連載小説
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出会い
 
 春風が肌に気持ちいい、心地よい陽気は俺の気分と期待をよくしている気がする。
俺は中川誠、小説家…を志す20歳だ。

「中川さん、今回持ち込んでもらった小説ですが」
「どうせした?」
「はっきり言って駄目ですね」
「そうですか…」

今回もダメだった、今回こそは行ける気がしたのに…
その日持ち込んだ小説はここ最近で一番気合を入れた作品だ、それでもダメだなんて…

その日は添削や担当の方の話など全く耳に入らず、魂が抜けたかのようにフラフラと家に帰った。

数日後

昼休み、友人の氷室と話していると彼がおもむろに話しかけてくる。

「なぁ誠、合コンに来てくれね?急に男に欠けが出来ちまってよ」
「はぁ?嫌だよ。次の新作を書かなきゃいけないんだ」
「大丈夫、人数合わせに来てもらうだけだから。なっ?」

結局氷室に押されてしまい行く事になった。

その日の夜

「まずはカンパーイ」
「カンパーイ…」

はぁ…この空気はあまり好きではない。そもそも来るべきではなかったのかもしれない…

「じゃあまずは、皆の自己紹介から始めようか」

そこからは皆の自己紹介が始まったのだが一人面白い子がいた。

「ミレアです。漫画家見習いです」

それだけをそっけなく言いすぐに席に戻ってしまう。妖精、恐らくリャナンシーであろう彼女に俺は少し興味を持つ。

幸い彼女に興味を持った男は俺だけだったようで簡単に彼女と話をすることができた。

「ミレアさんは漫画家なんだね。もうデビューはしてるの?」

ミレアさんは興味なさそうに答える。

「いえ、見習いと言ったはずです」
「ごめんごめん、実は俺も見習いでさ。小説家見習いだけど」

ミレアさんは怪訝そうにこちらをちらりと見ると、その後ビールを一口飲む。

「で、私を使ってワンチャン売れることができないかなー、とでも思ったんですか?」
「そんなわけないって、ただちょっとシンパシーを感じてさ」

最初は疑り深そうにこちらを見ていた彼女だったが、酒が入るごとにどんどん饒舌になりある程度仲良く?なった。

「それで担当の奴さぁ…」
「わかります…私たちは頑張ってるのに…」

そうこうしている内に合コンが終わることになり、彼女とはもっと話したかったので2次会は参加せず2人だけで居酒屋に行く事にした。

「誠さん」
「どうかなさいました?」
「私達、コンビでも組んでみませんか?誠さんの小説の事は頑張って勉強します。その代わり私の漫画のストーリー担当になってくれない?」

その時の俺は酒に酔っていたのも在り深く考えることはせず答えてしまった。

「はい、いいですね!」
「じゃあまずは同棲位から始めましょうか」

酔っていてもその言葉の違和感をスルーすることは無かった。

「ん?同棲?おかしくない」
「おかしくないよ。だって私達リャナンシーとコンビを組むだなんてそう言う事でしょ?」

確かに魔物娘はそうゆう所があるがミレアさんはもっと恋愛するタイプだと思っていた。
俺はビールを一気飲みしもう一杯注文しているミリアさんの方を向き答える。

「ミレアさん、俺はもっとお互いを知ってからがいいなぁ…なんて」
「ぶぅ…わかりましたよ」

その後彼女が呑み潰れるまで話をして解散になった。

翌日

いつも寝起きしている大学生向けのアパートの一部屋、それが俺の部屋だ。

「うんん…昨日はミレアさんに釣られてちょっと飲み過ぎたな…」
「んうん…まことさぁん…そんならんぼうなえっちはダメですよぉ…」

しかしそこにはいつも通りの物ではない物が1つ、ミレアさんの存在だ。

周りを確認するとお互い裸、乱れたベッド、ベッドやお互いの体から臭うイカの臭い。

これはセックスをした後と言うのは明白。昨日の自分は何をしているのだろうか…セックスか。

っと、そんな事を考えている暇は無い、まずはミレアさんを起こして事情を聴かなくては。

「ミレアさん!!起きてください!!」
「んぁ…?おはようございます誠さん♡、昨日は激しかったですね♡」
「それが舞ったく覚えて無くて、昨日の夜何があったんですか!?」

ミレアさんはふにゃふにゃした笑顔を浮かべ答える。不覚にもその顔に少しドキッとしたのは少し惚れ始めているからなのだろうか。

「それは勿論男女の営みに決まってるじゃないですか…もしかして覚えて無いの?」
「お酒は弱い方で…あれだけ吞んじゃえば俺は記憶が飛びますね」
「そっかぁ…でもコンビの件は昨日了承を貰ったからね。もう撤回は無しだからね」

ミレアさんはまだ酒が残っているのか少しテンションが高めである。

「取り合えず服着ませんか?」
「そうね、少し寒いし」

お互いの服はベッド脇に脱ぎ捨てられていた、が。

「だいぶ臭いわね」
「そう…ですね」

部屋の匂いを吸ってしまったのか服はイカの臭いを放っていた。

「取り合えず洗濯しましょうか。今日何か予定ありますか?」
「いいえ、特には無いけど」
「じゃあ一緒に洗濯しちゃいますね」

俺とミレアさんは勿論別々にシャワーを浴び、俺は箪笥から下着類と新しい服とズボンを取り出し着替え。ミレアさんは洗濯と乾燥が終わるまでタオルにくるまっていた。

「じゃあ…これからどうします?俺は今日フリーなんですけど」
「じゃあ私の作品を見てくれる?」

彼女は何かボソボソと口ずさむと俺とミレアさんの周りに魔方陣が形成される。

魔方陣が光を強める。俺はとっさに目を瞑り、光が収まる頃目を開けるとそこは知らない部屋だった。

白色を基調としているその部屋には漫画を描くための道具や台などがありミレアさんの部屋だと分かる。

「じゃーん、ここが私の部屋です。じゃあ早速見てもらおうか」

促されるまま床に座り彼女がもってきた原稿を見てみる。

「これは…」

原稿を一枚一枚見てみる…

「めっちゃくちゃ」
「うんうん」
「つまらない」

そう、つまらないのだ。彼女はリャナンシーだけあって画力は素晴らしい、しかし肝心のストーリーが破綻しているレベルなのだ。ただ出会い、よくわからないまま付き合い、そして終わる。本当にこの説明通りなのだ。

「やっぱりそうだよね…担当さんにも言われたもん…」
「だから俺にシナリオ担当になって欲しかったのか…」
「とにかく!!これからよろしくね」
「うん」

これからたくさんの苦難が待っている事は明白だ、しかし乗り越えるための準備はもう整っている。ミレアさんと一緒なら何故かうまくいく気がするのだ。
23/01/08 00:30更新 / photon
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■作者メッセージ
 お久しぶりです、photonです。2023年初ssです。長くなりそうだだったので連載形式にしたは良いんですが連載物抱えすぎ問題が発生してしまっている気もします。
この作品はもう最終回までの道筋は整っているので短期間で終わらせれる…はずです。

今年も応援よろしくお願いします

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