連載小説
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TAKE17.92 判明! 天才グレムリンの真実!
『決着ゥゥゥゥゥゥゥ!
 決勝戦第二回戦は、須賀川雄一郎選手が怒涛のワンキル勝ちィィィィィィ!』

 ココナッツツリー・コロセウムに歓声が響く。それらは全て、圧倒的な戦いぶりを見せた須賀川雄一郎……もとい男優、志賀雄喜を賞賛するものであった。
(これで二勝……残るは三人か)
 当の雄喜はそれらに耳を貸しつつも調子付いたりはせず、あくまでも目的――試合に勝利しつつ、FFC団の三名を苦しめる方法――を思案する。
(次の相手が問題だな。プロシオンにトラケミー、十五夜ヒマリ……最悪トラケミーには負けても他の二人に勝てれば勝利はできるだろうが、そのトラケミーが逆転申請をしてくる可能性もある。そもそも他の二人も強い可能性だって捨て切れないし……)

 そうこうしている内に第三回戦が開始される。対戦相手はファミリアのラスカル新井。実況曰く『嘗て一世を風靡した元人気アイドルとも、某大企業創業者の娘とも、現内閣を支える某大物官僚の孫とも、或いは世界的な海外セレブや魔王軍に連なる重鎮の関係者とも噂されるが何れも確証がなく正体は謎に包まれている』というが……

(プロシオン……全く滑稽な奴だと思っていたが、いよいよ笑う気すら失せるほど落ちぶれるとは恐れ入るよ。お前に何をするかは結構迷ったが、ギリギリになって最高に素晴らしい案を思いついた。きっと気に入ってくれると思うんだ……)

 FFC団筆頭にして全ての元凶でもあるプロシオンは、雄喜にとっても因縁の相手である。『ただ苦しめるだけでは気が収まらない。妨害を繰り返すのは安定せず、ワンターンキルは一瞬だ。もっと確実に、長い時間をかけてじっくりと地獄を味わわせてやらねば』……おぞましい考えに至った雄喜が準備したデッキは【竜座隊】であった。


「先攻は頂く……僕のターン。手札からスキルカード《土地開発》を発動。その効果でデッキからエリアスキル《竜座隊星海要塞ラドゥーン》を手札に加える」
「【竜座隊】ぃ〜? いい年こいてそんな子供っぽいデッキ使うのぉ〜? だっさぁ〜♥」
「そのまま《ラドゥーン》を発動。発動時の効果処理としてデッキから《竜座隊 鱗のアルディーバ》をサーチ」
「ちょっと! 無視してんじゃないわよっ!」

 挑発を無視しつつ、雄喜は展開を進めていく。そして……

「術式スキル《竜座隊流星群》発動。手札の《竜座隊 牙のツバーン》と《竜座隊 翼のエルタニン》をベイト……」
(『竜座隊』の術式ユニットっていえば、あのキモいアルプをぶっ飛ばしてたドラゴンみたいなガキ臭いヤツぐらいでしょ? 後攻ならまだしも先攻であんなデカいだけの雑魚出したってどうってことないっつーの。ほんとこれだから陰キャオタクは……)
 プロシオンは思っていた。『自分はバイリスカリスやアチャティナの二の轍を踏むことはない』と。然し次の瞬間、早くも事態は予想外の展開を迎える……。

「さあ、かの者を見よ。
 天の星に見下され、地の花に蔑まれ、人の愛さえ受けられず。
 今やその身を衝き動かすは、華やぐ世への憎悪のみ。
 かの者が齎すは究極の苦痛、真なる地獄、即ち虚無なり。
 術式召喚……いざ出ませい、《怨恨災禍竜 ロード・ヴォイド》」


『VuuuuaaaaaaaaaahhhHH!!』


 現れたのは、それまでの『竜座隊』系ユニットとは似ても似つかぬ、醜怪な異形のドラゴンであった。決して生身の生物ではなく、かと言ってゾンビや人工物とも言い難い。ただ『そりゃそんなんじゃ星に見下されたり花に蔑まれても仕方ないし、まして人の愛なんて受けられる筈もないだろう』と誰もが思うような、そんな不気味で恐ろし気な風貌をしていた。

「――……!?」

 思いがけず全く予想外、まるで見知らぬ不気味なユニットの登場に、プロシオンは混乱し絶句する。嫌悪感と不快感、そして何より恐怖の所為で、言葉がろくに出ないのだ。

「しかめっ面はやめてくれないか、新井選手。この子もまた僕のデッキの大切なメンバーでね……ぜひとも貴女に会わせたかったのさ」
 絶句する魔獣の心情を知ってか知らずか、青年は慇懃無礼に胡散臭く、ずる賢くて腹黒い悪徳企業家めいた態度でさらりとそんなことを言ってのける。『ふざけるなこの野郎、大切な仲間を痛めつけやがって。今にその恨み晴らしてやるぞ』……そんな風に思いながら、ファミリアは反撃の機会を見計らう。
(今に見てなさい、そんな奴私のターンが回って来た途端に除去してやるんだから!)
 プロシオンの覚悟と手札は十分であった。これで雄喜のフィールドに居たのが例えば《竜座隊 流星機竜カンナヅキ》等であったなら彼をある程度苦戦させることはできていただろう。だが……

