-ダンピールの章3-
レブルは草原を駆けていた。
村から借りた馬はストリークに到着したときには既に限界で、借りた馬の為に使い潰す事もできなかった。
『泥人形』からの情報は、ライラが教団に雇われた殺し屋に捕縛、または殺されている可能性があるらしいというものだった。
既にライラの店である『デレさせ屋』は確認しに行ったが、ライラの姿はなく代わりにか1枚の手紙が部屋においてあったのだった。
内容は以下の通り。
『この店の女は預かった。日が暮れるまでに南の森へと来なければ女の命は保障しない』
もうライラが殺されている可能性も考慮しているが、自分を殺すまでは人質として使えるだろうと判断してまだ無事と思ったレブルは日が暮れるまでに南の森へと辿り着かなければならない。
「……無事でいろよ」
日が傾き太陽が赤くなってくる頃になると、レブルは漸く南の森に到着した。
その後もライラを探して暫く森の中を駆け回ると、足元に最近のもの…それも複数人もの足跡を発見した。
足跡から見るとそれは鎧の足跡のようにも見えたレブルは、その足跡を辿っていき、森の洞窟へと辿り着いた。
「There to capture all the eyes of a hawk in the sky.(鷹の目、空に有りて全てを捉える。)」
手の平に魔方陣を形成し、そこから光の鳥を放って洞窟内へと飛ばせてから静かに目を閉じる。
これは以前使った遠見の魔法。
しかし実際には魔力で身体が構築された鳥を使い魔として放ち、自分と鳥の視界をリンクさせてその場から遠くを見るという魔法である。
しかし視界をリンクさせるには本人は目を閉じなければならなかったり、更に取り自身が光っている為に暗闇ではかえって目立ってしまう。
以上、幾つか弱点も存在するが、レブルが習得している遠見の魔法はこれだけしかなかった。
鳥の視界を通して見た洞窟の中は、薄暗く、じめじめとした雰囲気だ。
そして見つけた。
「…そろそろ夕暮れだぞ。このまま『死人喰らい』がやって来なかったらどうするんだ?そもそも罠だと分かっていて来る馬鹿がいるのか、『愚者』殿?」
「来るかどうかなんて知らん。来なかったら別の餌を撒いて別の手段でやればいいし、この女は犯して捨てておけばいいだろ」
「うぅ……!?」
紫色の髪をした青年と、その周りに居る教団騎士が3名。
そして縛られて地面に転がされて呻いているライラ。
頭数はそれほど多くないが、今出てきた『愚者』という異名はレブルも捨て置けなかった。
『愚者』とは、名のある殺し屋だがその標的を魔物やそれに関する人間にのみ絞り依頼を受ける人間の男の名だ。
その理由は明らかになっておらず、更には対象を殺すためには如何なる方法も躊躇しないという残虐性もあわせて持っている。
「いや、しかし犯すとなると、その堕落は主神様への冒涜に……」
「見た所魔物でもないしいいんじゃねぇか?人間の癖に魔物と共に居る背徳者への罰ってことでな」
このままではライラの身が危ないと判断したレブルはそろそろ行動に入ろうとしたとき、『愚者』と呼ばれた青年が動いた。
「それに奴はもう来てるさ」
「っ!?」
レブルが気が付いた時には魔法で放った光の鳥に対してナイフが突き刺さった。
「コソコソ隠れてないで出て来いよ、『死人喰らい』」
バレているならば仕方がないので、レブルは洞窟の中へ入っていくと、中は既に戦闘態勢に入っている教団騎士と『愚者』が居た。
教団騎士の1人はライラに向けて剣を突きつけている。
「いらっしゃい、『死人喰らい』さんよォ。俺はフェルド・ハーディス、『愚者』って呼ばれてる」
「……」
「早速で悪いが、アンタには素顔を晒して貰おうか?最低でも顔だけは確認しておけって言われてるからな」
「むぐっ……!」
ライラが猿轡の下から抗議しようとしたが、教団騎士の剣が更に喉元に突きつけられるとライラは押し黙ってしまう。
暫くレブルは黙って動かなかったが、諦めたのか兜に手をかける。
