17:自動更新[デーモン]
わたしのお母さんは、お父さんの事が大好きです。
でも、「デーモンの血のプライド」?っていうのが邪魔して、素直に「大好き」って言えないみたいです。
今朝も「契約だから仕方なく」なんて言って、5回ぐらいお父さんにキスをしていました。
「随分幸せな契約だなぁ」って、お父さんは笑ってました。
***
わたしのお母さんは、世話焼きです。
「人間を堕落せしめるため」って口癖のように言ってますが、
オムライスにはハートマークだし、
洗濯物はキッチリ正方形だし(さわると怒られます)、
お風呂はお父さん好みの温度だし。
会社に行く前のチェックはとても厳しいです。
そうして、誰が見てもカッコいいお父さんになって、会社に行きます。
「ローズのお陰で仕事にもハリが出るよ」って、お父さんは笑ってました。
堕落...?
***
わたしのお母さんは、心配性です。
今日は、お父さんが風邪をひきました。
お母さんはさすがです。
無理してるのを、すぐ見破りました。
お父さんは、凄いスピードでお布団のぐるぐる巻きになりました。
「人間は弱い生き物だから」って言いながら、
猫舌のお父さんの為に、お粥をふーふーして食べさせてます。
「悪いね」なんて、お父さんもまんざらではなさそう。
お母さん、その気になればお父さんの風邪なんてすぐ治せるはずなのに。
...あ。悪い顔してる。
「計画通り」な顔してる。
お父さんの会社に電話しながら「計画通り」な顔してる。
***
わたしのお父さんは、働き者です。
平日はちゃんと働いてます。
お母さんは「堕落させてやったのよ!」ってドヤ顔だけど、
その実お父さんのお仕事を、万全な体制でサポートしていることに気付いていません。
「自分で起きる事を放棄させてあげる!」
って毎日6:30にキスで起こして
「自炊する気力を失わせる!」
って毎日美味しいご飯を作って
「酒に溺れるがいいわ!」
ってたまにお酌して
恋は盲目、のモデルケースです。
恋、といえば。
わたしはクラスメイトの男子が気になります。
生徒会の書記さんで、無口だけど真面目で、黙々と仕事をこなす彼。
彼が誰かに甘える姿が想像できなくて、だからこそ、とても気になるのです。
彼の蕩けた顔って、どんなだろう...ごくり。
次の日の朝は、ベッドを汚してお母さんに怒られました。
***
わたしのお母さんは、隙だらけです。
18年前、お母さんはお父さんと『契約』を結びました。
デーモンの契約は人によってそれぞれで、細かく決まりがある物も多いと聞きました。
目に見えない契約や、羊皮紙に書き込む契約など、色々あるそうです。
契約をキツくすればするほど、相手だけじゃなくて自分にも制約が出来るみたい。
わたしのお父さんとお母さんは、どんな契約をしたのかな?
お父さんの自由さを考えたら、そんなに強くない契約なのかもしれません。
前に聞いてみたら、
「そりゃもうとびきりの契約よ!」
って。
なんだろう全然伝わらなかったや。
私も例の彼と、契約できたらな...。
絶対お母さんみたいな、きっと隙だらけの契約書にはしたくないです。
***
わたしのお母さんは、怒ると恐いです。
リビングの写真立てがカタカタ揺れたかと思うと、
お母さんはピタッと止まって、
それから黒いモヤモヤをたてながら、
わたしに笑顔で言いました。
「ちょっとだけ、お部屋で遊んでてくれる?」
従うしかありませんでした。
そっと上の部屋に上がって、床に耳を当てました。
まだ帰ってないはずの、お父さんの声が聞こえてきました。
なんだろう、アレだけ怒るなら、また『浮気』関連かな?