「術式召喚成功により《ロード・ヴォイド》の効果発動。次の相手メインパートを飛ばす。華やぐ世界に虚無の地獄をッ」
『Vaaaaaaaaaaoooooohhhh!!』
「はぁ!?」
 待ち受けていたのは全く以て予想外の展開。プロシオンが面食らったのも無理はない。メインパートはその名の通り遊侠王の対局に於ける主要部分、ユニットの召喚・展開やスキル・ギミックの発動を行う区分である。それを飛ばされたとあっては何もできなくなってしまう。
「ちょっと、飛ばすってどういうことよ!? そんな、録画のCMスキップするみたいなノリでっ!」
「どういう事と言われても、それがこの子の効果なものでね。まあ、アフターや二ターン目以後で動けばいいんじゃないかな」
「バカ言ってんじゃないわよ! メインパート・アフターはバトルやんなきゃ発生しないのよ!?」
「ああ、そうだな。それがどうした? 当たり前のことじゃないか。メインパート・アフターはバトル抜きで生じない……ならバトルをすればいいだけの話だろう?」
「そのバトルで使うユニットをいつ出すのよ!? メインパートでしょうがッッ! アフターじゃない方のッッ!」
「そりゃそうだな。……で、だから?」
「だから、ってッッ……! あんたが……あんたが!!! あたしの!!! 後攻第一ターンのメインパートを潰してくれたからッッ!!! 結局何もできないって!!! 言ってんじゃないのよおおおおっ!!??」
「あぁ〜……そういえばそうだったな。じゃあ二ターン目に賭ければいいだろ。相手ターンに動くって手もあるだろうし、そんなに怒る必要もないんじゃないのか?
 何にせよ貴女はLeaf側なんだから特に大人しくしていた方が身のためだぞ。失格になったら元も子もないからな」
「このッッ、誰のせいでッッッ……!」
「何にせよ僕はこれでターンエンド」

 続くプロシオンの後攻第一ターン。本来ならばここから彼女は本格的に動き出す筈であったが、如何せん《ロード・ヴォイド》の効果でメインパートがスキップされてしまった為まともに動くことができず、ただ単にカードを一枚引いてターン修了を宣言するだけに留まってしまう。
 ただ……

(なんとか引けたわ《合成強行》……二ターン目じゃ遅い。あいつはどうせあのキモトカゲで攻撃してくるだろうし、その隙にこのカードで展開してペースを取り戻さなきゃ!)

 希望はまだ潰えていなかった。《ロード・ヴォイド》のスキップ効果は一回限りの使い切りであり、その攻撃力も飛び抜けて高いわけではない2900。ならば手札に引き込んだカード群でまだ巻き返せる。綿密に戦略を練りながら、プロシオンはターン修了を宣言する。

「僕のターン、ドロー。手札の《竜座隊 爪のラスタバン》の効果発動。手札より《竜座隊 鱗のアルタイス》をベイトし《ラスタバン》を防御体勢で展開」
『Set up...』
「なにそれ〜? 頭数増やしたつもりか知らないけどぉ、防御体制じゃ攻撃できないし、折角の高い攻撃力も意味ないじゃな〜い! ダッサ〜!」
「続けてバトル。《怨恨災禍竜 ロード・ヴォイド》で直接攻撃。異常なる正常者に苦痛あれッ」
『Vaaaaaaaaaahh!!』
「ッチ、また無視された……まあいいわ。ならあんたの攻撃宣言時、クイックスキル《合成強行》を発動! 手札から《無垢なる聖人キュル・ルー》と《魅惑のセーラーサーバル》、《疑惑のチアカラカル》を除外! アルターデッキから《慈愛の癒し キュル・ルーラー》を合成召喚!」
『ドーモ、クソヤロウ=サン。キュル・ルーラーです』
 現れたのは新約聖書の堕天使ルシファーを思わせるヒト型ユニット……なのだが、顔つきや声が愛らしい子供のそれでありながら首から下は筋骨隆々な成人男性のそれという、中々にいびつなデザインであった。
「合成召喚成功時、《慈愛の癒し キュル・ルーラー》の効果発動! 自分と相手のライフの合計値の半分の数値の攻撃力を得るわ!」
「なんだと……」
「今は対局の最序盤、あたしもあんたも未だダメージは受けていない! よってお互いのライフ合計は8000の二倍で16000! つまり《キュル・ルーラー》の攻撃力は8000!」
『Yes! I am MUTEKI〜!』
「さらに《慈愛の癒し キュル・ルーラー》のもう一つの効果で、あんたの場のユニットは必ずこいつを攻撃しなきゃいけなくなる! つまりあんたはあたしに2900のダメージを与えるどころか、逆に5100のダメージを喰らうってわけよぉ!」
「なるほどなるほど、よくわかった……《ロード・ヴォイド》で《キュル・ルーラー》に攻撃。驕れる稚児に地獄あれッ」
『VaaaaaaaaaaGoooooohhhh!!』
「ふん、絶望的な状況に血迷ったみたいね……《キュル・ルーラー》、返り討ちにしてやりなさい!」
『OFF COURSE! HISSATSU! 自然統制支配け――ギュルカスウウウウウウ!?』
「なっ!? 《キュル・ルーラー》!? どうしっ――ぐぎゃあああああ!?」

