連載小説
[TOP][目次]
因縁のリターンマッチ
-椿ライン-

ヴァァアアアアアアア!!
ギュギュッ!

優「いいぞ!だいぶ乗りこなせてるじゃないか!!」
瞬「ああ!!お前のおかげだ!!」
優「貸しって事にしといてやるよ!!いつか返せよ!!」

椿ラインをハイスピードで流す白いFD
少し前まで見せていた迷いのある挙動は鳴りを潜め
安定したライン取りを実現していた


-駐車場-


セツナ「かなり上達してきたな。」
瞬「そうだな、やっとこのエンジンが本心を見せてくれたよ。」
セツナ「だが、前よりは走り方が落ち着いているが。悪く言えば面白みに欠けてしまうな。」
瞬「確かに、エンジン載せ変える前はかなりのオーバーアクションのドリフトだったからな。」
優「そうは言うが、タイムや走りの観点から見れば今の瞬のコーナーワークの方が大いに速い。」
エレナ「そういや、ドラッグスリックは履かねぇのか?」
瞬「スリックか…試してはみたんだが、挙動があまりにもクイック過ぎてな。今はまだスポーツタイヤで十分。」
エレナ「そうかい。」

Pppppp!

優「おっと、すまん。電話だ。」

突然の電話に3人は会話を止める

優「はい、もしもし?ああ、渉か。どうした?…なに!?ホントかそれ!?…ああ、そうなのか…。わかった、みんなにも伝えとく。」

p!

静かに電話を切り、携帯をしまう優

瞬「なにかあったのか?」
優「すぐに隆文とサリナを呼んでくれ。鶯のメンバー全員に大事な話がある。」
瞬「あ、ああ…すぐに呼ぶわ。」

そう言って瞬は、隆文とサリナを呼び出す為に携帯を取り出すのだった____


〜数十分後〜


優「…!来たな。」

ウォォオン!!
キッ!

隆文「何があったよ?話って?」

運転席のドアを開け、ワークスから降りながら隆文は問いかける
サリナも助手席側からドアを開けて顔を見せる

優「皆聞いてくれ。今渉とセルフィは、福島の湯の岳という峠にいる。…そこで…セルフィが負けたそうだ…。」
一同「…!?」

優の言葉を聞き、鶯のメンバーは唖然とする

瞬「うそだろ…?」
エレナ「…チィ…相手はどんなヤツだ!」
優「スタリオンというクルマに乗る、アルプらしい…。」
サリナ「…ッ!!」

サリナ(…まさか…!?)

優「その相手ドライバーは、再戦するならチームメンバーの誰でも構わないと、相手してやると…言ったそうだ。」

話を聞いたサリナは、1人呆然とする

サリナ(くッ…昔から変わってないわね…ユキア…。)

サリナ「そのクルマ、ただのスタリオンじゃないでしょ。」
優「!…確かラリーカーのレプリカと言っていた。何か知ってるのか?」
サリナ「この落とし前、全部私に任せてくれない?」
優「な!?」
瞬「!?」
隆文「…。」
セツナ「なぜだ?勝てる自信でもあるのか?」
サリナ「いえ…、ただ。ケリをつけたいだけよ。この腐った因縁に。」

そう言うと、サリナは隆文のワークスへと歩き出す

隆文「行くのか?」
サリナ「ええ、彼方も見届けて?」
隆文「…わかった。」
サリナ「…結果は報告するわ!」

最後に全員に向けてそう言うと
二人は車に乗り込み
駐車場を後にした

優「あいつ等…。」
瞬「大丈夫だろ、あの二人なら。」
セツナ「なぜそう言えるんだ?」
瞬「何でだろうな。長年の走り屋の勘かな。」
エレナ「勘かよ。」
瞬「ああ、勘だ。」

残されたメンバーは、走り去るワークスの背を見届けながら
静かに佇むのであった________




〜数日後〜


-福島県 水石山 山頂-


風によって草木が鳴らされ、虫の鳴き声が静かに響く駐車場
そこには一台の車が止まっていた

ユキア(やはり君が来ると思っていたよ、サリナ。)

そこへ登ってくる一台のヘッドライト
その光は徐々に近づき
次第にユキアとストリオンを照らしていった
そしてそこに現れた一台
それは…

ユキア「フフ…。ランサーエボリューションV…。昔と何も変わらない…。」

かくして駐車場で停止したエボVのドアが開かれ
二人の男女が顔を見せる

ユキア「久しぶりだね、サリナ。」
サリナ「ええ、何年ぶりかしらね。もう二度と会わないと思っていたわ。」
ユキア「フフフ…勝ち逃げなんて、僕が許すわけ無いじゃないか。」
サリナ「そうだったわね。やっぱり貴方は昔から何も変わってないわね。」
ユキア「お互い様じゃないか。」
サリナ「それはどうかしらね…。」

お互い、睨み合いが続く

サリナ「で、貴方の目的は?」
ユキア「目的?ハハッ…今更聞くのかい?そんなもの君もわかっているはずだろう。」
サリナ「あの時の再戦を果たそうっての?」
ユキア「いや…今は違うね…。僕は、君たちのチーム全員を倒す!そして、チーム鶯の前進を停止させる!…それが目的さ。かつて君が僕にしたように。」
サリナ「あれは貴方達が勝手にこっちに挑んできて負けたんでしょうに!!そこからしつこくけしかけて来たのは貴方のほうでしょう!!」

ユキアの言葉に声を荒げさせるサリナ
そこに佇むユキアはセルフィと対峙した時とはまるで別人のようであった

ユキア「フンッ…経緯はどうあれ君は僕達の顔に泥を塗った。今その借りを返す…!!」
サリナ「望むところよ!!ただし約束しなさい!!」
ユキア「ん…?」
サリナ「私が勝ったら、もう私にも私たちのチームにも、もう手出ししないで!!」
ユキア「フフ…ハハハ!!いいよ!!僕に勝てればの話だけどね!!…さて、話はこれくらいにして…早速始めようか…。」

三人はそれぞれの車に乗り込み
スタートラインへと移動する

サリナ「タカ、スタート合図頼んでもいい?」
隆文「ああ、わかってる。」
サリナ「それと…」
隆文「ん?」
サリン「私、絶対負けないから。」
隆文「…ハッ、んなこと言われなくとも、最初っからお前が勝つって信じてるよ。」
サリナ「…ありがとう。」
隆文「当たり前だろ。」

優しく微笑む隆文
サリナは嬉しそうに微笑み返すのであった

サリナ「…着いたわ、お願いね。」
隆文「あいよ、じゃあ…頑張れよ。」
サリナ「ええ、あ…ちょっと待って。」
隆文「ん?」
サリナ「…ちゅ…」
隆文「ん…。」
サリナ「じゃあ、行きましょうか。」
隆文「ああ!!」

二人は密かにキスを交わし
それぞれの持ち場につくのであった_______












15/06/24 04:11更新 / 稲荷の伴侶
戻る 次へ

■作者メッセージ
どうも、稲荷の伴侶です。

今回はサリナをメインとして扱いました。
今まであまり登場してなかっただけにかなり無理やり感があるかなぁと思いますが、あしからず…汗

次回、下り一本のデスマッチ

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33