連載小説
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第十四章† 駆ける糸口†
火山とは、それこそ永き歴史と自然現象が
重なることによって生み出される偉大なる産物である。
人間よりも自然体に近い魔物…特にサラマンダーなどの
火属性・耐性の強い魔物にとっては魔界と同じかそれ以上に
心地の良い場所かもしれない。


だからこそ、人間であるザーンは疑問に思っていた。
なぜ…人間の軍であるマスカーがあの火山に陣を敷いているのか…。
領土内に魔物を住み着かすわけにもいかないため、占拠したのはまだわかる。
…しかしなんと彼らは以前住み着いていた魔王軍と同じように
その火山に巨大な陣を敷いている…これが不思議でならなかった。

人間にとって火山とはあまりにも危険なものだ。
ヴェンガデン火山自体それほどおとなしい部類の火山ではない…、
それなのになぜ?それほどあの火山を重宝しているのか?

火山周辺の高原に巡回隊を配備してまでの厳重警戒など、
数々の疑問がザーンの頭に過るのだった。
…しかし、それも直にわかることだということもわかっている。
サキサとキリアナたちが巡回隊を叩き、
リゼッタとノーザの補給地奇襲によって混乱した迎撃隊を叩きさえすれば、
その次にはあのヴェンガデン火山を守備する軍隊と対決することとなる。


しかし、ザーンは警戒していた。
火山を占拠し陣を敷くマスカー…そして…
あの火山に潜んでいるであろう……まで見えぬ敵に………。





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                《キリアナ視点》




「…見つけた」


朝日が強く差し込む空の下で、高原にある丘の上で私は意識を集中させ、
周囲に響く僅かな音をその耳で聞き取った。
私たちケンタウロス…もとい馬の聴力はそれこそ人間と比べて凄まじいが、
普段は必要以上に周囲の音を聞き取らないようにしているため、
意識を集中し音に専念してこそ、その真価が発揮される。

「どこだキリアナ?」

私の隣で乗馬状態にあるサキサが訪ね、
私はその音が的確に示した方角を指差した。

「あっちの方角だ、少し馬の走らせ方が荒いが間違いないだろう」
「よし、無理に国境要塞から離れ過ぎては隊長たちと
合流する時間にそれだけロスが出てしまう。このまま一気に!」
「落ち着くんだサキサ、確かにそれも最もだが勝利に急ぎすぎては
それこそ己の命を危険に晒しかねない」

私は隊長がシュザントに配属される前に、
この第四部隊を指揮していた経歴がある。
それらの経験と隊長と共に戦い学んだ知識などを
フル活用した頭で状況を確認する。
血の気が多いサキサやシウカがいる我が第四部隊、
そんな二人を上手く扱えばよりこの隊の戦力は向上する。
以前に隊長からの教授で学んだ知識の一つだ。

「それに下手に後を追うように接触しようとすれば、
そのまま逃げられ伝令を火山に送られる可能性だってあるわ」
「…つまり、先回りだな?」
「そういうこと…命令を遂行するためには、
絶対的な状況を創りだす…それが勝利へと繋がる鍵となるのよ、
さぁ…グズグズしてないで行きましょう」


馬の体を動かし、相手側に気づかれないルートを迂回し移動を開始した。
するとその道中…少し気になる場所が目に入った。

「これは……」


それは切り株などが大量に残った高原の一部だった。
それは火山へと続いているものの、そこまでの道中にも切り株の後があり、
その光景を見て私はあることを思い出した。

聞いた話によると、
かつてあのヴェンガデン火山は周りを森が囲んでいたそうだが…
今…目の前の光景……森なんてどこにもない……。
あるのはその名残のように残る切り株だけ……
そう、おそらくマスカーが火山周囲の森をすべて伐採したのだろう。
魔物の住みやすい環境を恐れていか…火山砦の材料となったか…
理由は色々と予想できる…しかし、この切り株だけの虚しい光景は…
どこか、私の…いや…私たちの心に火を付けるものがあったと思う。


「……………」

私と並行して走っているサキサの険しい顔…、
そしてその後ろで私たちに続くリザードマンたちも皆、
似たような表情を覗かせていのだから…。

「……キリアナ…」
「…………?」
「……必ず、この地を取り返そう…。私たちの手で…!」
「…そう、だな……ええ、必ず…」

そのうちに潜める火を感じながら、私たちはその走りを強めた。
そしてようやく、巡回隊を待ち受けるポイントへとたどり着いた。
しかし……。

「待ってサキサ…妙だわ。連中…走りを止めてる」
「なに!?」

目標ポイントへと辿りつき、再び耳の意識を集中させれば、
蹄の音が走っていないことに気づいた。

「まさか、我々に気づいたのか!?」

その可能性は私も感じていたし、内心では焦っていた。
しかし…落ち着かなくては…ここで焦ればそれこそ失策だ。
再び耳に意識を集中させれば、次第に見えてくるものがある。

「…いや、これは………!まずいわ!」

その見えた答えに私は驚愕し、その足を一気に走らせた。

「キリアナ!?どうしたのだ!?……くっ、我々も続くぞ!」
『はっ!』

全速力で走る私に必死に追いつこうと、
後続でサキサたちも追いついてきた。

「まて、キリアナ!どうした…一体何が聞こえたのだ!?」
「ぬかった…!もっと厳重に周辺注意をしておくんだった…!」
「なんだと!?」

サキサが不審な表情を浮かばるが説明している暇もない自体が
私の耳には届いていたのだ。
先回りしたのが裏目に出てしまった…、
その後悔の念を胸に私たちの目に音の発信源が見えてきた。















