連載小説
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22.打って飲んだら
静けさ漂う、シャルクの昼。
施設内のスイートルームには少年と魔物娘。

やや、離れた位置にいる二人。

「・・・・・・」

枕に顔を突っ伏し、足をバタバタさせるエトナと。

「・・・・・・」

無言で頭を抱え、項垂れるシロ。

「「・・・・・・・・・・・・」」

重苦しい空気の中に響いたのは。

「「・・・・・・あぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」」

昨夜の出来事を思い出しては漏れる、悶え声交じりの溜息だった。

「アタシ・・・思いの外マゾっ気あったんだな・・・」
「どうせなら記憶も飛んでくれればよかった・・・それか飲んだ時に失神するか・・・」
「なぁシロ・・・やっぱり殴っていいかー?」
「いやダメですから。良くて頭蓋骨粉砕、普通で脳挫傷、最悪死にます」
「2/3で死なないなら大丈夫そうだなー」
「3パターンありますけど多分死にますから。死ななかったとしても大惨事ですから」
「そっかー・・・じゃやめとくー」
「エトナさんは強いんですから、そこ考えて下さいよ・・・」

お互いに昨日の熱すぎた夜の事は、記憶から捨て去りたいようである。
そして、それが不可能な事も知っている。ただ、それを認めたくない。

「「・・・・・・あぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」」

間に少々の会話を挟み、同時に溜息。
この流れが何度か行われた後。

「折角シャルクに来たんですし、何か見に行きましょうよ」

というシロの言葉で、ようやく二人は部屋を後にし、外へと歩き出した。



シャルクの昼は静か。といっても、夜と比較すれば、という意味でだが。
住宅街の東部はともかく、中央部、西部は中々に活気がある。

「行きたい所があるんだ」

外に出てから、話を切り出したのはエトナだった。

「どちらですか? 酒場? 劇場? それとも見世物小屋か・・・」
「ん、違う。ここ」

そう言いながら地図に指をさす。そこにあったのは。

「娼館・・・ですか?」
「そう。この街に来た時から、行こうと思ってたんだ」

街の片隅に佇む、小さな建物。
通りから逸れた場所に、それはあった。

「そうでしたか。確かに、僕じゃエトナさんを満足させられませんし。
 男娼の相場はよく分かりませんけど、銀貨10枚くらいで足り・・・」
「何言ってんだ。アタシはシロ以外の男とヤるつもりはねぇぞ」
「えっ?」

エトナが娼館を訪れる理由は、それ以外に想定していなかった。
それ故、他の可能性を考えるのに少し時間がかかったが、シロはもう一つの理由を見つけ出した。

「あっ、そっか。うん・・・お楽しみ下さい」
「・・・何だその顔」
「固定概念に囚われてました。エトナさん、両刀使・・・」
「いやアタシが女とヤる訳でもない! だからその気持ち悪い微笑みやめろ!」

エトナは知っている。
シロは賢い。しかし、その分普通の子供の感性とはそこはかとなくズレている。
その弊害として、時々突拍子もない方向に思考が飛ぶことがあるという事を。

「変な勘違いしてごめんなさい・・・」
「ま、買うには買うけどな。なぁシロ、この街に色々ある娼館の中から、何でここ選んだと思う?」
「うーん・・・分かりません。それに、買うっていっても、何の目的で」
「そんなん一つしか無いだろ」
「・・・?」



「3P、ヤろうぜ」



『3P』。そして、ここまでの会話の流れから考えると、答えは一つ。

(3・・・僕と、エトナさんと・・・)

