102 後悔と青年と恐怖の念
さぁて、前回の話を読んでいてくれたら分かるだろうが、今の俺の状況は…凄く芳しいものではなかったんだ…
ジェラシカって名前の精神体の話を聞いて、逃げるって選択肢をかなえてやるから、このガラスケースから開放してくれって言った時に、少しは俺も疑ってかかるべきだったんだよなぁ…
って、後悔している場合じゃない!!この状況だと、俺の逃げるって道を選ぶことは愚か…俺の選択肢が無いじゃないか!!
そ、それに…俺が彼女達に攻撃しているわけじゃないって事を彼女達は…わからないんだろうしなぁ…
「ふっ…どうしたんだ?俺が神になったことを悟って黙り込んだのか?だが、俺は遠慮も容赦もしないぞ?くはははははっ!!さぁ、俺が怖くなければかかってくるがいい!!」
くそぉっ!!俺の体を乗っ取っている精神体は女性の声をしていたのに…俺の声を借りて話しかけているし、話し方も男みたいに話すと…本当に俺が痛い奴になって話しているみたいじゃないか!!
彼女はスカニやリーネが俺を見ている…あの痛い目線に気がついていないのかな…?
それに、スカニにあのような挑発的な態度は取ったらダメなんだって!!
そこの部分は悟ってくれよ!!お願いだからさ!!なぁっ!?
「…デメトリオの癖に、あたいを挑発しているのかい?へっ…後悔するよ?あんたにはケイの身を危険にさらされたって恩があるからね…この恩は…必ず返してやるつもりだったんだ…あんたが言ってきたことなんだから…後悔しないでくれよ?」
「いいから来るがいい…なんなら二人まとめてでもいいんだぞ?それとも、その高圧的な話し方は飾りで、その控えめな胸と同じように控えめな正確なのかな?おっと…胸の話は女性には禁句だったな…へっへっへっ…悪いね?」
ブチッ…
ほらぁっ…ほらぁっ〜〜!!絶対にスカニは怒るって思ったんだよ!!
それに、俺が絶対に言わないような言葉で彼女を煽るんだから…正直、やめて欲しいんだけど…
だいたい、スカニを怒らせてなにがしたいんだ?ダメだ…俺にはさっぱりわからない…
「ほぅ…?その言葉を口にする勇気がデメトリオにあったなんてね…黒こげになりなぁっ!!」
そう言いながら、スカニが容赦なく手に持っていた魔法銃の火炎弾を撃ってきたんだよ!!よ、容赦ないなぁスカニ…
果たして、ジェラシカはどうやってよけるんだ?ってか、俺の体をベースにしただけなのに、彼女はスカニの攻撃を避けることができるのか…?
ドゴォッ!!
よ、避けないだとぉっ!?ば、馬鹿なのか彼女は…!?
それとも、避けるほどの攻撃じゃなかったのか…!?
いやいや…普通はよけるだろ…避けないとおかしいんだって!!
一体どこの世界に攻撃が来ているのに避けない奴がいるんだ!?
「へっ…まったく、あたいを怒らせるからだ…」
「残念だけど、私には聞かないわよ?」
「…わよ?デメトリオ、まさかお前…そっち系の趣味があったのか?変わったな…色々な意味で…」
「しまった…お、おほんっ…ふんっ…そんな攻撃、俺に通用するわけが無いだろう!!俺は嫉妬神だぞ…?神なのだ…そんな神である俺の攻撃を受けるがいい!!」
だ、断じて俺にそっち系の趣味はないぞ!!
なんだか、スカニの中で俺のキャラがどんどんおかしくなっていっているんだが…どうしたらいいんだよ!?えぇっ!?
くそぉっ……あの時にこの部屋に来ずに別のルートを使って逃げていれば、変な誤解を植えつける事は無かったのに…
ジュ〜…
んっ…?なんだ?精神世界でも香ばしい何かが焼ける香りってするんだな…
この匂いは…肉か?いいねぇ…ちょうどお肉が食べたい頃だったんだ…
だが、次の瞬間、俺はそんな事をいっている場合ではないことを思い知ったんだ…なんと、俺の体が物凄い勢いで発火し始めたんだよ!!
熱いっ!!なんて熱さだ…!?どうして精神世界にいる俺が焼かれているんだ!?なぜっ!?
《ふふっ…私の受けた攻撃は全て…精神世界にいるあなたが肩代わりしてくれるからに決まっているでしょう?つまり、嫉妬神として再びこの世界に光臨した私に、攻撃は一切聞かないのよ…だから、いくらでも私は攻撃を仕掛けにいけて、攻撃を避ける必要が無いってわけ…これでいいかしら?》
ふ、ふざけるなよっ!!どうして俺がこんな目に会わないといけないんだよ!
ってか、それってつまり、彼女は戦うけど、攻撃は全て俺に肩代わり…痛いのは俺って事じゃないか!!
