連載小説
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第十一章†魔物浪漫†
先日と打って変わらず快晴の日差しが窓から差すなか
私ことザーン・シトロテアは今現在廊下を歩きながら、
昨晩の………サキサと交わったことを思い出していた…。



(リゼッタに悪いことをしてしまったな……)



思い出すと同時に悩んでしまう……、
いかんなぁ…ただでさえ日ごろ軍略などで悩んでいるのに
こうも悩みすぎるといつか禿げてしまうぞ私……。
私は複数の悩みを心配をしながら頭……というよりも髪の毛を手で擦った。
そうしているうちに私は、現在リゼッタが一時的な自室としている
キャスリン将軍の拠点にある来客用の部屋までやってきた。

「………………………」

……うーむ…扉とは、開けるのにこんなプレッシャーあったか…?

「……………すぅーっ……よし……」

深呼吸をし、私は意を決してドアノブに手をかけようとした………がっ。


「隊長…?」【ガチャッ】
【ドガッ】「ドアッ!?」


絶妙なタイミングで向こうから扉が開き、
私の顔面に攻撃を仕掛けてきた。

「た、たっ、隊長ぉぅ!?だ、大丈夫ですかぁっ!?」
「…………………問題ない…」(おぉ痛っ……)

衝撃を得に強く受けた鼻をおさえ、
なぜか天罰でも受けたような気分になった……。



「す、すみませんっ!部屋の前から隊長の匂いがしたので、それでつい…」
「いや、お前が謝る必要はない。部屋の前で呆然と立っていた私が悪い」
「でもぉ……」

リゼッタが犬耳を垂らして申し訳なさそうな顔をしている。

「…ほらっ、そんな悲しそうな顔をするな。
耳もだ、お前は表情が同時に耳でもあらわれるな……」

私はその犬耳をつま先で掴み取り、出来る限り優しく上にあげた。

「キャンッ!?もぉ…隊長ぉ…、耳は敏感なんですからぁ…♪」

口ではこう言っているが、私に耳を触られて嬉しいのだろう。
尻尾をかわいらしくパタパタさせているのがそれを物語る。
心和むものだな、うん。耳から手を離し、私はリゼッタの頭を撫でてやった。

「わっ…!?わっ…!?隊長、そんな…こんな廊下でぇ……///」
「今は私たち以外都合よく廊下には誰もおらん、
いつぞやに寝ぼけていた私の目元を弄ってくれたお返しだ」
「そんなぁ……私はただみんなに隊長がだらしないとか思われたくなくて…」
「『嬉しかった』という意味でのお返しだ……」
「………クゥンッ/// そっ、それはそうと隊長、私に何か御用ですか?」
「おっと、そうだった。キャスリン将軍より収集がかかった」
「将軍さまから……ですか?」

「そうだ、『森』での一件でな。それぞれの情報を集め
これからのマスカーへの対策会議といったところだ
無理もない、あのマスカー・グレンツが突然戦場に姿を見せたのだからな」

「マスカー・グレンツの登場は、
これからの戦いのさらなる活発化を意味するっていうことですか…?」


「まだそうと決まったわけではない、しかし……もしまた近いうちに
奴が戦場に姿を現し………尚且つそれが続くようであれば……だな。
元々、奴は無碍にできるような存在でもない……
そのうえ、お前たちが戦ったダヴァドフなどという男の率いる
まやかし兵たる特殊部隊の存在も明らかとなった以上、
それら全てを含む情報を総合し纏め上げる必要があるのだろう……、
だからこそ、あの戦闘に参加した隊長格は出席しろとのことだ、
お前も私の補佐役として出席しろリゼッタ、いいな?」



「はっ、了解しました!
……………でも隊長、ひとついいですか?」
「……?なんだ……【グイッ】 お、おい!?…………んッ…」



突然腕を引っ張られ、部屋の中に入ったと思った瞬間だった、
リゼッタが素早く扉を閉めて、私に唇を重ねてきた……。
そのうえ舌を絡ましたディープなモノではあったが
意外にもリゼッタのほうからゆっくりと唇を離してきた。


「おはようございますザーン隊長……♪」

「……………ああ…」


控えるように注意しようとも一瞬思ったが…
唇を離されたあとに…こんな表情で言われると…な、
そんな気もどこぞへと失せてしまった。
私は今一度、少しの間リゼッタの頭を撫でてやると、
嬉しそうに尻尾を振る彼女とともにその場を後にした。













