6.教育開始
アネットから服を受け取り、オリビアは部屋へと戻ってた。
扉を開け中に入り、青年を起こそうとベッドに近づくと、青年がうなされていた。
「う…うぅぅ…!」
「…!」
急いで駆け寄り、青年を起こそうと強く揺さぶった。
「おい、起きろ」
「っ…!はぁ…はぁ…」
何度か強く揺さぶると、青年は目を覚まし、ベッドから体を起こした。
青年は全身に汗をびっしょりとかいていた。昨日救護に巻いてもらった包帯もすっかり湿っていた。
このままでは風邪を引いてしまうのでとりあえず青年を座らせ、上半身に巻いてあった包帯を外してやる事にした。
昨日の時点で傷はほとんど塞がっていたのだからもう外しても大丈夫だろう。
「#…#$%Y*…」
何か言っているが、言葉は相変わらず解らない。
しかし、やはり敵意はなさそうだ。礼でも言っているのだろう。
「?」
「これ、着ろ」
包帯を外し終えた所でアネットに貰った服を渡し、一度部屋を出た。
部屋の外でしばらく待っていると、着替えが終わったらしく、部屋から青年が出てきた。
「うむ、サイズはちょうど良さそうだな…」
強いて言うならローブが少し大きいが、気にするほどではない。
「着いて来い。朝食だ」
オリビアは手招きして、青年を食堂に連れて行った。
「パンと、それからサラダとスープを2人分くれ」
「はい〜」
食堂のホルスタウルスに注文を言うと、間延びした声が返ってきた。
しばらく待っていると、2人分の食料が運ばれてきた。
普段オリビアが朝食に食べている組み合わせだ。
青年にフォークとスプーンを渡してやると、両手を合わせてから器用に朝食を食べだした。
「(食器は普通に使えるようだな…)」
相変わらずこの食堂の飯はうまい。
ここの砦に来て1年。毎日ここの飯を食べているが、飽きる事は無い。
青年もうまそうに食事をとっている。
「(食べ終わったら、アネットも呼んで言葉を教えてやるか…)」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「来たわよ〜♪」
「(早いな…)」
朝食を終え、部屋に戻るとすぐにアネットがやってきた。
「おい、仕事はどうした?」
「昨日あなた達が任務に言ってる間に面倒なのはほとんど片付いたわ」
「なら、やっぱりお前が面倒を見たr」
「さ!張り切って教えましょうか!」
「……」
オリビアの抗議など全く効かず、アネットは昨日の薬を取り出してコップに注いだ後に水で薄めると、青年に手渡した。
「はい♪これ飲んで!」
「…%*$?」
小瓶を青年に渡すが、当然何の事だか解っていないようだ。
それを見てアネットは、ジェスチャーで伝えようとした。
「こう、ぐぃっと、一気に飲んで!」
「…うまいな、ジェスチャー」
それを見て、何をすれば良いのか解ったようで、青年はコップの中身を一気に飲み干した。
「う”っ…!?」
「!?…おい、どうした!?」
「あ、やっぱり不味い?」
心配するオリビアをよそに、青年に水を差し出しながら呑気な声でアネットが言う。
「は?不味い?」
「これね〜…効果は凄いけど、壊滅的に不味いのよね〜。飲んでみる?」
「……」
オリビアも同じようにコップに少し薬をたらし、水で薄めてから飲むと、
「う”っ…!」
不味い。
苦いくせに、変な酸味がある。おまけに後から口全体に気持ちの悪い甘さが広がる。
もう一度言うが、不味い。
「み、水…!私にも、水をくれ…!」
「さて、始めましょう!」
苦しむアネットを無視して、アネットは鞄からペンと紙を取り出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
数時間後……
「それじゃ、私の、名前は?」
「アネッ、ト」
「ハイ♪よく出来ました!」
「じゃあ、私の名前を言ってみろ」
「オリ、ビア」
「よし、正解だ」
薬の効果なのだろうか、あっという間に言葉覚えていく。
「すごいな、こんなにも覚えが早いとは…」
「多分、元々賢いのね。これは教えがいがあるわ!」
そこで、ふとオリビアは呟いた。
「…こいつの名前はなんて言うんだ?」
「あ、そう言えばそうね。聞いてみましょう」
そう言ってアネットは青年に向き直ると聞いた。
「あなたの名前は、なんて言うの?」
しかし、青年は首を横に振った。
「…なまえ、わから、ない」
「解らない?」
青年は小さく頷いた。
「うーん…記憶喪失か何か、かしら?」
「…確かに、見つけたときには頭からの出血が酷かったからな。どこかに打ったのかもしれん」
少しの沈黙の後、アネットが妙に陽気に言った。
「よし!じゃあ、やる事が出来たわ!」
「なんだ?名前を思い出させる方法が何かあるのか?」
「このコの名前を決めましょ!」
「まぁ、お前だからそんな事だと思ったよ」
今度は鞄から『ありがちな名前辞典』と書かれた本を取り出した。
「………」
「さて!どんなのが良いかな〜?」
「待て、もう少し真面目に…」
そう言ってから、アネットが不敵に笑ったのに気がついた。
「じゃ!あなたがつければ良いわね!真面目だしね!お願いね!」
「(しまった!)ちょ、待て!」
バタン!
扉を勢いよく閉めて、アネットは逃げ出した。
「…やられた…」
「……?」
青年は何の事かいまいち分からない様子で、アネットが出て行った扉を呆然と見ていた。
あぁ…面倒だ…!
任務だと思え…!これは任務だ!
優先順位!名前を決める!くそっ!