痛い目にあうのが嫌で彼女を開放して逃げようとしたのに…全然逃げられていないじゃないか!!むしろ、酷くなっているぞ!?
「さぁ…俺の速度についてこれるかな?」
「所詮、デメトリオの速度なんて…」
「その油断が…命取りだってね?くふふふふっ…ひゃははははははっ!!【ソードウェポン】!!オラァッ!!」
ザシュッ…
「えっ…?な、なんですか…これは…?」
あぁっ!!り、リーネが…切られた!?幸い、まだ意識はあるし、確実に致命傷ではないけど…本気で切りにいきやがった…
ちょ、ちょっとまて…待ってくれ!!俺は自分の逃げるために他人を傷つけるなんてしたくない!!
俺には…他人の命を奪えるほどの価値が無い!!そ、それに…ダメじゃないか!
他人の命を消すって事は殺すこと…そんなの認められない!!
ふざけるなよ!!さすがにそれはやったらダメだろう!
だが、俺の気持ちなんて通じるわけも無く…気がつくと、あっという間にリーネとスカニは所どころ切られて倒れこんでいたんだよ…
ふざけるな…ふざけるなふざけるな…ふざけるなぁぁぁぁぁぁっ!!
何、俺の体を使って…こんな酷いことを…そんな事をしていいわけがない!
嘘だ…こんな馬鹿な事が起こって良い訳がない!!
ま、待ってくれ…これって、俺が逃げるって選択肢を取ったから起こったことなのか?この出来事が…スカニやリーネが攻撃されて、血を流しながら倒れており、俺はそれをこの空間を見ることしか出来ない…この出来事が逃げるって選択肢を取ったから起こった…?
嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だぁっ!!逃げるって選択肢は生きている存在全てが選ぶことが出来る選択肢…そして、周りの人に一番危害を加えない選択じゃないのか!?
《うふふふふっ…どう?後悔したかしら?私がなぜ、体を乗っ取った相手の意識を精神空間に残すのか…それは、自分が行った行動によって、その後に起こる絶望を素体に与えるからなのよ…?ふふっ…まさに、一粒で二度おいしいって奴よねぇ…?もっと絶望しなさい…後悔しなさい…そして、私に負の感情を抱いて、自分に絶望して…私を最強の存在にしなさい!!》
「うっ…うぅっ…デ…メトリオ…お前…本当に…」
「うるさいな…ここで、死んでもらおうか?【処刑台&処刑鎌】」
くっ…デメド・ジェラシカは自由に武器を出せるのか…?
そ、そんな…絶望的じゃないかっ!!もうスカニは…何も出来ないんだぞ!?
そこまで酷い目にあわせる事はないじゃないか!!
偽善者ぶるつもりは毛頭無いけど…さすがにコレは酷すぎるだろ!!
「あんたのことを想っている…あいつがかわいそうだぜ…は、はっ…ごふぅっ」
やめろっ!!スカニはもう吐血までしたんだぞ!?命を奪う必要なんて無い!
それに…スカニはなんだかんだで良い奴なんだ…殺すなんて…あんまりだ!
や、やめろ…やめてくれっ!!お願いだ…そんな事、しないでくれよ!!
「……さぁ、終わりだっ!!」
ブォンッ…カァンッ!!
「ちっ…!?これは、コップか…?一体誰が…」
あいたぁっ!!あ、頭に急に激痛が…!?
お、おかげでスカニが死ぬのが少し先延ばしになったけど…一体誰だ?
誰がこのピンチの状況にかけつけてくれたんだ!?
「待つのじゃっ!!さすがにそれ以上は…ちとやりすぎじゃぞ?」
ぞ、ゾーネじゃないかっ!!久しぶりに見たけど…全然変わってないなぁ…
それもそうか…数日間離れていただけだし…
でも…ナイスタイミングだぜっ!!
「……ふぅ…わしが宿屋に始めてきた時からずいぶんと…変わってしまったのぅ…デメトリオ…」
待て待てっ!!だーかーらーっ!!あれは俺じゃなくてジェラシカなの!!
って言っても、ゾーネたちに聞こえないのは分かっている…
でも、叫びたくなるじゃないか…な?
「ゾーネか?まさか、こんな戦いの場にあんたが現れるなんてなぁっ!?これは面白い…クックック…あっはっはっはっ!!で…?どうするつもりだ?神となった俺を止めるつもりか?」
「いや…わしは生憎じゃが、戦いは嫌いでな…おぬしを止める気は無い…じゃが、デメトリオよ…いくらメリィたちが怖かったとはいえ…これはやりすぎではないかのぅ?もっと他の道は…無かったのか?」
………あったかも知れないな…でも、それでも俺は逃げるって選択肢を選んだだろうけど…
それも今じゃあ、後悔する要因でしかないんだけどな…
どうして…こんな目に会うんだろうか…?どうして、俺が…こんな目に…?
