連載小説
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魔物アプリ……ヴァルキリー編
 佐竹一貴は頑固で真面目な男である。曲がった事を嫌い、真っ直ぐに生きる事を是とする正義感の溢れる男だ。
 また自分の意思で始めたら絶対に辞めない事をモットーとしており、幼稚園の頃から習い続けている剣道は彼是十年以上も続けている。おかげで全国大会では最早常連さんと言わんばかりに名を連ねるのは当たり前だ。更に剣道と日々自分に課している鍛錬で鍛えられた肉体は細過ぎず太過ぎず、綺麗に整った肉体に仕上がっていた。

 おまけにルックスも太く真っ直ぐな眉と、ハッキリと開いた大きい瞳が特徴的な好青年だ。こんな容姿ならば固物好きや、真面目な男性が好きな女性ならば呆気なく惚れ込んでしまうだろう。つまり強くてイケメン、更に頭脳も優秀で落ち着きもある。ほぼ完璧な男性なのだ。

 だが、今年で18になろうとする佐竹一貴は今まで一度も女性と付き合った経験が無い。女性と付き合う暇が無かったのか。答えは否だ。女性と付き合う暇も有れば、寧ろ女性から告白される程に彼はモテまくっており、チャンスも山ほどあった。

 しかし、それでも佐竹一貴は付き合おうとはしなかった。いや、付き合えなかった。その理由を知る友人は高校最後の夏休みに入る直前……学校の終業式を終えた後、学校の近場にあるカフェに彼を呼び付けた。

「さて、佐竹くん。俺がどうして君を此処に呼んだのか分かるかね?」

 カフェのオープンテラスに置かれたテーブルの一つで向かう会う形で座る二人。勿体ぶった口調で友人が語りかければ、目の前に座る青年……佐竹一貴は整髪剤を使っていないにも拘らずツンツンに尖ったやや短めのヘアースタイルを揺らしながら『ふむっ』と頷き、暫し考え込んだ。
 こういう場所に呼んだ、それも二人っきりで……。これらの状況を察した上で、友人は自分に対し何らかの話があるのだろうと可能性が最も高い答えを叩き出した。では、その肝心の話の題材は何か? 思考を巡らした末に佐竹は徐に口を開いた。

「夏休みの課題についてか?」

 面白味の欠片も感じられない、彼の実直さと真面目さが浮き彫りとなった回答に友人はバンッと机を叩いた。それだけで今の回答が不正解だと言っている様なものであるが、可能性として最有力候補だった答えが外れだと知るや佐竹の剛直の眉が僅かに歪む。

 これは分かっちゃいないな……彼の顔に浮かんだ反応を見てそう察した友人も、これ以上我慢出来ないと言わんばかりの勢いで突っ込んだ。

「違う! お前の弱点をいい加減克服しろって言いたいんだよ!!」
「弱点………あっ、えっ」

 弱点と言う言葉に心当たりがあるのか、途端に佐竹の口がきゅっと横一線に固く噤まれる。そして顔を赤面させながら下へ俯き、テーブル下で手をモジモジとさせ始める。
 さっきまでのイケメン特有の雰囲気は何処へ行った。そう言いたくなるぐらいにまで佐竹の態度が豹変し、宛ら初心な乙女のようだ。

 だが、無理もない話だ。これもそれも、全部は彼が抱える弱点が大いに関係しているのだから。

「お前なぁ……そろそろ女が苦手っていう弱点を克服しないとヤベぇんじゃねぇの?」

 イケメンで強くて頭脳も優秀な佐竹一貴の弱点……それは女性が苦手という意外なものであった。
 生まれて程無くして母親と死別し、その後は警察官でもあった厳格な父の下、男手一つで育て上げられた。おかげで礼儀正しい好青年に育ったのだが、祖母以外に女性と親密に触れ合う機会が殆ど無かった上に、父親の硬派な育て方も災いし、結果的に女性との接し方が分からない悲劇のイケメンとなってしまった。

 友人もそんな彼の生活環境を把握しているが、流石にそろそろ克服しなければ駄目だろうと思っていた。というのも、彼自身の事情も深く絡んでいるからだ。

「イケメンのお前が自分から苦手な女を避けるから、その皺寄せがこっちに来るんだよ」
「皺寄せ?」
「ああ、お前と友達だからって理由だけで女子達が俺の所に殺到してさ。『佐竹くんはどんな女性が好きなの?』『佐竹くんは何時が暇なの?』って質問攻め。そこで俺に興味を持ってくれれば良かったんだけど、結局どの女子も質問し終わったら即サヨウナラだ。性質が悪いにも程があるぜ!」
「むっ、それは……スマン」
「スマンじゃねぇよ! お前が弱点を克服してくれたら、こっちだって困らないんだっつーの!」
「だ、だが……そう言われてもだな……」

 女性に対する苦手意識を持つせいで友人に迷惑を掛けてしまっている事は、確かに反省しなければならないだろう。だが、そもそも女性を苦手とする自分に対し、急に女性と向き合えるようになれと言われても無理な話だ。
 女性を意識するのはおろか、女性の姿を想像するだけで赤面してしまう。女性と会話したりしただけで呼吸を忘れそうになる。佐竹が面と向き合える女性は自分よりも遥かに年上か年下か……老婆か園児ぐらいだろう。
 目の前のイケメンがそのどちらかに手を出したりするシーンなど想像したくもないが、逆を言えば可能性もあるからこそ友人も気が気でないのだ。

 それ程までに佐竹一貴は女性が苦手であった。というか、接し方が全く分からなかった。仮に今から克服しようにも、明日から始まる夏休みを丸々使い切っても彼の女性恐怖症を完全に克服するのは難しい。いや、不可能だ。

 だが、友人もそれぐらいは予想済みである。なので、彼の弱点を短期間で克服する為の切り札を用意していた。

「ふふふふ、佐竹よ。そんなお前の為にとっておきの物を用意したぞ」
「とっておき?」
「ちゃちゃちゃっちゃら〜。魔物アプリ〜」

 何処かのネコ型ロボットを連想させるような音頭を取りながら、友人が取り出したのは何の変哲の無いスマートフォンだ。しかし、真に注目すべきはスマートフォンそのものではなく、その画面に映し出されているアプリだ。

 友人のスマートフォンを覗き込めば、そこには彼が言っていた魔物アプリと思しき無数のゲームが画面一杯に載っていた。

「これは?」

 佐竹もアプリの存在は知っているものの、アプリゲームは然程やらない為に詳しくない。すると、友人はアプリに対する佐竹の反応を見て『ふふふふ…』と意味深な笑みを浮かべている。

「これは魔物娘と言う美少女ゲームだ。ゲームを通じて魔物娘と仲良くなっていき、最終的に女性に対する苦手意識はおろか、寧ろ女性に対し性欲がムラムラしてくるぜ」
「ゲームをするだけで良いのか?」

 友人の説明を聞いて、怪訝そうな表情を浮かべる佐竹。それもそうだ、多寡がゲーム如きで自分の弱点を克服出来るのならば苦労はしない。それも克服だけでなく、性欲も旺盛になるという話も胡散臭い。
 だが、友人は『このゲームを最後までやれば弱点は克服出来る』と強く太鼓判を押してくれた。

