連載小説
[TOP][目次]
後編.時間外勤務はベッドの中で
「海……ですか?」
「夏季休暇を使って、皆で行こうと思ってるんだ」

オフィスの快適さを守る為に、エアコンがフル稼動し始めた頃。
すっかり頭から抜け落ちていた、夏季休暇の話が持ちかけられた。

「取引先と調整して、なるべく全員同時に休めるようにする。
 光之助くんもどうだ? 青空の下、海辺でやるバーベキューは最高だぞ?
 他に予定があるとか、しっかり休みたいとかあるだろうし、強制はしないが」
「そうですね……少し、考えさせてもらえますか」
「あぁ。パンフレットを渡すから、じっくり考えてくれ」

クロエからパンフレットを貰い、席に戻る。
予定日はしばらく先だが、決断は早い方がいいだろう。

(どうすっかな……特に何の予定も無いんですよねぇ……
 なら、とりあえず参加してみますか? ただ家で寝てるのもアレだし)

適当に考えながら、パンフレットを鞄にしまい、パソコンを立ち上げる。
今日の予定は、セリスが獲得した案件のシステム作成。
設計はコンパクトにまとまっており、スケジュールにも問題は無い。

「さて、やりますか」

新天地での勤務を始めて1ヶ月。
光之助の顔には、血色が戻ってきていた。



昼休みが終わる数分前。
席に戻った光之助に、社長の第一秘書のアヌビス、カミラが駆け寄る。

「今、大丈夫か?」
「はい、何でしょうか?」
「来客だ。あまり嬉しくない類の。選択は君に委ねる」
「……?」

「ブレインクラッシュ株式会社の課長と、同社員のデブ。
 君に話があって来たそうだ。今なら、私が追い返す」

光之助の、前の職場からの来訪者。
来た理由は、何となく感づいてはいるが。

「一応、会うだけ会ってみます」
「意外だな。まだ未練があるか?」
「まさか。追い返してもいいですけど、あえて顔合わせとこうかな、と。
 アポなしで来るくらいですから、断っても多分、また来ます。
 なら、ここでケリをつけた方が早いでしょう」
「そういう考え方もあるか。なら、私と社長も同席したい。いいか?」
「構いませんよ」

今更訪れた理由。
それを確かめる為、光之助はカミラ、そして途中で合流したメリルと共に、
応接室へ歩を進めた。



「……解雇を、無かったことにしたい?」
「はい。その上で光之助を弊社の社員として再雇用を……」

来客は、光之助の元上司と、元先輩。
二人とも、最後に会った時と比べて、酷くやつれていた。

光之助を解雇してから1ヵ月後、抱えていた案件が全く進まなくなり、
ほぼ全てのプロジェクトが炎上した。
その時ようやく、今まで会社が回っていたのは、光之助のおかげだったと気づき、
恥も外面もなく、株式会社モンスターソリューションを訪問したのである。

「はいそうですか、それじゃあお返ししましょう、と言うとでも?」
「いえその……光之助! お前は分かってくれるよな!?
 お前を育ててくれた会社が困ってるんだ! 今、何をすればいいか!」

元上司がしどろもどろになりながら、ここまで黙っていた光之助に話を振った。
しかし、返ってきたのは。

「自分はあなたからも、あなたの会社からも、何一つ教えて頂いた覚えはありません。
 今、自分がするべきことは、この会社に貢献すること。ただ、それだけです」

至極当然の、決別の表明。
それを聞いた元上司と、元先輩は激昂した。

「この恩知らずめ! 誰のおかげで食っていけたと思ってるんだ!」
「役立たずのお前の為に、心を鬼にして訓練させてやったんだぞ!?
 本来ならお前なんか、パパに言いつければ簡単に……」



