連載小説
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絶対、助ける
現在地-不明-不明

今度は、どこに来ちまったんだか。

俺は奇妙な丘に座り込んでいた。

周りには漆黒の花びらがヒラヒラと舞って落ちていく。

目の前は真っ黒な草と土、青い空に覆われた広大な大地だが、後ろを見てみるとどうも妙だ。

俺は座り、桜の木に背を預けているが、俺の反対側は純白の花びらが舞い散り、真っ白な草原に赤い空が広がっている。

まるで、この桜の木からこちら側は漆黒の世界、向こう側は純白の世界として仕切り分けされているようだ。

「弱いなぁ、お前は」

声を掛けられて視線だけ其方へ向けると、純白の世界側の桜の木の上の枝に誰かが座っている。

「誰だ!?」

立ち上がって俺は桜の木に向かって叫ぶ。

桜の木の向こう側に白い着物を着た誰かがいるが、樹の陰に居て顔は上手く見えない。

「渇望した、力を―」

「呪った、弱い自分を―」

「駆け抜けた、修行の日々―」

「変わったか?あの日と?」

白い着物を着た人物は俺に向かってかそう言ってくる……。

こいつの言っているあの日って言うのは、まさか……?

「お前は誰だ!俺の何を知っているんだ!」

「舞い散る、この白と黒の花びら

広がる赤と青の空、無限に続く灰の草原―」

何だ!?何なんだコイツは!?

「俺は―」

「お前は―」


























現在地-海-大陸南沿い海岸

「ついてないわ…」

「カリフ…もうそれは仕方がありませんよ」

私の名前はアクア、この広い海を自由に泳ぐシー・ビショップです。

そんな私は今日はこの海岸の浜辺に腰を降ろして、友人のネレイスのカリフの愚痴を聞いています。

「折角溺れてる男を見つけて住処に連れて行こうかと思ったのに、もう妻子持ちだったって……その後慌ててマーメイドの親子が迎えに来て、すっごい気まずかったんだから」

「まぁまぁ」

普通なら溺れる人を引きずりこむネレイスと溺れている人を助けるシー・ビショップの私達は正反対だけれど、私達は幼い頃に遊んだ仲…幼馴染なのであまり気にしたことはありませんでした。

「ところでアクアにはまだいい人は見つからないのかしら?」

確かに私が助けた人達には既に人間や魔物の奥さんがいたり、反魔物領の人もいたので未だに私の夫となる人は現れません。

でも私は信じています、そう遠く無い未来に私の心を魅了する素敵な殿方に出会えると。

「私は、いつか出会えると信じていますから」

ニコッと笑うと、カリフはフゥと溜息を吐いて呆れたような顔になった。

「アクアはいい女性よね…結婚する男は幸せ者よ」

「いや、そんな……あら?」

カリフの言葉に少し照れていると、陸の方から何か小さなものが飛来してくるのに気が付きました。

大分近づいてくると分かりましたが、どうやらフェアリーのようです。

「あう〜!お姉ちゃんたち、助けて!」

「どうかしたの?悪い人間にでも追われてるの?」

フェアリーの子が涙目で切羽詰った表情だったので、カリフがそう聞きますが、フェアリーの子はブンブンと首を横に振ります。

「違うの違うの!このままじゃセンお兄ちゃんが死んじゃうの!」

私とカリフは顔を見合わせると、フェアリーの子に問いかけます。

「その人はどこにいるのかしら?」

「浜辺で倒れてるの!センお兄ちゃんを助けてあげて!」

「……はい、ではそこまで案内して下さい」

浜辺なら移動も早くて済みます、私とカリフは海に入ると、浅瀬を泳いで素早く移動します。

フェアリーの子も空を飛んで私達を先導します。

5分も進んでいくと、親魔物領と反魔物領の境目でもある崖の川の裂け目が見えてきました。

崖の川をすぐ出たところにある砂浜に1人の青年が血を流してうつ伏せに倒れていました。

「大変!」

傷を見て私は急いで砂浜に上がると、彼を仰向けにして傷を診ます。

まだ塞がりきっていない刀傷が4つも……それに、血を流しすぎている。

「治りそうかしら?」

「魔法を使えばなんとか……でも失った血までは取り戻せないので全快とまではいかないと……」

すぐに回復の魔法を詠唱して青い魔方陣を展開。彼を癒していきます。

大分魔力を使ってしまいましたが、どうにか傷を塞ぐ事ができました。

「でも彼、どうしてこんな怪我を?」

カリフがフェアリーの子に聞くと、フェアリーの子はシュンと落ち込んだような表情になって話し始めました。

「ポップ、センお兄ちゃんや仲間の皆と旅をしてたけど、街で教団に襲われて、皆捕まって、お兄ちゃんは川に落ちちゃうし、慌ててポップだけ飛んでセンお兄ちゃんを探しにきたの」