二人で廊下を歩く足を一旦止めて、
私は懐中時計を取り出し時間を確認した。

「会議までしばらく時間がある、
その間にある程度、我々で情報を整理しておこう」
「了解しました、第四部隊のみんなから情報を集めるんですか?」
「………いや、そこまでの時間はないだろう。
今日は自由時間を与えている分、みんなが今どこかにいるのかもわからんよ、
探している間に時間切れだ………、最低限だけでいい…一人だけ探すぞ」
「だれなんですか?」



「………サキサだ…」



この時、私はリゼッタの顔を見れなかった事に自分の不甲斐無さを感じた。

しかし、サキサはあの戦いで
マスカー・グレンツ、ダヴァドフの両者と戦っている。
アラクネのヴィアナもそれは同じことなのだが、
彼女はダヴァドフ戦では途中で魔力を使い果たし、気絶したらしいからな。
ならば最後まで戦っていたサキサに聞くのが一番妥当で効率的だろう…。

正直、リゼッタを連れて彼女に会いに行くと言うのも抵抗はあるが、
私情が原因で大事な会議を疎かにするわけにもいかんだろう……。











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「つまり、奴はガントレットに刃を仕込んで……」
「ふむ……」【カキカキッ】


中庭で訓練しれいたサキサを拾って(私を見た途端、顔を赤くしたが)
情報を元に、私はレポートに纏めている。
ついでに今いるここは、此方の拠点にいる間、私が自室としてる来客室だ。


「リゼッタ、サキサ。お前たちから見て、そのダヴァドフとかいう男から
なにか特別な力を感じなかったか?
勇者の力はもちろんだが………先に戦ったマスカー・グレンツのような
宝玉の扱ったような特別な力などは…」


3人で丸テーブルを囲んで椅子に座りながら、
我々は時間までに出来る限りの情報確認、整理を行っている。
主に私が大まかな質問をし、情報を書き示し、
それぞれの意見を参考として聞き入れるといった流れだ。


「どう……だろうな、確かにダヴァドフはかなりの使い手だが
これといった魔力を用いた攻撃は仕掛けてこなかったぞ?」
「それに威力の高い攻撃だとすれば、火薬などを使った爆破攻撃でしたよ?」
「なるほどな…」【カキカキッ】

初めに意見を答えたサキサとは
また反対側の隣で座っているリゼッタの意見も書き示す。

「勇者の力だってそうだぞ
ザ………隊長、あの男はバンドーなどとは違い
それなりに場数を踏んでいるようだったしな、
こう言っては悔しいが…、勇者でなくても我々を上回る実力を付けていても
ありうる話じゃないのか?そういう意味では隊長だって良い例だろう」

「過大評価だな、私がお前たち三人相手に勝てるなどとてもだぞ…?」

「それこそ過小評価だぞ隊長、自分の腕に自信を持て。
『私の』隊長ならな……………♪」

「ふっ、精進しよう」
「ふふっ、そうしてくれ…♪」


すると、リゼッタが私の服の裾をひっぱり、耳を傾けさせてきた。
サキサに聞かれたくないのか、小声で私に耳打ちする。


「……あの、隊長……サキサさんとなにかありましたか…?」


「「ない」」


聞こえていたのか、サキサまで私にピッタリと息を合わせて否定した。


「そう…ですか…」(でも今……隊長のこと……)






……サキサの性格だ、昨日のことは他人には晒したくないのだろう…。
私だってできればそうしたいが……、
しかし如何せんリゼッタが鋭い……というよりもこの場合はサキサに問題か?

