連載小説
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フェリエの法制度
 啓蒙国家フェリエの法典には強姦および強姦未遂、その他猥褻行為を行う魔物女性は国外追放または魔物女性居住地区への強制移管とし、魔物女性居住地区からの他出を禁ずとある。
 ただ、この法律はクェイン公家領やフェリエ王領に関わらずあまり意味をなしていない。
 それは何故か。
 啓蒙国家フェリエの領地の大半は、王立総合高等戦術学院のように緑明魔界と暗黒魔界の魔力がぶつかり合う位置に存在しているからだ。その二つの魔界の魔力がぶつかり合って魔力が励起状態となり魔物たちを興奮させるのだ。
 そうして興奮した魔物たちは男を自らの欲望のままに襲い、無理やり自分の夫にする。このとき、男は魔物たちの魔力によって正気を失い、とろとろの快楽に心は蕩け、強姦罪の訴えを司法局に提出しなくなってしまう。
 それに、司法局に訴えを出したところで司法局はまじめに扱ってくれるかどうかも分からない。私の監視のある王族領ではまじめに扱ってくれたとしても、司法局の捜査中に何度も何度も魔物たちに犯されて、男のほうから途中で訴えを取り下げてしまう場合がある。
 また、強姦罪は親告罪であり、被害者が訴えを出さなければ犯罪が表沙汰になる事がないため、魔物と人間という異種間結婚をした夫婦の中には潜在的な加害者と被害者が居るとも言われている。
 被害の年間件数は法の発布直後と比べて少なくなってきているが実際のところは分からない。

 だから遅かれ早かれ、テツヤは誰かに襲われることになるだろう。
 しかし、それもまた計算のうちである。


「フェリーナ様、密偵からの報告です」
 私が思案を巡らしていると扉の向こうからミーアの声が聞こえてきた。
 フェリエ王立総合高等戦術学院で何かあったらしい。
「入りなさい」
 入室を促し、表情を崩さずに部屋に入ってくる彼女は、テツヤの世話をしているときと雰囲気が違う。世話をしているときは直接テツヤに触れられる喜びを体いっぱいに表現しているが、今は、主君である少年のために陰で尽くす喜びと、密偵達を纏める隊長としての自信にあふれている。
「先刻、テツヤ様が襲われました」
「ほう、相手は?」
「ホルスタウロスのミュリナだそうです」
 早速か。だが、それでいい。
 ミーアから書類を受け取りミュリナという女の情報を知る。
 年は21。そして王立総合高等戦術学院の次席卒業生でもあるのか。
 学院で働いているくらいだから優秀なのはわかっていたが、そんな女に襲われたらテツヤはひとたまりもなかっただろう。
「フェリーナ様、この件に関してはどうお考えですか」
「いや、別に何も考えてはいないよ」
 そういうと、ミーアは少しきょとんとした顔になって私を見つめた。だけどすぐに真顔に戻って
「わかりました」と言って退室した。
 もちろん、私が何も考えてないわけがない。

 そもそもテツヤの付き人にルメリを寄越したのにはワケがあるのだ。
 荷馬車を引く役目に適任なのもそうなのだが、バイコーンの特性として、バイコーンには交わった男の精を濃く、他の魔物たちにとって魅力的なものにする能力がある。その特性を利用してテツヤの精を濃く、強く薫り高い甘美なものへと変貌させることができれば、彼の周りには魔物娘たちが集まることとなる。そうすれば、テツヤの周りをちょろちょろと嗅ぎまわるレスカティエの属国のネズミを遠ざけることができる。
 もしも、ルメリがハーレムを作ることによってクェイン公家の息女がテツヤに惚れたのであれば側室に加えてやればいい。そのときはまたそのときだ。
 ロロイコ家のルメリは、ユニコーンにあこがれる純粋な乙女だが、すでにエルメリアと交わり、ミュリナと交わったテツヤを目の前にして惹かれないとは思えない。いずれは魔物としての本性を現すだろう。そして、その本性を現してくれれば、この計画はようやく始まる事となる。
 私はニヤついた頬を揉みほぐし、自分自身に喝を入れた。
 この計画で得られる利益は果てしなく大きい。
 もしもクェイン公家の息女エルミナ・メイア・クェインとテツヤが交わり、子を成せばクェイン公家との連携が密になる。今は国内の連携を密にし、国を本当の意味でまとめ上げられる存在が必要なのだ。
 そのために、テツヤには生贄になり、いろんな女に犯されてもらう。
 そして国が一つにまとまれば、私がレスカティエやその属国と国交正常化に向けての話し合いをする準備が整うのだ。
 全ては国のため。いまは強姦罪がどうとか言っている場合じゃない。強姦罪なんて、レスカティエの奴らの御機嫌取りの為に作ったようなものだ。いまは第一王女のエルメリアさえ身籠らなければいい。細かい事はそのあとだ。
「おい、間者」
 私は密偵を呼び、密偵の女に二つの書物を託す。
 一つはルメリに。そしてもう一つはテツヤを犯したというあのミュリナという女に。
「テツヤに気づかれぬように計画を進めよ」
「御意」
 そう言って間者は煙に紛れて姿を消す。ジパングの転移魔術らしい。
 クノイチという優秀な一族に生まれた彼女は、今も学院に生徒として潜入している。いずれ彼女ともテツヤは交わるだろう。

 テツヤは科学を知る手掛かりにはならなくとも、珍しい精を持つ異界の男としては使うことができるのだ。この国のために存分に働いてもらうしかない。
 エルメリアには少し悪いが、少しの間はテツヤは他の女たちに犯され続けることになる。しかし、わたしも鬼ではない。ちゃんとテツヤとエルメリアが結ばれた暁には、あの記憶を返そうと思っている。
17/01/01 03:52更新 / (処女廚)
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■作者メッセージ
今回はフェリーナ様のお話です。
強姦罪やその他もろもろのお話になりました。
フェリーナ様の思惑が錯綜しております。
娘のフィアンセを国のためにいろんな女に犯させると言う鬼畜ママです。
でもホルスタウロスに犯されるならそれでもいいかもって思います。

それと
あけましておめでとうございます。
作者はインフルエンザと共に年越ししました。

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