連載小説
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TAKE17.9 熱戦! 便利屋バンドVS毒虫マネージャー!
『決着! 決ェェェェェェッ着ゥゥゥゥゥゥゥ!』

 ココナッツツリー・コロセウムに響く実況担当の声は、準々決勝第二試合の終了を告げるものであった。

『勝者! 須賀川雄一郎選手! 相変わらず容赦のねぇ戦いっぷりだったぜ! ありがとーぅ!』
「……ああ、どういたしまして」


 各ブロックの代表を決定する『古坂彦太郎杯』の準々決勝は、前八試合と同じかそれ以上の盛り上がりを見せていた。

 最初の第一試合でAブロック代表の座を賭けて戦ったのは、人間の男子学生五人組『青藍爪牙隊』と過激派傘下の多国籍精鋭部隊『過激上等♥毎晩寝かせknights☆』。
 ほぼ互角の戦いを制したのは『青藍爪牙隊』であった。

 続く第二試合は我らが(?)志賀雄喜と『隠元麒麟流』の戦い。初戦では手札事故の隙を突かれ木林に敗北、二回戦でも河津のデッキデス戦術に太刀打ちできず敗北し、出々しから二連敗を喫した雄喜だったが、三戦目からは調子を取り戻し悉く連勝。Bブロック代表の座を勝ち取りつつ『隠元麒麟流』の面々と親交を深めたのであった。

 そして戦いはCブロック代表を決める準々決勝第三試合……

『さあさあさあさあどんどん行くぜぇ! お次はCブロック代表決定戦ンンッ! 早速選手入場だーっ!
 オォォォン・ザ・リィィィィィッフ!
 虚空から颯爽と現れ衝撃の大爆発をかました小麦色の超新星、ここに再臨! "緑玉髄色の猛毒"! 神代ォォォォォォォ克ゥゥゥ己ィィィィ!』

「目指すは決勝……それまでは決して、負けるわけにはいかないのよ……」

『そんな神代選手と戦うのはぁ〜この三人だぁぁぁぁぁぁぁ!
  オォォォン・ザ・ルゥゥゥゥゥト!
 最早説明不要だろう! 新進気鋭の便利屋兼インディーズ・スリーピースバンドグループが登場だ! "フレッシュロッカー・トリニティ"! ハイブリィィィィィーッド! 開・闢・隊ィィィィィ!』

「……まさかあの人と戦う羽目になるとはなぁ」
「んぬ? どうした千代田?」
「あの神代って人と知り合いなの?」
「ああ……まあ、何だ。知り合いっつーか、縁を感じるっつーか……まあ、そんな所だよ」

 観客からの声援を浴びながら、四人はそれぞれの盤面に立つ。
 そして戦いは幕開ける……。

「バトルよ。《侵略攻虫(インヴェジョンバグズ) 破壊将トライホーン》で直接攻撃」
『グゥワッハハハハハハハハハハァ! インフェルヌス・マヌスゥゥゥ!』
「ぐぬおおおおおおおっ!」

 第一回戦。『開闢隊』のトップバッターは料理上手な美男子でドラマーの祠堂リュウヤ。使用デッキは神々しい獣型のユニットで戦う光属性のビートダウンデッキ【楽園聖獣】。対する克己の使用デッキは昆虫型悪魔といった風貌の恐ろし気なユニットを操る闇属性の【侵略攻虫】。デッキとしては展開力とステータス強化に秀でた【楽園聖獣】に分があり、実際序盤はリュウヤが優勢であった。
 然し克己はそんなリュウヤの猛攻を巧みに掻い潜りつつ、堅実な下準備を経て徐々に対局の流れを掴み逆転。強烈な除去効果によりリュウヤを一気に追い詰め勝利を掻っ攫った。


「《ヴァイサニマル・ガトリングロック》の効果発動……このターン、自身の直接攻撃を封じる代わりに、相手ユニット一体を破壊しその攻撃力分のダメージを相手に与えるわ。私が破壊するのは《氷河一族 神龍クサナギ》よ。
 さあ喰らいなさい、2900のダメージを……クロック・ヘルファイアッ」
『クオオオオオオオオオンッ!』
「クサナギっ――っくううううっ!?」
「そしてそのままバトル……《ガトリングロック》はバーン効果を発動しても攻撃そのものは可能……よって《氷河一族の番犬》に攻撃」
『キャヒーン!』
「きゃあああああああっ!」