明らかに以前より……なんというか…穏やか?な感じになっている。
上手く言葉に表せないが 憑き物が取れた といった感じだ。
それもあってか、表情や話し方が僅かに柔らかくなっているような気がする。

日頃仲間として共に過ごしてきたリゼッタの事だ、
この違和感に感付きはじめてきたか………どうしようか私…。

………とりあえず今はいつも通りに隊長として振舞って誤魔化すか…。




「しかしお前たち三人が相手しても互角以上に渡り合う敵となると
やはりその男も無碍にはできないだろうな………、
まやかし兵……マスカーの最高の隠し玉というわけだ…。
この連中の隠密精度は我々も体験した通り、
雨の中とはいえ私も、お前たち魔物ですら気付かなかった脅威さだ……
その上、匂いを配慮しての抜け目のなさ……。一人一人が強力な構成員…。
やれやれだ、マスカー・グレンツとはまた違った厄介ようだな……」

「「…………………」」


考察からなのか不安からなのか、
二人は黙り込み、固まった表情をしている。

私はあえて二人に声をかけずに、書き留めたファイルをテーブルに置き
席を立ち、部屋にあった道具で全員分のコーヒーを淹れることにした。


「あっ、コーヒーくらい私が…」
「座っていろリゼッタ、一時的ではあるがここは私の部屋であり
その部屋に訪れているお前たちは形式上一種の客人だ、
もてなしぐらいは自分でやらせてもらいたい」


するとリゼッタが少し頬を膨らませてしまった。
まったく、私のために補佐役の仕事を完璧にこなしたいからといって
そうむくれることもなかろうに……、まぁ微笑ましいものもあるがな…。
私は二人の前にそれぞれのカップを置くと、自分のカップを手に
壁に凭れかかり軽く一口、中身を口にした。
それにつられて二人もカップを手にしてた。

「……おいしい…」

リゼッタが小声で呟き意外そうな顔をした。
まぁ、日常的なものに取り柄のない私の唯一の特技みたいなものだ。
自慢ではないがそこらへんの店には負けん自身はある。


「………ん?すまない隊長、少し気になるところがあるのだが…」

するとファイルを眺めていたサキサが
テーブルに自分のカップを置き、ファイルを指差して私に質問した。
何か疑問点でもあったのだろうか?
私はサキサのところに移動すると、
一旦カップをテーブルに置き
彼女に寄りそるような形で指差されているファイルの一文を目にした。
(心なしか彼女の顔が少し赤いな……。)
するとリゼッタも気になったのか、
彼女も席を立ち、私とは反対側のサキサの隣に移動し、
カップをテーブルに置いてファイルを覗いた。

「リゼッタ、確かここは………」
「ええ、ここがこういう意味で。ここが………」
「おぉ、なるほどそういうことか!」

ふむ、大したことでもなく
少しわかりづらい文章をわかりやすく説明すれば済むようなことだった。
サキサは戦闘などの類は得意だが、
この手の巧妙な文学は少し弱いところがあるのかもしれないな。


「…よし、とりあえず発表するモノとしてはこれで申し分なかろう
後は会議で他の隊長方と意見を纏め合った後、隊員たちにも結果を伝える。
リゼッタはこの後も私の補佐があるが、とりあえずはご苦労だった」
「「はっ!」」

ここでまた、懐中時計で時間を確認した。


「もう少しで時間だな。リゼッタ、少し早いが…会議室に向かうとしよう」
「わかりました」

テーブルに広がったファイルをひとつに纏め上げにはいったリゼッタを
確認すると、次に私はサキサに目を向けた。


「サキサ、情報の協力感謝するぞ。お前のおかげで予想以上のはかどりだ」

「礼には及ばないぞ隊長、私は貴方の部下として当然のことをしたのだ。
それで役に立てたのなら私も嬉しい限りだ」(その為の私なのだからな…♪)

「そう言ってくれると私も嬉しい限りだ。
改めてご苦労だった、お前は自由行動に戻って……」
「あのぉ〜〜……隊長…サキサさん…」
「ん?」
「どうしたんだリゼッタ?」

突然、先程までとは打って変わって抜けたようなリゼッタの声に
私たち二人は思わず反応し、目を移した。
見ると彼女がテーブルに置かれている三つのカップを見ていた。


「いえ…、私…会議室に行く前にコーヒーを飲み干そうとしたんですけど…
あの…どれが隊長のカップで、どれがサキサさんのカップなんですか…?」
「「………………はっ?」」
「だから…その…これです…、この三つのカップ…」

リゼッタが指差した先にはテーブルに置かれた三つのカップ……。
ふむ、なるほど……カップの形も色も三人とも同じだったから
どれがどれのカップかわからん。
取っ手の向きでわかるのでは?と思った君かも知れないが、
私もリゼッタも、サキサの傍に寄ってからカップを置いた。
そのせいもあってか、見事に三つのカップの取っ手の向きがバラバラなのだ。