「どうした?鬼ごっこはもう終わりか?」

一人の乗馬したマスカーの兵…騎馬聖兵はそう言った。
誰にか…そう聞かれれば残酷な答えを返さなければならない…。
……魔物だった、それも二匹の……、
片や進化の過程で戦いを捨てた穏やかなる牛の魔物ホルスタウロス。
片や全身にモコモコした体毛に覆われた眠り羊の魔物ワーシープ。
そしてそれを取り囲むように馬を歩かせ、
武器を構えていたのが本来の我々が目的としていた巡回隊だった。
懸命に逃げてきたのだろう…その二人の魔物は息を切らし、
二人で一つに固まるような形で身を寄せ合い涙を見せて震えている。
しかし、いくら魔物といえど徒歩では馬の走りから逃げ切ることは困難だ、
特にあの二匹のような普段穏やかさが目立つ魔物では…。
そんな二匹の様子を見て一人のマスカー兵士が呟いた。

「こいつら…どうやら知らずの内に
ここに迷い込んだ口のようですが…どうしますヘンセン隊長?」

二匹を取り囲んでいる兵士たちの一人が、
その輪からほんの少し離れた高台にてその様子を
乗馬から見下ろしていた隊長格の男に告げる。
その兵士の発言にヘンセンと呼ばれる隊長はつばを地面に吐き捨てた。

「…オラクのやつめ。見張りを怠ったか…
お前たちの尻拭いをするのは俺達巡回隊なんだぞ…
なんとも損な役回りだ…頭に来る」

…とんでもない誤算だった。
魔王軍があの国境要塞で一悶着を起こし、その結果だった。
野生のホルスタウロスとワーシープ、
二匹とも穏やかでのんびりした性格の魔物だ。
おそらく二匹とも…魔王領内での草原などで
のんびりと…戦いなどとは無縁の日常を送っていたことだろう…、
しかし国境要塞で戦闘が繰り広げられ、実質あの要塞での警備が無になった
隙にこの二匹は知らず知らずの内にマスカー領内にへと入ってしまったのだ。


「……あの、ヘンセン隊長…この二匹どうします?」

兵士の再びの質問に、ヘンセンは高台より降り
それでも尚馬の上からその怯える二匹を見下ろした。

「…聞くまでもないことだろう、殺せ」


「「ひいぃっ…!?」」


「……了解、……悪く思うなよ」

その部下の兵士はその怯える二匹を狙って、
ゆっくりとその手に持つ戦斧を振り上げた……その瞬間。

【ドスッ】「うぎゃあっ!!?」
「なにっ!?」

突如、その戦斧を振り上げた兵士の手を一本の矢が貫いたのだった。



「そこまでだ!!」
「貴様らぁっ!!」

矢を発射し、再び弓を構えた私ことキリアナの登場。
そしてそれに続いてサキサたちリザードマン騎馬部隊の登場に
ヘンセン含む巡回隊は目を疑った。

「なんだと…?馬鹿な、なんだお前たち…?なぜこれだけの魔物がいる!?
くっ、国境要塞の連中め…さてはしくじったか!
おい!なにをしている!その二匹を人質にしろ!!」
「させはしない!」

マスカー兵たちがワーシープとホルスタウロスを捕らえようと手を伸ばすが、
私はすぐさま弓を構え、同時に三本の矢を手にとって発射すれば、
その矢は二匹からマスカー兵を退けるように地面に刺さった。

「おわ!?」

その矢によって敵の馬たちが怯めば、その隙にサキサが突撃した。

「もらったぁっ!!」【ブゥオンッ】

その突撃によって上手くマスカー兵を二匹から退けることに成功し、
その二匹を守るように、私含めリザードマン騎馬隊も陣形を取る。


「くそっ、素早い…!態勢を整えろ!!」

「させん!全兵、一気に畳み掛けよぉ!」


敵の騎馬聖兵が態勢を整える前に、私はリザードマンたちに突撃を命じた。
サキサたちリザードマンたちが総攻撃を開始し、
互いに乗馬した状態での激しい騎馬戦が展開された。


「あ…あの…」
「大丈夫よ、私たちが来たからにはもう安心して構わない」
「あ、ありがとう…ございますぅ……うっ、怖かった…えぐ…」
「…そこでジッとして、すぐに終わらせるわ!」

安堵から涙を流す二人の姿を見て、私は手に持つ弓に力を入れた。
射程距離に入った敵に向かって我ながら正確に矢を飛ばし、
そこから一気に薙刀へと持ち替えた。

「はぁっ!!」【ズバァ】
「おどぉっ!?」【ドサッ】

私と対峙した騎馬聖兵をなぎ倒していく。
元より騎馬を用いている敵ではあるが、
こちらはその馬と一体化しているケンタウロス、
生半可な乗馬技術では私たちに付いてこられる筈がない。