兜が外されると、レブルの素顔が明らかになりそれを見たフェルドはほくそ笑んだ。
「ほいほい、それじゃ素顔を見せてくれたお礼に『死人喰らい』さん、アンタには俺に先に攻撃する権利でもやるよ」
突拍子もない提案にその場に居た全員が目を見開いて凍りつく。
「『愚者』殿!?一体何を…!」
「いいから黙ってろって、さあ早くしろよ」
あまりにも怪しい誘いに、レブルもすぐには行動に移せなかった。
(コイツ…俺に先に仕掛けさせて如何する気だ?一撃を確実に耐え切れる方法でもあるのか?それとも誘いで俺に反撃する心算か……どちらにしてもここでチャンスを逃したら面倒だな)
レブルは決心し、腰の剣を抜いてフェルドに近づき、一閃する。
「That my body is like the mist, catch can not match.(我が肉体は霞の如く、捉える事は叶わない。)」
ブオッと剣が振るわれた所からフェルドの身体が霞のように実体の無い物になり消えていく。
「なっ……!?」
レブルは背後に気配を感じ、振り返ろうとした瞬間に後頭部を鈍器のような物で殴られた。
兜を外していたレブルはそれが直撃し、殴られた場所から血を噴出して倒れた。
「ヒャハハハハ!何処斬ってんだよ馬鹿が!」
狂気を宿した笑みを浮かべて手に持つ鉄の棍棒を肩に担ぐとフェルドはライラの傍に来て、猿轡を外し、髪の毛を掴んだ。
「クカッ!クカカカカカッ!大変だなァ?アンタのヒーローはもう戦えないらしいぞ?」
「ぷはっ!レブル!しっかりしてくれレブル!」
ライラは必死にレブルに呼びかけるが返事はなくピクリとも動かない。
何度も呼びかけるが返事がないことからライラの表情は絶望に染まる。
「そ、んな……」
「さっきので死んだって事はねぇだろ。確実に殺しておかないとなァ」
フェルドは再び倒れているレブルの傍に来ると手に持っている鉄の棍棒を両手で持って思い切り振り上げる。
「ま、待て!待ってくれ!止めてくれっ!」
「物を頼める立場だと思ってるのかァ?安心しろよ、後でお前も同じ所へ送ってやる」
振り上げられた棍棒は、容赦なくレブルの首へ振り下ろされる。
「あばよ、『死人喰らい』!」
「止めろー!」
洞窟にライラの声が響き、キィン!と鉄が石の地面を叩いた。
フェルドが振り下ろした棍棒はレブルではなく地面を叩いていたのだ。
一瞬にしてレブルが消えた事に、ライラやフェルド、教団の騎士も目を見開いて唖然としていた。
「アァ…?何処に行ったんだ『死人喰ら』……!」
突如として叫んでいた声が止まる。
フェルドの口からは、言葉の代わりに大量の血液が吐き出された。
それもそうだろう、フェルドの腹部からは、何処からともなく飛んできたレブルの短槍が刺さっていた。
「テメェ、どうやって……」
洞窟の岩陰からレブルが姿を現す。
「簡単な事だ。お前の使った姿写しの魔法を地面に倒れている間、気絶したフリをして詠唱していた。それだけだ」
「使えたのかよ……姿写しの魔法……!」
今しがたフェルドとレブルが使ったのは姿写しという魔法の類で、自分の姿を魔力の塊に投影して作った偽者を映し出す魔法だ。
「姿写しの魔法は幻影。攻撃する際には必ず本体が現れる。だからお前が油断するまで待っていたんだ」
「……ハッ…ふざけんなよ?」
フェルドは膝を着いて倒れるが、その瞳はレブルを睨んでいた。
「テメェが!テメェ如きが俺を見下すんじゃねェよ!」
叫ぶ事で傷口から血が噴出すが、フェルドは興奮を収める事はない。
「俺は、人間より強い魔物を嵌めて殺す事だけが生きがいだったんだよォ!その関係者を殺すときも、態々面倒な手を使って―――アァ?」
フェルドが言い切る前に、レブルは腰の剣を斬り上げてフェルドを斬り裂いた。
己の傷の大きさからもう助からないと悟ったフェルドは、親指を立てて下に向けてクイッと動かした。
「地獄で、待ってるぜ……『死人喰らい』」
「…そうか」
血を流しながらバタリと倒れたフェルドが死ぬのを見届けると、レブルはライラを人質に取っている教団騎士に告げる。