「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」


おいなんなのだこの空気は…?
たかが自分が飲んでいたコーヒーがわからなくなっただけだろうに……
みんなそれぞれ一口ずつ口にしていたから、量だって大して変わらんが…。
……なんだか私まで喉が渇いてきたぞ……、まぁ仕方ない…
とりあえず適当に一番手前のカップで……

「「隊長ストップッ!!」」【ガシィッ】

……手を伸ばしたら、二人に手を掴まれたぞ…?
しかも妙に力が入っているのだが………痛い痛い痛い痛いッ。
痛みを訴えようとすると、二人が素早い動きでこちらに顔を向けてきた。

「「……確かめさせて(くれッ!!)くださいッ!!」」

「……どうぞ…」

二人の威圧感が半端ではなかった……目つきも半端ではない…。
蛇に睨まれた蛙 という奴か、これ程までの威圧感を繰り出せるとは
上司として喜ばしいはずなのだが、どうもズレてる気がして
素直に喜べないというのが本心だというのは君にだけ教えておこう。

……時間、大丈夫だろうか…。

私は懐中時計を覗きながら、嫌な予感という不安にかられるのだった…。





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            ≪シュザント:リゼッタ視点≫


ザーン隊長と間接キスッ!ザーン隊長と間接キスッ!
ザーン隊長と間接キスッ!ザーン隊長と間接キスッ!
ザーン隊長と間接キスッ!ザーン隊長と間接キスッ!
ザーン隊長と……はっ!いけない私ったら熱くなりすぎちゃった……。
冷静に…そう、冷静に…ザーン隊長が飲んだコーヒーのカップが
どれかを見極めなきゃいけないッ!!

これだけは絶対譲らない!!
たとえサキサさんっ!貴方が相手でも!!


………えっ?もう隊長とエッチしたんだから間接キスぐらい今更……?
なに言ってるんですか!それとこれとはまた別口です!!
男には男の……女には女のロマンがあるんですっ!!

愛しのあの人と間接キス……魔物娘ならだれもが一度は思う憧れ……ッ!!
日頃、隊長の補佐をしながらチャンスを伺っていましたが………
エッチしてから「もういいかな」とか思うようになっちゃって
内心諦めてたけど……まさかここにきて突然のチャンス到来……ッ!

正直今でも歓喜の笑みを顔に出さないように必死です……わふふっ…♪

でぇもぉっ!サキサさんまでもが居合わせるなんて予想外です…ッ!
私と同じようにカップをチャックして、
どれがザーン隊長が飲んだカップかを見極めようとしています。
いつも以上の積極さですねサキサさん!目がマジです!私もだけど!





大体なんですか…今日のサキサさん……なんだかいつもと違います……
さっきだって……隊長のこと…名前で呼ぼうとしたし………
なんですか……二人して……いつから『そんな仲』になったんですか……、

……気付かないと思いましたか隊長、サキサさん…
……狼の嗅覚…侮らないでください…。


……ええ…正直に言えば…悔しいって気持ちはありますよ……、
もっと深く考えたら、嫉妬心とかも湧き上がってくるかもしれません……。
でもですね…意外に思うかもしれませんが
それならそれでいいかなって思っちゃう気持ちも
実はあっちゃったりしちゃうんですよね……ふふっ、おかしいですか……?


魔物娘にとって、愛する人が他の魔物と交わることは大して罪でもありません
でもそれ以前に別の理由があります…。

…今日のサキサはとても楽しそうなんですよ。

私たち軍人はいつその命を落とすかわからない生き物…
サキサさんはそんな境遇のせいか、いつも自分に厳しい人でした。
日を重ねる内にそれは増す一方で訓練や戦闘でもかなり無茶もしてました…。

多分サキサさんにも自分を厳しくしたいような
なにか特別な理由があるんだと思います…。

でも私は、その特別な理由こそが
サキサさん自身を破滅に追いやってるんじゃないかという不安もありました。

実際にこの間の森での戦いでは
サキサさんは突然の奇襲に酷く混乱していたのがいい例です。

どれだけ自分に厳しくても心は不安と悲しみでいっぱい………、
サキサさんはそんな心境を持った人なんだなと私は思います…。



………だけど今は違う、と断言できます。
今日のサキサさんが見せた顔は……
そんな心境を胸の内に持っている人ができる顔とはとても思えません…、
とても穏やか………、とても幸福………、とても愛しく………、
今のサキサさんは…間違いなく魔物として女として救われているんですよ。

