連載小説
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23.いけない3P、イケないプレイ
娯楽都市シャルクの夜は長い。
それ故、色々な事が出来る。

「心の準備は?」
「大丈夫です」
「性欲は?」
「・・・色々抑えきれないです」
「よしOK」

夜8時。娼館前にて。
この日シロは、また一つ大人の階段を上る。



「こんばんはー」

二人が訪れた娼館は、古い宿屋を改装して作られたものあり、在籍している魔物娘は十人程度。
比較的小さめで歴史も浅いが、『カップルと娼婦の3P』というスタイルを提案したのは
この地方周辺では初めての店であり、それが功を奏して中々に儲けが出ているとか。
更に、元が宿屋と言うだけもあり、普通に宿泊する事も可能である。

「いらっしゃいませ。ご予約のエトナ様とシロ様ですね?」
「はい」
「おう」
「予約内容を確認させて頂きます。1Dayご宿泊プランで、お相手はサキュバスのメイちゃん。
 以上で宜しいでしょうか?」
「大丈夫ですよね、エトナさん?」
「うん、間違いない」
「ありがとうございます。こちらの番号札のお部屋へどうぞ。5分程お待ちいただければ、当店の娘が参ります」

受付の男から渡された番号札に記載された部屋へと、二人は向かう。
『12』と書かれたプレートが扉に張り付けられた部屋。そこが、プレイルームとなった。



「おぉ、何かそれっぽい」
「お風呂場丸見えじゃないですか・・・」

改装前から連れ込み宿だった訳では無いが、結構な魔改造が施された事は想像に難くない。
やたら大きいベッドが一台に、ガラス張りの浴室、淫猥なムード漂う明かり等々、
完全にそういった行為の為の部屋である事は明らかであった。

「ところでシロ」
「はい、何でしょう?」
「一応聞きたい。メイって奴指名した理由」

シロは当初、指名無しのフリーでも構わないつもりだったが、エトナの勧めもあり、
出勤リストから娼婦を指名した。しかし、その理由は明かしていない。
単純に聞くタイミングが無かっただけである上、知ったから何になる、という事ではあるが。

「エトナさん、身長どれくらいあります?」
「測った事ねぇから分からん」
「目測で大体172、3cmくらいだと思います。そして、僕はエトナさんの身長が、抱きつくのに丁度いいんです」
「サラっと嬉しい事を。アタシも、シロの身長が収まり良くて好きだぞ♪」
「あう・・・えっと、ですから、まずそれが一つ。それと・・・」
「まぁ、コレだろ」

ギュッと、シロの顔面に胸を押し当てる。
息苦しくない程度に力加減を調整しながら、ぐりぐりとこすり付け、顔全体を乳房で塗りつぶすように動く。

「Jカップだっけ? 相当自信あったけど、まさかココで負けるとは思わなかったわ」
「そも、ほへほひんほうあまっいいめあもめ(その、それと身長が合致してたので)」
「ごめん何言ってるか分かんない。けど可愛いから離さない」

極上の乳房の海に溺れ、欲情が限界まで高まる。
娼婦が訪れるまでの僅かな時間でさえも、二人は愛し合った。



コン、コンと、ノックの音が控え目に鳴った後、扉が開く。

「ご指名ありがとうございま〜す♪ サキュバスのメイです♥ 今日は皆で、い〜っぱい気持ちよくなろっ♪」

明るく悪戯っぽい笑みを浮かべながら、メイが二人の許へ近づく。
サファイア色の髪にルビー色の瞳、アメジスト色の軽くカールした、一対の角。
そして先端がハート形をした、翼と同じ黒曜石のような色をした尻尾という、
非常に典型的なサキュバスであった。
巨乳を売りにしているだけあり、エトナより一回り小柄な体躯でありながら、胸部のそれは
歪なまでに彼女の下着のような服を押し上げている。
そして。

「ってえぇっ!? こっ、子供っ!?」

驚きの声。
魔物娘が恋人であった例は腐るほど見てきたが、もう一人が幼い少年だったという例は今回が初めてだった。
年齢制限が無い以上、こういったケースが起きない訳では無いという事は知っていたが、
実際に遭遇するとは思っていなかったようである。

「今日は宜しくお願いします」

ベッドの上で深々と座礼するシロ。
彼はこんな時、こんな場所でも、礼儀正しい姿勢を崩さない。
そして、その隣にいるエトナは、その光景のシュールさに笑い声を漏らしている。

