連載小説
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主に育児に関するあれこれ
女は港。そう言ったのは誰だったか。
夫という生物は社会という海原に出て、ときに冒険し、ときに闘い、最後に必ず港に戻る。この港なるものを世の中の人は「妻」と呼ぶらしい。
男社会を象徴する言葉だなと思いつつも、実際に専業主婦をやっている身としては否定しきれないのが悲しい所だ。世の中には別の港へ行ったきり帰ってこない船もあると聞くが、うちの船は夕食時には必ず帰ってくる。どうやら「我が家」は上手くいっている家庭らしい。……軟禁されている身としては港に括り付けられている気分なんだが。
普段、私は一人で外出することを禁じられている。このことについて抗議をしたのだが『また事故にあったらと思うと…』と言われてしまっては、前科があるため反論できない。そのため、軟禁生活を甘んじて受け入れているわけだが……

私の仕事は主に掃除、洗濯、料理だ。ぶっちゃけ、これまでの生活とさほど変わらないので苦痛ではない。むしろ学校がない分楽になったと思う。ただ、昔と違うことは『役割』の中に『旦那様のお相手』が増えたことだ。つい最近まで性行為を知識としてしか知らなかったため、かなり戸惑う。いきなり使徒と戦えと言われたシンジ君の気分だ。
しかも回数が素人から見ても異常だ。この前ネットで調べたところ、性行為の頻度は週1〜2回が普通と書かれていた。しかも射精は3回くらいが限度とのことだった。私は毎晩気絶するまで何回も精を吐き出されているんですがそれは。話がちがうじゃないか!

回数重ねているだけあってバッチリ妊娠してるし。こちとらメンタル小学生の頃と変わらないからな。産むだけで親になるってわけじゃないんだぞ!とまあ、そんなことを叫びつつも現実が変わるわけではない。ボチボチ夫婦生活に楽しみを見つけていくのが精神衛生上よろしいだろう。

これはそんな誰にでもあったり、なかったりするすることをバカバカしくもメモしていった日記のなりそこないである。魔物化した方がいたら覚えておいてほしいのだが、魔物と人間の体は大きく違うらしく、ネットの情報が当てにならないことも多い。そんなときは慌てず旦那や近所の魔物に相談をしてほしい。




・射乳の話
これは魔物化の影響だと思うんだが、私は母乳が出るタイミングが早かった。いや、元々個人差があるものだけど4カ月で出るのは異常じゃね?完全に油断していた。腹痛や違和感も特になく、順調なんだなとか考えながら風呂で温まっていたら急に出た。しかも量も尋常じゃなく、風呂のお湯が真っ白になる程だった。乳の無いところでこのレベルの乳遁を……

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その日の夕方

「おかえり、ご飯にする?シャワーにする?」

「シャワー?お湯張り忘れた?」

「それは問題なかったんだけど、駄目になった」

「え、何それ怖い。何があったし」

「あっ、ちょっと!まだ浴室開かな――」

「風呂が白く濁っているんだけど、これ何?」

「……母乳です」

「友季の?」

「……私の」

「……」

「いや、ちゃうねん。弁解させてくれ。母乳が出るのは産後だと思っていたんだ。まさかこんな早く出るようになるとは夢にも思わなかったんだ」

「……」

「あったまると乳の出が良くなるみたい。とりあえずこの湯は捨てて――」

「……」

「――あの、明臣?胸から手を放してくれないかい?じゃなきゃ作業が出来……オイ絞るな!」

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・再開の話
生理のタイミングが分からなかった。これは子供が産まれた後の話なんだが、ある日妙にお腹が張っているなと感じていたら急にきた。人間だったころは基礎体温と下腹部への痛みでくるタイミングを予知していたんだが、アンデット化して体温がほぼなくなって、痛みも感じなくなって、おまけに魔物化して最初の生理が産後というブランク明けな上、出産後すぐにきたから回避不能だと思うんだ。股から血が出て、出産の悪影響かと思って慌てて病院に行ったら『あ、普通に生理ですね』って。2〇歳にもなって『初潮かよ!』というリアクションで笑われてしまった。……普通、産後の生理は授乳が終わった後って聞いていたんだが、ここも魔物化の影響なのかな?あとアンデットの血って黒いのな。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あの、明臣さん?」

「なに?」

「授乳中に後ろから突くのは教育上よろしくないのでは?」

「ごめん、母乳あげてる友季見てたらムラムラしてきちゃって」

「と言いつつも腰はしっかり動かすんですね」

「へへ、照れるぜ」

「褒めてねぇよ!……時に明臣さん、私もう生理来ているのですが」

「それで?」

「タイミング的にすぐに子供ができたら、姉妹が双子でもないのに同学年になってしまうのですが」

「何か問題でも?」

「いや、年子って『両親が我慢できなかったのね』みたいな目で見られることがあるんですよ。ましてや同学年なんて。私は別に人と関わらないから良いんですけど、娘が何と言われるか……」