「キリアナ、先ほどの指揮官を!
雑兵どもの相手は我々が務めよう!」
「了解したわ。……やつめ、どこに行った?」

両兵の騎馬がすれ違い合い、この慌ただしい戦場にて、
私は目的の敵隊長を探していた。
自慢の聴覚もこうけたたましく刃が打ち合う音と
蹄の音が激しくては困難を極めた。
…しかし、突如としてそれを突き抜ける高音が響き渡る。


【ブォーーーーンッ、ブゥオオォーーーーーーーーーーンッ】


その音を合図に私は目的の敵隊長を発見した。
火山へ緊急事態を知らせる甲高く角笛を響かせるその男を…。
だが、構わない…これも隊長の作戦の内だ。
むしろ、私からすれば位置を教えてくれた好都合を喜ぶべきか…
内心でそう呟き、私はその男目掛けて直進すれば、
それに気づいた相手を慌てて馬を走らせ、私は後を追う。
すると互いに並行して全速力で走る形となった。
なるほど…流石は隊長格か…乗馬技術自体は悪くはない…。
などと感想を思い浮かべば、相手がこちらを睨んでいることに気づく。

「貴様ァ…たかがケンタウロス、リザードマンごときの勢力で
本気であの火山を攻略する気でいるのか!?」
「……お前が私たちをどう侮ろうと勝手だ。
…だがその言いよう……一体誰があの火山を取り仕切っている?」
「ふん、それを知ってどうする?
角笛は吹かれた、この緊急事態に火山連中はすぐに気づく。
そうなれば貴様らは終わり……と言ってやりたいが……それではつまらんな。
くくっ…援軍が来る前に、この場にいる貴様ら全員…
我が戦斧をもってして八つ裂きにしてやるぞ!」
「……そうか…どう侮ろうが勝手…と言ったのは私だが…
どうやら…取り消す必要があるようだ………!」

ほぼ同時に、並行させていた距離を一気に詰め、
私の手に持つ薙刀と敵隊長ヘンセンが構え持つ戦斧がぶつかり合った。
互いに薙刀と戦斧といった柄の長い武器だ、
騎馬戦にはもってこいの武器を互いに使用し、
それに応じた戦い方を繰り広げる。
だが攻撃方法が少し違った、私の使う薙刀は…単純な攻撃方法ならば
『斬る 突く』という二択の攻撃パターンがあるが…
相手の持つ戦斧は、単純に言えばリーチの長い斧のようなものだ。
あのマスカーの将バンドーの持つハルバードとは少し違い、
持ち手の先端部分が尖っておらず…つまり、『突く』には適していないのだ。
『斬る』という一点での攻撃力には特化はしているが、
斬るという攻撃だけを特化している武器ならば、
当然…見切ることもさほど苦労はしない。

「でやぁっ!!」【ブンッ】
「ふっ、セェイ!」【ギンッ ブンッ】
【ズバッ】「ぐぁっ!?…くそっ…!」

相手の攻撃を弾き、すぐさま反撃に移り、
肩に向かって一撃を与えることに成功する。

「どうする?降伏するならば、これ以上痛い目を見ずに済むぞ!」
「くっ、舐めるなよぉケンタウロス!その人馬一体の体…分解してくれる!」

相手は片手にてその戦斧を長く持ち、豪快に頭上にて振り回し始める。
人間にしては大した腕力…どうやらああして戦斧を振り回すことによって
破壊力を上げた強烈な一撃を狙ってくるつもりか…。

(…ならば!)

私は薙刀からすぐに弓へと持ち替えた。

「今更弓だとぉ!?馬鹿め!この距離ならば十分我が攻撃の間合い!死ね!」

回転させていた戦斧を一気になぎ払うように横からの攻撃が振り下ろされる。
だが私は慌てない…たとえ、どれだけ急いだところで…慌てればそれまで…
そう、戦いとは的確さこそが効率的。
弓に持ち替えたのも…薙刀での攻撃よりも…相手の攻撃を打破する
効率のいい『技』が私にはあった。
弓に矢が引かれ、相手が戦斧を振り下ろす前に…私は既に構えていた。

「…『魔弓技:ドリルの一矢』!」

我が体内を巡回する魔力をその一矢に集中させる。
だがただ集中するといっても螺旋状に…
そうすることによって威力をさらに跳ね上げる。
そして一度この一矢が放たれれば、標的はその威力を思い知る。


「なっ……!?……ぉっ……わあああああああぁぁぁぁぁっ!!?」


螺旋によって舞い上がる急激な風圧により、
相手は馬より飛ばされ、地面に向かって体を強く打ち付けるのだった。











「キリアナ、こちらは片付いたぞ」

気絶した敵隊長を縛り上げている最中に、
サキサたちリザードマン部隊がやってきた。

「ええ、私のほうもなんとか。
……サキサ、この男をお願い。貴方の馬で運んでほしい」
「ふむ、わかった。ケンタウロスたる故仕方もないことだろう…」
「…ごめんなさい、貴方に手間をかけさせるようなことをして…」
「ふふんっ、なに気にすることはない。私たちは盟友だぞ?」
「…ふっ、持つべきものはなんとやら…か。
…ところで、先ほどのワーシープとホルスタウロスは?」
「ここだ」

