連載小説
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メロンゼリー(ご好評につき再入荷!)
 わたしの名前は、広上 乙女(ひろかみ おとめ)。
昔はめずらしかったみたいだけど、今は結構どこにでもいる『マモノムスメ』です。
しゅぞくはバブルスライム…あわがプクプク出るスライムです。
え?バブルスライムはくさいって言われてる?…そんなことないもん!
毎日キレイにしてるし、パパもママも、近所のおばさん達からも、メロンみたいでいいニオイって言われてるんだから!ウソだと思ったらかいでみて!ほらほら、いいニオイでしょ?

 …でも、こんなにいいニオイなのに、男の人が来てくれないのがわたしのナヤミ。
なんでかって言うと、答えはカンタン。
うちの近所の男の人たちが、みーんな他のマモノムスメさんとケッコンしてるから!
探しに行こうにも、歩くのニガテだからあんまり遠くまで行けないし、このいいニオイも、いいニオイだけど、男の人をつかまえるコウカはあんまりないみたい。
学校にも通ってたけど、けっきょく卒業するまで男の人はつかまらなかった。
そういう時、パパとケッコンしちゃう子もいるみたいだけど、うちのパパはママにゾッコンだし、わたしもパパとケッコンするつもりはない。
昔はわたしも、パパの汗とか食べてたけど…大きくなったら、自分だけの男の人がほしくなっちゃったの。…ホント、ほしい。

 でも!今度こそは、男の人が見つかるかも!
なぜなら今日は、あたらしい学校の入学式!あたらしい学校なら、あたらしい男の人もいっぱいいるよね!

 …と、思ってたんだけど…

「まったく貴女達、大事な入学式で居眠りとは何事ですかッ!!」
「うぇぇ…ごめんなさい…」

 あんまりながーくてタイクツで、ついでにあったかかったから、ちょっとウトウトしてたら…帰りのあいさつが終わったあとに生徒会長に呼び出されて、同じようにウトウトしてた人たちといっしょにすんごく怒られちゃった…。
わたしと同じマモノムスメなのに、生徒会長ってすんごくマジメな人みたい。

「おね〜ちゃ〜ん、いつもお説教長いよぉ…あたしらもう十分反省したよお…」
「反省した人ならそんな態度はとりません!
 まったく…妹だけじゃなくて、貴方達もですよ!自分はまだまだ子供だって思ってるかもしれませんけど、あと何年もしない内に大人になるんだから、少しは真面目に…」

 しかも、この生徒会長のお説教もまた、すんごく長いの!よくそんなに言葉が出てくるなぁって思っちゃう。わたしと同じスライムなのに、ダークスライムって、そんなに頭がよくなるの!?
わたし達といっしょに怒られてる妹さんは、いつもこんな風にお説教されてるみたい。
姉妹なのに、全然ちがう感じ…フシギだなぁ。
…なんて思ってたら、妹さんがわたしに話しかけてきたの。

(ヒソヒソ…)「ごめんね〜。あたしのお姉ちゃん、アヌビスさんみたいにマジメでうるさくて…悪い人じゃあないんだけどね…」
「え?ううん、怒ってないけど…お姉さんとあなたって、あんまり似てないね…」
「ウチのお父さんとはすっごく似てるんだけどね〜。お父さんもあんな風にマジメすぎで、昔は生徒会長もやってたんだって。
 なのに魔物娘を2人もお嫁さんにしちゃうんだから、人生って不思議だよねぇ…」
「えっ、2人とケッコンしてるの?」
「うん。だからあたしとお姉ちゃんも、お母さんは別々なんだ」
「そうなんだぁ。お母さん達って、仲はいいの?」
「もちろん!この間も、夜にお父さんと三人で…」

こらーッ!!私語はやめなさい!聞こえてるわよ!!」
「「はぁ〜い…」」

 けっきょくその後も、ずーっとお説教されちゃった。
「親御さんが迎えに来た人もいるから、待たせないように」って先生が止めてくれなかったら、もっともっと続いてたかも…。
しかも周りを見ると、もう男の人といっしょにいるクラスメイトも沢山いた。
新入生が男を探すなら、入学式はゼッコーのチャンスだって聞いたことがあるのに、みごとに失敗しちゃった…がっかり。
でもその代わり、いきなりお友達ができたのはうれしかったから、まあいいかな。お姉さんの生徒会長のことは、ちょっぴりニガテになっちゃったかもだけどね…



 家に帰ってのんびりして、パパが帰ってきたら、テレビを見ながら皆で晩ごはん。
その時に、さっそく入学式と友達の話をしてみた。

「…でもね、生徒会長もカワイイところがあるんだって。
 その子が言うにはね、生徒会長、自分のクラスの隣の担任の先生のことが好きみたいで、毎日写真ながめてて…」
「へぇ、そうなの!結婚できるといいね、その生徒会長♪」
「だよね!そしたら怒られなくなるかも…」
「ハハハ、そうなるといいな。
 確かに厳しいよなぁ…入学式なんて、寝るのが普通なのにな。
 パパもそういう時は、いっつも寝てたぞ!」
「ママは学校行ったことないから分からないけど…それは普通じゃないんじゃない?」
「いやいや、だって辛いんだぞ?長い話をただ座って聞くのって!
 おちび達もそう思うよな!?」
「おもーう!」「ZZzz…」
「あはは!ツルヒメったら、もうねてる…
 やっぱりわたし達スライムだから、長い話はニガテなんだよぉ」
「まあ、ママもお話は苦手だけど…注意された事はちゃんと直さないと、人にきらわれちゃいますよ?」
「はーい!」
「よしよし、えらいぞ乙女♪
 …ところでユウリ、この豚汁の芋…いや、こんにゃく?これって何なんだ?」
「あ、それ?
 ふふふ…実は今日、スーパーで魔界食材フェスタがあってね。美味しそうだったからつい買っちゃったの。
 スライムの王国でとれた『まかいも』なんだって。どう?」
「不思議な感じだけど…豚汁にはよく合ってて、旨い!」
「ありがと♪やっぱり豚汁にして正解だったわ。
 まだまだいっぱいあるから、どんどん食べてね♪」

