連載小説
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第弐章 怪物の愛は金剛石の如く砕けない
現世で最も硬いモノは何ぞ?
ある者は金剛石と答え
また、ある者は信念と答え
また、ある者は正義と答える

あらゆる答えは是であり、否である
答え無き問いに、我は敢えて答えよう
ソレは、愛情と……

―怪物の愛は金剛石の如く砕けない―

「此処が、母さんの実家かぁ……」
俺、礼牙一堂(ライガ・イチドウ)は目前にあるデカい屋敷に圧倒されていた。
なんというか、デカい……それしか言えない。
なにせ、左を向けば先が見えない程に塀、塀、塀。
右を向いても、同じく先が見えない程に塀、塀、塀。
どんだけ、塀が長いんだよ、この屋敷?
んでもって、屋敷自体もデカいのなんのって。
俺の住んでた街の領主様の屋敷もそれなりにデカかったが、この屋敷と比べるとアレだ。
領主様の屋敷が一般家屋に見えちまう程この屋敷デカくてさ、コッチの方が歴史の重みを感じさせる分、威圧感が半端無い。

「はぁ……ちゃちゃっと用事を済ませて、家に帰りたいなぁ」
半端無い威圧感に溜息を吐きながら、俺は懐から手紙を取り出し、ついでに身嗜みに何か問題あると困るから、そっちも整えちまおう。
俺の服は大陸風男性お手伝いさん用の制服、所謂執事服……だが、俺は執事じゃない。
俺の仕事上、動き易いように作られた無駄の無い服を試行錯誤しながら選んだら、自然とコレになっただけだ。
因みに、俺の着ている執事服は全身夕陽みたいに真っ赤で、本来は黒とか灰色とか地味な色が伝統なんだが、俺の趣味じゃないんで、特別に赤くしてもらった。
余談だが、大陸にいた時はしょっちゅうミノタウロスに喧嘩を売られた。
うん、身嗜みは一応俺視点で大丈夫だ。

俺は深呼吸した後、目前にある門―これも充分にデカくて、大陸でも背の高い方の俺でも、首が痛くなる程に見上げなくちゃなんねぇし―をドンドンと叩く。
『……どちら様でしょうか?』
扉越しに聞こえたのは、年季とドスの入った声は警戒心溢れ過ぎ、棘出まくりの冷てぇ声。
「あ、どうも……俺は」
『帰れ』
早っ! まだ名乗ってないよ、俺!
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってくださいよ! 俺は」
『帰れと言ってんのが分からんのか、このキチ○○が』
酷っ! よりにもよって、○チガ○かよっ!
何度か名乗ろうとしたけど、門の向こうの人は聞く耳を持たんようで、帰れの一点張り。
「………………」
『漸く、帰りおったか。全く、○○ガイの相手は疲れるわ』
「………………(プッツ――――ン)」←大事な何かが切れた音
幾等温厚な俺でも、これ以上キ○ガ○呼ばわりされると、キレるぞ。
つぅか、もうキレた。
「門の向こうの人、アンタが悪いんだからなぁぁぁっ!」
俺は魔力を体内で循環させ、充分に高めた魔力を拳に纏わせる。
「オラ、オラオラオラ、オララオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」
怒り爆発な俺の感情のままに、如何にも分厚そうな門を滅多打ちに殴りまくる。
魔力を纏わせた両拳を叩きつけられた門はあっという間にヘコミだらけ、ヘコミだらけになったと思ったら、気持ち良い位に大・粉・砕して、俺が通れる位の大穴が開いた。
門が破られるとは思ってなかったのか、門の向こうの人は驚きで腰を抜かしちまった。
「そ、そんな!? 剛の者でも破れん門を破るとは、貴様何者じゃ!」
「やっと、自己紹介出来る。俺は一堂、礼牙一堂。礼牙一条(イチジョウ)の一人息子だ」

「お前が、一条の息子か……魔導拳を使えるのなら、本物だな」
漸く、屋敷の中に入れてもらえた俺は、真っ先に頭首のいる部屋へと通された。
その部屋にいたのは、一言で言うなら美中年……あと二十歳程若けりゃ、声掛けただけで面食いの女―若しくは同性愛嗜好の男―が容易く釣れそうな顔立ちだ。
「して、一条の息子が何用だ? 儂は我が娘、一条に用があったのだが?」
そう、俺の前にいる美中年は俺の母さん・礼牙一条の父、俺から見れば祖父ちゃんになる礼牙一族現頭首・礼牙一徹(イッテツ)だ。
「話す前に……ちょっと、いいですか?」
「……何だ?」
「俺にとっては、貴方は祖父なんだ。だから、『祖父ちゃん』って呼んでもいいですか?」
「畏まらんでいい。一条の息子ならば、儂は祖父にあたるからな、そう呼んでも構わん。それにしても、儂が『祖父ちゃん』か……光陰矢の如しとは、まさにこの事よ」
ぎこちないけど、穏やかで和やかな家族の会話に、俺と祖父ちゃんはどちらからでもなくクスッと笑った。

