたがるのはジャイアントアントの習性・・・なのかな?

「私は、どっちでもいいんですがねぇ・・・」

「お前らが一緒にいるなんて、意外だな」

「まぁ、同じ寮部屋ですから。おかしいことでも無いでしょう?」

「あぁ、そうなのか。それなら確かに・・・」




「よーし!折角だから勝負しよーよ!どっちがいっぱい掘れるかさ!」

「面白そーじゃねぇか!やってやるぜぇ!!」




「・・・苦労はさせられますけどねぇ」

「それは同感だな・・・」


・・・・・


ルークとアンネロが白熱している場所から少し離れて、それぞれ掘り進めてみることに。

ザクッ、ザクッ

「っと・・・やっぱ分かってはいたけど、体力使うよなー」ザクッ

「そうだね・・・あんまり慣れてないから・・・大変だよ・・・えいっ」ザクッ フゥ

リティはあまり体力は無いみたいだな・・・
手伝ってあげたいが、こればっかりはどうしようもない。

「やはりっふっ!リティはっ!体をっ鍛えた方がっ!いいんじゃないかっ!はぁっ!」
ザクッザクッザクッザクッ

同じく慣れていないはずのレーヴァはサクサクと掘り進めている。
喋るか掘るかどっちかにしてくれ。

「これはどだろな」

「うーん・・・これはただの石じゃないですかね・・・?」

シューゼンとリントは協力しながら掘っているみたいだ。
確かにリントなら鑑定できそうだけど、流石に無理じゃないかなぁ・・・

あ、そうだ。

「なぁー、シューゼン。朝やり忘れたことって何だったんだ?」

「ん。部屋メンに朝起こすの頼まれてたんだけど、先輩たちとケッコ(結構)話してたろ?
オレはサッと食って戻るつもりだったから、約束の時間過ぎててなぁ・・・」

「律儀な奴だな・・・」

意外と几帳面というか、気が利くというか・・・
てか朝起こしに行くとか母親かよ。

「自分で約束したんだし、破りたくなかったんだよな。先輩にはモシワケ(申し訳)なかったが」

「あー、まあ大丈夫だったよ。うん」

朝のことはまだ気になることはあるが・・・後にするか。
昨日の惨劇も気になるし・・・てか元気そうだよな、割と。
・・・あれ?何か変だな・・・

「シューゼン、ちょっといいか?・・・」

「ん?何だ?」


「お前あの惨劇の後、保健室に行ってたよな?」ヒソヒソ

レーヴァや他の奴らに聞かれると説明に困るので、声を小さくして話す。

「ああ、おかげ様で。ありがとな」

「あの後どーなったんだ?保健室で寝てたのか?」

「少しだけな。とりあえず薬もらってちょと安静にしてたら大分楽になったから、自室で休んでたよ。剣撃部に参加する体力はなかったからな・・・」

「へぇ〜・・・」

これで辻褄が合うな。
レーヴァは昨日保健室に行ったはずだから、絶対鉢合わせしているもんだと思ってたが、レーヴァはシューゼンと会っていなかった。でもその前に保健室から出てたわけだ。

「まあ、気晴らしに街の探索とかもしたくらいだから、も心配ないよ」

「なるほど・・・あ〜すっきりしたわ」

「・・・何がよ?」

「昨日レーヴァも保健室行ってたんだよね」

「・・・危なかったわ」


見つかってたら、絶対剣撃部に連れて行かれてただろうからなぁ・・・
あの満身創痍状態のままで・・・


・・・・・


「ん〜?これなんだろう・・・」

しばらく掘り進めていたら、リティが何か見つけたようである。

「お?お〜!何か色ついてるな」

何やら緑色と青色が混ざったような石が出てきた。
これって・・・

「宝石の原石っぽいよな・・・」

「ええっ!?宝石っ!?」

リティは宝石とは思ってもみなかったようで、驚いてワタワタしている。可愛い。

「いやまだ決まったわけじゃないから・・・俺だって分かんないし!」

「そそそうだよね!そんな簡単に出るわけないよねっ!」

「ま〜綺麗な石だし、後で先輩に確かめてみよっか」

「うんっ!」キラキラ・・・

目がもの凄い輝いてる・・・
何とも見ていて微笑ましい。



「だあああああああああああああああああああああああああああ!!!」
ザガガガガガガガガガガガガガガガガガ
「うぉりゃぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!!」
ズガガガッガガガガッガガガガガガガガガガッ



