ヒトと魔物が入り混じる街(上)
「くそっ!!!」
力まかせに壁を殴りつける。
壁を殴った手に鈍い痛みが走るだけで、これで状況が良くなるわけがない。
分かってはいるものの、自分への怒りと無力感の感情を、何かにぶつけてしまいたかった。
悪い夢でも見ているようだ―――
―――港に船を停めると、教会の人間がこちらへ歩いてくるのが見えた。
また海の危険性でも説きに来たか、教会の人間は本当によく飽きないものだ。
海が危険だ?まぁ確かに魔物によって海に連れ去られるという可能性は否定できないのだが・・・
決してヒトを見たら喰うような話の通じないバケモノが海に住み着いているわけではない。
もし教会の人間が徹底した反魔物教育を受けてきたとするならば、ある意味可哀想な人間だ。
勝手なことを考えながら、同時に頭の中で適当にあしらう話の流れを作る。
生物は鮮度が一番大切なんだ。貴重な時間を取られるわけにもいかない。
「・・・アキト=リアシス様ですね?私は、カルロ=ノーヴ、教会の騎士団長であります」
「なんだ?俺に用事か?悪いがこっちも急いでるんで、急用じゃないんだったら、また後にしてくれないだろうか?魔物がどうこうの話なら聞き飽きたんだよ・・・」
「申し訳ありませんが、急用です。まぁ確かに、魔物の用事ですけれどね」
「・・・だから俺は漁師を辞めるつもりはないし、たとえ海で何かあってもそれは」
人が話してる最中に咳払いを入れられ、無理やり話を中断される。
そういえばいつもは神父のような奴らばかりだが、今日は騎士の格好をしている。
何かいつもと違う。直感で、嫌な予感がした。
「アキト=リアシス。あなたの家で魔物が見つかりました。少し、お話を聞かせてもらってもよろしいでしょうか」―――
―――自宅の扉を開けると、室内は静まりかえっていた。
つい部屋の隅に置いてある樽に目が行ってしまう。自分がこの街に来た時は無かった樽だ。
何日か前から置いてあり、そして樽の中にうるさい馬鹿が一人入っていたはず。
だが、今は空っぽだった。
樽の周りには、いくつか水たまりが出来ている。中には、少し赤色に滲むものもあった。
「まったく、急に走りださないで下さいよ。・・・魔物なら、もうとっくに収容済みですよ。それぐらい分かるでしょうに・・・」
「っ!てめぇ!アイツをどこにやった!」
「どこって、決まってるじゃないですか、教会ですよ、教会」
「ちっ!」
外へ走りだそうとするが、カルロが行く手を塞ぐように玄関に立ちはだかる。
「どちらへ向かいますか?まぁまぁ落ち着いて、正午には魔物の処刑が始まりますが、あなたは少しだけここでお待ちしていただいたら、その後、あの魔物の処刑には立ち会えますので。ご安心を」
「ふざけんな!!てめぇ・・・!」
部屋の中を見渡して武器になりそうな物を探す。だがもとより一般の民家であり、武器なんて置いてあるはずがない。
仮に置いてあったとしても、後ろには鎧をまとった兵士が控えている。武器なんてロクに握ったことが無い自分では恐らく太刀打ちも出来ないだろう。
踏み込もうとした足を一歩引っ込め、相手の様子をうかがう。
「・・・おや、思ったより冷静な判断をしたようですね。私も手荒な事は好きではないんですよ・・・助かります。あ、そうそう、この家の周りにはすでに兵を待機させてあるので、窓とかから逃げ出す、とか言うのもダメですよ」
完全に思考を一歩先まで読まれ、さらに一歩退く。嫌味なこの兵士はその様子を見て明らかに気を良くした。
「大人しくしていてくださいね?大丈夫です、あなたには危害を加えるつもりはありませんよ。魔物に惑わされてただけの、被害者、ですからねぇ」
「惑わす・・・ってお前、魔物が何か知っているのか」
「おっと、おしゃべりが過ぎましたね。失礼失礼。では、正午前には教会へお連れしますので、それまでごゆっくりと」
カルロが家から出ると、丁寧にドアを閉めていった。
外で待機していた兵士に何やら命令しているのが聞こえるのを、とても遠くの出来事のように聞いていた。
ティルが教会に捕まった。だがなぜだ。なぜティルがここにいると分かったんだ。外出した時は樽の中にいたか、もしくはヒトに姿を変えていた。
確かに危なっかしい事はしていたが、人目につくような場所でネレイスの姿はさらしていないはず・・・。
もし見られていたとしたら、昨日の夕方だ。尻尾だけだが、一瞬露出していた・・・。もしあの様子を誰かに見られていたとしたら。
「くそっ!!!」
壁を殴りつけ、頭に上った血を下ろして、混乱した頭を無理やり動かす。
今は過ぎたことを考えてる場合じゃない、どうにかしてティルを助けないと!
玄関はもちろんさっきのカルロと言う男が見張っている。
窓の外をのぞき見ると、兵士数人が退屈そうに見張りをしている。裏口や窓も見張られているようだ。
さすがに強行突破、と言うには無理がある。せめて武器の一つや二つあれば何か出来たかもしれないが・・・。
「一階から逃げるのは無理か・・・なら!」
二階への階段を駆け上がり、寝室へと飛び込む。
木窓を開くと遠くに教会が、そして真下には見張りをするカルロとその部下が見られた。
ここから飛び降りれば、少なくとも相手の虚を突くことが出来る。そこを一気に走れば、教会まで逃げ切れるかもしれない。
いや、行かなければ。ティルが処刑されてしまう。
心を決めて、木窓に足をかけた。
すると突如、地面を大きな影が横切る。
兵士が不思議そうに空を見上げ、何事かとざわめく。
この混乱に乗じて逃げられるか?いざ飛び降りようとした、その矢先・・・
「がっ!!」
みぞおちに強烈な衝撃。
その衝撃で勢いよく部屋の奥へと飛ばされる。
あまりの出来事に一瞬意識が遠のく。無様に床に転がり、胃の中身が逆流しそうになる。
むせ込む自分に誰かの影が近づく。兵士に行動がばれてしまったのか、だとしても一体何が・・・。
「ちわっす!旦那!久しぶりやなぁ!いやぁ、我ながら見事なまでの飛び膝蹴り!みぞおち入ったかー?」
「ゲホッゲホッ・・・・・・は・・・はぁ?」
「おろ、残念やなぁ。あっしのこともう忘れてもうたんですか?ほら、数日前にもここ来たじゃないですか、配達業のハーピーですよぉ」
「てめぇ・・・一発ぶん殴る。こんな・・・時にふざけてる場合じゃないんだよ・・・!ティルが、教会に・・・!」
「あーはいはい、とりあえず話は配達物渡してからでええか?」
人の話を完全に無視し、腰に付けた大きなカバンの中を探り出す。
また新聞か?今はそんな場合じゃない。そう言おうと思って顔を上げたが、中から取り出されたのは、小さく折り畳まれた一枚の紙切れだった。
「・・・さっき教会の地下牢にこっそり忍び込んできたんや。そこでティルさんから預かったものや」
「アイツから・・・!?み、見せてくれ!」
「もちろんそのために持ってきたんやけど・・・結構厳しいこと書かれとんでぇ・・・。腹くくって読めやー」
ハーピーから手紙を奪うように取ると、彼女はゆらゆらと2,3歩ふらつき、倒れるかのようにベッドへ腰かけた。
その様子を気にも留めず、時間が無かったのであろう、荒い筆跡の手紙に目を通す。
「アキト様へ
私は大丈夫です。
今は教会の地下牢に閉じ込められています。このあとしばらくしたら、処刑が始まるみたいですね。
でも、心配することなかれ!な、なんと教会に私が探していた『彼』がいたのです!
