連載小説
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Rainbow after rain with Giant Slug
その日は、朝から雨だった。
他の人はどうか知らないが、俺にとって雨の日は少しだけウキウキする日なのだ。

「雨だね〜」

窓の外を眺める俺の隣にそっと寄り添う妻の『ナミ』に微笑みかけながら、そうだねーと答える。

「散歩、行こっか〜♪」

楽しそうに笑いながら、俺の手を引いて外に向かおうとする彼女の下半身は、ヒトのそれではない。
ドロリとした粘液を纏い。
脚部のない軟体動物の様で。
色鮮やかな黄色に、黒い斑点が浮かんでいるその色彩は、どこかトロピカルフルーツを彷彿とさせる。
そして頭部には、長い触角が突き出ていた。
そう、俺の妻であるナミは——『おおなめくじ』だ。

    ◇

雨の中、ナミと相合傘しながら歩く。
身を寄せてくる彼女のカラダの柔らかさとぬめりと温もりに、胸が高鳴る。
あー……何度も触れ合って、えっちな事もしまくってるのに、いつまで経ってもこの感覚には慣れないなぁ、なんてぼんやり考えながらゆっくりと歩く。
いつも通勤に使ってるその道は、彼女と一緒にゆっくり歩く事で、まるで違う風景が見えてくるのだ。

例えばそれは、近所の家の軒先——

「ねぇ、あれ見て〜。あそこの家の軒先〜。
鳥さん達が雨宿りしてるよ〜?」

彼女が指差す家の屋根を見上げると、そこには2羽の小鳥が軒先に止まって寄り添っていた。
番(つがい)だろうか? まるで今の俺たちみたいだ……

「仲良しさんだね〜♪ まるで私たちみたい〜❤️」

俺の腕を胸の谷間に挟んで、より深く密着してくるナミに愛おしさが込み上げてくる。

俺もナミと同じ事、思ってたよ……

そう伝えると彼女は、満面の笑顔浮かべてますます密着してくるんですよね、ナミのおっぱい、最高……

例えばそれは道端に植えられた梅の木に咲いた花——

「わぁ〜♪ 梅の花、キレイに咲いてるね〜。
ピンクで、小さくて可愛いな〜❤️
雨の雫が花びらについて、キラキラしてる〜……」

うん、そうだね……
そう言えばご近所さんから梅干し貰ってたなぁ。
帰ったら梅干し、食べようか?

「う〜……アレ、酸っぱくて苦手〜……」

梅干しを食べた事を思い出して唇を窄めるナミ、本当に可愛い……

ナミは本当に可愛いね……

俺の言葉を聞いた彼女は、目をぱちくりさせた後、頬を真っ赤に染めて。
唇を窄めたまま、

「ん〜〜っ❤️ ……ちゅっ❤️❤️❤️」

って俺のほっぺにちゅーしてくるんですよね、ナミの唇、最高……

例えばそれは路上に停車したトラックの下——

「うんしょっと……あ〜っ、やっぱり♪
この下に居ると思ったぁ。
ホラ見て見て〜。ネコちゃんの親子〜❤️」

トラックの下を覗くと、そこには赤ちゃんに授乳しているネコの母親がいた。
前屈みになってトラックの下を覗き込むナミが雨に濡れない様に、俺も前屈み気味になって傘で彼女の背中を庇う様な体勢になる。
その時、チラリと見えるんですよね。
彼女の短いスカートが捲れて、そこから。
大きくて、丸くて、えっちな、お尻が……

「良いな〜、可愛いなぁ〜、赤ちゃん……❤️」

ナミの安産型のお尻をガン見しながら、俺はこう答えるんです。

赤ちゃん、欲しいの? ナミは。
なら、頑張って子作り、しなきゃだよね……

彼女は振り返って、俺の視線がお尻に釘付けになってるのを見るとですね。

「もう……えっちなんだから……❤️ あなたは❤️❤️❤️」

って言ってスカートの裾を掴んでお尻を隠しちゃうんですよ。
でもその時の表情は、何というか。
すごくいやらしい感じでさぁ。
あー、ナミも満更でもないんだなぁ、ってのがもうビンビンに伝わって来てさぁ……!
後で絶っっっっ対に!
子作りしまくる!!!
って決意を固めちゃうんですよね、俺という変態は……!
ナミのお尻、最高……

    ◇

その後、2人で散歩を続けて。
近所にある公園に着いた時に、丁度雨が止むんです。

「雨、止んじゃったね〜」

そうだね、って答えながら傘を畳んでると、雨雲が晴れて。
太陽の光が俺たちを照らすんです。
一転して青一面になった空には、二重の虹が掛かっててさぁ。
俺たちは言葉もなく、その光景を見上げるんですよね。
お互いに繋いだ手から伝わる温もりだけを感じながら。

しばらくして、虹が消えた後にボケーっと空を見上げてた俺の耳にナミの声が届くんです。

「消えちゃったね〜。虹……」

うん、そうだね。

「ねぇ、知ってる〜?
二重の虹を見たら、願い事が叶うんだよ〜」

うん、知ってる。

「ねぇ、あなたの今の願い事、当ててあげよっか?」

俺もナミの願い事、当ててあげるよ。

「そっか〜。じゃあ、一緒に言ってみる?」

うん。じゃあ一緒に。せーのっ……

「「赤ちゃんが、欲しい」」

俺たちの声が綺麗にハモって。
いつのまにか俺たちはお互いを抱きしめ合ってて。

「ねぇ……えっち、しよっか……❤️」

うん。俺も、したい。
ナミと、えっち。

草むらに押し倒されて。
のしかかって来る彼女の温もりと、粘液のぬめりに包まれて。
俺たちはお互いの熱を感じるんだ。
雨上がりの空の下、俺とナミは。
重なり合い、交わり続けるのだった。
23/02/24 18:14更新 / H.H
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■作者メッセージ
ウチのおおなめくじさんの名前の「ナミ」の由来は「バナナナメクジ」から。
バナナナメクジ→「ナ」が3つ→ナミ
こんな感じ。
バナナナメクジはアメリカのカリフォルニア州に生息するナメクジで、見た目が名前の通りバナナそっくりらしいです。
身体は非常に大きく、最大で25cmにまで成長するのだとか。
なので、ウチのナミは挿絵のおおなめくじさんよりもおっぱいもお尻も大きい、アメリカンサイズの金髪ジャンボナメクジさんです!

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