「あぁこれはどうもご丁寧に・・・って固い固い! 子供なんだからもっと素直になってよ!
 固くするのはおちんぽだけでいいの!」
「ええっと、その、そっちはもう・・・」
「あ、確かにギンギン。 もしかして君、インキュバス?」
「完全になった訳ではないですけど、半ばそんな感じです」
「ほうほう。それなら・・・手加減しなくても大丈夫そうだね」

種族の力も相俟って、彼女の微笑みは人、特に男を虜にする魅力を持っている。
ニマりとした口元から除く八重歯は、獲物を狩る牙にも、茶目っ気が具現化したものにも見える。
まさしく、『キラースマイル』。

「言っとくけど、寝取っちゃっても責任は持てないからね?」
「別にいいぞ。命が惜しくないなら」
「ちょっ、洒落になんない。サキュバスって胸の戦闘力はあるけど、戦いの戦闘力ってそこまでないから」
「冗談だ。それに寝取れる訳ねーし」
「言ったなー? お姉さん、本気出しちゃうぞー?」
「あはは・・・お二人とも、お手柔らかにお願いしますね」
「「うん、それ無理」」
「あはは・・・」



「ではでは。まず手始めにこの辺から・・・あむっ」
「あんっ!」
「んふっ、かーわいい♥ ほら、彼女さんも・・・ってもうやってるか」
「んじゅるっ、ずじゅっ、じゅじゅっ」

両方の耳を舐められ、悶えるシロ。
右の耳はメイに優しく甘噛みされながら舌先でチロチロと弄ばれ、
左の耳は穴の奥に突っ込むようにしてエトナに舐めしゃぶられている。
両側から襲い掛かる、同じ部位を使っているのに全くもって異なる責め。

エトナ一人でも、当然気持ちいい。
しかし、この経験は確かに、3Pでしか叶わない。

「あむあむ。むにゅっ、んー・・・」
「じゅぼっ、ずーっ、じゅじょっ」
(これが・・・3P・・・♥)

色っぽい吐息が右から。淫らな水音が左から。二人のやり方は対照的だった。
メイは技巧を凝らしてねちっこく、という感じ。
緩やかではあるが、身体の奥底まで侵食するような、一種の催眠のようなもの。
エトナは力任せに刺激をぶち込み、感じさせる。
オーガ特有の闘いのような交わりがもたらすのは、正に快楽の暴力。
ただ、どちらにしてもシロの脳内麻薬の分泌を無茶苦茶に促すという点で共通していた。

「んーっ、ぽっ。うん、いい感じにとろとろー」
「じゅばっ、じゅっ。こんだけだらしない顔でも可愛いんだからズルい」
「はにゃぁ・・・」

頭はとっくに働く事を放棄し、左右からの声の内容を理解する事さえしなくなった。

「えへへ。この子本当に可愛いね。食べちゃいたいくらい」
「だろー?」
「これは是非私にも分けて頂「その角へし折ってケツに刺すぞ」ごめんなさい冗談です」



「ちゅぱ・・・ちゅっ、ちゅちゅっ」
「じゅるっ、じゅじゅ・・・じゅるるっ」
「あひぃっ!? あ、あう、あぁっ!?」

耳から始まり、瞼、頬、首筋、脇の下、臍、太腿、くるぶし等々、全身くまなく舐められるシロ。
今はメイが右、エトナが左に寄り添い、両方の乳首を責めている。

「んーっ、んっ、ちゅっ。気持ちいーい?」
「じゅばっ、じゅぶっ、じゅぽっ。ま、その顔見りゃ分かるけど」

ほぼ全身、敏感な箇所を舐めつくされて性感は高まるばかり。
しかし、その一方で。

(すごく気持ちいいけど・・・何で・・・)

股間で隆々と屹立した肉棒には、一切手が付けられていなかった。
ありとあらゆる部位は責められたのに、最も感じる場所に触れるのは空気だけ。
舐められる快楽と比例して、切なさが募る。

メイとエトナはそれに気付いてるのかどうか、自分では分からない。
もうすぐ触ってくれるのか、それともしばらくこのままなのか。

「んー・・・じゅばっ。んぬぬ・・・んっ」
「じゅぼっ、じゅるじゅる・・・じゅーっ」
「あうっ、あ、あぁんっ!」

だが、どちらにせよ今も気持ちいいのは事実。
与えられるものを享受していれば、いずれは・・・



その予想は大きく裏切られる事となった。
乳首からお腹、太もも辺りに二人が移動した時はようやくと思ったが、
そこからもう一回耳に戻った時に、感づいた。

(僕からねだらせる事、狙ってる・・・?)