お父さんも、懲りないなぁ。
...なんだか不安になってきたので、愛しの彼の所へこっそり行くことにします。
***
僕の妻は、デーモンです。
僕に対して限定で、大変強力な魔術を行使します。
契約の力です。
うっかりしていました。
帰りに美容院へ行ったのが間違いでした。
気付いたら美容院の椅子ではなく妻の膝の上です。
強制転送は久しぶりだね、ローズ...。
「ふふ。"契約書"が違反を教えてくれたのですよ?」
笑顔なのに目が恐いです。
普段使わない敬語も恐いです。
「契約内容、お忘れでして?」
***
わたしのカレは、浮気性でした。
お父さんみたいなうっかりさんは捕まえないぞって、思ってたのに。
今、カレはわたしの下でふにゃふにゃ、とろとろになってます。
勝手に髪型を変えて。
わたしによく見せようとしてたようです。
両想いなのは嬉しいけど。
オシオキです。
なぜって?そんなの決まってるじゃないですか。
いやだ、だめになるって、泣きじゃくって、懇願してます。
ふふ、かわいい。
最初から、こうすればよかった。
ぜんぶ、ぜーんぶ駄目にして、甘やかすの。
とっておきの、手作りの契約書を作って。
契約はシンプルで、でも強力な物にしましょう。
私もそれにシバられたって、構わないの。
わたしはあなたになら、全部ささげられるの。
全部ささげて、きっとあなたを堕落させてあげるの。
その内容はただひとつ−−−
***
私の夫は、浮気性です。
こんなうっかりさんな所も、愛しいのだけど。
今、彼は私の下でふにゃふにゃ、とろとろになってます。
勝手に髪を切ろうとして。
今でも、私によく見せようとする貴方は大好きです。
それは嬉しいのだけど。
"貴方の一部"が、私以外に切り取られるのが我慢できなくて。
オシオキです。
悪かったって、蕩けた顔して、懇願してます。
ふふ、かわいい。
普段は貴方が一枚上手だけど。
全部、全部駄目にして、私のモノだって、再確認して貰わないと。
とっておきの、写真立ての契約書を使って。
契約はシンプルで、でも強力な物にしています。
私もそれに縛られたって、構わないわ。
私は貴方になら、全部捧げられるのよ?
全部捧げて、いつか貴方を堕落させてあげる。
その内容はただひとつ−−−
***
"髪の毛一本"まで、わたしのモノ
***
わたしのお母さんは、お父さんの事が大好きです。
結婚したその年に、私が産まれるぐらい、大好きです。
リビングに置かれた写真立ては、お母さんが毎日ピカピカにしています。
写真に写ったお父さんとお母さんが、今日もわたしに笑いかけてくれています。
でも、「デーモンの血のプライド」?っていうのが邪魔して、素直に「大好き」って言えないみたいです。
今朝も「契約だから仕方なく」なんて言って、5回ぐらいお父さんにキスをしていました。
「随分幸せな契約だなぁ」って、お父さんは笑ってました。
***
わたしのお母さんは、世話焼きです。
「人間を堕落せしめるため」って口癖のように言ってますが、
オムライスにはハートマークだし、
洗濯物はキッチリ正方形だし(さわると怒られます)、
お風呂はお父さん好みの温度だし。
会社に行く前のチェックはとても厳しいです。
そうして、誰が見てもカッコいいお父さんになって、会社に行きます。
「ローズのお陰で仕事にもハリが出るよ」って、お父さんは笑ってました。
堕落...?
***
わたしのお母さんは、心配性です。
今日は、お父さんが風邪をひきました。
お母さんはさすがです。
無理してるのを、すぐ見破りました。
お父さんは、凄いスピードでお布団のぐるぐる巻きになりました。
「人間は弱い生き物だから」って言いながら、
猫舌のお父さんの為に、お粥をふーふーして食べさせてます。
「悪いね」なんて、お父さんもまんざらではなさそう。
お母さん、その気になればお父さんの風邪なんてすぐ治せるはずなのに。
...あ。悪い顔してる。
「計画通り」な顔してる。
お父さんの会社に電話しながら「計画通り」な顔してる。
***
わたしのお父さんは、働き者です。
平日はちゃんと働いてます。
お母さんは「堕落させてやったのよ!」ってドヤ顔だけど、
その実お父さんのお仕事を、万全な体制でサポートしていることに気付いていません。
「自分で起きる事を放棄させてあげる!」
って毎日6:30にキスで起こして
「自炊する気力を失わせる!」
って毎日美味しいご飯を作って
「酒に溺れるがいいわ!」
ってたまにお酌して
恋は盲目、のモデルケースです。
恋、といえば。
わたしはクラスメイトの男子が気になります。
生徒会の書記さんで、無口だけど真面目で、黙々と仕事をこなす彼。
彼が誰かに甘える姿が想像できなくて、だからこそ、とても気になるのです。
彼の蕩けた顔って、どんなだろう...ごくり。
次の日の朝は、ベッドを汚してお母さんに怒られました。
***
わたしのお母さんは、隙だらけです。
18年前、お母さんはお父さんと『契約』を結びました。
デーモンの契約は人によってそれぞれで、細かく決まりがある物も多いと聞きました。
目に見えない契約や、羊皮紙に書き込む契約など、色々あるそうです。
契約をキツくすればするほど、相手だけじゃなくて自分にも制約が出来るみたい。
わたしのお父さんとお母さんは、どんな契約をしたのかな?