そう…ザーン隊長、この人のおかげで……。



軍人の魔物にとって一番の心の安らぎは『心から愛せる男性』。
だから私は何も言いませんよザーン隊長………、
貴方の手でサキサさんが救われたのならそれでいいじゃないですか……。

………だからといって私は貴方を諦める気なんてさらさらありませんよ?
ふふっ、近いうち……イジワルに問い詰めちゃいまからね隊長ぉ……♪
この体を……貴方に味わってもらいながら………ふふっ、ふふふっ♪



でもとりあえず今は………隊長の唇付きの最高級コップが
どれかを見極めなければですね………。
ふふっ…、負けませんよサキサさん、隊長のコップも……隊長自身も……♪








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              ≪シュザント:サキサ視点≫

落ち着けぇ〜〜……、落ち着けぇ私ぃ〜〜…………はぁはぁっ……。
いかん……これは気を抜いていると鼻血がでかねん……。
なに?キャラ崩壊?…………や、やかましいっ!
もう性交で痴態を晒してしまったのだ!これぐらいがなんだぁーっ!
ヤケクソとか言うなぁっーっ!!決してそんなんじゃないんだからなっ!!

「おいお前たち…、あまり時間は……」
「わかっている隊長ッ!すぐ終わるから待っててくれ!というか待てッ!」
「えー………」(犬か私は?そういう対象はリゼッタの役目だろうに……)

くっ……隊長の気分を害してしまったかぁッ!!
いいやっ!大きな使命には必ずしも犠牲が付き物…………許せ隊長ッ……
……で、でも絶対嫌いにならないでくれよ…………?
そんな顔するな…しないでくれ……。ふ、不安になるだろうっ!?

「た、隊長っ!本当にすぐ終わるから………」
「なにをしたいのか知らんがそうしてくれると助かるな……」
「お、おおっ!任せろッ!!」
「………………」(……何を? とは言わないでおこうか…)

私は視線を再びテーブル上のコップたちに移し思考を張り巡らす。

(どれだ……?くそっ、リゼッタがコップをテーブルに置いたとき
あろうことか私はファイルに目を移していた………ッ!
隊長がコップを置いたときもそうだ…………
不ッ覚ッ!もっとはやくこのラッキーハプニングに気づくべきだったッ!)

ほんの数秒前の自分に後悔しながらも、
私は更なる最悪な事態に気づいてしまった。

(しまったぁーッ!!リゼッタはワーウルフだったァッーー!
やばい!持ち前の優れた嗅覚でもうすでにわかっているんじゃあ………
……いや、まてよ……。いくら鋭い嗅覚でも、こんなコーヒーのような
香りの強い飲み物では、カップについた隊長の匂いを判別することなど
できないんじゃあ……………)

そこで私はチラリとリゼッタの方を見た。


「……………」(にやぁ〜)


笑ってるぅーーーッ!?これ絶対に判別してるーーーーッ!!?
これでもかというくらい卑しい顔してるぞこの狼娘ッ!?
うっわっ、こんなリゼッタの顔見たことないぞっ!?
読者が生で見たら、ワーウルフのイメージが崩壊しかねんレベルだぞこれっ!
こんな顔隊長が見たら………うわぁ、タイミング良く懐中時計眺めてるな…。

しかもこのリゼッタ、よく見ると耳もピッコピコ動いてるぞッ!
ちょっとかわいいぞ!触ってみたいぞ!
でも私だってチャームポイントのトカゲ尻尾があるんだからなっ!!
あ、ワーウルフにも尻尾が…………もふもふした………尻尾………
も、もふもふがなんだぁっ!(←スーパー心の嘆き)

わ、私のトカゲ尻尾だってなぁ!
触ったら結構ひんやりしたりして気持ちいいんだからな!
好きなやつは好きなんだからなっ………う、ううぅ………、
な、泣いてない!これは……あれだ…コーヒーの湯気で目が乾いただけだ!