「去れ、さもなくばお前達を殺す」
最初はうろたえていた騎士達だが、血を流して威嚇されているのに怯んだのか、顔を見合わせるとライラを放り出してそのまま走り去っていく。
「ひ、ひぃ……」
「振り返るな!さっさと戻って報告だ!」
騎士達が洞窟を出たのを確認すると、レブルは深いため息を吐いてライラの傍に腰を降ろした。
「無事か?」
「う、うん…ボクは大丈夫だよ。レブルこそ頭の傷…」
レブルの頭の傷は思いの外大きいのか、流れる血も多い。
縄を解かれて自由になったライラはすぐにレブルの傷を見るが、突然胸の奥が高鳴った。
(うっ…!?今のはまさか……)
「…どうかしたか?」
「……ううん、なんでもないよ」
少しだけフラつきながらもレブルは立ち上がり、ライラはそんなレブルに肩を貸すようにして支える。
「……」
「……ごめんなさい」
レブルは何も言わずに支えられていたが、ライラは今回攫われてしまったことの謝罪を漏らす。
自分のせいで傷を負わせ、教団の騎士に顔が割れてしまった。
その事がライラに罪悪感を持たせていた。
だがレブルは表情を変えずに空いている手でライラの頭をそっと撫でてやる。
「レ、レブル……?」
「気にするな…お前には世話になってるから、その恩返しだと思ってくれ」
優しく気遣うレブルに対して、ライラは頬を赤く染めて顔をそらした。
(もう…そんなに優しくされたら、もっと好きになっちゃうよ……)
おまけ
「レブル!その傷はどうしたっ!?」
「イオ…これはちょっと教団とのゴタゴタでな」
「教団だとォ!?私の愛しのレブルに手を出すことがどれほど愚かか私が教えてやるぅううううううううう!」
「ま、待てイオ!落ち着け!」
「ぬがぁああああああああああ!止めるなレブルゥウウウウウ!」
「ちょ、ちょっと!ボクの家で暴れないでよ!」
-Rebel- 反逆者と魔物娘
-ダンピールの章3- 了
村から借りた馬はストリークに到着したときには既に限界で、借りた馬の為に使い潰す事もできなかった。
『泥人形』からの情報は、ライラが教団に雇われた殺し屋に捕縛、または殺されている可能性があるらしいというものだった。
既にライラの店である『デレさせ屋』は確認しに行ったが、ライラの姿はなく代わりにか1枚の手紙が部屋においてあったのだった。
内容は以下の通り。
『この店の女は預かった。日が暮れるまでに南の森へと来なければ女の命は保障しない』
もうライラが殺されている可能性も考慮しているが、自分を殺すまでは人質として使えるだろうと判断してまだ無事と思ったレブルは日が暮れるまでに南の森へと辿り着かなければならない。
「……無事でいろよ」
日が傾き太陽が赤くなってくる頃になると、レブルは漸く南の森に到着した。
その後もライラを探して暫く森の中を駆け回ると、足元に最近のもの…それも複数人もの足跡を発見した。
足跡から見るとそれは鎧の足跡のようにも見えたレブルは、その足跡を辿っていき、森の洞窟へと辿り着いた。
「There to capture all the eyes of a hawk in the sky.(鷹の目、空に有りて全てを捉える。)」
手の平に魔方陣を形成し、そこから光の鳥を放って洞窟内へと飛ばせてから静かに目を閉じる。
これは以前使った遠見の魔法。
しかし実際には魔力で身体が構築された鳥を使い魔として放ち、自分と鳥の視界をリンクさせてその場から遠くを見るという魔法である。
しかし視界をリンクさせるには本人は目を閉じなければならなかったり、更に取り自身が光っている為に暗闇ではかえって目立ってしまう。
以上、幾つか弱点も存在するが、レブルが習得している遠見の魔法はこれだけしかなかった。
鳥の視界を通して見た洞窟の中は、薄暗く、じめじめとした雰囲気だ。
そして見つけた。
「…そろそろ夕暮れだぞ。このまま『死人喰らい』がやって来なかったらどうするんだ?そもそも罠だと分かっていて来る馬鹿がいるのか、『愚者』殿?」
