★セイヤード★
★ダイヤ視点★


｢煌羅、ここが運送屋の町セイヤード？｣
｢はいお嬢様、親魔物領の物流拠点の一つで、陸路はケンタウロス属が周辺の村や町に物資を運び、海路は船で遠くの町やジパングまで運びます｣
｢だから物置場が多いのね｣
｢この町はケンタウロスが多く、妻が荷物の運搬、夫が荷物の管理、夫婦で仕事をしています｣
｢夫の方は楽だよね？｣
｢そうとも言えませんよ。あそこにいるケンタウロス夫婦を見てください｣


｢何荷物を落してるんだい！あんたそれでもあたしの夫かい！｣
｢ごめんよ、箱が大きすぎて……｣
｢まったく、双方の親の紹介だから結婚したけど、こんな様じゃ今夜の配達に間に合わないよ。わかってるね？今日は年に一度の大事な日だってこと｣
｢わかってるよ……｣


｢前言撤回、夫が苦労してるわね｣
｢ケンタウロスは誇り高き種族ですからね。さらに夫の大半が他の町から婿入りしたため、発言権が無いのでしょう｣
｢……愛する夫をこき使うなんて、愛の無い町ね｣
｢それは違いますよお嬢様。ペルシは言ってました、この町は愛を分け与える町だと｣
｢ペルシって？｣
｢昔の知り合いですよ｣
｢知り合いって、ヘルスヘルにいたキタと同じーー｣

台詞が途切れた。
何故なら、向かいからケンタウロスが走ってきたからだ。


｢煌羅、ケンタウロスが走ってくるから避け……煌羅？｣

煌羅が脱兎の如く飛び出し、拳を振りかざし、

ケンタウロスも拳に力をこめ、

互いの拳がーー寸止めで止まった。

｢腕は落ちてないようだな｣
｢ペルシこそ見事です｣
｢ほぅ、お前が相手を認めるとはな……昔のお前なら何かと食い付いてーー｣

｢煌羅！｣

｢煌羅？｣
｢煌羅、約束を忘れたの？私の為以外に暴力を振るわないって……｣
｢お嬢様、これは挨拶です。互いに拳を交わすという私達独自の……キタの時は公共の場でしたのでやりませんでしたが……心配させたことをお詫びします｣
｢もう、煌羅がまた大怪我をしたらと思うと……｣
｢煌羅……成る程そういう事か。すまないお嬢ちゃん、余計な心配を掛けてしまって、えーと……｣
｢ペルシ、この娘の名はダイヤ、私の主です｣
｢主？……そういえば煌羅はキキーモラだったな。ワタシの名はペルシ、煌羅の知り合いだ｣


｢おーい、ペルシ｣

男の人が駆け付けてきた。

｢いきなり走りだして驚いたよ｣
｢すまないシュロン、昔の仲間の気配を感じてな｣
｢初めまして、夫のシュロンです。サジタ運送で働いています｣
｢キキーモラの煌羅です｣
｢バイコーンのダイヤよ｣
｢バイコーン、ペルシと同じケンタウロス属か……お嬢ちゃん、ここの町は初めて？｣
｢ええ、煌羅と旅して二年になるけど、セイヤードに来たのは初めてよ｣
｢なら運がいい、今日はセイヤードで一番特別な日なんだ｣
｢特別な日って？そういえば他のケンタウロスも今日は大事な日だって言ってたけど｣
｢今日は聖夜、町の子供達にプレゼントを届ける日さ｣