 そんなところで見てた番組が終わって、ニュースが始まった。

『ニュースをお伝えします。
 本日午前、かつて国内大手の……であった……社が、労働基準法違反容疑による家宅捜索……その悪質な企業体質が明らかになりました』

 ニュースって、ムズカシイことばが多くてニガテ…
今日の入学式と同じくらい、タイクツでねむたくなっちゃう。

『同社では……年前から……残業やハラスメント……地方支社で常態化して……と、元社員からの通報があり……数日後、それらの違法行為を主導していたとされる……氏が失踪、自宅には「そんなに奴隷が欲しいなら、自分が奴隷になればいいとは思わない? 中身のないプライドだけの男を徹底的にへし折ってみたいので、この男はもらっていきます♪ 黒き森の民より」との書置きが残されており、警察では今も行方を……』

「あの会社、そんな事になってたのか…」
「昔、あなたが働こうとしていた会社でしたっけ?」
「そうそう。…やっぱりあの時、お前を信じて内定蹴っといてよかったよ。
 そうでなきゃ、今頃どうなってたか…乙女たちもまだ生まれてなかったかもな…」

『舞桜党政権が積極的に取り組んできた労働環境の改善政策により、これまでも多数の企業が取り締まりの対象となってきましたが、多くの人々は余暇と給与の劇的な向上に喜びの声を上げており、同じく力を入れている少子化対策にも期待が…』

「ニュースつまんなーい…べつのみせてー!」「ZZZZzz…」
「そうだなタカミ。『どうぶつシャングリラ・ザナドゥ』見るか?」
「みるー!!」
「ふふ…タカミちゃん、本当に動物好きね♪」
「うん。おっきくなったら、ワンちゃんみたいになるの!」
「あはは…なりたいのかぁ。
 タカミもスライムだから、そのうちワンちゃんの形になら、なれるかもね?」

 なんでもないコトなのに、みんなでお話してると楽しくて、パパ以外はみんな、あわがプクプクいっぱい出ちゃう。
うちは、「家族みんな仲良しでいいねー」って、周りの人にしょっちゅう言われるほど仲良しみたい。
じっさい、パパもママも、妹のタカミもツルヒメも大好き!…なんだけど…
…さいきん、ひとつだけ、ちょっとだけメイワクに思う時がある。



「さて!ユウリ、始めるか」
「うん。来て…あなた♪」

 そう、ケッコンしたマモノムスメたちが毎日してる、えっちの時間だ。
妹たちはもう寝てるし、パパたちの部屋にはカギがかかってて、音も聞こえないようになってる…けど、どうしてものぞいちゃう。スライムだから、のぞけちゃう。
たぶんパパもママも気づいてるけど、気づいてないフリしてくれてるみたい。
 わたしは毎晩、それを見ながら…好きな男の人ができた時に同じコトしてもらうのをモーソーして、自分で色んなことしてる。まだ小っちゃいおっぱいやおまんこを、むにむに、ぐちゅぐちゅって。さいきんは、部屋の前においてある棚の角でおまんこをこすると、もっとよくなることを覚えちゃった。

「んんっ…ちゅくっ…ふぅ…ふぅ…」

 まずキスして、おたがいの舌をぺちゃぺちゃからませながら、スライムゼリーとパパのダエキを混ぜ合わせて、いっしょに口うつしで少しずつ食べる。
それから、ママの大きなおっぱいの谷間に鼻をくっつけて思いっきりニオイをすいこむのが、パパのやり方。

「スゥーッ……はぁぁぁ……。やっぱり、お前の匂いが一番だよ」
「ありがと♪でも、乙女たちのは?」
「三人とも2番目だな。みんな同じくらいいい匂いだ。
 もっとも…俺が嗅いで興奮するのは、お前の匂いだけだけどな。ほら…」

 ニオイをかいだだけで、パパのおちんちんはもう、パンパンで風船みたいになっちゃってる。ここから、いきなり始めちゃうこともあるんだけど…今日はその前に、ニオイをもっと楽しむことにしたみたい。
ママはベッドの上で四つんばいになって、パパがその下に入る。
そしてママは、パパのカオにおまんこを押しつけながら、パパのおちんちんをめいっぱいにくわえる。友達が言ってた、『シックスナイン』のかっこうだ。
パパはママの、ママはパパのニオイをハナと口でいっぱいに楽しめるから、とくにお気に入りらしい。

(あ、見えるようにしてくれてる…?)