「生身の人間の女が苦手なら先ずは二次元の女を相手にするっていうのも一つの手だろう?」
「そういうものなのか?」
「そういうものかどうかは、ゲームをやり続ければ何れ分かるよ」

 イマイチ納得出来ない部分も多々残っているものの、カフェで別れる際に告げた『騙されたつもりでやってみろ』と言う友人の言葉を信じて魔物アプリをダウンロードしたのであった。




 早速家に帰った佐竹は改めて魔物アプリを眺め、画面一杯に映し出されたゲームの一つ一つを真剣に眺めた。
 アプリゲームとやらを体験するのは何気にこれが初めてではあるが、あくまでもゲームなのだから然程気負う必要もない。しかし、一方で本当に女性に対する苦手意識が克服されるのだろうかと不安になる気持ちもある。

 克服出来るか否かはさて置き、どちらにしてもゲームを選択しない事には何も始まらない。瞳を右から左へとスライドさせながら様々なゲームを見ていく中、佐竹の瞳があるゲームを捉えた瞬間、ピタリと止まった。

「ヴァルキリーチョイス?」

 ヴァルキリーチョイスと題名されたゲームの下には『戦女神の選択』と日本語に直訳されたタイトルが載っていた。

 そしてタイトル画面には肩甲骨まで伸びたロングヘアーが似合うブロンド髪のヴァルキリーが映し出されていた。
 
 両手足、両肩、胸元、腰回り、額をそれぞれ覆う頑丈そうな鎧と、左手に握り締められた盾は青を基調色としており、そこへ更にふんだんに盛り込まれた金の装飾が神に仕える戦女神の高潔さを強調している。
 鎧の隙間と下半身にはレース生地のような純白の布が彼女の素肌を隠し、清楚な女性らしさも一切損なっていない。

 そして右手に持った限りなく白に近い黄金の剣と、背中に生えた四枚の翼がより一層、ヴァルキリーを神々しい存在に引き立たせている。

 何時もは女性を見れば恥ずかしさや困惑がやって来るのだが、流石に二次元のゲームキャラだからか、恥ずかしさではなく純粋に彼女の姿に惹かれる何かを感じていた。

(成る程、これがアイツの言っていた克服の一歩という事か……)

 自分の意外な反応に驚く一方で、友人が言っていた事も強ち間違いではないと気付いたところで、早速『ヴァルキリーチョイス』を開始した。

 ゲームを開始すれば、まず最初に始まるのは簡単なゲーム説明からだ。ヴァルキリーチョイスは人間誰しもが持つリズム感覚が勝敗のカギを握る、リズムゲーム呼ばれるものであった。
 画面下に表示された二つの黒い横線の上を丸ボタンが右から左へ向かって流れていき、画面左端に設けられた縦のラインを通り過ぎた瞬間に押すというものだ。丸ボタンは攻撃と回避を意味する赤と青の二種類があり、タイミングを合わせて押せれば敵を攻撃したり、相手からの攻撃を回避したり出来る。勿論、タイミングを誤れば攻撃は外れ、逆に攻撃されてダメージを受ける。

 ゲーム内容は兎も角、プレイ方法としては宛ら太●の達人を彷彿とさせる。

 因みにヴァルキリーチョイスには十個のステージが用意されており、一つのステージに付き九体の雑魚キャラと一体のボスキャラ……即ち、十体の敵を倒して漸くステージクリアとなる。無論、ステージが上がれば上がるほど、雑魚キャラも雑魚と思えぬ程に手強くなり、ボスキャラは最後の砦と言わんばかりに鬼の如くに強くなる。

 またゲームを進めていくと所々でヴァルキリーがプレイヤーに対して質問を投げ掛けたり、進むべき未来を決めるように選択を求めるシミュレーション要素も兼ね備えている。タイトルにあった『チョイス』という部分も、此処の所を指しているのだろう。

「ふむ、ではやってみるか……」

 ルールやゲームの流れを把握し、早速ゲームをスタートさせる。すると、早速画面には美しいヴァルキリーの姿が映し出され、ニコリと画面の向こうに居る佐竹に対して微笑む。

『お待ちしておりました、主(しゅ)よ。貴方と共に戦える事を誇りに思います』

 このゲームではプレイヤーは神の声となってヴァルキリー達に指示を与える。所謂、神の御導きとやらだ。そして彼女達はそれに従って行動し、その行動の行き着く先に待ち構える結果によって様々なエンディングに辿り着けるのだ。

 ハッピーエンドもあれば、バッドエンドもあるだろう。故に物語に大きく関係する重要な分岐点を如何に見極めるのかが、ゲーム攻略の鍵だと言える。

 そしてゲームを開始すれば、最初の内はスライムやゾンビなどRPGの基本とも言える雑魚モンスターが敵として出現し、リズムも単調なものばかりだ。ゲーム初心者である佐竹でさえ安心出来る程、簡単にゲームを進められた。

 戦闘シーンも八頭身の美しいヴァルキリーから、二頭身のヴァルキリーへと変わり、これまた可愛らしい二頭身のモンスター娘と戦うシーンは戦闘とは思えぬ程に和やかな雰囲気を孕んでいる。

 そんなこんなであっという間にステージ1のボス『クィーンスライム』を討ち果たしたところで、今まで戦闘シーンから一転し、突然画面上に八頭身のヴァルキリーが現れた。そして同時に画面下には台詞を表示する四角い枠が表れ、そこにはこう表示されていた。

『今、貴方はヴァルキリーの目の前に立っています。戦いを終えたヴァルキリーを労って下さい』

 恐らくプレイヤー、即ちヴァルキリーが唯一と信じる神が戦いを終えたばかりの彼女の前に姿を現した……と説明しているのだろう。そして彼女達を労う事が運命の選択に繋がるに違いないと佐竹は読んでいた。

 早速会話を進めてみれば、最初は何の変哲もない会話……『主のおかげで助かりました。この調子で私を御導き下さい』など神に仕えるヴァルキリーらしい会話で、物語の選択は中々現れない。

 まだ今回は無いのだろうか。そう佐竹が思った直後、画面の中のヴァルキリーが恥じらいを覚えたかのような赤ら顔を浮かべ、以下の台詞を告げた。

『あ、あの……主よ。宜しければ、今晩は御一緒に休まれませんか?』

 ぎゅっと下半身を纏うレース生地を掴みながら精一杯懇願するその様子は、好意を抱く男性ならば『もしや!?』と期待してしまうだろう。そして台詞が消えると、今度は二つの台詞が表れる。

“分かった、共に休もう”
“いや、今日は一人で御休みなさい”

 縦に並んだ台詞の隣には→の矢印が付いており、これでどちらかを選べというのは言わずとも分かる。色気や恋愛ゲーを好む人間ならば問答無用で上の台詞を選んだかもしれないが、佐竹一貴という男は真面目な男である。人生で一度もその手のゲームに手を出した事もなければ、恋愛の駆け引きなんてハッキリ言って無知だ。

 また友人の話でゲームさえクリアしてしまえば、女性に対する苦手意識を克服出来ると思い込んでいたのも災いした。そして彼は生真面目にゲームと向かい、生真面目な回答を選んだ。

「一緒に寝るなんて破廉恥な。駄目に決まっているだろう」

 そう呟きながら、さも当然のように下の彼女の願いを拒絶する台詞を選択した。途端にヴァルキリーが少し不満気な、それでいて悲しげな表情を浮かべたが、乙女心に疎い佐竹が彼女の表情の変化の裏に隠された想いを汲み取れる筈がなかった。