 そして続く第二回戦では紅一点で龍のベーシスト、久川ミコトが出陣。使用デッキはその名の通り氷を操る術者や使い魔から成る水属性のコントロールデッキ【氷河一族】。対する克己が持ち出したのは『ロリコニック・ジェントルメンズ』戦の序盤で用いた【フューリートイ】。軍配が上がったのは後者であり、元々戦闘によるワンターンキル能力に秀でた【フューリートイ】の素早さが決め手となった。


「俺のターン……セットしてた《復活の狭き門》の効果で《チェスカルファミリー キング・ボス》を蘇生します。《キング・ボス》の攻防は墓地の『チェスカルファミリー』ユニット一体につき1000上昇するんで……攻防ともに12000、と」
「なるほど、それなら《BM システムバイター》の攻防反転効果も意味をなさないわね……流石だわ、千代田くん」
「お褒めに預かり光栄っス。んじゃ、遠慮なく活かせて貰いますよ?
 バトル。《キング・ボス》で《システムバイター》を攻撃ッ」
『……チェックメイト・デッドエンド』
『ギビ……ガガビーッ!』
「ぐうううううっ!」

 第三回戦で克己と戦ったのは、バンドのリーダー格でありギターボーカルの千代田カゲマル。使用デッキはチェスがモチーフの骸骨ギャング団といったユニットを操る【チェスカルファミリー】。一方克己が用いたのは、コンピュータウイルスと爆発物がテーマのビートバーンデッキ【BM(ボンバーマルウェア)】であった。
 搦め手を好む頭脳派同士の勝負を制したのは【チェスカルファミリー】のカゲマル。決まり手は切り札《キング・ボス》による力業という、聊か彼らしからぬものであった。


「クイックスキル発動、《同時多発集団放電》! 自分フィールドに『バッテリベンジャー』ユニットが三体以上存在する時、フィールドのカードを全て破壊します! そしてこの効果で破壊されたカードの内、このターンに戦闘を行った『バッテリベンジャー』ユニットの攻撃力の合計分のダメージを相手に与えます!」
「攻撃力の合計分、ってことは……」
「合計ダメージ4200! これで終わりです! みんな、行くよ!」
『『『『バッテリベンジング・特攻アターック!』』』』
「ぎゃっはああああん!」

 続く第四回戦も克己の黒星となった。対戦相手は第二回戦以来となるミコト。使用デッキは【バッテリベンジャー】。搭載されたユニットは何れも電池に顔や手足がついたようなマスコット風のデザインながら、その展開力と爆発力は凄まじく、克己に引導を渡したスキルカード《同時多発集団放電》をはじめとする強力なサポートカードが多く、嘗ては世界大会で上位に入賞した実績さえ持ち合わせていた。
 対する克己のデッキは寄生虫を媒介する害虫をモチーフにした、その名も【寄生害虫】。他に類を見ない独特な戦い方が特徴的なデッキであり決して弱くはなかったのだが、如何せん【バッテリベンジャー】とは相性が悪く、思いのほかあっさりと敗北してしまうのだった。


 斯くしてお互い二勝二敗のまま迎えた最終第五回戦。勝敗を賭けた最後の対局で克己と相対するのは、ギターボーカルの千代田カゲマル。当人としては自分以外が適当とも考えていたようであったが、他ならぬその仲間達から『ここで勝てる見込みがあるのはお前だけだ』と強く言われたことで出場を決意した経緯があった。
 使用デッキは【ノスフェラトゥ】。そのものズバリ吸血鬼のタイプであるノスフェラトゥを持つユニットと、それらに関する効果を持つサポートカードを用いたビートダウンデッキであるが、ハンデスや相手ライフの吸収など変わった要素も多く一筋縄ではいかないデッキであった。
 対する克己が用いたのは【インサイズスティング】。揃って『戦闘で破壊したユニットのレベルに応じたダメージを与える』効果を持つ《インサイズ・キャンサー》と《スティング・デスストーカー》を軸にした戦闘を要するビートバーンであるが、元々マイナーなデッキである上、昨今はコズミカルユニットやコネクトユニットのような『レベルを持たないユニット』の台頭もあり、全体的に不憫なデッキと言わざるを得ないのが現状であった。