『彼』は教会の地下牢の番人のようです。私が連れてこられるのを見て、すぐに声をかけてくれました。
『彼』は私を処刑するために、外に出されるタイミングを見計らって助けてくれる計画を立てているそうです!
もちろんこんなこと秘密ですよー。教会の人間になんて絶対言ったらダメですよ!
そちらにも教会の人間が向かったと聞きました。私との関係は、絶対に言わないで下さい。
私とアキト様は赤の他人。そういうことにしておけば、アキト様へ被害は出ないはずです。
だから、絶対に私を助けに来るとか考えないで下さいね。折角の私と『彼』の感動の再会なんですからー、水を差すようなことしないでくださいよー。
では、短い付き合いでしたが、お世話になりました。また、どこかでお会いしましょう」
「・・・・・・・アイツ・・・あの馬鹿・・・」
「・・・だってさ。旦那は厄介者扱いやなぁ。ティルさんから、ここ動かんように見張っといてくれ、て言われてるんや。なんやよう分からんが、『彼』ってのが助けてくれるんやろ?ネレイスが地上に上がって探すとかいう男のあれか?」
「・・・ああ、そうみたいだな」
「やったら旦那は何もせんでええやろ。下手に動いたら、旦那まで殺されてまう」
「あいつの言う、『彼』・・・が助けに行かないとダメなんだ。だから、俺はこんなところに居られない」
「・・・そやからー、旦那・・・?」
「アイツ・・・下手くそな嘘つきやがって・・・こんな都合のいい話があるかよ・・・」
「んな・・・嘘って、どういうことや?」
まだ少しふらつく足で立ち上がり、もう一度窓の外を見る。
遠くに見える教会、あの中に、ティルが。太陽は、もうすぐ真上に来ようとしていた。
「・・・嘘も糞もねぇ。『彼』は教会なんかに居やしねぇ。・・・ここで、のんきにハーピーと雑談中さ!」―――
―――「あっしももう、この街で働き出して結構経つわ・・・」
彼女に描いてもらった教会内部の地図を見ていると、不意にそう呟いた。
「この反魔物思想のこの街でも、魔物は隠れてこっそりと住んどる。旦那らみたいにな。まぁそのおかげで、あっしも仕事が出来るんやが」
「・・・・・・今回みたいなことも、何度か見てきたのか・・・?」
「そや・・・、何組もの恋人が引き裂かれた。良くて魔物が、場合によっては男の方まで殺されてきた。教会に捕まったが最後、今まで助かった例なんて見たことが無い・・・」
「なら俺がその最初の例になってやるよ」
地図を丸め、服のポケットにしまう。代わりに、一階から取ってきた、あるものを取り出す。
「ほんまに、助けに行くんやな?」
「・・・ああ、もちろんだ」
「下手したら教会の奴らと戦うことになるかもしれへん、旦那まで命落とすことになりかねへんで」
「覚悟の上だ」
「仮に助かったとしても、この街にはもう住めへんやろうし・・・。それに、それ使ったら、もう元の生活に戻れへんで」
「何も準備しないよりかはマシだろ?助けられる可能性が、少しでも上がるなら、悪魔にだって、それこそ魔物にだって魂を売るさ」
「・・・・あっほやなぁ、あんたら二人とも。片方は男の命助けるために馬鹿な嘘ついて、片やその男はわざわざその救われた命捨てに行って・・・」
「馬鹿なのも承知の上だ。頼むぞ、正午まであまり時間が無い」
「・・・あっしは教会の展望台までや。自分も仕事かかっとるから、助けに行くのには協力できへん。そこから先は旦那一人や。ええな?」
「それだけで十分助かるよ」
「ふむ・・・あっしも人のこと言えるほど賢くもないか・・・、こんなあほ共、ほっとけばええものをな・・・。捕まりな旦那!飛ぶで!」―――
―――暗い、湿度の高い部屋。まるで深い海の底に来たみたいに。
けど、海だったらもっと何か、暖かい感じがするのに、ここは冷たくて硬い空気で満たされていた。
新聞屋さんのハーピーは、アキト様に手紙を届けてくれただろうか。
悪いのは私なんだ・・・。海から上がってきて、勝手に人の家の前で倒れていたから、助けてもらった。
その上、『彼』を探すのも手伝ってもらい、食べ物と、住む場所を与えてくれた。
おまけに「あーんなこと」やら「こーんなこと」まで、ああダメダメ鼻血でちゃう。
これ以上迷惑をかけるわけにはいかない・・・もしアキト様にまで何かあったら・・・。
何が何でも、アキト様にこれ以上世話になるわけにはいかない。
死ぬのはこわい、『彼』を見付けられないままこんな最期になるだなんて・・・。でもアキト様にまで何かあるのは、もっと、嫌だ。
今自分がいるのは、教会の魔物用地下牢。
部屋を見渡すと、いたるところに魔法陣と思われる模様やお札が見えた。多分、魔法を使えなくする類のものなのだろう。体が重くて、思うように動かない。
天上から降ろされた鎖に手枷が繋がり、見動きはほとんど取れない。
体はもう、ぼろぼろだった。突然家に教会の兵士が来たと思えば、真っ先に捕えられ、地下牢に放り込まれた。
もちろん抵抗はしたけれど、大の男の力に勝てるわけがない。その時に出来た擦り傷や剥がれたウロコが、冷たい空気にさらされてじりじりと痛む。
思い出すだけで、恐怖から涙が出る・・・。涙を拭おうとして動かした腕も、天井から手枷に繋がった鎖をじゃらりと鳴らすだけだった。
ずっと膝立ちの格好をさせられてるせいか、足も痺れてきた。唯一自由な尻尾で足をぺちぺちと叩き、少しでも痺れを和らげようとする。
せめて最後殺されるんだったら、綺麗にしてもらってから死にたいな。頼んだら、怪我とか治してくれるのかな、
と馬鹿げたことを考えていると、上から階段を下りてくる何人かの足音が聞こえた。
まさかと思い、思わず顔を上げる、ロウソクの炎が、近づいてくるのが見え、ついに人影が現れた。
「おっ!これが今日捕まえたという魔物か!ほほ・・・う。これまた別嬪さんで!ヒレに尻尾に・・・だが足ヒレは二本か・・・コイツはネレイスだな!レアものじゃないか!」
「悪いね魔物のお嬢ちゃん。残念だけど、助けに来た王子様、って訳じゃないんだ」
「・・・もう、時間ですか?」
「まだもう少しありますよ。神もそこまで鬼ではありません」
下りてきたのは、男が3人。いかにも貴族、と言った格好の太った男、同じく貴族であろうが、遊び人といった格好の細身の男、それと教会の人間の格好をした男。
処刑にまではまだ時間がある?じゃあ何をしに来たんだろうこの人たちは。ただ、穏やかな雰囲気ではなさそうだった。
「さて、と。早速だが魔物の嬢ちゃん、どうせ処刑の時間まで暇だろう?人生の最後、どうせなら楽しく終わらせたいよねぇ?おっと、人生って、魔物だから人じゃあなかったか」
「無駄話はいいだろう!一分一秒が惜しい、早く始めようではないか!」
「お二方、約束はお守りくださいね、これが終わったら、きっちり料金はもらいますよ」
「そんなこと分かっておる!金なら用意してあるわ!まったく一々うるさい奴らめ」
「・・・では私は先に上へ上がっています。時間になりましたらまた戻りますので、その時までごゆっくりお楽しみください」
な、何の話をしているんだろうこの人たちは。処刑までの時間?楽しむ?料金?
