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赤誠の初夜権

 この地域には忌むべき風習がある。

 農民や平民など、地位の低い者同士が結婚する場合、新婚初夜を迎えた新婦は領主や聖職者と同衾しなければならない。
 処女は新郎に不吉をもたらす。俺の住む地域は何処よりも古臭い慣例が残る場所で、そんな根も葉もない迷信が根強く残っている。
 だが身分の高い者や聖職者は別扱いされていた。
 処女の不吉は徳の高さで防げるものだ、と。
 だから、体裁上は身分の高い領主や聖職者に処女を捧げて浄化してもらう制度という事になっている。
 しかしおかしな事に、これは金を支払えば免除されるのだ。
 金さえあれば、初夜権は花婿のもの。俺達の住む村でも将に領主が花嫁の初夜を奪おうとし、また花婿はそれを阻止する為に金を支払わなければならないという奇妙な関係となっていた。
 見え透いた下心。禁欲主義を打ち出している教会の連中が、体よく生娘を抱く為の言い訳。この制度があるお陰で、奴等は堂々と女を抱ける。これはか弱い民衆を救う為だと言いながら、何も知らない無垢な少女達を毒牙に掛けられる。もし叶わなくてもそれに見合った金が手に入る。これが、下心のない人間のする事である筈がない。

 そして俺は今、重大な決断を迫られている。



    そう。俺はたった今、新郎になったばかりなのだ。


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(10/02/27 21:45)
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