連載小説
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02 嫉妬したら負けかなと思っている
さて…今晩はどんな客が来るのやら…できることならばそこまで後が面倒なお客じゃないといいのだがなぁ…

俺はそう思いながら受付の部分で一人カウンター作業をはじめた。あと少しでカーペットが完成するところだ。
今日は客の出入りが無いなぁ…
まぁ、今日は虚しい想いをしなくてもいいから別にいいかなぁ、久しぶりによく寝られ…

そう思っていたが、いきなり扉の開く音がして、俺の小さな思いは打ち消された。今日もお客さんは来たのだ。たぶん勘違いしている方だろう。
本当に、俺の宿屋は夜のための店じゃないんだぞ…
そう思いつつも、俺は宿の入り口の扉を開ける。
そこには、見たことのない人が立っていた。
これは、旅人か…?なら、もしかしたら本来の目的で宿屋を使用してくれるかも知れないな…

だが、この旅人は奥さん連れだった。
「ここが、最近町の夫婦間で人気の高いという宿屋かい?」
…期待した俺が、馬鹿だったよ。
「夫婦間で人気かはわかりかねますが、この町で唯一の宿屋であることは保障いたします。お泊りになりますか?」
「ああ…二人だけど、部屋は空いているかい?」
「はい、空いております。では、お部屋にお迎えしますので、外の奥様を室内に連れてきてあげてください」
さて…どんな奥さんか…

「ハンス、どうだったの?」
「OKだったよニナ。部屋に連れて行ってくれるってさ」
「そうなの…って、結構…いい男じゃないの」
「ありがとうございます、では、201号室になりますので…それと、だんな様のほうはここにお残りくださいませ」

メノウの奥さん来たーーーーーー!!
しかも、ダイナマイツボディ!!
オーバースペックに俺の精神はスパークしそうだぜ…
と、心の中で言いたいことを言うと、俺は奥さんを送ることにした。

俺は奥さんのほうを先に201号室に送ると、旦那さんといつもしていることをすることにした。
まぁ、こんな包囲されている町に住んでいたら、外の情報を詳しく聞いておきたいんだ。最近の情報なんかほとんど伝わってこないからさ…

「ハンス様…最近旅してきて、気づいたことなどがございますか?実は外の世界のことに関して、少しばかり興味がございまして…」
「ん?ああ…外の国のことかい?そうだなぁ…僕らが来た町では今は新婚祭が始まってるね。新しい夫婦がたくさん誕生していて町中白濁液でコーティングされている状況だよ。もしよかったら一度来てみることをお勧めしたいな。はじめは魔界になったことに抵抗を感じていたけど、今じゃ魔界万歳だね。」
「そうでございますか…あいにく、宿を空けるわけにはいかないので…ところで、ハンス様はどこに旅行をするためにこんな貧相な宿に…?」
「いやぁ〜ニナと触手の森であんなことやこんなことをしたいので…今じゃ毎日ニナが離してくれなくてさぁ」
「そうでございますか…奥様との仲がいいようで…では、長い間質問してすみませんでした。こちらは当宿のお土産品のジュースでございます。では、ごゆっくりどうぞ」
そういって俺はハンスさんを部屋に送り届けた。

そして、201号室から一番離れている地下食料貯蔵室に駆け込み、思いのたけを米袋にぶつけた。
「ちくしょう!俺だって結婚したいんだよ!さんざん奥さんとの仲を自慢してきやがってぇ!しかも、今新婚祭だと!?ずっとこんな宿で働いてきてそんなことには縁がないのに、そんな事実は聞きたくねぇんだよ!あああ!うらやましい!爆発しねぇかな畜生!そこは俺が結婚してないことを気にして空気読めよ!」
ふう…さっぱりしたぜ…
どうも最近、嫉妬が爆発しやすくなって困る。