「おっと、嬢ちゃんが置いてきぼり喰らった顔してやがるぜ?そりゃー訳分かんないよなぁ。よし、どーせ死んじまうんだ、最後にちょっと話を聞かせてやるよ」
細身の男が近づき、腰を曲げる。急に男の顔が目の前に現れ、思わず体を強張らせてしまう。
「この教会ってでけぇよなぁ。もはや一国の軍隊と言えるぐらいの兵士も抱えてるし、活動も活発だ。・・・この資金どこから出てると思う?もちろん、市民からの寄付金もあるがなぁ」
「これほどの規模の教会!それは我々貴族が援助しているから成り立つのだ!貴族から金をもらい、兵隊を強化し、魔物の取り締まりの活動も活発になる!その見返りに我々貴族が何をもらうか!」
太った男が自慢げに話に続きながらゆっくりとこちらに近づき、もう一人の貴族は更に顔を近づける。
頬が触れるか触れないかのところで顔を近づけるのをやめ、耳元で囁くように語り続ける。
「俺たちはな・・・魔物の正体を知ってんだよ。魔物が危険で、人間を喰う生き物だなんて馬鹿げた話信じてるのは、哀れな市民と3流貴族だけ。まぁ教会の奴らも、上層部しか知らないことではあるがな。それで、教会から受ける見返りってのはなぁ」
「っきゃあ!!」
急に胸を鷲掴みにされる。男は強い力で揉みしだきながら、不敵な笑みを浮かべる。
そのまま強引に唇を奪われ、あまりの出来事に茫然と開いていた口内に、男の舌の侵入を許してしまう。
「んん!?んっんうう!!んんっ!!?」
暴力的な舌使いと胸への感覚は、快感と言うよりむしろ恐怖をひき立てるだけだった。
一通り口内を蹂躙すると、わざと糸を引かせるように、ゆっくりと舌を口から引き抜く。
だらしなくポカンと開いたままで固まってしまった口から、唾液が胸へと滴り落ちた。
「貴族に魔物を売り渡す・・・。ヒトの身体なんかじゃ満足できなくなった貴族たちは、このために教会に援助するのさ」
「そんな・・・じゃあ・・・私は・・・」
「もう我慢出来ん!ワシが先にやらせてもらうとするぞ!ああ!この娘はどこから頂こうか!」
後ろに控えてたはずの太った貴族はすでに衣服を全て脱ぎ捨て、全裸の状態だった。
股間のそれはすでにいきり立っており、それを上下に扱きながら、近づいてくる。
「や・・・、やめてください!嫌ですこんなの!やめて・・・近寄らないでっ!」
「魔物は好色なことぐらいワシは知っとるぞぉ!そんなこと言いながら・・・実は期待しているんじゃないのか?」
「違います!私は・・・だって私は!」
細めの男と入れ替わりに太った男が目の前に来てかがむと、何の遠慮も無しに秘部へと手を伸ばし指で弄り始める。
「んっ・・あっ!やめ・・・っ!」
「普通の人間ならまだしも、魔物は体の欲に忠実だからなぁ。・・・どうした?もうすでに濡れてきているようだぞ?」
「嘘っ・・・こんな・・・嫌・・・っ!んあっ!」
片方の胸に舌を這わせ、もう片方を手で揉みしだく。胸を舐められる不快感に震えるも、両手を枷で縛られているため、抵抗という抵抗も出来ない。
体を左右にひねり、必死に不快感から逃げようとするが、その行為は相手の性欲をそそるだけのものだった。
「そんなよがっちゃって、やっぱり魔物は感度良好だねぇ。そんな可愛いと、もっと苛めちゃいたくなるなぁ!」
「っひぁぁぁ!!」
体が大きく跳ね、軽く絶頂に達したことを告げる。乳首とクリトリスを同時に摘まれたことに、後から気がついた。
「あっ、はぁっ、嫌ぁ・・・、お願いっです、やめて、下さい・・・」
「おいおい嬢ちゃん、そんなんじゃソイツを余計に興奮させるだけだぜ?まぁ魔物だから、そういう本能で出来てるんだろうがなぁ」
突然天上と手枷を繋げる鎖を外され、身体を支えていた力を失い床に崩れ落ちる。髪をつかまれ強引に仰向けにされると、ニタリと笑う貴族の顔が目に入った。
「ふぃ、こんだけ濡れてれば十分すぎるぐらいだな・・・時間も限られているのだ、さっさと始めるとするか」
太った男が姿勢を変え、無理やり足を開かせると待ちきれないと言わんばかりに充血したそれをあてがった。
「やだっ!それは!お願いします!他になんでも!」
「・・・そうかー、そんなに嫌なのかぁ・・・流石にそこまで言われるとなぁ・・・」
太った男は俯きためらいの表情で動きを止める。話が、通じたのだろうか。
「ぇ、あ、あの・・・ありがとうご」
「余計に興奮しちゃうよねぇぇぇ!!!」
ずぶっ、と何かが体を貫く音。続いて目に映る男の笑みと、その下に自分の秘部へその全長を埋めた男根。
最後に遅れて、膣を貫く快感と痛みがやってきた。
「っっい、いあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
まったく心の準備が出来てなかった膣内はみちみちと痛みを走らせ、痛みと恐怖から目から涙がこぼれる。
しかし男は気にも留める様子もなく、笑みのままピストン運動を始める。
「いやっ!やめっ・・てぇ!!抜いてっ!やだ!!ああっ!助けてっ!誰かっ・・・アキト・・・さまぁ!!」
「お前相変わらずタチ悪いよな・・・。それで罪悪感どころか興奮を覚えるとか、変態として尊敬するよ」
「ふんっ!これがっ、正しいっ、魔物のっ、扱いであろう!にしてもこの顔!に加えてこの締め付け!上玉じゃないか!これを殺すとはもったいないっ!」
最初は侵入を拒もうと抵抗していた膣も、すぐに愛液で溢れ、滑りをよくする。
ピストン運動を続けながらも話を続ける二人の貴族。最奥部を突き上げられるたびに頭が真っ白になりそうになるが、必死に感情だけでも抵抗する。嫌だ、こんなの絶対嫌だ。魔物だからって、こんな仕打ち・・・。
「っと、そんなこと言いながらも俺もムラムラしてきたな・・・。おい嬢ちゃん、ちょっと胸借りるぜ」
「やぁっ!はっ!んうぅ、胸は・・・あっ!」
男は身体の上に馬乗りになると、胸に男根を押しつける。遠慮なし両腕で胸を掴むと、モノを胸で包み腰を振り始めた。
「ふぁっ!それっ!ダメっ!感じっ・・・ちゃぅぅ・・・っ!」
「ははっ!これはすげぇ!おいコイツ無理矢理パイズリされて悦んでるのか!コイツはとんだ変態だなぁ!」
「おかげで下の様子も良いぞ!さらにきつく締めつけてくれる!これはっ犯しがいがっ、あるなぁ!ただお前の尻で魔物の顔が見れんのが何とも言えんがな・・・」
「いやっ!嫌なのっ、に・・・!こんなにっ・・・!」
気持ち良い そう続けてしまうと、何か大切な物を失ってしまう気がして、寸のところで言葉を飲み込む。
だが徐々にヒトとしての残っている理性、嫌悪感を、魔物としての性欲が上回ってしまう。
不規則に収縮する膣は、今か今かと精を待ちわびているようだった。
「んっ、あんっ!はぁっ・・・ひゃぅっ!」
「大分素直になってきたじゃないか・・・。そうだなぁ、そろそろ一発出しておくか。おい魔物!膣と外どっちに出してほしい?」
「んあぁ!そ、そんなの・・・聞か・・・ないで!ああっ!」
体が求めてしまっている、ナカに出される、その響きだけで脳が蕩けてしまいそうで、
もはや否定することは出来ず、肯定しないようにするだけでも、一杯一杯だった。
「答えれねぇ、ってことは、膣に欲しがってんじゃね?一発膣ににぶち込んでやれよ!」
「ん?んふふふふ、そうかー、それならっ!おいお前!ちょっとそこどけっ!」
「ああ?何だよいきなり・・・」