「んじゃ、本題。何で母さんじゃなくて、俺が来たのかなんだが……」
畏まらなくていいって言われて、いきなり遠慮無しの砕けた喋り方になっちまった俺だが、コレばっかりは砕けた喋りでも真面目に話さなくちゃなんねぇ。
「実は、さ……母さん、二年前に流行り病で死んじまってさ、代わりに来たんだ。因みに、父さんは持病で五年前に死んだんだ」
「…………っ」
血の繋がった娘の母さんと、祖父ちゃんにとって義理の息子である父さんが死んだ事を、俺は極力感情を乗せないで簡潔に伝える。
そうでもしねぇと、俺は泣きたくなる……悲しいけど、俺、まだ引き摺ってるのよね。
俯いてっから俺は分かんねぇけど、祖父ちゃんも多分俺と同じ顔してるんだろうなぁ……泣きたいけど、泣くのを我慢してる辛い顔だと俺は思うんだ。
「そう、か……一堂と言ったな。一条は、お主の母は、死に際に儂へ何か言っていたか?」
長い沈黙の後、漸く祖父ちゃんが口を開く。
「その伝言を伝える為に、ジパングに来たんだよ。母さんは言ってたよ、『大変だったけど、幸せだったよ』って、さ」
「ふぅむ……幸福に包まれて鬼籍に入る、か。一条は悔い無き、良き生を歩んだのだな」
「あぁ……」
俺の呟きを最後に、また俺と祖父ちゃんの間に沈黙が流れる。
「そ、そう言えば……勝手に手紙を読んだんだけどさ、母さんに頼みたい仕事があるって書いてあったんだけど」
湿っぽいわ、暗いわ、重いわで堪らなくなった俺は、無理矢理明るい声を出して、強引に話題を変えた。
俺の意図を分かってくれたのか……祖父ちゃんは苦笑いしながら、死んじまった母さんに頼もうとしていた仕事の内容を話し始めた。

×××

さてさて、またも昔噺の時間だ、今回は一堂君の両親にまつわる昔噺だぜ。
礼牙一族ってのは、分かり易く言っちまえばな、ジパングの勇者的存在・祓師を代々輩出してきた名門一族なのさ。
祓師達には不殺という暗黙の信条があってね、どんなに暴れん坊でエロい魔物も殺さずに追っ払うだけで、「魔物は悪だから滅殺ぅっ!」と叫ぶ教団は少しは見習いなよ、マジで。
この礼牙一族は有名だぜ? なにせ「東の礼牙、西の天之宮」って呼ばれてる程だし!
但し、礼牙一族の方はジパング限定のマイナー勢力だけどねぇ。

この礼牙一族、魔王様が今の魔王様に代変わりする前から、「魔導拳」っていう独自の戦闘技術を編み上げてきたんだ。
この魔導拳、魔力を体内で循環させて高密度の魔力を作って、その魔力を状況に合わせて拳とか、足とか、頭とかに纏わせて、その部分で殴る! 蹴る! 頭突きする!
実にシンプル・イズ・ベスト! 下手にややこしくするより単純な方が分かり易いだろ、諸君!
おまけに、魔力を纏わせた部分は並大抵の魔法なんかじゃビクともしないし、痛くもない! どうだい、凄いだろ!
まぁ、魔力を纏わせた部分以外は普通に死ぬ程痛ぇよ! オマケに、バフォメットたんやリリムたんみたいな魔法が得意な魔物娘にゃ、どう頑張っても無理! だけどねぇ。

んでな、一堂君のお袋さん・礼牙一条、この礼牙一族次期頭首候補にして歴代随一だって、周りから言われてる位に優秀だったのだぁ!
その拳は城壁も寒天みたいに大・粉・砕! 魔力を纏わせた部分ならリリムたんの魔法も防げちゃう!
アレだね、人類再生謳ったトンデモ爺さん、音速を生身で飛んじゃう黒眼鏡の賢者様。
時間を止めちゃう吸血鬼の兄ちゃん(?)に、前口上が痺れる憧れるぅな剣士兼拳法家とガチンコ勝負させてみたいね!
まぁ、マジで勝負させたら、世界がヤバそうだけど。

んで、一条さんと一堂君の親父さんの馴れ初めはこんな感じさ。
一堂君の親父さんの名前は琉牙影正(リュウガ・カゲマサ)、礼牙一族の分家・琉牙家の長男坊さ。
この人、生まれた時から病弱でさぁ、「種馬にもならん役立たず」って呼ばれてたんだよ、周りの人は酷いねぇ。
そんな駄目駄目だった影正さん、実は一条さんと仲良しだったのさ。
オコチャマ時代の一条さん、実は家のプレッシャーやキツい稽古で泣いちゃう泣き虫さんでね、そんな一条さんを慰めてたのが影正さんなのよ。
当時の一条さんを慰めてた影正さんは保護欲働いて、一条さんにフォーリン・ラブ!
一条さんも、影正さんと一緒にいると何時しか芽生えた恋心でドッキドキ!
いやぁ、両想いって素晴らしいね、ホント。

ところがどっこい、そうは問屋が卸さないんだな、コレが。
影正さんと一条さんが仲良しなのが気に食わない、礼牙家と琉牙家の皆さん。
普段は仲の悪ぅい両者も今回ばかりは結託してね、二人を引き離そうとしたのさ。
礼牙家は一条さんに無理矢理親子並に歳の離れた許婚を決めちまうわ、琉牙家は影正さんを座敷牢送りにするわで困ったもんさ。
困った二人が何をするかなんて、態々聞くのは野暮ってもんよ。
そうさ、家からランナウェイ! ザ・KA・KE・O・TI!
恋する乙女・一条さんは止まらない!
無理矢理決められた許婚の顎粉砕! 影正さんが閉じ込められてる座敷牢を大粉砕!
そんで、二人は追手を撒いて大陸へと駆け落ちして、駆け落ち先の大陸で生まれたのが、一堂君って訳さ。

あ、そうそう……二人が駆け落ちした後の礼牙家は災難続き、跡継ぎは生まれんわ、弟子を跡継ぎにしたらソイツは駄目頭首だわで、困ってたのさ。
一条さんの親父さんである一徹爺さんが礼牙家仮頭首になったけど、奥さんには先立たれ、一徹さんは病気で子供が作れなくなるしさぁ。
琉牙家の方も、影正さん以降子供が生まれなかったし、代わりの跡継ぎが不祥事起こして御家潰しと駄目だこりゃぁな事態になっちゃった。

