連載小説
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2章 『脇役な奴ら』
「あれ? 何か忘れてる気がする」
「『自家発電』の回数が減っておることじゃろ?」
「自家発電とか言うな! あとお前達が来てからそんなことする暇もなくなったよ!」
「お稲荷さんが爆発寸前…ということじゃな?」
「だからそういうこと言うな!」
「おや、珍しいですね。 アイリさんとフレンさんが2人揃って下ネタに走るなんて」
「良からぬ事の前兆ではないか?」
「十二分にあり得ますね」
「いやいや、俺下ネタに走った覚えないぞ?」
「フレンはきっと、ばれんたいんで〜を前に緊張してるんだよ〜♪」
「「「それじゃ!/それだ!/それです」」」
「……何故そうなる?」
「………(zzz)」












「俺、ばれんたいんで〜好きじゃないんだよ」
「もらえないからでしょうか?」
「可哀想な奴じゃのう」
「まったくだ。 同情する」
「………(合掌)」
「フ、フレンにはアタシがチョコあげるから! ね?」
「誰もそんな事言ってない!」

最近完全にナメられてるな俺。

「実は…誕生日なんだよ」
「おぉ、それはめでたいのじゃ!」
「今年でフレン、20歳だっけ?」
「遂に大人の領域に足を踏み入れてしまうんですね」
「で、いつなんだ?」
「それが…明日のばれんていんでーと同じ日……」
「「「「………」」」」

小さい頃から経験しているこの沈黙にはもう慣れた。

「過去の境遇が容易に想像できますね」
「毎年誕生日にチョコのプレゼント…寂しすぎるな」
「やっぱり一緒にされちゃうんだね〜……」
「嫌いになるのも頷けるのじゃ」
「わかってくれただけで俺は嬉しい……」

誕生日という名目で女子からチョコをもらうと、どうにも微妙な気分になる。
誕生日としてもらうからであって、異性として意識されていないと勘ぐってしまう。
ましてや男子からもらった日には……。

「まぁでも唯一の救いは、俺が大学生ってことかな」
「何故じゃ?」
「大学はハイスクールと違って人との交流が少ないですからね。 入学してすぐ複数の人間とグループを組み、その集団が卒業までの友達…といったところでしょうか?」
「そゆこと」
「要するに、大人数からチョコをもらわずに済むということか」
「事情を知らない人が聞いたら、凄く嫌な気分になるね〜」
「もらえない男性が圧倒的に多いようですからね」
「よくよく考えれば、随分と贅沢な悩みじゃのう?」
「わかってるつもりだけどさぁ……」

大学の友人といったら、ザックとシオの2人かな。
シオからもらえるのは嬉しいけど、ザックからは御免被りたい。

「そういえばフレンさん。 期末の定期試験はどうでした?」
「え? あぁ、たぶん大丈夫だと思う。 成績通知を取りに行くまでわからないけど」
「わざわざ大学まで行くのか?」
「うん。 郵便で送ってくれればイイのに……」
「カレンダーの2月14日に○が付いてるよ〜? これな〜に〜?」
「通知を受け取りに行く日だよ。 あ、明日か」
「お主の誕生日は色々と重なるのう」
「ホントだよ、まったく……」












そんなわけで翌日の2月14日。
俺の誕生日でもあり、ばれんたいんでーでもあり、成績発表日でもある。
不思議とありがたみが湧いてこない。
そんなバカな。
自分の誕生日なのに。

「えっと…よし、全部合格だ」
「うちも〜! はぁ〜良かった〜」
「……いいよな、頭の良い奴らは……」
「ザック、お前はどうだったんだ?」
「3科目も追試だ……チクショーーーーーーーーーー!!!」
「はいはいご愁傷様。 てゆうか、みんな頭悪いから勉強するんでしょ? アンタは普段から遊び過ぎなのよ!」
「うぐっ……」
「フレンを見習いなさいよ! 親戚の女の子達のお世話しながら少ない時間でしっかり対応してるのよ!?」
「うぐぐ……」
「それにアンタは……」
「ま、まぁまぁ。 シオ、その辺にしときなよ」
「ん、それもそうね。 もう少しいじめたかったけど」

ただでさえ落ち込んでいるザックを追撃するシオ。
さすがに可哀想なので制止する。

「ザック、各科目の教授方に、追試験の出題傾向教えてもらった方がイイんじゃないか?」
「……そんな事、教えてくれんのか?」
「くれるんじゃない? 追試で厳しくしたって仕方ないじゃない」
「まぁ…確かに……」

負のオーラを纏いながら、ザックは大学構内へと消えていった。












「遂に天罰が下ったわね! 日頃から『男女』だの『まな板』だの、うちをバカにしてる報いよ♪」
「あ、けっこう気にしてたんだ」

期末定期考査を無事に通過した俺とシオ。
帰り道にある最近オープンしたばかりの『露璃喫茶』というカフェでお茶をすることに。
若干の胡散臭さが気になるが。
(外来語のようで読み方は不明)