細めの男がチッと舌うちして体をどかすと、太った男がスパートをかける。
強烈な下半身への快感に、残った理性すら消えかけ、いずれ放たれる精にに身構える。
「ひゃっあっ!んっ!いっ!イっちゃっ!ああっ!!」
「おっ、おっ!イクぞ!しっかり受け止めろよ!」
「イク・・・あ・・・ああっ・・・!・・・・・!?」
瞬間、勢いよく男根が引き抜かれる。
と同時に勢いよく精を放出し、お腹へ、胸へ、顔へと飛び散った。
「はっ・・・はっ・・・え、え・・・?」
男は手で自身のモノを扱きながら、残った精液を私の身体に吐き出した。
何が起こったかが分からず、ただその行為をじっと見つめていた。
「ふぃぃー、やっぱコイツはいい感じ。おっと、良い顔してるじゃないか魔物!どーしたのかなー?物足りなさそうな顔して、膣に出されたかったのかなー?」
「ち・・・違っ!!そんな・・・こと・・・私は・・・・・・」
「そうだよねー!中出しは嫌だよねー?うんうん、想い人がいるんだろ?そりゃー中出しなんかしちゃあ可哀想だもんねー」
「・・・・・・」
「おいおい、嬢ちゃん泣きかけてるぜ?何をするのかと思ったら・・・一思いに膣に出してやればいいものを」
あとほんの一瞬、と言うところでおあずけをくらい、火照った身体は完全に欲情して男性の精を求めていた。
少しだけ戻ってきて来た理性と、本能のままに精を求める身体がに戸惑い、俯く。
身体についた大量の精液が目に入り、もしこれが膣に出されていたならば・・・もっと気持ちよかったのかな、と考えてしまう。
「さて、と。んじゃー俺もヤらしてもらうとするかな。まだ唖然としてるけど、嬢ちゃん準備してくれよ」
「え・・・あ・・・んんっ!!」
入れ替わりに細身の男が再び身体を貫き、ピストン運動を始めた。
さっきよりも一層強まった性欲に、一瞬にして理性を吹き飛ばされそうになってしまう。
「ひあぁっ!!まだっ!熱っ!!少しっは!!やすませて・・・んううっ!」
「えー、そんな物欲しそうな顔してても説得力に欠けるよ嬢ちゃん。あ、そうそう、今度はしっかりどこに出してほしいか言わないと、また外に出しちゃうけど、それでいいかな?」
「えっ!?やっ!!そんっ・・・なぁ・・・!」
「お・・・確かにこれは中々そそるかも・・・」
身体は一層熱さを増し、気持ちが昂っていく。今度こそ膣に欲しい、空っぽの子宮を精液で満たして快感に浸りたい。
そんな欲望が湧き起こり、止めどもなく大きくなっていく。
「おい!もう良いだろう!早く出して交替してくれ!!ワシの時間が無くなるだろうが!」
「もう復活したのかオッサン・・・年の割に元気過ぎるだろ・・・。まぁ時間が無いのも事実だしな、んじゃとっとと終わらせるか。」
不意にスピードが上がり、さらに激しく膣内を掻き回される。
暴力的なまでの快感に気持ちの昂りは最高潮となり、ついには必死に抗い続けた理性を完全に覆い隠した。
「らめっ!これ以上はっ!!おか・・・おかしくなっちゃっ!!」
「はっ・・・はっ・・・で?どこなんだ?どこに出して欲しいんだ?」
「・・・っ!!・・・っ!!!ぁ・・・かに・・・!」
「おお?どこだって?もう少し大きい声で頼めるかな?」
不意に自分の世話を焼き、まるで愛するように接してくれた、誰かの顔が浮かび、そして消えた。
悲しさが込み上げ、涙があふれる。だがそんな感情もすぐに快楽の濁流に沈み、ただ精を求めるだけの身体で、叫ぶ。
「膣に出してください!お願いしますううぅぅっ!!!」
「へっ!なんだ言えるじゃねぇか!それじゃあお望み通りっ!!っらぁ!」
男が叫び、子宮口を貫くと一瞬の間の後、子宮の中に何かがほとばしった。
「ひぅっ!!すごぃ・・・・!いっぱい・・!入って・・・来て!!あっ!!んっくぅぅぅ!!」
中出しの快感で自身の昂りも頂点に達し、強く体を強張らせる。膣が男のモノを最後の一滴まで求めるようにきつく締めあげた。
放たれた精液は子宮を満たし、膣内を逆流し、入りきらなかった分が身体の外へと流れ出た。
満たされた性欲に恍惚としていたのもつかの間、すぐにアキト様のことを思い出した。
体中を支配する満足感と、行為と自分のとった行動の罪悪感が入り混じり、感情にならない感情で頭が一杯になる。
「わ・・・私・・・嫌・・・、こんな・・・あ・・・・・ああ・・・・・・ああああああぁぁぁぁぁぁーーー!!!!!!」―――
―――この短時間に何回犯されただろうか。5,6回目からもう何も考えたくなくなった。
胸を揉みしだかれ、唇を強引に奪われるたびに高なる鼓動。男たちに身体を貫かれ、激しく犯されるたびにかき消される理性。
そして行為が終わり、交替の間の一瞬に襲いかかる罪悪感と嫌悪感。溢れる涙と子種。
そんなことが、永遠と思われるほど続いた。
「ひぐっ・・・お願い・・・もう・・・早く殺して下さい・・・」
「あ?・・・心配しねぇでもあとちょっとだよ。全くもったいねぇ・・・。さて、と。もう2,3回は楽しませてくれよ?」
「やだ・・・!もう気持ちよくなりたくない!やめて!嫌です!もう・・・あっ・・・んあああぁぁ!!」
主張を完全に無視して、すでに精液でぐちゃぐちゃになった膣へ何度目かの挿入を始める。
感度が衰えるどころか、むしろ犯されるたびに高まるこの身体は、痙攣しながらもモノを包み込み、さらなる快感を貪ろうとする。
男が抽送運動を始めようとしたその時、地下牢へと続く階段を下りる足音が聞こえた。
やっとこのサイクルから解放される・・・やっと死ねるんだ、と不思議と安堵の気持ちが湧きあがった。
その安堵の気持ちと疲れから、急激に意識が遠のく。次に目覚めることは無いかもしれない、けれど、それでも良かった。
誰かを愛することは、こんなにも辛いことだったんだ。貴族の男たちが何やら慌てるような素振りを最後に見て、目を閉ざした―――
―――「・・・・・・ぃ・・・!!おぃお前!!おい返事しろよ!この馬鹿!!!」
「ん・・・ぅぅ・・・?その声は・・・アキト様・・・?なんで・・・あっ、てことは・・・ここは・・・もう天国なのかな?」
「よかった・・・・・・・この・・・お前はっ・・・!」
「ほえ・・・?うみゃあ!!!」
まだ寝ぼけた顔のティルを勢いよく抱き起こし、きつく抱きしめる。今までよりもずっと強く、長く。
「本当に悪かった・・・まさかこんな目に遭わされてただなんて・・・すまん・・・俺・・・本当に・・・無事で・・・!!」
「なななっ!えっ!?何が!?」
まだイマイチ状況がつかめていなかったティルは自分の肩越しに部屋を眺める。
そこにあったのは、気を失って床に突っ伏してる貴族が二人と、最初にいた教会の人間の三人。
自分たちの周りの床には、先ほどまで行為の痕がありありと残っていた。
腕の少し力を緩め、ティルと向き合う。
「あ・・・私・・・わたしっ・・・!!」
「大丈夫だ、もう・・・大丈夫。俺がいる、もう絶対に、離れないから・・・」
「あ・・・アキト様・・・うっ・・・ひぐっ・・・ぅ・・・うわあああぁぁぁぁ!!」
状況を理解したティルの瞳から、大粒の涙が零れ落ちる。今度はティルをそっと抱き寄せると、胸元に顔を埋めて泣きじゃくるその頭を、そっと撫でた。
力まかせに壁を殴りつける。
壁を殴った手に鈍い痛みが走るだけで、これで状況が良くなるわけがない。
分かってはいるものの、自分への怒りと無力感の感情を、何かにぶつけてしまいたかった。