困り果てた一徹爺さん、頼みの綱は駆け落ちしちゃった一条さん。
「駆け落ちは認めてやるから、帰ってきてくれよぉ」と手紙を出したんだが、その手紙を受け取ったのが両親が死んで失意に暮れる一堂君。
話にしか聞かない一徹爺さんの手紙を受け取った一堂君は、気分転換も兼ねてジパングの土を踏んだって訳さ。

そんじゃ、昔噺はここらで終わりにしようか。
さてさて、一堂君はこれからどんな目に遭うのか楽しみだね、ムフフフフフ……

×××

「ジパングに来て早々、山登りかよぉ!」
現在、俺は礼牙一族の所有地である山を、汗だくになりながら登っていた。
て、いうか……傾斜、キツ過ぎ。
大陸でやってた仕事の都合上、体力には自信があったが、その自信も木端微塵に粉砕だ。
「こりゃ、仕事の前に、へばるぞ、絶対」
汗だくで山を登りながら、俺は祖父ちゃんの話を思い出していた。

『実はな、我が礼牙一族が所有する裏山で、厄介な妖怪が二体も自分の縄張りにしようと争っておる。一条に頼もうとしていたのは、この二体の妖怪の討伐よ』
『厄介な妖怪? 誰だよ、その妖怪って?』
『お主も祓師をやっておるならば、聞いた事はあるだろう? 大百足とウシオニぞ』
『うげっ!? いきなり難易度高過ぎっ!』
大百足とウシオニ……どっちもジパングじゃ、「妖怪」ではなく「怪物」と呼ばれる危険な魔物だ。
俺の知識が確かなら……大百足は強力な淫毒と積極的に男性を性的に襲う凶暴性を持った魔物で、下半身の長ぁい百足部分に巻き付かれたら一発で人生ある意味終了。
なにせ、捕らえた男性を偏執的な愛情と執着心で拘束し続けるから、大百足に捕まったら逃げる事は不可能だ。
ウシオニは異常なまでの自然治癒力と男性を蹂躙する事に悦びを感じる魔物で、おまけに痛覚が鈍ってるから生半可な攻撃は焼石に水以前の問題だ。
更に、アラクネの仲間だから糸を使うんだが、縄みたいに太くて丈夫だし、下手すりゃ、縄みたいな糸で縛られて一生ウシオニの肉奴隷になっちまう。
『儂から見れば、まだまだ新米のお主には荷が重いだろうが……ここは一つ、礼牙一族の末席に連なる者の意地で頑張ってもらおうか』

「意地で、どうにか、なったら、祓師なんて、いらねぇよ……」
愚痴と汗をダラダラ漏らしながら、俺は件の妖怪二体の住処を目指して絶賛山登り中だ。
俺も一応礼牙一族の端くれだし、母さんと父さんの生まれ故郷たるジパングでの初仕事は成功させたいね。

どれ位、山を登ったんだろうか……俺の耳に、ドコン、ズドン、バキィ、と何やら物騒な破壊音が聞こえるんだが。
「……ん?」
視線を前に移すと、前方に何やら濛々と砂煙が立ち昇ってるし、砂煙と破壊音がドンドン俺に向かって近付いてくる……って、オイオイオイオイ! 冗談だろ!
「百音(モモネ)ぇっ! 今日は、オレサマの勝ちだぁっ!」
「ソレは、私の台詞。今日も、私の、勝ちだよ、陸童丸(リクドウマル)」
砂煙と破壊音と共に現れたのは、件の妖怪二体……大百足とウシオニ、現在進行形で絶賛戦闘中かよ!

大百足とウシオニの勝負は、見事に対極だ。
「ドツキの速さ比べといこうじゃないか、百音ぇ! ドォラララララララララララララララララララララララララララァッ!」
「陸童丸、貴方は、攻めが、単調過ぎる。無駄よ、無駄無駄無駄、無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄っ!」
陸童丸って呼ばれてたウシオニは、生来の喧嘩っ早さそのまんまな戦い方で、黒い毛皮に覆われ、鋭い爪を備えた拳を高速で叩き込んでいる。
一方、百音と呼ばれた大百足は傍から見れば防戦一方なんだが、叩き込まれる拳の連打を的確に防ぎ、連打の合間を縫って手刀を打ち込んでいる。
それに、二体の周りの木や岩が勝手に折れる、砕ける、吹き飛ばされる。
多分、二体の拳がぶつかり合った衝撃の余波だろうけど、ありゃ寧ろトバッチリ?
因みに、二体共、足が多いのは伊達じゃないようで、上半身は相手に向けたままの体勢でコッチに向かって器用に全力疾走中……つぅか、上半身と下半身、独立して動いてんのか?
静と動のぶつかり合い……正直、あの二体の勝負は、並の祓師や勇者だとあまりの速さに腕が消えてるって錯覚する程に速過ぎて見えんな、こりゃ。
俺? ガキの頃、母さんに祓師の稽古を受けてる時、目の前のアレとドッコイの速度かつ本気の拳をしこたま貰ったんで見えてるんだな、コレが。
勝負は鼬ごっこの模様……大百足の剃刀じみた手刀を受けてもウシオニは自前の再生力のお陰で効いてないし、ウシオニは大百足に連打が的確に防がれてて決定打が叩き込めない。
横槍でも入んねぇ限り、終わらない勝負だな、アレは……って、冷静に戦況の分析してる暇は無いんだった!