勿論滅茶苦茶に恥ずかしい。しかし、そんな事はもうどうでもいい。
何でもいいから、熱く煮え滾った精液を放出して気持ちよくなりたい。
その為なら羞恥心なんて地平線の彼方へ投げ捨てて構わない。
割と我慢強い部類に入るシロがそう思う程、そのもどかしさは限界に達していた。

「あの・・・僕のおち・・・おちん、ちんも、お願いできますか・・・?」

恥ずかしい事この上ないが、背に腹は代えられない。
気持ちよくなるためなら、多少の羞恥心ぐらい。捨てていい。
とはいえ、実際にそういった行動をするのは中々難しいが、何とか形に出来た。
そして、それはしっかりと二人の耳に届き、応じられた。

「そだね。もう結構時間経ったし、そろそろメインディッシュの方も♪」
「おちんちんねぇ。これもう肉棒とか男根とか、そういうもんだろ?」
「あはは・・・」

日に日に大きくなっているかのようなシロのペニスは、成人男性の平均を超えつつある。
長さ、太さ、硬さ、形状どれをとっても一級品。インキュバス級の逸物。
若干持久力に欠けるが、その辺は回復力でカバー出来るので問題ない。
そう考えれば、早漏気味なのはむしろエトナとメイからすれば長所か。

「じゃ、まずは手コキにしよっか。えっと、エトナさんだっけ?」
「エトナでいい。なんかお前にさん付けされるの、むず痒い」
「ん、それじゃエトナ、私はサポートに回るから、本体の方宜しくー」

軽い調子でそう言うと、メイはシロの腰の辺りに移動し、左手でそっと睾丸を包んだ。
それを見て、エトナはニヤりと笑みを浮かべつつ、シロの陰茎を指三本で握る。

「それじゃ、始めっと」

カリ首に引っ掛けるようにして、小刻みに上下に動かす。
単純ではあるが、神経に直結し、射精を促すにはこれ以上ない扱き方。
それがしなやかな女性の指、しかも愛する魔物娘となれば、不満の感じようが無い。

「おいおい、もうガマン汁だだ漏れじゃねーか」
「あぁぁ・・・気持ちいい・・・」
「涎まで垂れてるな。・・・もったいない」

口元から零れた唾液を、そっと舌で掬う。
シロの身体は、分泌液含めて全て、自分の物。
それを主張するかのように、エトナはシロの口内に舌を入れ、深い口付けを交わした。

それと同時に、玉袋を転がしていたメイは、両手で左右の睾丸を握り、何かを呟いていた。
一定のペースで揉み解したり、時折息を吹きかけたりした後、

「・・・よし、出来た」

妖しい笑みを浮かべて、手を離す。
そして、シロの耳元に近づき、囁いた。

「今、何したか分かる?」

耳を舐めながら、脳を絶頂させるかのような、魔力の籠った声。
何を言われたか、何をされたかは分からないが、この時、シロはある大きな違和感を感じていた。

(何・・・これ・・・何か・・・)



(・・・イキたい。射精したいっ!)



突如、大きな射精欲求が生まれたのである。
性欲の増進は日々感じている所であるが、今感じるのはとにかく『射精したい』という事。
陰茎を激しく擦り、溜まったものを思いっきりぶちまけて、すっきりしたい。
原始的な欲求が、一気に高まった。

「ちょっとイタズラして、君の精液を無理矢理作っちゃったんだ♪
 もう射精する事しか考えられないでしょ?」

メイの種族はサキュバス。情事の際に役立つ魔法の一つや二つ、習得していてもおかしくない。
この時かけたのは精力増強の魔法なのだが、術式をある程度組み替えれば、色々と効果が変わる。
結果、いきなり大量の精液が生産された上、体内に吸収される事無く、貯蔵された。
陰嚢が見た目にして3割程大きく膨れる辺り、濃度も量もとてつもない事になっている事が窺われる。

「ぷはっ。なぁ、本当に大丈夫なんだろうな?」
「素のままの人間にだとちょっとヤバいけど、この子、もう結構身体作り替わってるみたいだし。
 どうにかなるよ、多分」
「多分ってお前・・・」
「イキたいっ! イカせてぇっ!」

