連載小説
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EP
 俺は、アルトヴィッヒの亡骸をディリアーテの墓の横に埋葬した。彼女の兄は、それを認めようとはしないだろう事は分かっていたから、彼にはその事を伝えはしなかった。
 もしかしたら、心のどこかでアルトヴィッヒを殺した彼にわだかまりがあったのかもしれない。

 クラウニスが黙って墓を見つめていると、傍らにいたミシェリスが話かけてきた。

「これが、彼の選んだ正義の結果なの?」
「さあな・・・、俺は運が良かっただけさ・・・。」
「運が良かった?」
「ああ、もし、彼が殺した女性が邪悪な存在で、生きている限り悪を振りまく存在であったならば、彼は死ななかったのかもしれない。」
「・・・」
「もし、俺が助けた君の両親が真に邪悪な存在で、生きながらえたことで悪を振りまいたら・・・。その振りまかれた悪の犠牲者の肉親が、俺が助けたことで家族が不幸な事になったと考えたのなら・・・、殺されていたのは俺の方なのかもな。」
「パパとママは邪悪な存在じゃないもん!」

 ミシェリスは口を尖らせて否定した。

「そうだな。」
「それに、邪悪な存在だったら、きっとクラウニスに粛清されているよ。パパとママは邪悪な存在じゃないって、分かっていたから助けたんだよ。」
「ありがとうな。」
「ありがとうだなんて、照れるじゃないのよ。」

 まるで照れ隠しの様に、クラウニスから視線を外したミシェリスは、ふと視界に入ったディリアーテの墓を見つめて、呟いた。

「なんで、彼女はサキュバスになる事を否定したのかな?生まれたときからサキュバスの私には分からないや。」
「彼女は、生まれて直ぐに両親を亡くし、兄と2人だけで生きてきた。そんな、2人にとって信仰は生きていくための心の拠り所として、決して裏切る事ができないモノになっていったんだ。」

 今の教会は、魔物は悪の存在であると教えている。そのため、彼女は自信が魔物になりつつあると理解したとき、このまま行けば自分は邪悪な存在になると信じていたのだろう。

「彼女は、自信が魔物と化していく事実を受け入れることが決してできなかった。そして、その始末を自らの婚約者に託したんだろう。だけど、信じて託したその思いこそが、アルトヴィッヒを追い詰める結果になってしまった。」
「・・・」

 しばらくの沈黙ののち、ミシェリスが尋ねるように呟く。

「信仰って何なんだろう・・・。」
「ある人は言う、信仰とは『死』を考える哲学だと。また、ある人は信仰とは『正義』『道徳』『美徳』を伝える手段だと。」
「そう言うあなたは?」
「そうだな・・・、さしずめ『信じる心』を養う事かな・・・。」
11/01/17 23:16更新 / KのHF
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■作者メッセージ
 もう一つだけ、続きます。

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