 ママのお尻がこっちを向いて、パパがなめてる所がよく見える。
あんな風に舌が動いてるんだ…。
好きな男の人ができて、あんな風になめられたら…そう考えながら、同じように指を動かしてみる。こうして、くるっくるって…

「あっ、あ……!」

 お、思わず声出しちゃった!?うぅ、はずかしい…聞こえてないよね!?
でも今の、気持ちよかった…あんな風に動くといいのかな。
何度も何度もしてるから、パパも自然に『テクニシャン』になってるのかも。
こういうのを大好きな人にされたら、きっともっと気持ちいいんだろうなぁ…
モーソーしてたら、いつの間にかまた、指でいじりだしちゃってた。

(…ッ、……!………ん……)

 必死に声はガマンしてるけど、指は止まらない。
のぞいて見えるパパとママの様子と、頭の中のモーソーをまぜ合わせて、どんどんコーフンしちゃう。
あっ、今、ふたりともこしがビクビクした。いっしょにイってるんだ。
それからちょっと休んだら、パパがベッドのふちに座って、ママがその上に…いよいよ本番だ。
だんだんパパのおちんちんが入ってきて…ああ、ふたりとも気持ちよさそう…
ママはさっきからすんごくあわが出てて、もう部屋じゅう、パパが大好きなママのニオイでいっぱい。
こんなふたりだけのラブラブ空間でえっちするなんて、一体どんな気分なんだろう?
わたしと好きな男の人だけの世界で、見えるのは大好きな人の気持ちよさそうな顔だけ。あんな風に指をからませて、愛してるよ、大好きだよっておたがいにいっぱい言いながら、わたしの指なんか比べものにならないくらい大きくて気持ちいいおちんちんで、ずんっ、ずんって、気持ちいいところを全部つつかれちゃうんだ。
ぷくぷく出てるあわも、おちんちんでプチプチってつぶされて、大好きな人のおちんちんをもっと気持ちよくするんだ。そしたらもっとおちんちんの出し入れが早くなって、もう体がドロドロに溶けちゃうくらい気持ちよくて…それで最後、シャセイするしゅんかんに、いっしょに思いっきりさけぶの。

「ああああああああーーーーーーーッ!!!」

 その声は、パパとママがさけんでたのか、わたしが自分でさけんでたのか、もうよくわかんない。
パパとママがまたいっしょにイった時、わたしも目の前がまっ白になって…スライムなのに、こしがぬけちゃうくらいの気持ちよくて、しばらく床にのびちゃってた。

 …でも、こんなに気持ちよくても…しばらくボーっとしてたら、急に、すんごくさびしくなってくる。
パパとママはもう、次のえっちを始めてるけど…わたしのとなりには、まだだれもいない。
……さびしい。
ひとりえっちの後は、いつもこう。男の人がほしいほしいほしいってなって、おなかもすいて、苦しくて悲しくなるんだ。
そのせいで、ベッドにもどって泣いちゃったこともある。そんな日の朝には、パパとママがぎゅーって抱きしめてくれるけど…それじゃ、ぜんぜん足りないの。
こんな思いをするのはわかってるのに…毎日、のぞかなきゃいいのに、のぞいちゃう。メイワクだっていうのも、わたしのただのワガママだってわかってる。
でものぞいちゃう。ひとりえっちしちゃう。わたしがマモノムスメだからなのかな。

「…はぁ…」

 むねがモヤモヤする。
べちょべちょになっちゃった床ふいたら、もうねよう…



 そして次の日。

「おはよ〜!」
「おはよぉ…」

 たまたま同じ時間に家を出て、同じ道を通るみたいで、昨日の子といっしょに学校に行くことになった。
…でもわたしは、ちょっとボーっとしてる。
けっきょくゆうべは、全然ねむれなかったから…ねむい…
今日からはじめての授業なのに、これじゃまた、ウトウトして怒られちゃうかも…

「乙女ちゃん、眠いの…?」
「うん、よく眠れなくて…」
「ふ〜ん…。…あ、もしかして!」
「?」
「お母さん達のエッチ見てたとか?」
ぶくっ!!? な、なんでわかったの!?」

 びっくりして、いっしゅんであわがすごい出ちゃった…

「う〜んとね…
 あたしもそうなんだけど、乙女ちゃんも、夜おそくまで勉強したりテレビ見たりするタイプじゃないでしょ?同じスライムだしね。
 昨日は入学式だったんだから宿題なんて出ないし、何よりあたしも、よくお母さん達のエッチしてるところ覗いてるし、それかなって」
「す、すごい…」

 きのうは似てないなーって思ってたけど、やっぱりこの子と生徒会長って姉妹なんだなぁ。性格はぜんぜんちがうのに、すんごい頭いい…ちょっとうらやましい。
これだけ頭がよかったら…

「…そうだ!
 ねえ…そういう時って、いつもどうしてるの?」
「え?」
「わたしいっつも、パパとママのえっち見てたら、ひとりえっちしたくなっちゃって…
 で、男の人が欲しくなって、苦しくなって、眠れなくなっちゃうの。
 そういう時ってどうすればいいか…知ってる?」
「…う〜ん…たしかに辛いよねぇ。あたしもわかるよ。
 そういう時、あたしは『精補給剤』使ってるけど…」
「うええっ!?あの、すんっっっっっごいマズイやつ!?」
「…うん」
「え、ひょっとして、あれ毎日のんでるの!?」
「毎日じゃあないよ、一回飲めばしばらくもつから…」
「でものんでるんでしょ。ツラそう…」
「うん…だからあたしも、昨日の入学式でいい人見つけたかったんだけど…そっからは、乙女ちゃんも知っての通り。もう、お姉ちゃんたらズルいよね!自分は好きな人がいるからって!」
「わたしたちのせいでもあるけど…やっぱりちょっとキビしいよね…」
「そうでしょ?
 …でもね、まだチャンスはいっぱいあるはず!」

 そういうと、その子はえへんと胸をはった。

「乙女ちゃん。この学校って、みんな部活か委員会に入らないといけないのは知ってる?」
「そうなの?」
「うん。もうちょっとしたら、集会で先生が知らせてくれると思うけど…うちはお姉ちゃんいるから知ってるんだ。
 よっぽど女子ばっかりのところでもない限り、部活には相手のいない男の人もきっといる!そして部活を決める前に、もちろん見学期間もある!
 気に入った部活をがんばりつつ、男の人とお近づきに!これだよ!」
「おぉー…!!」
「それに、部活の前にだって、出会いはあるかもしれないしね。
 この学校の男女の数はほとんど同じ…よっぽど好みがうるさくなければ、乙女ちゃんにも、あたしにも見つかるはずだよ!」
「すごい…!すんごいよ!!
 それ聞けて、やる気出たかも…ありがとう!!」

 今までのなやみに希望が見えてきた。やっぱり、相談してよかった…!