とにかく、精液を吐き出さなければ。
危機感さえ覚えたシロが、自らの陰茎に手を伸ばした瞬間。

「っとー! ストップー!」

メイが素早く腕を掴み、大の字になるように引っ張る。
さらに、ベッドに半分埋まる様にして現れた輪っかが、シロの手首に嵌められた。

言うまでも無く、拘束魔法の一種である。

「ガマンガマン。いーっぱい気持ちよくさせてあげるから、自分でしちゃダーメ」
「ふぇっ、ええっ!?」
「エグい事するな。涙目になってるじゃねーか」
「・・・これ頼んだのエトナじゃん」
「そうではあるけど」
「えぇっ!? どういう事ですか!?」

拘束状態になり、自分でイク事はおろか、抵抗さえ出来なくなったシロに伝わった、衝撃の事実。
何故、エトナはこんな事をさせたのか。

それは、酷く単純な理由だった。

「昨日の仕返し。以上」
「あっ・・・」
「何があったのかは教えてくれないんだけどさ、あの後電話来て。
 『一方的にいぢめてやりたい』という事だったのでこうしました♪」

オーガは、戦闘を好む種族である。戦闘には、性交も含まれる。
そして、それに負けるという事は、プライドが許さない。
当然、負けっぱなしのまま終わるなど、もっての外。

「あの、ならせめて一対一で・・・エトナさん、そういう方じゃ・・・」
「・・・勝負は、相手の思惑の裏をかく事が重要だ」
「それに、人数多い方楽しいしねー♪」

『正々堂々』という部分のプライドに関しては、投げ捨てたらしい。

「それより、もうそろそろイキそうだろ?」
「あっ、そのっ、うわあっ!?」

射精につながる刺激を、精液の溜まった敏感な肉棒にされてはたまらない。
陰嚢が固く絞られ・・・



突如、エトナの指が離れた。



「えっ・・・」
「どうしたー? イっていいんだぞー?」

手は、扱くような動きをしたまま。
しかし、ただ空を切っているだけで、シロに一切触れていない。

「エトナも酷いじゃん。私、手加減しないでかけちゃったんだけど」
「今回ばかりは手段を選ばないって決めたんだよ。
 どっちの立場が上か、分からせてやるってな・・・!」
「あ・・・え・・・?」

乾いた笑いすら、出ない。
これから待つのは、天国のような地獄の責め苦。それに気づいたからである。



「ああーっ! イク! イクーッ!」
「ほらイけよ! イけるならな!」
「い、イかせてぇ! イきたい!」
「ふふ、いつイけるかなぁ・・・♥」

激しく扱き、イく直前で止める。それを繰り返す。7回目で、シロは数えるのをやめた。
メイもクスクス笑いながら、耳や乳首、首筋等、射精に至らない部分を指や舌でなぞり、性感を高める。

もう、シロの頭の中には『射精したい』しか無い。
自分が望めば、いつでもどこでも、好きな時に好きなだけ手に入れる事の出来た快楽が、今はあまりにも遠い。
自由を奪われ、何度も焦らされ、欲求が高まるだけで、その出口は全く見えない。

「拘束魔法、増やしておいて正解だったねー。お腹の辺りに無かったら、腰揺らすだけで出るとこだったし」
「その後の方がガマン汁飛び散ってるけどな。精液は一滴も出させてないけど」
「イカせて! イカせて下さいっ!」
「それじゃ次は口でするか。安心しろ。今度は・・・途中でやめたりしないから」

その言葉を、シロは聞き逃さなかった。
これで、やっとイカせてもらえる。熱く煮え滾った精液を放出できる。

「優しく、してやるからな・・・あむっ」

助かった気になったのは、一瞬。股間に伝わった感覚で察した。
エトナが口に含んだのは陰嚢だけ。蕩けるように気持ちよく、射精を促すものだが・・・

(これじゃ・・・イけないよぅ・・・)

射精反射は、睾丸への刺激だけでは訪れない。
長年、開発を続ければその限りではないが、シロにはまだ早すぎる。
これでは精液の生産が活発になるだけで、より苦しくなる。
さらに、ここにメイの舌も伸びてきた。