「来るかどうかなんて知らん。来なかったら別の餌を撒いて別の手段でやればいいし、この女は犯して捨てておけばいいだろ」
「うぅ……!?」
紫色の髪をした青年と、その周りに居る教団騎士が3名。
そして縛られて地面に転がされて呻いているライラ。
頭数はそれほど多くないが、今出てきた『愚者』という異名はレブルも捨て置けなかった。
『愚者』とは、名のある殺し屋だがその標的を魔物やそれに関する人間にのみ絞り依頼を受ける人間の男の名だ。
その理由は明らかになっておらず、更には対象を殺すためには如何なる方法も躊躇しないという残虐性もあわせて持っている。
「いや、しかし犯すとなると、その堕落は主神様への冒涜に……」
「見た所魔物でもないしいいんじゃねぇか?人間の癖に魔物と共に居る背徳者への罰ってことでな」
このままではライラの身が危ないと判断したレブルはそろそろ行動に入ろうとしたとき、『愚者』と呼ばれた青年が動いた。
「それに奴はもう来てるさ」
「っ!?」
レブルが気が付いた時には魔法で放った光の鳥に対してナイフが突き刺さった。
「コソコソ隠れてないで出て来いよ、『死人喰らい』」
バレているならば仕方がないので、レブルは洞窟の中へ入っていくと、中は既に戦闘態勢に入っている教団騎士と『愚者』が居た。
教団騎士の1人はライラに向けて剣を突きつけている。
「いらっしゃい、『死人喰らい』さんよォ。俺はフェルド・ハーディス、『愚者』って呼ばれてる」
「……」
「早速で悪いが、アンタには素顔を晒して貰おうか?最低でも顔だけは確認しておけって言われてるからな」
「むぐっ……!」
ライラが猿轡の下から抗議しようとしたが、教団騎士の剣が更に喉元に突きつけられるとライラは押し黙ってしまう。
暫くレブルは黙って動かなかったが、諦めたのか兜に手をかける。
兜が外されると、レブルの素顔が明らかになりそれを見たフェルドはほくそ笑んだ。
「ほいほい、それじゃ素顔を見せてくれたお礼に『死人喰らい』さん、アンタには俺に先に攻撃する権利でもやるよ」
突拍子もない提案にその場に居た全員が目を見開いて凍りつく。
「『愚者』殿!?一体何を…!」
「いいから黙ってろって、さあ早くしろよ」
あまりにも怪しい誘いに、レブルもすぐには行動に移せなかった。
(コイツ…俺に先に仕掛けさせて如何する気だ?一撃を確実に耐え切れる方法でもあるのか?それとも誘いで俺に反撃する心算か……どちらにしてもここでチャンスを逃したら面倒だな)
レブルは決心し、腰の剣を抜いてフェルドに近づき、一閃する。
「That my body is like the mist, catch can not match.(我が肉体は霞の如く、捉える事は叶わない。)」
ブオッと剣が振るわれた所からフェルドの身体が霞のように実体の無い物になり消えていく。
「なっ……!?」
レブルは背後に気配を感じ、振り返ろうとした瞬間に後頭部を鈍器のような物で殴られた。
兜を外していたレブルはそれが直撃し、殴られた場所から血を噴出して倒れた。
「ヒャハハハハ!何処斬ってんだよ馬鹿が!」
狂気を宿した笑みを浮かべて手に持つ鉄の棍棒を肩に担ぐとフェルドはライラの傍に来て、猿轡を外し、髪の毛を掴んだ。
「クカッ!クカカカカカッ!大変だなァ?アンタのヒーローはもう戦えないらしいぞ?」
「ぷはっ!レブル!しっかりしてくれレブル!」
ライラは必死にレブルに呼びかけるが返事はなくピクリとも動かない。
何度も呼びかけるが返事がないことからライラの表情は絶望に染まる。
「そ、んな……」
「さっきので死んだって事はねぇだろ。確実に殺しておかないとなァ」
フェルドは再び倒れているレブルの傍に来ると手に持っている鉄の棍棒を両手で持って思い切り振り上げる。
「ま、待て!待ってくれ!止めてくれっ!」
「物を頼める立場だと思ってるのかァ?安心しろよ、後でお前も同じ所へ送ってやる」
振り上げられた棍棒は、容赦なくレブルの首へ振り下ろされる。
