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第三話 一人の少女と一匹のシー・ドック
 
 秋といっても、まだ蒸し暑い所が多い。その場所は海。きらびやかに光る海、並みの音と共に鳴く海鳥たち。その砂浜で走り回ってる少女。

 「パパ!!早く!!早く」砂浜を走り回ってる一人の少女。藍色のワンピースにオレンジ色のサンダル。

 「ま・・・・待ちなさい。マリー」走っていく娘を追いかける父親ジョン・ハーミットさん

 「あらあら、マリーはホントに元気ね」バスケットを持ってにこやかに微笑む妻のカティーさん。

 今日は、天気もよくジョンさんのお仕事が休みなどで家族で近くの浜辺でピクニック。

 「きゃはははは・・・・・あれ・・・何かな?」砂浜で走り回っていたマリーちゃんが急に立ち止まり何かを見ていた。

 「どうしたんだ?マリー」娘の様子がおかしいことに気が付いたジョンは急いで、マリーちゃんに駆け寄った。

 「パパ・・・なんかこの子弱ってるみたい・・・・・」マリーちゃんが抱えていたのは、尾ひれがついて顔が犬みたいになっている不思議な生き物。弱ってるのか力無く鳴いていた。

 「ん?これは、シー・ドックじゃ無いか・・・さては、群れとはぐれたな・・・」そう言うとマリーちゃんからシー・ドックをもらうと常に常備している応急処置用の薬を取り出した。

 「パパ・・・・」心配そうにマリーちゃんが見守るなか、ジョンは緑色の液体をシー・ドックの口に流し込んだ。

        クゥ・・・・・クゥ・・・クゥ・・・・・

 苦いのか嫌がるように飲むシー・ドック。

 「これでいい。あとは自然に治るのを待つだけだ」そう言うと空になったビンをしまうジョン。

 「パパ・・・クゥちゃん助かるの?」

 「大丈夫だ・・・・・・マリーもしかしてクゥというのはこの子の名前か・・・」ジョンさんの腕の中で丸くなってるシー・ドック

 「うん!!だって、名前があったほうが良いでしょ」

 「そら、そうだが・・・・・」

 「と言うわけで、この子の名前はクゥちゃん!!!クゥクゥ鳴くからクゥちゃんだよ。ねぇクゥちゃん」そう言ってクゥちゃんと名づけられたシー・ドックは晴れてハーミット家の一員になりました。

 「あら、新しい家族?そしたら色々と準備しないとね」

 「いや、カティーそれはいいんだが、バフォ様から許可書をもらわないと・・・一応絶滅危惧種だし」色々な手続きが必要みたいですね。

 「よろしくね。クゥちゃん」

             クゥクゥクゥクゥクゥ

 嬉しいのか声をあげてなくクゥちゃん。今日から新しい家族が増えることにとても喜んでいるマリーちゃん。

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 「ただいま!!!」保育園から帰ってきたマリーちゃんは、すぐさまクゥのいる所に行った。

 「ただいま!!クゥ」そう言うとクゥを抱きしめた。

              クゥクゥクゥ

 クゥも抱きしめられて嬉しがっていた。その証拠に、尾ひれがパタパタと動いていたのだ。

 「きゃ!!クゥ、そんなに顔舐めないでくすぐったいよ・・・」しきりにマリーちゃんの顔をぺろぺろと舐めるクゥちゃん。

 「うふふ・・・・すごい懐いてるわね」

 「すごいな、シー・ドックはなかなか懐きにくいのに、マリーはすごいな!!」驚いているジョンさん。この方は魔界を代表する海洋学者。もちろん海の生態系や保護活動などにも力を注いでいるすごい人だ。

 「くふふ」

               クゥクゥクゥ!!

       二人は、まるで本当の姉妹のように遊んでいた。

 マリーとクゥはいつも一緒。遊ぶ時やご飯を食べる時・・・絵本も一緒に読む。お風呂も、もちろん一緒!!(いつも、クゥが最後に暴れまわってしまうのでジョンさんはいつも疲れ気味)そして、寝るときも・・・・・・・・

 いつものように、マリーちゃんとクゥに布団をかけてあげるカティーさん。煌びやかな、藍色の髪の毛を撫でマリーちゃんのホッペにキスをする。

 「むにゅ〜〜・・・・・クゥ・・・・・・だいしゅき・・・・」そう言うとクゥを抱きしめるマリーちゃん。

               クゥ・・・・・
 
 それに答えたのか静かに鳴くクゥ。その様子を見ながらドアを閉めるカティーさん。

          素敵な日々を過ごしていたマリーちゃん。

                  でも

             お別れの時間が近づいていた。

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                〜次の日〜

 いつものように、海の観察をしていたジョンさんが自分達の所ある群れが近づいてたのがわかった。はじめは魚の群れかと思ったが、それは違った。

 「カティー!!マリー!!!クゥ!!!こっちに来い!!!!」突然の大声で飛び起きるカティーさん。そして、目をこすりながら出てきたマリーちゃんと欠伸をしながら出てきたクゥ。