サキサの隣にいたリザードマンたちの後ろにその二匹が姿を見せる。
そのほかのリザードマンたちの後ろには先ほど打倒し
気絶したマスカー兵たちが馬に縛られ横たわる。


「…傷は…ないようね、よかったわ。さぁ、すぐに戻ろう。
その娘たちとマスカー兵を国境要塞に預け、隊長たちに合流する」

『おおっ!』

皆が一斉に手を上げ意気込む。
すると先ほどのワーシープが私の服を引っ張ってきた。

「ん、どうした?」
「あ、あの…その人はどうなるんですか?」
「なに…?…ああ、この隊長か…たしかヘンセンとか言ったか…。
どうともしない、魔王軍に捕らえられ男の末路は皆同じ。
私たち魔物の夫となるだろう」
「えっと…ケンタウロスさんは?」
「わ、私か…?いや…その、私はな…
その…ほら、あれだ!好みじゃないというか…」

この時一瞬、サキサから妙な視線を感じたのは気のせいだろうか…?
しかし一方ではそのワーシープは目を輝かせた。

「だ、だったら…その人…私がもらってもいいですか?」

その発言に私は少し驚いた。

「君が…か?別に構わないが…いいのか?先ほど君を殺そうとしたのだぞ?」

それでも頷くワーシープの姿を見てサキサはふっと笑った。

「良いではないかキリアナ、我等リザードマンとて…
一度刃を交えた者に恋焦がれるもの、
敵意向けられてこその恋というのも珍しくはない」
「…うむ…その通りだ。わかった、私の方から上に報告しておくわ」
「…やった!」

嬉しそうにガッツポーズするワーシープの姿には微笑ましいものすらある。
ただし、少なからず一部戦いに向いていない魔物に
敵軍の兵などを引き渡す時、その相手の凶悪性によって場合が変わってくる。
最悪、ダークエルフなどの調教にあうか、
全裸で両手足を縛った状態でデビルバグの巣に放り込まれることもある。
彼女の場合は、当分の間は魔王軍から派遣されたクノイチかマンティスによる
見張りがつけられるだろうが、彼女たちのような大人しい魔物を考慮しての事
しかし、夫のほうが完全に妻の虜になってしまえば…それまでの話。

「君は、お友達に先越されちゃったわね?」

私はワーシープと一緒にいたホルスタウロスにそう言った。
だがやはりというべきか、ホルスタウロスもその傍で気絶し
縛られていたマスカー兵の一人のしがみついていた。
…確か、あの敵隊長の命令で処刑しようとしていた兵士だったか…。
…なんとも、恋というものはわからんものだ。

「…ふっ、さて…撤退するぞ!」

気持ちを切り替え、私たちは元来た道へ戻っていくのだった。
…私も、負けてはいられないわね……。





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            《ザーン視点》



ブオォーー…………ン……オオーーー…………。



「…!おい、隊長!」
「ああ、聞こえた」

国境要塞の門前で待機していた私とシウカは、
キリアナたちが出撃した方向より聞こえてくる角笛の音を捕えた。
そしてその音に釣られるかのように要塞内からヴィアナが現れた。

「いよいよね…隊長さん…。どれぐらい激しい戦いになると思う…?」
「…ノーザとリゼッタが上手く立ち回ってくれればどうとでもなる。
今、私たちに出来ることはできる限り時間稼ぎするように
火山からの迎撃軍を相手にすればいい。
…シウカ、くれぐれも突っ込んでくれるな?」
「へっ、そう念を押して言わなくてもわかってるよ!」
「…ヴィアナ、もしもシウカが突っ走りそうになったら縛っていいぞ」
「了〜解♪」
「おいおい信用ねぇな!?突っ込まないって言ってんだろ!?」
「……冗談だ」

…少しらしくないことした私の発言にシウカはため息をつく、
ヴィアナは微笑ましいものを見ているかのように笑うのだった。

「エレノット殿に報告を。我々も出撃するぞ」
「「はっ!」」


……私は最後に、リゼッタとノーザの成功を祈り
出撃準備に取り掛かるんだった。
もっとも、本来教会と敵対する魔王軍軍属の者が…
祈るというのも言い得て妙なものだがな…。





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             《ノーザ視点》



「ノーザ、あれ…」
「…うん、間違いないと思います」

私の足で捕まっている状態のリゼッタを運びながら、
私たちを隊長に言われた通りの補給地の捜索を開始していた。
火山を守るマスカー兵に見つからないように迂回し、
できるだけ高度を高くしての搜索だったが、
私の足で捕まり、隊長より渡された地図の注目地点にたどり着けば、
まるで拍子抜けと言わんばかりに、その補給地を発見することができた。
確かにヴェンガデン火山より随分と離れ、
高原から林へと地形が変わろうとしている瀬戸際にそれは設置されていた。

「…火山からの影響を受けないため、
限界ギリギリまで場所をしぶったって感じだと私は思います」
「うん、でもあの林…身を隠しになら持って来いかも…」

白兵戦や偵察を得意としているリゼッタが補給地とその周辺の
地形を再度確認し、私はその補給地の様子に注目した。
物資が詰まっているであろう無数の木箱やテント、
そしてそれを警部するマスカーの兵士…騎馬聖兵などはおらず
あくまで歩兵を中心にしている部隊。
数は…見た感じではそこまで多くはないが、
まだどこか死角にいる可能性もある。
だがそれを考慮しても、さすがに100とは満たないだろう。