扉を開け中に入り、青年を起こそうとベッドに近づくと、青年がうなされていた。
「う…うぅぅ…!」
「…!」
急いで駆け寄り、青年を起こそうと強く揺さぶった。
「おい、起きろ」
「っ…!はぁ…はぁ…」
何度か強く揺さぶると、青年は目を覚まし、ベッドから体を起こした。
青年は全身に汗をびっしょりとかいていた。昨日救護に巻いてもらった包帯もすっかり湿っていた。
このままでは風邪を引いてしまうのでとりあえず青年を座らせ、上半身に巻いてあった包帯を外してやる事にした。
昨日の時点で傷はほとんど塞がっていたのだからもう外しても大丈夫だろう。
「#…#$%Y*…」
何か言っているが、言葉は相変わらず解らない。
しかし、やはり敵意はなさそうだ。礼でも言っているのだろう。
「?」
「これ、着ろ」
包帯を外し終えた所でアネットに貰った服を渡し、一度部屋を出た。
部屋の外でしばらく待っていると、着替えが終わったらしく、部屋から青年が出てきた。
「うむ、サイズはちょうど良さそうだな…」
強いて言うならローブが少し大きいが、気にするほどではない。
「着いて来い。朝食だ」
オリビアは手招きして、青年を食堂に連れて行った。
「パンと、それからサラダとスープを2人分くれ」
「はい〜」
食堂のホルスタウルスに注文を言うと、間延びした声が返ってきた。
しばらく待っていると、2人分の食料が運ばれてきた。
普段オリビアが朝食に食べている組み合わせだ。
青年にフォークとスプーンを渡してやると、両手を合わせてから器用に朝食を食べだした。
「(食器は普通に使えるようだな…)」
相変わらずこの食堂の飯はうまい。
ここの砦に来て1年。毎日ここの飯を食べているが、飽きる事は無い。
青年もうまそうに食事をとっている。
「(食べ終わったら、アネットも呼んで言葉を教えてやるか…)」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「来たわよ〜♪」
「(早いな…)」
朝食を終え、部屋に戻るとすぐにアネットがやってきた。
「おい、仕事はどうした?」
「昨日あなた達が任務に言ってる間に面倒なのはほとんど片付いたわ」
「なら、やっぱりお前が面倒を見たr」
「さ!張り切って教えましょうか!」
「……」
オリビアの抗議など全く効かず、アネットは昨日の薬を取り出してコップに注いだ後に水で薄めると、青年に手渡した。
「はい♪これ飲んで!」
「…%*$?」
小瓶を青年に渡すが、当然何の事だか解っていないようだ。
それを見てアネットは、ジェスチャーで伝えようとした。
「こう、ぐぃっと、一気に飲んで!」
「…うまいな、ジェスチャー」
それを見て、何をすれば良いのか解ったようで、青年はコップの中身を一気に飲み干した。
「う”っ…!?」
「!?…おい、どうした!?」
「あ、やっぱり不味い?」
心配するオリビアをよそに、青年に水を差し出しながら呑気な声でアネットが言う。
「は?不味い?」
「これね〜…効果は凄いけど、壊滅的に不味いのよね〜。飲んでみる?」
「……」
オリビアも同じようにコップに少し薬をたらし、水で薄めてから飲むと、
「う”っ…!」
不味い。
苦いくせに、変な酸味がある。おまけに後から口全体に気持ちの悪い甘さが広がる。
もう一度言うが、不味い。
「み、水…!私にも、水をくれ…!」
「さて、始めましょう!」
苦しむアネットを無視して、アネットは鞄からペンと紙を取り出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
数時間後……
「それじゃ、私の、名前は?」
「アネッ、ト」
「ハイ♪よく出来ました!」
「じゃあ、私の名前を言ってみろ」
「オリ、ビア」
「よし、正解だ」
薬の効果なのだろうか、あっという間に言葉覚えていく。
「すごいな、こんなにも覚えが早いとは…」
「多分、元々賢いのね。これは教えがいがあるわ!」
そこで、ふとオリビアは呟いた。
「…こいつの名前はなんて言うんだ?」
「あ、そう言えばそうね。聞いてみましょう」
そう言ってアネットは青年に向き直ると聞いた。
「あなたの名前は、なんて言うの?」
しかし、青年は首を横に振った。
「…なまえ、わから、ない」
「解らない?」
青年は小さく頷いた。
「うーん…記憶喪失か何か、かしら?」
「…確かに、見つけたときには頭からの出血が酷かったからな。どこかに打ったのかもしれん」
少しの沈黙の後、アネットが妙に陽気に言った。
「よし!じゃあ、やる事が出来たわ!」
「なんだ?名前を思い出させる方法が何かあるのか?」
「このコの名前を決めましょ!」
「まぁ、お前だからそんな事だと思ったよ」
今度は鞄から『ありがちな名前辞典』と書かれた本を取り出した。
「………」
「さて!どんなのが良いかな〜?」
「待て、もう少し真面目に…」
そう言ってから、アネットが不敵に笑ったのに気がついた。
「じゃ!あなたがつければ良いわね!真面目だしね!お願いね!」
「(しまった!)ちょ、待て!」
バタン!
扉を勢いよく閉めて、アネットは逃げ出した。
「…やられた…」
「……?」
青年は何の事かいまいち分からない様子で、アネットが出て行った扉を呆然と見ていた。
あぁ…面倒だ…!
任務だと思え…!これは任務だ!
優先順位!名前を決める!くそっ!
11/02/27 19:21更新 / ホフク
戻る
次へ