連載小説
[TOP][目次]
背信の体型と図鑑の配信
Μ不思議の国・タマゴの里Μ
Μ初太視点Μ


「おはようございます」

黒キノコの家で掃除していた子供が、俺達に朝の挨拶をする。

桜色のセミウェーブに灰色の三角帽と燕尾服を着用、顔は小顔でくりっとした青い瞳が特徴で、天使のような少女を連想させる。

「おはよう、リコ。今日も家の周りの掃除?」
「うん、出張中のおかーさんとおとーさんの代わりに掃除してるの」

ガチャ「リコ……ここにいたのかフワーァ」ポリポリ

ドアが開き、リコと同じ灰色の燕尾服と三角帽を着用した子供が欠伸と頭を掻き毟りながら出てくる。

黒色のベリーショートに切れ目の目付き、女性からキャーキャー言われそうなイケメン少年を連想させる。

「目覚めたらリコがいないからびっくりしたぞフワーァ」
「ごめんね。コーンが気持ち良さそうに寝てたから」
「リコ、家の周りを掃除してるのか?」
「うん」
「掃除なんて清掃員が勝手にしてくれるから、掃除するだけ野暮だろ。それよりオレと昨日の続きをシようぜ?」
「今はダーメ、エッチは夜になってから」
「ちぇっ、調子に乗ってタケリダケを使いきるんじゃなかった」
「わたしもすぐに掃除を済ませるから、コーンはコックねーとジェフにーを起こして」
「へーい……ったく、コルヌが帰ってこないからオレが起こす羽目に……」

コーンはしぶしぶ家の中へ戻る。

「じゃあぼく達はこれから出かけるから」
「デートなんですね、頑張ってください」

リコは天使のような笑顔で見送る

「あっ、待ってください」

前に、上着ポケットから紅白餅を取り出す。

「ウィリアさんから貰ったお餅です。快気祝いだそうで、処分に困ってて……」
「後で美味しくいただくよ、デートに行こうか初太」

実際は友達の家に行くだけだがな。


ΜラピッドタウンΜ


「このお餅焼いたように美味しい」
「こっちはモチモチしてるぞ」

餅を頬張りながら、ラピッドタウンを歩く。

事の始まりは刑示板に届いた一通のメール。


 満知子の相談に乗ってほしい。
 ラピッドタウン住宅地一丁目にある俺達の家に来てくれ。
 初太ならすぐ判るはずだ。

 平也


タマゴの里やソーンファームとは一転、道は石やタイルが敷き詰められる形で整備されている。

「今日の天気は?」「夕方には不思議の国全体に雨が降るってさ」

ベンチには親しげに天気の話をするマーチヘア夫妻。

「初太、キョロキョロしてるね」
「以前はまっすぐ競技場へ向かって、ちゃんと町を見ていなかったからな」
「わざわざ見渡さなくてもいいよ、この街はどこもかしこも交わるカップルばかりだから」
「そうか?親しげに会話するカップルもいるけ……えっ?」

「アアンッもっと突いて」「この発情ウサギめ!もっとヤってやる!」

目を離した隙に先程のマーチヘア夫妻が交わりを始めていた。

「この街の住人は皆年中発情期なんだ、労働者も例外じゃない」


いらっしゃいアンッお花はアンッ如何ですかアァンッイクウッ!

「花屋の娘は、薬で触手に変えた夫に縛られながら商売したり」


火元を確認、これよりチン火に入ります!

「消防士は男女問わず身体が火照ってる人を自らの性器やテクニックで鎮めるんだよ」
「真面目にやれよ」
「職務に忠実な住人もいるけどね」

ピ-ッ!「チェック!そこ、駐車違反よ!」

紺色の制服を着た――婦警が道路上でセックスする夫婦に注意する。

「エッチはベンチもしくは芝生の上でシましょうね?」
「駅弁スタイルで移動しよう」「そうね」

交通の妨げが無くなり、スクーターや魔界豚が走行を再開する。

「一応仕事してる住人もいるんだな」
「でしょ、わかってくれて嬉しいよ」

スカートが絶妙に短くてパンツがチラチラ見えた事は言わなくていいだろう。

マーチヘア婦警の耳がぴくぴく動き

「センパイ、アッチから男女の怒鳴り声が聞こえます」
「夫婦喧嘩かもしれないわね、現場へ直行よ」

婦警達は現場へと向かう。

「喧嘩一つで出動って、婦警も大変だな」
「魔物娘とインキュバスの夫婦は何時でも何処でもエッチしたくなるくらい仲が良好なのは当然のことだよ、夫婦喧嘩なんか持っての他。因みにあれが(性的に)婦警を襲う男の末路だよ」

「ハァハァ!」
「ああーん」

公衆の面前でマーチヘアの婦警を犯す男(芝生の上で)。婦警も婦警でピンク色のパンツを脱ぎ、堂々とお尻をさらけだしながら突かれている。

「ふぅー」スポン、ゴボボッ!