 噛み付かんと飛び掛かる《ロード・ヴォイド》と、それを返り討ちにせんと拳を振り上げる《キュル・ルーラー》……攻撃力の差は歴然であり、本来ならば《ロード・ヴォイド》が戦闘破壊され、主である雄喜が膨大なダメージを受ける筈であった。然し実際戦闘破壊されたのは《キュル・ルーラー》、ダメージを受けたのもプロシオン……本来ならば有り得ない展開に、観客席がどよめく。

『な、なんとなんと! まさかの展開っ! 攻撃力8000の《キュル・ルーラー》を、攻撃力2900の《ロード・ヴォイド》が戦闘破壊しているゥゥゥゥ! 更にダメージを受けたのも須賀川選手ではなく新井選手という有様だァァァァ! 一体何が起こっているんだーっ!?』

「な……なん、っで……あたしの、《キュル・ルーラー》がっ……」
 だが誰より混乱していたのは、当のプロシオンであった。戦略は抜かりなく完璧だった筈である。だのにどうしてこうなったのか、まるで理解が追い付かない。すると……

「ラスカル新井ィ〜」

 そんなプロシオンをあざ笑うかのように――ただ、あくまでも爽やかに真顔で、表情一つ変えず――雄喜は語りかける。
 
「なぜ君が2900のダメージを受けているのかぁ〜?
 何故僕が5100のダメージを受けていないのかぁ〜?
 何故攻撃力2900の《ロード・ヴォイド》が攻撃力8000である筈の《キュル・ルーラー》を戦闘破壊できたのかぁ〜?
 その答えはぁ〜ただ一つぅ〜……」

 後にある観客はこの光景について『スタイリッシュなSFドラマの主題歌が流れて来そうな雰囲気だった』と語ったらしい。
 そしてそんな雄喜の口から語られたのは……

「《ロード・ヴォイド》の効果により《キュル・ルーラー》の効果が無効化され、8000の攻撃力が一気に失われたからだぁ……」

 実にシンプルかつえげつない"ただ一つの答え"であった。

「な……なんですって!? 一体どういうことよっ!?」
「どういうこと、と言われても……そのままの意味だが?」
「ッッ……一々癪に障る奴ね!? 詳しく説明なさいって意味よっ!」
「なら最初からそう言え……《ロード・ヴォイド》は二つの効果を持つ。『術式召喚成功時に次の相手メインパートをスキップする』ルール効果と『合成・アライアンス・コズミカルユニットの効果を無効化する』持続効果だ。前者は術式召喚成功時にしか発動しないが、後者はフィールドに存在する限り適用される。そして《キュル・ルーラー》は合成ユニット……」
「という、ことはっ……!」
「お前の切り札とやらはフィールドに出た瞬間一切の効果を失っていたのさ。当然攻撃力なんて上がりゃしない。お前らはそれに気付かずバカみたいに糠喜びして、その結果見事に自滅したってわけだ」
「ぐぬぅっ……な、何も言い返せない……レスバじゃ負け知らずで通ってるこのあたしがっ……!」
「なら無駄口は慎めよ。無視するのも楽じゃないんだからさぁ。

 引き続き僕のターンを続行。メインパート・アフター。墓地の《ツバーン》の効果発動。《ロード・ヴォイド》をベイトし自身を防御体勢で展開。効果でデッキから術式ユニット《ロード・ヴォイド》を手札に加える。続けて墓地の《竜座隊流星群》の効果発動。フィールドの《ラスタバン》の攻撃力を1000下げ、自身を手札に加える」
「て、手札に術式ユニットと術式スキル……ってことはっっ……!」
「手札に加えた《流星群》を発動。《ツバーン》と《ラスタバン》をベイトし手札から《ロード・ヴォイド》を再び術式召喚。序でに効果発動、次の相手メインパートをスキップ」
『VuuuuaaaaaaaaaahhhHH!!』
「ぎゃあああああああああ!?」
「やかましい、一々騒ぐな」


