連載小説
[TOP][目次]
下り一本のデスマッチ
水石山の頂上、そこに2台の四輪駆動車が並ぶ
1台は特徴的なイエローのスタリオン ラリーカーレプリカ
もう1台は紺色に塗装されたランサーエボリューションIII
静かにアイドリングする2台からは、並々ならぬ闘気が溢れている

隆文「それじゃあカウント行くぞ!!」

2台の間に立つ男が叫ぶ

5!!

ウォン!!ウォォン!!

4!!

ウォォォォン!!キュルル!!

3!!

ウォォン!!

2!!

ウォォォォ!!

1!!

GO!!!!

ギャアアアアア!!!!

2台が一斉に四輪でアスファルトを蹴りあげ、スキール音を盛大にあげながら走り出すのだった

ユキア「さぁて、まずはその走り、見せてもらおう!」
サリナ(…。)

スタリオンはセルフィのセリカとのバトルの時と同じように、エボIIIの真後ろにスッと入り込む
対してエボIIIはトラクションを活かしてグイグイ加速していく
そして第一コーナーに差し掛かり、盛大にアフターファイヤーを吐き出しながらブレーキングに入る

サリナ(ホントに昔と変わらないわね…そのスタイル。相手を観察しながらジワジワとプレッシャーをかけていく…。ホンットに性根が腐ってるわ…。)

サリナは路面の荒れた狭いコーナーをものともせずにアクセルをガンガン踏んでいく
ユキアもまた負けず劣らず、アクセルを開けながら繊細に曲がっていく

サリナ(あら、前よりも上手くなったわね…。昔はマトモに踏めなかったクセに…。)
ユキア(フフ…昔の僕であったなら、このコーナーですら君との間に差がついた。でも今ならついて行ける…いや、確実に勝てる!)

コーナーを立ち上がり、2台が加速に入る
パワーではエボIIIに勝るスタリオンはエボIIIのテールにベッタリと張り付く

ユキア(引導を渡してあげるよ…君に!!)

2台は次のヘアピンへと差し掛かる

サリナ(ふん…。)

エボIIIは僅かなギャップをわざと大袈裟に拾いながらアクセルを開けて回転あげ、大胆な四輪ドリフトを繰り出す

ユキア(…!?)
サリナ(ここの路面はあまりにも荒れてるわ。だから、ギャップ一々探して避けるよりは利用した方が得でしょ?)

サリナの豪快さに一瞬言葉を失うユキア
エボIIIは尚もギャップを拾ってはドリフトに持ち込む

ユキア(車体を跳ね上げながらも狙ったラインを外していない…!?昔とは違う…くっ、こんなにも大胆にこの峠を攻略するとは思いもしなかった…!)

ユキアはギャップを避けるラインをあらかじめ描く走りをしているがため、正確さはあっても走行ラインの制約の違いから僅かにエボIIIの差となってしまう

サリナ(ちょーしにのんなってことよ。四駆乗ってんならちまちま走らないで派手に来なさいよ!私だって昔と同じと思ったら大間違いよ!!)

ドリフトを正確にピタッと止め、立ち上がるエボIII
次のコーナーもまた、ギャップを拾い
跳ねた車体を安定したドリフトに変えていく

サリナ(私がギャップを拾う理由はもう一つあるのよ?)

そのままコーナーを抜けるごとに少しずつ差が開いてく
そして、コーナーのど真ん中にある大きな陥没をアクセル開けてイン側のフロントタイヤをスルリと浮かしてまたいでいくエボIII

サリナ(それはね、アクセルが開けられることよ!)

狭くうねったS字コーナーをアクセルを開けたまま振りっ返していく

サリナ(私はターボラグが大ッ嫌い!だから、いつだってブーストを全開で出せるようにアクセルを開けられる走りをするのよ!)

コーナリング中にも関わらず4G63が大きく唸りをあげ、タービンへと盛大に過給を続ける
常に最高までに上げられたブースト圧は、立ち上がりで大いにその役割を果たし、エボIIIは爆発的に加速するのだった
そしてバトルは中盤を過ぎ、ユキアは既にサリナの走りに圧倒されつつあった

ユキア(…ボクだって…昔とは違う…。)

コーナーを立ち上がっていくエボIIIを見つめる
その目つきが徐々に変わってゆく

ユキア「ここでやられてたまるかァ!!」

ユキアの怒りの咆哮と共にスタリオンが大きく唸る
次のコーナーへと突っ込むエボIIIとの差を一気に縮める程の加速をし、そのままブレーキングドリフトで突っ込んでいく

ユキア「ウアァァァ!!」

コーナーの後半で僅かな路面のギャップを拾い漁りあさっての方向へ向きかけるスタリオン
ユキアはそれをものともせずハンドルを振り回し、さながらバーサーカーのような状態でスタリオンをいなす

サリナ「…!?バカじゃないの!?」

前を行くサリナも、そのスタリオンの異常な動きに気づき、焦りを覚えるのだった

ユキア「ボクは負けないィ!!お前なんかに負けないんだァァァ!!」

ユキアは我を忘れて叫びながらも、スタリオンを振り回してはいなし
エボIIIにビッタリと張り付く
そして次のヘアピンに差し掛かり
バトルはいよいよ最終局面を迎える

サリナ「はっ…!?」

エボIIIの横にはスタリオンがスレスレで並んでいた

サリナ(…貴方やっぱりどっかぶっ飛んでるわ…。でもね…私だってこのぶっ飛んだ世界で揉まれてんのよ!)
サリナ「だから貴方には絶対に負けられない!!」

2台のブレーキングの一発勝負が幕を開けた
2台が同時にブレーキングを始め、イン側を取ったスタリオンはエボIIIなどお構いなしにドリフトに入る
対してエボIIIも一歩も譲らずに車体をスタリオンに押し付けながらもアウトラインを駆け抜ける

ユキア「邪魔だアァァ!!」
サリナ「貴方なんかぁぁぁ!!」

そのまま互いに並んだままヘアピンを立ち上がり、姿勢をいなしたスタリオンはエボIIIの車体を何度も打つ

サリナ「ここで終わりよ!!」
ユキア「なァっ!?」

そのまま連続した左コーナーに入り、インを取ったエボIIIの車体が前に出る

ユキア「バカなァ!?」

ユキアが無理矢理アクセルを踏み込む
それにより、スタリオンは膨らみ
ガードレールにテールをガリガリと押し付けてしまい、大幅に失速する

ユキア「うぐゥっ!!」
サリナ「貴方の"負け"よ!!」

障害がなくなったエボIIIはスルリとスタリオンの横を抜け出し、颯爽とゴール地点を通過するのだった

ユキア「は…ぁ…あ…。」

ユキアは小さく絶望の喘ぎを吐き出しながら、消えていくエボIIIを眺めるしかなかったのだった_________



15/10/28 20:56更新 / 稲荷の伴侶
戻る 次へ

■作者メッセージ
どうも、お久しぶりです。稲荷の伴侶です。

ネタがない…。そして疲れました…。(;´Д`)
でも書きたいのでまだまだ続けます(苦笑)
こんな自己満足SSを読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m

次回、息抜き3 無茶は禁物!?

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33