男は結合を解き、マーチヘアのお尻から精液が漏れ出す。

「エッチな人はタイーホしまーす」
「はーい」
「取り調べは牢屋でシますからね」

お縄――のような触手で男を縛る婦警。
愛液と精液で事件現場をマーキングしながら連行する光景は、遊んでるのか職務に忠実なのかよくわからん状況だった。

「行こう、初太」
「ああ」

ふと、連行中に交わるのでは?と思い彼等の方を振り向く

ドンッ「きやっ」

「スミマセン、余所見してしまって」

前を向くと色気のある美人がいた。

ボブカットの髪形に大人びた顔立ち

先端が円錐状の山羊の骨を模した飾り付の帽子に手には箒

魔女を象徴する大人の女性

何故かサイズが小さい子供服を着ていたが、それがかえってモデル並みのプロポーションを強調させる。

コロリン…「髪の毛?」

輝く髪が入った瓶が俺の足に当たった。

「触らないで!」

魔女が慌てて瓶を拾い上げる。

「ゴーセル、瓶は?」
「大丈夫よ、ごめんなさいね急いでるから」

ゴーセルと呼ばれた魔女は瓶を握りしめ、夫と共に立ち去る。

確かあの先には飛脚運送があったな。

俺はそんなことを考えていると

「何看取れてるの?初太」
「マドラ、どうした?まるで睨むように」
「ぼくは先に行くから」
「おい待てよ」

俺はマドラの後を追う。
参ったな、機嫌を損ねたかな……


Μ住宅地一丁目Μ


「まちたんの家はどこかな?」
「平也のメールでは、初太ならすぐ判ると言ってたな……」
「ホントに?」
「た、多分」

マドラの威圧感に耐えながら、俺は家を一つ一つ見て回る。

ピンポーン「ただいま〜」
ガチャ「お帰りなさーい」ブチュウウウン!!!