いきなりの遭遇に阿呆面になっちまったが、阿呆面を晒してる時間的余裕は現在進行形でドンドン削れていく。
「ホゥ―――――ハァッ!」
俺は呼吸を溜め、咆吼っていうよりは怪鳥音に近い声を上げて、魔力を一気に循環。
即座に拳に魔力を、ついでに足にも纏わせて勝負に夢中になっている大百足とウシオニへ突貫する。
「其処の妖怪二体ぃ! 喧嘩は他所でやれぇぇぇぇぇぇい!」
「「はぁ?(え?)」」
目にも止まらぬ高速で突っ込み、乱入しようとする俺の声で、勝負に夢中だった大百足とウシオニは漸く俺の存在に気付く。
が、気付くのが遅かったなぁ、この二体は!
「魔導拳 散禍(ハララマガツ)、若干手加減!」
ほんの一瞬だけ動きが止まった二体へと、俺は残像で拳が無数に見える程の速度で魔力を纏わせた右拳を叩き込む。
勿論、妖怪とはいえ女の子、嫁入り前に痕が残るような大怪我なんてさせたくないから、少しだけ手加減してる。
大陸にいた頃、よく「優男」と呼ばれてました。
「んぎゃぁぁぁぁっ!」
「痛たたたたたたっ!」
手加減しても、魔力を纏わせた拳はやっぱり痛いらしく、二体の動きは完全に止まって、俺は勝負の中断に成功した。

「……ふぅ」
「「……………」」
軽く息を吐き、纏わせた魔力を解く俺だが、勝負を中断された二体は俺を恨めしそうな目で睨んでるが、な、何でこんなに睨まれてるんでしょうか?
「……おい、人間」
「んぁ?」
何で睨まれてるのかを考えてると、陸童丸と呼ばれてたウシオニがジト目で、俺を呼んだ。
まぁ、この場で「人間」って呼ばれたら俺だけだし、大方俺を呼んだんだろうけど。
「人間、テメェの名前は?」
「一堂、礼牙一堂だけど……イッタイ、ナンデショウカ?」
あ、あかん……目が怖い、視線で誰か殺せそうな程に怖い。
あまりの怖さに、台詞の後半が棒読みになっちまった。
「一堂、かぁ……テメェ、何て事しやがるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「うぶぉっ!?」
名前を聞いた途端、陸童丸は俺の胸倉を思いっきり掴み、まるで棒切れ振り回すみてぇに俺を振り回し始める。
や、やめれ! 出ちゃう、出ちゃう! 朝飯が下からじゃなくて、上から出ちゃう!
「よくも、よくもぉ! オレサマと百音の喧嘩を、邪魔してくれたなぁ! この落とし前、どうつけんだよ、テメェはよぉぉぉぉぉぉぉ!」
「や、やめ! 落ち、落ちぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
まるで嵐に巻き込まれた小舟宜しく振り回され、意識が落ちそうになる俺だが、陸童丸は俺の状況を無視して振り回し続けてる。
これ以上は不味い、不味いって! 本気で意識が落ちちまう!
「ソレ以上は、止めて、あげれば、陸童丸?」
意識が真っ黒になる寸前、百音と呼ばれてた大百足が俺に救いの手を差し伸べ、陸童丸は俺を振り回すのを止める。
か、感謝
「やるなら、頭を、掴んで、振り回せば?」
しねぇぇぇぇぇぇぇぇ! 何を言ってやがりますか、この百足っ娘はぁ!
「をおう! そりゃ、いいなぁ! 一堂、覚悟しろよぉ!」
然も、陸童丸はヤル気かよ! 勘弁してくれ!
頭掴まれて、ウシオニの馬鹿力で振り回されたら、遠心力で酷い事になっちまう!
「ちょ、ちょぉぉっと待ったぁぁぁぁ! 俺を振り回す前に、何で喧嘩を止められた事を怒ってるのかを説明してくれ!」
流石に齢一八で死んだ両親とあの世で再会なんてしたくねぇ俺は、陸童丸に振り回される前に説明しろと叫ぶ。
俺の命が賭かった叫びに、百音と陸童丸は顔を見合わせ、
「まぁ、テメェの言い分も尤もだなぁ」
「確かに、そうね」
取り敢えず納得してくれたようで、陸童丸は俺の胸倉から手を離す。
と、取り敢えず助かっ……
「んじゃ、オレサマの住処で話してやらぁ。百音もそれでいいよなぁ?」
「構わない」
てねぇぇぇぇぇぇぇぇ!

×××

「んで、何でオレサマと百音が喧嘩してんのかだっけか?」
陸童丸の住処―洞窟、というよりはフラスコ状の縦穴―に連れていかれた俺は、陸童丸の糸で縛られ芋虫状態。
陸童丸は器用に脚を折り畳んで地べたに座り、百音は勝手知ったる他人の家という感じでとぐろを巻いている。
「……その前に質問がある」
「あんだよ?」
そう、何で二人が喧嘩してたのかを聞く前に、俺には聞きたい事がある。
それは
「何で、俺は亀甲縛りで縛られてんだよ!」
な・ん・で! お・れ・は! こんな変態じみた縛り方で縛られてんだよぉ!
俺の叫びじみた質問に、百音が微笑みながらグッと親指を立てる。
「そうか、お前の趣味か、そうなんだな! さっさと普通に縛り直してくれ!」
「貴方の、質問。確か、私と、陸童丸の、喧嘩の、理由」
「無視かよ!」
こんの蟲娘ぇ、俺の訴えを無視して話を進めんじゃねぇよ!
あ、俺、上手い事言った? 自分で言っときながら寒っ!