「私もこっちの方やろうかな・・・んっ」

拘束魔法で作った輪を変形させ、シロの腰を浮かせ、その下に潜り込む。
身体を挟んでエトナと対面する位置に来た瞬間、シロに未経験の感触が伝わった。

「ひゃいっ!? えっ、そこ!?」

本来、そこは性感を得るために存在する部位ではない。
にもかかわらず、ある意味では男の一番の急所とさえいえる、神経の詰まった部位。

「んー・・・可愛くて綺麗。
 やっぱり子供のお尻って、ぷにぷにしてて最高♥」

排泄の為の器官、肛門。
メイはいとも簡単に、そこに舌をねじ込んだ。

生物が初めての快楽を得るのは、排泄の瞬間だと言われている。
直腸を異物が通り抜け、出し切った爽快感を脳が伝える為という事が通説だ。
しかし、それは一般的かつ健康的な意味での話に止まる。
ここに丁度、圧迫刺激によって性的快楽を得られる部位が存在する。)

といっても、ここまで様々な性行為をしてきたシロといえども、流石にこんな事は初めて。
開発などされてない以上、殆ど異物感しか感じない。
これが気持ちよくなるに至るまで、通常は数日から数か月はかかる。

・・・相手が娼婦のサキュバスとなると、話は別になるが。

(何か・・・変な感じ・・・)

ゾワゾワと、背筋を冷たい指でなぞられた様な感覚。
メイにかかれば、シロの性感帯をもう一つ増やす事など、そこらの男をイカせる事と変わらない。

そして何より、いずれにしても、シロの精液は増産されるだけで、排出される事は無い。



娼館で。
弱点を知られ尽くした、愛するオーガのエトナと、イタズラ娘で最高のテクニックを持つ娼婦、サキュバスのメイ。
その二人に、拘束された状態で。
射精中枢に届かない、陰嚢と肛門を一方的に犯される。

場所、相手、シチュエーション、行為。その全てが、背徳的。

「イカ・・・せてぇ・・・」

声を出す事すら、ままならなくなって来た。
仮に出た所で、この状況は半歩も変わらない為、体力を消耗し続けるだけではあるが。

「・・・あっ!」

鋭敏になった神経が、即座に察知した。
温かくて、にゅるりとした感触、そして何より。

「じゅるっ・・・」

部屋を満たしていた音が、変わった。
今、エトナの口内に存在するのは、陰嚢ではなく、竿。
これは、射精に直結する刺激。

(イカせて・・・もらえる・・・!)

絶頂への期待というより、焦らしプレイからの解放という安心感の方が、やや大きい。
行き場を求めて暴れまわる精液は、もうまもなく、飛び出る。

にゅるり、にゅるりと、舌がペニス全体を這いずり回る。
止まる気配は無い。ずっと、その瞬間まで、包んでもらえる。
なら、この優しい口淫に身を委ねればいい。

・・・はずなのだが、何故か胸騒ぎがする。
今、間違いなく自分はフェラチオの快楽を享受している。
そして、渇望し続けていた射精が出来る。

果たして、本当にそうなのだろうか。
その答えは、数十分後にようやく判明する事となる。



(何で・・・)

一瞬たりとも、エトナは口内からシロのペニスを出していない。
舌やら口腔粘膜やら喉奥やらを駆使して、陰茎を責めている。
途中でやめたりはしていない。その点は守られている。
問題は、もう一つの約束も、歪んだ形で守られている事だった。

初めて、エトナにフェラチオで責められた時、自分は殆ど恐怖しか感じていなかった。
それ以来は、起こしてもらう時、眠る時等々、高い頻度でしてもらっていた。
そして、その全てが優しく、愛情に満ちたものだった。

『優しくしてやる』と、言われた。
つまり、いつも通りにイカせてもらえるものだと思っていた。

そう思っていたのは、自分だけであるという事に気付かず。

(何で・・・イケないの・・・?)

その責めは、あまりにも優し過ぎた。
全ての刺激が射精につながるものだが、どれもこれも緩すぎて、射精反射に届かない。
これが意図的なものであるという事は、明白だった。

射精という極楽へと繋がって見えた蜘蛛の糸の先は、今までと同じ地獄でしかなかった。
やり方が変わっただけで、まだまだ出口は見えない。

シロからは見えない所で、エトナはニヤリと笑う。

(嘘はついてない。気持ちよくてしょうがないだろ?
 それ以上に、死にたいくらいもどかしいだろうけどな)

中途半端な責めをされるくらいなら、何もされない方がまだ楽だった。
射精は出来ないが、エトナの焦らしフェラと、メイのアナル舐めは、その存在を忘れさせてはくれない。
欲望を煽るだけ煽って、解放させない。男にとってこの上なく辛い、射精管理プレイ。
こんな事になるなんて、微塵も思っていなかった。