 その後、雄喜は毎ターン必ず《ロード・ヴォイド》を術式召喚してはプロシオンのターンを延々飛ばし続け、遂には彼女に殆ど何もさせず、徹底的に敗北へ追い込んだのだった。

『決着ゥゥゥゥゥ! 決勝第三回戦も須賀川雄一郎選手の圧勝だぁぁぁぁぁぁ!』


 斯くして迎えた第四回戦……次なる相手は問題のグレムリン、トラケミーであった。

(グレムリンのトラケミー……並のプレイヤーなら尻尾巻いて逃げ出すような過酷な縛りルールでも圧倒的勝利を掴む謎の達人、か。正直戦いたくない相手なんだよなぁ。そういう意味でも準決勝では克己さんに勝って欲しかったし、今思えばプロシオン如きに【竜座隊】を使ったのも失敗な気がしてきたが……まあ、過ぎたことを悔いても仕方ない。何とかして勝つ方法を模索しないと……)
 対局の準備を進めつつ、雄喜は思案する。トラケミーは強い。正攻法で戦っても勝ち目はないだろう。
(ならいっそ敢えて負けるのも手だ……と、普通なら考える所だが、勢い余って既に三勝してしまった以上逆転制度を使われる可能性がある……とすれば攻略のカギは……)
 熟考の末、雄喜はある結論に至る。戦略と呼べるようなものではなく、どのような結果に繋がるのかさえ不明瞭であった。
(だがやるしかない……それ以外に思いつく手段もないしな)
 かくして雄喜は、最悪逆転負けも覚悟の上でトラケミーと対峙する。


「……あんたがトラケミー、だな?」
「そういうオメーは須賀川雄一郎……うちのチームメイトを三人も惨い目に遭わせた野郎が、オレに一体何の用だ?」
「ああ、まあ、なんというか……対局前の世間話というかね。僕も遊侠王を始めて長いんだが、あんたほどの天才的な達人には出会ったことがなくてね。何でもいいから話を聞いておきたかったのさ」
「オレが天才で達人だと? 皮肉で言ってんのか?」
「皮肉なものかよ、本心さ。世辞抜きにあんたは凄い奴だ。今までの試合を見てればそれは誰だって理解できる。普通のプレイヤーなら匙を投げてもおかしくない状況で華麗な逆転勝利を決めてみせる……しかも何度負けても最後の最後まで諦めない。安っぽい言い回しだが、それこそ漫画やアニメの主人公みたいじゃないか」
「……何が狙いだ?」
「狙いなんてない。ただ純粋に思ったことを言ってるだけだ。だが、強いて挙げるなら……


 あんたの強さを知りたい、ってのはあるなあ」

 それはまさに、雄喜の心からの言葉であった。
 優れた学者や技術者を数多く輩出するなど、知能が高いことで知られるグレムリン。その英知が人間など遠く及ばない領域にあることは雄喜自身認知していたが、それでもあの腕前は見ていて信じがたいものがある。なればこそ、その秘密を知りたいと思うのは必然と言えた。

「オレの強さだぁ?」
「秘訣っていうのかな……そこまでの、完璧なまでに完成され尽くした戦いぶりを実現する強さをどうやって得たのか、何があんたをそうさせるのかが知りたいんだ」
「ふん……何かと思やあそんなことかよ、くだらねえ。そんなもん簡単だろうよ。

