連載小説
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前編
ある反魔物派の王国の首都。
その日の夜はいつも通り城の周りを兵隊達が警備をし、いつも通りの朝を迎える―はずだった。

バサバサバサッ!

サキュバスの一団が満月に照らされ、兵士達は首都入りを阻む為に門の前に一目散に集まった。どうやらサキュバス達は首都入りするまで魔法でコウモリかなにかに化けて低空を飛んでいたが、首都に入ると兵士達が気づくようにわざと元の姿に戻ったようだ。
「朝番の門番達も叩き起こせ!ジェイク、お前は市内の憲兵団に連絡しにいくんだ!」
「了解!」
「魔導士も叩き起こしてきます!奴らに魔法壁をフルパワーにしてもらわなきゃ!」
魔法壁とは城を囲む石の壁で、城の中枢にある魔力水晶と壁の内側に掘られたルーン文字によって城全体を球状に覆うバリアの事である。サキュバス一体なら問題ないが人数から見て一斉に魔法攻撃を仕掛けられれば朝になるまで魔法壁が持つかどうかわからない。隊長はその兵士が魔導士の元にいく事を許可すると残った兵士達を自分の脇に並べ、弓矢を構える事を命じる。

「リントぉ!てめぇ彼女いないからってあんなあばずれ共に欲情するんじゃねえぞぉ!」
極限状態の中にも関わらず、下品な笑い声が兵士達から漏れる。リントと呼ばれた兵士は同僚達の中で1人だけ彼女がいない事を馬鹿にされたが、兵士達が目の前のサキュバス達の数に萎縮しないようにと、隊長がとっさに思いついたセリフである事を理解した。
「了解!!」
リントは自分自身を勇気づける意味合いも込めて大声で返事をした。
「ようし!全員まだだぞ………いまだ!!」

ヒュンヒュンヒュンヒュン!

10人弱の弓矢から放たれた矢はまっすぐに飛んでいく。ギリギリの距離で放った事で前衛のサキュバスはかわす事ができない。

戦闘の黒いマントを身に纏ったサキュバスが腕を前方にかざすと、放たれた矢はまるで見えない壁に当たったかのようにぶつかり下に落ちる。
隊長は驚きながらもすぐに兵士達に腰に差した剣を抜くように命じる。接近戦はサキュバスの体から漏れ出る淫気や彼女達の魅了魔法で全身の力が抜けてしまう可能性もあり、対サキュバス戦では推奨されない。しかし、兵士達は見回り兵の為、動きやすさの為に鋼鉄の鎧をつけてはいないが頭を覆う形状の兜をかぶっている。さらに、チェーンメイルを中に着込んでいるから反撃されてもある程度なら戦える、何人かはしとめる事ができると判断したのであった。

先頭の黒いマントに覆われたサキュバスが音も無く着地した。隊長はマントを脱いで素肌を見せる前に彼女をたたけば魅了魔法は発動しないと判断して突撃を命令した。

刹那、黒いマントを纏うサキュバスは兵士達がこちらに向かって一歩を踏みしめる前にマントを脱ぎ捨てる。そこには月光に照らされた文字通り絶世の美女が立っていた。ただし、その頭には禍々しい形状の黒い角、背中から白い翼を生やしていた。

リリムだ。

隊長が頭の中でそう呟いた瞬間、突撃の一歩目を踏みしめようとした隊長を含めた兵士全員がそのまま踏みしめる力を失って倒れた。リリムの魅了魔法が強力だったため、魔法耐性も対魔法防具装備も無い兵士達は全員彼女を見ただけで射精してしまったのだ。

「夜遅くまでご苦労様、ご褒美にあなた方は責任持って引き取り相手を捜してあげるわ。...この国の制圧が終わったらね。」
引き取り相手とは魔物娘の事で、彼らは1人残らず魔物娘の”夫”になる事を宣告されたのだ。しかし、射精後の脱力感に襲われた彼らにはそんな事は聞こえていなかった。
後続のサキュバス達は降り立つとすぐに兵士達の中に自分好みの顔の男がいるかか探そうと近づく、リリムはそのまますたすたと門の中に向かって歩いていった。

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リントは倒れながらも、リリムが自分たちを跨いで歩いていくのを見ていた。彼は自分の体に立ち上がるよう全力で命令を下す。