「黙れクズ共」



ドスの効いた声が、辺りを静めた。
その発生源は、光之助でも、カミラでもない。

「こんな優秀なプログラマーを死にかけるまでこきつかって、
 今までの所業を謝ることもせず、戻って来い?」

普段のゆるゆるとした口調も、ニコニコ笑顔も消えた、
株式会社モンスターソリューション社長、メリル。
ゆっくりと、拳を上げ。

「……っざけんなよテメェら!」

勢いのまま、目の前のテーブルを真っ二つに叩き割った。

「ひっ!」
「このテーブルみたいなことになりたくなかったら、さっさと帰れ。
 交渉はお互いにブツがあって成立する。お前ら、何があるんだ?」
「ええっと……そうですね……あっ、そうだ! 光之助をお返し頂ければ、
 私どもが御社の社員として勤務いたします! なので、どうか!」
「……カミラ、どう思う?」 
「一応、入社テスト受けさせてみますか。光之助君と一緒に。
 能力差がどれだけあるかを知れば、自分達の愚かさにも気づくでしょうし、
 光之助君、無試験でうちに入ったことに引け目感じてるって聞きましたし」
「ん、そっか。それじゃ何個か用意して。一般常識系。
 プログラミングじゃ勝負にならないだろうから」
「かしこまりました」
「光之助くん、それでいい?」
「はい。プログラミングには自信ありますけど、それ以外は微妙なんで。
 自分の能力水準を知るいい機会です」

悪あがき以外の何ものでもない、無謀な交渉。
ただあしらうだけでも十分なことだったが、カミラはあえて、最もシンプルで、
最も分かりやすく、そして残酷な手段を選んだ。



「床の間のある和室、正解〜。次はタクシーの席。上座から順に?」
「運転手の真後ろが上座で、続いて運転手から斜め後ろに位置する席、
 後部座席の真ん中と来て、助手席が下座、ですよね?」
「正解だよ〜。光之助くん、マナーも完璧だね〜」
「学生時代にビジネスマナー本、よく読んでたんで」

「馬鹿者! 結婚式の祝儀袋に蝶結びを使う奴がいるか!」
「えっ、慶事は繰り返すように蝶結びじゃ……」
「違いますよ課長! 結婚式は例外で、結び切りでこういう銀色の綺麗な……」
「それは不祝儀袋だ! 貴様は結婚式で誰か死なせる気か!」
「えぇっ!? これも違うんですか!?」

結果は、雲泥の差だった。
問題を次々とクリアしていく光之助に対し、元上司と元先輩はボロボロ。
どこをどうしても、光之助と交換で入社させるメリットは無かった。

「これで分かっただろ。貴様らのような負債と、矢畑光之助という財産の差が。
 諦めて、大人しく帰れ」
「はっきり言って、あなたがたの下で働いていたということにゾッとしました。
 もう二度と来ないで下さいね」

カミラと光之助は、心底うんざりしている。
片や、自分達と光之助の価値の差が分かっていなかったという、愚かさに対して。
片や、常識を全く知らない者が、自分の上司と先輩だったことについて。

それでも、この期に及んで、元上司と元先輩の二人は食い下がった。

「そこを何とか! そうだ、レンタルという形でも構いません!
 1ヶ月、いや、半月だけでも!」
「断る。半日だってお断りだ」
「今抱えてるプロジェクトまとめるだけでいいんだ! 何なら、給料は倍出す!」
「どうせ『そっちの給料の』倍でしょう? それでも最低賃金以下ですし」
「いい加減にしろ! こんなことをして、パパが……」
「立場ぐらい理解して下さいね。その気になったらいつでも吸収合併して、
 あなたもあなたのお父さんも路頭に迷わせることもできるんですよ?」

下手に出ても、これまでしでかした事が事。
脅しをかけても、どちらの立場が弱いかは明らか。
文字通り『話にならない』。

粘りに粘ること15分。
メリルが咳払いをして、語り始める。

「そもそも、光之助くんに頼む必要、無いですよね? 炎上とか、嘘でしょう?」
「本当なんです! というより、何故こんなところで嘘を……」
「居るんでしょう? なら、いいじゃないですか」
「……? と、おっしゃいますと……?」