叶うのなら、昨日の自分を殺したい。それが出来ないのなら、今の自分が殺されても構わない。
終わりの見えないこの責めから抜け出したい。射精したい。陰茎を激しく責められ、精液を出したい。
射精をしたい。極上の快楽を味わいたい。射精したい。射精したい。

あと半歩の刺激で達するところをずっと維持されたまま、生殺しにされ続ける。
強烈な快楽と刺激が意識を失う事も朦朧とさせる事も許さず。シロは鮮明な意識のまま、地獄の中に身を浸し続けた。



どれくらい、経っただろうか。
射精への渇望以外の全ての思考・感覚が遮断され、残されたものだけがひたすら繰り返される。
そのループに耐え切れず、間もなくシロの脳神経は破壊されようとしていた。

「・・・!? ヤバいエトナ! ちょっとやり過ぎた!」
「んぁ?」

そこでようやくメイは思い出す。
これ以上続けると人間の頭で理解できる刺激の限界点に達し、その行く先は廃人か死であるという事を。
責めそのものはギリギリ問題ない。しかし、自分達は魔力を常に放出しているという事を完全に忘れていた。

「この子可愛過ぎたから計算間違えた・・・いくらインキュバスになってるっていっても、
 まだ10歳そこらでしょ?」
「あぁ、そう・・・ってシロ!? 目、目!?」

黒目が見つからない。
ホラー映画にでも出てきそうな、白目を剥いたシロ。
その異常さは、誰にでもこの上なく分かりやすく理解できる。

「しゃせー・・・しゃせえー・・・しゃせー・・・」

せき止められ続けた精液の放出。
その望みを伝える、僅かに一種類の単語しか出なくなる所まで、思考能力は破壊されていた。
そもそも、この発声行為すらシロは自覚していない。

「・・・これマジでヤバい。扱い方間違えたら、本当に死ぬ」
「嘘だろ!? えっ、これどうしたらいいんだ!?」

元々は、軽く苛めるだけのつもりだった。それがまさかこんな事になるなんて。
自分とシロの種族の違い。それを気にしなさ過ぎたが故の惨事である。

焦るエトナに、メイは静かに語りかける。

「一応、こういう時の対処法はあるんだ。
 もっと強い刺激で、汚染された精神を中和して、リセットさせる。
 つまり、今は酷いマイナス状態になってるから、そこにプラスを合わせて・・・」
「要するに思いっきり気持ちよくイカせてやればいいんだな?」
「・・・うーん、間違ってはないか。ねぇ、この子の好きなイキ方って何?」

今までの行為の数々を思い浮かべ、その時のシロの反応を比較する。
手コキ、フェラ、本番等々、色々としてきた。
それらの経験と、3Pという条件を掛け合わせると、最適解は恐らく。

「メイ、左側任せた。アタシは右側やる」
「ふむ、成程。シロ君って結構エロいね」
「その辺の談義は後でな。今はとりあえず、しっかりイカせる」

「しゃ・・・せー・・・・・・しゃせい・・・したい・・・」

白目を剥き、譫言を漏らし続け、脳死寸前まで追いやられたシロ。
その肉棒を間に、向かい合わせに寝転ぶエトナとメイ。

「・・・ごめんな、シロ。今イカせてやる」
「我慢させ過ぎちゃった分、腰が砕ける位気持ちよくさせてあげるから」

生死の境を彷徨う中、ずっと、ずっと待ち望んだ悦楽。
3P故に成り立つ、シロの願望を最高の形で叶える性戯。

強い弾力を持ち、むにりと刺激を与えるエトナの胸。
簡単に変形する程柔らかく、ふにゃりと包み込むメイの胸。



2人の胸が、シロの一物を左右から挟み込んだ。



ぼんやりとした視界の中、それだけははっきりと見えた。
そして、股間に送り込まれる快楽は、異質のものになった。
むにゅ、むにゅ、ふに、ふにと、異なる感触の柔らかい物体に、陰茎が押されている。

幾度となく味わった、張りのあるHカップの、エトナの胸。
初めて感じた、優しく密着するJカップの、メイの胸。

「んっ・・・これ、アタシも・・・」
「えへへ。油断してると、エトナもこれだけでイっちゃうよ」

同性相手用のテクニックは、メイの方が何枚か上手。自身の胸をうまく使い、乳首合わせに持ち込む。
硬く膨れた突端を弾き、つっつき、擦る。その度、エトナは喘ぎ声を出してしまう。