 その光景はまさに神秘的だった。なんとシー・ドックの群れが海面から顔を出してこちらを見ていたのだ。

 「すごい!!!クゥがいっぱい!!!」そう言った瞬間一匹のシー・ドックが近づいてきた。そして、一声鳴いた。

            オオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン

 その声を聞いた瞬間、クゥはその群れの中に入っていった。

 「クゥ!!!!!」急いで後を追いかけようとするマリーちゃんの腕を掴むジョンさん。

 クゥが戻ってきたのを見るとシー・ドック達は次々と海の中に潜っていった。そして、母親らしきシー・ドックと共に海に潜っていったクゥ・・・・・。

 「クゥ・・・・・・・」クゥの姿を見たマリーちゃんはそう呟くとそのまま座り込んでしまった。

 「マリー・・・・・・」静かに抱きしめるカティーさん。

 「マリー・・・・クゥは、本当の家族の所に戻ったんだ」何とか説明するジョンさんの説明もむなしくそのまま、自分のベットに戻りそのまま泣き続けた。

 いままで、クゥと遊んだことを思い出しては泣き続けるマリーちゃん。そのまま泣き疲れて眠ってしまった。

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               〜海の宮殿〜

 起きたら、私は全然知らない所にいた。パパやママの姿は無かった。

 「ここ・・・・どこ?」あたりを見回しても知らない場所・・・でも、遠くのほうでこっちに何かが近づいてきた。それは・・・・・・

              「クゥ!!!!」

 私は、クゥに抱きついた!!!!確かにクゥはみんなと一緒に出て行った・・・でも、クゥは確かに私の目の前にいた。

 「クゥ!!!クゥ!!!」名前を呼びクゥに抱きついていると、どこからともかく声が聞こえてきた。

 (マリーちゃん・・・マリーちゃん)

 「だれ?」あたりを見回しても見当たらなかった。

 (ここだよ!!ここ!!!)

 声のする方を見るとクゥがいた。

 「もしかして・・・・クゥ?」

 (そうだよ!!!マリーちゃん)

 「クゥ!!喋れるの?」

 (今だけだけど・・・・マリーちゃんにお礼が言いたくて・・・・)

 「クゥ・・・・」

 (マリーちゃんに拾われてなかったら、僕死んでたのを助けてくれた・・・そして、短い時間だったけど、とても楽しかった!!!!ありがとうマリーちゃん)

 「クゥ・・・・クゥ!!!私も、楽しかったよ!!!」再びクゥを抱きしめるマリーちゃん。

 (これ、お礼・・・・マリーちゃんに合うと思うんだけど)そう言うと、近くの岩場に置いてあった珊瑚の王冠を渡した。

 「え!!!これ・・・魔法の王冠」驚くのも無理が無い。この王冠はある絵本に出てきた王冠と一緒の形・色・装飾すべてがおんなじだった。

 「クゥ・・・ありがとう」そう言うと王冠を頭の上に乗せるマリーちゃん。

 (嬉しいな!!そう言ってもらえると!!そろそろ・・・時間みたい・・・・)

 「え!クゥ!!!待ってよ!!!家に帰ろう!!!!」

 (ううん、ここが僕の家なんだ・・・マリーちゃんに会えて良かったよ・・ありがとう)

 「待って!!!クゥ!!!行っちゃ駄目!!!!クゥ!!!!!!」マリーちゃんの声と共に周りが暗くなっていく・・・・・・・・・・・・・・・・・

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          〜ハーミット家・マリーちゃんのお部屋〜

 「クゥ・・・・・」マリーちゃんは目を覚ましたが、その場所はいつもの自分の部屋であった。

 そして、手にはクゥからもらった王冠が光っていた。それは、まるでクゥがいた思い出のように光っていたのだ。
10/11/17 00:58更新 / pi-sann
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■作者メッセージ
 〜海の宮殿〜

 「ポセイドン様。ありがとうございます」

 「よいよい・・・心優しき少女にお礼は出来たかな、サーク王子・・・」

 「はい・・・ポセイドン様。マリーちゃんにお会いさせてもらいありがとうございます」

 「ふむ・・・時がたてばまた会えよう・・・・その王冠がまた会わせる」微笑む茶色い髭を撫でながら言う海の神ポセイドン・・・・・

 「はい・・・・」静かに頭を下げるシー・ドック。そこには、マリーちゃんにあげた王冠がもう一つ残ってあった。

 


 今回は、海の神ポセイドンが登場!!!だしても大丈夫だったかな・・・・さてさて、どうでしたか?皆さんも一度は経験されたと思います。そんな時を思い出させるお話でした。でわ、感想お持ちしてます!!!

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