「メインパート・アフター。俺はバックゾーンにカードを二枚伏せてターンを終了します」

 第18ターン。戦闘を終えたカゲマルは守りを固めつつターン修了を宣言する。
 ライフ残量はカゲマルの4700に対し克己が2900とカゲマルの優勢。更にはフィールドにしても、克己がほぼがら空きなのに対してカゲマルは強力な切り札の一つ《韻律鬼(ヴァンプラッパー)ユルミラー》を展開している。
 《ユルミラー》の攻撃力は2700……ステータス強化などの補助があれば一撃で克己のライフを削り切れる数値であり、またレベルを持たないコズミカルユニット、かつ幾つかの厄介な効果を併せ持つなど克己にしてみれば厄介極まりない相手であった。

(なんとかあいつを退かさないと……っていうか、このターンで終わらせないとほぼ負け確定みたいな所あるわよねぇ。さて、オーガが出るかアポピスが出るか……)
 雄喜と決勝で戦う為にもここで負けるわけにはいかない。覚悟を決めた克己は、デッキトップに手を添える。
「私のターン。ドロー」
 引き込んだカードを確認する。……勝利確定と言うほどではないが、少なくとも希望は潰えていない。即座に脳内で戦略を組み立てた克己は、考え得る限りの最適解に基づいて動き出す。

「メインパート……私は手札から《オートマチック・プレデター》を召喚」
 現れたのは自動拳銃のような頭を持つ肉食獣型のロボット《オートマチック・プレデター》。
「この状況で除去ですか? 《ユルミラー》には一ターンに一度、相手ユニットの効果発動を止められる効果があるの忘れてませんか?」
『……そもそもそいつの除去効果はコイントス当てなきゃいけねぇしな』
「勿論それは承知の上よ。そもそもこの子は除去効果目当てで入ってるわけじゃないし……」
『何ぃ?』
「続けて私はスキルカード《増改築》を発動。コストとしてフィールドのユニット一体を墓地に送る。そしてそのユニットと同じ属性で同じタイプを持ち、かつレベルが一つ高い別のユニットをメインデッキから展開するわ。
 その効果で私は《オートマチック・プレデター》を墓地に送り《スティング・デスストーカー》を展開」
『ギュギィィィィ……』
 フィールドから消滅した《オートマチック・プレデター》に代わって姿を現したのは、有機的なフォルムが特徴のメカ蠍《スティング・デスストーカー》。
「そして《デスストーカー》に装着スキル《クレセントアーマー》を装着。これで《デスストーカー》は大抵のユニットを確実に戦闘破壊できるようになったわ」
「……だとしてそれで《ユルミラー》殴っても俺に入るダメージはたったの100……貴女のことです。まだ続くんでしょう?」
「ご名答。そもそも《ユルミラー》はレベルを持たないコズミカルユニットだから戦闘破壊しても大して旨味もない……だからこうするの。

 私は《ユルミラー》をベイトして、千代田くんのフィールドに《モン娘四天王 ロリっこエルダーたまもん》を展開」
『ぐっ……やっぱその類かよっ……!』
『あぶらげ〜。なんかよくわからんけどやってやるのじゃー』
 ベイトされ消滅した《ユルミラー》に代わってカゲマルのフィールドに現れたのは、妖狐か稲荷と思しき小柄な狐娘。年寄りめいた口調と『エルダー』の名前、また九本の尾から察するに少女の外見乍ら長寿かつ強大な力を誇る所謂"ロリババア"の類と思われた。
「『モン娘四天王』は相手のユニット一体をベイトして相手の場に展開できる共通効果を持っている……」
「言わずと知れたインチキ除去効果っスね。他にも似た効果持ってんのゴロゴロいるけど……」
『のじゃー。除去は任せるのじゃ〜。あと除去以外も妾にお任せじゃぞいっ』
「頼もしいわね《たまもん》……じゃあ今回は思いっきり、お言葉に甘えさせて貰おうかしら」
『おうっ、よいぞよいぞ〜。何せ妾はエルダー即ち長老じゃからの、若者の為ならば何でもしてやるわいっ』
「あら、何でもしてくれるの? 頼もしいわね……」
(このロリババア……この後自分がどうなるか気付いてねーんだろうなぁ……)
「じゃあバトルよ。