悪い夢でも見ているようだ―――
―――港に船を停めると、教会の人間がこちらへ歩いてくるのが見えた。
また海の危険性でも説きに来たか、教会の人間は本当によく飽きないものだ。
海が危険だ?まぁ確かに魔物によって海に連れ去られるという可能性は否定できないのだが・・・
決してヒトを見たら喰うような話の通じないバケモノが海に住み着いているわけではない。
もし教会の人間が徹底した反魔物教育を受けてきたとするならば、ある意味可哀想な人間だ。
勝手なことを考えながら、同時に頭の中で適当にあしらう話の流れを作る。
生物は鮮度が一番大切なんだ。貴重な時間を取られるわけにもいかない。
「・・・アキト=リアシス様ですね?私は、カルロ=ノーヴ、教会の騎士団長であります」
「なんだ?俺に用事か?悪いがこっちも急いでるんで、急用じゃないんだったら、また後にしてくれないだろうか?魔物がどうこうの話なら聞き飽きたんだよ・・・」
「申し訳ありませんが、急用です。まぁ確かに、魔物の用事ですけれどね」
「・・・だから俺は漁師を辞めるつもりはないし、たとえ海で何かあってもそれは」
人が話してる最中に咳払いを入れられ、無理やり話を中断される。
そういえばいつもは神父のような奴らばかりだが、今日は騎士の格好をしている。
何かいつもと違う。直感で、嫌な予感がした。
「アキト=リアシス。あなたの家で魔物が見つかりました。少し、お話を聞かせてもらってもよろしいでしょうか」―――
―――自宅の扉を開けると、室内は静まりかえっていた。
つい部屋の隅に置いてある樽に目が行ってしまう。自分がこの街に来た時は無かった樽だ。
何日か前から置いてあり、そして樽の中にうるさい馬鹿が一人入っていたはず。
だが、今は空っぽだった。
樽の周りには、いくつか水たまりが出来ている。中には、少し赤色に滲むものもあった。
「まったく、急に走りださないで下さいよ。・・・魔物なら、もうとっくに収容済みですよ。それぐらい分かるでしょうに・・・」
「っ!てめぇ!アイツをどこにやった!」
「どこって、決まってるじゃないですか、教会ですよ、教会」
「ちっ!」
外へ走りだそうとするが、カルロが行く手を塞ぐように玄関に立ちはだかる。
「どちらへ向かいますか?まぁまぁ落ち着いて、正午には魔物の処刑が始まりますが、あなたは少しだけここでお待ちしていただいたら、その後、あの魔物の処刑には立ち会えますので。ご安心を」
「ふざけんな!!てめぇ・・・!」
部屋の中を見渡して武器になりそうな物を探す。だがもとより一般の民家であり、武器なんて置いてあるはずがない。
仮に置いてあったとしても、後ろには鎧をまとった兵士が控えている。武器なんてロクに握ったことが無い自分では恐らく太刀打ちも出来ないだろう。
踏み込もうとした足を一歩引っ込め、相手の様子をうかがう。
「・・・おや、思ったより冷静な判断をしたようですね。私も手荒な事は好きではないんですよ・・・助かります。あ、そうそう、この家の周りにはすでに兵を待機させてあるので、窓とかから逃げ出す、とか言うのもダメですよ」
完全に思考を一歩先まで読まれ、さらに一歩退く。嫌味なこの兵士はその様子を見て明らかに気を良くした。
「大人しくしていてくださいね?大丈夫です、あなたには危害を加えるつもりはありませんよ。魔物に惑わされてただけの、被害者、ですからねぇ」
「惑わす・・・ってお前、魔物が何か知っているのか」
「おっと、おしゃべりが過ぎましたね。失礼失礼。では、正午前には教会へお連れしますので、それまでごゆっくりと」
カルロが家から出ると、丁寧にドアを閉めていった。
外で待機していた兵士に何やら命令しているのが聞こえるのを、とても遠くの出来事のように聞いていた。
ティルが教会に捕まった。だがなぜだ。なぜティルがここにいると分かったんだ。外出した時は樽の中にいたか、もしくはヒトに姿を変えていた。
確かに危なっかしい事はしていたが、人目につくような場所でネレイスの姿はさらしていないはず・・・。
もし見られていたとしたら、昨日の夕方だ。尻尾だけだが、一瞬露出していた・・・。もしあの様子を誰かに見られていたとしたら。
「くそっ!!!」
壁を殴りつけ、頭に上った血を下ろして、混乱した頭を無理やり動かす。
今は過ぎたことを考えてる場合じゃない、どうにかしてティルを助けないと!
玄関はもちろんさっきのカルロと言う男が見張っている。
窓の外をのぞき見ると、兵士数人が退屈そうに見張りをしている。裏口や窓も見張られているようだ。
さすがに強行突破、と言うには無理がある。せめて武器の一つや二つあれば何か出来たかもしれないが・・・。
「一階から逃げるのは無理か・・・なら!」
二階への階段を駆け上がり、寝室へと飛び込む。
木窓を開くと遠くに教会が、そして真下には見張りをするカルロとその部下が見られた。
ここから飛び降りれば、少なくとも相手の虚を突くことが出来る。そこを一気に走れば、教会まで逃げ切れるかもしれない。
いや、行かなければ。ティルが処刑されてしまう。
心を決めて、木窓に足をかけた。
すると突如、地面を大きな影が横切る。
兵士が不思議そうに空を見上げ、何事かとざわめく。
この混乱に乗じて逃げられるか?いざ飛び降りようとした、その矢先・・・
「がっ!!」
みぞおちに強烈な衝撃。
その衝撃で勢いよく部屋の奥へと飛ばされる。
あまりの出来事に一瞬意識が遠のく。無様に床に転がり、胃の中身が逆流しそうになる。
むせ込む自分に誰かの影が近づく。兵士に行動がばれてしまったのか、だとしても一体何が・・・。
「ちわっす!旦那!久しぶりやなぁ!いやぁ、我ながら見事なまでの飛び膝蹴り!みぞおち入ったかー?」
「ゲホッゲホッ・・・・・・は・・・はぁ?」
「おろ、残念やなぁ。あっしのこともう忘れてもうたんですか?ほら、数日前にもここ来たじゃないですか、配達業のハーピーですよぉ」
「てめぇ・・・一発ぶん殴る。こんな・・・時にふざけてる場合じゃないんだよ・・・!ティルが、教会に・・・!」
「あーはいはい、とりあえず話は配達物渡してからでええか?」
人の話を完全に無視し、腰に付けた大きなカバンの中を探り出す。
また新聞か?今はそんな場合じゃない。そう言おうと思って顔を上げたが、中から取り出されたのは、小さく折り畳まれた一枚の紙切れだった。
「・・・さっき教会の地下牢にこっそり忍び込んできたんや。そこでティルさんから預かったものや」
「アイツから・・・!?み、見せてくれ!」
「もちろんそのために持ってきたんやけど・・・結構厳しいこと書かれとんでぇ・・・。腹くくって読めやー」
ハーピーから手紙を奪うように取ると、彼女はゆらゆらと2,3歩ふらつき、倒れるかのようにベッドへ腰かけた。
その様子を気にも留めず、時間が無かったのであろう、荒い筆跡の手紙に目を通す。
「アキト様へ
私は大丈夫です。
今は教会の地下牢に閉じ込められています。このあとしばらくしたら、処刑が始まるみたいですね。
でも、心配することなかれ!な、なんと教会に私が探していた『彼』がいたのです!
『彼』は教会の地下牢の番人のようです。私が連れてこられるのを見て、すぐに声をかけてくれました。
『彼』は私を処刑するために、外に出されるタイミングを見計らって助けてくれる計画を立てているそうです!
