連載小説
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体も心もほっこりと
 
〜湯冷めしないよう〜


あら?また毛が地面まで伸びて擦れちゃったわ・・・。おかしいわね?意識してそんなに伸ばしてないはずですのにどうしちゃったのかしら?でも、このままですと髪が擦れて傷んでしまいますわ。どうしましょう・・・。切ったとしてもまた生えてくるでしょうし・・困りましたわ。んん〜〜、今の所はなんとか腰辺りまで短く意識して〜・・・これで大丈夫かしら?大丈夫みたいね。それではお買い物に・・・んぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

「ど、どうして勝手に伸びちゃうの。戻って!戻ってええーー!」

ああ・・ダメ、髪が言う事を聞いてくれない。仕方ありませんわ・・縮めるのは諦めて首にでも巻いておきましょう。ぁ、あったかい・・・♪

「おかーさーん!あのお姉ちゃんすっごくおっきなマフラーしてるぅー!ボクもあんな大きいの欲しいー!」

「はいはい、帰ったら編んであげるからね」

「・・・」

マフラーではありません。髪の毛なんです。って、聞いてくれそうにないですね。でも、可愛らしい男の子の夢を壊しちゃうのは悲しい事ですし今日だけはマフラーって事にしてあげましょう♪あら?毛先が・・・あぁ〜、地面まで垂れ下がったせいで毛先に傷が・・どうしましょう。しょうがないですねぇ、一度帰って毛先を整えましょう。お買い物はそれからでも遅くはありませんし。困った毛ですわね・・・。



「どうしたものかしら・・・、困ったものねぇ」

どうして急に言う事を聞いてくれなくなったのかしら?それになんだか髪がそわそわしてるような気がします。何故・・・あっ、そうでしたわ。今日は髪を洗う日でした。私達が魔力で汚れないからといって放置するのは女性として恥ずかしい事ですわ。あっ・・ダメですよ。そんなに伸び続けると洗うのが大変ですし・・このままでは銭湯に行けなくなってしまいますわよ?はい、よろしい♪それでは、今日のお買い物は取り止めまして銭湯に行きましょう。ふふ♪そんなに喜んじゃって♪髪は女の命ですから綺麗にしましょうね。

「えーと・・このシャンプーだったかしら。それとこれでしたわね。あとこれも・・・」

用意も出来ましたし、まずは髪のお手入れしてからですね。こ〜ら、騒いじゃダメよ?先程まで地面に擦れてたのですから毛先を拭いてからですからね。んぅ・・はぁぁ、気持ちいいです。あっ、こら、跳ねないの。

「はい、綺麗に拭けましたし・・もう一度首に巻いて・・・」

これで毛先が地面に垂れ下がる心配はありませんわ。さ、行きましょう。


銭湯に行くのも本当に久しぶりですねぇ。最後に行ったのはいつだったかしら?嗚呼・・そうでしたわ。良縁に恵まれるとの噂を聞いて3ヶ月ほど前に銭湯に寄ったきりでしたわ。結局良縁には恵まれませんでしたが。そういうものですよね、縁というものは自然と寄り添ってくるものですから自ら飛び込んだ所で赤い糸の縁がありませんと意味がありませんわ。


「あら、いらっしゃい。久しぶりじゃないの〜」

「御久しぶりですね、女将さん」


あらあら、お客様のお顔も随分とお変わりになられてしまったようで・・。猫又さんやアオオニさん・・どうしたのかしら。あら?

「おねーちゃんの髪すっごくながくてきれー♪」

「あらあら、可愛らしいお客様ですね♪ええと・・アリスちゃんですか?」

「うん!そうだよー」

ふふ、可愛い子ですね。私にもいつの日か可愛い愛娘に巡り逢える事を祈りましょう。


-カラララララララ・・・・-


ふふふ、あの時とほとんど変わってません・・・ね?あら、いつのまにか改築したのですね。外風呂が出来ていたなんて知りませんでしたわ。外は気になりますけど・・先に髪を洗いましょう。座って洗うと髪がタイルまで垂れてしまいますからこちらの立ったまま洗える所で・・髪が長すぎるとこういう時は少し不便ですね。それに洗うだけでも時間が掛かりますし。