そもそも、俺は今の自分の状況になりたかったなんて少しも思っていなかった…
俺はただ純粋に逃げたかったんだよ!!臆病者といわれ続けても、今までの信念どおり、逃げ続けたかったんだよ!!
「…無いな…さぁ、お話の時間は終わりだ…そっちに戦う気は無くても、俺はあんたを吹き飛ばすぜ…?くくっ…ひゃっはっはっはっはっ!!」
「出来たら…いいけどね?」
こ、この声は…メリィっ!?
忘れたくても忘れることなんて出来るわけが無い…メリィじゃないかよ!!
まさか…メリィまでここに来たなんて…終わりだ…どうにかしてこの状況を打破しても…俺に逃げることが出来る選択肢は消えたじゃないか…
「メリィか…?」
「えぇ…ちょっと見ない間に、かっこいい鎧を着るようになったじゃないの…でも、残念だけどその鎧は脱いで貰うわよ?そして、サリィを幸せにして貰うから…さっさと戦うのをやめなさい…私は別にあなたが私達を裏切ったことも水に流してあげるから…ね?私、気がついたのよ…あの時の私も、サリィのことを考えすぎて自分の考えがいたっていなかったって事にね…だから、そのことについてはあなたのことも考えていなかった私が悪い…あやまるわ…」
えっ…?め、メリィが謝った…俺に?
明らかに下である俺に…謝っただとっ!?
こ、これは夢なのか…?いや、そんな事はありえない…痛みは本物だったからな…
メガロス帝国の王様達の話を聞いていくにつれ、だんだんメリィの考え方も変わったって事なんだろうか…?…王様、凄い奴だな…
あぁっ…こんな、こんなに簡単に終わるんだったら、初めから逃げなければよかった…
逃げなかったらスカニやリーネが怪我をすることも無かったのに…
いや、でもまぁ…俺が逃げたって事に関して、俺は後悔はしていないけどね?
………いや、後悔は…やっぱりしたかもしれないな…
「何を今さら言っているんだ…?もう遅いっ!!神になった私の力を…存分にその体に味あわせてやる!!俺は強い…強者だからなぁっ!!くははははっ!ひゃっはっはっはっはぁっ!!」
「……仕方がないわね…デメトリオ、最後に一回だけ私があなたを正してあげるわ…今回を最後に、サリィのお婿に来るあなたを痛めつけないって誓ってあげるから…本当の強者って者は…心の強さを持ったものなのよ!!私や今のあなたじゃなく…メガロス帝国にいた兵士達こそが強者だったのよ!!あなたもメガロス帝国に寝返っていたのなら…そのことには気づいておくべきだったのよ!!」
「うるせーよっ!!死ねよっ!!ひゃっははっはっはははははっ!!【ガトリングフォーム】と【ボムフォーム】混合射撃っ!!この城ごと…消し飛びやがれっ!!」
ドゴドゴドゴッ…ドドドドドドドドドッ…
キィンッ…ドゴォォォォォォンッ!!
「へっ…良い花火だろ?綺麗だろ?」
「悪いけど…見えなかったわね?この壁が邪魔で…」
おぉっ!?め、メリィ…あの明らかに凄そうな攻撃を防ぎきった…!?
す、凄いじゃないかメリィ…
それにあの壁は…ゾーネの発明品か?ゾーネもゾーネで凄いものを作るなぁ…
「ちっ…やったと思ったんだがな?ちょっと甘かったか?」
「悪いわねデメトリオ…死なない程度に…でも、本気で蹴るわ…【ハーピー流格闘術 首折り】!!」
カッ…ドゴッ…ゴキィッ!!
うわぁっ!?な、なんか…凄く嫌な音がしたんだが…
あれ、生身の俺じゃあ、本当に首の骨が折れているLVじゃないのか!?
………ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!首が…首が痛いよぉっ!
何だ…何だよこの痛みは…今までで一番痛いじゃないか!!
おぇっ…あまりの痛みに涙と共に胃液が逆流してきた…
いや…精神体だから、出しても意味が無いんだが…ね?
「全然効いていないんだが…?それで本気の蹴りか?【ソードorランス】」
いやいや…確かにジェラシカには効かなかっただろうよ…だって、受けたのは俺だもんっ!!他の誰でもない…俺なんだからさっ!!
大体、どうして俺が痛みまで味あわないといけないんだよ!?
えぇっ!?これは…どういうことなんだ?
こ、これが…日頃から逃げ続けてきた俺に対する報いって奴なのか…!?
もしそうだとしたら…神様は本当に酷いと思うよ…うぅっ…
「甘いわ…確かに前回のデメトリオに比べて早いけど…避けられないLVじゃない!!」
キィンッ…ドゴォッ!!
