連載小説
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無料の自販機と無量の宝箱
Μラピッドタウン・平也&満知子宅Μ
Μ満知子視点Μ


「起きてよ、へーくん」
「ぐー、あとごふん」
「それ今日で何度目よ、起きろ」
「ぐー」
「仕方ない、この吹き込メガホンで」
「ぐー」

『ねぇ、起きて、あ・な・た』

「ふぉぉぉ!」
「やっと起きたわね」
「満知子ちゅわぁぁん」
「スルー」
「ほぶっ」
「満知子ちゃん、何故オレの愛のダイブを避けるの?」
「喧しい、とっとと着替えを済ませて職場へ向かうわよ」
「そんな色っぽく起こされたら誰だって(性的に)襲い掛かっちゃうよ〜」
「何ならきつく起こしてもいいのよ?」
「スミマセン」


Μ住宅地Μ


「清々しい朝だ〜見てみろ満知子、輝く太陽と雲一つない空を」
「空は桃色だけどね」
「鮮やかな桃色はマーチヘアの象徴だ」
「ラピッドタウンはマーチヘアが多いからね」
「そういう満知子もマーチヘアじゃないか」
「何故かマーチヘアになったけどね」
「満知子の頭の中はエロエロだからマーチヘアになったんだよ〜魔物になれて良かっただろ?」
「少し背が伸びたのは嬉しかったわ」
「えー他にもあるだろ?こうして素直になれてさ」
「そうね、あっちにいたときよりは素直になれたカナ」
「じゃあ、素直にエッチ」
「しません、出勤しますよ」
「う〜」


Μ飛脚運送Μ


「おはようございます。ブルーグさん」
「ちぃーす」

アタシ達は、職場の責任者である見た目はアリスーーのバフォメットに挨拶をする。


「はぁー」


ため息をついたバフォメットーーブルーグさんは手の平サイズの宝箱を弄りながら、アタシ達に気付く。

「満知子くんに平也くん、おはよう。はぁー」
「今日も何かトラブルですか?」
「はぁー、昨日も捜索依頼及び伝言メモが殺到していてね。転送業を何だと思ってるのやら」
「それって例の討伐隊ですか」
「うん、女王様も勝手なお人だ。一万人をこの国へと招待させるなんて、しかも国中全体へと。おかげでこちらは彼らを応対する毎日だよ、はぁー」
「友人や恋人を捜してるのですよ。昨日もそういう人達に会いました」
「友人といえば、初太くんとは無事会えたかい?」
「はい、隣の里に住むマッドハッターの夫になってました」
「それは良かった」
「ただ驚きました。あの真面目そうな初太が魔物娘の夫になるなんて……」
「真面目に交わるのがマッドハッターにとっての普通だからね。はぁー、彼女達の真面目さ羨ましい」
「ブルーグさんも充分真面目じゃないですか」
「それは毎日魔力で処置してるからだよ、怠ると不思議の国の狂気に充てられ狂ってしまう。はぁー、サバト支部の長の役目さえ無ければ、兄上殿とあれこれ……」

「と言いつつも、ブルーグさんの服装や髪型ってアリスですよね?」
「これはサバトの正装だよ、平也くん。この支部の大半がアリスだからね」
「サバトといえばブルーグさんが持っている宝箱はサバトの新発明ですか?」
「これは『ミミックモドキ』といって、ミミックの性質を基にした収納箱だよ」
「中身はプレゼントの紐が二本出てますね」
「これは中身がグループ毎に分けられていてね、例えば『捜索願』と書かれた紐を引っ張ると」

ドサドサッ

「ぬわにぃ、小箱からあり得ない量の書類が出てきただとぉ!」
「紐を引っ張るだけで、収納していた中身が一気に飛び出す仕組みだよ」
「収納する時はどうするのですか?」
「箱口を対象に向けて、捜索願捕まえた♪」

スゥーッズボボボ

「ぬわにぃ、掃除機のように書類が吸い込まれてゆくぅ!」
「捜索願捕まえた♪これで収納完了だ」
「正に不思議の国クオリティっすね」
「はぁー、可愛く唱えないと作動しないプラス中身を小出しに出せないという課題があるけどね」
「ブルーグさん、スペアありますか?オレがモニター引き受けますよ」
「はい、スペア」
「ありがとうございまーす」
「いつもすまないね」