 その後もステージを進めていくに連れて難易度も上がり、ステージをクリアする度に発生する選択肢イベントの中身、もとい戦乙女のアプローチは過激さを増す一方だ。最早、選択肢イベント=Hイベントであると言っても過言ではないぐらいに。

 だが、彼女からのあからさまなアプローチに対し、佐竹は持ち前の鈍感さで交わし続けた。

『主よ、傷の具合を見て貰っても宜しいでしょうか?』
「手足の傷を見るか、全身を隈なく見るか……。傷と言っているのだから、当然手足だろう」

『主よ、体を洗って貰えませんでしょうか?』
「男女の入浴は別々なのだから、ここは遠慮しよう」

『主よ、一人で眠るには寒いでしょう。私の身体で温まって下さい』
「俺は暑がりだから、気にする必要なんて無いぞ」

 ゲームの中に居るヴァルキリーからの台詞に対し、真面目に受け答えをする佐竹。それに対し画面内の彼女は徐々に不機嫌になっていき、ゲーム後半に差し掛かった頃にはそれを隠そうともせずに表情に出していた。

 しかし、それさえも佐竹は気付かず、ゲームなのだから……という理由で深読みはしなかった。



 やがてヴァルキリーチョイスのステージも残る所3つのステージを残す所になった頃、このゲームを紹介してくれた友人から電話が掛かって来た。丁度自宅の風呂場から上がったばかりだったので、佐竹は慌てる必要も無くスムーズにスマホを手に取って電話に出た。

「もしもし、どうしたんだ?」
『よぉ、佐竹。そっちはどうだ?』
「どうだ……と言うと? 夏休みの課題なら殆ど終わっているが―――」

 真面目な回答を口に出すと、電話の向こうから『違う!』と突っ込みを入れる声がやってきた。

『ゲームの方に決まってんじゃん! もう全部クリア出来たか?』

 向こうから電話を掛けて来たのだから、先にそう言えば良いものを……そう思いつつも、佐竹は『いや、まだだ』と律儀に答えた。

「あと残す所、ステージも3つだけとなった。最初は自分にクリア出来るかと不安だったが、意外と俺の性に合っているのかもしれない」
『それは良かった。実はな、あのアプリゲームについて伝え忘れていた事があったんだ。それも一番重要な事を』
「何だ?」

 今更になって一番大事な事を伝えられても既に遅い気がしないでもないが、逆に言えば今からそれを教えると言う事は十分に間に合うという事なのだろう。佐竹が冷静に頭の中で分析すると、案の定、それは的中した。

『あのアプリゲームを全部クリアするとメッセージが表示されるんだ。確か……“人生を棒に振りますか”ってな感じだったかな』
「物騒なメッセージだな。で、それは拒否すれば良いのか?」
『違う、OKするんだ』
「……何?」

 それを聞いた時、一瞬友人の冗談かと思った。何故に態々、そんな物騒極まりないメッセージを受け入れる必要があるんだと。しかし、友人はそんな佐竹の心境を察したかのように言葉を続ける。

『まぁ、聞けよ。確かに物騒なメッセージではあるが、内容としては決して悪くはないぞ。噂によれば、それを受け入れれば可愛い彼女が手に入るらしい』
「可愛い彼女なんて、俺には――」
『馬鹿! そもそも、何の為に俺がこのゲームをお前に勧めたと思っている!? お前の弱点を克服する為だろうが!』
「うっ、それは……」

 そこで魔物アプリを始めた本来の目的を言われれば、流石の佐竹も口答え出来ずに無言になってしまう。

『兎に角だ。全部クリアしてしまえば、その文章が出る筈だ。良いな、絶対にOKしろよ! じゃあ、それだけだ』

 自分の用件を言い終えると友人は一方的に電話を切り、ツーツーと電話が切れた事を意味する電子音が耳に入るのを確認した所で佐竹もスマホを切った。そして自分が手にしているスマホを見詰めながら、先程の友人が告げた重要な言葉を反芻する。

「“人生を棒に振りますか”……か」

 確かに人生を棒に振るなんて、耳にするだけで恐ろしいと思う。なので一瞬、ゲームを続けるか否か迷いはあったが、一度始めた事を中途半端に止めるのは良くないという父の教えが頭に過る。またメッセージが本当に存在するのか確かめたいという恐い物見たさもあり、佐竹はすぐさまゲームを開始した。



 友人からの電話から十日余りが経過し、いよいよゲームもラストを迎えようとしていた。ラストを迎えるまでに何度敗北し、何度リトライしただろうかと思い、セーブデータと共に記録された対戦記録を振り返ってみれば、既に20敗近くにも上っていた。
 だが、それもゲームクリアに辿り着く為の必要不可欠の敗北である。そしていよいよ、佐竹はヴァルキリーチョイスの最後のステージへと挑む。

 最後のステージと言うだけあって、ボスの前哨戦として登場した敵キャラも中々手強いものであった。それこそ二つ三つ前のボスの方がマシだと思えてしまうぐらいに。
 しかし、佐竹も一度や二度の敗北で諦めず、何度もリトライを繰り返して敵を撃破してく。そして苦労の末に最後の敵を打ち倒すと、遂にラスボスが出現する。

 ラスボスはRPGやシミュレーションのラストを飾るに相応しいドラゴンだ。これさえ倒せば、念願の全ステージクリアが待っている。

 いざ、ドラゴンに最後の勝負を挑んだのだが……やはりと言うべきか、ラスボスとの対決は困難を極めた。今までと比べ物にならないボタンの数と速度、そして複雑で先が読み辛いリズムがゲームをより困難にする。

 だが、一方で『それでこそやりがいがある』と純粋にゲームを楽しむ自分も居た。少し前までアプリゲームさえした事の無い、佐竹の数少ない心境の変化であった。最早、女性恐怖症を克服するという目的は佐竹の頭の中から消え去っていた。

 持ち前の集中力の高さと剣道で鍛えられた反射神経、そしてゲームを続けていく中で身に付けた巧みな指捌きを活かし、徐々にリズムを掴んでしまえば、後はボタンを如何に正確に押せるかだ。
 的確にボタンを連打し、避ける所は避ける。攻撃は多少失敗しても問題無いが、回避が失敗すれば大ダメージは必至だ。何としてでも避けるべき所は避けなければならない。

 そして二十回にも及ぶコンティニューの末に、遂にその瞬間が訪れた。

 只管にボタンのみに集中していたら、最後のボスとして立ちはだかっていたドラゴンが突然消滅した。ふとドラゴンのHPを確認してみると、膨大に感じたHPがゼロを示していた。

 言わずもがな、佐竹の勝利である。それを実感したのは、ドラゴンを討伐し終えて感動の最終回を匂わせる雰囲気で画面上に現れたヴァルキリーを見た瞬間だ。

『主よ、やりました! 遂に……遂に世界に平和を取り戻す事が出来ました!』

 ヴァルキリーの台詞を見て、佐竹は無意識にガッツポーズを作る。ここまで来てしまえば、後はスタッフロードを待つばかり……と思い込んでいた彼の脳裏に友人の言葉が浮上する。