宅配業者とマーチヘアが玄関前で堂々と口付けをするが、今はそれに見とれている場合じゃない。

視界にウサギの耳が入る。

「あれは――」

俺はあの耳に見覚えがある。

満知子の誕生日にせんせーが作った

「間違いない、あれが平也達の家だ」
「標識的な家だね。ドールハウスを大きくしたのかな?」
「いや、反対側にあるウサギの家だ」

丸っこい形をしたピンク色のウサギのぬいぐるみを模した家
表札に平也&満知子と刻んである。

ピンポーン♪「平也、満知子、俺だ初太だ」

カチャリ

ドアが開き、平也が出てくる。

「おーやっときたか、マドラちゃん。とびきりの紅茶用意したから入って入って」
「おじゃまします」

俺とマドラは家に入る。


Μ平也&満知子宅Μ


リビングには満知子がちゃぶ台に肘をついていた。

「満知子、わざわざ俺達を呼び出して「何の用かって?」

満知子はドスの聞いた声を放つ。

「……マドラ、今の満知子凄く機嫌が悪いようだから、あんまり声をかけないほうがいいぞ」
「ふーん、ソーナンダ」

マドラの機嫌は未だに傾いている。

「ほぃ、紅茶だよ」

平也が四つ分の紅茶をちゃぶ台に乗せる。

「媚薬入りか?」
「いんや、普通の紅茶だ」

「不思議の国の住人ならそれくらい見ればわかるよ」

マドラは何の躊躇なく紅茶を啜る。
俺もマドラに続く。
俺はマドラを信じる。例え見た目ではわからなくても。


Μ


「それにしてもまちたんと平也さんが住む家って可愛いね」
「だろ?「らびりん」を描いた設刑図を基に、ウィリア様が作ってくれたんだぜ」

「らびりん?」
「せんせーが満知子の誕生日にプレゼントした手作りのウサギのぬいぐるみだ」

マドラの疑問に俺が答える。少しでもフォローしなきゃ……

「人生の中で最高のプレゼントだったわ……」

満知子が重い口を開く。

「まどっち、今日は来てくれてありがとう」

待ってて、と満知子が刑示板のパネルを弄る。

「満知子が動画を探してる間、近日配信する『あぷり』のベータ版を見せてやるよ」

平也は刑示板(手のひらサイズ)を起動させる。

「魔物娘図鑑 不思議の国編ベータ版。魔物娘の特徴が挿し絵付で記載されてるんだぜ」

平也が上から五番目に記載されてる「マッドハッター」の項目を開く。

頭に帽子型のキノコ、燕尾服、紅茶を飲む、知性的な顔立ちのマッドハッターの姿が描かれていた。

「このマッドハッター、知性的で落ち着きがあるな」
「へぇー、初太はぼくより図鑑の挿し絵の方が落ち着きがあるように見えるんだ」

マドラの機嫌は未だに平行じゃない。

「ねぇ初太。まずはこれを見て」

俺がマッドハッターを見ていると、満知子が「バフォメット」のページを見せてきた。

「どんな姿に見える?」
「幼児体型で、服装が際どすぎて全裸も同然だな」
「だよね」

次に満知子はフォルダにあるファイルをタッチして、ビデオを起動させる。

「これを見て、どう思う?」

満知子がマドラに映像を見せる。

「すごく、大きいです……」

横から覗いてみると、図鑑に記載されたバフォメットが映っていた。

挿し絵とは服装や髪型が若干違うが――



徹底的な違いがあった。



『まって〜』

バフォメットの胸がやたら大きかった。

エプロンドレスの上からでも判るバレーボール。

マドラのそれとは比べ物にならない胸が歩くたび、弾む、はずむ、ハズム

コケッ、ポヨンッ♪

「あ、転んだ」

『でぇじょうぶか?』

夫らしき男がバフォメットの側に駆けつける。

胸がクッションになったのか幸い怪我はないようだ。

『えへへ〜つかまえた〜』

ギュウッ〜

『ブルーグ、放しやがれ!』

ブルーグと呼ばれたバフォメットは幼い容姿から想像もつかない腕力で夫を抱き締める。
夫の方は妻の腕を振りほどこうとするがびくともしない。

ブルーグは自分の胸を夫の身体にこすりつけた。夫の胸元に押し当てられ自由に形を変える胸

ギリギリギリギリ……

満知子が歯ぎしりする音が聞こえる。

『ああんっ!』

夫に胸を触れられ、まるで電流が走ったかのような反応をするブルーグ。

夫の方はプレイに疲れたのか胸を揉む手を休めると

『もっと〜もっと揉んで〜』

ブルーグが涙を浮かべながら続きを懇願し始め

ブチン

満知子が刑示板の電源を切った。

「満知子、勝手に電源切るなよ」
「我慢の限界よ……」
「え?」

「我慢の限界よ!」

「何なの?何で?バフォメットはつるぺたボディーこそ至高じゃなかったの!?」ダン!ダン!「あんなロリ巨乳、背信も同然だわ!」ダンダンダンッ!
「落ち着け満知子、近所迷惑だぞ」

「その気持ちわかります!」
「マドラまで!?」

「男は皆、女性の胸ばかり気にしすぎです!」
「まどっち、あたしの気持ちわかってくれるんだ」
「はい、同じ女性だからこそ、まちたんの気持ちが痛い程のわかります」

「女同士の友情も萌えますな〜」
「平也も何か言えよ」
「別に気にすることはねぇよ、それより今の映像見てどう思った?」
「どう思うって言われても……」

三日前にソーンファームで知り合った一花さん(長身巨乳ドーマウス)を思い出す。

「バフォメットって種族もロリ巨乳がいるのか?」
「いや、バフォメットは基本ロリータ主義だ。ロリ巨乳等もっての他、よって今回もウィリア様の仕業だと思う」

「ウィリア様?」
「飛脚運送開発部の総合責任者さ」

プルルルン♪

突如平也の刑示板が振動する。

「おっ、噂をすれば」

平也は画面をタッチすると少女の顔が映し出される。

『ヤッホー平也』
「やっほーウィリア様」
『突然デスが、今から社員旅行に行くのデス』

パリーン

突如、小さなオモチャの兵隊が窓を突き破り、俺達を包囲する。

『移動の手筈は整ってるのデス、ミニ貨兵達、転送魔術を起動するのデス』

ミニ貨兵達が魔法陣を展開。

「うわぁぁぁ」「きゃぁぁぁ」


Μ続くΜ
14/08/16 23:33更新 / ドリルモール
戻る 次へ

■作者メッセージ
ドリルモールです。

ようやく新章突入。

前回から三日後のお話です。

社員旅行という名目で、強制的に転送された初太達。

次回は媚薬の海にある孤島『メロメロビーチ』で夏だ、海だ、黒ミサだ!ポロリもあるかも?


Μ


用語集
【刑示板】
 不思議の国で使用される情報端末。国内で起こった出来事を配信,メールや通話等の通信目的で使用される。
 元々はハートの女王が自身の偉大さを住人達に披露するために作られた物を住人達も使用出来るように改良した。
 かつては木製の看板にお触れを記した紙を貼るだけの『看板型』だけだったが、近年は無数の魔灯花を使って文字を映し出す『魔光型』,魔力を用いて映像を配信する『びじょん型』,画面に触れるだけで操作できる『たぶれっと型』,たぶれっと型を手のひらサイズにした『すまーと型』といった驚異的な技術の進歩が見られるが、簡易的なメッセージを送るだけの『ぽけべる型』等の数々の試行錯誤があったことは忘れないでほしい。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33