「……おいサキサ、お前本当に大丈夫か?」
「………大丈夫だ、気にしないでくれ」

ふぅーーーっ……物凄く話が逸れてしまった………って……
それどころじゃなかったぁっ!!
リゼッタに先に隊長のカップを見極められてるんだったぁっ!
い、い、いかんっ!!こんな事を嘆いている間にもリゼッタが………。


「………………」(にやにやぁ〜)


…………………舐めてるなこの狼娘めぇーーーーーッ!!!
おんのれぇ……私が鼻が利かないからといって見下しおって〜〜………。
この場で思い切ってその布切れ服ひん剥がしたろかコンチョクショウめ!

(い、いかん……ッ!このままではリゼッタの思う壺に………
というか私のキャラ崩壊が酷い……………はっ!!)

私は困惑に囚われながらも、
今一度テーブルを見ればあることに気づいた……気づくことが出来た!!
三つのカップの中身であるコーヒーの『水面』が揺れているのだ。
そう、水面だ!これが何を意味するかわかるか……?
この三つのカップの水面、そのそれぞれが別々のリズムで動いている……
それはすなわち、『カップがテーブルに置かれた順番』を意味するのだっ!

私の記憶が正しければ、私を含め隊長もリゼッタも
カップを置く時は、特に力を強く入れていなかったし、
三人ともただ普通にカップをテーブルに置いたはずだ、
これならそれぞれのコーヒーの揺れに入る反動にはそれほど大差もない筈だ!

よし!冷静に……冷静に思い出せッ………!
あの時……それぞれがカップを置いた順番をっ………!



そうだ……まず私がファイルに対しての疑問点を隊長に質問して……
その時には私は自分のカップをテーブルに置いた………
つまり一番初めにカップをテーブルに置いたのは私ということだ!

そして確か……そう、隊長が私の疑問点を説こうとして………
私の隣に来てカップを置いたんだ、つまり隊長は二番目………!

そして最後にはリゼッタもファイルを説きにきた………!



つまり!隊長のカップは………っ!
一番大きく揺れてもいなければ、一番小さく揺れているわけでもない中間!




「これだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

【サキサは カップBに 飛び掛った!】


「うそッ!?」(しまったぁ油断したぁーーーっ!)

【リゼッタも 慌ててカップBに 飛び掛った!】


「……………………………」(……うむ、今日もいい天気だな…)

【ザーンは 現実から 目を逸らした!】










              ≪主人公:ザーン視点≫

……………まぁ…あれだ…うむ、あれ………ええっとな……
窓から差し込む光が心地ち良く、
外から聞こえる鳥たちのさえずりがなんとも…【ガッタァーンッ】………、
ああ…二人の椅子が飛び掛った衝撃で倒れてやかましい音だしてからに……。


「ほっ!はっ!ていっ!」【バシバシバシッ】
「ちゃちゃちゃあいっ!」【バシシシシシッ】


おーおー、リゼッタとサキサがなぜかカップを巡ってすごいのなんのだ……。
一方がカップを取ろうと百烈拳の如く両手を伸ばし、
また一方がそれを防ごうと両手で払いのける。
さすが魔物だな…………私でも目で追うのがやっとだ………、
…………いや、真剣な感想なんだ………本当ぞ……?



「そこだぁっ!」
「なんのぉっ!」


いやぁ、こうやって見てると意外に面白い………って、違う違う…。
もうすぐ会議だからな……そろそろ止めねばだ……。
………ん?サキサの奴、トカゲの尻尾を………
ああなるほど……あの動き…、昨日彼女と一戦交えた私にとっては
大体予想が付くというものよ……。


【ガッシィッ】「えっ!?」


そらな、行動に移してきた。
サキサが攻防の末、リゼッタの両腕を掴み取り身動きを取れないようにした。
リゼッタはワーウルフ、サキサはリザードマンだ。
力で言えば普段から重い剣を振り回しているサキサの方が幾分か上なため、
掴まれた腕を振りほどくこともできないだろうよ。
まぁリゼッタの腕力も相当なモノなんだがな………。

どれぐらいかだと?……そうだな、簡単に言えばだが
一瞬で『林檎』を素手で握り締めて粉砕するほどだ。







            
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           ≪マスカー:バンドー視点≫

「………………ッ!!?」【ガタッ】

「おわぁっ!?ど、どうしたんですかバンドー隊長!?
食事中にいきなり立ち上がって…………??」

「…いやぁよ、なんかとぉーんでもない憎悪が一瞬込みあがってきてな……」

「はい………?」


マスカー拠点の食堂にて、俺と部下の一瞬のやりとりであった………。
…………………なんだってんだ一体この扱いはよ……?


