連載小説
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シャクヤルート1「一緒に修行じゃ!」
何かが空を斬るような音が聞こえて目が覚めた…朝、だろうか?


まだ外は完全に明るくはなっていないらしく、微量の光が部屋に差し込んでいる


周りを見ると他の姉たちはまだ寝ていたが、一番奥で寝ていたはずのシャクヤ姉さまの姿が見えない


「この変な音と関係があるんか…?」


隣で寝ていたシルクねぇちゃんとエルねぇねぇを起こさないように布団から抜け出すと俺はこの不思議な音のするところへ寝ぼけ眼をこすりながら向かった


「うーん、なんやろうなぁ…何か風を斬るような音なんやけど」


音の出どころはどうやら中庭の方のようだ、誰かいるのか?


「…ぁ」


そこにいたのはシャクヤ姉さまだった、何かの拳法の型だろうか?真剣な顔で身体を動かしていた


音の正体はどうやら姉さまの身体を動かした時の音だったようだ


「わぁ…」


蹴り上げた脚が残像を残して弧を描き、まるで月のようだった


身体を動かすたびに飛ぶ汗の玉が薄暗い中庭で星の様に煌き、「武」というよりは「舞」のような神秘的なものを感じる


「むっ…おや、たー坊ではないか。すまぬ、起こしてしまったのか」


「あ、こっちこそごめん…邪魔しちゃったんかな」


シャクヤ姉さまがこちらに気付き「舞」を中断した、邪魔しちゃったらしい


「別に見られて困るものではない、気にするでない」


「姉さま、今のって武術か何か?なんやめっちゃ凄かったんやけど」


「む?いや、あれはただ単に身体を動かしてただけじゃが…」


なんと、てっきり何かの武術かと思ったが…ただ身体を動かすだけであんなに美しいものなのか


「あれでか…凄いなぁ、綺麗で思わず見惚れてしもうたわ」


「お前、恥ずかしいことを言うやつだな…そういうのは妹達に言ってやれ、喜ぶと思うぞ?」


「いや喜ぶ喜ばないじゃなくて、姉さまが綺麗だからそういったんやけど…」


「む、むぅ…そうか」


頬を染めて俯いてしまった姉さま、いつも凛とした姉さまらしくないな


「姉さま、どうかしたんか?」


「わっ…ふ、不用意に近づくな馬鹿者!あ、汗かいておるから…だ、ダメじゃ…!」


「えー?そんな気にするほどやないで、俺姉さまのこの匂い好きやけどなぁ」


「ば、馬鹿者っ、変なことを抜かすな!ふ、風呂に入ってくる!」


姉さまが目にも留まらぬ速さで中庭からいなくなってしまった、何か悪いことでもしただろうか?