「ちぃっ…カウンターだと?こしゃくなまねをっ!!」
ぎゃあぁあぁぁぁぁっ!!
か、顔に物凄いダメージが…っ!?
どうして俺ばっかりこんな目に会うんだよ…!?
いや…逃げたからだって事は十分分かっているつもりではあるけど…
俺がそう思っていると、いきなり二人の戦闘している周りにモンスターラグーンのメンバーやメガロス帝国の兵士たちが見物しに来たんだよ!!
そうか…メガロス城はジェラシカの攻撃で跡形もなく吹き飛んだから…
って、そんなことを考えている場合じゃ無いじゃないか!!
「…デメさん?」
「セムちゃんっ!!危ないから…下がっていなさい!!」
「デメさんっ!!正気に戻ってください!!宿屋で店主をしていた時のデメさんに戻ってくださいよぉっ…お願いですから、あの時のデメさんに…私はデメさんの臆病だけど妙に優しいところが好きだったんです…だからっ!」
「…そうかい?…で、それがどうした?」
グサッ!!
「え…?で…め…さん?」
「デメトリオっ…あなたっ!!自分が何をしたのか分かっているの!?」
せ、セムちゃんが…切られた…!?
俺は精神空間の中でセムちゃんが切られる姿を見て、ようやく自分が行ってきた逃げるって行動が間違っていたことを知ったんだ…
そして、取り返しがつかない事だって事も…
確かに、逃げるって行動は便利だけど、自分が逃げていれば周りの人は傷つかないって事が間違いだったんだ…
俺は…逃げたらダメだったんだってことに…今さっき気がついたんだ…
ナッカーサーが俺を気絶させる前に言った台詞が…正しかったんだよな…
……これが夢だったら…夢だったらどれほどいいだろうか…?
誰でもいいから嘘だって言って欲しい…嘘だって言って欲しいんだっ!!
こんな出来事は本当は起こっていないって言ってくれれば…
怖い…自分が取った行動によってスカニやリーネ…それにセムちゃんまで傷つけてしまった…
これ以上誰かを傷つけるんじゃないかって思うと…怖くて仕方がないんだよ!
怖い…怖い怖いっ…怖いんだよぉっ!!俺は…俺はぁっ…
あぁっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
「デメトリオ…私はあなたを許せないわ…もう、サリィの夫としてふさわしくないとかそんな話じゃない…人間として、私は今のあなたが許せない!!でも、今のあなたになってしまった原因は私にもある…だから、私が決着をつけてあげるわ…」
「メ…リィさん…デメ…さんを…」
「話さないのっ!!悪いけど、デメトリオはもう…以前のデメトリオじゃないわ…私達が知っているデメトリオって男はこの世界にはいなくなったのよ…」
「メリィさんっ!!待ってくれっ!!あいつは…デメトリオじゃない!!」
「…だ、誰なのあなた…?」
「僕はケイ…メガロス帝国の発明者だけど…あれはデメトリオじゃない…あれはメガロシウムから発生した、意識を乗っ取る精神体なんだ!!デメトリオが極秘ファイルを見ていた形跡があったから、念入りに調べてみると…僕たちがエネルギー元として利用していた鉱石…メガロシウムに含まれていたエネルギーはその精神体から発せられているって事に気がついたんだよ!!そして…デメトリオはその精神体に体を乗っ取られているだけなんだっ!!」
「……おや?さすがは私を長期間ガラスケースに閉じ込めた男…賢いわね…そう、私はデメトリオの弱い部分を強くしてあげた存在…そして神となった者よ…こんなに早く招待が見破られるなんて思っていなかったから、誤算だわ…でも、見破ったところでどうするの?もうデメトリオは精神だけの存在になっている…この世界にはいないのよ?ふふっ…あははははっ!!」
「メリィさん…僕が…僕がデメトリオをこの世界に引き戻せるように、専用の武器を作ります…だから、それまで耐えてください!!それとジュンコさんっ!!怪我人を大至急、回復してあげてください!!」
「……いいわ、あなたを信じる…だから、あの馬鹿を…デメトリオを元の世界に呼べるようにして頂戴…」
「わしも…手伝うぞ?お主の科学力とわしの科学力…それを合わせるのじゃ!わしの名はゾーネ…よろしくたのむのじゃ…!」
「お願いします…じゃあ、早速…作り始めます!!」
……あれ?ケイ…か?
いまさら、何をするつもりなんだろうか…?