「お互い、がんばろうね♪」
「うん!」

 ケツイをあらたにしたところで、ようやく学校にとうちゃく。
歩くのはニガテでおそいけど、こうして友達とお話しするにはちょうどいいかな。
よし…今日からがんばるぞッ!!





 そしてあっという間に、部活の見学きかん。
いや…あっという間でもないかも。あのマズイおくすりなめて、がんばったんだから!
こんどこそ男の人をゲットするの!ついでに、部活もおもしろそうだし♪

「…って言っても、どこがいいかなぁ…」

 スライムだからうんどうはニガテだし、やっぱり『ブンカケイ』のところかな。
よし、まずはいろいろ見てみなくちゃ!



「あ、そこの貴女!書道部に入らない?」
「しょどうぶ?」

 部室の前では、呼び込みしてる人もいる。
わたしもさっそく、女のセンパイに声かけられちゃった。

「そう!きれいな字を書くのはもちろん、カッコいい字を書いたり、みんなで一緒にひとつのでっかい字を書いたり…面白いよ!大会にだって出たんだから!」
「…あ、しってるかも!テレビで見たことある!」
「そうでしょ、そうでしょ!
 しかもね、顧問の先生…貴女と同じスライムで『ぬれおなご』っていう種族なんだけど、エライ書道家の先生の娘で、教え方もすっごく丁寧でわかりやすいの!どう!?」

 すんごいグイグイくる…こういう人、ちょっとことわりづらいなぁ。
でも、それだけこの部活が大好きっていうことなんだろうな、きっと。

「じゃ、じゃあ、ちょっとだけ…」
「ありがとー!!」

 けっきょく、ついてきちゃった。
部室にはいろんな字がならんで、みんなしずかに書いてる。
さっきはあんなにさわがしかった呼び込みの人も、書きはじめると、ウソみたいにしんけんになっちゃった。
そんなに面白いのかな…?
あ、でも、女の子が多いけど、男の人もちらほらいるみたい。男の人もやるってことは、やっぱり面白いのかな。

「うふふ…よかったら、書いてみますか?」

 じっと見てたら、きれいな女の人が、しょどうをタイケンさせてくれた。この人がコモンの先生みたい。
『ぬれおなご』っていうスライムは、わたしも知ってる。和服で、はだもまっ白で…服がぬれてなかったら、ホントに人間の女の人みたい。
それに、ふでの持ち方とか力かげんとか、ホントにていねいに教えてくれる。
これだけステキな人なんだもん。きっと男の人にももてるんだろうなぁ。いいなぁ…

「できた!」
「うん、よくがんばりました♪」

 なにか書きたい字をって言われて、バブルスライムだから『泡』って書いてみた。
いつもは、自分でもヘタだなぁって思うような字しか書けなかったけど…先生の言うとおりに書いてみたら、すごくキレイに書けちゃった!
…ちょっと面白いかも。
でも、見てて気づいたけど…ここにいる男の人って、もう相手がいるみたい。
はじめはしずかに書いてるように見えたけど、よく見たら、みんな女の人とすごくキョリが近いの!肩を抱きあったりして、あれゼッタイ恋人同士ってかんじ…ここはダメかぁ。
でも書くのは面白かったし…しょどう部…いちおう、かんがえておこう。

 で、ほかにもいろいろ、ブンカケイの部活や委員会を(誘われて)のぞいてみた。

「好きな人がいるなら、やっぱり胃袋をつかむのが一番!料理部に入らない?」

「お掃除が好きなら美化委員会!そのいい匂い、学校中に届けてみない!?」

「はいはい、そこの貴女。演劇部もおススメだと存じますよ。うふ♪」

「パソコン部に…?禁止はしてないけど、スライムに電気製品は危ないかも…」

 でも、あんまり気になる部活は見つからなかった。
女の子ばっかりだったり、しょどう部みたいに面白そうだと思った部活では、もうカップルがいっぱい…
もうすぐ見学きかんも終わりだから、ダメもとで、運動部ものぞいてみることにした。

 まず見に行ったのは水泳部…でも、いきなり失敗。
海の中からこの学校に通ってるシー・スライムの姉妹が、この部活でアイドルみたいに人気だって聞いたからのぞいてみたけど…よく考えたら、シーじゃないスライムって、水に入って大丈夫なのかな?
そういえばわたし、いらないからって、これまでお風呂もシャワーも使ったことなかったなぁ。パパだって、体の汚れはママに食べてもらってるし…
それに、ここでもたくさんカップルがいた。シー・スライムの姉妹にも。
…そりゃそうだよね。みんな水着きれるから、マモノムスメだったら男子にアピールできまくりだもんね…なんでここに見学に来たんだろ、わたし。

「はぁ…やっぱり、運動部はダメかな…メイワクかけちゃうのもやだし…」

 サッカーに、陸上に、バスケ…男の人は多いんだけど、どれも足がないとぜんぜんダメだよね。まさに足手まとい。スライムって、思ったよりフベンなんだなぁ…。
さいごは野球部。いちおう来てみたけど…やっぱり走れないとダメっぽいし、そもそも男子だけの部活ってかんじ。見てもしょうがないし、もう帰ろうかな…

…おーい……ない…

「ふぇ?」

 でも帰ろうとしてたら、いきなり、こっちに走ってくる男の人がいた。

「おーい…!そこ、危ないッ!!」
「?」

 ぼちょっ!!