フェアリーの子、ポップちゃんの話を聞くと、状況は思ったより切迫しているようです。

「どうするアクア?正直同じ魔物として放っておけないけど…私達2人じゃ教団と真っ向から戦うなんてできないわ」

「……近くの親魔物領の人々に助けを求めればいいと思いますが、連れ去られた場所が分からなくては」

私達が話し合っていると、魔法が効いたのか青年がゆっくりと目を覚まします。

良かった…。

「ここは…」

「大丈夫ですか?」

青年が目を開けると、覗き込んでそう聞きます。

「センお兄ちゃん〜!」

「うわっぷ…ポップ、皆は……皆!?」

ポップちゃんが青年の顔に抱きつきますが、青年は急に何かを思い出したかのように跳ね起きます。

「ポップ!皆はどこだ!?俺は一体どうなった!?ここは何処だ!?」

「落ち着きなさい、ポップちゃんが可哀想よ。順を追って説明していくわ」

ポップちゃんに詰め寄る青年にカリフが落ち着くように促して、状況を説明していきました。

そして説明が終わると、青年は落ち着いた様子で私たちに頭を下げました。

「ありがとう、アンタ達のお陰で本当に助かった」

「それはいいのですが……貴方の仲間の方々はどうするんですか?」

ポップちゃんの話では全員捕まりどこかへ連れて行かれてしまったそうですが…手がかりも無くては探しようがないでしょう。

「……少しだけ、心当たりがある」

「え?」

「以前魔物を閉じ込める牢獄があるって話を聞いたことがある……もしかしたらそこへ連れて行かれたかもしれない。昨日の場所を探せば足跡が残ってるかもしれないしな」

彼は真剣な面持ちでそう言います。

そう言えば私も少しだけ噂を聞いたことがあります。

魔物を捕まえる魔物狩りの噂を……。

「ともかく、仲間が心配だ……すぐに川上へ向かって戦闘があった場所まで戻る」

そう言って立ち去ろうとしますが、すぐに立ち眩んで膝を着いてしまいます。

「無理をしては駄目です!貴方は血を失いすぎています!」

「それでも……自分の女達を見捨てられるかよ」

それでも青年はすぐに立ち上がって崖を上ろうとしますが、私はそんな彼の姿を見ている事ができませんでした。

それはカリフも同じのようでした。

「待って」

「是非、私達に協力させて下さい」



現在地-崖下-川

sideセン

「ちょうどこの上だよ」

飛ぶことのできるポップに昨日の戦闘跡の場所にまで案内してもらった。

俺はシー・ビショップのアクアにつかまってここまで川を上って連れて来て貰ったが、崖の上までは15メートルはある。

「任せなさい」

するとネレイスのカリフが魔法を詠唱し始めた。

青い魔方陣が水面に展開されると、突如水が盛り上がってきた。

「え…何これ?」

「私は貴方に念話の魔法をかけます。念じれば私と連絡を取り合えるのでこれで私達に指示を出して下さい」

アクアも詠唱すると額と額をコツンと軽くぶつける。

するとなんだか不思議な感覚が生まれた……こう、アクアと思考の元繋がっているような。

「じゃあいくわよ」

「着地、気をつけてください」

「着地?」

アクアが俺から離れたと思ったら盛り上がった水面が一気に噴射して水柱を生み出した。

まあ、当然俺はそこに巻き込まれているわけで…。

「どぁああああああああああああっ!?」

べしゃり、と無様に地面に水ごと叩きつけられた。

『大丈夫ですか?』

頭の中に響くようにしてアクアの声が聞こえてくる。

すごいな、これが念話か。

『どうにか……それじゃあ今から教団の奴等の足跡を追ってみる』

戦闘があった先日は雨が降っていた。

それにより足跡が地面によりくっきりと残っていて追跡はし易い。

『奴等はどうやら北上していったみたいだ……確か北には反魔物領の関所があるって話だったな……』

『そうですね……やはり反魔物領へ連れて行かれたと見るのが自然ですね…』

「センお兄ちゃん危ないよ!」

俺の念話に答えるアクアの声に被せてポップが俺の髪の毛を引っ張った。

そしてその瞬間、俺の首元目掛けて矢が飛んで来た。

ポップに引っ張られたのでギリギリ回避に成功したが、あのままだったら俺に直撃していただろう。