「居るんですよね。『お前の代わりなんてごまんと』」



「……あっ!」

日常的に、光之助に浴びせ続けていた暴言。
現実は、光之助の抜けた穴を埋める社員は、誰一人として存在しなかった。

「そういえば、いつも言ってましたよね。誰ですか、俺の代わり?」
「いや、それはその……言葉の綾で……つい、うっかりというか……」
「いい仕事をしてくれる社員に『うっかり』暴言を浴びせ、『うっかり』解雇し、
 『うっかり』人材がいないから、戻ってきてくれ、という訳か。
 ……どの面下げて来たんだ?」
「うちには光之助くんの代わり、いないんで。勿論、他のみんなの代わりもいません。
 ただまぁ、わたしにも多少は慈悲あるんで、潰れたら連絡下さい。
 このビルの清掃の仕事くらいなら、紹介してあげないこともないですから」
「でも……」
「喋るなクズが」

真っ二つになったテーブルが、粉々になった。
見た目は少女でも、メリルはホブゴブリン。その怪力は、伊達ではない。

「今から一文字でも何か言ったら、今度こそコレと同じ運命を辿らせる。
 黙って立ち去るか、清掃『される』物体になる仕事をするか、好きな方を選べ」

選択肢など、ない。
口をパクパクさせながら、来客は帰っていった。



「……社長、問題になりますから抑えて下さいと言いましたよね?」
「ごめんね〜。あんまりにも酷いこと言うもんだったから〜」
「まぁ、そこは私も同意しますが……」

壊れたテーブルを片付けながら、カミラは愚痴る。

よほど、腹に据えかねていたらしい。
重厚な造りの応接テーブルは、ベニヤ板のように割れ、サイコロのように砕けていた。

「光之助君。これで、いいんだよな」
「ええ。……本当に、ありがとうございます。俺なんかの為に」
「卑下するのはよせと、前に言っただろう。そうそう、今日はもう帰っていい。
 こんなことがあった後で、仕事をする気にはなれんだろう」
「いえ、そんなことは」
「光之助くんの代わりはいないけど、光之助くんの仕事を代わりにやってくれる子なら
 たくさんいるから〜。前の会社の有給も消化する前にやめさせちゃったし、
 その分くらい、しっかり休まないと〜」

先程までの恐ろしい形相はどこへやら、メリルはいつも通り。
とてもとても、先程テーブルを破壊したのと同じ魔物娘には見えない。

「といっても、今休んでも何をすればいいのか……」
「ん〜……あ、それじゃ、ちょっとサービス残業してくれないかな?
 ……わたしの家で」

メリルの家での、サービス残業。
流石に、それが言葉通りの意味であると思うほど、光之助は馬鹿ではない。

「自分で、良ければ」
「光之助くんでいいんじゃなくて、光之助くんじゃないとダメ。
 カミラちゃん、午後はクロエちゃんと連携してお願いできる?」
「かしこまりました。久々の仕事ですが、心配要りません。
 なんなら、明日も午後出勤で大丈夫ですよ。……光之助君も、な」

思わせぶりに、ウインク。
自分の考えは勘違いではないということを、光之助は確信した。



「おかえり〜。お風呂どうだった?」
「ガッツリ湯船に浸からせてもらいました」
「今住んでるとこ、お風呂無いんだよね? 普段どうしてるの?」
「流し台で首から上だけ拭いてごまかしてましたね。どうせ内勤なんで。
 こっちに来てからは、銭湯にも行けるようになりましたけど」
「給料、もう出たよね? もうちょっといいとこ住もうよ。
 衣食住は、楽しく生きていくためのキホン、だよ」

株式会社モンスターソリューション社長、小雲メリル邸。
周りの住宅より一回り大きい高級住宅だが、豪邸という程ではない。
その分、基本的な暮らしの設備のレベルがかなり高くなっている。