 オレが強えのは、そうなろうとしたからだ。弱いままじゃいられなかった……ただそれだけのことだ」
「負けるわけにはいかないから勝ち続ける、と?」
「おうともよ。なんだよオメー、物分かりいいのか悪いのかはっきりしろよ。
 自慢じゃねえがオレはガキん時からゲーム好きでな。漢字もろくに書けねえ頃から、楽しんで勝つ研究を続けて、いつの間にか強くなってた。んで、負けらんねえ時は全力で勝ち続ける……ただそんだけのことだ。それとっ」
「なんだ」
「オメー、オレのプレイングを『完璧に完成されてる』とか言ってやがったが……」
「不服かね」
「ったりめえだ。オレのあのプレイングは『素早く確実に勝つ最適解』でこそあれ『完璧に完成』なんかじゃねえんだよ。オレの目的は『楽しんで勝つ』こと……楽しくても勝てなきゃ物足りねえし、勝てても楽しくなきゃ意味がねえ。今までは仕方なくやってきたが、ただ勝ちだけを追求したプレイングなんざオレに言わせりゃクソみてえなもんだ。楽しめてねえなら価値はねえ。
 例えるなら過激派の理念だなあ。何かに載ってたデルエラ閣下のインタビュー記事に書いてあったんだ。ダークマター集めて適当に炸裂させりゃ魔界なんてすぐにできるが、そんなんじゃつまらねえ。魔物とヤんのも魔物になんのも人生の一大イベントなんだから手間かけてしっかり世話焼いてやるのが道理だろう、とかってよ。やっぱあのお方はそのへんのヤることしか頭にねえような連中とは考えてることが違え」
「それは思う。彼女は全く偉大な……まさに指導者の器だろう。で。要するにあんたの勝ちに特化したプレイングは完璧なんかじゃない、と。然しだったら何故そんな『クソみたいなプレイング』をわざわざ無理して続けてたんだ? リーダーの無茶ぶりだって断りもせずに受け入れて……」
「そうせざるを得なかったんだよ。詳しくは言えねえが、オレはちっとワケありでなあ……ケリ付けなきゃならねえことがあるのよ。で、その為にはこの大会の優勝賞金3000万と、十五夜様のお力添えが必要不可欠……『試合で勝つ』『リーダーに従う』……『両方』やんなきゃなんねえのが『よくできた部下』の辛い所でよぉ」
「そりゃ世の中好きな事だけして生きていくわけにもいかないが、それにしたってあんたほどの女がそこまでして果たさなきゃいけないことってなんなんだよ……」
「復讐だよ。オレを貶め破滅させた奴らへのな」
「復讐、ねえ……」
「くだらねーと思うか。無意味だと思うか。『魔物なんだから過去なんて忘れて彼氏探して幸せになれよ』とかってよぉ」
 トラケミーの発言にはやたらと真実味があり、雄喜は『きっと彼女は実際そうやって周囲から復讐を否定されていたのだろう』と推測する。そして……
「いんやあ、別に? 復讐と言っても色々あるんだ。その全てが無意味でくだらないってことはないだろう。実際僕だって、あんたのチームメイト三人を何故あんな目に遭わせたってなると、個人的な復讐からだったわけだしな」
「あんだけの目に遭わされるって、あいつら一体何やったんだよ」
「そりゃあ色々さ。……まあそういうわけだから、あんたが復讐の為に動くのは別に問題ないと思うし、何なら推奨さえするよ。ただ今のあんたの復讐はちょっとどうかとも思うがね」
「ほう、何故だ?」
「だってあんた、楽しめてないんだろう? 復讐ってのは割に合わないもんだ。散々苦労しても結果得られるものは予想外に少ないんだ。それこそ果たした途端一気に空しくなって、何もやる気が無くなってしまうぐらいにはな。だから復讐をする時はそれそのものを目的じゃなく手段と考えて、復讐を果たした後に何がしたいかを目的に据えた方が上手く行くのさ」
「なるほど、言われてみりゃその通りだな。……ならオレも復讐果たした後に何がしてえかってのを考えりゃ問題ねえわけだな?」
「まあ、大体はね。ただそれでも道中が辛すぎると心が摩耗して、結局復讐を果たしても心が摩耗してて結局……っていうパターンもあるわけだが。そんなのはあんただって嫌だろう?」
「……まあ、できりゃ避けて通りてえが……ならどうしろってんだ?」
「わからないか? 復讐そのものを楽しめばいいんだ。僕自身、前の三人へ復讐すると決めた時はそうしたからね。憎いあいつらをどう苦しめてやろうか、その為には何をどうすべきかとかを考えて、ゲーム感覚で復讐をしていくのさ」
「ふうむ……」
「といって、決して簡単でもないから、いっそ諦めて別の方法を考えてみる方がいいかもしれんがね。例えば殺したい奴が居たとして、ナイフで刺すのは反撃されるリスクがあるから鉄砲を使おうとか、自ら手を下すのは嫌だから事故に見せかけようとか……大抵、復讐の方法は一つじゃない。今は思いつかなくても、時間をおいてしっかり計画を練ればもっといい方法があったりするんじゃないかな。『時は金なり』『早起きは三文の徳』とは真理だけど、『急がば回れ』『急いては事を仕損じる』もまた真理……事情を知らないのにこんなことを言うのもなんだが、雰囲気から察するにあんたの場合、焦らずゆっくり、冷静に計画を練った方が上手く行くと思うんだ。部品の一つから大きな機械を作るみたいにさ」
「……」
 雄喜からの真摯な言葉を受け、トラケミーは考え込む。思えばこの男の言う通り、自分は今まで焦り過ぎていたのではないか。楽しくない、不自由な生き方をしていて何が魔物だ。苦しいことなどもうやめだ。自分らしく好きに生きてやる。

「そうだ……そうだよなあっ!」

 覚悟を決めたグレムリンは、意気揚々と口を開く。

「感謝するぜ、須賀川雄一郎っ! オレぁオメーの言葉で目が覚めた! 思えば最近のオレは不自由なばっかで楽しくねえことを続けてたんだ! この大会だってそうだ! リーダーに言われるまま、本当にやりてえ試合をやらず、勝ちばかり追い求めていた! だがそれもこれで終わりだ! もうてめえの心にウソなんて吐かねえ! オレはオレとしてオレらしく! 本当の自分として生きてやらァ! 悪いな十五夜様ァ!こっからオレは『十五夜ヒマリ親衛隊』のトラケミーとしてじゃなく、グレムリンの中野勇子として好き勝手やらせて貰うぜ!」