            

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           ≪主人公:ザーン視点≫

一瞬、わけのわからんくだりがあったと思うが気にするな。

まぁ、そんなこんなというやつでリゼッタの両手をサキサが掴みとめた。


「……一体なんのつもりですかサキサさん……?
こんなことしたって、両手で掴んでる以上貴方だって動けませんよ」


それは違うぞリゼッタ、サキサにとって両手さえ封じればそれで十分なのだ。

「…………はっ!?まさか……ッ!?」

気づいたか、さすがに察知が早いな。私としても鼻が高いことだ…。
だが今気づいたところでもう遅いだろう、
それに対処のしようがないぞこれには…………。


「悪く思うなリゼッタっ!」
「ああぁっ!?」


トカゲの尻尾を使ってカップを掴み取るなどといった器用な芸当は、
リゼッタのような狼の尻尾では不可能に近いのだからな……。

……………というかオイ、カップから盛大にコーヒーが床に零れてるが
掃除するのは一体誰だと思ってるのだ…まったく……。
一時期的ではあるが、この部屋は仮にも私の部屋だぞぉ……………。





【グッビィーーーーーーーーーーッ……………ゴクッゴクッ……】
「ぷっはぁ〜〜〜……あぁ〜…♪」

サキサがコーヒーを思いっきり飲み干すと、
どういうわけか……目元を垂らして、とても恍惚的な表情をしている…。


そんなサキサと向かい合っていたリゼッタにかんしては……。

「………………………………orz」【ズゥーーーン】

なぜかとても暗い雰囲気を漂わせて蹲っている………。
なんというか………負のオーラ…?平たく言えばそれに近いな……。
しかもこのオーラ、なぜか近くにいる私までもが
罪悪感にからるような錯覚を覚えてしまう……。






まぁ、色々あったがなんにしろ…どうやら決着がついたということらしいな、
なんの決着かは私には皆目見当もつかないが………、
彼女たち魔物特有の『何か』があったのだろう…………。
そして私は最後に今一度懐中時計を見やり、命令を下した。


「もういいだろ二人とも?リゼッタ……、なぜか落ち込んでいるところを
悪いのだがいい加減時間だ。行くとしようぞ…………」

「………………ぁぃ……」


おい本当に大丈夫かこれ………。
なぜかサキサのほうはこれでもかというくらい、
リゼッタにどや顔しとるし…………、まったく…仲が良いのか悪いのか…。
とりあえず私も気持ちを切り替えんとな、
私はファイルを纏め上げたそれを手に取り、
そして最後に一口、近くにあったカップを手に取りそれを飲み干し
部屋を出ようとした。

「よし、行くぞ……」

「………………」
「………………」

…………………………………………ん?

「おいどうした?さっさと…「隊長ッ!!」おぉっ!?なんだリゼッタ!?」

「た、た、た、た、隊長ッ!い、今何しましたッ!!?」


「…部屋を出ようとしただけだが?」
「いえ、その前ッ!!」

「……ファイルを纏め上げただけだが?」
「その後ッ!!」

「……………『リゼッタの』コーヒーを飲んだだけだが………」


「…………………………………………」

「………リゼッタ?どうかしたのか…」

「いんえ〜〜♪どうもしませんよぉ〜〜♪」


なんだ、さっきと雰囲気が逆転したぞ!?
尻尾が物凄くパタパタと振れているし……。

「……………!…すまん、もしかしてお前が飲むつもりだったか?」
「いえいえ、いいんですよ別にぃ〜♪
隊長が『自分から』飲んだんですから仕方ありません♪
そうですよねぇ、サキサさん………?」