二人は今、寝室にいる。
ファンシーな家具に囲まれた独特な雰囲気の中に鎮座するベッドの上、
浴衣に着替えた光之助の隣に、パジャマに着替えたメリルが近づく。

「何か飲む? 一通りの銘柄は揃えてあるけど」
「いや大丈夫です。今酔うの、勿体無いですし」
「ふふっ、それってどういう意味かな〜?」

メリルは光之助の後ろに回り、もたれかかるようにして、頭を抱きしめた。
ふにゅりと、乳房がつぶれて広がり、光之助の背中の上半分が埋められる。

「ねぇ、光之助くん。わたしのこと、好き?」
「えぇ、勿論」
「そっか。……あのね、元々うち、光之助くんがいなくても回ってたの。
 あっ、光之助くんが来てくれてからは、業績もっと上がってるからね?
 だけどさ……きっかけは、わたしのわがままだったんだ〜」

メリルの口から語られたのは、昨年のこと。
光之助が社会人になってから、2年目に突入した時の話だった。



「前年比250%の黒字決算ですか。順調すぎて怖い位ですね。
 で、これもきっちり還元するつもりで?」
「それなんだけどね」

決算報告を見ながら、語り合うメリルとカミラ。
この頃は、大量のテレビ番組からのオファーの処理が、目下の課題となっていた。

その一方で、メリルはあることを考えていた。

「この前見つけたんだけどさ、この子、どう思う〜?」

懐から取り出したのは、一枚の写真。
光之助が前の会社、ブレインクラッシュ株式会社から出たところが収められていた。

「見た感じ、今年の新卒さんだよね? あの会社に1年も勤続してる人って、
 ここしばらくいなかったと思うんだけど」
「ブレインクラッシュ株式会社ですか。悪い意味で話題の会社の一つですね。
 金の殆どは上層部の給与と、マスコミへの賄賂に使われてるとか……」
「うん。……わたしね、この子が気になるんだ。
 わたしが一生懸命に頑張る子が好きってことは知ってるよね?
 今年の収益、この子に還元してあげたいんだ〜」

会社は、慈善事業ではない。
ブラック企業に勤める人間を引き抜く意味も、理由もない。
それでも、メリルはこの時既に、決意を固めていた。

「私は、社長が望むことを望んだままに遂行するのが仕事です。
 どうぞ、ご命令を。この菱崎カミラが、全ての計画を立てます」
「……ありがとう。カミラちゃんが秘書になってくれて、わたしは幸せだよ」
「時代が違えど、アヌビスは王に仕える種族です。
 王たる器のあなたに仕えることは、当然のことであり、この上ない幸福です」

社員への姿勢に、経営努力、思想・理念。
カミラは、その全てに尊敬の念を持ち、メリルの第一秘書として名乗りを上げた。
彼女にとっての王はメリルであり、王の望みを叶えることに尽力することは、
アヌビスである彼女にとって、自然なことだった。



それから1年かけて、カミラは光之助のことを調べ上げた。

「私立上位ランクの明中大卒のシステムエンジニア、24歳。
 所持資格は基本情報、オラクルマスター、簿記1級他、TOEICスコア780。
 学生時代に作成したフリーゲームは3万ダウンロードを突破し、
 現在はブレインクラッシュ株式会社にて勤務……嘘だろ」
「即戦力だね〜。少なくとも、そこから分かる点についてだけで言うと、
 うちの子の誰よりも能力高そう〜」
「ただ、日を追うごとにボロボロになっていますね。
 本線のハニートラップ作戦は、健康状態を考えると難しいです。
 性欲はおろか、自分の命にすら興味がないような状態ですから」
「このままじゃ、男の子の悦びを知らないまま死んじゃうよ〜……」

自分達の予想を、遥かに超える惨状。
猶予は、一刻もない。

「うちの企業体力を考えたら、最悪使い物にならなかったとしても、
 一人くらいは養えます。ヘッドハントで持っていきましょう」
「そうだね。そうなったら、わたしに永久就職してもらってもいいし〜」
「……本当に惚れ込んでるんですね」
「うん。なんかさ、ピピッて来たんだよね〜。
 こんなの感じたの、会社興そうって思った時以来だったから〜。
 それにこの子、頑張り屋さんってだけじゃなくて、可愛いって思わない?」
「……ノーコメントで。私からはなんとも」
「え〜」