 声高に宣言しつつ、トラケミー改め中野勇子は改めて雄喜に向き直る。

「さあやろうぜ須賀川雄一郎! このオレと全力で、楽しく殴り合おうじゃねえか!」
「復讐はいいのか?」
「勿論復讐も諦めねえ! リーダーの期待にも応えてみせる! だが今はそれ以上に、オレらしく楽しむことに全力を注ぐことにした!」
「ほう、そりゃいいね……具体的には何を?」
「気になるか。ならこれから見せてやるぜ! オレの先攻!
 オレは手札から《古代神の信徒》を召喚!」
『ハアッ!』
「召喚成功時、自身の効果で同名カードをデッキから可能な限り展開する! よってオレは追加で《古代神の信徒》を二体展開!」
『ヌンッ!』
『ヘイッ!』
「そしてオレは持続スキル《権威者の進軍》を発動!」
「ブリーディング召喚したユニットに対象指定効果と破壊効果への耐性を持たせるカード……」
「そうだ! そしてフィールドにはユニットが三体! これでもう察しはついたよなぁ?」
「ああ。通常、ブリーディング召喚に用いるベイトの最大数は二体……三体のベイトを要するのは特別なユニットと決まっている。中でも代表格と言えば……」
「そう、だっ!
 原作『遊侠王』とアニメ第一作で物語の根幹を担った大いなる三体の神!
 その一角を担う代表格を、今こそ見せてやる!
 オレはスキルカード《重役出陣》を発動! その効果でこのターン、オレは通常召喚に加えて二体以上のベイトを要するブリーディング召喚を行うことができる!
 よってオレは三体の《古代神の信徒》をベイト!
 荒海と大地の具現たる巨躯の神! 我が呼び掛けに応じその剛腕を振るえ!
 ブリーディング召喚!
 顕現しろ、《深淵破壊神エノシガイオス》!

『ヌウウウウオオオオオオオ……』

 勇子の召喚により現れたのは、深海のような深い群青色の外皮を持つ、厳つくも神々しい巨人《深淵破壊神エノシガイオス》であった。


『出た出た出たっ! 出たああああああっ! 未だ根強い人気を誇るアニメ第一作「ダークネスマジェスティ」を象徴するカード群と名高き「三巨神」が一体! 《深淵破壊神エノシガイオス》だぁぁぁぁぁ!』


「《深淵破壊神エノシガイオス》……《天空飛翔神ユピテル》や《冥府変幻神ディスパテル》に並ぶ『三巨神』の一体……まさかお目にかかれようとは思わなかった。まさにユニットを通り越して神と呼ぶに相応しい、威厳ある姿だな」
「そうだろうそうだろう! レベル10に攻防4000! 破壊神の名に相応しい豪快な全体除去効果に三つの強固な耐性まで持ち合わせたまさに神のカード! 更に《権威者の進軍》で効果破壊耐性まで得てんだから、そう簡単には倒せやしねーぜ! オレはバックゾーンにカードを一枚セット! ターンエンドだっ!」
「……いいのか? あんたほどのプレイヤーならまだいくらでもやりようはある筈だが」
「いいんだよ! これでいいのさ! これこそオレが求めてる『楽しさ』……オレ自身の『理想』なんだからなっ!」
『ホォォォォーン……ソノ通リィ! 中野ノ目的トハ"楽シンデ勝ツ"コト……即チ己ト相手、双方全力ヲ以テ一進一退ノ攻防ヲ繰リ広ゲルコトダァ!』
「つまり、全力を出しつつも敢えて完全な制圧はせず相手にも攻撃の余地を与える『ロマンのぶつけ合い』……まさに戦闘を楽しむプレイングってわけか」
「そういうことだ! だからよぉ須賀川ぁ……見せてくれよ、お前の全力を! バーンワンキルでもロックでもターンスキップでも構わねえ……お前なりのロマンでもって、オレの《エノシガイオス》を超えに来いっ!」
「良かろう、ならばその期待に応えさせて貰うぞ。
 僕のターン、ドロー!
 僕は手札から《見習い召喚導士》を召喚!」
『ぃよっ!』
「そしてそのまま《見習い召喚導士》の効果発動!
 手札から持続スキルカード《六界の因果》をコストにデッキからレベル4の《ゾンビートル》を展開!」
『ブゥン!』
「そしてそのままレベル4の《見習い召喚導士》に、同じくレベル4のコムラードユニット《ゾンビートル》を同盟化!」
「アライアンス召喚か!」
「その通りだ。
 ……目在らば見よ。耳在らば聞け。口在らば讃えよ。
 それは混沌の闇を制し、あらゆる敵意を怒れる闇で滅ぼす君……。
 いざ出でよ、アライアンス召喚! レベル8、《混沌邪王竜 カトレヴルッフ》!」
『誰も逃しはしないィ……!』
 現れたのは黒と紫の鱗に赤い瞳を持ち、金色の装甲を纏った巨竜《カトレヴルッフ》であった。
「そしてそのまま《カトレヴルッフ》の効果発動」
『闇の選定!』
「その効果により、デッキトップを五枚めくって公開する……。
 一枚目、持続スキルカード《六界の法理》
 二枚目、闇属性ユニット《不滅六界至高神ラモール・ヴェルミリオン》
 三枚目、同じく《ラモール・ヴェルミリオン》
 四枚目、ギミックカード《迎撃防護壁ホーリーバリア》
 五枚目、光属性ユニット《六界神器ディヤウス》
 ……以上五枚の内、光または闇属性であるユニットカード《不滅六界至高神ラモール・ヴェルミリオン》を僕の手札に加え、残りを墓地へ送る」
『中野ヨ、奴ハドウヤラ《不滅六界至高神》ヲ出スヨウダゾ』
「いや待て《エノシガイオス》、ありゃあどうも様子がおかしい……《ラモール・ヴェルミリオン》じゃねえ何かが来るぞ!」
『ナ、何ダト!? 奴ノデッキニハ《不滅六界至高神》ヲ超エル切り札ガアルトイウノカ!?』
「察しがいいじゃないか中野勇子……その通り、僕は《ラモール・ヴェルミリオン》を出すことはない……やり様によっては《エノシガイオス》を倒せるかもしれないが、あんたの期待に応える最高の切り札ってんならもっと適任がいるからな。