「ミミックか、何だかこの街にある自販機を彷彿しますね」
「満知子の言う通りだな、あの自販機の中にはーー」



「てめえら、こんな所で油売ってたのかぃ?」



まげにふんどしという江戸っ子スタイルの男が怒鳴った。

「兄上殿」
「土気衛門さん」

「とっとと持ち場につきやがれぇ!」

「げっ!?就業五分前だぞ、満知子」
「スミマセン、ブルーグさんに土気衛門さん、アタシ達は仕事に入ります!」

「宜しく頼むよ、君達がこの職場で一番頑張ってくれてるから」


Μ転送装置Μ


「おはようございます、先輩方」

「お早う満知子ちゃん」
「今日は装置点検の日かい?」

「はい」

「お願いね、私は彼と一緒に荷物の転送作業に入るわ」
「行こうか、ボクとキミ、二人で装置を起動しに」
「ええ」
「今日も張り切っちゃうよ」
「楽しみだわ、あなたのボタン操作
「君のレバー操作も楽しみだよ」
「ウフフ」
「アハハ」

(……)







「我慢よアタシ。装置起動が夫婦同士のプレイであることを。ホントはアタシだって、へーくんとヤリタイノダカラ-」







「へーくん、アタシの声真似する暇があるなら、反対側の点検に行って」
「満知子、俺の顔を見ずに言うなんて、照れ屋さん♪」
「今、色眼鏡してないから、へーくんの顔見たらナニするか分からないの!」

Μ点検終了・休憩時間Μ

「全機器異常無し、休憩入りまーす」
「満知子、昼はカフェだ」
「行こう、へーくん」


Μお菓子のカフェΜ


「スミマセン、只今満席で、十分待ちなんです」

「えー満席?」
「へーくん、待ってる間、店の前にあるベンチで飲みましょ」
「飲んでいいの?満知子の下半身から出るーー」
「自動販売機の飲み物・で・す」
「ハイ、ソウデスヨネ」


ΜカフェベンチΜ


「ホルスタウロスミルクをポチッと」ガコン
「この街の自販機は、全部無料なのがいいよな」
「そうね……このドラムロールさえ無ければ、アタシも絶賛するけど」

カラカラカラカラ『当たり』ガコン

「当たりが出たぞ満知子、受け口から別の商品が出てきたぞ」
「発情ティー・虜の果実味」
「はっはっはー、それ飲んで発情しろっていう自販機のメッセージなんだろ」
「ふん、別にいいわよ、マーチヘアは年中発情期だから紅茶一本なんて些細な事よ。次はへーくんよ、くれぐれも自販機の機嫌を損ねないようにね」
「見てろよ満知子、このビューテホーなオレ様の強運を、虜のジュースをポチッと」ガコン

カラカラカラカラ『大ハズレ』スホッ

「あら大変、ジュースが自販機の中へと吸い戻されたわ。正に大ハズレね」

「……もういっちょ!」ガコン

カラカラカラカラ『大ハズレ』スホッ

「もういっちょ!」ガコン

カラカラカラカラ『大ハズレ』スホッ

「もういっちょ(略

Μ

「十回連続大ハズレ、ショボーン」
「はい、へーくんの分」
「満知子、それはホルスタウロスミルクじゃないか」
「いいわよ、アタシには発情ティー・虜の果実味があるから」
「恩にきる」
「それにいくらミルクを飲んでも、胸のほうは柔らかく肌触りが良くなるだけでちっとも大きくならないのよ。何でかしら?」
「体質じゃね?」
「やっぱりミルク返して♪」
「スミマセン」



「オイ、そこの眼鏡二人組」



鎧を着用した兵士が声を掛けてきた。

(あの鎧、昨日見た討伐隊のと同じだわ)
「眼鏡二人組って、オレ達のこと?」

「そうだ、この箱に入ってる物は自由に飲食していいのか?」

「……」
「……」

「聞いているのか?」

「ええ、無料ですよ」
「ボタンを押せば下から商品が出るぞ」

「そうか……おい」

「何ですか?」

「ここにある飲み物は安全なんだろうな?」

「安全ですけど」
「別に毒なんかはいってませんよ」

「俺が聞きたいのは媚薬の有無だ!仲間達は住民に勧められた紅茶を飲んだら、発情し、住民と淫らにあんな事を……」

「それなら右端にあるホルスタウロスミルクがありますよ」
「わかった……オイ、ミルクが二種類あるぞ、やはり俺を欺こうとーー」
「ミルクには通常と特濃の二種類があって、特濃は魔力がたっぷり込められてるけど、通常は魔力は控えめだから人間が飲んでも大丈夫です!」
「本当なんだな?」
「この国では安易に嘘をつくのはタブーなの!」
「嘘だと?魔物娘がか?」