「待てよ、そう言えばゲームがクリアすると“人生を棒に振りますか”ってメッセージが出る筈だったな」

 画面の中ではヴァルキリーとの最後の会話シーンの真っ最中であり、そのメッセージとやらが出てくる気配は見当たらない。もしくはステージクリア後の恒例イベントとも言える、ヴァルキリーの選択イベントが終わってから出るのかもしれない。

 そう考えているとゲーム中の会話もいよいよ終盤に差し掛かり、佐竹が予想した通り最後の選択イベントが始まる。

『主よ、これからも共に居てくれますか?』

“ああ、勿論だ”
“いや、これからは貴女一人で十分だ”

 最後の選択イベントで提示された選択肢は上記の二つ。今までの選択イベントとは異なり、あからさまな色気を感じさせる雰囲気も無い、至って真面目なものだ。だが、真面目だからこそ佐竹は逆に悩んだ。
 佐竹はヴァルキリーを単なるゲームのキャラと言うよりも、一人の女性として見做していた為、常に紳士的だと思う方を選択する様に心掛けていた。最も本人の性格……特に乙女心を理解出来ていない性格が二者択一の選択に大きく影響したと言えるが。

 では、最後の質問はどうだろうか。最早ゲームは全てクリアしたのだから、前者でも後者でもどちらでも良いだろう。しかし、佐竹はそうは思わなかった。

 仮に目の前にヴァルキリーが居たとして、前者の台詞を選べば彼女は素直に喜んでくれるだろう。しかし、後者の言い方をすれば彼女を不用意に傷付けてしまう恐れがある。だが、最後のイベントで何かどんでん返しがあるのではと勘繰ると、万が一の可能性も捨て切れない。それが余計に彼の決断力を鈍らせる。

 ヴァルキリーが目の前に居たら……と仮定した瞬間、佐竹はハッと気付いた。今までの自分は彼女の立場に立って、彼女の想いや気持ちを汲み取っていただろうかと。
 答えは否だ。今までの自分は不純な男女交際をしてはいけないと真面目に考え込み、常に正しい道を選び続けて来た。傍目から見れば正しいかもしれないが、それは裏を返せば彼女の気持ちを察しようとしなかったという事でもある。

 所々のイベントを振り返ってみれば、確かに彼女の想いがチラホラと見え隠れしていた部分もあったかもしれない。今更ながらに気付くと、自分が如何に女性に対しての配慮がなっていなかったのかが良く分かる。故に情けないと思う気持ちが強かった。

 だが、重要な部分に一度気付いてしまえば、後は簡単だ。

 ヴァルキリーの立場に立ち、彼女が喜びそうな答えを選択する―――そして彼が選んだのは当然前者の台詞であった。

『ああ、勿論だ』

 それを選んだ瞬間、画面の中に居るヴァルキリーに変化が表れる。頬を朱色に染めながら、明るい花が咲き誇るが如くに破顔したのだ。
 これを直視した佐竹も思わずドキリッと心臓が軽く跳ね上がってしまった。俗に言うトキメキなのだが、二次元とは言え女性相手にそれをするのは生まれて初めてである。

 また恋愛はおろか女性とまともに向き合う事すらしなかった佐竹は、これがトキメキであるだなんて気付きもしなかった。

『嬉しいです、主よ。その言葉を頂けただけでも、私は幸せでございます』

 選択した言葉を聞いて嬉しそうに微笑むヴァルキリーを見て、佐竹も釣られて笑みを浮かべてしまう。何故か自分も幸せになるような、心が温まるのを感じていたのだが、この感情が何なのかは今の彼には分からなかった。

 そして会話が少し続いて、ヴァルキリーが最後に『私と共に闘ってくれて、有難うございます!』とプレイヤーに向けて最後のメッセージを送った直後、それは現れた。

『ヴァルキリーチョイスのルート1コンプリートクリア、おめでとうございます! このまま続けるも良し、特典を楽しむも良し! 但し、特典を楽しむ場合は貴方様の人生に多大な影響を及ぼす可能性があります』


『人生を棒に振りますか?』


 当初、友人からこのアプリに纏わる噂話を聞かされた時、流石にそれは眉唾ではないかと思ったものだが、スマホの画面に現れたのを見ると、強ちそうではないと思い知らされる。
 また友人はメッセージが現れたら迷わずに受け入れろと言っていたが、いざ肝心のメッセージを目の前にすると躊躇いが生じてしまう。何せ自分の人生を棒に振るという恐ろしい内容なのだ。躊躇しない方が無理というものだ。

 だが、そもそもゲームを始めたのは自分の女性恐怖症を治す為だ。ここで友人の言葉に反して拒否してしまえば、結局何の為にゲームを最後まで続けたのかが分からなくなってしまう。

 少なからずの恐怖感はあるものの、佐竹は覚悟を決めてメッセージの下に表示されている“はい”のコマンドを押した。
 するとどうだ。選択した途端に画面の映像がブツンッと途切れ、電源が切れた時と全く同じ黒一色の画面になってしまった。

「むっ? 電池切れか?」

 そう言って振り返ってみれば、確かにゲームに集中する余り、電池の残量などは全く気にも留めていなかった。なので、佐竹が言うように電池切れになった可能性は十分に考えられる。
 肝心な所で電池が切れた上に、セーブデータも取っていない。もしかしたら苦労した最後の戦いもやり直しかもしれないと思うだけで、佐竹はうんざりした気持ちになってしまう。

 しかし、全ては電池の残量を気にしていなかった自分の責任だ。そう己に言い聞かしながら、自室に置かれた勉強机の上にある充電器に手を伸ばそうとした―――その瞬間だ。

 真っ暗だったスマホの画面から、突如目も開けられないばかりの眩い光が発せられたのは。

「なっ、何だ!?」

 部屋全体を覆い尽くす程の眩しさに佐竹は思わず携帯を手から落としてしまい、両腕で顔を覆い隠す。しかも、その眩しさは数秒間も続き、その間ずっと佐竹は目を閉じる事しか出来なかった。
 もしこれが真夜中だったら、近所の人間も彼の部屋から発せられる異常な光に気付いただろうが、この日は偶々部活動が休みであり、佐竹は昼間からゲームをしていた。即ち、真夏の太陽が燦々と照り注ぐ中で非常に強い光が発せられても、それに気付く者は皆無であった。

「くっ……一体何が起こったんだ……?」

 暫く続いた光も漸く落ち着きを取り戻し、瞼の裏で強い光を感じなくなると、ゆっくりと目を開ける。短時間とは言え、あれだけの強い光は今まで見た事が無い。また光を発したスマホ自体に異常は無いのかと、思わず床に落としてしまったスマホに手を伸ばそうとした………が、そこで彼の視線は止まった。

 落ちたスマホの向こうに人の足が見え、徐々に徐々にと視線を上へと上げてみれば……ブロンド髪のロングヘアーが似合う絶世の美女と目があった。

「……………………………」

 この時、佐竹は自分が夏の暑さでイカれたのかと本気で思った。しかし、それは有り得ないとすぐに否定する。何故なら自分の部屋はこれでもかと言わんばかりに冷房が利いており、少なくとも熱中症に掛かる可能性は極めて低いからだ。

