読切小説
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友人の嫁がスゴくて、困ってるんです。助けて下さい。
「おーう、久しぶりー」
「髪切った?」

俺は、三ヶ月ぶりにとある友人に会っている。
聞けば、その会わない三ヶ月の間に嫁さんをもらったらしい。

祝いの言葉を掛けようと、今回、一緒に飯を食いに来たのである。

俺は友人の背中をバシバシ叩きながら、

「こーの、果報者め!!」
「祝ってやる(笑)」

などと他愛ない話を振る。

俺は下世話ながら、夜の方は大丈夫か、などと話を振る。
友人は、嫁は魔物娘だと言った。

へぇーっと感心した。
女の気配が全くなかった友人だったのに、そんなことに。
いや、女の気配が無いからこそ、魔物娘と結婚できたのだろうか。

会話しながらの食事も大分進んだ頃、ふと友人の嫁さんがどんな人なのか気になった。

「ところで、お前の嫁さんてどんな人?」
「うん? そーだな、嫉妬深くて、独占欲強くて、どこにでも付いてくる」
「......凄いな」
「だろ、どこ行くにも一緒なんだ、今日も付いてきたし」
「.............................どこにいるの?」

数十秒の沈黙の末に言葉を絞り出す。
まさか、遠目からずっと見られているのだろうか。
そして、その疑問を口に出す。

「まさか、遠目からずっと見てんの?」
「全然? この場にいるよ?」
「どこ?」

「ここに」

と言って、友人は着ているタートルネックのセーターを捲くりあげる。
その下に『いた』嫁さんと視線が合い、俺は「ひっ」と悲鳴を上げた。

友人の嫁さんは、友人の肌着のように素肌に巻きついていた。

「こんにちは〜」

呑気な嫁さんと挨拶。嫁さんは一反木綿だったのだ。

あんまりな外出方に、パクパクと口を開け閉めしかできない俺。

友人は捲くりあげたセーターを戻す。

ここでまともに声が出せそうだった。

「なんつー方法で外出してんだ......」
「いいじゃないの、俺たちがどんな方法で外出しようが、ハハハ」

コップの水を飲みながら苦虫を噛み潰したような感覚の俺。
慣れきった様子の友人の、温度差は凄まじい。

「...それでさ、下半身もふんどしみたいに巻きついててさ」
「わーわー!! 聞きたくない!! 聞きたくない!! ヤメロ!!」

再びパニック状態に陥る。
これほどSAN値を削るノロケ話が今まであっただろうか。いや、ない。

SAN値がガリガリ削れて、弱っている俺の目の前で、友人が「ひぅっ!!」と声をあげる。

「今度はどうした?」
「嫁が鎖骨をペロペロ舐めてる......」

.........。
このタートルネックの下で何やってんだ......。

「痛いっ!! 今度は乳首に歯を立ててきた!!」

往来でやめてくれ......。
さっきからジロジロ見られてるんだから......。

養豚場の豚を見るような目で見られているのだが、気づいてない様子の友人。
友人はバッと立ち上がった。

「スマンが今日はここで失礼させてもらう。嫁が発情状態になったみたいでな......痛い!!」

最後に悲鳴を上げ、ダダダダッと走り去っていく友人だった。
......立つ鳥跡を濁...しまくりで、代金を払っていかなかった。
変わらず、俺は引き続き、変な目で見られている。

逃げるように勘定を済ませに行く。

どうしてこうなった...。

SAN値がガリガリ削られたためか、俺の足取りはおぼつかなかった。
16/04/24 21:20更新 / 妖怪人間ボム

■作者メッセージ
ドーモ、妖怪人間ボムです。

一反木綿ちゃんを見て、真っ先にこのネタが思いついたのですが、
なんか思った以上に話を膨らませられず、この字数。
許してください......

一反木綿ちゃんとは、同じ誕生月ということで、今後も書いていくかもしれません。
ですが、あまり期待しないでください、お願いします。

次回作はどうなるか構想中ですが、ぶっ飛んだ話になるかもとだけ予告しておきます。
それでは次回もよろしくお願いします。

いざ、さらば。

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