「…警備兵に見つからない位置に降下するから
しっかり捕まっててねリゼッタ」
「うん、わかった」

とはいえ、近場に林があるというのは好都合だった。
リゼッタの鼻を頼りに敵がいない地点に降下し、
私たちは補給地のすぐ傍の茂みまで忍び込むことは容易にできた。

「…どうノーザ?」
「あそこと、あそこ…それとあれと…これ……うん、大体間違いないと思う」

私たちは空中で確認した物資の位置を地上でも確認した、
正確な目標の位置を絞り込めばそれだけこの奇襲はスムーズに進む。

「あ、まって…ここからじゃ見えないけど、確かあのテントの裏にも…」
「……! ノーザ伏せて…!」
「!」

リゼッタの声に反射的に茂みの中に潜み伏せれば、
補給地よりマスカー兵がすぐそばまで近づいてきた…
だがどうやら気づいいてはいないらしく見回りの途中のようだ。
……しかし一方で、私たちはその現れた兵の姿を見て驚愕した。
…その見回りの男自体は見たこともない、
ただその姿…格好を私たちは知っている。

(……魔導兵…!)

マスカーを象徴する緑を模した黄緑の衣服、
そしてその上に黄色のローブを纏ったその姿。
マスカーの兵科の中でも特に魔術特化した兵科……、
さらに特徴としては魔術書などの本を用いず、
変わりに両腕に魔術書変わりとなるリングがはめ込まれており、
これが彼ら魔導兵の強力な魔力触媒となっている。
戦場において少しでも軽量化を試みての結果である。

「………………」
「………………」

その魔導兵が去ったことを確認すれば、私たちは安堵の息を吐き捨てる。

「まさか、魔導兵までいるとは…」
「しのごの言っても仕方がないわ、多少のイレギュラーは想定内……!」
「!!」


ブォオーー…………ン…オォ……ン……


「……来た」


遠くより確かに聞こえてくる角笛の音、
そう、それは紛れもなく敵軍に我々のことを認識されたことを意味していた。


「巡回隊からの角笛!?敵か!?」
「確認急げ!」

角笛の音を聞いた見張りのマスカー兵たちが慌ただしくなってきた。
よし、この混乱の隙を付いて……、……!

「…ほほぅなるほど。夜明けと共に仕掛けてきたかな魔王軍」

すると、一人テントの中から現れた男の姿に私たちはさらに身を伏せた。
その現れた男を中心に警備兵たちが隊列を整えはじめる。

「お目覚めになられましたかマジリアス警備長」
「うむ、戦の狼煙を奏でん音による目覚めというのも悪くないものだ。
…だが、なるほど。魔王軍方もあの火山を奪還せんと必死か、
よほど未練があると見える。
……ふむ、皆の者よ。角笛を聞こえし地はここから距離があるとはいえ
こちらに敵をよこさないとは限らん故警戒怠ることなきよう振舞え」
『はっ!』

…どうやらあれがこの補給地を守る警備隊の隊長ということらしい…。
そしてその格好は…ローブを纏ったその姿…そう、魔導兵だった。

「…………リゼッタ」
「………ええ、私の合図で…」

だが、物資の位置は確認できた。
そして何より敵の中で最重要警戒人物の確認ができた。
これ以上警戒を強められる前に、私たちは作戦開始の決心をつけた。


「……3…………2……………1ッ!!」



…作戦開始。
茂みの中より私の黒い羽が空へと舞い上がり、
地上より黒き影が駆け出すのだった。


「なっ!?て、敵襲ぅ!敵しゅ【バキィッ】おぐあっ!?」

「一気に決める!」


リゼッタの先制により近場の警備兵たちが一気になぎ倒される。
だが、狙いは兵士たちを倒すことではない。物資を燃やすことにある。
指揮官から警告はあったものの、まさかの的中による
突如の襲撃に兵士たち驚きを隠せないでいた。

「マ、マジリアス警備長!敵襲です!林より魔物が!」
「なんと、なるほど!まさか我が予想がこうも的中しようとは!
なるほどなるほど面白い。しかし、見たところ襲撃者はあの二匹だけとは…」
「はっ、ですが…まだ林の中に潜めている可能性も…」
「いやいや、斥候にしてもたかが二匹だけというのも奇妙な話。
相手方にはブラックハーピーという天駆ける黒き翼を持っておる、
おそらく二匹だけによる少数の襲撃、下手に林に向けて警戒態勢を取れば
それこそ彼女たちの対処が緩くなり思うツボというもの…。
…しかし、二匹とて油断はせんことだ。少数故に侮るべからず心がけよ。
林を警備している兵士たちを呼び集めよ!数で押すのだ!」
「はっ!」

「くっ、ノーザ!急ごう!」
「うん!」


私は補給地に設置されている燭台に向かって、
得意の羽根による射撃攻撃を開始した。
無数の羽根がマシンガンのように発射され、燭台の火を通して燃え上がり、
その燃え上がる羽根は物資にへと命中した。
無数に燃えた羽根が一斉に命中したのだ、物資はすぐに炎に包まれていった。


「なるほど、やはり物資に対しての襲撃か!飛射兵!打ち落とすのだ!」
「させない!」

ボーガンで私を狙う飛射兵などの撃破がリゼッタの主な役割だった。
これで私のほうは物資にへと集中できる。
飛射兵を含む、地上の敵をリゼッタが引き付ける隙に私は
次々と物資に向かって炎を通した羽根を命中させる。

「むっ…これ以上の勝手、我が失態、すなわち…あのお方への汚名…
許すわけにもいかん…魔導兵!私に続くのだ!」

「…ッ!ノーザ、気をつけて!」
「!!」


私は物資への集中を中断し、その集められた魔導兵たちへと警戒を強めた。
全部で五人ほどくらい…これは確かに
魔術に対してそこまで強い耐性のない私たちにとっては危険な対象だった。
しかし、私が警戒を向けた時には既にその警備長は詠唱を済ませ、
その手を…燃え上がる物資に向けた…まさか!