 では、目の前のコレは一体何なんだ。夢なのか、それとも幻なのか……等々考えていると、ブロンド髪の女性はニコリと微笑んだ。

「こんにちは、佐竹一貴様」
「!!!!?????」

 佐竹の脳にハッキリと女性の声が届き、女性に微笑み掛けられた途端に感情が暴走する。

 これは夢や幻などではない。紛れもない現実だ。だが、目の前の女性と向き合っている佐竹にそんな余裕など無かった。彼の中に居座る女性恐怖症が噴出し、更に様々な不可解とも言える出来事が起こり過ぎたせいで、まともな思考が取れなくなっていたからだ。

「あ、あ、ああにょ! あ、あ、あな、あななあにゃ!!?」

 瞬間湯沸かし器の如くに赤面し、言葉も呂律が回らず、そんな自分が恥ずかしいと思う以前に女性と面する事自体が恥ずかしいと思う。
 常に学校で見せる男前っぷりのイケメンは何処へやら。今の彼は女性の前では手も足も出せない赤子同然であった。

 彼に思いを寄せる普通の女性であれば、彼の情けない姿を見て幻滅するであろう。しかし、目の前に突如として現れた女性は佐竹の姿を見て幻滅するのはおろか、可愛い子供を見る様な優しい眼差しで彼へと近付く。対する佐竹は逃げようという考えさえも思い付かない程に追い詰められ、真っ赤にした顔に冷や汗をダラダラと流しながら慌てふためくだけだ。正に情緒不安定という言葉がピッタリだ。

「ふふふ、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。私は貴方の事をよく御存じですから。そして貴方も私の事を御存じの筈ですよ」
「ふぇ!? そ、そそりゃ一体どうゆいうごとでしゅかね!?」
「じゃあ、こう言ったらお分かりでしょうか? “主よ、これからも共に居てくれますか?”」
「!!! そ、れ、は……!」

 聞き覚えがある、なんてレベルではない。今さっきまでゲームの中で遣り交わしていた会話の一部分だ。そして改めて彼女の姿を見て、佐竹は気付いた。

「ヴぁ、ヴァル……キリー……?」

 金の装飾が施された青い鎧と盾、純白のレースの布地、白に近い金色の剣に背部に生えた四つの翼――――目の前に居る女性の姿は、紛れも無くゲームに登場したヴァルキリーそのものであった。

 確認の為に佐竹がか細い声で呟くと、女性……ヴァルキリーはラストに見せたのと全く同じ満面の笑顔で頷いた。

「そうです! 主よ!」

 そう言ってヴァルキリーは佐竹に飛び付くように抱き付き、そのまま彼の唇にキスを落とした。
 飛び付くまではまだ良かった。次いで抱き付くのもギリギリで良いとしよう。だが、最後のキスだけは無理だった。正直に言うと抱き付かれ時点で危うかったが、何とか踏ん張って意識を辛うじて保てていた。だが、彼女がキスをした所で限界を来たし、彼の意識は一気に遠退いていく。

「だ、大丈夫ですか!? 主よ! 一貴様!!」

 運良く背後にあったベッドに倒れ込み、フェードアウトしていく意識の中で佐竹が見た物は、自分の顔を心配そうに覗き込む美しいヴァルキリーの顔であった。




チュパッ ジュルッ クチュッ

「う……ん?」

 耳に入る聞き慣れない音と股間に感じる生温かい感触と共に、長い時間沈没していた佐竹の意識は漸く浮上した。佐竹が意識を失う直前、窓から見えた空は青々とした青空が広がっていた筈だが、今ではオレンジ色の夕焼け模様となっていた。

 それだけ長い時間、気を失っていたのかと呆然としていると――――

「ああ、良かった。御目覚めになったのですね」
「へ?」

 ―――目覚めた自分を見て、安堵する声が下半身からやって来た。その声に釣られて視線を下へと向ければ、気絶している間に脱がされたのか、下半身の衣服が無くっていた。

 そして半裸になった佐竹のペニスを愛おしそうに白くて細い繊細な指で撫でるヴァルキリーの姿があった。

「んなぁぁぁぁぁぁ!!!?」
「驚かせてしまい申し訳ありません、一貴様。でも危害を加える気は毛頭ありませんので御気になさらないで下さい」

 冷静沈着な物言いとは裏腹に、佐竹のペニスを撫で、それを見詰める彼女の瞳は今にも火傷しそうな程に熱が籠っていた。そして熱気の籠った視線で眺めるだけに止まらず、清らかな言葉を吐き出していた口で彼のペニスを咥え始めた。

グチュッ ジュボッ ブチュッ

 耳に入った音は目覚めた際に聞こえた音と全く同じであり、自分が気絶している間も彼女が己のペニスを口に咥えていたのだと嫌でも理解出来た。また彼女が自分のペニスを咥える所を堂々と見てしまった為、ペニスを舐める感覚が余計敏感に感じてしまう。

「やっ、やめ……! 汚い……! うぁぁぁ……!」
「んぐっ、ぷぁっ。汚くありません。私の大事な人のペニスなんですから」

 一度ペニスから口を離し、佐竹の言い分に反論するや再びペニスを咥え込む。大事な人と言われたからか、はたまたペニスを咥えているからか。もしくは両方なのか。佐竹は顔を真っ赤にさせ、視線をなるべく下に向けないようにする。

 だが、それでもペニスを舐めては吸う卑猥な音と、ペニスから伝わって来る感覚は逃れようがない。出来れば耳さえも塞ぎたかったが、ペニスを舐める快感に耐えようとシーツを握り締めているので精一杯だ。

 只管に快感から耐えようと頑張っていたが、ヴァルキリーの巧みなフェラは確実に佐竹を絶頂へと追い込んでいく。更にヴァルキリーは本格的に佐竹をイカせようとし、彼の腰に手を回して、そのままペニスを喉奥まで飲み込む。

「うっ!! 待っ――!」

 喉奥まで飲み込んだペニスが喉の襞を掠った瞬間、佐竹の背筋に電気が駆け上がる。絶頂を……射精を意味するものだと察し、慌ててヴァルキリーの頭を掴んでペニスから引き離そうとする。だが、彼女も負けじと腰に回した手に力を込めて抵抗する。
 このままでは彼女の口に出してしまうと危惧して意識的に射精を止めようとするも、一度出そうとするものを止められる程に佐竹も器用ではない。そうしている内にペニスに限界が訪れ、遂にその時が訪れてしまう。

「あっ、ああああ……!」

 射精の勢いを止める事が出来ず、背中を仰け反らせ、そのまま彼女の口の中へと大量の精液を放出してしまう。青臭い精液がヴァルキリーの口内を満たし、それでも尚ペニスからは次々と若い精子が吐き出される。やがて口の中に留め切れなくなると、ドロドロとしたゼリー状の精液をゆっくりと喉奥へと飲み込んでは胃に流し込む。

 この時、ヴァルキリーがペニスを喉奥まで咥え込んでいた為、佐竹は自分が射精した精液を彼女が必死に飲んでいるのだと喉の動きで手に取る様に分かった。自分の精液を飲ませてしまった事や、我慢出来なかった事などが申し訳なく、恥ずかしいやら泣きたいやら……。

 しかし、当のヴァルキリー本人は最後の一塊をゴクンッと音を立てて飲み干すと、素敵で何処か妖しげな笑顔を振り撒きながら、身に纏っていた鎧とレースを脱ぎ始める。丁寧に一つ一つを脱いでは、床に落として行くその姿は何処かエロティックであり、佐竹も視線を逸らすどころか凝視してしまう。