一人漫才やってる間に、百音が何故この山で陸童丸と勝負してたのかを話し始める。
曰く……二人は元々別の場所からやってきた妖怪で、場所を変えた理由は周りの同族達が旦那を(物理的に)捕まえて幸せな生活してて、肩身が狭かったからだそうな。
闘争心溢れるウシオニの陸童丸は兎も角、大百足の百音は同族の中でも武闘派らしくって、四六時中陸童丸と勝負してた所為で、二人揃って旦那を捕まえ損ねたっぽい。
心の中で馬鹿だなぁと俺は呟くが口には出さん、言えば恐怖小説の主人公以上の酷い目に遭いそうだ。
二人は勝負しながらジパングの彼方此方を彷徨い、辿り着いたのが礼牙屋敷の裏山。
そんで、二人は長年に亘る喧嘩の決着をつけるついでに、この裏山の支配権を決める為に勝負してたそうで、先に一〇〇勝した方が勝ちという事らしい。
「んで、オレサマと百音の喧嘩の結果は九九勝九九敗。テメェが邪魔しなけりゃ、因縁の喧嘩と山の支配権がまとめて片付いたんだよ」
「あぁ……そりゃ、済まなかった」
二人の喧嘩の理由と止められて怒ってた理由は分かったんだが、正直、本当にそんなのは余所でやって欲しいぜ、全く。
お陰で、ジパングでの初仕事が難易度高過ぎな仕事になっちまったじゃねぇか。
「兎に角、テメェには喧嘩の邪魔した落とし前をつけてもらわねぇと、なぁ?」
「そうね……因縁の、決着。この山の、支配権。二つ、まとめて、片付く、一世一代の、大喧嘩。その邪魔をした、罰を、受けて、貰わない、と」
な、何だ? たった今、物凄い悪寒が背中を走ったぞ?
それに、二人の目が妖しく潤んできてるし、甘い匂いが漂ってきてるような気が……
「この喧嘩の落とし前、テメェのマラでつけてもらおうじゃねぇか!」
「賛成。それに、一堂、凄く、美味しそう……ジュルリ」
は、はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?

×××

「ハァ、ハァ……美味そうな、精の匂いだなぁ」
「うふふ……どんな、味なのか、楽しみ」
い、いかん……完全に二人は俺を餌として見てる!
逃げろと本能が訴えるが、生憎今の俺は陸童丸の糸で縛られてて身動きが取れん。
ジリ、ジリと俺の恐怖を煽るように、これからするであろう行為を想像した恍惚の笑顔でゆっくりと近付いてくる百音と陸童丸。
「逃げない、で」
縛られた状態で器用に後退する俺だが、百音の百足脚が俺を巻き取って、うつ伏せだった俺をひっくり返すと同時に、先端の顎肢を服越しに俺の股間に噛みつかせる。
顎肢に噛まれた途端、全身から力が一気に抜けて、俺の愚息があっという間に(性的に)戦闘準備万端の状態になる、が……
い、痛い! 股間の糸が勃起した俺の息子にキツく食い込んで、めっちゃ痛い!
コレは、新手の性的なイジメか!
「百音よぉ……お前が変な縛り方すっから、面倒が増えたじゃねぇか」
そう言いながら、陸童丸は息子に食い込む糸を自分の爪で切り、ついでと言わんばかりに、俺のズボンをひん剥いた。
「ほっほぉ……」
「…………」←凄く嬉しそうに笑っている
そして、外へと晒された俺の息子に、二人は感嘆の声を漏らしながら凝視するが、俺にはある意味拷問だ。
あぁ、そうだよ……デカいんだよ、俺の息子は。
実用したら別の意味で女性が泣きそうなデカさで、大陸にいた頃共同浴場でしょっちゅう同僚に「お前のチ○コは破城鎚か!」と涙ながらに言われた事がある。

「ぐひひ……んじゃ、いっただきまぁす❤」
「抜け駆け、駄目」
とうとう地獄―ある意味、天国か?―の時間の始まりだ。
「あむ…れる、れろ……ちゅる…じゅずう、じゅる……ん、んぶぅ」
「はむ……れろ、んむ…じゅるる……」
俺の息子に顔を近付けて、図った訳でもなく息子へ同時に舌を伸ばし、飴を舐めるように俺の息子を舐め始める。
勝負もそうだったが、二人の責めも対極だ。
陸童丸は本能の赴くままに荒っぽく、がっつくように……亀頭や雁首といった、男の弱点を無意識かつ重点的に責めたて、荒波じみた強い快感が俺を追い詰める。
百音は気性そのままにねっとりと、味わうように……敏感な部分を取られてるから自然と竿を責めるが、鈍い快感が締め技のように俺を襲う。
静と動、二つの快感が絶妙に混ざり合い、絡み合い、童貞の俺には正直キツ過ぎる。
然し、俺も礼牙一族の端くれ! 耐えろ、俺! 礼牙一堂は男の子ぉ!

「あぁ……一堂のマラァ、ビクビク震えてらぁ❤」
「可愛い、もっと、食べたい、一堂の、コレェ❤」
舐めている間に完全にメスの顔になった二人は、ビクビクと震える俺の息子を見て、責めを更に加速させる。
「んぶ、んぼ…れる、くぷ……くぽ、じゅずず、んひゅぅ……」
陸童丸は先端を咥え、舌で執拗かつ荒々しく舐め回し、さっきよりも段違いに強い快感が嵐の如く俺の中で荒れ狂う。
「あもっ……んむ、んふ…じゅる、じゅずる」
百音は睾丸を咥え、まるで上質なワインを味わうように口の中で転がし、重々しくも甘美な快感が夜闇のように包み込む。
びえぇぇぇ! 礼牙一堂は男の子だから、助平な女の子には弱いんですぅぅ!
い、いかん……気持ち良過ぎて、このままじゃ、清水の舞台から飛び降り自殺!?
そう思った瞬間、二人は自分が責めている部分を同時に甘噛みして、俺は唐突な鋭い快感で限界を向かえてしまう。
―ビュルルゥゥゥ――――!
「んむぅっ❤」
「あ、ひゅるひ、ひくほうふぁふ」
まるで噴水、間欠泉かと言わんばかりに俺の息子は精液を勢い良く噴き出し、丁度亀頭を責めていた陸童丸の喉を直撃する。
突然の噴出に目を丸くする陸童丸だが、妖怪の本能の成せる業か、蕩けた顔を晒しながら濃ゆい精液を嚥下する。
一方、睾丸を責めてた百音は精液を一人占めする陸童丸に、非難の声を挙げるが、せめて睾丸から口を離して喋ってくれ……地味に気持ち良くて、堪らんから。
「んぶぁ」
流石に噴出の勢いに負けたのか、陸童丸は咥えていた先端を解放すると、精液の雨が二人の顔を、髪を汚していく、って……噴き出る精液の勢いは衰えないんだが!
どんなけ出してんだよ、我が息子よ! コレも大百足の淫毒の効果なのかぁ!?