 僕は続けて墓地の《六界の法理》の効果発動。自身を墓地から除外し、墓地に存在する『六界』ユニット《ラモール・ヴェルミリオン》を手札に加える」
「んなっ!? 切り札を……」
『二枚増ヤシオッタ、ダト!?』
「まだ終わらんぞ。更に墓地の《六界の因果》の効果発動。これまた自身を墓地から除外することで、今度はデッキから『六界』ユニット一体……最後の《ラモール・ヴェルミリオン》を手札に加える」
『ド、同名ノ大型ユニットガ三体……!』
「こいつぁ、まさかっ……!」
「中野勇子、そしてその切り札《深淵破壊神エノシガイオス》……あんたら二人……いや、ここはあんたら一人と一柱と呼ぶべきかな? ともかくあんたらに相応しい切り札をお見せしよう。

 僕は手札からスキルカード《合成》を発動! その効果により手札の《ラモール・ヴェルミリオン》三体を合成素材とする……」
『コ、コレハヤハリ……!』
「そうだ、あいつだ……あいつが来るっ!」

「六界を束ねる不滅にして至高の神とやら、今こそ秘めたる力の全てを以て我が願いを聞き入れ給え……

 合成召喚ッ、《不滅六界極限邪神 ラモール・ヴェルミリオン・ネメジス》!
『ヴェアァァァァァ! ッハァァァァァァァァ!』

 現れたのは、何とも形容しがたい姿としか言いようのない化け物であった。
 一応基部は辛うじてヒト型と言えるだろうか。両腕らしきものは確認できるし、頭部と思しき部位には角も確認できる。また全身各所に目玉が確認でき、フォルムも曲線的であった為辛うじて有機生命体らしさはあった……が、逆に言えばそれだけ。
 ただでさえ悍ましい姿をしていた《ラモール・ヴェルミリオン》を凌駕する《ネメジス》の異形ぶりは、使用者たる志賀雄喜の内なる狂気や邪悪さが具現化したかのようであった。

『来たぁぁぁぁ! 来てしまったぁぁぁぁっ! 《ラモール・ヴェルミリオン・ネメジス》!
 劇場版「遊侠王」最新作でラスボスを務め、強烈なビジュアルとぶっ飛んだ効果がそのままカードになったことで一時話題になった、三巨神に次ぐ準伝説級の激ヤバ合成ユニットだぁぁぁぁ!』

「や、野郎……やりやがるじゃねーか! まさか《ネメジス》を手札合成で出すとはよぉ!」
『須賀川雄一郎……真(マコト)ニ凄マジキ男ヨ……!』
「こうでもしなきゃ、あんたらは超えられないと思ったんだ」
『よもや再びこの姿になる日が来ようとはのぅ……とは言え、かの言わずと知れた三巨神が一柱、《エノシガイオス》様がお相手とあっては致し方なし……寧ろこうでもせねば非礼というもの、か……使い手よ、我が効果を用いるがよい! 《エノシガイオス》様に全力をお見せするのじゃ!』
「言われずともそうするさ。
 ……バトルだ。《ラモール・ヴェルミリオン・ネメジス》で《エノシガイオス》に攻撃!」
『そして攻撃宣言時、ワシの第一の効果が発動! 攻撃対象であるプレイヤーのライフを半減させる! 災厄・邪神骨肉贄(じゃしんこつにくし)!
「ぐおわがあああああああ!?」
『中野ォォォォ!?』
「だ、大丈夫だっ……心配すんな《エノシガイオス》! それより気を付けろ、奴の……《ネメジス》の攻撃が――
『邪神罰・滅殺三叉戟ィ!』
『グウアアアアアアアア!』
「ぬあがああああっ! ち、畜生……やってくれるじゃねーか、須賀川雄一郎! それに《ネメジス》!」
「《権威者の進軍》の効果が防ぐのは効果破壊のみ……戦闘破壊まで防げないからな。正攻法で行かせてもらった」
「へっ、よく気付いたな……だがオレはまだ負けてねぇ。例え戦闘破壊されてダメージを受けようとも《エノシガイオス》と《ネメジス》の攻撃力差は500……よってオレもあと3500のライフが残ってる。このターンさえ乗り切れりゃ、まだチャンスはあるってわけだ……」
「ああ、このターンを乗り切れればな。だが残念なお報せだ……」
『技師悪魔の小娘よ! お主の手札にワシを止められるカードがないならば、次のターンなど来ぬ!』
「ほう、そりゃどういうことだ? ユニットの攻撃は一度のバトルで一度っきりだろう?」
「ああ、一度っきりさ。普通はな……だがこいつは違う」
『《エノシガイオス》様を戦闘破壊したことで、ワシの効果が発動する! ワシは攻撃で相手ユニットを破壊した際、もう一度だけ続けて攻撃できる効果を持っておる!
 よって喰らうがよいわ、この追撃を! 邪神罰・滅殺三叉戟・第二打――
「その瞬間を待っていたぜ! オレは《ネメジス》の追加攻撃宣言時、バックゾーンにセットしていたギミックカード《魔法の反射鏡》を発動!
 その効果で《ネメジス》の攻撃を無効化して、その攻撃力分のダメージを相手に与え、バトルを強制終了させるぜ!」
『何ィ!?』
「ぐおおおおおおあああああっ!?」

