読切小説
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魔物娘のしたいされたい
「あーあ、彼氏ほしいなあ……」
「ま〜た始まった〜、でもそうねぇ〜、彼氏ほしいわねぇ〜」
「うん……ほしい……」

「んもう、私を彼女にしてくれる人がいるなら、あんなことでもこんなことでも、何でもシてあげるのにぃ」
「ふわぁ……な……なんでも……?」
「おぉ〜? 具体的にはどんなことをしちゃうおつもりで〜?」
「んーと、そうねえ、具体的に、具体的にかぁ」

「……そう、まずは私の自慢の『誘惑の魔法』をかけまくってあげたい!」
「それって〜、してあげたいっていうより、ただあんたがしたいことのような〜」
「シャラップ! 細かいことはいいの!」
「……じゃ、じゃあ、『チャーム』が強力になるような魔法のアクセサリーとかをいつも集めているのはそのため?」
「そうよ、でもそれだけじゃあないわ、その『チャーム』を無意識にたくさん垂れ流せるようにまっずい精補給剤だって飲んでるし、いざ、お相手に直接かけるための『テンプテーション』だってすっごく効くように色々頑張っているんだから」

「いい? そんな私の『誘惑の魔法』をお相手さんにがっつりたっぷり浴びてもらうのよ」
「う、うん……」
「ふむ、それでそれで〜?」
「『誘惑の魔法』すなわち、私の魅力に気付いてもらう魔法、どんどん私のことを好きになってもらうの、顔つき体つき、もっと細かく、目とか鼻とか口とか、胸にお腹にお尻、どんな小さい好きでも漏らさず気付いてもらって、好きで好きでいっぱいにするの!」

「心はまだ出会ったばかりだろうけれど……いいえ、そんなことが気にならなくなるくらい愛の言葉をささやいて、心だって誘惑して好きで染め上げて見せるわ!」
「……誘惑……いいなぁ……」
「ほう〜、ほほう〜」

「それでねそれでね、もうおめめハートマークで好き……好きぃ……としか言えなくなるくらいにメロメロトロトロに出来たらね、ぎゅ〜って抱いてあげるの、頭を私のお胸に押し付けてムニュムニュパフパフしてあげちゃう!」
「うわぁ〜、その胸で、お相手さんダメになっちゃうねぇ〜」
「……胸……うう……ボクだってぇ……」

「ああ……私に全てをゆだねたふわふわの表情で見上げられるところを想像するだけでお胸キュンキュンしちゃう……『メルティキッス』をかけた手で頭なでなでしながらお胸にぎゅうぎゅうムニムニ……ううん、私の胸キュン聴かれちゃう」
「……お〜い、アンタまでダメになってどうするのよ〜」
「……いいなぁ……トロトロにしてあげたいよぉ……」

「ふふ、うふふふふ、いよいよ完堕ち確認、準備万端となったなら、ああ、初体験! 私も初めてだけど頑張るわ、魅了と陶酔の中でとろけるような甘々スローセックスを……」
「あ〜、その辺でストップストップ〜、長くなりそうだしそこまで〜」
「むー、なによう、ここからがいいところなのに」
「まあまあ〜、それにほら、本番のガチ描写まで始めたらこの子が爆発するから〜」
「はふぅ……はふぅ……本番……魅了トロトロセックス……ふわぁ……ふわぁ……」
「む……そうね、しょうがないみたいね……必殺! 戻ってきなさいデコピン!」
「ふぎゅ!? …………ふわぁ?」



「……さて、落ち着いたところで、お二人はそういうの何かないの?」
「ええ〜、あたしら〜?」
「ん……ボクも……?」
「この際、してあげたいことでも、逆にされたいことでもいいけれど、いいところで止めたんだから教えなさいな」
「そりゃいろいろあるけど〜、急に言われると、どれがいいやら〜」
「……うう……」

「……うん、あたしは添い寝がしたいかな〜」
「添い寝……?」
「んん? それはヤりあえば普通にするんじゃ……ああ、エロいの抜きでってこと?」
「そ〜そ〜、エロいことも〜、もちろんしたいけど〜、それはいったん置いてとことんイチャイチャゴロゴロしたいのよ〜」

「ふかふかモフモフのベッドの中で〜、愛しの彼とゆる〜く抱き合ってぬくぬくするの〜」
「うーん、絶対幸せね、それ」
「ぬくぬく……いいなぁ……」

「お互いの体温でいい感じに暖かくってぽわぽわうとうと〜、体をすり付けてみちゃったりして〜、ふふ、その時に彼のにおいを思いっきり吸い込んでみたりしたり〜、頭くらくらしちゃいそう〜」
「そんなことしたら私、辛抱たまらなくなるわ」
「……ッ! ニオイ……ニオイ……嗅ぎたい……」

「それでねぇ〜、もうふわっふわに眠〜くぅ〜、気持ちよ〜くなってぇ〜、意識落ちる寸前にぃ〜、お先にスヤァしちゃった彼の寝顔なんてぇ〜、見れたらぁ〜、あたしもぉ〜……夢の世界にぃ〜……つい……てっちゃう……」
「……あ……寝ちゃった……?」
「…………戻ってきなさいデコピン!」
「あだぁ!?」