メリルの美的センスは、中々に変わっている。
しかし、結果としてそれが光之助の命を繋ぎとめることとなった。



「一目惚れだったのかな。黙々とがんばってるとこに惹かれちゃって」
「黙々とというか、その頃は考えることをやめてただけだと思います。
 それ以外の生き方、見失ってましたから」
「そっか〜。……でも、今はもう、どうでもいいや。
 こんなに可愛い男の子に、毎日会えるんだもん♥」
「……まぁ、社長が喜んでくれるなら、それでいいです」

光之助にも、いい年をした一人の男であるという矜持は、それなりにある。
実際の年齢は分からないが、外見上は明らかに自分より年下の魔物娘から、
「可愛い、可愛い」と言われることについて、抵抗が無い訳ではない。

だが、楽しげな声を邪魔してまで否定する必要は無いし、
何より今は、背中に接する柔らかな膨らみの感触を味わうことで忙しい。

「本当は、お休みの日だって会いたいんだ。けど、わたしは社長だからね〜。
 光之助くんがこんなに会社に貢献してくれるとなったら、ちゃんと働かせないと〜。

重心をずらし、後頭部に当てていた頭を、肩へと乗せる。
ぐりぐりと顎を擦りつけると、顔の向きを変え、光之助の首元に顔を埋めた。

「『小雲社長』としてのわたしと、『メリル』としてのわたしは、一緒になりきれない。
 こういう道を選んだ以上、それは覚悟してたつもりだったんだけど、さ」



「光之助くんを、一人の男の人として、好きになっちゃったんだ」



ポツリと、しかし、明確に。
LIKEではなく、LOVEの好意が、伝えられた。

「おかしいくらいに真面目な光之助くんを笑わせたい。
 いつも頑張ってる光之助くんにご褒美をあげたい。
 お仕事で疲れた光之助くんを癒してあげたい。
 …………光之助くんを、私のものにしたい」

堰を切って流れ出た言葉が、止まらない。
一頻り囁き続け、最後に。

「光之助くん。君にしかできないサービス残業、お願いするね。
 ……わたしを、抱いてください」

直後に聞こえたのは、ベッドに倒れこむ音。

「……明日、半休じゃ済まないですからね」
「……うん♥」

そして、光之助が向きを変え、メリルの頭の脇に手をつく音だった。



「どうしよっか。もうぐしょぐしょだから、体位決めるだけなんだけど」

ホブゴブリンと交わる際に、問題になることが一つある。
それは、両者の体格差をどう処理するか、という点。

「光之助くんが上だと、腰痛めそうだよね。
 わたしが上の方がいいかな〜?」
「うーん……あ、そうだ。一旦起きてもらえます?」
「うん、いいよ。……えっと、これって『唐草居茶臼』って言うんだっけ」
「妙なところで知識深いですね。合ってるかどうか分からないんですけど」
「ふふっ。わたしも魔物娘ですから」

胡坐をかいた光之助の上に座り、脚で腰を挟む姿勢。俗称『対面座位』。
身長差が気にならない上、密着感の高い体位。

「それじゃ、挿れるね。……ねぇ、今からはわたしのこと、『メリル』って呼んで。
 わたしも『光之助』って呼ぶから」
「分かりまし……分かった、メリル」
「うん。光之助……ッ!」

太い血管の浮いた一物に、メリルは腰を落とした。
先端が触れた瞬間とほぼ同時に、最奥まで招きいれ、子宮口にくっつける。

「ふあああああんっ♥♥♥」
「うぉっ……!」

狭い膣内を、硬く、太くなった肉棒が埋め尽くす。
下腹部に重い異物感を感じながらも、メリルは快楽と幸福の涙を流し、
光之助の陰茎を受け入れた。

「社ちょ……メリル、大丈夫か?」
「うん、ちょっと苦しいけど……それより、気持ちいいし、嬉しい♥
 それじゃ……動くね」

腰を上げ、往復を始める。
光之助につかまりながら、2回、3回と、腰を打ち付ける。

「んっ、ふぁっ、ふぁぁっ♥」
「んんっ、くっ、うっ……」

メリルの膣は窮屈だが、非常に柔らかい。
物理的な強い締め付けがありながらも、肉襞はじゅるじゅるとうごめく。
見た目とキャリアのようなギャップは、こんなところにまで存在していた。