 そして全て脱ぎ終わり、一糸纏わぬ姿になったところで佐竹は我に返って慌てて視線を逸らした。女性恐怖症を有する佐竹にとって女性の裸は刺激が強過ぎる。だが、あからさまに目を背ける佐竹を見てヴァルキリーは寂しそうな眼差しで彼を見据える。

「……私の裸は御嫌いですか?」
「い……いや、その……」

 声を聞いただけで、彼女の心境が手に取る様に分かってしまう。悲しんでいる。赤裸々になった己の姿を、目の前に居る愛しい男性……佐竹に見て貰えない事に。
 佐竹も彼女の悲しい気持ちを理解出来ない訳でもないが、女性恐怖症と板挟みになってしまい、中々彼女の方へ目を向けられなかった。我ながら情けない話である。

「それとも私の身体は醜いですか?」
「ち、違う! 君は綺麗だ!」

 自分の方を見てくれない佐竹に対し、落ち込んだように呟くとバッと弾けるように佐竹は顔を上げて彼女の方を見る。勢い任せではあったものの、真っ向から彼女の裸に目を向けたのだ。しかし、それも長続きせず、すぐに顔を真っ赤にさせて視線を横へ泳がせてしまったが。

 だが、ヴァルキリーにとっては短時間でも自分を見てくれた事が嬉しかったらしく、さっきとは打って変わった明るい声が返って来た。

「本当ですか! 有難うございます!」
「あ、ああ……。君は……綺麗だ。肌も白くて…や、柔らかそうだし、髪だって長くて綺麗な金髪だし。あと身体のスタイルも……良いと思う」

 女性と面と向かって話す経験が殆ど無かった為、ヴァルキリーと何を話せば良いのか正直分からなかったが、彼女に対する印象を只管に並べてみる。だが、これらは決して世辞などではない。全て彼の本音だ。そもそも女性と二人きりの空間で、世辞を言う余裕など彼には持ち合わせていなかった。

 問題なのは、それを直視出来ない己の心の弱さだ。それさえ克服出来れば、自分ももっと女性と上手く付き合えるかもしれないのに……と考えると自分が嫌になる。

 やがて話す事が無くなってしまい、無言の時が訪れると佐竹はヴァルキリーから目を背けながら呟いた。

「す…すまない、俺は……その……余り女性と話した事が無くって……何を話せば良いのか、分からなくって………そのぉ……すまん」
「ふふっ、知っていますよ。元々このゲームを始めたのも、女性恐怖症を治すように友達から勧められたからでしょう?」
「! ど、どうしてそれを……!?」
「私は貴方がダウンロードしたアプリゲームの中に居たんですよ? 貴方の事ならなんでも知っています。勿論、私の事を直視出来ない理由も。ですから、気になさらないで下さい」

 彼女が自分の事を理解してくれているという言葉に救われるような気持ちになるが、一方でこのままでは女性恐怖症を引き摺ってしまい何も変わらないと自分自身を叱責する声もある。

 暫しの葛藤の末、佐竹は意を決した表情で彼女と面と向き合い、顔を赤くしながら懇願した。

「た、頼む……! こ、こんな情けない俺だが……弱点を克服するのに、きょ、きょ、協力してくれないか!?」

 余りにも情けない滅茶苦茶な音程で懇願し、最後の部分なんて声が上擦って限りなく裏声になっていた。彼を知る人物が聞けば爆笑ものであっただろうが、ヴァルキリーは笑うどころか自分を頼ってくれた事に喜びを感じたのか満面の笑みを浮かべ、これを快く了承してくれた。

「はい、喜んで! 一貴様のお役に立てるなら!」
「そ、それと……その一貴様って様付けで呼ぶの止めてくれないかな? 普通にさん付けか呼び捨てにする方が、マシというか……寧ろ、良いと言うか……」
「あら、そうでしたか。では、一貴さんで」
「ああ、そうしてくれ……」




「では、一貴さん。先ずは手で私の身体を触って下さい。もし直視するのが辛ければ、目を瞑っても構いませんよ」
「あ、ああ……」

 まるで何かの手解きをするかのように、ヴァルキリーは佐竹の手を取り、そのまま自分の肌に触れさせる。最初はお腹や腕と言った他愛の無い場所からではあるが、男性とは大きく異なる柔らかな肉付きに、佐竹は思わずゴクリと固唾を飲んでしまう。

 そしていよいよ佐竹の手が彼女の胸へと誘われると、流石に直視出来ずにギュッと目を閉じてしまう。しかし―――

むにゅっ

「ああっ♥」
「!!!」

 ―――掌に走る柔らかい感触と乳首と思しき固い突起物、更に彼女の甘い声で興奮を覚え、思わず目を見開くのと同時に彼女の胸をギュッと強く掴んでしまう。

「あんっ!」
「あ、ああ! ご、ごめん! 思わず掴んでしまって……!」
「……ふふ、大丈夫ですよ。私はこう見えても強いんですから。さぁ、改めてゆっくりと私の胸を揉んで下さいませ」
「う、うん……」

 素直に彼女の言葉に従い、佐竹は彼女の胸をゆっくりと揉み始める。白くて柔らかい乳房は吸い付くように指に喰い込み、パッと離すと瞬く間に元の形に戻るほどに弾力と張りに富んでいる。
 生まれて初めて手にする感触に最初は戸惑いを覚えていたが、やがて慣れて来ると自分の手中で変化する乳を注意深く観察出来るようになった。但し、相変わらずの赤面ではあるが。

 すると、ヴァルキリーは自分の胸を揉んでいた佐竹の右手を取ると、ゆっくりと自身の秘部へと誘う。佐竹も学校の保健体育で女性の肉体の構造を理解している。しかし、当然ながら触れるのは生まれて初めてだ。そして女性の大事な部分を触れた瞬間、柔らかな感触と火傷しそうな熱を帯びた肉壺に驚き、思わず目を見開いてしまう。

「!!」

 指先が秘部に触れると“くちゅり……”と生々しい音が耳に届き、佐竹は言葉を失った。今、自分は女性の秘部に触れている。そう想像するだけで頭が沸騰し、股間のペニスに力が漲る。
 膨張したペニスに気付いたヴァルキリーは『あはっ♥』と笑みを零し、右手で優しくそれを握り締めた。

「お互いに触り合いっこしましょうか♥ 私は一貴さんのペニスを扱きますので、一貴さんは私のヴァギナを触って下さい♥」
「い、良いのか……?」
「ええ、寧ろ大好きな男性に触れられて……嬉しいぐらいです♥」

 大好きな男性とは他ならぬ佐竹自身であり、恋愛に鈍い佐竹でも、それぐらいは即座に理解出来た。そして彼女からの告白に顔を真っ赤にさせながら、右手の指を動かした。

 ヴァギナの周辺は柔らかな肉が盛り上がっており、胸とはまた一味違う弾力と張りがある。やがて指は中央部……膣の入り口へ辿り着き、か細い膣穴に中指を入れれば、肉厚な膣全体で中指を持て成すかの如くにキュウキュウに吸い付いてくる。