『おぉっとぉぉぉぉぉ! 《魔法の反射鏡》ッ! こりゃまた懐かしいが決して侮れないカードの登場だぁ! これにより両者のライフ残量は3500! 須賀川選手、一気にピンチかーっ!?』

「ぉ、ぉおお……」
『な、なんということじゃあ! おい使い手ェ! しっかりせんか! こんな所で倒れるでないぞ!
 美人でチチのでかい魔物どもが三匹もお主の精を求めとると言うに、その内の誰とも股を繋がぬまま、こんな所で死んでいい筈はないであろうがっ!』
「余計な、お世話だ……あとゲームだから死なんわ……」

『主の危機に流石の《ネメジス》も焦っているゥー! これは流石にヤバいかー!? というか須賀川選手、巨乳美人の魔物三人に迫られて尚ヤってないって、出会ってどのくらいかにもよるけどそれもそれで色々とヤバくないですかー!?』
「……やっ、かましいわァ! 実況担当の癖に出場者のプライベートにまで一々首突っ込んで来んな! お前も魔物の夫にしてやろうか! 希望の種族を言ってみろ、知り合いに居たら大会の後で紹介してやるから!」
『マジっすか!? じゃあオセロメーさんでお願いします! あのモフモフした手足に抜群のプロポーション、あと腹筋とかたまんねーっス!』
「そうかオセロメーか……ごめん知り合いに居ないわ! 他に何かない!?」
『じゃあティターニアさんで! 俺早くに家族無くしてて、ビジュアルからにじみ出るあのママ感に弱くって!』
「ティターニア……ごめん、知り合いに居たけど既婚者だったわ!
『そっスかー。じゃあリリラウネさんはどうです!? 家族に憧れてるんで、俺のこと愛してくれる美人な姉ちゃんと可愛い妹が同時にできたら幸せだろうなって思うんですよ!』
「リリラウネか……ごめん、まともに会った事すらないわ!」
『キャンサーちゃんなんかも良さげっスねー! 厳ついわりに大人し気なのもそうですけど胸ないのが逆にそそるっていうかー!』
「昔仕事で港町行った時飯食った食堂で働いてるの見たことあるけど知り合いにはいないねぇ!」
『デーモンさんはっ! こう、日常生活の最中さりげなく契約書を手渡されてとか憧れてましてっ! 契約さえして貰えればいろんな顔が見れるんでいいかなってっ!』
「何人かいるけど確実に未婚と断言できるヤツらとはほぼ音信不通だわ!」
『そっスかー。じゃあ自力で何とかしますわ!』
「うん。そうして!

 ……そしてここで!」
『ワシの効果発動!』
「えぇっ!? ここでまさかの効果発動!? てっきりターン修了かと思ってたんだけど!?」
「残念だったな中野勇子……然し我が切り札《ラモール・ヴェルミリオン・ネメジス》には更なる効果が存在する」
『いかにも! 使い手が効果ダメージを受けた時、ワシの効果により同じ量のダメージを相手に与える!』
「お、同じ数値のダメージだと!?」
『そうじゃ! 言った筈じゃぞ技師悪魔よ、ワシを止められぬならばお主に次のターンは来んとな……』
「あんたが僕に与えた効果ダメージは4500……よってあんたが受けるダメージも4500!」
『邪神の眼光に焼き尽くされよ! 反撃・凶眼獄炎波ァァァァ!』
「ぐおわあああああああ!?」

 かくして《不滅六界極限邪神 ラモール・ヴェルミリオン・ネメジス》のバーン効果によりトラケミーこと本名・中野勇子のライフは焼き尽くされ、勝敗は決着した。

『決着ゥゥゥゥゥ! 第一ターンから切り札同士のぶつかり合う決勝戦第四試合を制したのは、【六界】使いの須賀川雄一郎選手だぁぁぁぁぁぁ!』

(よ、良かった……一時はどうなるかと思ったが……ほぼ即興で思いついた『とりあえず試合前に話しかけてみる作戦』、案外上手く行くもんだな)

 かくして残るは一試合。『親衛隊』を率いる怪しさ満点のレッサーサキュバス、十五夜ヒマリただ一人を残すのみとなった。
21/07/29 21:42更新 / 蠱毒成長中
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