連載小説
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16:通話履歴[グリフォン]


「もしもし。」

『もしもしー?』

「すまない。まだ"すわいぷ"という操作に慣れなくてな。」

『大丈夫やって。段々慣れるやろ。』

「すまほ?というのは良いな。こうして離れていても会話が出来る。」

『箱入り娘やったもんなぁ。』

「宝を護るのに必死だったものでね。」

『使い方分かるんか?』

「ああ。苦戦しているが、最近すまほ教室?というものに参加して学んでいる。」

『おー、あれか。お爺ちゃんお婆ちゃんしかおらんのちゃうん?』

「確かに多いな。だが最近そこで、落武者の奥方と知り合ったぞ。」

『そういやあの種族も、古風やもんね。』

「二人して四苦八苦しているよ。」

『あはは、まぁ段々分かってくるって。焦らんでも大丈夫やで。』

「精々のんびりとマスターすることにする。」

『ほーい。んじゃ、また後でなー。』


ツー ツー ツー



***



プルルル プルルル

「もしもし。」

『はいはい、もしもーし。』

「大分扱いにも慣れてきた。」

『元々、物覚え早いもんなぁ。旅行先の遺跡で見かけたと思ったら、帰国したときには普通に日本に馴染んでてビックリしたわ。』

「まぁ、会いたくなったから仕方ない。」

『いやー、美女と話出来るだけでも感激やわ!』

「...会話だけで良いのか?」

『?どゆこと?』

「......いや、なんでもない。さて、そろそろ仕事に戻る時間だろう?またな。」

『おーう。またねー。』


ツー ツー ツー



***





「もしもし。」

『もしもしー?そういや、気になった事あるんやけど。』

「どうした?」

『いや、今更やけどさ...お宝は大丈夫なん?』

「ああ、そんなことか。大丈夫だ。今も近くにある。」

『あ、そうなん?なら良かったわー。...グリフォンって、宝を護るのが使命みたいなもんなんやろ?ググったら出てきてん。』

「まぁ、そうだな。」

『なんか使命ほっぽりだして大丈夫なんかって、心配やったんよ...』

「心配には及ばない。...君はやはり優しいんだな。」

『そんなええ人間ちゃうけどなぁ。あ、そうそう。』

「今度はどうした?」

『全然ちゃう話なんやけどな?二回目にこっちで会ったとき、"ガラス玉"のプレゼント貰ったやん?あれすごいなぁ。ガラスとは思えんぐらい綺麗やわー。』

「なんだ、同じ話題じゃないか。」

『んん??』

「ん??」

『よーわからんけど、アレ見てたら心が落ち着くっていうか...安らぐんよねぇ。』

「...まさか宝に嫉妬する時が来るとはな。

『ん?もしもーし?』

「もしもし。聞こえている。役に立っているようなら何よりだ。」

『改めてありがとうなー。』


ツー ツー ツー



***



プルルル プルルル

『あいもしもし?』

「もしもし。すまないな、お楽しみ中に。」

『ええよええよ(宴会なん言ったっけ?)。どしたん?』

「あー、その、なんだ。今日のお前は女運がすこぶる良くないらしい。」

『すこぶる』

「そう、すこぶる。」

『...えー、よりによって今日なん??そしてなぜそれを知らせたん??』

「特に左斜め前の女には要注意らしい。」

『なにその具体性!?』

「兎に角、その女と関わると破滅の未来は避けられないらしいから、気を付けることだな。」

『え?なんなん?それほんまに占いか?』


ツー ツー ツー




「ごめんなさいごめんなさいもうしません男を騙してお金貢がせたりしませんだからその嘴?首飾り?みたいなので突つかないで下さい地味に痛いからあああああ!」



***





「もしもし。」

『もしもーし。』

「働くというのは大変だな。宝を護る日々とは全く違う。」

『お宝護るのにどんぐらいかけてたん?』