 《デスストーカー》で《たまもん》に攻撃
『えっ』
(やっぱりな……)

 能天気に振る舞っていた《たまもん》は、持ち主である克己の発言に困惑し取り乱す。

『ま、待てい! 待てい娘よっ! 妾を攻撃するとはどういうことじゃ!?」
「どういうことって、そのまんまだけど……」
『そのまんま!? そんな、娘ぇ……お主、仲間である妾を攻撃するというのか!? こんなにもいたいけな、か弱くかわゆい妾を攻撃するというのかぁ!?』
 攻撃されたくない《たまもん》は涙声で瞳を潤ませ克己に攻撃をやめるよう必死に訴える。ともすれば攻撃を躊躇うか、または相手を納得させようと説得を試みるのが普通なのであろうが……

「うん、攻撃するけど。だってそれしか勝つ方法無いし」

 生憎、砂川克己という女は普通ではなかった。ゲームの戦略上避けて通れず、かつ相手があくまでゲーム上の駒であり生身の人間や魔物ではないとは言え、それでも自我を持ち言葉を話す相手にこの対応はあんまりではないだろうか……幾らかの観客はそんなことを思いもしたようだが、多くはすぐさま『冷静に考えてみれば自分も彼女の事は言えないだろう』と考え『展開上やむなし』との結論に至るのであった。

『そんな殺生なぁぁぁぁぁ! 妾がどうなっても勝てればそれでええんかぁぁぁ!?』
「うん、まあ……寧ろ勝てない方が問題なわけでね? そもそも貴女、色々と前科持ちだしそのくらいの目に遭っても仕方ないんじゃない?」
『それは妾の元ネタの方じゃが!? 妾関係ないんじゃが!? そもそも元ネタからしてやらかしたのは事情あってのこと! 悪意があったわけではないじゃろ! あとあの状況下ならどう転ぼうともあの男は愛され幸せになれた筈であってつまり無罪じゃと思うんじゃが!?』
「……『最終的に気持ちよければそれでいい』って?」
『そうじゃ! 愛は救いであり、快楽もまた救いなのじゃ! それこそ真理! この時代唯一絶対の正義であろうよ、のう!?』
「……まあ、そうかもしれないわね」
『じゃろうじゃろう!? いやはや娘よ、お主ならば分かってくれると妾は思うておったぞ!』
 やったぞ。《たまもん》は思った。どうにかしてこの女の説得に成功した。これで晴れ舞台で自分が攻撃されることは無くなった。自分は運命に勝ったのだ。《たまもん》はそう確信していたが……

