連載小説
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後編・中
 綺麗に掃除されている境内は、しかし人気が全くなかった。忌山神社を参拝する者はもう殆どいないのか、それとも存在を知らないのか。ひっそりとした佇まいの神社は、何処か異様な雰囲気を発していた。
 紗枝子は知らないが、ここで実際に人間を喰らう大百足が住み着いていたのだ。夥しい量の血がここで流され、命が失われた。魔物化した事で、その異様な雰囲気を肌で感じた紗枝子は、若干の焦りを見せた。

 「こんなおぞましい場所に、お兄ちゃんが居るなんて……」

 しきりに辺りを窺いつつも境内を進む紗枝子の耳が、微かだが艶のある声を拾った。人気のない神社で、しかも隠れたホラースポットのような場所に、わざわざ青姦目的に来る者など居ないだろう。 進めば進むほどその声は鮮明に聞き取れるようになり、そして紗枝子は正面にある拝殿を迂回し全速力で本殿へ突撃した。
 聞き間違えるはずがない。この艶のある声は、兄の玲人を攫った新山菜々乃の声。もう既に事は始まっているのかもしれないが、諦めるという選択肢は最初からなかった。
 玲人を取り戻す。そして、自分のものにする。大百足の執着に負けないほど、メドゥーサの独占欲は強いのだ。奪われれば奪い返す。そして、二度と渡さない。
 そしてとうとう本殿へ到着し、襖を勢いよく開ければ――――。

 「……おに、いちゃ……」

 石化は解かれ、その身を大百足の身体によって雁字搦めにされている兄の姿があった。
 二人の身体は密着し、上に乗っている菜々乃は一糸を纏わぬ姿。玲人も、服を捲り上げられている。とても苦しそうな表情だった。

 「…………あ……貴女は」
 「お前……ッ! お兄ちゃんを、お兄ちゃんを……、よくもッ!」
 「……うふ❤ 玲人くんの童貞、初絞りはもう頂いてしまいましたよ❤」

 だから、このまま尻尾を巻いてお帰りなさい。
 挑発的に、そして官能的に。菜々乃は余裕の笑みを見せた。無意識に、ぎりりという歯軋りの音がする。髪の蛇も、菜々乃に向かって威嚇している。

 「もう、玲人くんは私のものですから……❤ 妹さんには悪いのですが、お引き取りください」

 これで話は終わりだと言うように、菜々乃は性行為を続けようと腰を動かすが、紗枝子は二人に近づく。

 「……? もう勝負は決しました。諦めてくださいませ」

 あの獰猛な姿はもう収まったらしく、お淑やかな口調で紗枝子の歩みを止めようとするが、止まるつもりなどない。漸くここまで来たのに、引き下がるなど有り得はしないのだ。

 「そこで止まりなさい。ここは、私と玲人くんの……いえ、私と旦那様だけの場所なのです」
 「……旦那、様?」

 ぴくり、と眉を動かして、菜々乃の言葉を繰り返す。最早怒気だけでこの本殿を吹き飛ばせると思えるほどに、腸が煮えくり返るのを感じた。
 人間ならあと数歩程度。そこまで近づいて、玲人も紗枝子の存在に気がついたようだ。

 「紗、枝子……? おま……え?」
 「お兄ちゃん。迎えに来たよ。帰ろ?」

 怒気を孕んだ表情だった紗枝子は打って変わり、とびきりの笑顔を玲人に向けた。こんな笑顔を向けたのは、一体いつ以来だったか。まだ玲人と紗枝子が幼い頃に、二人で近くの公園まで遊びに行った時だったろうか? それとも、暑い夏を少しでも涼しくする為に、手を繋いでアイスを買いに出かけた時?
 とにかく、心から素直になれた紗枝子は、玲人に手を伸ばす。

 「……させません」

 絡みついた身体をより締め付けて、菜々乃は紗枝子を睨みつける。もう逃げるつもりはないのだろう。何があっても決して離さないと、宝物を守るように玲人を抱きしめた。

 「離しなさいよ」
 「お断りいたします」
 「離しなさい」
 「お断りです」
 「離せッ! お兄ちゃんを、返せぇぇっ!」
 「絶対に渡すものかッ!!」

 紗枝子の怒気につられたのか、またも獰猛な菜々乃が顔を出す。長すぎる前髪の奥は牙を剥いて威嚇する怪物。しかし紗枝子はもう怯まない。そこに取り戻したい人が居るのだから。