怖くて…目の前がだんだん暗くて…もうダメだ…
俺は…俺はどうしようもないことを…
こうして、俺は後悔しながら、何も出来ない事実に打ちひしがれていたんだ…
セムちゃんが切られたときのあの悲しそうな顔…あの顔が俺の頭から…どうしても離れてくれなかったんだ…
ははっ…かなうなら、次は逃げないように頑張って現実に向き合いたい…
俺はそう思って、戦いの行方を見るのだった…
ジェラシカって名前の精神体の話を聞いて、逃げるって選択肢をかなえてやるから、このガラスケースから開放してくれって言った時に、少しは俺も疑ってかかるべきだったんだよなぁ…
って、後悔している場合じゃない!!この状況だと、俺の逃げるって道を選ぶことは愚か…俺の選択肢が無いじゃないか!!
そ、それに…俺が彼女達に攻撃しているわけじゃないって事を彼女達は…わからないんだろうしなぁ…
「ふっ…どうしたんだ?俺が神になったことを悟って黙り込んだのか?だが、俺は遠慮も容赦もしないぞ?くはははははっ!!さぁ、俺が怖くなければかかってくるがいい!!」
くそぉっ!!俺の体を乗っ取っている精神体は女性の声をしていたのに…俺の声を借りて話しかけているし、話し方も男みたいに話すと…本当に俺が痛い奴になって話しているみたいじゃないか!!
彼女はスカニやリーネが俺を見ている…あの痛い目線に気がついていないのかな…?
それに、スカニにあのような挑発的な態度は取ったらダメなんだって!!
そこの部分は悟ってくれよ!!お願いだからさ!!なぁっ!?
「…デメトリオの癖に、あたいを挑発しているのかい?へっ…後悔するよ?あんたにはケイの身を危険にさらされたって恩があるからね…この恩は…必ず返してやるつもりだったんだ…あんたが言ってきたことなんだから…後悔しないでくれよ?」
「いいから来るがいい…なんなら二人まとめてでもいいんだぞ?それとも、その高圧的な話し方は飾りで、その控えめな胸と同じように控えめな正確なのかな?おっと…胸の話は女性には禁句だったな…へっへっへっ…悪いね?」
ブチッ…
ほらぁっ…ほらぁっ〜〜!!絶対にスカニは怒るって思ったんだよ!!
それに、俺が絶対に言わないような言葉で彼女を煽るんだから…正直、やめて欲しいんだけど…
だいたい、スカニを怒らせてなにがしたいんだ?ダメだ…俺にはさっぱりわからない…
「ほぅ…?その言葉を口にする勇気がデメトリオにあったなんてね…黒こげになりなぁっ!!」
そう言いながら、スカニが容赦なく手に持っていた魔法銃の火炎弾を撃ってきたんだよ!!よ、容赦ないなぁスカニ…
果たして、ジェラシカはどうやってよけるんだ?ってか、俺の体をベースにしただけなのに、彼女はスカニの攻撃を避けることができるのか…?
ドゴォッ!!
よ、避けないだとぉっ!?ば、馬鹿なのか彼女は…!?
それとも、避けるほどの攻撃じゃなかったのか…!?
いやいや…普通はよけるだろ…避けないとおかしいんだって!!
一体どこの世界に攻撃が来ているのに避けない奴がいるんだ!?
「へっ…まったく、あたいを怒らせるからだ…」
「残念だけど、私には聞かないわよ?」
「…わよ?デメトリオ、まさかお前…そっち系の趣味があったのか?変わったな…色々な意味で…」
「しまった…お、おほんっ…ふんっ…そんな攻撃、俺に通用するわけが無いだろう!!俺は嫉妬神だぞ…?神なのだ…そんな神である俺の攻撃を受けるがいい!!」
だ、断じて俺にそっち系の趣味はないぞ!!
なんだか、スカニの中で俺のキャラがどんどんおかしくなっていっているんだが…どうしたらいいんだよ!?えぇっ!?
くそぉっ……あの時にこの部屋に来ずに別のルートを使って逃げていれば、変な誤解を植えつける事は無かったのに…
ジュ〜…
んっ…?なんだ?精神世界でも香ばしい何かが焼ける香りってするんだな…
この匂いは…肉か?いいねぇ…ちょうどお肉が食べたい頃だったんだ…
だが、次の瞬間、俺はそんな事をいっている場合ではないことを思い知ったんだ…なんと、俺の体が物凄い勢いで発火し始めたんだよ!!
熱いっ!!なんて熱さだ…!?どうして精神世界にいる俺が焼かれているんだ!?なぜっ!?
《ふふっ…私の受けた攻撃は全て…精神世界にいるあなたが肩代わりしてくれるからに決まっているでしょう?つまり、嫉妬神として再びこの世界に光臨した私に、攻撃は一切聞かないのよ…だから、いくらでも私は攻撃を仕掛けにいけて、攻撃を避ける必要が無いってわけ…これでいいかしら?》
ふ、ふざけるなよっ!!どうして俺がこんな目に会わないといけないんだよ!
ってか、それってつまり、彼女は戦うけど、攻撃は全て俺に肩代わり…痛いのは俺って事じゃないか!!