★

｢ダイヤちゃん、見てごらん、大きな籾の木だろ？｣
｢うわーおっきい、流石聖夜ね｣
｢飾り付けも拘ってますね。性夜が特別な日であることが頷けます｣
｢まさか煌羅の口から、そんな言葉が出るとはね｣
｢ペルシ、私は純粋に性夜のツリーを褒めただけです｣
｢シュロンさん、この町では聖夜の日に何をするの？｣
｢ここでは玩具といった子供達が欲しい物を夜のうちに運んで、次の日は休暇をとるんだ｣
｢ということは聖夜のうちに仕事を終えなきゃいけないの!?｣
｢大変だけど、仕事が終わった後の事を考えれば苦じゃないさ｣
｢シュロンさん……性夜最高という言葉が顔に書いてますよ｣
｢流石キキーモラ、鋭いな｣
｢キキーモラでなくてもバレバレです。ね、お嬢様？｣
｢うん、シュロンさんは子供達の笑顔のためなら聖夜なんか辛くないって顔をしてる｣
｢……お嬢様はまだまだ子供ですね。子供は子供なりに性夜を楽しみにしてください｣
｢煌羅……何か私おかしなこと言った？聖夜のことで？｣
｢いいえ、間違っていませんよ。今日は性夜ですから｣

｢うん、聖夜よね｣
｢はい、性夜です｣

｢……｣
｢……｣

｢……聖夜｣
｢……性夜｣

｢……聖、夜｣
｢……性、夜｣

｢聖………夜｣
｢性………夜｣



｢やっぱりおかしいよ！｣
｢ﾜ-ﾋﾞｯｸﾘｼﾀ-｣

｢その驚きもおかしいよ！さっきから私が言う『聖夜』と煌羅が言う『セイヤ』が違うゎよ！｣
｢そうですか？私が言う『性夜』とお嬢様か言う『聖夜』のどこが違うのですか？読みですか？発音ですか？｣

｢まず字が違う！それに私の『聖夜』は聖なる感じがするけど、煌羅の『セイヤ』は卑猥な感じがするゎ！｣
｢聖なる漢字と卑猥な漢字ですか、確かに『聖夜』と『性夜』は漢字で書くとそうなりますね｣

｢今度は字が違う感じかする！｣
｢流石お嬢様、そこに気付くとは。大人の階段をまた一歩上りましたね、猥談はまだまだですが｣

｢やっぱり猥談か！｣
｢話を切り替えて、懐かしいですね、子供達へのプレゼント｣

｢強引に切り替えやがった……｣
｢お嬢様もスターシャンにいた頃は兄やマリア様達からプレゼントを貰ってましたね｣
｢……まあね。兄貴や義姉ちゃん達からプレゼントを貰っていたわ、教会のパーティーの一貫でね……｣
｢何やら不満そうですね｣
｢別に不満じゃないわよ。魔王城にいたときもお母様やお父様、ハラーンにフォーバといった多くの花嫁達が私のためにパーティーを開いてくれたし……二次会は乱交付きだったけど｣
｢流石パール様です。娘と同時にハーレムにもプレゼントをあげるとは｣
｢そういえばお母様や兄貴達からプレゼントを貰っていたけど、煌羅からプレゼントを貰っていなかったわよね？｣
｢……言われてみればそうですね。私はお嬢様からプレゼントを貰っていたので気付きませんでした｣
｢プレゼント？私は煌羅に何もあげてないけど？｣


｢大変だ、シュロン、ペルシ、親方がっ｣

別の男の人が慌てて私達の所へ走ってきた。

｢どうした？親方に何かあったか？｣


｢親方が、急に倒れて、動かなくなった……｣


★サジタ運送★


｢イテテ……腰が｣
｢ぎっくり腰ね｣

｢ぎっくり腰かよ！｣
｢お嬢ちゃん、大声を出さないの！｣
｢ツッコミを入れてごめんなさい、ユニコーンのお姉さん｣
｢全くこれだからバイコーンは……一応治療はしましたが、今夜は安静にしてくださいよ｣

｢何ぃ、ばかもん、今日は何の日かわかってるだろ、子供達が待ってるん、たっイテテ｣
｢ほら、私の夫といえ特別扱いはしませんからね｣
｢畜生、こんなにプレゼントを用意したのに……なぁせめて半分だけ？｣
｢半分でも駄目です。というより親方は毎年半分以上運んでいるじゃありませんか｣