ー勝てないのはわかってる。だけど、せめて足止めだけでも!国民を守る為に戦うって決めたのに、こんな情けない負け方をしたまま誰1人守れないのはいやだ!ー

兵士を目指したきっかけの思い出、下っ端の自分達のように国を守る兵士になりたいと言った子ども達、憧れている勇者や聖騎士。今までの記憶が走馬灯のように流れながら再び立ち上がり、リリムを追う。「もし振り返ったらまた魅了されるかもしれない」と考えた彼は彼女の脚元をみながら追いかける。黒いボディスーツのような服を纏っているが、その上からでもわかる細くて長い、彼女の奇麗な美脚。見とれてしまうがその脚の歩みを止めなければ事態は悪化する。

「がああああああああああああああああああ」
もう歩く力が残っていないと判断した彼は、自分の両脚に全力を込めての一歩でヘッドスライディングのようにその脚に向かって飛び込む。

ズザああああああああ!

のばした手がリリムの足首に届くのをみたリントはすぐにその足首を両手でつかむ。

ビュルルッ!
つかんだ瞬間に腕から電撃のような快楽が流し込まれ、耐える力も無かったリントはそのまま射精した。彼はなぜ射精したのか理解できず疑問に思ったが、考えはじめる前に力つき、思考停止した。

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「……?」
リリムは何かにつかまれる感触を感じて振り返る。そこには魔力のの欠片も感じられない兵士が自分の足首を掴んでいた。後続のサキュバスもこの自体に驚いている。リリムはしゃがんでその男の頭を掴む。

「なぜ私の足を掴んだ?」
リリムは手から魔力を流し、その男が答えられるレベルまで回復させる。
「約束したから…」
「約束とは?」
「守るって、この国を、俺のようになりたいっていってくれたガキ共を…お前達から!」
語気は強めたが、腕一本あがらない。リントはあきらめずに拳に目の前のサキュバスに一発かましてやれと命令を続ける。
「面白い。」
リリムは言葉を返すと、魔力供給を中止する。直属の部下にあたるサキュバスが近づいてきた。
「リリム様の脚に触れるとは…リリム様、この無礼な男は後で…」
「やめなさい。」
リリムは彼女の言葉を遮る。
「私の脚によっぽど惚れたのかと期待したけど…魔力を持たない癖に私の魅了魔法を押さえ込むとはね。」
そう言うとリリムは彼をお姫様だっこの体勢で抱え上げる。部下のサキュバスはなぜそんな人間を持ち上げたのか分からなかったが、次のリリムのセリフを聞いて理解した。
「さて、ご褒美よぼくちゃん。君の守りたい国が制圧されるのを特等席で見せてあげましょう。」

ようやく起きてきた朝番の兵士達がリリムの前に姿を現すが
「こんばんは。」
リリムの挨拶が耳に入る前に兵士達は彼女の魅了魔法で射精して崩れ落ちた。

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その後リントは意識が中途半端に覚醒しながら自分の国が侵略されるのを見ていた。

 対峙するたびに魅了魔法にやられ、倒れ込む兵士、魔導士や対魔法防具を身に纏った騎士は襲いかかるも何らかの魔法で吹っ飛ばされる。兵士の憧れである女性の魔導士達は数人のサキュバスに組み伏せられた。少しして サキュバス達が解放する頃には女性魔導士はサキュバスとして覚醒し、本能のままに仲間だったはずの増援部隊に襲いかかる。しかし、この光景が何故かサキュバス側の目線である事に気づいたリントはこれは夢だろうと必死に言い聞かせる。しかし、残念な事に彼の意識は少しずつ覚醒していった。

「リリム!覚悟ぉぉ!!」
聖騎士の叫び声でリントの意識は完全に覚醒した。どうやら城のかなり上の階にいるようだ、その証拠に有事の時以外は城の上層階に勤務する聖騎士達の部隊が目の前に立っていた。

リントは状況を把握すると、リリムが自分を人質に下のだと勘違いして聖騎士達に叫ぼうとする。
『俺にかまわずやれえええええええ!』
しかし、体はいまだ脱力感に包まれて蚊の鳴くような声が絞りずつ漏れるだけだった。しかし、聖騎士の1人はリントの命等どうでもいいらしくルーン文字の刻まれた槍でリリムに突きを繰り出す。
パリン!
聖騎士の槍がリリムに届く前に粉々に砕け散った。
「!?」
「残念だったわね、今度からはもっと上質な槍で来なさい。」
リリムはそう言うとあごで部下のサキュバス達に攻撃命令をくだす。サキュバス達が電撃魔法を聖騎士達に放つと、聖騎士達は各々の身に纏うルーン文字の刻まれた鎧からバリアを展開した。数ではサキュバス達が勝っていたようで、少しするとバリアがはじけて聖騎士達は電撃の直撃を浴びて倒れた。