「うちはザックをコテンパンに罵るために勉強してきたんだもん!」
「目標があると頑張れるものなんだな」
「うん! それに…フレンに情けないところ見せたくなかったし……」
「ん? なに?」
「あ、ううん! なんでもない!」
「?」

まぁでも、お調子者のザックにはイイ薬になるだろうなぁ。

「大変お待たせしました〜♪ 悶々ロリッコーヒーとスジマンパフェになりま〜す♪」
「わ〜♪ 美味しそ〜♪」
「当店のオススメですので♪」

どうでもイイけど、メニューのネーミングをなんとかしてほしい。
オーダーするのに勇気がいるっておかしいと思う。

「ん〜〜♪ しあわせ〜〜〜♪」
「……ん、コーヒーもイイ味出してるなぁ」

名前はさて置き、メニューの質の方は良好のようだ。
シオのパフェは言わずもがな。

「値段もお手頃だし、きっとすぐ人気が出るんじゃないか?」
「うんうん♪ パフェも美味しいしね♪」

今度はザックも誘うか。

「ん〜…ん?」
「むぐむぐ…ん? フレン、どしたの?」
「あぁいや…この店の店員さん、全員小さい気がして」
「あ、確かに」

良く見れば全員の身長が俺の腰くらいしかない。(※フレン身長→178cm)
気付くのが遅すぎた。
お前の目は節穴かと自問したくなる。

「きっと店長さんは幼女好きなんじゃない?」
「犯罪の臭いしかしないなぁ……」
「気にしない気にしない! 美味しいんだから問題な〜し♪ あむ♪」
「そんなもんかなぁ……」

店のモチーフがバフォ様印であることに俺は気がつかなかった。












「あ〜美味しかった♪ フレン、また行こうね!」
「あぁ。 また学校帰りにでも寄るか」

その後もお喋りに花が咲き、気付けば夕方に。

「それじゃーフレン。 次会うのは1ヶ月先になっちゃうかな?」
「だな。 身体に気をつけろよ」
「うちは平気だから! フレンもあんまり無理しないようにね」
「あぁ」

たぶん無理だと思うが。

「それじゃぁシオ、気をつけて」
「うん! また……あ!忘れてた!」
「え?」

何を思い出したのか、シオは唐突に自分のバッグをあさり始めた。

「あったあった……はいフレン! 誕生日おめでとう! あと、はっぴーばれんたいん!」
「え、あ」

シオから2つの小箱を受け取った。
両方とも綺麗に装飾包装されている。

「ほんとはカフェで渡すつもりだったんだけど、パフェに夢中になっちゃって……///」
「………」
「チョコも一応手作りで…ってフレン? どしたの?」
「;д;」
「・д・!?」

自然と涙が出てきた。

「ちょっ、フレン!? な、なんで泣いてるの!?」
「あ、ごめん…嬉しくて…つい」

シオが初めてだった。
誕生日とばれんたいんを別々にしてくれたのは。

「あ〜…なんで泣いてるのかわかった気がする。 フレンの誕生日知ったとき、まさかとは思ったけど」
「うん…でも、ホント嬉しいよシオ…ありがと。 大切にする」
「っ…/// な、泣くほど喜んでくれてうちも嬉しいよ! あ、でもチョコは早めに食べてね」
「……あぁ、わかってる」

シオという女性に心から敬意を。












「フレンの泣き顔見たらドキっとしちゃった……///」

本能的に抱きしめたくなってしまった。

「はぁ…あんなに喜んでくれるなんて」

実は手作りチョコの完成には1週間を費やした。
作った甲斐があったというものだ。

「プレゼントも…喜んでもらえるかな〜」

大好きな君に、うちの…私の想いが届くことを願う。












〜おまけ〜

「フレンさん。 その手首に巻いてある紐はなんですか?」
「友達からの誕生日プレゼント」
「それ知ってるよ〜♪ 自然に切れたら願いが叶うんだっけ〜?」
「ふん、くだらん。 ただの迷信ではないか」
「確かに非科学的ではありますね」
「ふむ…じゃが、ただの紐ではないようじゃ」
「なんだと?」
「魔力ではない、何か不思議な力が込められているようじゃな」
「へ〜! なんかロマンティックだね〜♪」

話がどんどん膨らんでいく。

「おおそうじゃ! フレンよ、お主に皆から誕生日プレゼントじゃ!!」
「え?」
「日頃から世話になっているからな」
「フレンとこれからもずっと一緒にって意味もあるんだよ♪」
「ティータの熱い想いを受け取ってください」
「………(感謝)」
「み、みんな……」

やばい…また泣きそうに……

『サッキュンのバキュームオナホールEX』

どう考えても嫌がらせとしか思えなかった。






11/02/25 10:14更新 / HERO
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■作者メッセージ
しょうもない話になってしまった気がします

感想をいただけると嬉しいです

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