光之助がメリルの腰に手を回し、メリルが動きやすいようにすると、
その意図を察したのか、上下運動が加速した。
胸板にこすりつけられる豊満な胸の感触や、快楽に歪む表情など、
目に映る物から感じるものまで全てが、膣内射精という結果を導こうとしている。

熱い視線の元である、潤む瞳にはハートが浮かんでいるかのようであり、
見た目相応に純粋かつ、直情的な「大好き!」の気持ちをぶつけようと、
一切、光之助の目から視線を逸らそうとしない。

ストロークが短くなり、奥底に押し付ける動きに変わった。
間もなく放たれる白濁液を全て、膣の最奥、子宮で受け止める。
その意思が強く伝わり、光之助の肉棒は一段と硬さを増した。

「ぜんぶ、わたしの中に射精して! 光之助のぜんぶが欲しい!
 光之助の赤ちゃん汁、わたしに、ぜんぶっ!」

魔物娘の本能の赴くまま、メリルは膣を締め付け、脚を絡ませ、精液をねだる。
ここまでされて、耐える必要などどこにもないし、耐えられる訳が無い。

「ああ! メリルに……メリルを、孕ませる!」
「うんっ! 光之助、わたしっ、ふぁっ、ふあああああっ♥♥♥」

かつてない絶頂を感じながら、かつてない勢いで、光之助は射精した。
健康的な生活によって生産能力を取り戻した睾丸から次々に、精液が飛び出し、
その全てがメリルの子宮内へと流れ、卵子を探して駆け巡る。

衝撃に思わず上体を反らし、それによって陰茎がより深く沈み、追い討ちがかかる。
明滅を繰り返す世界の中、愛する男の精液を受け止める幸せに酔いしれ、
メリルは派手によがり声を上げ、狂喜した。

そして、体勢が変わったことによって目立つのは、メリルの爆乳。
脈動に応じて激しく揺れ、この上なくいやらしく誘惑する乳房。

「くそっ……見せつけやがって!」
「ひっ、ふひぁああああああああああっ♥♥♥」

迷うことなく、光之助は目の前の果実を掴んだ。
最大の性感帯を強く刺激され、絶頂時間がさらに引き延ばされる。

軽く力を入れるだけで、十指が沈む。
柔らかさ特化のメリルの胸は、手で味わっても極上の逸品。
しかも、それが一番の弱点なのだから、責めない手は無い。

「メリルっ! メリルっ! このっ……また射精すぞっ!」
「ふああっ、もう、ダメっ、わたし、とんじゃ、とんじゃうっ!」
「飛んじまえっ、飛んじまええええええええええ!!!!!」
「いぐっ、わたし、なんども……いっぐううううううううううううううう♥♥♥♥♥」

ほぼ一続きの2度目の射精と同時に、メリルの乳房を握り締めた光之助。
胸と膣の2箇所を同時に犯され、達し、完全に壊れた。
光之助に向け続けられていた目はあさっての方向を向き、だらしなく舌を出し、
涙でぐずぐずになったその顔は、『アへ顔』そのものだった。

(あぁ、光之助くん、素敵……♥)

別世界に昇天しかけてもなお、メリルの喘ぎと腰は止まらない。
胸は光之助に責められているが、肉棒の出し入れはメリルの動きが中心。
快楽を貪り、光之助の子を孕むことで頭はいっぱいであり、
身体を止める指令を下す回路は焼ききれ、機能を放棄した。

(わたし、いま、すごく、しあわせ……♥)