「あはは……まぁ〜あたしのはこんなものかな〜」
「まあ、らしいっちゃらしいわ、それじゃあ……」
「……あ!? え、えっと……あ、あの……さ……そ、添い寝なら、医療魔法とか、覚えたりしないの……?」
「ん〜? 医療魔法っていうと……グレイリア・サバトのところの寝療行為ってヤツ〜? そりゃ覚えられれば健康に良くて、添い寝の気持ち良さも倍増だろうけどね〜」
「あそこは本気で人を治してあげたいって娘が集まるところだからね、覚えたい理由が彼氏と添い寝したいじゃあねえ?」
「間違いなく〜、動機が不純ってことで断られるよねえ〜」
「そっか、残念……そうだ、お出かけでもしない? せ、せっかくだから、アクセサリーでも見に行こうよ……」

「……それもいいけれどさ、誰かの番がまだじゃなかなー?」
「あ、あう……」
「ほれほれ、あなたがグッとくるシチュ、白状なさいな、友達でしょー?」
「ちょいちょい〜、無理強いは駄目だよ〜、あんまりしつこくしたらかわいそうだよ〜」
「えー……まあ、そうね、ごめんね、調子に乗っちゃったわ」
「……ううん、ボ、ボクも言うよ」
「ええと、無理はしなくていいのよ? 大丈夫?」
「うん……だって、友達だもん」
「あーもう、貴女って子は、可愛いこというんだから!」
「え、えへへ……」
「ユウジョウ!」「ゆ、ゆうじょう……」
「盛り上がっているお二人ですが〜、これ、エロ話をするしないの話なのである〜」



「えっとね……ボクね……彼氏ができたら……ボ……ボク……その……は、裸……見てほしいの……」
「裸? それもやっぱりヤる時に見られるんじゃ」
「ん〜と、あたしみたいに〜、それ単品でってこと〜?」
「違うの……その……エ、エッチもしたいんだけど……その前にたくさん見てほしいの……僕の体……じっくり、じっくり、ずっと見てもらって……それから好きなところを触ってほしいの」

「全部……見てもらうの……好きなところをじっと……お胸でもお尻でも……も、もちろんアソコでも……どこでもいいの……頭でも……足でも……脇……手のひら……おへその穴……見られちゃうの……うああ……み、見られたところゾクゾクしちゃうのぉ……」
「オ〜ウ、これはこれは〜」
「可愛い顔しといてホンマモンですわコレ」

「そ、それで……それでね……いっぱい見られて……いっぱいゾクゾクしたところを、さ、触ってもらって……ボ、ボクの体の、ゾクゾクしたところをいっぱい触ってもらったら……あぁ……ボク……ダメになるぅ……」
「ああ〜、これはしばらく止まりませんね〜、デコピンいっとく〜?」
「……フ、いいさ、付き合ってやろうじゃないか、その欲望、解放しろ」
「なんのノリよ〜……あたしは寝とくわね〜」



「ああ……ボク……全部しゃべっちゃったよぅ……恥ずかしい……」
「まさかそこまでできるとは……恐ろしい子ッ!」
「……んが? 終わった〜?」
「なかなか濃ゆい願望だったわよ……あー、彼氏がいればなあ、彼氏が欲しいなあ」
「あらら〜、ふりだしに戻っちゃったよ〜」
「……あう」

「もうさ、彼氏ができるなら私ら三人まとめて貰っていただいてもいいのになー」
「まあね〜、あんたらなら一緒でも文句ないわね〜」
「うん……ボクも平気……」

「ね、その時は今までのシチュエーション、それぞれ全部、試してみるのもいいかもね」
「ん〜、それってあたしらも〜」
「……魅了して……添い寝して……裸見てもらう……」
「そう、一人一人、順番に、ふふ、私が添い寝とかどこまで耐えられるかしら、そのあとが激しくなっちゃいそう」
「うわ〜、裸見られまくるのか〜、うわ〜、め、目覚めちゃいそう〜」
「……魅了する……トロトロにする……頭ぽわんぽわんにしてメロメロに……」



「ふふふふふ、そうして一人三シチュ、じっくり楽しんで一周したら、今度は三人同時に同じシチュで……ああ、それもこれも彼氏がいれば……って!? 嘘! この気配!」
「どした〜? ……ぬお! まじか〜」
「……ッ!!!」

「近くにいるわね、男、間違いなく独身」
「うん、わかるよ〜、あたしにも気配がわかる〜」
「男の人……男の人……ああ……いる……近くにいるよぉ……」
「こんな魔界の片田舎にお一人様とは、けなげな教団のスパイさんか、はたまた最近よく聞くチキュウ? とかいう異世界からのお客様か」
「ま〜、どっちにしてもヤることは変わらないけどね〜」
「……魅了して……トロトロにして……添い寝して……イチャイチャして……ああ……見て……ボクを見て……ボクをめちゃくちゃにして……」

「おーし、いくわよ! 我らが未来のダーリンのもとに!」
「ああ〜、楽しみだねぇ〜、本当に楽しみだねぇ〜」
「……見てもらう……見てもらう……色々、いっぱい、シてもらう……!」



「……ッ!? な、なんだ、君たちは?」
「うふふ、突然で悪いんだけど」
「君にね〜、頼みがあるんだ〜」
「ボ、ボクを……ううん……ボクたちと……」



「「「付き合ってください!」」」



                     おしまい
18/11/13 00:15更新 / びずだむ

■作者メッセージ
 クロス先生のツイッター曰く、図鑑世界はモブに優しい世界。

 自分は画面の隅っこで魅了されて、
 うつろにとろけた顔で膝立ちにへたり込んでいるところを、
 サキュバスさんにギュウって抱きしめられる一般兵士をやりたいです。

 遅ればせながら新刊もとても良かった。
 何か内容を活かした話もそのうち書いてみたいです。

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