「そんなわけでバトルよ。《スティング・デスストーカー》で《モン娘四天王 ロリっこエルダーたまもん》に攻撃!
『待てええええええええい!』


「……何? どうしたの? 早くこの試合終わらせなきゃいけないんだけど?」
『いやいやいやいや待て待て待て待てッ! 娘! おい娘っ! 妾との今までの会話はなんだったんじゃ!?』
「何って言われても……まあ、そういう考えもあるのかなーって感じよねぇ〜。私としてはそういうのって〜? 思考停止っていうか? メリーバッドエンド? みたいであんまり好きになれそうもないけど〜みたいな、ね?」
『いやいやいやいやおかしいじゃろがい! 娘お主ィ! 救われとうないんか!? 快楽に身を任せたい、愛に生きたいと、そう思うたりはせんのんか!? 幾ら変わり種とは言えお主も女子(おなご)の端くれじゃろう!?』
「そりゃ思うわよ。思うからこそここで勝ちに行くんでしょ。勝って戦い続けて、決勝でゆーちゃんとやり合うの……きっと楽しくなるはずよ。それもまた紛れもない快楽だわ。だからね《たまもん》……私の快楽の為に、犠牲になって頂戴ね?」
『まっ、待つのじゃ娘! 何か別の勝ち筋を探すのじゃ! 《ユルミラー》を除去し妾を出せたのならまだ遅うないじゃ――
「さあやりなさい、《デスストーカー》! 《たまもん》に攻撃!」
『ギュッギ!』
「そして戦闘時、《デスストーカー》に装着した《クレセントアーマー》の効果発動! 装着したユニットの攻撃力と防御力を、戦闘相手のユニットの攻防の内高い方にプラス100した数値にするわ。
 この効果で《デスストーカー》の攻撃力と防御力は《たまもん》の攻撃力2800に100をプラスした2900になるわ。よって《たまもん》は戦闘破壊!」
『ぐわあああああああああああ! おのれ娘えええええええっ!』
 《デスストーカー》の攻撃を受けた《たまもん》は、持ち主への怨嗟を叫びながら戦闘破壊されていった。
「そしてここで《デスストーカー》の効果が発動! 相手ユニットを戦闘破壊した時、そのユニットのレベル一つにつき500ポイントのダメージを相手に与える!」
「レベル×500……さっきのロリババアのレベルは10だから……5000、か」
「そういうことよ……喰らいなさい、刺突連爆撃!」
「ぐうっ、ごおあああああああああっ!」
 斬撃に続いて尻尾から放たれた針型のミサイルがカゲマルに降り注ぎ、彼のライフは瞬く間に焼き尽くされた。

『決着ゥゥゥゥゥゥゥ! 準々決勝第三試合を制してCブロック代表の座を勝ち取ったのは、 "緑玉髄色の猛毒"こと神代克己選手だぁぁぁぁぁぁぁ!』



「はぁ〜……負けちまったかー……悪い二人とも。俺が出ようって言い出したのに、最後の最後で……」
「そんな、気にしなくていいよ。千代田は頑張ったじゃん、それで十分だって」
「初戦で躓いてしまった俺にも原因はある。千代田だけの責任ではないだろう」
「そうかもだけどよぉ……っはぁー……。よっしゃ、決めた! 二人とも、この後暇だったろ? 今夜はどっかで美味いもんでも食おうや。俺がオゴっからさっ」
「えっ、いいの?」
「千代田、お前金欠だった筈では……それに久川がかなり食うぞ?」
「真顔でそういう事言うのやめてよ志手っさん、地味に傷付くから……」
「あぁ〜……金の事は心配いらねぇ。この前の依頼ん時に貰った金がまだ結構余ってっからな。久川がどんだけ食っても破産しねーように安い店選ぶし、まあ何とかなるだろ」
「ねぇ、私ってそんなに大食いなの? 確かに食べるの好きだけどそんなに大食いだったの!?」



「準々決勝はお互い何とかなりましたね……」
「ええ。正直二連敗した時は危ないと思ったけど、どうにかなったって感じね。けどまだ気は抜けないわ」
「次の相手は、僕の方が青藍爪牙隊で、克己さんは榎木夫妻かトラケミー……揃いも揃って一筋縄ではいかない強敵ばかりですね」
「特に厄介なのがトラケミー……ターン数制限がある以上は遅延してれば自動的に勝てるっちゃ勝てるんだけど、現代遊侠王は遅延とかロックに対して風当たりが強いから……」
「まして彼女ともなると、どんな布陣だろうと突破してきそうですからね……」
「ほんとそれよ。なんとか頑張るしかないわよねぇ。榎木夫妻にしても決して楽な相手じゃないだろうし……」



 そうこうしている内に始まった準々決勝最終第四試合。対戦カードは『十五夜ヒマリ親衛隊』のグレムリン、トラケミー対『榎木夫妻』の二人。トラケミーは件の特殊ルールにより初期ライフ2000、初期手札3枚の状態で対局は幕開けた。
 ライフ2000、手札3枚からのスタートとなると流石のトラケミーでも動き辛かったか、第一回戦では榎木夫妻の妻アカリの操るビートダウンデッキに敗北を喫してしまう。然し彼女はその一戦を経て状況に順応し、その後は夫婦を完膚なきまでに圧倒。瞬く間に勝利を掻っ攫い、Dブロック代表の座を手にしてしまったのであった。

 かくして古坂彦太郎杯は終盤……四ブロックの代表らが戦う準決勝へ突入する。
21/08/05 23:20更新 / 蠱毒成長中
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