「はぁっ!!」

警備長の手からは風の魔術が発射され、
物資の一つに燃え上がる炎を一瞬でかき消してしまった。

「くっ…!」

これには私も歯を噛み締めた…こうなっては…!


「リゼッタ…一時対象を変更しよう。あの男…この任務の大きな障害となる」
「…わかったわ!」

「ふむ、なるほど…こちらを狙ってくるか。
魔導兵は私を援護しブラックハーピーを迎え打て!
その他の兵は集中してワーウルフを狙うのだ!
単独といえど油断することなかれ、
戦場では常に忠実な振る舞いが求められる…」


対空戦に適した魔導兵をブラックハーピーたる私に集中して来た、
リゼッタからの援護も難しい…こうなってしまっては実力で
乗り切るしかない………!
私は自分の射程範囲に敵警備長マジリアスを捉えるも、
この距離では相手方も十分射程内らしく、不敵な構えを見せていた。


「……邪魔しないでください、私たちの任務は荷を燃やすこと…
それさえ済めば早々に立ち去ります…と私は貴方に忠告します」
「ふむ、なるほど…確かに…下手に戦い、やられては元も子もないであろう…
しかし見ての通り我等魔導の兵…灼熱の炎を沈める風を操るもの……。
…無駄なハッタリはよすといい、我らの存在を無視し荷を燃やしこと
など不可能だということはわかっているであろう?」
「……隙を付いて、一撃で気絶させてあげようと思いましたが…」
「残念であったな黒き翼を持つ鳥の娘よ。
…元より、我等魔導兵…偉大なる魔導軍師クランギトー様の教え子。
あのお方への忠誠を示すため、いざ参られよ」
「…貴方の忠誠には感服します…ですが私たちも負けるわけにはいきません
……………ですから…覚悟、してください」

私の羽根と敵方の風が発射されたのはほぼ同時だった。
しかし、風を使った魔術ではどうにも私の羽根は相性が悪い…
発射した羽根は風により威力を失い、そのまま舞い散ってしまう…
相手が一人や二人なら力ずくも出来たかもしれないが、
相手は警備長含め五人の魔導兵による詠唱。
個人による攻撃もあれば、合体詠唱による強力な攻撃も扱ってくる。
故に下手な力押しは確実に敗北を招きかねない。

「くっ…!」
「我が部下たちと共に成す風の旋律…
よもや多勢に無勢などという戯言を戦場で言うわけでもあるまい?」

正面からの撃ち合いでは不利と判断し、
高度を急上昇させ、相手の真上から真っ直ぐに降り注ぐように射撃する。

「なるほど、できる限り死角を狙おうと企てるか。
しかし頭数ではこちらが有利、故に我らに死角なしと心得よ」

警備長を取り囲むように四人の魔導兵がそれぞれの方角へと手を掲げ、
中央に立つ警備長は真上へと手を掲げた。
するとそんな彼らをさらに取り囲むように魔術の障壁は展開され、
私の羽根を防いでしまった。


「魔導の使い手がこれだけ密集していれば、
我等全員を覆い守る守護障壁の展開も難しくはない。
我等魔導兵、共に同じ師を持つ魔導の使い、故に互いを知り、己を知る」

「…よくしゃべる口です…時間もありません…すぐに黙らせてあげます」

「おお、それは申し訳なかった。悪き癖かな因果かな…
魔術詠唱が原因か、我が口はお喋りな口なようだ。
しかしその黒き翼が地に落ちれば、お喋りも消えようて」

「……馬鹿に、しないで…!」【シュビビビビビッ】


相手の達者な語りに徐々に苛立ちを覚えてしまい、
私は再び無数の羽根を真上から発射した。

「無駄なこと、また同じ光景を見ることとなる」

相手の魔導兵たちは先ほどと同じように障壁を展開するが、
私はここぞとばかりに高度を下げ、その障壁の周りを高速で巡回し始める。

「……?………なるほど、スピードによる錯乱狙いか。
しかし無駄なこと、この障壁は並大抵の攻撃で敗れることもない。
我らはこのままそちらの疲労を待てばいいだけのこと……む!?」

その時警備長は初めて気づいたのだ、
自分たちの障壁の周囲を飛行するそのスピードが徐々に加速し、
いつの間にかそれこそ目にも止まらるスピードで、
自分たちが小さな台風か竜巻かの中心で取り囲まれているかのような現実に。

「これは…!むぅ、なにを企む黒き翼の娘よ!
この障壁…例え象が全速力で突進してきても防いでみせる自信はある!」
「…だったら、その自信もこれまで…
戦術とはいえ、固まって防御に回ったのが貴方の敗因…」