お父さんの自由さを考えたら、そんなに強くない契約なのかもしれません。
前に聞いてみたら、
「そりゃもうとびきりの契約よ!」
って。
なんだろう全然伝わらなかったや。
私も例の彼と、契約できたらな...。
絶対お母さんみたいな、きっと隙だらけの契約書にはしたくないです。
***
わたしのお母さんは、怒ると恐いです。
リビングの写真立てがカタカタ揺れたかと思うと、
お母さんはピタッと止まって、
それから黒いモヤモヤをたてながら、
わたしに笑顔で言いました。
「ちょっとだけ、お部屋で遊んでてくれる?」
従うしかありませんでした。
そっと上の部屋に上がって、床に耳を当てました。
まだ帰ってないはずの、お父さんの声が聞こえてきました。
なんだろう、アレだけ怒るなら、また『浮気』関連かな?
お父さんも、懲りないなぁ。
...なんだか不安になってきたので、愛しの彼の所へこっそり行くことにします。
***
僕の妻は、デーモンです。
僕に対して限定で、大変強力な魔術を行使します。
契約の力です。
うっかりしていました。
帰りに美容院へ行ったのが間違いでした。
気付いたら美容院の椅子ではなく妻の膝の上です。
強制転送は久しぶりだね、ローズ...。
「ふふ。"契約書"が違反を教えてくれたのですよ?」
笑顔なのに目が恐いです。
普段使わない敬語も恐いです。
「契約内容、お忘れでして?」
***
わたしのカレは、浮気性でした。
お父さんみたいなうっかりさんは捕まえないぞって、思ってたのに。
今、カレはわたしの下でふにゃふにゃ、とろとろになってます。
勝手に髪型を変えて。
わたしによく見せようとしてたようです。
両想いなのは嬉しいけど。
オシオキです。
なぜって?そんなの決まってるじゃないですか。
いやだ、だめになるって、泣きじゃくって、懇願してます。
ふふ、かわいい。
最初から、こうすればよかった。
ぜんぶ、ぜーんぶ駄目にして、甘やかすの。
とっておきの、手作りの契約書を作って。
契約はシンプルで、でも強力な物にしましょう。
私もそれにシバられたって、構わないの。
わたしはあなたになら、全部ささげられるの。
全部ささげて、きっとあなたを堕落させてあげるの。
その内容はただひとつ−−−
***
私の夫は、浮気性です。
こんなうっかりさんな所も、愛しいのだけど。
今、彼は私の下でふにゃふにゃ、とろとろになってます。
勝手に髪を切ろうとして。
今でも、私によく見せようとする貴方は大好きです。
それは嬉しいのだけど。
"貴方の一部"が、私以外に切り取られるのが我慢できなくて。
オシオキです。
悪かったって、蕩けた顔して、懇願してます。
ふふ、かわいい。
普段は貴方が一枚上手だけど。
全部、全部駄目にして、私のモノだって、再確認して貰わないと。
とっておきの、写真立ての契約書を使って。
契約はシンプルで、でも強力な物にしています。
私もそれに縛られたって、構わないわ。
私は貴方になら、全部捧げられるのよ?
全部捧げて、いつか貴方を堕落させてあげる。
その内容はただひとつ−−−
***
"髪の毛一本"まで、わたしのモノ
***
わたしのお母さんは、お父さんの事が大好きです。
結婚したその年に、私が産まれるぐらい、大好きです。
リビングに置かれた写真立ては、お母さんが毎日ピカピカにしています。
写真に写ったお父さんとお母さんが、今日もわたしに笑いかけてくれています。
19/09/05 01:14更新 / スコッチ
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