「ぶくッ!?」

 いきなりわたしの頭めがけて、なんかが飛んできて…頭の中に入っちゃった。
もちろんイタくはないけど、すんごくビックリ…なにこれ、野球のボール?

「ああっ、ごめん!!ケガしてないか!?」

 走りよって来てくれたのは、せの高い男の人。センパイかな?

「ノック練習してて…打たれたボールが君のとこまで飛んできたんだ。
 君、見学回ってる1年だろ?大丈夫か?どっか痛いところとか…」
「あ、だ、だいじょうぶです…スライムだから…」

 ちょっとあわててる。カッコいいかんじなのに、カワイイかも…
…あれ?そういえばこの人、ほかの女の子のニオイがしない…

「よかった…ほんとごめんな」

 ちょうどボールが当たったところを、やさしくさすってくれる。
すででさわられた所に、手汗から、ちょっとだけ精が流れ込んできた。

「あ…」

 おいしい…なにこれ、すんごくおいしい!!
今まで、ふつうの食べ物やあのマズイのばっかりだったから、よけいおいしい…
ああ、たくさんかいた汗と、ちょっと土のニオイも…これ、もっとほしいな…
…なんて思ってたら、いつの間にか、センパイのうでがヒジのあたりまで中に…

「あ、ごめんなさい!つい!!
 こ、これ、ボールですよね、かえします!!」

 わたしの中に入ったまんまのボールをにぎらせて、パッとうでからはなれちゃった。
さすがにダメだよ、こんな所でしたら…

「あ、ありがとう…」

 あっでも、これじゃセンパイがはなれていっちゃう…えっと…えっと…

「わ、わたし!広上 乙女って言うんですけど!!
 は…入っていいですか!野球部!!」
「えっ…?」

 ああ、言っちゃった…
…でも、わたし走れないし、野球も知ってるけどしたことないし…向こうからおことわりされちゃうか。自分で言っててはずかしい…

「あ、いいんじゃない?マネージャーとしてなら。」
「へ?」

 いきなりうしろから、知らない女の人の声が。
ふり返ってみると…そこには、まっかなレッドスライムさんが立っていた。

「マネージャー?」
「そう。走れはしなくても、練習の手伝いをしたり、飲み物くばったり…チームを支える役目。けっこう楽しいわよ?大変だけど」
「ってことは、あなたも、その、マネージャー?なんですか?」
「そういうこと♪
 スライムだって、マネージャーはできる。アタシができたんだからね。
 それにアタシ、今年で卒業だから…ちょうど新しいコが欲しかったのよね」

 そこまで言うと、レッドスライムさんは、わたしをセンパイからちょっとはなれた所につれて、お話してくれた。

「…ひと目ぼれ、ってやつでしょ?あの2年生に。わかるわかる♪」
「えっ、あの…じぶんで言っといてヘンですけど…いいんですか?
 そんなちっちゃなリユウで入って…」
「いいも何も。アタシだって、はじめは男目当てで入ったのよ?
 アタシの母さん、父さんがケガして入院してた時に出会ったらしいんだけど…それから今までずっと、楽しそうにいろいろお世話してんの。
 それ見て育ったアタシも、そんな風に、いい男のお世話がしたくってね」
「へぇー…」
「さっきも言ったけど、いざ始めてみるとけっこう大変で…でもけっこう楽しいんだ。
 部員のみんなも良くしてくれて…茂仁田選手って知ってる?あの球団の。あの人をスランプから復活させた奥さんもレッドスライムだってんで、勝利の女神だ!なーんて言われちゃったりもしてね♪
 …んで今は、マネージャーしながら…ほら、あそこにいる、レフト守ってるあいつと付き合ってんの。
 理由なんて別になんでもいいのよ。ちゃんとやれてればね?」
「そういうもの…なんですか?」
「そういうもんでいいのよ、多分ね。アタシらはスライムなんだから、ムズカシイこと考えたってしょうがないじゃない。
 もっとシンプルに行きましょ。…さっきの先輩のために、がんばれる?
 がんばれるなら、アタシがあんたをマネージャーにしたげる♪」

 そう言って、マネージャーさんはニカッと笑う。
キレイでカッコよくて…きっと、毎日がんばって、楽しんでるんだなって思った。
わたしも、こんな風になれるのかな?そしてセンパイに…

「……がんばります!!」

 こうして、わたしは野球部のマネージャーとして部活をやることになった。
センパイも「よろしく!」ってカンゲイしてくれて…もっとやる気出た!
そしてスキを見て、センパイに…♪うん、がんばる!



