連載小説
[TOP][目次]
8.戦闘訓練



「はぁっ…!はぁっ…!」
「ふぅ…よく、頑張ったな…なかなか良かったぞ…」

ロアの荒い息づかいが響く。周りにはオリビアとロアの汗の匂いが漂っていた。

「ふふ…これからも私がしっかりと鍛えてやるから、覚悟しろよ?」
「は、はい…」

疲れ果てたのか、ロアがその場にへたり込んだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その日の朝。

「ん…むぅ……」

眩しくて目が覚めた。ちょうど頭の位置に窓から朝日が差し込んでいる。

「…ふあぁ…もう朝か…」

寝袋から這い出て体を伸ばすと、背骨からボキボキと良い音が鳴る。
ベッドの方を向くと、ロアが気持ち良さそうに寝息を立てて寝ている。
昨日の様にうなされている様子は無かった。ベッドに近寄り、ロアの体を揺さぶって起こす。

「ロア、起きろ。朝だぞ」
「う…んー…」
「(……まただ)」

ロアの髪は、昨日と同じ様にまた黒っぽくなっており、既に真っ黒と言ってよかった。
不思議な事に、眠る度に少しずつ髪が黒くなっていくようだった。

「(アネットはこいつの言葉がジパングの物と似ていると言っていたが…案外、ジパングの者なのかもしれんな…)」

髪の色は黒いし、なにより顔つきが知り合いの東洋人に少し似ていたのだ。
そんな事を考えているうちに、ロアがベッドから起き上がった。

「う…おはよう、ございます」
「ああ、おはよう」

眠そうな声でロアが挨拶をする。
昨日のうちに挨拶は全て覚えてしまった。やはり元々賢いのだろう。

「さ、朝食の時間だ。着替えて食堂に行くぞ」
「がってんしょうち」
「……」

またアネットが変な事を吹き込んだのだろうか。
間違ってはいない。間違ってはいないのだが、なんか違う。絶対に違う。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ごちそうさまでした」
「うん、良い調子だな」

あの後いろいろと間違った所を修正したが、それをすぐに覚えてくれるので助かる。

「(さて、今日は何を教えるか…)」
「オリビアさん」
「ん?なんだ?」
「きょうは、なにをおしえてくれるのでしょうか?」
「あー…そうだな…」

ちょうど考えていた所なので少し迷ったが、やはり他に思いつかない。

「きょうは剣術を少し教えようと思う。」
「けんじゅつ…たたかいのほうほうですか?」
「ああ。そうだ。よく覚えていたな」

昨日、アネットが軽く言ったのを覚えていたのだろう。
解っているならば話は早い。

「そうだな、少し休憩したら始める事にしよう。いろいろと準備もあるから、それが済み次第呼びに行く。それまでは部屋でゆっくりしていてくれ」
「わかりました」

必要な物はアネットに用意させれば良いか。
と、変な事を教えた仕返しに少し困らせてやろうと思っていたが―――

「入るぞ」
「あら、遅かったわね!」

司令室に行くと、アネットが既に胸当てなどを用意していた。

「今日は剣術を教えるんでしょ?」
「あ?」
「いや、どうせあなたの事だから、教える事が思いつかないから剣術でも教えようかなーとか考えてると思ってね」
「……」

図星。こいつは予知能力でも持っているのだろうか?とたまに疑いたくなる。
合っているかどうか聞き返されないのが何とも言えず悔しい。

「それで、どこで教えるの?」
「そうだな…他の戦士がいる場所では(色々と)危ないからな…」

種族によっては有無を言わさず襲いかかるかもしれない。色々な意味で。

「じゃ、中庭とかで良いんじゃない?」
「ああ、確かに丁度良いかも知れないな」
「じゃ、行きましょ!」
「先に行っててくれ。私はロアを呼んでくる」
「はいはい〜♪」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「よし、準備はすんだな」
「うん!似合ってるわよ!」

木製の防具と剣を装備すると、それなりに様になっている。

「それじゃ、あなたも早くを防具付けなきゃ」
「ん?別にいらないだろ」
「全く。馬鹿ね、あなたは」
「馬っ…!?」

いきなり馬鹿呼ばわりされて、思わずオリビアは声を詰まらせた。

「ロアに剣術の心得があると思ってるの?いきなり生身のあなたに木製とはいえ、攻撃出来ると思うの?」
「いや…確かに、そうかもしれないが…」
「じゃ、早く鎧を付けてきなさい」
「くぅ…」

何となく悔しいが、確かにその通りだった。

「わかった…鎧、着てくる…」
「行ってらっしゃ〜い♪」

妙な哀愁を漂わせながら、オリビアは鎧を取りにいった。

「まったく…もう少し自分が女ってことを自覚してくれないかしら…」

アネットが溜息をついていると、ロアが横から話しかけてきた。

「オリビアさんはどこへいったんですか?」
「ん?あぁ、ちょっと準備に行っただけよ。すぐに戻るわ」

しばらく待っていると、遠くからガシャン、ガシャン、という音が聞こえてきた。

「あ、来た…みたい…ね…」
「待たせたな…」
「………」

戻ってきたオリビアを見て、二人は思わず言葉を失った。
彼女は戦場に着ていくような、強固な鎧と兜を身に着けていたのだった。

「あのね…オリビア…?」
「何だ?」
「いくら何でも、もうちょっと軽装でもよかったんじゃ…?」
「…お前が鎧を着て来いと言ったんだろうが」
「もう…ロア、あなたからも何か言ってあげて!」