矢が飛んで来た方を見ると白い鎧を着込んだ男が3人……弓矢を構えている。

恐らくこの足跡を消す後始末の奴等だろう。

しかし3人で全員と言う事は無い筈だ。

「ありがとなポップ…隠れてろ!」

俺は一気に駆け出すと奴等は目に見えて動揺するが、その隙を突いて俺は更に強く地面を蹴る。

弓で俺を狙い攻撃してくるものの、俺は身を屈めて低く走ったり、ジャンプしたりして矢をかわし続けた。

そして接近しきると、まずは1人手始めに蹴り飛ばす。

ここまで接近を許して明らかに動揺している2人に対して俺は宙に飛び上がって同時にけりを放つ。

モロに顔面に蹴りが入り、俺は着地するとすぐに最初に蹴り飛ばした奴に接近して首を足刀で斬る。

「がっ……!」

息絶えた事を確認すると、俺は顔面を蹴られて悶絶している奴の片方へ接近し、身体を屈めつつ、回転足払いをかける。

「うわっ!?」

そのまま立ち、足払いをかけたほうの足を勢いを殺さずに踵落としのように高く上げ、首目掛けて叩き落す。

確かな手応えと、ゴギッという音と共に首の骨が折れる。

最後の1人は漸く悶絶から立ち直り、俺へ剣で対応しようとしたのか、腰の剣を抜こうとする。

だが、遅い!

俺は右足で剣の柄頭を押さえて抜刀を防ぐと同時にそこを踏み台として階段を上るように一歩上がり、そのまま左足で頭を強く踏んだ。

俺はそのまま後方へ着地し、兵士は地面に顔から叩きつけられる。

「ぐはっ!?」

慌てて立ちあがろうとする兵士だが、振り返り際に俺は容赦なくこいつの顔を蹴る。

「ぐほっ!」

仰向けに倒れた兵士だが、俺は足を休めず、顔を踏む。

「うがっ!がはっ!ぶほっ……!」


そろそろ良いだろうと思った俺はこいつの胸座を掴んで引き寄せる。

「ここでの戦いで捕らえた魔物はどこへ行った!吐け!さもないと……!」

「ひぃっ!?き、北の関所を抜けてすぐにある街の地下だ!それ以上は知らな――」

「そうかい」

聞くだけ聞いたら、すぐさま首を撥ねる。

さて、やはり北か……まずは関所だな。

『アクア、聞こえるか?監獄は北の関所を抜けた先にある街の地下にあるらしい……後は俺がやるからアクア達は親魔物領へ増援を呼んできてくれ』

『はい……では、増援を呼ぶのはカリフに任せて私はセンさんを援護します。このまま川を上れば私も街に着けるでしょう』

『なっ…!?付いてくる気か!?危険すぎるぞ!』

これから先は反魔物領……俺1人なら誤魔化しが効くだろうがアクアはシー・ビショップ……下半身を見られれば致命的だ。

『大丈夫です、多少は魔法に心得がありますし……今のセンさんを放ってなんておけませんよ』

……確かに今の俺は血を失っていて全力を出す事ができない。

魔法も使えないし、1人で皆を救い出す事はできないのかもしれない。

仕方が、無いか。

『分かった。だが無茶だけは絶対にするなよ』

『はい……でもそれはセンさんもですよ?』

『分かってら』

そこまでで一旦念話を切って俺は足跡を追おうとするが…。

「センお兄ちゃ〜ん!見つかっちゃった〜!」

ポップが飛んで来ると、それを追って7人ほどの教団の兵士がやってきた。

「ポップ、俺の服の中に隠れてろ」

「うん!」

俺の着物の中にポップを入れて隠れさせると、俺は教団の兵士に向かって駆け出した。

待っていてくれ皆……絶対に助け出す!
13/01/16 19:47更新 / ハーレム好きな奴
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■作者メッセージ
どうも、作者です。

今回は此処で切りましたが、次回はバトルを含めた約1万文字の長文です。

普段は5千前後なので、1万でも倍なので長文です。

さて、感想ですこってぃさんが、想像を膨らませているとおっしゃっていましたが、何かリクエストの話などありましたら是非書いてください。

可能な限りで実現してみせます!

色々やってみたいとも思ってるので、コラボとかも受け付けますよ〜。

ではまた次回!

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