 「二人とも、やめて、くれ」

 睨み合う二人に、息も絶え絶えに静止するように声をかける玲人。

 「貴方が仰るなら……❤」

 まるで人が変わったかのように、媚びた声で返事をし、玲人の頬に口付けをする菜々乃。何処までも紗枝子を挑発するその態度に、髪の蛇達が全て逆立ちして今にも菜々乃に噛み付きそうだ。

 「紗枝子……」

 それを察したのか、優しい声で玲人は紗枝子の名を呼ぶ。その声で少し、怒りが収まったように見えた。

 「お兄ちゃん……」
 「ごめん、な。俺、紗枝子の気持ち、全然……気づかなかった」
 「ううん、私だって……お兄ちゃんに嫌われるような事ばかりして、ごめんなさい……」
 「玲人くん」

 兄妹の会話に割って入る菜々乃に、玲人は同じように優しく宥める様に声をかけた。しかし菜々乃は聞く耳を持たず、この場所に紗枝子が居る事を拒んでいる。

 「もう、いいでしょう? あとは私と、ずぅっと一緒に……」

 しかし、玲人は首を振る。

 「どうして……? 私、貴方の事を愛しているのに」
 「それは、身を以て知ったよ。菜々乃さんの強い想いとか、愛情、とか」
 「それなら、どうして妹さんに帰るように言ってくれないんですか……?」
 「私は絶対に帰らないから。お兄ちゃんと一緒じゃないと、嫌よ」
 「我儘を言わないでください。私と玲人くんは結ばれたのです」
 「五月蠅いっ! お前が勝手に奪った癖にっ!」
 「二人とも、喧嘩をしないで、くれ……」

 再び熱が上がった二人は、玲人の弱々しい声が聞こえずに聞くに堪えない罵詈雑言の応酬を繰り返す。何があってもここから離れない紗枝子。何があっても玲人を離さない菜々乃。
 このままでは、暴力沙汰に発展する。玲人はそんな事を望んではいない。しかし、拘束された身体ではどうする事も……。

 「――――っ!?」

 悲しみに心を塗りつぶされそうになった瞬間、玲人の身体が突如脈動を始める。
 玲人の身体を拘束し密着していた菜々乃も、それに気が付く。

 「あっ❤ 玲人くん……❤ また私と契りを交わしたいのですね」
 「なっ、お兄ちゃんっ!? どうしてっ!」

 また至福の時を共に過ごせる事を喜ぶ菜々乃と、それとは対象的に裏切りと絶望の表情で玲人を呼ぶ紗枝子。
 だが、それは玲人の意思とは違う。今でも何とか二人の喧嘩を止めたいと思っているのだ。

 「ち、ちが、そう、じゃ、あ、熱い……ッ!!」
 「ふあああっ❤ 玲人く、んっ❤ おちんちんが、私の中で、また、また大きくなってぇ❤」
 「嫌ぁぁっ!! お兄ちゃん、私を、私を捨てないでっ! 私だってお兄ちゃんの事、大好きなのっ! お願い、お兄ちゃんの傍に、居させてよぉ!」

 身体全体を巡る血液が煮えたぎった熱湯になったようだ。心臓が激しく脈打ち、どんどんと体温が上昇していく。流石の菜々乃も玲人の身に異常が発生した事に気が付いたらしく、身体の拘束を緩めた瞬間。

 「…………え?」

 紗枝子は目の前の光景に、思考が停止した。
 菜々乃の拘束が緩んだ隙を狙い、玲人の両手が菜々乃の頭をしっかりとつかみ、そしてその、その唇に……っ!