「聖騎士の鎧ですらあれって…この国はどんだけ予算ケチってんのよ。まぁこちらも精鋭中の精鋭部隊で来てるんだけど。」
リリムはそうぼやいていると奥の扉が開いた。扉の中からこの国で一番の魔力と剣術を備えた男、勇者が姿を現した。
「そこまでだ!淫魔共!!」
「あら!」結構いい装備してるじゃない。」
「問答無用!勝負!!」
「ナンシー!」
リリムがそう叫ぶと直属の部下のサキュバスが目にも留まらぬ早さで剣を抜いて、勇者の持つ剣を受け止める。
「何!聖剣が!!」
「聖剣ではないですね、貴方の魔力はそんな物なのですか?」
そう言うとナンシーはそのまま押し出し、勇者は一旦後ろにジャンプして間合いを取る。
「くっ!」
「聖剣は持ち主の注ぎ込む魔力で強さが変化します。その聖剣は確かに優れていますが、貴方の力はそんな物ですか?」
「貴様ぁ!侮辱する気か!」
「リリム様、ここは私1人で充分です。」
「OK、でもせっかくだから見学してるわ。」
「なめるなあ!」
勇者は飛びかかって斬撃を繰り出す。が、ナンシーは素早くかわし、彼女の立っていた地面を聖剣が砕く。
「魔力だけじゃなく剣術もこのレベル…大方、勇者と言う役職に就いてからは鍛錬をやめてしまったようですね。構えからして先ほどの聖騎士達より腰が浮いていますよ。」
「うるさい!」
再び勇者はナンシーに向かって切り掛かる。しかしまたもそれはかわされる。

「はぁ…」
ナンシーはため息をつく。
「これ以上長引かせても仕方ない、実力の差を見せましょう。」
ヒュンヒュンヒュンヒュン!
ナンシーは細い剣を振り回すが、勇者の体には届かず、僅かに手のグローブに切れ込みを入れる。
ー何だその程度か、ー
勇者はそのままかわして切り掛かるがナンシーにはかすりもしない。そのまま2人の切り合いは続くが、一向に致命傷はあたらない。そのまま切り合いが続くと思われたが少ししてナンシーは攻撃の手を急に止めてバックステップして間合いをあけた。
「今だ!」
勇者はそう叫んで飛びかかる、はずだった。勇者が剣を振り上げると彼の来ていた服がすべて小さな破片となって落ち、彼は全裸になった。漫画のような光景に観客のサキュバス達の中からくすくすと笑い声が漏れた。

「なっ…あ!!」
驚きと恥ずかしさに顔を赤く染める勇者。ナンシーはその間に背後に回り彼の頭を掴んだ。
「ハイこっち向いて。」
「!!」
ビュビュ!
勇者の視界にリリムが目に入る、その瞬間彼は射精してしまった。
「思った通りね…魔法防具はいいのを使ってても本人自体の魔力はこんなものか。他の国の勇者ならリリム様に触られるまでなら我慢できるわよ」
「…。」
プライドを砕かれた勇者はその場にうずくまる。

「申し訳ありません、リリム様。貴方の体をとどめにして…」
「良いわよ別に。見られて興奮してくれるのは嬉しいし、射精してくれるなら大歓迎だしね…それじゃ、次行きましょう。」
リリム達は次の部屋に行こうと歩み始める。リントは勇者が倒された以上、次の彼女達の標的は国王しか残されていない事に気づいた。彼はリリムの腕から振り落とされるのを狙い自ら暴れようとしたが、体に力が入らず赤ちゃんが手足をばたばたするような格好になる。リリムはそれに気づいた。
「あらあら起こしちゃったわね。もう少し寝てなさい。」
彼女の腕から催眠魔法を流し込まれた彼は眠りに落ちてしまった。
14/03/04 21:51更新 / オンビマフ
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■作者メッセージ
あとがきは後編でまとめて書きます。
後、リリムの名前は後編で明かす予定です。





...あっ、「触れただけでも射精する」と言うチート能力を持ったリリムにお姫様だっこされても射精しないのはリリムさんがそうならないように気を使ってくれてるからです。

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