「満知子の言うとおりですぜ、討伐隊のダンナ」
「何だそのドヤ顔は」
「見てくだせぇ、あそこにいるチェシャ猫達を」


「この道の制限速度は時速四十キロよ」
「しかも乗獣免許無しで魔界豚に乗るなんてタイーホ決定だゾ」

「何だと、この猛獣使いであるΒ-1007様に口答えする気か!」
「はーい、答えなら牢屋でじっくり聞きますからね」

「何だこの無駄にデカいドーベルマンは、俺の頭を噛むな!吊り上げるな!」
「心配ないゾ、その犬は優しいから、大人しくすれば怪我しないゾ」

「あの黒い制服のチェシャ猫とマーチヘア、そして巨大な犬が俺の仲間をどこかへ連れていったぞ。自警団か?」
「彼女達は街の治安を守る役目を任された婦警ですぜ」
「フケイ?治安を守る?魔物娘がか?」
「彼女達は警察犬に扮した夫と共に、交通違反や嘘つきを取り締まっています。違反者は即牢屋に投獄されますよ?」

「しかも、連帯責任として番いも投獄されるぜ」
「魔物娘もまき添いを食らうのなら好都合だな」

「因みに未婚男性なら、看守の魔物娘に調きょ……慰められて、出所する頃には隣に生涯の伴侶がいるでしょうね」
「ウッ、それは不都合だな」
「あれでもまだマシな方らしいですよ、もし女王様の目に止まれば、直接極刑場へ転送されるそうです」
「女王だと……」

「大丈夫よ、問題さえ起こさなければ住民に親しまれる娘達ですから」



「問題さえ起こさなければね」
「満知子、何故俺を見ながら言う」

「……わかった、これ以上女王に逆らうわけにはいかないな。ホルスタウロスミルクを購入しよう」ガコン

カラカラカラカラ……

「何だこのドラムロールは?」
「それはスロット、アタリが出ればもう一本サービスよ」

ガコン

「『アタリ』に止まったら、同じミルクがもう一本出てきた」
「それがここの自販機の醍醐味よ」
「ふーん」ゴクゴク



「美味い」



「もう一本飲むか」ゴクゴク



「空になった……もう一本購入するか」ガコン

カラカラカラカラ『ハズレ』

「一本しか出ないぞ」
「ハズレだから一本しか出ないわよ」
「いいなぁ〜こっちは十回連続『大ハズレ』でジュースが一本も飲めなかったんだぞ」

「まあいい、もう一本買えばいいだけの話だ」

カラカラカラカラカラカラカラカラ……



『大アタリ』



「オオッ!『大アタリ』が出たぞ」

「ぬわにぃ!?」
「大アタリですって!?」

「お前達のその反応、もう二本出てくるのか」

「いや、全然」
「自販機の『大アタリ』の意味はねーー」



パカッ♪



「はーい、大アタリ促
「エッ、マーチヘアッ-!」



「中にいる魔物娘にお持ち帰りされる事なのよ」



「待て俺は魔物娘の夫にはなりたくない!」
「私の所にくればそのミルクをたっぷりご馳走してあげるわ促
「エッ、ホント?」
「ええ、売切になるまで飲ませてア・ゲ・ル」
「うん♪」



バタン♪



「見ろよ満知子、兵士が自販機の中へ連れ込まれたぞ♪」
「オシアワセニー」
「ふっふっふー♪」
「へーくん、また購入するの?」
「ああ、俺の推測が正しければポチッと」ガコン

カラカラカラカラ『大アタリ』

「やったー!商品が飛び出すぞー」

ガラガラガラガラガラガラ

「って飛び出し過ぎよぉ」
「フハハ、ジュースが無量♪これ全て無料♪ミルク兵士は魔物娘からの愛に感無量♪」
「へーくん、ラップしてないで何とかしなさーい」
「しんぱーいないさー、このミミックモドキを使えば、飲料捕まえた♪」