そして、俺が上の階に戻ると扉をノックする音が聞こえてきた。
またカップルとかじゃないといいのだが…たぶんまたそんな感じなんだろうなぁ…

そして、また俺が扉を開けるとそこには紺色のローブを着込んだ男が立っていた。またカップルじゃないよな…
「すまない主人、宿をかりてもよいか?」
「はい…よろしいですが、何名さまで…?」
「3人だ。できれば広い部屋がいいんだが空いているか?」
「はぁ…用意はできましたが、夜に少し声が聞こえるかも知れません。よろしいですか?」
「かまわない、長旅だったから少々のことなら大目に見よう」
「マーリン…まだなのか?」
「いや、終わったよ。OKだってさ、鬼灯はどこにいるんだ?」
「後ろにいる。それよりも、早く部屋に行こう」
「では…103号室になります。もしよろしければ旦那様のほうは少しお話を…」
「いや、マーリンは私と部屋でゆっくりと…話は娘に聞いてくれ」
「鬼灯?この人と少し話をしてあげなさい。店主に迷惑をかけるんじゃないぞ?」
そういって、マーリンさんがたは部屋に向かっていく。

「……はぁっ…」
「どうしたんだ?おなか痛いのか?」
鬼灯というウシオニの少女が俺に話しかけてくる。
外の話を聞きたかったんだが…仕方ないか。適当にあしらって部屋に送ろう。

「お嬢様は、どこか外の世界の情報をお知りですか?」
「ん?いや、私は父さんの親に会うためについてきただけだからわからないな。でも…最近同属をよく道中で見るな。街道でよく男を狩ってる」
「あ…はぁ…そうでございますか。では、お話は終わりましたのでお部屋に…」
「あんたさ…彼女いるの?」
「は?」
「……いないのね、どう?あたしと今晩一回…」
「お戯れを…では、部屋にどうぞ」

俺はあと少しで…危なかったぁ…
さすがにお客さまのお子様とそんなことに…しかし、俺は折角のチャンスを捨てたのではないだろうか?
俺はやっぱり勇気が足りないんだろうなぁ…

鬼灯を部屋に送り届けた後、俺はカウンターのところで物凄い後悔していた。
あのチャンスを逃したことにより、次の俺のフラグはいつくることになるのだろうか?

そして、真夜中の1:00…始まったよ…

「あぁ…始まったか…また今夜も眠れない日かよぉ…」
そう思いながら一人で耳栓をセットする。もう手馴れたものだ。
そうだ、そうだぞデメトリオ…嫉妬するな…
俺にもきっと春が来るはずだ!
男の嫉妬は見苦しいぞ…
落ち着け…気にせずに寝るんだ。明日も早いぞ…

・・・

寝れねえぇ!!やっぱりあの時誘われた事実が驚愕で寝付けない…
こんな日は…
「やっぱり、嫉妬日記に日ごろのうらやましかったことを書き連ねるのがいいよな!この日記がいずれ…俺の弱い心を癒すに…」

「もう少し激しく…ハンス、激しくぅ!」

き、聞こえてくるだと…耳栓を超えて…!?
隣の部屋だから少しは聞こえてくるかと思ったが…耳栓越し!?
どれだけ大きな声を出しているんだニナさん…
「うぐぅ…やめろ!これ以上聞きたくない!もう少し声を抑えてくれええええ!」

そして俺は、起きていることに耐えられなかったのでベッドに飛び込むと即座に近くにあった教典に頭を叩きつけ、自分で力尽きて眠った。

朝起きると、俺はまた食事を作り始めた。
最近メニューが…といっても、シチュー類しか作れないんだがな。

そして、俺がシチューを作り始めた時、後ろから不意に誰かが抱き着いてきた。
「えぇっ!?へぁ!?」
俺はいきなりの抱擁に慌てて、シチューをこぼしてしまいそうになった。
こんな朝早く…一体誰が?
「デメさ〜ん!一生のお願い!朝ごはん分けて〜!」
この声は…サリィ?一体なぜ…?
「さ、サリィ…お前、こんな早くに何の用だ?」
「ちょっと仕事でポカっちゃってさぁ…朝ごはんが抜きになっちゃったんだよね?だからシチューを分けてくれない?」
「はぁ?俺のシチューはお客様のためのだな…」
「……別に、あんたの精液でもいいんだよぉ?にっひっひ…」
「ワカリマシタ…作らせていただきます」
「っち…」
ん?サリィさっき舌打ちしなかったか?
「お前さっき…舌打ち…」
「え?何のこと?そんなことよりも、よろしく〜」
「はいはい…ではまた後で取りに来てくれよ」