｢こんな量を半分も!?｣
｢お嬢ちゃん、声が大きい！｣
｢ごめんなさい……｣

｢はっはっは、元気なバイコーンだ、コニーもバイコーンに堕落すれば少しは元気になるぞ？｣
｢麻酔打ちますよ？｣
｢ごめんなさい……はぁ、今日に限って腰を痛めるとは代々続けてきたサジタ運送の看板に泥を塗っちまうよ｣

｢親方、その荷物全部僕とペルシで運びます｣
｢シュロン、お前がか？｣
｢僕を育て上げ、一度故郷を離れたペルシを受け入れてくれた親方への恩返しです｣
｢お前一人でこの量を？｣
｢シュロンだけじゃないさ、ワタシもいる｣
｢ペルシ……｣

｢オレも手伝う｣
｢あたしも｣
｢俺も｣
｢アタイも｣

他の夫婦も賛同する。
それを見た私も手を上げる。

｢あの、私も手伝わせてください｣
｢部外者であるお嬢ちゃんかが？｣
｢私も子供の時にお母様や兄貴達からプレゼントを貰ったから、今度は私が子供達にプレゼントを配りたい｣

｢ダイヤちゃんが？子供にはちょっと……｣
｢シュロンさん、私はこれでも二十歳よ｣
｢え、そうなの、胸が小さいからてっきﾘｯ！｣
｢小さい言うな！｣
｢シュロンを角で突くとは、度胸はありそうだな｣
｢流石お嬢様、自ら進んで協力とは、私もお手伝いさせてください｣
｢メイドの方は……実力はありそうだが、その手の傷は何だ？誰かと喧嘩したのか？｣
｢これは家事でつけた傷ですが？｣
｢ふーん、一応嘘はついてないようだな。そんなに睨むな美人が台無しだぞ｣

｢親方、早速準備を｣
｢待て、まだ許可を出してねえ！そもそもお前達だけで全て運び終えるとは思ってねえ！｣
｢親方……俺達だけでは力不足ですか？｣
｢そうだ、だから近くの船に連絡してプレゼントの運搬を依頼する、お前達は残りを運べ！｣
｢はいっ、親方｣


★サジタ運送・更衣室★


｢お嬢様、似合ってますか？私のサンタ服？｣
｢……ええ、似合ってるわ｣
｢具体的には？｣
｢赤の生地に白いふわふわボタン、ミニスカート風だから、綺麗な足と脇まで見えるわ｣
｢アラクネ特製生地なので防寒対策はバッチリです｣
｢へぇーそれはよかったね｣
｢お嬢様も似合ってますよ｣

｢トナカイ姿♪｣


｢何で私がトナカイなのよ！｣

｢仕方ないさ、ケンタウロス属はトナカイに扮してプレゼントを運ぶのがセイヤードの風習だからな｣
｢ペルシも似合ってますよ｣
｢煌羅、それ褒めてる？｣

｢ダイヤちゃん煌羅ちゃん、準備が出来たら倉庫へ向かうよ。聖夜用のソリがあるから｣
｢はい、シュロンさん｣


★サジタ運送・倉庫★


｢このソリ、氷で出来てるの？｣
｢ダイヤちゃん鋭い、プレゼントを渡し終えたら適当な場所に置いて溶けるのを待つんだ｣
｢帰りはどうするの？｣
｢帰りはワタシがシュロンを背中に乗せるのさ｣
｢何でそんな面倒なことをするの？｣
｢お嬢様はまだまだ子供ですね。いっそ貰う側に回ったらどうです？｣
｢むっ｣
｢煌羅の毒舌は昔と変わらないな。訳は後で判るさ。おっと出発十分前だ、行くぞ皆｣