もちろんこんなこと秘密ですよー。教会の人間になんて絶対言ったらダメですよ!
そちらにも教会の人間が向かったと聞きました。私との関係は、絶対に言わないで下さい。
私とアキト様は赤の他人。そういうことにしておけば、アキト様へ被害は出ないはずです。
だから、絶対に私を助けに来るとか考えないで下さいね。折角の私と『彼』の感動の再会なんですからー、水を差すようなことしないでくださいよー。
では、短い付き合いでしたが、お世話になりました。また、どこかでお会いしましょう」
「・・・・・・・アイツ・・・あの馬鹿・・・」
「・・・だってさ。旦那は厄介者扱いやなぁ。ティルさんから、ここ動かんように見張っといてくれ、て言われてるんや。なんやよう分からんが、『彼』ってのが助けてくれるんやろ?ネレイスが地上に上がって探すとかいう男のあれか?」
「・・・ああ、そうみたいだな」
「やったら旦那は何もせんでええやろ。下手に動いたら、旦那まで殺されてまう」
「あいつの言う、『彼』・・・が助けに行かないとダメなんだ。だから、俺はこんなところに居られない」
「・・・そやからー、旦那・・・?」
「アイツ・・・下手くそな嘘つきやがって・・・こんな都合のいい話があるかよ・・・」
「んな・・・嘘って、どういうことや?」
まだ少しふらつく足で立ち上がり、もう一度窓の外を見る。
遠くに見える教会、あの中に、ティルが。太陽は、もうすぐ真上に来ようとしていた。
「・・・嘘も糞もねぇ。『彼』は教会なんかに居やしねぇ。・・・ここで、のんきにハーピーと雑談中さ!」―――
―――「あっしももう、この街で働き出して結構経つわ・・・」
彼女に描いてもらった教会内部の地図を見ていると、不意にそう呟いた。
「この反魔物思想のこの街でも、魔物は隠れてこっそりと住んどる。旦那らみたいにな。まぁそのおかげで、あっしも仕事が出来るんやが」
「・・・・・・今回みたいなことも、何度か見てきたのか・・・?」
「そや・・・、何組もの恋人が引き裂かれた。良くて魔物が、場合によっては男の方まで殺されてきた。教会に捕まったが最後、今まで助かった例なんて見たことが無い・・・」
「なら俺がその最初の例になってやるよ」
地図を丸め、服のポケットにしまう。代わりに、一階から取ってきた、あるものを取り出す。
「ほんまに、助けに行くんやな?」
「・・・ああ、もちろんだ」
「下手したら教会の奴らと戦うことになるかもしれへん、旦那まで命落とすことになりかねへんで」
「覚悟の上だ」
「仮に助かったとしても、この街にはもう住めへんやろうし・・・。それに、それ使ったら、もう元の生活に戻れへんで」
「何も準備しないよりかはマシだろ?助けられる可能性が、少しでも上がるなら、悪魔にだって、それこそ魔物にだって魂を売るさ」
「・・・・あっほやなぁ、あんたら二人とも。片方は男の命助けるために馬鹿な嘘ついて、片やその男はわざわざその救われた命捨てに行って・・・」
「馬鹿なのも承知の上だ。頼むぞ、正午まであまり時間が無い」
「・・・あっしは教会の展望台までや。自分も仕事かかっとるから、助けに行くのには協力できへん。そこから先は旦那一人や。ええな?」
「それだけで十分助かるよ」
「ふむ・・・あっしも人のこと言えるほど賢くもないか・・・、こんなあほ共、ほっとけばええものをな・・・。捕まりな旦那!飛ぶで!」―――
―――暗い、湿度の高い部屋。まるで深い海の底に来たみたいに。
けど、海だったらもっと何か、暖かい感じがするのに、ここは冷たくて硬い空気で満たされていた。
新聞屋さんのハーピーは、アキト様に手紙を届けてくれただろうか。
悪いのは私なんだ・・・。海から上がってきて、勝手に人の家の前で倒れていたから、助けてもらった。
その上、『彼』を探すのも手伝ってもらい、食べ物と、住む場所を与えてくれた。
おまけに「あーんなこと」やら「こーんなこと」まで、ああダメダメ鼻血でちゃう。
これ以上迷惑をかけるわけにはいかない・・・もしアキト様にまで何かあったら・・・。
何が何でも、アキト様にこれ以上世話になるわけにはいかない。
死ぬのはこわい、『彼』を見付けられないままこんな最期になるだなんて・・・。でもアキト様にまで何かあるのは、もっと、嫌だ。
今自分がいるのは、教会の魔物用地下牢。
部屋を見渡すと、いたるところに魔法陣と思われる模様やお札が見えた。多分、魔法を使えなくする類のものなのだろう。体が重くて、思うように動かない。
天上から降ろされた鎖に手枷が繋がり、見動きはほとんど取れない。
体はもう、ぼろぼろだった。突然家に教会の兵士が来たと思えば、真っ先に捕えられ、地下牢に放り込まれた。
もちろん抵抗はしたけれど、大の男の力に勝てるわけがない。その時に出来た擦り傷や剥がれたウロコが、冷たい空気にさらされてじりじりと痛む。
思い出すだけで、恐怖から涙が出る・・・。涙を拭おうとして動かした腕も、天井から手枷に繋がった鎖をじゃらりと鳴らすだけだった。
ずっと膝立ちの格好をさせられてるせいか、足も痺れてきた。唯一自由な尻尾で足をぺちぺちと叩き、少しでも痺れを和らげようとする。
せめて最後殺されるんだったら、綺麗にしてもらってから死にたいな。頼んだら、怪我とか治してくれるのかな、
と馬鹿げたことを考えていると、上から階段を下りてくる何人かの足音が聞こえた。
まさかと思い、思わず顔を上げる、ロウソクの炎が、近づいてくるのが見え、ついに人影が現れた。
「おっ!これが今日捕まえたという魔物か!ほほ・・・う。これまた別嬪さんで!ヒレに尻尾に・・・だが足ヒレは二本か・・・コイツはネレイスだな!レアものじゃないか!」
「悪いね魔物のお嬢ちゃん。残念だけど、助けに来た王子様、って訳じゃないんだ」
「・・・もう、時間ですか?」
「まだもう少しありますよ。神もそこまで鬼ではありません」
下りてきたのは、男が3人。いかにも貴族、と言った格好の太った男、同じく貴族であろうが、遊び人といった格好の細身の男、それと教会の人間の格好をした男。
処刑にまではまだ時間がある?じゃあ何をしに来たんだろうこの人たちは。ただ、穏やかな雰囲気ではなさそうだった。
「さて、と。早速だが魔物の嬢ちゃん、どうせ処刑の時間まで暇だろう?人生の最後、どうせなら楽しく終わらせたいよねぇ?おっと、人生って、魔物だから人じゃあなかったか」
「無駄話はいいだろう!一分一秒が惜しい、早く始めようではないか!」
「お二方、約束はお守りくださいね、これが終わったら、きっちり料金はもらいますよ」
「そんなこと分かっておる!金なら用意してあるわ!まったく一々うるさい奴らめ」
「・・・では私は先に上へ上がっています。時間になりましたらまた戻りますので、その時までごゆっくりお楽しみください」
な、何の話をしているんだろうこの人たちは。処刑までの時間?楽しむ?料金?