そして、俺はまたシチューを作る作業に入る。
俺の宿はタダで食べ物を譲ってないんだがなぁ…
まぁ、ひとつ作るのもふたつ作るのも変わらないかぁ…

30分後、俺はシチューを作り終わりカウンターのところでバテていた。
そろそろ食事のメニューでも増やしたいな…あとでサリィにでも聞くとしようかな。
「デメさん出来た〜?あたしお腹がすいちゃってもう…」
「…出来たが、ここで食うのか?」
「当たり前でしょ?外で食べてるのが姉さんにばれたら…」
「わかった…食堂使ってもいいぞ」
「よっし!」

そう言ってサリィは食堂に皿を持って走っていった。
そして俺はあることを思い出した。あいつ…熱いの苦手じゃなかったっけ?
「お〜い!そのシチュー、すごく熱いからよくさませよ〜!?」
「わかってる〜…あつぅ!?」
だから熱いといったのに…まぁ、そんなところがいいよなぁ。
付き合うならあんな感じが…いやいや、まぁいいか。
そしてサリィは口周りにシチューを付けながら飛び去っていった。
あのまま帰ったら俺の家でシチューを食べたってばれるんじゃないだろうか…

「さて、後はお客様の対応とシーツの掃除か…」
大変な作業が俺にはまだ残っているな…疲れたよ、いろいろ

そう思いながら待っていると、先にこっちに歩いてきたのはマーリン家のかたがただった。
マーリンが奥さんの背に乗って…というか担がれて俺のほうに歩いてきた。
まぁ、夜の営みが愛に満ちていて旦那さんのスタミナが持たなかったんだろうなぁ…
「悪い、そろそろ出る。代金は?」
「…あっ、銀貨3枚でございます」
「……この店は、物をお金の代わりに出来るのか?」
……このパターンは初めてなんだが、まぁよしとするかな。
「あ…はい…大丈夫でございますが…」
「ならこれで頼む」

そう言って糸が何重にも巻き付いている棒をもらった。
光に凝らしてみてみると滑らかさがよくわかる。
これならOKだろうな、十分。

「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
こうしてマーリン一家にシチューを差し上げ、俺はカウンターに戻っていった。もらった糸で暇つぶしに靴下でも作るかなぁ。

そして靴下を作っているとどうやらハンスさんたちも目を覚ましたようだ。
ニナさんには白いものがたくさんかかっていたが、俺はそれをヨーグルトかなんかだと思い込むことで嫉妬心を押さえ込んだ。
「すまない、この宿って風呂備えていないのかな?」
「…すみません、風呂は少し…」
「そうですか…いや、いいですよ。気にしないでください」
そういいながらもハンスさんはがっかりした顔になっている。
そうか…俺の宿に足りていなかったのは風呂か…

「じゃあ、そろそろ僕たちも出ます。旅が終わったらもう一度この宿に来ますね?」
「お風呂はなくてもこの宿はかなり雰囲気もよかったしね〜、夜も激しく楽しめたわぁ…」
「………はぁ」
やばいな、俺は少し我慢が…嫉妬が爆発してしまいそうだ…
「あ…代金は銀貨3枚になります…あ、ありがとうございました」

そう言ってハンス家のかたがたを送り届けた後、俺は一人また米袋に当たっていた。
「くそぉ!!ハンスさん羨ましいいいっ!なんなんだあの奥さんのたわわに実った胸は!?しかもあんなにダイナマイツボディだと!?一体全体、風呂を造ったら風呂の中で何をするつもりなんだ!?というか、あんなにいい奥さんがいるなら、俺にも女の子紹介してくれええええええええ!」
はぁ…はぁ…
こんなにストレスを溜め込んだら、すぐに爆発してしまうな。
ここは気分転換もかねて、本当に宿を増築したほうがいいんだろうか?

……いくら考えても俺一人では決められないな…
お風呂を増築したとしても…材料代も含めるととんでもない値段で、そうやすやすと決断できないなぁ…

そう思いながらいつもの作業でシーツを洗い干した。
だが、それでも風呂を増築するかの決断は出なかった。

それから1時間、今日町の独身男たちが集まる集会があったことを思い出した。そして、店の前に閉店と看板を立てかけると、いいアイデアが浮かんできた。こういったことは客の皆様に決めてもらうのがいい。
思い立ったので即座に箱を店の外に置き、近くに看板を置きこう書いた。
『ただいま、当宿ではお風呂を増築するかを検討しております。お客様の意見をこの箱の中に入れて、検討させていただきますので、よろしくお願いします』
よし、完璧だな。じゃあ集会に行くかな。