痛い目にあうのが嫌で彼女を開放して逃げようとしたのに…全然逃げられていないじゃないか!!むしろ、酷くなっているぞ!?
「さぁ…俺の速度についてこれるかな?」
「所詮、デメトリオの速度なんて…」
「その油断が…命取りだってね?くふふふふっ…ひゃははははははっ!!【ソードウェポン】!!オラァッ!!」
ザシュッ…
「えっ…?な、なんですか…これは…?」
あぁっ!!り、リーネが…切られた!?幸い、まだ意識はあるし、確実に致命傷ではないけど…本気で切りにいきやがった…
ちょ、ちょっとまて…待ってくれ!!俺は自分の逃げるために他人を傷つけるなんてしたくない!!
俺には…他人の命を奪えるほどの価値が無い!!そ、それに…ダメじゃないか!
他人の命を消すって事は殺すこと…そんなの認められない!!
ふざけるなよ!!さすがにそれはやったらダメだろう!
だが、俺の気持ちなんて通じるわけも無く…気がつくと、あっという間にリーネとスカニは所どころ切られて倒れこんでいたんだよ…
ふざけるな…ふざけるなふざけるな…ふざけるなぁぁぁぁぁぁっ!!
何、俺の体を使って…こんな酷いことを…そんな事をしていいわけがない!
嘘だ…こんな馬鹿な事が起こって良い訳がない!!
ま、待ってくれ…これって、俺が逃げるって選択肢を取ったから起こったことなのか?この出来事が…スカニやリーネが攻撃されて、血を流しながら倒れており、俺はそれをこの空間を見ることしか出来ない…この出来事が逃げるって選択肢を取ったから起こった…?
嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だぁっ!!逃げるって選択肢は生きている存在全てが選ぶことが出来る選択肢…そして、周りの人に一番危害を加えない選択じゃないのか!?
《うふふふふっ…どう?後悔したかしら?私がなぜ、体を乗っ取った相手の意識を精神空間に残すのか…それは、自分が行った行動によって、その後に起こる絶望を素体に与えるからなのよ…?ふふっ…まさに、一粒で二度おいしいって奴よねぇ…?もっと絶望しなさい…後悔しなさい…そして、私に負の感情を抱いて、自分に絶望して…私を最強の存在にしなさい!!》
「うっ…うぅっ…デ…メトリオ…お前…本当に…」
「うるさいな…ここで、死んでもらおうか?【処刑台&処刑鎌】」
くっ…デメド・ジェラシカは自由に武器を出せるのか…?
そ、そんな…絶望的じゃないかっ!!もうスカニは…何も出来ないんだぞ!?
そこまで酷い目にあわせる事はないじゃないか!!
偽善者ぶるつもりは毛頭無いけど…さすがにコレは酷すぎるだろ!!
「あんたのことを想っている…あいつがかわいそうだぜ…は、はっ…ごふぅっ」
やめろっ!!スカニはもう吐血までしたんだぞ!?命を奪う必要なんて無い!
それに…スカニはなんだかんだで良い奴なんだ…殺すなんて…あんまりだ!
や、やめろ…やめてくれっ!!お願いだ…そんな事、しないでくれよ!!
「……さぁ、終わりだっ!!」
ブォンッ…カァンッ!!
「ちっ…!?これは、コップか…?一体誰が…」
あいたぁっ!!あ、頭に急に激痛が…!?
お、おかげでスカニが死ぬのが少し先延ばしになったけど…一体誰だ?
誰がこのピンチの状況にかけつけてくれたんだ!?
「待つのじゃっ!!さすがにそれ以上は…ちとやりすぎじゃぞ?」
ぞ、ゾーネじゃないかっ!!久しぶりに見たけど…全然変わってないなぁ…
それもそうか…数日間離れていただけだし…
でも…ナイスタイミングだぜっ!!
「……ふぅ…わしが宿屋に始めてきた時からずいぶんと…変わってしまったのぅ…デメトリオ…」
待て待てっ!!だーかーらーっ!!あれは俺じゃなくてジェラシカなの!!
って言っても、ゾーネたちに聞こえないのは分かっている…
でも、叫びたくなるじゃないか…な?
「ゾーネか?まさか、こんな戦いの場にあんたが現れるなんてなぁっ!?これは面白い…クックック…あっはっはっはっ!!で…?どうするつもりだ?神となった俺を止めるつもりか?」
「いや…わしは生憎じゃが、戦いは嫌いでな…おぬしを止める気は無い…じゃが、デメトリオよ…いくらメリィたちが怖かったとはいえ…これはやりすぎではないかのぅ?もっと他の道は…無かったのか?」
………あったかも知れないな…でも、それでも俺は逃げるって選択肢を選んだだろうけど…
それも今じゃあ、後悔する要因でしかないんだけどな…
どうして…こんな目に会うんだろうか…?どうして、俺が…こんな目に…?