「はぁ……うんまいなぁ、コレェ」
「私にも、頂戴」
漸く噴出の止まった息子だが、既に二人は俺の精液でドロドロ。
陸童丸の青銅色の肌、闇色の髪の対比で精液の白が映えるもんだから、俺、出したばっかなのに劣情掻き立てられまくり。
百音の場合、快感の紅と精液の白で彩られた顔が凄く煽情的で、色白の肌を精液が垂れる様も何とも艶かしい。
ゼリーじみた精液を浴びた二人は、顔や髪にかかった精液を手で拭っては艶かしく舐め、それでも足りないのか、互いに舌を伸ばして互いの顔とかにかかった精液を舐め取る。
百合咲き乱れる光景を傍観してた俺だが、このまま二人の玩具になる俺じゃない!

かけられた精液を舐め取るのに夢中な二人を尻目に、俺は自分でも驚く程に魔力を体内で高速循環させ、高めた魔力を一気に放出する。
急速な魔力の高まりを感じて、漸く俺の行動に気付いた二人だが、時既に遅し。
「んなぁ!?」
「嘘!」
驚く二人が見たのは、俺の両隣に浮かぶ巨大な腕……魔導拳 飛威(トビオドシ)、魔法には射程上不利という弱点を補うべく編み出された、魔力で作られた腕だ。
魔力で作られた巨腕は、巨大な岩をも握り潰す剛力と複雑に絡み合った糸を解く繊細さを併せ持っている。
亀甲縛りされた糸を解いた俺は、性的な玩具にされた怒りを籠めた目で驚く二人を睨み、百音の毒でふらつく身体を無理矢理立たせて飛威を構える。
構えても下半身丸出しだと、格好つかねぇな……
「「……っ!」」
蕩けた頭でも身の危険を本能で感じ取った二人は、快感の余韻を感じさせない機敏な跳躍で壁へと張り付き、上にある出口へ逃げようとする。
だが、本調子の時と比べりゃ格段に動きが鈍く、俺は飛威を飛ばして二人を捕まえる。
「こんのっ! 離せ!」
「ん、くぅ!」
振り解こうと藻掻く二人だが、オーガも容易く抑え込む飛威の剛力の前じゃ、快感の余韻の残る身体での抵抗は無いに等しい。
さぁ、俺の反撃の始まりだ!

「は、離し、んむぅっ!」
飛威の右腕で掴んだ百音を引き寄せた俺は唇を奪い、たっぷり唾液を彼女の口へ流し込む。
「んん、んむ、ん――――――っ」
俺が唾液が流れ込むと同時に、只でさえ興奮で紅くなっている百音の顔は更に赤味を増し、その身体は痙攣を起こしたかのようにビクビクと震える。
大百足の致命的弱点、ソレは人間の男性の唾液……本来、大百足の毒は持ち主である本人には効果が無いが、人間の男性の唾液と混ざると魔法変化が生じて、別の毒となる。
その毒は大百足ですら抗体を持たない新種の毒となり、その毒は地獄の業火宜しく彼女の内側から強烈な快感を齎すのだ。
たっぷりと唾液を流し込んだ俺が唇を離すと、鈍色の橋が百音の唇と俺の唇を繋ぐ。
百音の顔は最早林檎か酔っ払いのように真っ赤に染まり、彼女の身体は内から焦がす情欲の業火で小刻みに震えている。
「ら、め…らめ、なのぉ……わたひ、きもひよふぎてぇ、おかひくなふ」
……ちょっと流し込んだ量が多かったのか、百音は呂律の回らない口調で喋り、下半身の百足脚も力無くダランと垂れている。
蕩けきった顔が可愛いなと思いつつ、人と百足の境目にある札(?)を捲ると、其処には洪水を通り越して滝のように蜜が溢れた百音の大事な場所。
早く入れてくれと訴え、誘うように震える秘所を見た俺は、思わず生唾を飲み込んだ。

俺は飛威の拘束から百音を解放し、彼女を地べたに寝っ転がして
「い、ひ―――――――――!」
蜜がダダ漏れな百音の秘所に、息子を一気に挿入した。
……入れた時、百音の秘所から血が流れ出たが、今は無視しよう。
一気に入れられた衝撃で百音は絶頂を迎えたようだが、俺は問答無用で腰を振り始める。
往復する度に蜜が撹拌されて泡立ち、百音の秘所はキツく俺の息子を締めつけてくる。
「らめ、らめぇ! ひょんな、はげひく、うごはれはら……んむぅ!」
破瓜の痛みを上回る強烈な快感で悶える百音の唇を再び奪った俺は、もっと彼女の乱れる様を見たくて唾液を流し込む。
「んむ、んちゅ…ぷはっ……もう、らめ! きもひよふぎへ、おばかに、なっひゃう!」
さっきよりも多めに流し込んだ唾液の所為か、只でさえ滝みたいに溢れ出ていた蜜が更に溢れ、溢れきった蜜が潤滑油の役割を果たして、動き易くなる。
ソレに乗じて俺は腰を振る速度を上げ、ケダモノじみた動きで百音の秘所を蹂躙する。
強烈過ぎる快感に百音はだらしなく舌を伸ばし、ドロドロに蕩けきった顔を晒し、内側を侵す淫毒との相乗効果で彼女の身体は一突き毎に細かな絶頂を迎えている。
尤も、その強烈過ぎる快感で百足脚が悶え、暴れ、俺が物理的にめっちゃ危険なんだが。