「あっ♥ ああんっ!♥」
「ご、ごめん!」

 ヴァルキリーも甘い悲鳴を上げて彼の侵入を心から歓迎するが、佐竹はそれを痛がっていると勘違いして慌てて指を引き抜こうとする。が、それは彼女自身の手によって阻止される。

「い、いやぁん♥ 抜かないでぇ♥ もっと、もっとグチャグチャにしてぇ♥」

 男性の情欲を煽ぎ立てるような扇情的な喘ぎ声と卑猥な台詞、そしてヴァルキリーから発せられる甘い匂いに、佐竹の頭にあった筈の恥ずかしさや女性恐怖所といった認識は掻き消されていく。やがて彼の頭の中がピンク色一色に染まり切った頃には無我夢中で指の動きを速め、彼女のヴァギナを責め立てる。

「あっあっ! やぁん! 私のオマンコ、一貴さんの指で虐められて……! あーっ! イクイク! イクゥ!!」

 大声を上げながら絶頂を迎えたヴァルキリーの秘部からは盛大に潮が噴き出し、その秘部に指を突っ込んでいた佐竹の腕にビシャビシャと掛かる。
 本来の佐竹であれば、仰向けになって身体を小刻みに痙攣させるヴァルキリーを気遣っただろうが、今の彼は違った。彼女が絶頂に達するや佐竹はすぐさま指を引っこ抜き、彼女の身体に覆い被さったのだ。

 ヴァルキリーは一瞬目を見開いたが、すぐに目を細め、優しい面持ちを浮かべながら佐竹の頬を白魚のような手で撫でた。

「はぁー! はぁー!」
「ふふ、漸く一貴さんも男の欲望に忠実になりましたね。そう、それで良いのですよ。“勇者様”」

 荒々しく息を吐き出し、これでもかと目を見開き、性欲に飢えた野獣のようなギラついた瞳でヴァルキリーを見詰める佐竹。誰がどう見ても、彼が正常な状態でないのは一目瞭然だ。

 だが、これもある意味でヴァルキリーの仕業なのだ。神に仕える戦女神として有名なヴァルキリーも実は魔物娘の一種であり、彼女の身体からは性欲を呼び起こす魔力が発せられている。
 それに当てられた“勇者”は徐々に魔力に冒され、自身の欲望に忠実となる。つまり、今の佐竹は魔力によって今まで押さえ付けられていた性欲が解放され、枷が外れた獣の状態なのだ。

 獣と化した佐竹の頭の中には恐怖症や羞恥心などない。あるのは目の前の女性を犯し、種付けしたいという雄の本能のみだ。その証拠に彼のペニスは血管が浮き出る程に膨張し、先端からは我慢汁をポタポタと垂れ流している。

 それを見てヴァルキリーが満足そうに微笑むと、佐竹に向かって足をM字に広げ、更に自身の秘部の襞を指で押し広げて彼に見せ付ける。

「さぁ、勇者様。どうぞ私の肉壺を堪能して下さいませ♥」

 甘い台詞と美しい肉体を餌に目の前の勇者と言う名の獣を誘惑すると、案の定、彼は理性を失った野獣の如くヴァルキリーに襲い掛かる。
 佐竹本人にとっては生まれて初めての性交ではあるが、雄としての本能が理解していたのだろう。腰を沈め、彼女が示した肉壺へ自身の猛々しいペニスを捩り込む。

「あっ! あああああ!♥」
「グゥゥゥゥ!!」

 勃起したペニスは彼女の膣に張られた処女膜を軽々と突き破り、その奥に待ち構えていた子宮へ到達する。まるで焼けてしまいそうな程に熱く滾ったペニスは、ヴァルキリーの膣の筋肉をその熱で解し、更なる心地良さと快感を彼女に与える。

「あっ! あっ! 良い!♥ おちんちんの熱さで子宮が焼かれちゃうぅぅぅ!♥」

 付け加えて野生の雄犬宛らの激しい突きも加わり、彼女が快楽の海へ落ちるのはそう難しい事ではなかった。

「あっ! ああああ!!」

 だが、野獣同然の交尾は呆気なく終わりを告げた。挿入した直後から激しく腰を振り続けた末、僅か一分足らずで、佐竹は彼女の膣内に大量の精液を放出させてしまった。
 無理もない。何せ、本能に支配された雄の頭にある事と言えば、自分の種を後世に残す……即ち、確実に種付けする事を最優先とするからだ。相手を思い遣る気持ちなんて二の次、三の次だ。いや、野獣となった時点で持ち合わせていないと見るべきかもしれない。

 そして脳裏に走る快楽と種付けする本能に赴くがままに、佐竹は一度出してから間も無くして再び腰を動かし始めた。一回射精したと言うにも拘らず、彼の勃起力は全く衰えていない。
 恐らくはヴァルキリーから当てられた魔力の仕業なのだろう。そして彼に抱かれている彼女も御満悦の表情を浮かべ、彼の背中に手を回ししがみ付いた。

「すごぉい♥ 二回も出したのに……もうこんなガッチガチになってるぅ♥」
「ふぅー! ふぅー!」

 完全に性欲に溺れた佐竹の背中を優しく撫で上げ、彼の全てを受け入れる。それが今のヴァルキリーに出来る事であり、同時に魔物娘でもある彼女の喜びでもあった。

 流石に一度出しただけあってか、今度は先程以上に性交が長引いたが、それでもヴァルキリーのヴァギナにペニスを出し入れするのを繰り返すばかりの単調な動きが続く。
 気持ち良い事に変わりはないが、やはり物足りないと思う節もある……そうヴァルキリーが僅かに表情を浮かばせると、突然佐竹は繋がったまま、彼女を仰向けからうつ伏せへと体勢を強引に変えさせる。

 四つん這いの格好になったヴァルキリーの背後に佐竹が立ち、我武者羅に交尾したせいで若干赤く染まった無防備なヴァギナに再びペニスを突っ込んだ。

「ふぁぁぁ!♥ いやぁん!♥ これじゃ……私まで雌になっちゃうぅぅぅ!♥」

 まるで本物の雄犬と雌犬の交尾のように佐竹が激しく腰を打ち付ければ、その都度にヴァルキリーが甘い悲鳴を上げる。また自分達のSEXの格好が完全に野生動物の交尾にも見え、恥辱感を覚えると共に、返ってそれが快感となって背筋にゾクゾクとした電流が駆け上がる。

 そして佐竹の剛直がヴァルキリーの最奥を抉った瞬間、彼女の膣に二度目となる精液が注ぎ込まれた。

「あっ! あっ! また…出て…る!♥」

 息も絶え絶えになりつつも、子宮に注がれるドロドロとした精液の感触を感じて再び絶頂に達する。既に彼女の膣は佐竹の精液で満杯になっており、二度目の射精によって新しい精液と古い精液が混じり合い、彼がペニスを引き抜くと塊状の精液がヴァギナからゴボリッと音を立ててベッドのシーツへ落ちていく。

「あっ♥ 駄目ぇ♥ 折角の勇者様の精液がぁ♥」

 自分の秘部から零れ落ちた精液を見て、ヴァルキリーは慌てて落ちた精液に舌を這わせて犬のように舐め取る。とても神に仕える戦女神とは思えぬ姿ではあるが、落ちた精液を舌で舐め取る彼女の姿は情欲をそそる。
 性欲に溺れて理性を手離した佐竹も同じ理解を有しているらしく、彼女の姿を見て三度出したばかりのペニスが剛直にそそり立っているのが良い証拠だ。そして落ちた精液を舐める為にお尻を高く上げている彼女の背後に回り、精液が零れ落ちる膣穴に栓をするかの如くに太いペニスを突き入れた。