とりあえず日も昇ったし、みんなが起きてきそうだから飯の準備しておこうかな





みんなが起きてきて各々が準備した朝ごはんを食べ始める


「いっけなーい、遅刻遅刻ー!いただきまーす!」


「…姉さん、騒がしいの」


「たくまちゃん、あ〜んしてくださいね♪」


「あらあら、お仕事の時間だわぁ」


みんなが揃うと一気に騒がしくなった、あぁ…確か10年前も毎日朝はこんな感じだったっけ


「こらお前たち、もうすこし静かに食えんのか?それに本当に時間が不味いんじゃないのかのぅ」


そうそう、それで姉さまが注意して…懐かしいなぁ


「…たくま、なんだか嬉しそうな顔してる?」


「あー、本当だ!」


「え、そうやったか?」


「たくまちゃん、もしかして叱られるのが好きとか…」


「たっくんってば変態さんねぇ♪」


「たー坊…人の趣味をとやかくは言わないがそれはどうなのじゃ?少なくともワシはいかんと思うが…」


しまった、なんだか違う方向で話が盛り上がってしまったぞ


「ち、違うって…こういう風な日常が懐かしくて、ほら…今まではこういう風にみんなで和気藹々と朝ご飯とか無かったから…」


「たくまちゃん…寂しかったんですね、大丈夫ですよ!これからはお姉ちゃんが一緒ですっ!」


「そうだよタク、私がいるから大丈夫だよ!」


「…たくま、安心してね」


「あ、ありがとう…」


なんだかみんなが優しくしてくれた、やっぱ家族って暖かいなぁ


「あらあら、もう時間ね。ごちそうさま、仕事に行ってくるわね」


「あ、私も学校!」


「…私も」


「私もいってきますねたくまちゃん!」


そういって食べ終えたみんなが次々に家を出て行った、最後に残ったシャクヤ姉さまはまだのんびりと食事をしている


「姉さまは仕事やないんか?」


「ワシはまだ道場に行かなくても大丈夫じゃ、たー坊は今日は暇なのか?」


「まぁやることは特に無いし家事やっとくくらいかな」


「ふむ、だったらワシの道場の見学に来るか?いいや来い、ワシが鍛えてやろう!」


姉さまの道場か…姉さまに鍛えられるというのはちょっと怖い気もするが、見学はいい体験になるかも知れないな


「まぁええけど、面白そうやし」


「ふむ、では飯の後を片付けたら早速行くかのぅ」


姉さまと一緒に食べ終わった洗い物などを片付け、外に出る準備をする


「お前、外に出るときに普段から白衣を来てるのか?」


「え、まぁ…これが私服みたいなもんなんやし」


「…まぁいいか、では行くとするかの」


俺は姉さまと並んで外に出た、朝の日差しが眩しくてつい顔をしかめてしまった


「こらこら、なんて顔をしておるのだ…せっかく良い顔をしておるのに台無しじゃぞ」


「研究所籠りのもやしっ子に日光は辛いんやて」


大きくなってから久しく見る近所の風景を見ながら、姉さまと肩を並べて歩く…そういえば姉さまと二人で出かけるのってこれが初めてなんじゃないだろうか


「姉さまと二人で出かけるなんて初めてやないか?」


「そうか?小さい頃はよく皆で…皆、そうじゃな…ワシはたー坊と二人きりで出掛けたことがなかったのぅ」


「まぁ俺が小さい頃は姉さまも忙しかったみたいやしな。やけども新鮮やなぁ〜、まさか姉さまと肩を並べて歩く日が来るとは」


「ワシもあのたー坊がこんなに大きくなるとは思わんかった、まさかワシと肩を並べるようになるとは…」


姉さまと歩いて十数分、どうやら道場に着いたらしく大きな門が立ちはだかった


「ど、道場って結構大きいんやな…」


「門下生もまぁまぁいるからのぅ、全員魔物だし広くないといけないんじゃよ」


大きな門を開けて入ると、道を開けるように並んて列を成した沢山の魔物達が一斉に挨拶をした


「「「おはようございます師範!」」」


「あぁ、おはよう諸君」


俺は呆気にとられて口を開けて立ち尽くした、俺はここにいていいのだろうか


「ね、姉さま?これは…」


「何、驚くことはないぞ。皆ワシの道場の門下生じゃ、いいやつばかりじゃぞ?」


「師範、その白衣の男性は誰ですかぁ?」


列の中から一人出てきてこちらに並んだ、手足が白と黒の体毛で包まれたきわどいチャイナ服を着た魔物…おそらくはレンシュンマオだろう


「レン、こいつはワシの弟のタクマじゃ」


「えぇ〜っ!師範の弟クンですか!?凄い、背も高いし顔はちょっと幼さが残ってるけどハンサムだし…」


もふっとした手で体をつついたり、顔を触れてくるレンシュンマオさん…姉以外にこんな女性に近づかれたことがなく、顔が熱くなってくる


「あ、あの…」


「あ〜♪照れてるんだぁ、可愛い〜♪」


「こらレン、ワシの弟じゃぞ!お触りはもうダメじゃ」


「え〜っ、だってこんな良い子独り占めだなんてずるいですよぉ!みんなだって興味あるみたいですよ?」


そうレンシュンマオさんが言うと列から何人かがうなづく、よく見たら列を成している魔物達のほとんどが俺を見ていた


「そんなことは知らぬ、さぁ早く修行に励め!」


「はぁ〜い」


シャクヤ姉さまがそういうと列を成していた魔物達が道の先にある道場へと入っていく、どうならここでの姉さまの力は絶対らしい


「…ねぇ、ほらこれ、私の連絡先♪」


「えっ…ぁ…」


レンシュンマオさんは去り際に白衣のポケットに紙切れをこっそりとねじ込んで行った、連絡先が載ってるらしい


「ほら、たー坊も行くぞ」


「あ、はいっ」


俺も姉さまに並び道場の中に入った、この連絡先の紙切れはしまっておこう…姉さまに言ったらどうなるかわからないし


「道場では道着を着てもらうぞ、お前にはワシの替えを貸してやるからそこの隅あたりで着替えてこい」


「道着の着方なんて分からんのやけども…」