 それから、一か月がすぎた。

『乙女ちゃん、こっちにタオルくれー!』
「は、はぁーい!」

「トンボはもっと、片手だけで動かすかんじ。あんまり力入れすぎないように…」
「こう…ですか?」

 毎日、練習のお手伝いをしたり、道具をキレイにしたり…すんごくタイヘンだけど、がんばってる。
「男臭い部室が、乙女ちゃんのおかげでいい匂いになった」って言われたのはうれしかったなぁ。
でももちろん、一番うれしいのは…

「ざ、座丹生センパイ、お茶どうぞ!」
「ありがとう、乙女ちゃん。助かるよ」

 こうして、センパイ…ピッチャーの座丹生 栄治(ざにゅう えいじ)センパイのお手伝いができること。
お茶とかをわたす時、センパイはいつも笑って、しっかりお礼を言ってくれる。それを見ると…コーフンして、あわがすごい出ちゃう。
それにセンパイって、野球にすごくシンケンなの。練習してるところをいつもじっくり見てるからわかる。
さわやかで、がんばり屋さんで、カッコよくて…去年の秋に転校してきたらしいんだけど、それでも半年間、マモノムスメさんにおそわれなかったのがフシギなくらい。
もちろん、ひどい人間じゃあないのも調べてある。ほかの部員たちから話を聞いたり、休み時間にこっそりセンパイのことをのぞいたりして…ね。
そして、練習が終わったら…

「あの…センパイ!」
「ん?」
「今日……も、おつかれさまでした!」
「?…うん、ありがとう。また明日ね」

 センパイにあいさつして、見送ってからうちに帰るのが、わたしの日常。
センパイは、うしろ姿もカッコよくて…

「…あれ?」

 そうじゃないでしょ、わたし!?どうしてふつうに帰してるの!?
もう一か月も経ってるのに、なんで何もしてないの!?マモノムスメでしょ!?
うう…こんな調子で、ぜんぜん何もできないまま、毎日がすぎて行く。
ひとつだけ、変わったことと言えば…

「んっ…はぁ…はっ、あ、センパイ…!」

 こんな風に、ひとりえっちの時のモーソーがハッキリしたくらい。
センパイはどんな風にさわってくれるだろう…おちんちんはどんな形なんだろう…
考えながら指をうごかすと、これまでよりもずーっと気持ちよくなっちゃう。
今日もまた、センパイとはじめてすることをモーソーする…するだけ。

「んんっ…ちゅっ……ちゅっ…」

 わたしのメロンゼリーを口うつしで食べたセンパイは、プクプク出るあわのニオイがたまらなくなっちゃって、ハナをくっつけるほど近づけて、あわがわれたシュンカンに、思いっきり吸い込んでくれるの。
そしたら、いつものカッコいい笑顔で、いいニオイだよって言ってくれて…わたしもお返しに、センパイの全身をペロペロなめて、汗のニオイをたっぷり味わっちゃう。
このこっそり借りた、センパイの汗をふいた後のタオルみたいに…ああ、おいしい、おいしいよぉ…

「センパイ、おちんちん、なめさせてください…」

 センパイのおちんちん…まだパパみたいに、ニオイだけでカチカチになるまではいかないみたい。だからこうして、わたしが舌でカチカチにしてあげるの。
いろんな所を舌でくすぐって…特に気持ちよさそうなのは、ここかな?ここかな?
おいしいし、なんだか楽しくなってきて、夢中になって舐めてたら…

「!?」

 うっかりシャセイさせちゃった。顔中にふりかかる、センパイのすんごく濃い、さいしょの精…おまんこにもらえなかったのはザンネンだけど、世の中にこんなにおいしいものがあるなんて、思ってもみなかった。
おちんちんについた精をなめてたら、センパイもおかえしに、わたしのことを指で気持ちよくしてくれる。毎日ボールをにぎってる、がっしりしててあったかい手…
センパイもはじめてのはずなのに、きもちよくて、すぐイっちゃいそうになっちゃう。きっと、センパイがやさしくさわってくれるからなんだろうなぁ。
おちんちんについてた精を全部なめとったころには、またカチカチにボッキしてた。
これでじゅんびはオッケー…だよね。
もう一回キスして、それから…もうお互いにガマンできなくなっちゃって、一思いに、根元までおちんちんを入れちゃうの。

「!!!」

 お互いにもう声も出せなくて、でも止まらなくて…動物みたいに、相手のニオイを必死にクンクンかぎながら、動物みたいにはげしくからみあう。

「きもちいいよぉ…センパイ、センパイっ…!!」

 おちんちんが中でふるえる。イきそうになってるのがわかる。わたしの方はもう、なんども、なんどもイっちゃってるのに。
そしてまたイきそうになった時、センパイははじめて会った時みたいに、わたしの頭をやさしくなでてくれて…

「ふっ……っーーーーーーーーーーっ!!」

 ベッドのシーツにかみついて、ものすごい声をガマンする。
センパイのおいしい精が、わたしのおまんこの中いっぱいに、どくどく、びゅうびゅうって出てる。あったかくて幸せな気持ちに包まれながら、もう一回キスを…

「はぁ、はぁ、はぁ…………はぁ」

 そこで、現実にもどっちゃった。もちろんセンパイは、わたしのとなりにいない。

「なにやってるんだろ、わたし…」

 センパイに告白することも、おそいかかっちゃうことも、どうしてもできない。
センパイはそんなことしないって思うけど…もし逃げられて、きらわれたらどうしようって思っちゃう。もしかしたら…本当にもしかしたらのカクリツで、そうなったら…きっと一生たちなおれない。…こわい。
自分がこんなにいくじなしだなんて、思ってもみなかった。
このモーソーが、そのまま現実だったらよかったのになぁ…



「…う〜ん、それってかなり重症だねぇ…」
「うん…どうしたらいいと思う…?」

 お休みの日に、友達と、うちでケーキを食べながら相談してみる。

「スライムゼリーは?」
「センパイ一人だけにあげたら、あやしまれるし…かといってほかの人にくばって食べられるのもイヤだし…」
「先輩を家に呼んで、眠らせちゃうとか?魔法かなんかで…」
「う〜ん…でも、いきなり呼ぶのもへんじゃない…?」
「むしろ逆に、先輩から襲ってもらうとか!いつも配ってるお茶に薬を…」
「それ、ほかの人にバレたらすんごく怒られちゃうよ!?」