「あばよ、『死人喰らい』!」
「止めろー!」
洞窟にライラの声が響き、キィン!と鉄が石の地面を叩いた。
フェルドが振り下ろした棍棒はレブルではなく地面を叩いていたのだ。
一瞬にしてレブルが消えた事に、ライラやフェルド、教団の騎士も目を見開いて唖然としていた。
「アァ…?何処に行ったんだ『死人喰ら』……!」
突如として叫んでいた声が止まる。
フェルドの口からは、言葉の代わりに大量の血液が吐き出された。
それもそうだろう、フェルドの腹部からは、何処からともなく飛んできたレブルの短槍が刺さっていた。
「テメェ、どうやって……」
洞窟の岩陰からレブルが姿を現す。
「簡単な事だ。お前の使った姿写しの魔法を地面に倒れている間、気絶したフリをして詠唱していた。それだけだ」
「使えたのかよ……姿写しの魔法……!」
今しがたフェルドとレブルが使ったのは姿写しという魔法の類で、自分の姿を魔力の塊に投影して作った偽者を映し出す魔法だ。
「姿写しの魔法は幻影。攻撃する際には必ず本体が現れる。だからお前が油断するまで待っていたんだ」
「……ハッ…ふざけんなよ?」
フェルドは膝を着いて倒れるが、その瞳はレブルを睨んでいた。
「テメェが!テメェ如きが俺を見下すんじゃねェよ!」
叫ぶ事で傷口から血が噴出すが、フェルドは興奮を収める事はない。
「俺は、人間より強い魔物を嵌めて殺す事だけが生きがいだったんだよォ!その関係者を殺すときも、態々面倒な手を使って―――アァ?」
フェルドが言い切る前に、レブルは腰の剣を斬り上げてフェルドを斬り裂いた。
己の傷の大きさからもう助からないと悟ったフェルドは、親指を立てて下に向けてクイッと動かした。
「地獄で、待ってるぜ……『死人喰らい』」
「…そうか」
血を流しながらバタリと倒れたフェルドが死ぬのを見届けると、レブルはライラを人質に取っている教団騎士に告げる。
「去れ、さもなくばお前達を殺す」
最初はうろたえていた騎士達だが、血を流して威嚇されているのに怯んだのか、顔を見合わせるとライラを放り出してそのまま走り去っていく。
「ひ、ひぃ……」
「振り返るな!さっさと戻って報告だ!」
騎士達が洞窟を出たのを確認すると、レブルは深いため息を吐いてライラの傍に腰を降ろした。
「無事か?」
「う、うん…ボクは大丈夫だよ。レブルこそ頭の傷…」
レブルの頭の傷は思いの外大きいのか、流れる血も多い。
縄を解かれて自由になったライラはすぐにレブルの傷を見るが、突然胸の奥が高鳴った。
(うっ…!?今のはまさか……)
「…どうかしたか?」
「……ううん、なんでもないよ」
少しだけフラつきながらもレブルは立ち上がり、ライラはそんなレブルに肩を貸すようにして支える。
「……」
「……ごめんなさい」
レブルは何も言わずに支えられていたが、ライラは今回攫われてしまったことの謝罪を漏らす。
自分のせいで傷を負わせ、教団の騎士に顔が割れてしまった。
その事がライラに罪悪感を持たせていた。
だがレブルは表情を変えずに空いている手でライラの頭をそっと撫でてやる。
「レ、レブル……?」
「気にするな…お前には世話になってるから、その恩返しだと思ってくれ」
優しく気遣うレブルに対して、ライラは頬を赤く染めて顔をそらした。
(もう…そんなに優しくされたら、もっと好きになっちゃうよ……)
おまけ
「レブル!その傷はどうしたっ!?」
「イオ…これはちょっと教団とのゴタゴタでな」
「教団だとォ!?私の愛しのレブルに手を出すことがどれほど愚かか私が教えてやるぅううううううううう!」
「ま、待てイオ!落ち着け!」
「ぬがぁああああああああああ!止めるなレブルゥウウウウウ!」
「ちょ、ちょっと!ボクの家で暴れないでよ!」
-Rebel- 反逆者と魔物娘
-ダンピールの章3- 了
12/08/11 17:46更新 / ハーレム好きな奴
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