ふと横を見ると、拘束したままだった陸童丸が息を荒げ、興奮で潤んだ目で食い入るように見ており、百音の秘所に入れてる俺の息子に物欲しげな視線を送っていた。
「んひぃ! うひょ、まだ、おおひくなふの!?」
誰かに行為を見られているという現実が俺の興奮を増幅させ、それが息子を更に滾らせ、更に大きくなった息子に百音は驚きを露にする。
更に滾った息子で百音を蹂躙してる内に、俺の息子は限界だと訴えるようにブルリと震え
「か、は…あぁお―――――――!」
百音の秘所の奥を叩きつけるように俺の欲望の権化が爆発し、百音は獣じみた矯声と共に絶頂を迎えて、そのまま気絶してしまう。
白目を向き、涎を垂らし、快感の余韻で小刻みに震える百音の秘所から息子を抜いた俺は、未だに滾っている息子を見せつけるようにしながら陸童丸へと近付く。
「あわわわ……」
寝た子を起こしちまったと後悔してるようだが、それでも陸童丸の視線は滾りっぱなしの俺の息子に釘付けだった。

「ま、待った! 悪かった! だからよぉ!」
視線は滾りっぱなしの息子に向けつつも陸童丸は逃げようと悶えるが、俺の息子を弄んだ落とし前はちゃんとつけてもらおうか!
飛威の左腕を力強く引き寄せ、興奮で紅くなった陸童丸の顔が俺の間近に迫る。
「んむ!? っ…んぅ、んむぅ……っ……ぁ…ぁぁ」
間近に迫った陸童丸の唇を強引に奪い、がっつくように俺は舌を絡ませる。
無論、さっきまで童貞だった俺は、性行為の技術を知らない。
だから、メラメラと燃える欲望のままに、陸童丸の舌を、口腔を舐め回す。
「んぷぁ……い、ち、どぉ……」
息苦しくなるまでキスしてから唇を離すと、其処には完全に蕩けた顔の陸童丸がいた。
本来、ウシオニは生粋の嗜虐趣味者、こうして後手に回るのは初めてだろうから、未知の快感で頭が上手く働かないようだ。
ボゥッとしている陸童丸を拘束から解放して、俺は彼女の秘所を隠す牛の頭骨を外す。
濃ゆい精液をたらふく飲んで、百音とのケダモノじみた性行為を見てたからか、陸童丸の秘所は百音とは負けず劣らずの濡れ具合。
俺は陸童丸の手を引き、所謂「対面座位」って形で俺の息子を彼女の秘所へと入れた。

「い、にゃぁぁぁぁ❤」
入れたはいいが………視線を結合部に移すと、其処には真っ赤な筋が秘所から垂れてる。
百音もそうだったが、陸童丸も処女だった。
まぁ、婿探しよりも勝負を優先してたからだろうけど、やっぱり今は無視の方向で。
一気に陸童丸の奥へ侵入する息子、さっきまでの気性の荒さを感じさせない可愛らしい声で喘ぎ、その声を聞いた俺は彼女を抱きしめて腰を突き上げる。
「いき、なり、激しいぞぉ! ふぁぁ! 一堂、一堂ぉ❤」
俺は腰を突き上げ、陸童丸を喘がせる。
肌がぶつかり合う音、いやらしい水音、陸童丸の喘ぎ声がフラスコ状の縦穴の中に響き、否応無く俺の興奮は鰻登りだ。
「駄目ら……オレサマ、一堂のマラで駄目になるぅ! オレサマのお○んこ、とろとろに溶けちまうよぉ❤」
やめれ、そんな快感で蕩けきった顔で、劣情煽るような台詞を言うんじゃねぇ。
「きゃうん! 凄いぞ、一堂ぉ! オレサマの中で、もっと大きくなってるぅ❤」
ほれみろ、息子が反応して、また大きくなっちまったじゃねぇか。
大きくなっちまったモノはしょうがねぇ、陸童丸の可愛い喘ぎ声を聞きたいから、もっと突き上げるとすっか!

そう思った俺は腰を突き上げる速度を上げ、一気に陸童丸を責めたてる。
一突き毎に陸童丸は可愛い喘ぎ声を上げ、その喘ぎ声を聞いて突き上げる速度を上げる俺。
俺の息子は壊れた絡繰仕掛けのように、一心不乱に陸童丸の秘所を突き上げる。
「駄目ら、駄目らぁ! もう、イッちまうよぉ……オレサマ、一堂のでイッちまうよぉ❤」
そうか、そっちも限界か、俺の息子も限界だ。
「ふぁ、一堂のマラ、大きくなったぞぉ! 出すのか、出すのかぁ! それなら、一緒に、一緒にぃぃ❤ あぉ―――――――――――ん!」
陸童丸が絶頂を迎えた瞬間、呼応するように俺の息子が精液を彼女の奥へと噴き出した。
まるで狼の遠吠えみたいな声を上げた陸童丸は力尽き、俺に寄りかかるように倒れる。
どうやら、気持ち良過ぎて気絶したみたいだな。
が、俺の息子は三回も長い射精をしたにも関わらず、未だに元気だったりする。
愚息の自己主張に呆れつつ俺は気絶した陸童丸をどかし、ぐったりしてる百音へと近付く。
此処に鏡があったとしてソレを覗いたら、多分俺は危ないのを通り越して赤裸々に危険な目をしてるんだなぁと、確信していた。

×××

「……………………」
ナ、ナンテコトヲシテシマッタンダ、オレハ。
漸く、百音の毒が抜けた俺は周りの惨状を見て、現在絶賛自己嫌悪中だ。
俺の横には心底幸せそうな、というか恍惚で緩みきった顔で気絶している百音と陸童丸。
二人の秘所からは、一体どんなけ注ぎ込めばこうなるんだよって自分に問い詰めたい程に精液が溢れてる。
えぇと、俺が憶えてる限りじゃ……多分、一人一〇回くらい出してて、ソレが二人分だから、に、二〇回!? どんなけ出したんだよ、俺!
自分の絶倫っぷりにゴロゴロと地面を転がり、
「何やってんだ、一堂?」
「病気?」
気付けば、意識を取り戻した百音と陸童丸が俺を見下ろしてた。