・・・あの二人まだやってんのか。
人が和やかにやってるってのに・・・・・・
見つけるのがロマンとか言ってたけど、あの姿にはロマンの欠片も見られねぇよ。



「しかし、変わったなリティ」

「え?」

ふとレーヴァがそんなことを言ってきた。

「最初の頃は何だかぎこちない喋り方で、堅い感じだった。
今ではすっかり打ち解けられて何よりだ」

「そ、そうかな・・・///」

そういえばそうかもなぁ・・・
最初のリティは少し気が張ってて、少しレーヴァっぽい感じだったな。
今はだいぶ柔らかくなったって言うのかな。
すっかり馴染んでいて、気にはしていなかったけれど。

「これもセインのおかげかもな」

「え?俺?」

「リティの全てを知っているわけではないが、何だかセインと会ってから変わった・・・
いや、戻ったという印象を受ける」

「戻った・・・?」

「自分の素が出せているのだろう。学園に来たばかりの時は、一般のエルフっぽい振る舞いをしようと心がけていたんじゃないか?」

「・・・あはは、レーヴァには敵わないね」

リティは笑っていた。

「最初は頑張ってそれっぽく見せないとって思ってたけど、セインと一緒にいると昔を思い出しちゃって。
結局本来の自分に戻っちゃった」

「リティ・・・」

「ありがとうね、セイン。おかげで今、すっごく楽しいよ!」

「っ・・・!」




彼女の何気ない一言に、俺は胸が苦しくなった。



俺は何もしていない。何もできていない。
お礼を言われるようなことは、何も。



それなのに、彼女は笑って俺にそう言った。
それなのに、俺は・・・



俺は・・・まだ彼女のことを・・・
リティのことを、思い出せてはいないんだ。



何でだ?
ここまで思わせているのに。こんなに想わせているのに。



何で。



何で俺は思い出せないんだっ・・・!





「セイン・・・?」

「リティ・・・俺は・・・」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・


「うわぁ!?」

「何だぁ!地震か!?」

大きな揺れが俺たちを、いや洞窟全体を襲っている!
一体何だってんだ!!

ガラガラガラガラ・・・!ボゴォ!

壁に大きな穴があく。
そこに現れたのは・・・


チャキ・・・チャキキ・・・

ピギュィィィィィィィィィィィィィィィイ!


今まで見たこともない巨大な生物の姿だった。


「なん・・・・なんだよっ!こいつっ!」

見た目は馬鹿でかい虫、巨大な蠍のような姿をしている。
ただ、後ろに付いている巨大な尻尾は針ではなく、ハンマーのような形。
背中はキラキラと宝石のように輝いている。
どうやら甲殻が鉱物でできているようだった。


「おいおい・・・こんなのがいるなんて聞いてねぇぞ・・・!」

「まさか・・・『ジェグルナン』・・・!?でもこの大きさは・・・!」

「知っているのか!リント!」

「鉱山などに原生していて鉱物を主食とする甲殻虫です!普通は10〜15cmくらいですが・・・」

「どう見たって高さ3mはあるぜ・・・!」

ピギュィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイイイ

再度鳴き声をあげた次の瞬間

ビキビキィ・・・ガラァ・・・!

「え・・・・・・・・・?」







――その瞬間だけ、世界から音が消えた。

「まずい!ここから離れろ!」


――正確には聞こえなくなった感じがした。

「みんな!早く――」


――次に見えたのは、少しずつ遠くなる・・・

ガラガラガラガラァ・・・


――足元が崩れ去って、少しずつ遠くなっていく、リティの姿だった。





「リティィィィィィィィィィィイイイイイイ!!!」


13/02/23 15:33更新 / 群青さん
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■作者メッセージ

皆様、お久しぶりです。
いや本当にお久しぶりです。
前回から3ヶ月、忙しすぎて忙しすぎてもう・・・本当にすみません。
最近ようやく落ち着いたので、これからはまたゆっくりですが執筆していこうと思います。
遅筆ではありますが、どうかお付き合いいただけると幸いです。

さて、今回ですがオリジナルの生物を出させていただきました。
まあ異常にでかい変わった蠍が出た、と言ってしまえばそれまでなんですが(´・ω・`)
これは「魔物」ではなく「原生生物」の突然変異種といった感じです。
モンスターぽいモンスターは皆魔物娘でしょうし、魔王の影響を受けていない原生の生物なら大丈夫だろう!
という妄想です。
今後はこのようなボス戦も入れていきたいと思っていますので、ご理解の程をよろしくお願いいたします。


それでは次回もお楽しみに

・・・あと、他の連載の題材がいくつかあるんですが、どうしましょうw

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