 …でも、こうして作戦立てても、それが実行できるようなら、そもそもこんなコトにはなってない…それくらいは、わたしにもわかる。
そういえば、パパがよく買ってきてくれるこのケーキ…これを売ってるケーキ屋さんの店長は、半分スライムのマモノムスメなんだけど、好きな男の人ができた時には、もうその日の内におそいかかって彼氏にしたんだって。
今では、4人の子供と、たくさんの子スライムにかこまれてる、立派なお母さんらしい。
もともと人間だったっていうのに、すごい行動力…いや、それがふつうのマモノムスメなのか。

「うらやましいなぁ、行動力があるって…」
「こればっかりは、心の問題だからねぇ〜…」
「…あ、そういえば…」
「どしたの?」
「いや、これまでの話とは、ぜんぜんカンケイないんだけど…なんだかさいきん、よくスライムさんに会うなぁって。
 まずダークスライムのあなたと仲良しになって、それからぬれおなごの先生に…」
「あ〜、確かによく会うかも。
 あたしのお父さんがお世話になってる弁護士さんもスライムと結婚しててね、その子供が、実はあたしと同じクラスなんだ。今度、乙女ちゃんにも紹介するね♪」
「そうなんだ…フシギだなぁ。こんなに色んなスライムが集まってくるなんて…」
「ひょっとしたら、運命ってやつなのかもね〜♪
 同じような人や、昔に同じような体験をした事がある人は、自然とひかれ合う…って、本かなんかで見た気がするよ」
「運命…かぁ。センパイともそんな風に、自然にいっしょになれたらいいのに…」
「なれるよ〜、きっと。案外もうすぐチャンスが来るかもしれないよ?」
「だといいけどなぁ…」

 その後もいろいろお話しして、ゲームしたりもしたあとに、友達はおむかえの車で帰っていった。
そして晩ごはんの時間、パパが話しかけてきた。

「そういえば乙女、もうすぐ誕生日だな。
 プレゼントは何が欲しい?部活頑張ってるみたいだし、遠慮せずに言っていいぞ!」
「あれ…わたし、たんじょう日かぁ…すっかり忘れてた」

 わたしが今ほしいもの…って言ったら、やっぱりセンパイかな。
でも、それをパパとママにたのむのもおかしいし…

「うぅぅ〜ん……」
「乙女?別に、今考えなくてもいいんだぞ?」
「……あ!」

 ひとつ、思いついた。
これならパパとママも知ってるかも。

「なにか思いついたのか?」

 家族の前でも、こんなことを言うのはやっぱり勇気がいる。
それでも…言わなきゃ。しんこきゅうして…

「…パパ、ママ。あのね…
 わたし、野球部で、好きな人ができたの」
「「!!」」
「ねーねに…」
「しゅきな、ひと…?」

 みんなビックリしたのか、きゅうにしずかになっちゃった。
でも、そのまま続ける。この気持ちは、ウソやジョーダンじゃあないんだから。

「うん、好きな人だよ。センパイなんだ。
 わたし…その人と、恋人同士になりたくて…でも、告白したり、おそいかかったりする勇気がなくて…ずっと近づけないの。
 このままじゃ、いつか他のマモノムスメに取られちゃうかも…でも、失敗して、きらわれちゃったりするのがこわくて…。
 パパ、ママ…二人は、どうやっていっしょになったの?
 なにか、勇気を出す方法って知ってる?それか、恋人同士になれる、失敗しない方法とか…」

 わたしが生まれた時からラブラブなパパとママがいっしょになった時の事なら、何かヒントになるかもしれない…
そう思って聞いてみたけど、ふたりとも、むずかしそうな顔になっちゃった。

「う〜む…、参考にはならないかもしれないぞ?」
「それでも、聞きたいの。かんがえてみたら、わたし、パパとママがどうやって出会ったのかも知らないし…」
「…よし、わかった。
 パパが知ってる、勇気を出す方法ってのは…頑張って、自分に自信をつけるって事だな。乙女、お前も今やってる事だぞ。
 …でも正直、失敗しない方法っていうのは、無いかもな。
それで勇気を出して、昔、ママじゃない別の人に告白したんだが…それでも、失敗したからな」
「ママも、ちょっと特別な方法でパパの所に来たんだけど…事故があったみたいで、パパの前に別の人の所に行って…きらわれちゃった事があるの。
 そのおかげで、パパと一緒になれたわけだけど…失敗しない方法っていうのは、どこにも無いのかもしれないわ。どんなにえらい人が考えた方法でもね…」
「そっか…」

 やっぱり、失敗するかもしれないってコトは変わらないんだ…
とくべつな方法でも、なにかのマチガイが起こったら…

「…ただ…」
「?」
「パパ達の失敗は、相手のことをよく知らなかったせいで起きたってのもある。
 …人間っていうのは、魔物娘よりもずっとややこしくてな。
 見た目はよくても、その裏に、思いもよらないイヤな姿が隠れているかもしれないんだ。情けない事だけどな…」
「そうなんだ…」

 パパとママ、いつになくシンケンな顔してる。

「乙女。
 お前は、その先輩のことを調べた事はあるか?悪い噂が聞こえてきたり、人がいないところで悪口を言うような奴じゃなかったか?」
「…うん、大丈夫だった…と思う」
「そうか。どんな所が好きなんだ?」
「えっとね…」

 少しずつ、センパイの好きなところをならべてみた。
 まず、野球にシンケンなところ。汗のニオイと味も大好き。
 それに、すんごくレイギ正しいくて…わたしがくばったお茶とか、みがいた道具とか、渡した時にしっかり「ありがとう」って言ってくれる。
 あと、とってもやさしい。出会ったときも、ボールが当たっちゃったわたしのこと、ホンキで心配してくれたみたい。それから、それから…