「すいませんでしたぁぁぁぁっ!」
意識を取り戻した二人に、俺はジパング伝統の謝罪法・土下座で謝った。
良くて一発、二発、下手すりゃ俺が死ぬまで殴るのを止めないと見越しての土下座だが、一向に痛みが来ない。
恐る恐る顔を上げると、其処には
「なぁに、謝ってんだよ、一堂! オレサマ達は気にしてねぇぞ」
「寧ろ、感謝」
と、眩しい位の笑顔の二人がいたが、百音の感謝ってのはどういう意味だ?
「漸く、出来た、私の、旦那様。だから、感謝」
何で俺が感謝されるんだと聞こうとしたら、予め聞かれるのが分かってたのか、顔を紅くしながら百音が先に答える。
が、その答えがとんでもない爆弾発言だと気付いたのは、数秒後だった。
旦那? 誰が? 誰の?
俺が? 百音の? 旦那?

「はいいぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
な、ななな、何ですとぉ! 俺が百音の旦那だとぉ!
んな、重要な事、俺の意思を無視して決めるなよ!
「おい、百音! 一堂はオレサマの夫だぞ! 勝手に決めるな!」
「む……陸童丸、貴方こそ、勝手に、一堂を、旦那様に、しないで」
ちょっと待て、陸童丸! お前もか! お前も俺の意思を無視して、俺を旦那認定かよ!
まぁ、確かに俺は二人の処女を貰っちゃったよ。
だけど、いきなり旦那は過程をすっ飛ばし過ぎじゃねぇか!?
二人の爆弾発言に混乱する俺を無視して、百音と陸童丸は一触即発の闘志を燃やしながら睨みあっている。
が、睨み合ったのもほんの少し……百音と陸童丸はいきなりニヤリと笑う。
「ま、いっか! オレサマとお前の仲だ、一堂はオレサマとお前の共有の夫にするか!」
「そうね……そうした方が、無駄な、喧嘩を、しなくて、済みそう」
って、今度はそういう結論に飛びますか!
混乱してる俺は蚊帳の外、百音と陸童丸は何やら夜の営みの相談をしてるしさ!
畜生! この世に神はいないのか!

どうして、どうしてこうなったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

俺の叫びは、陸童丸の住処に空しく響くだけだった。

×××

さぁさぁ、どうでしたかな?
肉体派祓師と喧嘩三昧だった二体の妖怪の物語は?
折角なんで、三人のその後を教えてあげようじゃないか。

共有の旦那様にされちゃった一堂君、一応仕事は成功したから一徹爺さんに報告したよ、百音ちゃんと陸童丸ちゃんの共有の旦那様になっちゃった事も含めてね。
まぁ、当然っちゃ当然かね……礼牙一族の次期頭首様の奥さんが妖怪なんて駄目だろと、魔導拳を学ぶ見習い祓師達は猛反対さ。
だ・け・ど、一徹爺さん、意外と頭が柔らかくって、「先祖代々、脈々と受け継がれてきた魔導拳を受け継ぐなら、妖怪が嫁でも構わない」って言っちゃったのよ。
現頭首の一徹爺さんの鶴の一声には誰も逆らえないし、嫁になれるんなら頑張りますって、百音ちゃんと陸童丸ちゃんも言っちゃった。
お陰で一堂君、百音ちゃん、陸童丸ちゃんの三人は、一族公認の夫婦になりましたとさ。

んで、この三人、礼牙一族の祓師としてジパングのアッチコッチを行ったり来たり。
百音ちゃんと陸童丸ちゃんってば、大好きな旦那様を守る為に一生懸命戦うもんだから、一堂君も「二人が俺の嫁で良かった」なんて思っちゃったのさ。
ちょいと、ちょいと、一堂君? 認めちゃったら、其処で試合終了だよ?
ま、本人達が幸せなら、我輩は構わないけどね!

あ、そうだった、そうだった。
礼牙一族頭首になった一堂君、百音ちゃんの毒で毎晩ハッスルしてたら子供が出来たのよ。
百音ちゃんとの子供が一人、陸童丸ちゃんの子供が一人、合わせて二人も出来ちゃった。
一族頭首になって、子供が出来た事を大陸にある両親のお墓に報告したら、夢に一条さんが出てきてさ、「このスケコマシ」って怒られてやんの。
今の一堂君、頭首としての仕事をこなしつつ、跡継ぎになる百音ちゃんと陸童丸ちゃんの子供に魔導拳の稽古をつけてるぜ。
「大変だけど、今は凄く幸せだ」って、一堂君は言ってたなぁ。

ま、こんな所かな?
それじゃ、次のお話を用意しておくから、それまで諸君は楽しみにしてくれたまへ。
それでは、バイバイキーン!
12/08/31 00:22更新 / 斬魔大聖
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■作者メッセージ
東方魔恋譚 第弐章は大百足とウシオニでお送りしました。
第参章はカラステングの予定ですが、東方プロ○ェクトとは関係ありませんので悪しからず。

語り部のトークのノリについての説明です。
目次と本編の所々で出てくる語り部ですが、そのイメージは弁士。
弁士とは、登場人物の声や効果音等が無く、画像だけの映画であるサイレント映画の上映において、映画の進行に合わせて説明をする人達の総称です。
因みに、このサイレント映画、昭和初期辺りなので、かなり古いです。
語り部(筆者である私)=弁士
読んでくれる皆様=映画の観客
といった感じで執筆したのですが、自己顕示欲の現れと言われてしまい、
今、この場を借りて補足説明をさせてもらいました。
本文の方はコレからも精進していきますので、よろしくお願いします

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