スゥーッズボボボ

「流石サバトの発明品、ジュースが箱へと吸い込まれてゆくわ」
「飲料捕まえた♪」

スゥーッズボボボ

「コンプリート(ミルク以外)」

「気付けば十分経ってるじゃない」
「店内に入ろうぜー」
「参ったわ、無駄に長い十分だった気がするわ」
「満知子、俺、タイムサービスの紅茶飲みたい」
「えーあの紅茶を飲むの?」
「いいじゃん別に」
「何が起こっても知らないよ」
「ハプニングなんてどんとこいです」

「お席はこちらでーす」



Μ続くΜ
14/04/08 23:28更新 / ドリルモール
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■作者メッセージ
※おまけ※
※Μ-169視点※



ゴクゴク

ご馳走さま♪

凄いわ、自販機越しを見ていたけど、直に見ると素晴らしい飲みっぷりね♪

あれ、もうミルクが無い。

次は特濃ホルスタウロスミルクよ。

ゴクゴク

ウメー、股間が熱くなるくらいウメー

熱くなってきたでしょ、それはあなたが立派なインキュバスになった証拠よ。

そうか、なってみたら、何だ大したことないな。ましてやもっとミルクが欲しい、ミルクが欲しい、おっぱいが、おっぱいミルクが欲しい♪

それを飲み干したら、今度は私のおっぱいを飲ませてア・ゲ・ル

ウン、兎乳をたっぷり頂戴♪

本来ならホルスタウロスが寄ってくる身体だけど、牛には取らせないわ。
マーチヘアのたゆんたゆんなおっぱいミルクをたっぷりとびゅーってぶっかけて味わせてあげる、そしてお返しにあなたのオチンポから出るミルクをおっぱいの谷間に、おっぱいの先端に、おっぱい全体にかけて♪

ウン、股間にたっぷり溜まったミルクを沢山かけてあげる。先ずは特濃ミルク百本飲み干すぞー♪



※おまけ・おわり※



ドリルモールです。

今回は平也と満知子の日常回そのいち。
舞台はタマゴの里から一変、ラピッドタウンへと移ります。よって今回は初太とマドラの出番はないのであしからず。

次回はラピッドタウンにあるカフェ『お菓子のカフェ』での昼食、まかいもタルトを腹を満たし、タイムサービスの紅茶を飲んだ平也がーー



とまあ、ネタバレしますと平也をはじめ、紅茶を飲んだ男性客全員が大きな犬になります。
発情して自分の妻や未婚のウエイトレスに襲い掛かります。

ここでふと気付いた点がひとつ。


男性が犬化したら、言語の疎通は可か不可か?


言葉が通じず、発情して妻や魔物娘に襲い掛かるかもしれませんし、
一見鳴き声だけど、不思議と妻だけが通じるかもしれませんし、
普通に人間の言葉を発したり、あるいはテレパシーみたいなもので伝えたり等々……。

次回迄に自分なりの設定を考えてみます。







用語集
【自販機】
 ラピッドタウンに設置されている自販機。
 機能は我々の世界にある自販機と同じだが、電力の代わりに魔力で動いており、商品は全て無料である。
 種類は飲料と栄養食の二種類あり、栄養食の方は媚薬無しのため数は少ない。

 全ての自販機にドラムロール式のスロットが搭載されており、大当たり,当たり,ハズレ,大ハズレ,の四種類がある。当たりはもう一本ランダムに出てきて、ハズレの場合は特に無し、厄介なのは大ハズレと大当たりで、大ハズレは購入した商品が強制的に没収され、大当たりは中から魔物娘が出てきて、男性は自販機の中へ連れ込まれ夫にされて、女性はマッドハッターの帽子を被せられる等して魔物化させられる。
 因みに男性が連れ込まれた直後の自販機は必ず大当たりが出て、中の商品がほぼ全て排出され、商品全てに売切のランプが点灯される。
 実は自販機の中には予め魔物娘が一人入っており、スロットは彼女の手動で回っており、スロットの結果は全て彼女達の気分で決まっていると過言ではなく、男性を連れ込んだ後で上述の大当たりが出るのは自販機の仕事を放棄して夫との交わりに専念していると言われている。

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