「さぁ...遺跡が出来る頃からだったか。」

『何千年レベルか、凄いなぁ。』

「それが私の全てだったからな。」

『強く生きてるなー。そんなけ入れ込んでたのに、なんでまた日本に?』

「宝なんかよりもよっぽど護りたいヒトが出来た。」

『思い切るねー。』

「生憎、そいつはその宝を渡しても、私の気持ちに気付かなかったがな。」

『お宝渡してしもたん!?うそやろ!?』

「ああ。私はそのぐらいの覚悟だ。」

『もうプロポーズの域やん...。気付かん奴も大概やな。』

「...そうだな。」

『他にアクションしてみたん?』

「まぁ、見守ってはいるが...。」

『あかんあかん、そんな鈍感男、そっちから仕掛けんと気付かんで!』

「......例えば?」

『せやなぁ...もう正面突破で告白でもしたったら?"好きです付き合って下さい"とか』

「好きです付き合って下さい。」

『なんで復唱?でも相手も幸せモンやな、美人に告白されて。』

「......お前は私をからかっているのか?」

『え!?なんで怒るん!?』

「...もういい、それで?それすら気付かない、鈍感で!朴念仁な!男にはどうすればいいんだ。」

『どうしたん、何怒ってるん...告白気付かん奴とかこの世におる?』

「この世には突き抜けた馬鹿も居るものなんだ。」

『そ、そうか...それでも駄目なら、もはや身体に教え込むとかしか無いんとちゃうか...?』

「......ほう?」

『...あれ?もしもーし?なんかめっちゃ風の音入ってるで?飛んでる?』

「...あぁ、全速力で飛んでるよ。鈍感男に身体で分からせてやろうと思ってな。」

『行動はやっ!...まぁ頑張れよー。苦労しそうやけど。』

「ああ、そうだな。苦労させそうな奴が真下に見えるよ。呑気に通話してる。」

『あははは、実況かい!面白...そ......なぁ。』

「なんだ?」

『今日は良い天気やな。』

「そうだな。」

『俺の周りに影が出来たんやけど。』

「そうか。」

『なんか耳に当ててる鳥人間っぽいのが真上に見えんねん。』

「そうか。大変だな。因みにだが」

『...どしたん?』

「私が数千年かけて護っていた宝の話なんだがな?」

『お、おう。』

「"癒しの宝玉"と呼ばれる、そうだな...身近な物で例えると、"ガラス玉"みたいな形の宝だったんだ。」

『...あは、あはは...そうか。なんか見覚えある気がするわ。主に家のテレビの横とかで。』

「千年ほど前は、それを巡って文明が滅びるような争いが起こった程だ。」

『そ、そんなスゴい玉なん?』

「まぁ、今の私の想いに比べれば、些末なものだ。」

『よっぽど、すきなんや、な...』

「どうした?声が震えてるぞ?」

『いや...ちゃうねん...ごめんて...』

「どうした?何を謝る?私は今から急降下を仕掛けて、件の男の身体へ私の想いをみっちり教えるつもりだ。」

『なんか、頭にポタポタ落ちてくんねんけど...』

「なんだろうな?通り雨か何かじゃないか?...私はもう待つのが馬鹿らしくなってきたから、犯して犯して犯し抜くことにする。助言ありがとう。」

『い、いやちょっと』

「では、さようなら。そして」ビュオオオオ



『「これからも宜しく。旦那様。」』


ツー ツー ツー
19/04/22 20:41更新 / スコッチ
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■作者メッセージ

「このGPSという機能を使えばだな。」

「ふむ。」

「我が主の居場所が何処でも分かるのだ。」ドヤァ

「ほう。...何やら赤い点が、ゴルフ場の近くの風俗施設を指しているが。」

「...ふむ。刀は、と...」

***

使命を上回る愛に気付かれなかったら、ハイライトぐらい吹き飛びますよね。

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