「おっと、嬢ちゃんが置いてきぼり喰らった顔してやがるぜ?そりゃー訳分かんないよなぁ。よし、どーせ死んじまうんだ、最後にちょっと話を聞かせてやるよ」
細身の男が近づき、腰を曲げる。急に男の顔が目の前に現れ、思わず体を強張らせてしまう。
「この教会ってでけぇよなぁ。もはや一国の軍隊と言えるぐらいの兵士も抱えてるし、活動も活発だ。・・・この資金どこから出てると思う?もちろん、市民からの寄付金もあるがなぁ」
「これほどの規模の教会!それは我々貴族が援助しているから成り立つのだ!貴族から金をもらい、兵隊を強化し、魔物の取り締まりの活動も活発になる!その見返りに我々貴族が何をもらうか!」
太った男が自慢げに話に続きながらゆっくりとこちらに近づき、もう一人の貴族は更に顔を近づける。
頬が触れるか触れないかのところで顔を近づけるのをやめ、耳元で囁くように語り続ける。
「俺たちはな・・・魔物の正体を知ってんだよ。魔物が危険で、人間を喰う生き物だなんて馬鹿げた話信じてるのは、哀れな市民と3流貴族だけ。まぁ教会の奴らも、上層部しか知らないことではあるがな。それで、教会から受ける見返りってのはなぁ」
「っきゃあ!!」
急に胸を鷲掴みにされる。男は強い力で揉みしだきながら、不敵な笑みを浮かべる。
そのまま強引に唇を奪われ、あまりの出来事に茫然と開いていた口内に、男の舌の侵入を許してしまう。
「んん!?んっんうう!!んんっ!!?」
暴力的な舌使いと胸への感覚は、快感と言うよりむしろ恐怖をひき立てるだけだった。
一通り口内を蹂躙すると、わざと糸を引かせるように、ゆっくりと舌を口から引き抜く。
だらしなくポカンと開いたままで固まってしまった口から、唾液が胸へと滴り落ちた。
「貴族に魔物を売り渡す・・・。ヒトの身体なんかじゃ満足できなくなった貴族たちは、このために教会に援助するのさ」
「そんな・・・じゃあ・・・私は・・・」
「もう我慢出来ん!ワシが先にやらせてもらうとするぞ!ああ!この娘はどこから頂こうか!」
後ろに控えてたはずの太った貴族はすでに衣服を全て脱ぎ捨て、全裸の状態だった。
股間のそれはすでにいきり立っており、それを上下に扱きながら、近づいてくる。
「や・・・、やめてください!嫌ですこんなの!やめて・・・近寄らないでっ!」
「魔物は好色なことぐらいワシは知っとるぞぉ!そんなこと言いながら・・・実は期待しているんじゃないのか?」
「違います!私は・・・だって私は!」
細めの男と入れ替わりに太った男が目の前に来てかがむと、何の遠慮も無しに秘部へと手を伸ばし指で弄り始める。
「んっ・・あっ!やめ・・・っ!」
「普通の人間ならまだしも、魔物は体の欲に忠実だからなぁ。・・・どうした?もうすでに濡れてきているようだぞ?」
「嘘っ・・・こんな・・・嫌・・・っ!んあっ!」
片方の胸に舌を這わせ、もう片方を手で揉みしだく。胸を舐められる不快感に震えるも、両手を枷で縛られているため、抵抗という抵抗も出来ない。
体を左右にひねり、必死に不快感から逃げようとするが、その行為は相手の性欲をそそるだけのものだった。
「そんなよがっちゃって、やっぱり魔物は感度良好だねぇ。そんな可愛いと、もっと苛めちゃいたくなるなぁ!」
「っひぁぁぁ!!」
体が大きく跳ね、軽く絶頂に達したことを告げる。乳首とクリトリスを同時に摘まれたことに、後から気がついた。
「あっ、はぁっ、嫌ぁ・・・、お願いっです、やめて、下さい・・・」
「おいおい嬢ちゃん、そんなんじゃソイツを余計に興奮させるだけだぜ?まぁ魔物だから、そういう本能で出来てるんだろうがなぁ」
突然天上と手枷を繋げる鎖を外され、身体を支えていた力を失い床に崩れ落ちる。髪をつかまれ強引に仰向けにされると、ニタリと笑う貴族の顔が目に入った。
「ふぃ、こんだけ濡れてれば十分すぎるぐらいだな・・・時間も限られているのだ、さっさと始めるとするか」
太った男が姿勢を変え、無理やり足を開かせると待ちきれないと言わんばかりに充血したそれをあてがった。
「やだっ!それは!お願いします!他になんでも!」
「・・・そうかー、そんなに嫌なのかぁ・・・流石にそこまで言われるとなぁ・・・」
太った男は俯きためらいの表情で動きを止める。話が、通じたのだろうか。
「ぇ、あ、あの・・・ありがとうご」
「余計に興奮しちゃうよねぇぇぇ!!!」
ずぶっ、と何かが体を貫く音。続いて目に映る男の笑みと、その下に自分の秘部へその全長を埋めた男根。
最後に遅れて、膣を貫く快感と痛みがやってきた。
「っっい、いあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
まったく心の準備が出来てなかった膣内はみちみちと痛みを走らせ、痛みと恐怖から目から涙がこぼれる。
しかし男は気にも留める様子もなく、笑みのままピストン運動を始める。
「いやっ!やめっ・・てぇ!!抜いてっ!やだ!!ああっ!助けてっ!誰かっ・・・アキト・・・さまぁ!!」
「お前相変わらずタチ悪いよな・・・。それで罪悪感どころか興奮を覚えるとか、変態として尊敬するよ」
「ふんっ!これがっ、正しいっ、魔物のっ、扱いであろう!にしてもこの顔!に加えてこの締め付け!上玉じゃないか!これを殺すとはもったいないっ!」
最初は侵入を拒もうと抵抗していた膣も、すぐに愛液で溢れ、滑りをよくする。
ピストン運動を続けながらも話を続ける二人の貴族。最奥部を突き上げられるたびに頭が真っ白になりそうになるが、必死に感情だけでも抵抗する。嫌だ、こんなの絶対嫌だ。魔物だからって、こんな仕打ち・・・。
「っと、そんなこと言いながらも俺もムラムラしてきたな・・・。おい嬢ちゃん、ちょっと胸借りるぜ」
「やぁっ!はっ!んうぅ、胸は・・・あっ!」
男は身体の上に馬乗りになると、胸に男根を押しつける。遠慮なし両腕で胸を掴むと、モノを胸で包み腰を振り始めた。
「ふぁっ!それっ!ダメっ!感じっ・・・ちゃぅぅ・・・っ!」
「ははっ!これはすげぇ!おいコイツ無理矢理パイズリされて悦んでるのか!コイツはとんだ変態だなぁ!」
「おかげで下の様子も良いぞ!さらにきつく締めつけてくれる!これはっ犯しがいがっ、あるなぁ!ただお前の尻で魔物の顔が見れんのが何とも言えんがな・・・」
「いやっ!嫌なのっ、に・・・!こんなにっ・・・!」
気持ち良い そう続けてしまうと、何か大切な物を失ってしまう気がして、寸のところで言葉を飲み込む。
だが徐々にヒトとしての残っている理性、嫌悪感を、魔物としての性欲が上回ってしまう。
不規則に収縮する膣は、今か今かと精を待ちわびているようだった。
「んっ、あんっ!はぁっ・・・ひゃぅっ!」
「大分素直になってきたじゃないか・・・。そうだなぁ、そろそろ一発出しておくか。おい魔物!膣と外どっちに出してほしい?」
「んあぁ!そ、そんなの・・・聞か・・・ないで!ああっ!」
体が求めてしまっている、ナカに出される、その響きだけで脳が蕩けてしまいそうで、
もはや否定することは出来ず、肯定しないようにするだけでも、一杯一杯だった。
「答えれねぇ、ってことは、膣に欲しがってんじゃね?一発膣ににぶち込んでやれよ!」
「ん?んふふふふ、そうかー、それならっ!おいお前!ちょっとそこどけっ!」
「ああ?何だよいきなり・・・」