「実際、我慢できてないから問題なし。娘に関しては俺が何とかするから気楽に構えていてよ。……あとは友季が次の子を欲しいかどうかだね。どう?」

「……欲しいです、赤ちゃん。って!おい!急にペース上げるなよ!あっ――」

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・断乳の話
離乳食が問題なく食べられるようになり、断乳をして暫くたったのだが、娘が事あるごとに『おっぱーい!』と叫びつつ胸を揉んでくる。……これは断乳できていると言えるのだろうか?断乳したところで母乳の製造がストップするわけでもないので、母乳の絞る量を減らして徐々に身体に母乳が必要ないことを覚えていただかなくてはならない。……のだがこうして娘に絞りだされる始末。しかも娘は絞るだけ絞って飲まない。完全に玩具ですね、私のおっぱい。そうこうしていると旦那様が言うわけですよ、

「明季、おっぱいで遊ばない!それは俺のおっぱいだ!」

私のおっぱいだよ!殺すぞ!
かと思えば、今度は旦那様が吸い付いてくるし!おい2〇歳、卒乳しろよ!




・お雛様の話
実家からお雛様が送られてきた。しかも七段飾りの立派な奴。今住んでいるマンションはかなり広いので置き場所には困らないのだが、問題は別にある。

「あ、お母さん?」

「友季か?元気にしとる?」

「超元気〜。ところでさっきお雛様が送られてきたんだけど」

「明季ちゃんのために送ったやつね」

「……あの、これ新品だよね?」

「そうよ!奮発しちゃった!」

「価格を聞いても?」

「聞かないほうがいいわ」

怖い!初孫フィーバー超怖い!
ちなみに私の人生最大の買い物はRAHエヴァ初号機2万4千円である。
旦那様はこのマンションと言っていた。怖くて値段は聞けなかった。

「これまで引き継いできたのあったじゃん。あれは?」

「供養したわ」

「なんで!?」

「いやぁだって……縁起悪いじゃない」

雛人形を代々引き継ぐのがアリかナシかって話は個人によって変わると思うんだけど、うちの場合はアリだった。……のだけれど、

「今更縁起悪いってどういうことよ?」

「だってアンタ死んじゃったじゃない。厄払いできてないし、もう替え時かなって」

……ぐうの音もでねぇ。




・大御門家の妻として
やんごとない家に嫁ぐと色々と求められるものもあるのだろう。一応私の実家も堅苦しい家なので茶道、華道、着付け、習字あたりは最低限習っているが、あくまでも最低限だ。人前で誇れるほどの自信はない。
数日前、旦那様の実家から呼び出された。面談をしたいとのことだった。これまではゾンビだったため、ロクに話ができないものとして免除されていたのだろう。やだぁ!人前に出たくない!と嘆いていても仕方がない。旦那様の手を握りしめつつ義実家へ向かった。

……

結論から言えば何てことなかった。どうやら旦那様の親族は私が軟禁されているという話を聞いて心配になったらしかった。夫婦仲は極めて良好だと話すと安心していた。途中から、恐縮してしまうくらい労わられた。一番不安だった息子を産むことができない話をすると、問題ないと返された。……どうやら問題ないことは無いそうなのだが、私が死んだときに旦那様は『今すぐゾンビ化させないと俺も後を追う』などと騒ぎ出したらしく、それよりはマシとのことだった。なんだか色々と申し訳なくなり、明臣の妻として何か出来ることはないかと聞くとこう返された。

「生きてさえいれば問題ないわ」

う〜ん、及第点!




・奥様は高校生
私が死んだのは高校生のときだった。そしてそこからアンデット化により肉体は成長していないため見た目は完全にJKである。……実年齢はまだギリ20代と言っておく。旦那様はインキュバス化するまでズレがあったそうで、見た目は実年齢より少し若いくらいで止まっている。……だから私が制服を着ても恥ずかしくないはずだ!
旦那様の誕生日プレゼントに何をして欲しいか聞いたところ、制服プレイがしたいとのことだった。いや、性格には私が死んだ日のリベンジがしたいとのことだった。髪形も当時に合わせてほしいとのことだったので、どうせならと魔法で髪と目の色を黒くして完全再現をしてやった。あとは制服を着るだけなのだが……

「……明臣、すまん。制服着れないかも」

「身長は変わってないだろ?」

「……色々入らない」

「え?」

身長は変わらなくても、体形が変わらないとは限らない。そんな当たり前のことを今思い出した。無理矢理着たは良いものの、成長した胸のせいでパツパツというか何というか、おい無理すんなよってな具合だ。

「……」

「……」

「……あの、何か言いたいことがあるなら聞こうじゃないか」

「なんか、エロ同人でやたら乳盛られたキャラみたいだな」

流石にこれはキレていいよなぁ?

18/08/06 10:49更新 / 幼馴染が負け属性とか言った奴出てこいよ!ブッ○してやる!
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■作者メッセージ
「子供って何歳までおっぱいに執着するんだろうね」

「俺は『無論、死ぬまで』かな」

「お前は子供じゃないし、不死だし、どこから突っ込めばいい?」

「『突っ込む』のは俺の役割じゃないか?」

「下ネタかよ、ぶん殴るぞ」

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