「…ほかにもいっぱい、大好きな所があるの。
 ほかのマモノムスメさんもいっぱい、センパイのこと、ねらってるみたいだけど…わたし、センパイのことだけは、だれにも渡したくない」

 言い終えるころには、パパもママも、なんでかニコニコしてた。

「そうか…。なら、大丈夫だな。
 さっきママが言ってた『特別な方法』…お前も使ってみるか?」
「えっ…使えるの?そんなカンタンに?」
「ああ。乙女さえその気ならな。
 この方法を手伝ってくれる人は…この世の誰よりも、愛を大切にしてる人達だ。
 お前が生まれた時にも、その人達から『娘さんが恋を知る歳になったら、ぜひご連絡を』って手紙が届いてな。まったく、用意周到な人だよ」
「あとは、乙女ちゃん次第よ。使ってみる?」
「………」

 …パパとママが使った方法…それなら、勇気も出るかもしれない。

「……やる!使ってみる!」
「よし!その意気だ!!」
「…乙女ちゃんなら、きっと大丈夫よ。
 乙女ちゃん、今、りっぱな大人の…魔物娘の顔してる。
 なにが起こっても、自分でなんとかできるわ」

 そう言って、ママとパパが、抱きしめて頭をなでてくれた。
うれしくて…とっても安心する。

「…おっと、ずいぶん時間が経っちゃったな。
 おちび達ももう眠そうだし…」
「あ、ホントだ。もうこんな時間…」

 妹たちには、長くてむずかしい話だったみたい。でもごはんは二人ともぜんぶ食べてるからエライ。

「ほらほら二人とも…ベッドに行きましょうね?」
「乙女、お前も晩ご飯食べ終わったら、もう寝なさい。パパはこれから、手伝ってくれる人に連絡してみるから。多分すぐ来てくれるはずだ」
「うん…ありがとう。
 ごめんね、こんなお願いしちゃって…」
「あやまる事なんて無いわよ。乙女が頼ってくれて、ママたちはうれしいんだから♪」
「そうだぞ。パパとママに任せとけ!」
「…うん!」





 …そして。

「うー、ドキドキする…」
「うふふ…乙女ちゃん、まだ全然早いわよ?」
「で、でもぉ…」

 キンチョーして、そわそわプクプクしてたら、インターホンがなった。

「はーい、今開けますよ!」

 パパが玄関を開けて、入ってきたのは…ものすごくキレイで、ひと目見ただけですんごい人だってわかる白いマモノムスメさんと、ぴしっとスーツをきた、こっちも多分マモノムスメさんだった。

「貴女が乙女ちゃんね?はじめまして、私はルクリーよ」
「は、はじめまして!」
「そして私はリューナ。そのひめ…いえ、社長のお付きです」
「はじめまして!」

「いやー…まさか、あの時テレビで見た二人が来てくれるとは…」
「以前我々のミスで、ユウリさんにはご迷惑をおかけしてしまいましたから。
 その謝罪と…責任を持って、そちらの乙女ちゃんを幸せにするというお約束のために、こうして社長ともども参りました」
「あの時は本当にごめんなさいね、ユウリちゃん…」
「いえ、今は飯人さんと、こうして幸せだから…大丈夫です」

 ルクリーさんたちのコト、ママは知ってるみたい。何があったんだろ?
…全部うまくいって、帰ってきたら聞いてみよう。

「さて…それじゃあ乙女ちゃん、行きましょうか♪」
「は…はい!」
「ねーね、いっちゃうの…?」
「やだぁー…!」
「だいじょうぶだよ、タカミ。ツルヒメ。一週間くらいで帰ってこれるから。
 その時は、いっしょにセンパイも紹介してあげる。パパとママの言うコトちゃんと聞いて、いい子にしててね?」
「うん…」
「んー…」

 …だいじょうぶ、こわくない。
パパとママも、これで出会ったんだから。
それに、こんなにすんごいマモノムスメさんたちが迎えに来てくれたんだから。
きっとセンパイと恋人になれる!幸せになれる!!
よし…

「……いってきますッ!!」















「ふぅ…筋トレ終わり。…明日も早いし、そろそろ汗落として寝るか。
 それにしても…あの新しいマネージャーの子、どこに行っちゃったんだろ…?」

(テレテテレッテ〜ン…テレッテン!)

「うおっ?
 …?なんだ…テレビが勝手に……?なんだこの番組…」




『モンスターズ・ミラクル・マーケット!!』



 
19/04/30 07:59更新 / K助
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■作者メッセージ
長かった…本当に長かった…異常にズルズルお待たせしてしまったこのシリーズも、ついに完全完結です。
尻に火がついて、それが全身に回って、焼死寸前のところで辛うじて本気を出すことができました。
最初はとあるCGアニメからインスピレーションを受けて書いてみただけの作品だったわけですが…モチベーションが続く間に駆け抜けるって事、大切ですよね。実生活でも必要なことだし…身につけないと。もう若くないんだから。
なんとか平成の終わりに書き終えられたこと、本当に安堵しています。
令和になっても、魔物娘図鑑と図鑑世界がもっともっと発展していくことを願うとともに…私もその隅っこで、虫みたいにモゾモゾと二次創作を続けていきたいですね。
無駄に超長期スパンの連載となりましたが、ここまで読んで下さった方がいらっしゃいましたら…本当にありがとうございました!
どうかこれからも、SSを出した時にはよろしくお願いします!!

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