「何?全く仕方のないやつめ、ほらワシが着せてやるから来い」


「師範!その役目はこのレンシュンマオのレンにお任せを!」


姉さまが俺の手を引っ張り道場の隅へと来る時に、先ほどのレンシュンマオさんがついてきた


「む、そうか…では手伝ってもらうかの。ほらたー坊、脱げ」


「は、はいな…」


俺は白衣を脱ぎ捨てて上着を脱いだところで気がついた、これって…姉さまやレンシュンマオさんの前で裸を晒すことになるのではないだろうか


「どうしたたー坊、はよ脱がんか」


「えっ…いや、その…」


「もう、師範は分かってませんねぇ…たくまクンは恥ずかしがってるんですよ、ね?」


「ぁ、う、うん…」


「なんじゃ、全裸になれとは言うとらんじゃろうに…」


「ほらほら、おねーさんたちが手伝ってあげるから脱ぎ脱ぎしちゃいましょうねぇ♪」


そういって否が応でも無理矢理に服を二人に脱がされる、時折レンシュンマオさんが突いてきたりちょっかいを掛けてくる


「ちょ、や、やめてくださいよ…」


「えへへ、可愛くてつい♪」


「こらレン、邪魔をするな。お前はそこで正拳突きでもやっていろ、もうそう時間はかからんじゃろうしな」


「ちぇっ、はぁーい…」


見かねた姉さまが助けてくれた、やっぱり頼りになるなぁ


「後はこうして帯を結ぶだけじゃ、ほれ」


「わぁ…」


着慣れない感触の、背中に猛虎魂と達筆に刺繍された道着を着ると何やら気分まで引き締まったように感じる


「猛虎魂を感じる…」


「ふむ、なかなか似合っとるのぅ」


「わぁ、かっこいいですねぇ!思わず襲ってしまいそうです!」


周りを見るとチラチラとこちらを見ている魔物さん達もいた、あまり浮いてはいないようだ


「ようし、では稽古をつけてやろうかの」


「稽古って何やるん」


「まずは…そうじゃな、基本の正拳突きじゃな」


「正拳突きって、これやろ?」


拳を握り前に突き出す、ブンっと風を掻くような音がなって拳が空を切る


「ふむ、構えがなっとらんのぅ…ほれ、ワシが動かすのを手伝ってやるからワシに合わせてみろ」


「わっ…」


そういって姉さまは俺を背中から抱きしめるかのように身体を合わせた


姉さまの身体の感触が道着越しに伝わってくる、背中にはとても柔らかい感触がする…


「ほれ、こうじゃ」


「うおっ!」


姉さまが俺の腕を掴み身体を動かすとそれに合わせて背中に感じる柔らかい感触が形を変えて俺を刺激してくる


(こ、これは非常にまずいのではないだろうか!?)


「どうしたたー坊、ボーッとするな」


「は、はいっ!」


俺は何とかシャクヤ姉さまが離れてくれるまで自分を抑える、おかげで形だけではあるが正拳突きもかなり良くなった気がする


「ふむ、なかなか様になっとるではないか」


「あ、ありがと…」


もふもふとした腕で頭を撫でられた、この年になっても褒められるのは嬉しい


「次は…」


「はいはーい!師範師範!私、たくまクンと組手したいです!」


シャクヤ姉さまが次に何をしようかという時に、横から元気良くレンシュンマオさんが割って入ってきた


「組手か、まぁレンならば手加減も出来るだろうし…まぁよいかのう」


「やったー!さぁさぁたくまクン、おねーさんが一緒に組手してあげる♪」


「え、えぇっ!?」


腕を掴まれて、ぐいぐいと道場の真ん中まで連れてこられる…いきなり来たからみんなこっち見てるし


「じゃあ好きに組みついてきてね、たくまクンが攻めてきていいよ♪」


そういって両手を開いて俺を迎い入れるような構えをとった、無防備に見えるがいいのだろうか?そもそも女性に手を挙げるのは…


「何をしておるたー坊、どうせ手を挙げるのは…とか考えておるようじゃか今のお前じゃレンに一撃を入れることすら出来ぬから安心せい」


「えぇっ」


そういって背中をシャクヤ姉さまに叩かれた、気が引けるけど…仕方ないか


「え、えぇい!」


俺はレンシュンマオさんに向かって走り出してまっすぐに腕を突き出した


瞬間


「やぁ♪」


視界が逆転して俺は床に組み伏せられていた、丁度目の前にレンシュンマオさんのお尻が見える…何が起きたのが分からなかった


「えへへ、えい♪」


「わぷっ…!?」


そして顔にレンシュンマオさんの柔らかいお尻が乗ってきた、程よい重量感と柔らかさが視界を遮る


「あんな単調な攻めじゃダメだよたくまクン♪まぁ初めてだから仕方ないけどね♪」


「むぐっ…ぅう!」


そして何度も顔にお尻を乗せてくる、丁度息ができるように間を空けて何度もお尻が襲いかかってくる


「あぁん♪動いたら感じちゃうよお♪」


「もががが…!」


「降参かな?えへへ、ダ〜メ♪もっと、も〜っとしてあげる♪」


何度も何度もお尻が襲いかかってきて、解放されたのは反応が無くなった俺をマズイと感じたシャクヤ姉さまが止めに入ってからだった


そして薄れゆく意識の中で、シャクヤ姉さまの俺を呼び掛ける声だけが響いていた


15/10/05 02:26更新 / ミドリマメ
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■作者メッセージ
ドーモ、ミドリマメです
大変遅くなり申し訳ありませんでした、他のSSなどを書いていたらいつの間にか大分月日が経っておりました。
久しぶりに更新致しまして人虎のシャクヤ姉さまルートです、姉さまは漢らしい魔物ですが、意外に照れ屋な一面もあり…あれれ?書いてる途中レンシュンマオさんの方がメインになりかけているような…

ともあれ姉さまルートも甘々な感じでいきたいと思います、どうか最後まで見届けて下さい

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