周囲を目視できぬ程の高速で飛行する私は自らの勝利を語った。

「敗因…、とは大きく出た…しかしまたハッタリということもある。
たかがブラックハーピー…その黒き翼を持ってしてなんとする!」




「…魔翔技・『黒翼一閃』」



「ぬぅっ…!?」




舞い上がる風から一筋の黒き影が飛び出し、
その全身には魔力エネルギーを鋭く覆われ、
高速飛行による突進技。しかしその威力…打撃というよりも斬撃に近く、
鋭く纏った魔力はまるで斬撃による強力な一筋のように
対象に襲いかかったのだった。


「なん…と…」


警備長は、障壁がガラスのようにバラバラに破壊され
部下の魔導兵共々、弾き飛ばされたことに気づいたのは、
私がそんな彼らを通過した時だった。

「…こうする」

その言葉による締めで、魔導兵たちは一斉に地面に打ち付けられるのだった。


「…ぐっ…なる…ほど…強い、な…この敵地にて…たかが二匹で……
赴いた…その意味……これで…合点が…いっ…た……」


叩きつけられた体を辛うじて起こすも、
警備長マジリアスはその言葉を最後に
体を地面に叩きつけた衝撃と痛みから、その意識を手放したのだった。
魔導兵は己の防御こそ魔力により補う傾向が強いため、
詰まる話直接攻撃による打撃に弱い。
…一撃で沈めることができたのはそれらのおかげだろう。


「マ、マジリアス様がやられた…くそっ…そんな!」
「おのれぇ、撃ち落としてくれる!」


数人の兵士が私に向けて弓矢を構えるが、
意識を私に向けて集中しすぎるというのも問題だった。


「よそ見しないで!」【バキバキッ】
『ぐわぁっ!?』


あらかたの敵を片付けていたリゼッタの蹴り技によって
その飛射兵も弾き飛ばされてしまうのだった。

「急ぎましょうリゼッタ、貴方は気を失った
マスカー兵たちをお願いします。私は物資のほうを…」
「わかったわ!」

敵をあらかた倒したからといって気を抜いてはいけない。
角笛による救援信号は放たれ、いつでも火山からの増援が出撃しても
おかしくない状況なのだ。事は急を要する。
全滅させたマスカー兵はリゼッタが縄で縛り上げ林の安全な所に隠し、
その間に私は物資を次々と燃やして回ったのだった。
これさえ完了すれば早急に隊長の元まで帰還しなければならない…
しかし、撃退できたものの…魔導兵の出現は予想外だった…
一度隊長にこの事を伝えなければいけない、
なぜなら私は、火山に潜む敵将に…嫌な予感を感じているからだった。
空に舞い上がる黒煙を見上げ、私はその予感が外れていることを
心のどこかで祈るばかりだった。












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         《ヴェンガデン火山:マスカー視点》




「伝令!補給地より不審な黒煙を確認とのこと!」


「ちぃっ、マジリアスまでもがしくじったか。
役立たずどもめが、これでは俺の面目が…!」



リゼッタたちが物資に火を放ち、
立ち上る煙は狙い通り火山より出撃したばかりの迎撃隊に混乱を与えた。
迎撃隊の数は五百程かそれに近いそれ以下か、
しかし火山という拠点に駐在させる兵力にしては十分すぎるものだった。
それほどマスカーはこの火山を重宝しているということだ。

数列に並べて行進していた迎撃隊、列の両端を騎馬聖兵で固め、
その中の列には飛射兵、剣戦兵…さらには聖甲兵などの
歩兵で埋めている陣形であった。
そしてその陣形の先頭に立ち迎撃隊を連れ従える男…
マスカーの隊長、兵科 聖甲兵 バダッサ
彼は補給地による異常事態に焦りを見せていた。

(なぜだ…なんだって俺ばかりがこんな目に遭う…
あいつが…バンドーを王都より追い出してやってからずっとこうだ…
王都防衛の警備騎士団からは外され、
挙句の果てにあんな灼熱の火山なんぞに配属されて……くそ…
しかもよりによって『あのお方』がご来訪しているときに襲撃だと…?
くそっ、バンドーのせいだ!奴が現れてから全てがおかしくなったんだ!
配属先の捏造をしてやっただけでこの体たらく……やつは疫病神だ!)


「くそ…くそ…くそっ…!」
「バダッサ隊長!補給地による黒煙…いかが致しましょう?」
「くそっ…火山に残した防衛部隊はあれ以上兵力を割くことは無理だ…
…くそ、仕方ないこの隊から兵力を分隊し確認してこい。
敵がいれば倒せ、大した問題でもなければとっとと戻ってこい」
「はっ!」


(くそっ、なんだって…こんな災難面倒事ばかりが俺にばかり…)

「…もうダメだ…どうせ俺なんて…なにやったって…」


「…!まずい!またバダッサ隊長のネガティブが始まった!」
「隊長!お気を確かに!」
「我々がついています!ですからバダッサ隊長、自信をお持ちに!」

「お、お前たち…!こんな転落人生真っ只中な俺に…!」

「例え落ちぶれても我等は隊長と共にあります!」
「馬鹿!落ちぶれたは言うな!」
「と、とにかく!我々はどこまでもついて行きます!」

「おおぉ…お前たちぃ…!うう、俺はいい部下を持った…(´;ω;`)
いよぉーっし!ならばお前たち、前進だ!俺に続けぇー!!」
『おおーーーーー!』







「あーあ…まったく、ホント面倒な隊長だよ…」
「でもあの人あれでエリート兵科の聖甲兵だしなぁ…なんだかんだで強いし」
「気分の落差が激しすぎるのが最大の悩みだぜホント」
「あの人、元は王都配属だったけどどういうわけか、
いきなり上から落とされことに対してひどいトラウマ抱えてるもんなぁ…」
「でもそれって確か本人にも落とされた理由が
あったからこそああなったんだろ?」
「ああ、そうでなけりゃあんなネガティブな性格になるわけねぇさ」
「よからぬ事した心あたりがあったてこったな」