細めの男がチッと舌うちして体をどかすと、太った男がスパートをかける。
強烈な下半身への快感に、残った理性すら消えかけ、いずれ放たれる精にに身構える。
「ひゃっあっ!んっ!いっ!イっちゃっ!ああっ!!」
「おっ、おっ!イクぞ!しっかり受け止めろよ!」
「イク・・・あ・・・ああっ・・・!・・・・・!?」
瞬間、勢いよく男根が引き抜かれる。
と同時に勢いよく精を放出し、お腹へ、胸へ、顔へと飛び散った。
「はっ・・・はっ・・・え、え・・・?」
男は手で自身のモノを扱きながら、残った精液を私の身体に吐き出した。
何が起こったかが分からず、ただその行為をじっと見つめていた。
「ふぃぃー、やっぱコイツはいい感じ。おっと、良い顔してるじゃないか魔物!どーしたのかなー?物足りなさそうな顔して、膣に出されたかったのかなー?」
「ち・・・違っ!!そんな・・・こと・・・私は・・・・・・」
「そうだよねー!中出しは嫌だよねー?うんうん、想い人がいるんだろ?そりゃー中出しなんかしちゃあ可哀想だもんねー」
「・・・・・・」
「おいおい、嬢ちゃん泣きかけてるぜ?何をするのかと思ったら・・・一思いに膣に出してやればいいものを」
あとほんの一瞬、と言うところでおあずけをくらい、火照った身体は完全に欲情して男性の精を求めていた。
少しだけ戻ってきて来た理性と、本能のままに精を求める身体がに戸惑い、俯く。
身体についた大量の精液が目に入り、もしこれが膣に出されていたならば・・・もっと気持ちよかったのかな、と考えてしまう。
「さて、と。んじゃー俺もヤらしてもらうとするかな。まだ唖然としてるけど、嬢ちゃん準備してくれよ」
「え・・・あ・・・んんっ!!」
入れ替わりに細身の男が再び身体を貫き、ピストン運動を始めた。
さっきよりも一層強まった性欲に、一瞬にして理性を吹き飛ばされそうになってしまう。
「ひあぁっ!!まだっ!熱っ!!少しっは!!やすませて・・・んううっ!」
「えー、そんな物欲しそうな顔してても説得力に欠けるよ嬢ちゃん。あ、そうそう、今度はしっかりどこに出してほしいか言わないと、また外に出しちゃうけど、それでいいかな?」
「えっ!?やっ!!そんっ・・・なぁ・・・!」
「お・・・確かにこれは中々そそるかも・・・」
身体は一層熱さを増し、気持ちが昂っていく。今度こそ膣に欲しい、空っぽの子宮を精液で満たして快感に浸りたい。
そんな欲望が湧き起こり、止めどもなく大きくなっていく。
「おい!もう良いだろう!早く出して交替してくれ!!ワシの時間が無くなるだろうが!」
「もう復活したのかオッサン・・・年の割に元気過ぎるだろ・・・。まぁ時間が無いのも事実だしな、んじゃとっとと終わらせるか。」
不意にスピードが上がり、さらに激しく膣内を掻き回される。
暴力的なまでの快感に気持ちの昂りは最高潮となり、ついには必死に抗い続けた理性を完全に覆い隠した。
「らめっ!これ以上はっ!!おか・・・おかしくなっちゃっ!!」
「はっ・・・はっ・・・で?どこなんだ?どこに出して欲しいんだ?」
「・・・っ!!・・・っ!!!ぁ・・・かに・・・!」
「おお?どこだって?もう少し大きい声で頼めるかな?」
不意に自分の世話を焼き、まるで愛するように接してくれた、誰かの顔が浮かび、そして消えた。
悲しさが込み上げ、涙があふれる。だがそんな感情もすぐに快楽の濁流に沈み、ただ精を求めるだけの身体で、叫ぶ。
「膣に出してください!お願いしますううぅぅっ!!!」
「へっ!なんだ言えるじゃねぇか!それじゃあお望み通りっ!!っらぁ!」
男が叫び、子宮口を貫くと一瞬の間の後、子宮の中に何かがほとばしった。
「ひぅっ!!すごぃ・・・・!いっぱい・・!入って・・・来て!!あっ!!んっくぅぅぅ!!」
中出しの快感で自身の昂りも頂点に達し、強く体を強張らせる。膣が男のモノを最後の一滴まで求めるようにきつく締めあげた。
放たれた精液は子宮を満たし、膣内を逆流し、入りきらなかった分が身体の外へと流れ出た。
満たされた性欲に恍惚としていたのもつかの間、すぐにアキト様のことを思い出した。
体中を支配する満足感と、行為と自分のとった行動の罪悪感が入り混じり、感情にならない感情で頭が一杯になる。
「わ・・・私・・・嫌・・・、こんな・・・あ・・・・・ああ・・・・・・ああああああぁぁぁぁぁぁーーー!!!!!!」―――
―――この短時間に何回犯されただろうか。5,6回目からもう何も考えたくなくなった。
胸を揉みしだかれ、唇を強引に奪われるたびに高なる鼓動。男たちに身体を貫かれ、激しく犯されるたびにかき消される理性。
そして行為が終わり、交替の間の一瞬に襲いかかる罪悪感と嫌悪感。溢れる涙と子種。
そんなことが、永遠と思われるほど続いた。
「ひぐっ・・・お願い・・・もう・・・早く殺して下さい・・・」
「あ?・・・心配しねぇでもあとちょっとだよ。全くもったいねぇ・・・。さて、と。もう2,3回は楽しませてくれよ?」
「やだ・・・!もう気持ちよくなりたくない!やめて!嫌です!もう・・・あっ・・・んあああぁぁ!!」
主張を完全に無視して、すでに精液でぐちゃぐちゃになった膣へ何度目かの挿入を始める。
感度が衰えるどころか、むしろ犯されるたびに高まるこの身体は、痙攣しながらもモノを包み込み、さらなる快感を貪ろうとする。
男が抽送運動を始めようとしたその時、地下牢へと続く階段を下りる足音が聞こえた。
やっとこのサイクルから解放される・・・やっと死ねるんだ、と不思議と安堵の気持ちが湧きあがった。
その安堵の気持ちと疲れから、急激に意識が遠のく。次に目覚めることは無いかもしれない、けれど、それでも良かった。
誰かを愛することは、こんなにも辛いことだったんだ。貴族の男たちが何やら慌てるような素振りを最後に見て、目を閉ざした―――
―――「・・・・・・ぃ・・・!!おぃお前!!おい返事しろよ!この馬鹿!!!」
「ん・・・ぅぅ・・・?その声は・・・アキト様・・・?なんで・・・あっ、てことは・・・ここは・・・もう天国なのかな?」
「よかった・・・・・・・この・・・お前はっ・・・!」
「ほえ・・・?うみゃあ!!!」
まだ寝ぼけた顔のティルを勢いよく抱き起こし、きつく抱きしめる。今までよりもずっと強く、長く。
「本当に悪かった・・・まさかこんな目に遭わされてただなんて・・・すまん・・・俺・・・本当に・・・無事で・・・!!」
「なななっ!えっ!?何が!?」
まだイマイチ状況がつかめていなかったティルは自分の肩越しに部屋を眺める。
そこにあったのは、気を失って床に突っ伏してる貴族が二人と、最初にいた教会の人間の三人。
自分たちの周りの床には、先ほどまで行為の痕がありありと残っていた。
腕の少し力を緩め、ティルと向き合う。
「あ・・・私・・・わたしっ・・・!!」
「大丈夫だ、もう・・・大丈夫。俺がいる、もう絶対に、離れないから・・・」
「あ・・・アキト様・・・うっ・・・ひぐっ・・・ぅ・・・うわあああぁぁぁぁ!!」
状況を理解したティルの瞳から、大粒の涙が零れ落ちる。今度はティルをそっと抱き寄せると、胸元に顔を埋めて泣きじゃくるその頭を、そっと撫でた。
11/07/05 01:02更新 / 如月 玲央
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