「ふぇ・・・ふぁ・・・っ」

未知の感覚を受けながら、興奮を促す嬌声が鼓膜を揺らしてしばらく。
徐々に、シロの意識が戻り始めてきた。
こうなれば、後はしめたものである。

今がチャンスと見たメイが、ここで仕掛ける。

「シロくーん。ほーら、むにゅむにゅ、むにゅむにゅ♪
 キミは今、二人のおねーさんのおっきなおっぱい、独り占めしてるんだよ」

ニコニコと微笑みながら、軽く小馬鹿にした調子で、この状況を言葉にする。
今、何をされているかをはっきりと認識したシロの頭は、忽ち稼働を再開させた。
直後に訪れる作業は、この快楽の伝達。

「4つのおっぱいでおちんちんすりすりして、どぴゅどぴゅーってさせちゃう。
 おっぱい星人のシロ君の為だけに、私とエトナがご奉仕してあげちゃう。
 ねっ、おちんちんたっぷり甘やかしてあげるから、変態さんになっちゃお?
 自分の事、おっぱい狂いの変態さんだって認めちゃお?
 そうしたら、もっと気持ちよくしてあげる・・・」

魔力を籠めた、甘美な声で囁く。
元が男を堕落させることに長けたサキュバス。更に、経験豊富な娼婦。
その言葉責めは次々とシロの耳に流れ、体中を回る猛毒へと変化する。

「愛してる。シロ。アタシはシロを愛してる。
 いじめてごめんな。でも、大好きだからいじめたくなるんだよ。
 どうでもいい奴に、こんな事しねぇし。だからさ、今度は思いっきり気持ちよくしてやる。
 アタシはシロを愛してるんだから、当然だろ?」

シロの耳を犯すメイに対して、エトナはシロに愛を注いだ。
とことん焦らした以上、もう射精できれば何でもよくなっているかもしれない。
しかし、シロをイカせる時は、何時も自分の愛情の中で、精神的な充足も感じてもらいたい。

「うぁぁ・・・あぁぁぁぁ・・・」

細胞一つ一つを書き換えるようにして全身を侵す、淫語やら卑語やらをメイから。
愛情を精神の容量一杯を超えてなおも与え続ける、優しい言葉をエトナから。

3Pによって生まれる肉体的快楽、精神的充足は、足し算では無く、掛け算で増えた。
いつもの倍以上の快楽と、いつもの倍以上の充足が同時に来れば、自然な事。
互いの相乗効果がいつもよりも強く発生し、脳内麻薬が過剰に分泌される。
今、シロの頭は廃人のそれとさして変わりない。

「シロ君は変態なの。おっぱい好き過ぎてダメになっちゃう、どうしようもない変態さん」
「シロ、愛してる。何よりも、誰よりも、アタシはシロを愛してる」

そんな中、二人の声、股間への責めはやたらとはっきり伝わる。
シロの認識する世界は、性愛と愛情と快楽だけで構成された、夢幻の世界。
自分とエトナとメイだけの、甘美過ぎてどうにかなりそうな世界。
その世界の中心で、理想をそのまま具現化した美女二人が、自分の淫棒に奉仕している。

(あぁ・・・イケる・・・射精せる・・・)

そして、それはもう今までの寸止めではない。
少しでも早く、強烈な射精快楽を与える為の、イカせる責め。
一擦りだけでもそのまま昇天するような、人外の快楽が2倍。
2つの極上の乳房×2人=四方を完全に塞ぐダブルパイズリ。
ぎゅうぎゅう詰めになった淫棒は窒息寸前。

(気持ちいい・・・おちんちんが気持ちいい・・・)

これでもかとばかりに責められ続けてもイカずにいるのは、今までの寸止めの影響か。
本来ならものの数秒で、壊れた蛇口のように精液をまき散らし、
下手をすれば脳神経を焼き切りかねない、危険とさえ言える悦楽に脳天を支配されるはず。
射精寸前の最も気持ちよく、しかしとてつもなくもどかしい時間を、
シロは強引に引き延ばされているのである。

(気持ちいいのに・・・イケそうなのに・・・何で、何でイケないの・・・?)