息を揃えて落とす部下たちのため息をバダッサは気づくことはなかった。


「ふっはっはっはっはぁー!全軍前進だ!!」







そしてそんな愉快な迎撃隊が出撃した後、
ヴェンガデン火山内部にて場面がうつる。





「…バダッサ迎撃隊只今出撃致しました。
しかし途中補給地より不可解な黒煙を確認…兵力をいくつか分断させたとか」

腰にボーガンを装備した一人の兵は火山の山頂付近に構える高台の砦にて
その場から周囲を見下ろす人影に向け跪き報告をした。



「ほう、補給地に攻撃を仕掛け迎撃隊の兵力を少しでも割りおったか」

「補給地に向かわせた部隊を呼び戻しますか?」

「…ふむ、しかしまだ断定できるものでもない…確認なしで
無碍にできることでもなかろうて。
どれ、私はこのまま景色でも眺め様子を見るとしよう。
迎撃隊により撃退される程度の敵ならばそれまで…
ここまでやってくるようならば、謹んでお相手するとしようか…。
…これまでと変わりなく、防衛隊の指示…任せたぞトレイト殿」

「はっ、お任せを…たとてやつらがココに来ようとも…
我がボーガンを前に、登り詰めることなど不可能とお教え差し上げましょう」

「ほっはっは、頼もしい限りよな…。
迎撃隊に赴いたバダッサ殿の親友であり、
元士官学校教官の実力…期待しておるぞ?」

「…………はっ…」


そのボーガンを持つ防衛隊長、兵科 飛射兵 トレイト 
は最後にどこか気まずい返事を残し、その場より退出した。


「…ほっはっは、さて…こちらも準備はしておかねばならんな」


山頂付近に構えられた砦より周囲の高原を見下ろしながら、
そのフードを深く被り顔を隠す一人の軍師。
ミライド・クランギトーは僅かに露出させた口元を
にやりと微笑ますのだった。













13/04/10 23:30更新 / 修羅咎人
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■作者メッセージ
今回の絵ですが分かりやすいよう名前も入れてみました!

技解説


キリアナ
 ドリルの一矢(どりるのいっし)

一本の矢に螺旋状に魔力を集中させ、発射する一撃。
しかし本質は肉体を抉る為ではなく、
その急激な回転の風圧で弾き飛ばす技。死ぬことはないにしろかなり痛い。
純粋に壁など障害物を破壊する際では回転パターンを鋭くし抉る事も可能。
最初は螺旋の一矢という名前にしたかったのですが、
こうなるとどうしてもどこぞの弓兵だけど弓兵やってない赤い人
連想しちゃうのでせめてもの配慮、当然元ネタ。




ノーザ
  黒翼一閃(こくよくいっせん)

高速の軌道に乗った飛行から、
両翼に魔力を集中させ突進する突撃技。
されまでのスピードに乗るまでが時間を要するが、
今回ノーザは敵の周囲を円形に飛び回ることにより成功させた。
基本、羽根を飛ばすことによる射撃技が目立つノーザにとって
珍しく接近を要とする大技。


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ちゅーっす!
また新しい魔物が現れて結構いいテンションになってる修羅咎人です!
どうも最近FEシリーズにハマりすぎている影響で
使い捨てボスの扱いとか、どうもFE被れすぎている気がするけど
気にしないで気ままにやっていきますぜ!


あ、それでふと思ったんですけど…
ちょっと前に飛竜系が現れて、ワイバーンの作品投稿した後に
気づいたことですが、未だペガサスとかいないのが気がかりですねぇ…と
思ってます。いえいえ、気長にお待ちしてますよ当然!
気がかりというのは設定のほうで、ワシも余り元のペガサス詳しいわけでは
ないのですけど、FEシリーズ見た影響じゃあ
ペガサスって純粋な心を持つ女性に懐くという印象がありまして…
つまり、魔物娘で現れた場合…百合っ子が生まれるわけか!?キタコレ!
など勝手に妄想しちゃってます!でも可能性はあるっしょ!?



感想返信

天月 様
なんと…!つまりあなたがあの有名な
ドラゴン殺し(マラのサイズ的な意味で)を持っているという伝説の…!?
こいつはくせぇー!新車以下の匂いがプンプンするぜぇー!!(いい意味で)
ですが後々、物語が進むにつれてザーンやリゼッタたち同様
マスカーたちという敵国を知っていくと思いますので
どうぞよろしくお願いしまーす!
基本マイペースですが、それでもであれば気長にお付き合いくださいませ!
…さぁ、次は誰でしょうなぁ…(ゲス顔)


TAT 様

にゃにぃーー!?どういうことだ呪われてんのかワシの投票ボタンはぁっ!?
ですがご感想ありがとうございます!これからもどうぞよろしくです!








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