それ以外の結論の出しようが無い。その事を理解した瞬間。

「・・・はいいいぃぃぃっ!!!???」

シャルクの昼に、一人の少年の声が木魂した。



色々と聞きたい事はある。そして物凄く慌てている。
その気持ちを出来る限り押し留めながら、シロは問う。

「いや、何でですか!? やっぱり僕だけじゃ・・・」
「違うって。シロの社会勉強。アタシは身体にも性技にも自信あるけど、折角だし」
「だからって行く必要無いですよね!? それに、エトナさんはいいんですか!?
 僕が他の女の人とセッ・・・やったとしても!」
「浮気は男の甲斐性だろ? そしてシロはそれだけの甲斐性がある。
 インキュバス化も進んでるんだし、ガンガンヤった方がいいって」
「流石に節操無しにも程があるでしょ! それじゃただのクズですよ!」
「前にも言ったけどシロは固すぎるんだよ。これでクズなら勧めたアタシもクズじゃねぇか」
「いやその・・・」

中々気は進まないが、貶した形になり、ここで言いよどんだ。
その瞬間を逃さず、エトナは切り札を持ってくる。



「二人がかりで、挟んだりできるぞ?」



「・・・ふぇっ?」

動きが止まる。
親からの愛情を受けられなかったシロは、女性の象徴である乳房に、強い欲求を抱いている。
そして、そこにインキュバス化の影響による性欲増進。これが乗算で加わる。

そのまま、エトナは畳み掛ける。

「4つのおっぱいに両側からチンコ包まれたり、フェラされながら乳首舐められたり、
 マンコに挿れながらキンタマ舐めてやったりとかは、流石にアタシ一人じゃできねぇ。
 けど、3Pなら普通に出来るぞ?」

雪崩れ込むように淫語が耳に入り、思わず下半身が反応する。
血液が一点に集まるのを感じ、無意識に股間に手が伸びた。

「確かに、シロが隠れて他の女とヤったりするのは嫌だ。
 けど、アタシはシロをとことん気持ちよくさせてやりたい。
 なら、好都合って訳だ」

鼓動が高鳴る。
もし、エトナに加えてもう一人、自分を快楽に誘ってくれる女性がいたら。

「それに、アタシはどんな女よりシロを気持ちよくさせてやれるって思ってる。
 間違っても、他の女に靡かせるつもりはねぇ。
 だからシロは安心して、ザーメン吐き出しまくって、好きなだけ気持ちよくなればいい」
「・・・あ・・・あう・・・」

陰嚢が疼きだす。身体は早くも、欲望に順応していた。

「その辺踏まえた上で。どうだ、シロ?」

このまま首を縦に振ってしまいたい。
そうすれば、最高の快楽が待つ楽園に行ける。

しかし、彼はほんの僅か、塵程に残った理性をかき集めて、問った。

「・・・エトナさんは、どうしたいですか?」
「へ?」
「エトナさんも、気持ちよくさせたいです。僕だけが気持ちよくなるなんて嫌です。
 ・・・エトナさんも、娼館で楽しめますか?」

一緒でありたい。独りよがりになんて、なりたくない。
誰もが全てを擲ってでも望む提案を蹴る程に、その気持ちは強かった。

(シロ・・・)

エトナは、オーガである。
オーガは、強い男が好きである。故に、基本的に子供は対象にならない。

自分の事より、他人の事の方が、いつだって大事。
全てを与えられても、相手を気にするという、心の強さ。
エトナがシロに惚れたのは、きっとこういう所なのだろう。

元より、シロが幸せなら、自分も幸せだから、何の問題もない。
しかし、恐らく今の彼が望んでいる返答は。

「そのケは無いが、女相手っていうのも出来ない訳じゃねぇし。
 アタシはめちゃくちゃ行きたい」

自分本位の欲望があるかどうかを、示す事だろう。

「分かりました。・・・行きましょう。行きたいです」

互いの希望が一致した以上、否定する理由はどこにもなくなった。
口の端を吊り上げ、ニヤりと笑い。

「今日夜8時、ココで」

それだけ言って、抱きしめた。
15/01/20 02:54更新 / 星空木陰
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■作者メッセージ
あけましておめでとうございます。遅いですねすいません。
第22話は次回への布石というか繋ぎと言いますか。
タグに「魔物娘いろいろ」とか入れるべきか悩み所ですが、一応このままで。

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