無茶ぶりとも言える振り方だったが、ロアはにこやかにで言った。

「カッコいいです」
「そうだろう?この鎧は私のお気に入りなんだ」

オリビアが嬉しそうに言う横で、アネットが珍しく頭を抱えていた。

「ん?どうしたアネット」
「いえ…無垢って怖いわね…」
「?」

頭を抱えるアネットをよそに、オリビアはロアに向かっていった。

「よし、準備はOKだな。好きなように来い」
「すきなように?」
「私を倒すつもりで、その木剣で掛かって来い」
「でも…」
「安心しろ。鎧があるから大丈夫だ。思う存分来い!」

心無しかウキウキしているように見える。
ロアがオリビアに向かって一礼。

「よろしくおねがいします!」
「よぉし、来い!」

「(女の子なのに…楽しそうにする事はもっと他にあるでしょうに…)」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ロアがオリビアに向かって勢い良く飛びかかる。剣は真上に大きく振りかぶられていた。
軌道を読むのは簡単だった。横に動き、剣を躱すと、ロアはすぐに飛び退いて間合いを取っていた。

「ほぉ…」
「へえ、思ってたよりも素早いわね」
「アネット、武器を頼む」

オリビアがアネットに声をかけると、アネットが木製の大剣を放り投げてきた。

「…よりによって大剣なのか…」
「あなたが苦手な武器だったっけ?練習にちょうどいいじゃない」
「しかし…」
「ロアだけに訓練させたら、不公平でしょ?」
「いや、不公平とは少し違うんじゃ…」
「ロア!ガンガン行きなさい!いえ、『ガンガン いこうぜ』!」
「黙れ!…まぁいい。ロア!来い!」
「はい!」

返事をすると、もう一度正面に剣を構えた。
オリビアも大剣を構える。

「だあぁーーーーーっ!」

もう一度勢いよく飛びかかるが、大剣を使い上手く躱す。
攻撃の後、再び後ろに飛び退いた。癖なのかもしれない。

「ふんッ!」
「わっ…」

戻った直後に大剣と共に突っ込むと、ロアは予想していなかったようで、思わず目を瞑っていた。もちろん目の前で止めたが。

「…なぁ、ロア」
「あ…はい」
「確かにいきなり来たら驚くだろうが、目を瞑ってしまったら避けられる物も避けられないぞ」
「はい…」
「まぁ、こればっかりは経験が必要だからな。少しずつ慣れていくしか無いか…」
「それなら、例の薬が良いんじゃない?」
「あぁ…なるほど、確かに良いかもしれんな」

しかし、それを聞いてロアは嫌そうな顔をした。

「あの、ニガいくすりですか…?」
「ん、そうだ」
「その方が早く強くなれるわよ!」
「つよく…」

それを聞いて、強くなれるなら、と嫌々ではあったが薬を飲む事を承諾した。

「強さを求める、素晴らしい事だ。なぁ、アネット?」
「ん?まぁ、そうかしら?」
「さ、薬を飲んだら続きを始めるぞ」
「はい!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「はぁっ…!はぁっ…!」
「ふぅ…よく、頑張ったな…なかなか良かったぞ…」

ロアの荒い息づかいが響く。当たりにはオリビアとロアの汗の匂いが漂っていた。

「ふふ…これからも私がしっかりと鍛えてやるから、覚悟しておけよ?」
「は、はい…」

疲れ果てたのか、ロアがその場にへたり込んだ。

「……」
「ん?どうした?アネット。そんなニヤニヤして…」
「いえ?別に?ただ、一部の人はがっかりしてるのかな?と思って」
「?」

アネットが妙なことを言っている間に、オリビアがある事に気がついた。

「汗をかいたし、そう言えばロア、お前はまだ風呂に入ってないな。丁度良い。これから…」
「ちょっと、オリビア!」
「あ?」
「ここに来てから、お風呂入れてあげてないの!?」
「あ、あぁ…別に2、3日入らなくても大丈夫だろ」
「信じられない!お馬鹿!」
「お…!?」

再び馬鹿扱いされ、思わず固まる。

「いくら何でも、あんまりだわ!ロア、やりたい事があったらちゃんと言わなきゃだめなのよ?」

そう言うとしばらく考えた後、ロアは言った。

「じゃあ、あたまをあらいたいです」
「……そうか……じゃあ、ロア。風呂、いこうか…」
「はい」
「ついでだから私も行くわ♪」

武具を片付けると、三人は風呂へと向かった。
11/04/16 18:59更新 / ホフク
戻る 次へ

■作者メッセージ
あれ?前回の更新が二月?あれ?おかしいな…?
あれかな、ディシディアの連続プレイ日数が40日超えたのが原因かな?
痛っ、痛い痛い!ちょ…石を投げないで…!
痛い!痛い!ごめんなさい!

実は、今回投稿する分だった物の半分位を投稿しました。
なので、次はもうちょっと早いと思います。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33