そもそも、俺は今の自分の状況になりたかったなんて少しも思っていなかった…
俺はただ純粋に逃げたかったんだよ!!臆病者といわれ続けても、今までの信念どおり、逃げ続けたかったんだよ!!
「…無いな…さぁ、お話の時間は終わりだ…そっちに戦う気は無くても、俺はあんたを吹き飛ばすぜ…?くくっ…ひゃっはっはっはっはっ!!」
「出来たら…いいけどね?」
こ、この声は…メリィっ!?
忘れたくても忘れることなんて出来るわけが無い…メリィじゃないかよ!!
まさか…メリィまでここに来たなんて…終わりだ…どうにかしてこの状況を打破しても…俺に逃げることが出来る選択肢は消えたじゃないか…
「メリィか…?」
「えぇ…ちょっと見ない間に、かっこいい鎧を着るようになったじゃないの…でも、残念だけどその鎧は脱いで貰うわよ?そして、サリィを幸せにして貰うから…さっさと戦うのをやめなさい…私は別にあなたが私達を裏切ったことも水に流してあげるから…ね?私、気がついたのよ…あの時の私も、サリィのことを考えすぎて自分の考えがいたっていなかったって事にね…だから、そのことについてはあなたのことも考えていなかった私が悪い…あやまるわ…」
えっ…?め、メリィが謝った…俺に?
明らかに下である俺に…謝っただとっ!?
こ、これは夢なのか…?いや、そんな事はありえない…痛みは本物だったからな…
メガロス帝国の王様達の話を聞いていくにつれ、だんだんメリィの考え方も変わったって事なんだろうか…?…王様、凄い奴だな…
あぁっ…こんな、こんなに簡単に終わるんだったら、初めから逃げなければよかった…
逃げなかったらスカニやリーネが怪我をすることも無かったのに…
いや、でもまぁ…俺が逃げたって事に関して、俺は後悔はしていないけどね?
………いや、後悔は…やっぱりしたかもしれないな…
「何を今さら言っているんだ…?もう遅いっ!!神になった私の力を…存分にその体に味あわせてやる!!俺は強い…強者だからなぁっ!!くははははっ!ひゃっはっはっはっはぁっ!!」
「……仕方がないわね…デメトリオ、最後に一回だけ私があなたを正してあげるわ…今回を最後に、サリィのお婿に来るあなたを痛めつけないって誓ってあげるから…本当の強者って者は…心の強さを持ったものなのよ!!私や今のあなたじゃなく…メガロス帝国にいた兵士達こそが強者だったのよ!!あなたもメガロス帝国に寝返っていたのなら…そのことには気づいておくべきだったのよ!!」
「うるせーよっ!!死ねよっ!!ひゃっははっはっはははははっ!!【ガトリングフォーム】と【ボムフォーム】混合射撃っ!!この城ごと…消し飛びやがれっ!!」
ドゴドゴドゴッ…ドドドドドドドドドッ…
キィンッ…ドゴォォォォォォンッ!!
「へっ…良い花火だろ?綺麗だろ?」
「悪いけど…見えなかったわね?この壁が邪魔で…」
おぉっ!?め、メリィ…あの明らかに凄そうな攻撃を防ぎきった…!?
す、凄いじゃないかメリィ…
それにあの壁は…ゾーネの発明品か?ゾーネもゾーネで凄いものを作るなぁ…
「ちっ…やったと思ったんだがな?ちょっと甘かったか?」
「悪いわねデメトリオ…死なない程度に…でも、本気で蹴るわ…【ハーピー流格闘術 首折り】!!」
カッ…ドゴッ…ゴキィッ!!
うわぁっ!?な、なんか…凄く嫌な音がしたんだが…
あれ、生身の俺じゃあ、本当に首の骨が折れているLVじゃないのか!?
………ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!首が…首が痛いよぉっ!
何だ…何だよこの痛みは…今までで一番痛いじゃないか!!
おぇっ…あまりの痛みに涙と共に胃液が逆流してきた…
いや…精神体だから、出しても意味が無いんだが…ね?
「全然効いていないんだが…?それで本気の蹴りか?【ソードorランス】」
いやいや…確かにジェラシカには効かなかっただろうよ…だって、受けたのは俺だもんっ!!他の誰でもない…俺なんだからさっ!!
大体、どうして俺が痛みまで味あわないといけないんだよ!?
えぇっ!?これは…どういうことなんだ?
こ、これが…日頃から逃げ続けてきた俺に対する報いって奴なのか…!?
もしそうだとしたら…神様は本当に酷いと思うよ…うぅっ…
「甘いわ…確かに前回のデメトリオに比べて早いけど…避けられないLVじゃない!!」
キィンッ…ドゴォッ!!
「ちぃっ…カウンターだと?こしゃくなまねをっ!!」
ぎゃあぁあぁぁぁぁっ!!