子宮口を叩き続ける亀頭の感触を味わいながら、
際限なく、メリルは光之助との行為に溺れ続け、
受胎を確信するまで、精液を吸い上げ、搾りつくした。

(ぜったい、光之助の赤ちゃん、産むから……♥♥♥)





時は流れ、株式会社モンスターソリューションの夏季休暇。
集まった社員全員が、思い思いの形で、海を楽しんでいる。

ゴブリンのほとんどは海に出て、バナナボートに乗ったり、ひたすら泳いだり。
ビーチバレー大会が行われている横では、刑部狸がどのチームが勝つかの賭場を開き、
浜辺ではドラゴンがビーチチェアに横たわりながら、トロピカルジュースを飲んでいる。

「みんな楽しそうだね〜」
「菱ざ……カミラさんが食べてるアイス、あれ業務用のヤツですよね。
 あと、プライベートビーチでやるなんて聞いてませんよ」
「言ってなかったからね〜。人数が人数だから、こういう方がいいかなって」

ここにいるのは、正真正銘社員のみ。
完全貸切、ホテルつきのプライベートビーチである。

「光之助くん、水分補給とか大丈夫〜?」
「えぇ。……ところで社長、一つ、いいですか?」
「うん」
「その……何で、それなんですか?」

光之助の指摘した『それ』。
それは、メリルの着ている水着。

紺色の生地に貼り付けられたゼッケンには『5−2 おぐもめりる』。
紛うことなき、スクール水着であった。

「えっとね、リボンちゃんのおすすめ。光之助くんがこういうの好きって聞いて」
「まぁそういうことですよね! 余計な差し金しやがって!」
「リボンちゃんは3−1がいいって言ってたけど、流石にちょっと恥ずかしくて」
「別の部分恥じて下さいよ!」
「ふつーにビキニの方がよかった? これもこれでえっちだと思うんだけど」
「確かに色々収まってなかったり名前の辺りが歪んでてエロいですけど!」

わざとサイズを合わせていない故に、ほとんど露出している乳房や、
白くむっちりとした、健康的な太ももなど、その肢体は大人のそれだが、
この背丈にこの水着とゼッケンは、それはそれで噛み合ってしまっており、
合っているのにちぐはぐという色香が、光之助の海パンの前面を膨らませることとなった。
当然、メリルもそれに気づいていて。

「あっちの岩場だと太陽浴びながらで、向こうの茂みだと涼しい中でだけど、
 どっちでヤろっか〜?」
「シレっと青姦の提案!?」
「マイクロビキニも考えたんだけど、光之助くん、ストッキング好きだし、
 この生地も好きだよね?」
「聞かないで下さい! まぁ嫌いではないですが!」
「リボンちゃんに聞いたんだけど、それってつまり『大好物』ってことだよね?」
「せめて『大好き』で! 表現がエグい!」
「じゃ、いっぱいぴゅっぴゅして、わたしの紺スクを白スクにして♥」
「当然! バーベキューの時間までに染め上げてやりますよ!」

株式会社モンスターソリューション。
世界一楽しく働くことができる会社。
ほとんどの社員にとっては、ホワイト企業だが。

「んんっ、水着の上から揉むのもっ、気持ちいいでしょっ?」
「折角着てくれたんですからね、脱がさないでヤりますよ!」
「きゃんっ♥」

いつでもどこでも、ロリ爆乳女社長が性欲処理をしてくれる、ピンク企業。
それが、株式会社モンスターソリューションの、ある一人の社員の概念である。
17/07/18 00:20更新 / 星空木陰
戻る 次へ

■作者メッセージ
「ねぇ、光之助くん」
「何ですか?」
「今後のキャリアパスについてなんだけど、どうしたい?」
「そうですね、しばらくは現場で仕事させて下さい。
 シニアプログラマーになるか、経営陣に入るかは追々で」
「そうじゃなくて、わたしに永久就職してからどうするか。
 なんなら専業主夫になってもらっても……」
「勘弁して下さい」

逆玉、既に秒読み。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33