「ん・・はぁ・・気持ち良いわぁ。でも、腰から下の髪を洗うのはかなり重労働になりそう・・『手伝いましょう』・・えっ?」

「御久しぶりですね」

「蒼絵さん!御久しぶりですね〜」

「髪が長いと色々大変ですね」

「ええ、本当に・・えっ!?あ、蒼絵さん・・そ、その左手の薬指に嵌めてる物はもしかして・・」

「ええ♪先日結婚式を挙げまして♥」

はぁぁぁぁ〜〜〜〜、羨ましいですわあ。なんて綺麗な輝き・・うっとりとしてしまいます。私の指にこの輝きが嵌まる日はいつ来るのでしょうか。

「さ、終わりましたよ」

「ありがとうございました♪おかげで助かりました」

「いえいえ。これから先、産まれてくる子の為にも良い勉強になりますので」

あぁぁぁ〜〜〜ん♥産まれてくる子の為だなんて・・なんていい響きなのかしら。

「何かありましたらいつでもお手伝いさせて頂きますので、それでは」

蒼絵さんも大人になったのね。以前はほんの少し暗い雰囲気を持ってましたのに・・やはり結婚して変わったのでしょうか。んっ・・少しだけ体が冷めてしまいましたわ。湯船に浸かって温まりましょう。


「・・・温かくていいですわ〜・・。やはりお風呂は・・『楽しいのじゃ〜♪』」

・・・・・・。

「大きな温水プールなのじゃ〜♪」

・・・。

「にゃほふぁはははは・・・・おおっ!?なんじゃあ!髪が絡んできて・・ま、待て!そっちに引っ張って行くでないわ!そっちは、あびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃ!!

お風呂で遊ぶ子は電気風呂で御仕置きしますよ?ふぅ・・・これで静かに浸かれます。湯船一杯に広がった私の髪・・・男の人から見ればどのように映るのでしょうか。やはり気持ち悪いのでしょうか・・。もう少し短いほうが好まれるのでしょうか。わからない事だらけです。はぁ・・・

「今日はもう上がりましょう」


-カラララララ・・・・・-


濡れた髪は艶っぽいと男の人は言いますが、私からすれば重たいだけなんですよね。髪を拭くのも時間が掛かりますし、その後に軽く椿油を塗らすのも結構手間なんですから。でも本当は・・軽く指を鳴らすだけで、

パチンッ♪

「簡単に乾いてしまうんですけどね」

後は毛先のお手入れですね。ぁ、やっぱり枝毛がありましたか。では、こうして・・・・んむぅ〜〜。はい、落ちました。ほんの少しの間だけ枝毛に回ってる魔力をカットすれば簡単に落ちてくれて楽ですね。さ、髪も綺麗に洗いましたしお買い物に行きましょう。


「良い湯でした。また近い内に寄らせていただきますね」

「はいは〜い、またいらっしゃいな〜」



「ぶぅぇっくしょん!!」


あら?


「あ〜・・くそっ、ちょっとばかし寒いな。もうちょい厚めの服着てくれば良かった・・・このままじゃ湯冷めしちまう」


・・・。


「家まで走ればなんとか我慢・・・んおっ?」

「良かったらマフラーを・・」

「あ、ありがとう。あー・・あったかい、なんだかすべすべして気持ち良い手触りだ・・でも、まるで髪のような・・髪ぃっ!?

「ぁ・・ごめんなさい、怖がらせてしまいましたか?」

「ぃ、ぃゃ・・ちょっとびっくりしただけだから。あ〜でも・・・」

「?」

「首から肩辺りあったか〜・・・・♪」

あ、やだ、そんなに髪を揉まないで♥そんなに色々弄られると気持ち良すぎて・・・♪

「・・っと、和んでる場合じゃなかった。ありがとな、気持ちだけ受け取って・・・ぶぇっしゅん!!

「もう・・・駄目ですよ、折角お風呂に来たのに湯冷めしては意味がありませんわ。さ、もう少しだけ巻いて温かくしましょう」

「・・・ありがとう

んふ♪顔を赤くして可愛いんですから♥今日はお買い物は止めて・・この方を送りましょう♪




          『…(運命の赤い糸ではなく、黒い髪でしたわ♥)』


15/12/29 00:45更新 / ぷいぷい
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■作者メッセージ
あのよろしさんからのリクエスト。『毛娼妓さん』『風呂上り』『マフラー』を書きました。これでリクエストは全て消化したはず・・ぅんぅん。

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