★

｢荷物を全て載せたことを確認。お嬢様は安全のため前方を見て後ろを振り向かないように｣
｢判ったわ｣


｢皆、出発だ！｣

ペルシさんの掛け声と共に私はソリを引き始めた。

｢あれ、思ったより軽い？プレゼントを沢山乗せたのに？｣

私は前方を見ながら綱を引きずる。

背後から歌が聞こえてきた。

★★★

にほーんづーのの、バイコーンさーんは♪

いーつもみーんなの、こんやのおかず♪

ﾊｧﾊｧ、ﾊﾞｲｺｰﾝﾁｬﾝﾊｧﾊｧ、ｼｺｼｺｼｺｼｺ、ｳｯﾋﾟｭｯﾋﾟｭｯ♪

でもーそのとーしの、クリトリスのひ♪

サンタのおにいーさんは、いいました♪

そのにほんづーのに、デコレーション♪

トナカイのつーのに、はやがわーりなのさ♪

おおきなつーのの、バイコーンさーんは♪

おおきなちーんぽを、まんこにいれました♪

まんこにいれました♪

ｱﾝｱﾝ、ｱﾅﾀﾉｵﾁﾝﾎﾟ、ｷﾓﾁｲｲ♪

ｷﾐﾉｵﾏﾝｺｻｲｺｰ、ﾊｧﾊｧ♪

ｵﾂｷﾞﾊ、ｱﾀｼﾉｳﾏﾝｺﾆ、ｲﾚﾃ♪

ｲｲﾖ、ｺﾝﾔﾊﾀﾉｼｲ、ｸﾘﾄﾘｽｩ♪

こんやはたのしいークーリートーリースー♪


｢振り向いたら負けよ……子供達のためにも我慢するのよ、私……｣


★孤児院★


｢はぁ、大して引っ張ってないのに疲れた……｣

｢わーいサンタさんだ｣
｢トナカイさんだ｣
｢プレゼントだ｣

｢ハイハイ、順番にね｣

私と煌羅が子供達にプレゼントを渡す。

｢お嬢様、次行きましょう｣
｢そうね｣

｢あれ？サンタさん、どうしてソリ毎担ぐの？｣
｢重くないの？｣
｢トナカイさんのため？｣

｢煌羅、まさか私に負担をかけないために……？｣
｢振り向かないで、前方不注意ですよ｣
｢そうね、行くわよ煌羅｣
｢了解です、お嬢様｣

｢｢｢また来てねー｣｣｣


★夜明け前★


｢やっと終わった｣
｢ええ、大分軽くなりましたね｣
｢ところで煌羅、さっき聞きそびれたけどさ、私はいつ煌羅にプレゼントを渡したっけ？｣
｢いつもお嬢様から貰ってますよ｣
｢いつも？｣


｢お嬢様と出会えたことが、私にとっての最高のプレゼントです｣


｢そっかありがとう煌羅。愛を分け与える町。その意味が判った気がする。今日は最高の聖夜よ｣
｢お嬢様聖夜は昨日で終わりましたよ｣

煌羅は夜明け前の空を指す。

｢今は……星夜です｣
｢夜明け前の星空か｣

★

｢そういえば、ケンタウロスが夫を背中に乗せて帰る理由は？｣
｢ケンタウロスは夫を背中に乗せて走ることで夫の温もりを感じ興奮するのです。そんな状態でサジタ運送着く頃には……ほら｣


｢シュロンのちんぽ気持ちいい！｣
｢ペルシの人まんこ最高！｣

｢結局エロオチかよ！｣


★続く★

■作者メッセージ
　夜遅く失礼します。
　ドリルモールです。

　クリスマス話第一弾。
　何とか間に合いました。
　今回のダイヤと煌羅の漫才、妄想ヶ原様の話のとある庶民派ワイトさんが言った『性夜』がヒントになりました。
　妄想ヶ原様、ヒントを下さって、この場を借りて礼を言います。

　また次回。



★



キャラクター紹介
【名前】ペルシ
【性別】女
【年齢】秘密だ
【種族】ケンタウロス
【容姿】凛々しくも美しい美女
【口調・口癖】真面目
【能力・特技】運搬
【概要】
　サジタ運送で働くケンタウロス。

　夫シュロンとペアで物資の運搬を行う。

　聖夜での子供達にプレゼントを届ける仕事を無事に終えて、夫とともに性夜を向えた。

　煌羅とは昔からの付き合いで、昔は煌羅とよく喧嘩していた。

【補足事項】
　かつては上半身甲冑を纏うという怪しい格好をしていたことは黒歴史。