「ひぁぁぁ!♥ す、すごぉぉぉい!♥ こ、こんなの初めてぇぇぇぇ!!♥」

 グチュグチュと生々しい音を立てながらヴァギナを掻き混ぜれば、接合部が空気を含んで泡立ち、宛ら出来たてのミルクシェイクのようだ。激しく腰を打ち付けたせいで臀部が赤く染まり、ヴァギナも擦り切れて血の混ざった精液と愛液が混ざった滴がポタポタと落ちていく。

 だが、それでもヴァルキリーは苦痛を訴えるどころか、喜びに満ちた表情で佐竹を受け止めた。更に佐竹が覆い被さる形で強引に唇を奪うと、それに応えるように彼女も舌を絡め合う。互いの愛を確認するように執拗に続いたディープキスに、彼女は身も心もふやけてしまったかのような笑みを彼に向けた。

「あっ! あっ! イクっ! イクイクイクっ! イクゥゥゥゥゥ!!!♥」

 そして激しいSEXの末に甲高い絶叫を上げながら絶頂に達し、それに合わせて膣がキュゥゥゥゥッと締め付ける。その締め付けに佐竹も耐え切れず、本日四度目となる精液を彼女の中に吐き出した。

 魔力のおかげと言えども、流石に短時間で4回も出すのは相当体力を消費させたらしく、出し切ったのと同時に彼女に覆い被さる形で深い眠りに就いてしまう。
 戦女神の肩書を持つヴァルキリーが倒れ込んで来た佐竹に易々と押し潰されるような事はなかったが、それでも彼女も同様に激しい性行為で体力を消費し、彼を押し退ける事は出来なかった。

 また眠ってしまったものの佐竹のペニスは未だに勃起したままの状態で彼女と繋がっており、彼女もその逞しい感触から逃れるのが忍びないのか、背中に圧し掛かった彼の存在を愛おしそうに眺めながらゆっくりと目を閉じた。




「本っっっっ当にすまない!!」

 ヴァルキリーが目覚めた時、自分の背中にあった重圧は消え去っており、その重圧の元であった佐竹は彼女が眠るベッドに向かって深々と土下座していた。否、彼女が眠るベッドではなく彼女自身に向けてだ。
 それもその筈、性欲を向上させる魔力に冒されてしまったとは言え、野生の生殖本能を剥き出しにしながらヴァルキリーを欲望のままに犯してしまったのだから。因みにSEXしている時にも彼の意識はしっかりとあったのだが、魔力で強化された野獣の自分に負けて止める事が出来なかった。

 そして一眠りしたおかげで野生は収まり、代わりに理性を取り戻した彼が第一に行ったのは、彼女に向かって土下座で謝る事だった。だが、一方のヴァルキリーは頭を下げた佐竹を見て、きょとんとした表情を浮かべている。まるで『謝る必要なんて無いのに』と言いたげな顔で。

「あ、あの……一貴さん。私は別に何とも思っていませんから、顔を上げて下さい」
「いや、貴方がどう思っていようと、俺が謝らなければ気が済まないんだ!」
「でも、一貴さんが暴走したのも私の魔力が招いた事ですし……一貴さんが気に病む必要なんて―――」
「だから、責任を取らせてくれ!」

 彼女の言葉が終わる前に食い気味に言い切って突然立ち上がると、少し驚いたヴァルキリーの手を両手でぎゅっと握り締める。女性恐怖症からやって来る赤面顔を浮かべながらも、彼女から目を逸らさずに言い切った。

「俺と結婚前提で付き合ってくれ!」
「え……」
「お、俺は情けない男だ。げ、現にじょじょ女性の前で顔を真っ赤にしたり、碌に会話も出来ない男だ……。でも、これだけは確かだ。お、俺は……君が好きだ! あのゲームで見掛けた時からひ、ひ、一目惚れしていたのかもしれない……!」

 佐竹一貴、生涯最初で最後の告白は何とも切羽詰まった感の拭い切れないものであった。しかし、告白された側であるヴァルキリーはその言葉を何度も何度も脳内で咀嚼し、漸く理解すると佐竹に負けず劣らずに顔を赤くしていた。

 だが、その顔に墳怒や嫌悪はない。あるのは幸福による赤ら顔だ。

「だ…だから…こ、こ、こ、こんな俺で良かったら―――」

 生まれて初めての告白に四苦八苦しながらも必死に言葉を綴ろうとしたが、ふにっと佐竹の唇にヴァルキリーの滑らかな指が押し当てられ、そこで言葉が途切れてしまう。
 恐らく、彼女のそれは口を閉ざせという意味を示しているのだろう。だが、告白を中断させられたという事は、自分の告白が気に入らなかったのだろうかという不安な気持ちが噴出する。そして佐竹が不安げな面持ちでヴァルキリーを見詰めると、彼女はフッと柔らかな表情を浮かべて言葉を告げた。

「情けないなんて事はありませんよ。女性恐怖症って言っておきながら、勇気を持って告白して下さったんですから。それに私も、そんな真面目な一貴さんを愛しているんですよ」
「えっ……それって……」
「はい、こんな私に惚れて下さって有難うございます。ですから、責任や謝罪なんて考えず、純粋に私を愛して下さいね。一貴さん♥」

 その言葉を聞いた直後、佐竹はホッと安堵の表情を浮かべ、彼女をゆっくり抱き締める。何処か動きが固く、全体的にぎこちなさが残っているが、こういった部分も含めて佐竹一貴らしいと彼女は思った。

 そしてヴァルキリーも愛しい彼を抱き返し、その真っ赤な顔にキスを一つ落とすのであった。
14/08/01 22:45更新 / ババ
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■作者メッセージ
今回のヴァルキリーチョイスはドリルモール様が考えて下さったアプリアイディアを元にしております。ドリルモール様、有難うございましたw



夏が終わり、秋の中頃に入ったある日の出来事……

『―――おかげで女性恐怖症を克服する事が出来たよ。有難う』
「気にするなよ、友達だろ。実を言えば、お前自身が女性と普通に会話出来るようになっただけでも、こっちの負担は軽減されたも同然なんだしよ」
『そうか? そう言って貰えると俺も気が楽だよ』
(一貴さーん! そろそろ出掛けますよー!)
『おっと、そろそろ行かないと。これ以上、彼女を待たせると夜が大変だからな。じゃあ、また学校で』
「ああ、じゃあな………………そうか、魔物アプリの噂は本当だったんだな。胡散臭いと思って佐竹に吹っ掛けてみたが、思わぬ収穫だぜ。ふふふ、そうと分かれば早速実行だ!! 確か、アイツがプレイしたゲームは“ヴァルキリーチョイス”だったな。よし、佐竹みたいに清楚な金髪ブロンドの彼女をゲットして、俺も薔薇色の人生を満喫してやるぜ!! 」

数ヶ月後、佐竹は街中で蒼白い肌の銀髪美女と並んで歩くやつれた友人を見掛けるのであった。

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