か、顔に物凄いダメージが…っ!?
どうして俺ばっかりこんな目に会うんだよ…!?
いや…逃げたからだって事は十分分かっているつもりではあるけど…
俺がそう思っていると、いきなり二人の戦闘している周りにモンスターラグーンのメンバーやメガロス帝国の兵士たちが見物しに来たんだよ!!
そうか…メガロス城はジェラシカの攻撃で跡形もなく吹き飛んだから…
って、そんなことを考えている場合じゃ無いじゃないか!!
「…デメさん?」
「セムちゃんっ!!危ないから…下がっていなさい!!」
「デメさんっ!!正気に戻ってください!!宿屋で店主をしていた時のデメさんに戻ってくださいよぉっ…お願いですから、あの時のデメさんに…私はデメさんの臆病だけど妙に優しいところが好きだったんです…だからっ!」
「…そうかい?…で、それがどうした?」
グサッ!!
「え…?で…め…さん?」
「デメトリオっ…あなたっ!!自分が何をしたのか分かっているの!?」
せ、セムちゃんが…切られた…!?
俺は精神空間の中でセムちゃんが切られる姿を見て、ようやく自分が行ってきた逃げるって行動が間違っていたことを知ったんだ…
そして、取り返しがつかない事だって事も…
確かに、逃げるって行動は便利だけど、自分が逃げていれば周りの人は傷つかないって事が間違いだったんだ…
俺は…逃げたらダメだったんだってことに…今さっき気がついたんだ…
ナッカーサーが俺を気絶させる前に言った台詞が…正しかったんだよな…
……これが夢だったら…夢だったらどれほどいいだろうか…?
誰でもいいから嘘だって言って欲しい…嘘だって言って欲しいんだっ!!
こんな出来事は本当は起こっていないって言ってくれれば…
怖い…自分が取った行動によってスカニやリーネ…それにセムちゃんまで傷つけてしまった…
これ以上誰かを傷つけるんじゃないかって思うと…怖くて仕方がないんだよ!
怖い…怖い怖いっ…怖いんだよぉっ!!俺は…俺はぁっ…
あぁっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
「デメトリオ…私はあなたを許せないわ…もう、サリィの夫としてふさわしくないとかそんな話じゃない…人間として、私は今のあなたが許せない!!でも、今のあなたになってしまった原因は私にもある…だから、私が決着をつけてあげるわ…」
「メ…リィさん…デメ…さんを…」
「話さないのっ!!悪いけど、デメトリオはもう…以前のデメトリオじゃないわ…私達が知っているデメトリオって男はこの世界にはいなくなったのよ…」
「メリィさんっ!!待ってくれっ!!あいつは…デメトリオじゃない!!」
「…だ、誰なのあなた…?」
「僕はケイ…メガロス帝国の発明者だけど…あれはデメトリオじゃない…あれはメガロシウムから発生した、意識を乗っ取る精神体なんだ!!デメトリオが極秘ファイルを見ていた形跡があったから、念入りに調べてみると…僕たちがエネルギー元として利用していた鉱石…メガロシウムに含まれていたエネルギーはその精神体から発せられているって事に気がついたんだよ!!そして…デメトリオはその精神体に体を乗っ取られているだけなんだっ!!」
「……おや?さすがは私を長期間ガラスケースに閉じ込めた男…賢いわね…そう、私はデメトリオの弱い部分を強くしてあげた存在…そして神となった者よ…こんなに早く招待が見破られるなんて思っていなかったから、誤算だわ…でも、見破ったところでどうするの?もうデメトリオは精神だけの存在になっている…この世界にはいないのよ?ふふっ…あははははっ!!」
「メリィさん…僕が…僕がデメトリオをこの世界に引き戻せるように、専用の武器を作ります…だから、それまで耐えてください!!それとジュンコさんっ!!怪我人を大至急、回復してあげてください!!」
「……いいわ、あなたを信じる…だから、あの馬鹿を…デメトリオを元の世界に呼べるようにして頂戴…」
「わしも…手伝うぞ?お主の科学力とわしの科学力…それを合わせるのじゃ!わしの名はゾーネ…よろしくたのむのじゃ…!」
「お願いします…じゃあ、早速…作り始めます!!」
……あれ?ケイ…か?
いまさら、何をするつもりなんだろうか…?
怖くて…目の前がだんだん暗くて…もうダメだ…
俺は…俺はどうしようもないことを…
こうして、俺は後悔しながら、何も出来ない事実に打ちひしがれていたんだ…
セムちゃんが切られたときのあの悲しそうな顔…あの顔が俺の頭から…どうしても離れてくれなかったんだ…
ははっ…かなうなら、次は逃げないように頑張って現実に向き合いたい…
俺はそう思って、戦いの行方を見るのだった…
12/11/16 19:20更新 / デメトリオン
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