そもそも、メイの魔術でシロの陰嚢に溜まった精液はとてつも無い量になっている。
加えて、死ぬ寸前まで高められた性感が、子孫を残そうとする生物的本能に働きかけ、
行く場も無いというのに過剰な精子を製造した。
それが輪精管を抜け、前立腺を通って出ようとしているのだが、度重なる寸止めによって、
凄まじい濃度になるまで圧縮されたシロの精液は、簡単には射精できない程に高い粘質を持った。
二人の魔物娘の、男の身体の全てを知り尽くした甘やかしプレイをもってしても、
凝り固まった精液は中々排出されない。
エトナもメイも、シロをイカせる気満々なのだが、人間のキャパシティを過ぎた寸止め拷問は、
物理的な要素で、射精を阻害してしまっていた。



3分程責め続けた辺りで、エトナが感づく。

「なぁ、流石におかしくないか?」

間違いなく、射精できる刺激を送っているはず。
なのに、一向にそれが訪れない。

「・・・あー、そっか。そういうことか」

エトナの気付きを踏まえ、メイは娼婦として身に着けた知識から、答えに辿りついた。

「多分、精液が固くなりすぎて詰まっちゃってるんだ。
 こうなるのは想定外だったな・・・本当に苛め過ぎた」
「おい待て、それってシロはもうイケねぇって事か!?」

『イケない』
今、この場では現実味があるというか、現実になっている事。
その言葉を聞いた瞬間、シロの顔が一気に青ざめる。

「え・・・嘘ですよね・・・?」
「待った待った。大丈夫。ちゃんとイカせてあげられる方法も知ってるから。
 ・・・やった事は、ないけどさ」

万が一に備え、ありとあらゆるトラブルの時の対処法は覚えているが、
それを本当に使う事になるとは、メイは思っていなかったらしい。

一度、胸を動かす手を止め、シロの顔に目を向ける。

「固くなっちゃってる精液を押し出せば、その下の精液も自動的に押し出されるから、
 ちょっとでもいいから射精せればいいんだよ。で、その方法なんだけ・・・ど・・・」

語尾を濁す。
そして、明らかに何かを目的として、メイの身体のある一部分が蠢く。
それは、うねうねとしながら、徐々に目的地に近づき。



「・・・お尻の穴から、尻尾突っ込んでぐりぐりする」



尻尾の先端のハートを、シロの肛門の入り口につけた。

「・・・・・・・・・マジで?」
「マジで」
「・・・・・・・・・本当、ですか」
「本当、ですね」

提案されたのは、まさかの逆アナルプレイ。
3Pではなくても、出来るものではあるが、当然、シロの肛門は未開発の状態。
ついさっき、メイにアナル舐めをされた。ただそれだけ。

「経験一切無いんですけど」

衝撃的過ぎて、頭が丁度いい感じに冷えた。
ごくごく当然の普通のシロのツッコミを、メイはケラケラと笑いながら返す。

「あははっ。私はサキュバスだよ? その気になれば、男の子のお尻の穴をおまんこにするくらい、
 簡単簡単。その気になれば、この尻尾でドライオーガズムだってさせてあげられるし。
 ところてん射精させるくらい楽勝だって」
「衛生面とかの問題が・・・」
「心配ないよ。さっきアナル舐めしてた時に分かったけど、お尻の穴の中綺麗だったし。
 尻尾はこういうプレイ用に抗菌作用のある魔法薬塗ってあるから、ばい菌の心配もご無用。
 もっと言うと、硬度も結構自由に出来るから、腸壁を傷つけたりもしないよ」
「・・・あの、エトナさん」

理論的には反論の余地は一切ない。
助けを求めるようにして、エトナに視線を移したが・・・

「レッツ、社会勉強♪」

かつてないくらいにいい笑顔で、親指を立てられた。
『イって来い♪』というサイン。

考えてみれば、魔物娘であり、楽しいこと好きのエトナが、この提案に反対するはずがない。
本当に危なそうなら殴ってでもやめさせただろうが、今回は大丈夫だと判断したらしい。

「・・・分かりました。お願いします」

自分が危機的状況にあるという認識は、かなり薄れた。
だが、完全に忘れ去った訳でも無いので、腑に落ちないが、メイの提案を受け入れる事にした。
15/03/14 01:25更新 / 星空木陰
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■作者メッセージ
お待たせ過ぎましたごめんなさい。第23話です。
まさかのプレイ途中でページ跨ぎ。思いの外長くなりました。
そしてこれだけ責められて未だ一回たりとも射精出来てないシロ君。
そんな彼に襲い掛かる、メイの魔性の尻尾。
彼の身体と脳は耐えられるのか。次回に続く。

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