集会の中には俺と同じ負のオーラにみちたやつらが集まっていた。
もうみんな、俺とはなじみの深いやつらばかりだ。
「お?デメトリオじゃないか!今月も彼女なしか?」
「うるさいなぁ…俺にはチャンスがまだ寝てるんだよ!」
「まぁ、ここにいるやつらはみんなそう思っているさ」
俺はいつも座っている席に座り、横においてあったチョコレートに手を伸ばした。
先月よりあきらかに数が減ってきたが、それでも結構の数が席に座ったりして話し込んでいる。
「デメトリオー!!元気だったかー!?」
「ん?アルフォンスじゃないかよ!お前、今年も出会いなしか?」
「うるさいな!洞窟の中で泥にまみれて作業する男だらけの仕事に花が来るとでも?俺はお前がまだ彼女0ってことが驚きだぜ」
「お前…俺の気の弱さ知ってるだろ?嫉妬が半端ねぇぜ…」
「あ〜…俺も町で幸せそうな恋人同士を見ると、なきたくなるからよくわかる」
アルフォンスはこういうと下を向き、黙り込んでしまった。

しばらくすると、集会の壇上にリーダーらしき人物が上がっていく。
「みんな!今月も独り身ごくろうさん!」
あたりから待ってましたと言いたげに歓声が上がった。
俺もそれに答え、あたりのボルテージは最骨頂になった。
「さて!今日もまた、みんなで嫉妬心を叩きつけていこうぜ!」
「おおおおおおおお!!」
「じゃあまず俺から!実はさ、最近俺の親友が結婚してさ、奥さんがとても可愛いんだよ!俺も祝福してあげたけど、次の日から連絡が来なくなったんだ!これって、どう思う?どう思う!?」
「きっと奥さんの愛にお前が負けたんだ!ああ羨ましい!」
「そうだーー!でも気にするな!俺たちは仲間だぞおお!」

そういいあったりして、ついに俺の番になった。
俺はさっそうと壇上に行き、自分の意見を告げた。
「みんなーー!俺がどんな仕事をしているか、当然知ってるよなーーー!」
「ああーー!デメトリオーーー!言ってやれーー!!」
「俺の仕事は宿屋なんだけどさーーーー!そもそも俺の店は夜の営みようの店じゃねええええええーーーー!!」
「そうだーーーー!!俺らはわかっているぞーーーー!!でも、彼女が出来たら一度は行くぜえええーーー!」
「いいぜーーーー!!それともうひとつ…俺の店には結構可愛い子も来るんだけどさーーーー!!」
「ああーーーー!!羨ましいぜーーーー!!」
「それを見るたびに複雑な気分になるんだーーーーーーーーーー!」
「おおおおおおおおおおおおおお!!」

ふぅ…終わったぜ…いやぁ、すっきりしたぁ〜
やっぱりこの集会に来ると心が安らぐ気がするぜ…
やっぱり仲間っていいもんだな…
おっと、そろそろ終わりになるしいつも道理のアレ、やんなきゃな…

「さぁ!そろそろ終わりの時間だからみんな、いつものアレ、行くぞおお!」
「おおおおおおおおおおーーーー!」
「今この会場に来ていない元同士たちよーーーーー!彼女が出来たこと…おめでとおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーー!」
「おめでとおおおおおおおおおオーーーーーーーーーーーーー!!」
こうして、俺達は決して彼女が出来た同士を妬まないという誓いを守り、集会を後にしたのだった。
また明日からは全員、元の仕事に戻っていくんだろうが、今日は本当に楽しかった。

そして、宿の裏口からまた家に入り、布団で寝る。
久しぶりにぐっすり眠れそうだ。
「ふぁああっ…明日はまた…いろいろあったけど楽しかったなぁ…集会。明日からまた…忙しくなる…ぜ…」
そして俺は眠りに入った。
12/01/02 15:43更新 / デメトリオン
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■作者メッセージ
さて…今回も見てくださってありがとうございます!

今回は前回と同じくらいの文章力のまま頑張りました。

前章でも言いましたが、今はお客さんを募集しております!どうか皆様、お願いします!

それと…見てくださった皆様に質問があります。
皆様は、お風呂を宿にセットしたほうが良いかどうかも答えていただけると、ありがたいです!
(ソレによって少々ストーリーが代わりますので…)

では!ありがとうございました!

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