「………………… (゜□゜)」←サキサ


なぜ今度はサキサがこんな呆然としとるんだ、わけがわからん。

「あー……サキサ?お前は持ち場に戻っていいぞ……ご苦労だった…」

「……………………(;ロ;)」


なぜ泣く…………?そんな目で私を見るなって…………。


「隊長、急がないと間に合いませんよ?」
「あ、ああ………」

私はどうも複雑な罪悪感を胸に抱き、
逃げるような足取りでその場を後にし、会議室にヘと向かうのであった。




12/01/27 02:36更新 / 修羅咎人
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■作者メッセージ
魔物にとっての間接キスって
種族によるだろうけど案外ロマンなんじゃないかな?と思ってやってみた。
結果思いのほかギャグ方面を強めることとなったね。
反省はしていない。してはいけないと 強いられているんだ!(集中線)


読者様方<間接キスッ!?情報収集していはずじゃ………!
ワシ<残念だったなぁ……、イチャイチャだよ……。

おっとそうだ、年も明けたのでみなさんに言うことがあります。

メリー・クリスマースッ!!

………なんて言うと思ったか!?おもしろくもない冗談だよッ!!
どうでもよい自己満足だよ!本当にありがとうございましたってやつだ!!

では改めて……明けましておめでとうございます。


いやぁー申し訳ない!
気晴らしに古本屋で中古なのに五千円もはたいて買った
『ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡』 やったらどっぷりはまっちゃって
投稿がだだ遅状態ぃッ!!
FEシリーズ初心者の分際で、度頭ハードに挑戦!!
………やだ、なにこれ…(高難易度的な意味で)

しかしワシが大好きな軍略系をプレイできてるので満足感パない!
やりがいもあるし!

内容を非常にワシ好みで、様々な場面を思いつけたし
このモンスター・ソードに生かせたらいいなとかも思っています。


そして今一番の問題なんですが、
新年に入って健康クロスさまが新しく設定された決まりごとの中のひとつに、

「あなたの考えた男性キャラクターを見に来ているわけではありません」

というのがありまして、これ見てちょっと危機感感じてます。
魔物娘たちもちゃんとキャラ立てはしてるつもりですが…
如何せん、ザーンたち男性キャラの方が設定が
色濃くて目立ってるんじゃないかとちょっと不安です。
もっとリゼッタたち第四部隊の隊員たちを強調しないとと考え、
今章は出来る限りそれを表したつもりです!

ですがなにか「こうしたらいいよ」というのが
ありましたらどうかひとつお願いします!
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感想返信!


名無し 様

やっぱり似てますよねぇ〜。ですよねぇ〜……………
隊長の補佐役がワーウルフ種ってのも……、だってワンコかわいいもん……。

アレク軍とうちの第四部隊が正面からぶつかったらっ!?
うーん………、アレクVSザーンでしたら色々考慮できますが、
隊員たち丸ごととなると結構悩むところですね………。
もし『戦ったらきっとこういう感じだ!』という予想がありましたら、
また気軽にご感想してくださいね♪

TAT 様

毎度ながらご感想ありがとうございます!
やっぱ読者様からの感想というのがワシのような三流書き手にとって
一番の喜びです。だからそんな自虐的にならないでっ!
ワシMだからSっけはほとんどないの!

異世界の大陸………そうだったぁ〜、またうっかりしてたぁ…。
どうもミスが多い……。
ですが世界は違えど、魔物の為という同じ志を持った軍人同士っていうのも
それはそれで結構なロマンがあっていいじゃありませんか?
まぁ、それもそれで一種の自己満足かもしれませんけどね(^^;

設定のほうも、またある程度話が進んだら
またメッセージ欄にて公開しようと思います、ではでは!


おいちゃん  様

第四部隊隊長ザーンの過去…………それはッ!
………………言いてぇぇぇぇぇっ!!あらかた過去設定が完成したから
すっげぇ言いてぇぇぇっ!!
やはり物語を進めるにつれて公開していくつもりですが………
果たして何ヵ月後になるのやら……………(遠い目

仲間がいた! おいちゃん様 が 仲間になった! (ぱぱぱっぱっぱっぱ〜

確かにその手段での設定も考えたんですが、
私としては、まず本章を呼んでもらってから
設定資料集を呼んでもらったほうがわかりやすいと考えたんですよ。
wikiとかを呼んでいる影響なのか、
ある程度キャラたちの過去や手の内を公開してから、
設定資料にて解説したほうがそれはそれで書き手の私としては楽しいですしね



それではまた!

 

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