 「嫌、いや、いやああぁぁぁぁぁっ!!」

 ついに自分の意思で紗枝子ではなく菜々乃を選んだ事を信じたくなくて、紗枝子は悲鳴を上げる事しか出来なかった。もはややめさせようと止める事すら出来ない。

 「じゅるるる、じゅっ、じゅるるるるぅぅっ!!」
 「んむううっ!? んんんぅぅぅぅぅうううんんんんっ❤❤❤」

 玲人の唇から、菜々乃の唾液を激しく吸い取る音。恥も何もかもを捨てた乱暴な口づけに菜々乃は驚き、そして。
 菜々乃の毒液が玲人の唾液と交わり、毒の性質が変化し菜々乃の身体を逆に蝕んだ。
 大百足の身に宿る毒の性質は特殊で、男性の唾液と掛け合わされてしまうと魔力的変化が起こり、男性を快楽責めにする為の毒液が、自らの身体を快楽に浸す程の毒へと変質するのだ。
 その証拠に、菜々乃の百足の身体は激しく飛び跳ね、完全に拘束を解いてしまった。絶えず全身を巡る毒に蕩け切った表情で喘ぎながらも、菜々乃はなんとか喋ろうとする。

 「はっ❤ はひっ❤ れい、と、しゃんっ❤ なんれぇ❤ なんれ、わらひのぉどく、をぉ❤」
 「こうすれば、君は如何する事も出来ないだろう? だからしたのさ」
 「そ、そうら、にゃくてへぇ❤ わらひ、いっぱい、どくぅ❤ れいと、しゃんにいれたの、にひぃ❤」
 「ああ、それなら……」

 先ほどまでの苦しそうな表情から打って変わり、玲人はすぐに立ち上がった。当然、服は脱がされていて全裸だ。つまり全てが丸見えであり、その肉棒も……。

 「お……おにい、ちゃ……」
 「どうした? 俺のをじっと見て」

 反り返り、勃起状態のままなのだが、大きさが変わっていた。今や玲人の肉棒はへそに届き、小さな子供の手首程にまで膨れ上がっていたのだ。しかも、菜々乃との情事で精液と愛液でどろどろになっており、魔物娘になったばかりの紗枝子でさえ、見惚れてしまうほどだった。

 「もしかして……お兄ちゃん」
 「……あぁ。この感じだと、俺はインキュバスになったみたいだ」

 元々魔物に近かった人間だった玲人の身体は、菜々乃の強烈な毒を受け、さらに膣内で射精した事で完全な魔物と化した。しかも、菜々乃の毒を逆に取り込み、力へと変化させたのである。

 「ああぁ……お兄ちゃぁん……。私が、私がインキュバスにしてあげたかったのに……」

 ぽろぽろと涙をこぼす紗枝子に、優しく微笑みかけて頭を撫でる。

 「……あ……」
 「小さい頃、こうやって泣く紗枝子を撫でたよな」
 「……あの頃と同じ、優しいお兄ちゃん」

 インキュバスになっても紗枝子の知る玲人はそのままだった。その安心感が、傷だらけになった心を癒していく。

 「そ、そんなぁ、わら、わらひを、すてりゅの、れすかぁ……」

 百足の身体が毒でのた打ち回りながらも必死に床にしがみつき、紗枝子と同じように涙をこぼす菜々乃。その菜々乃に、玲人はまたもう一度口づけした。

 「んひぃぃっ❤❤❤ も、もうらめっ❤ ちゅーらめぇえ❤」
 「捨てないさ。嘘の気持ちで菜々乃さんにキスしたんじゃない」
 「だったら、だったらぁぁ……」
 「情けないけど、インキュバスになって決めた事がある」

 玲人は菜々乃と紗枝子の顔を交互に見てから、両腕で二人を抱きしめた。

 「俺は、菜々乃さんと紗枝子、どっちも選ぶ事にした」
 「ふぇっ!?」
 「お兄ちゃんっ!?」

 意外な玲人の決断に菜々乃と紗枝子は驚きの声を上げるが、玲人は真剣な表情で語った。

 「俺がもし菜々乃さんを選んだとしたら、紗枝子が悲しむ。かと言って俺が紗枝子を選んでも、菜々乃さんは絶対に俺を離そうとはしないだろう。だから……俺は、二人を選ぶ」
 「そ、そんにゃ、わらひ、わらひだけが、いいれふぅっ!」
 「私だって、こんな女と一緒なんて、嫌よっ!」

 二人そろって、玲人の決断に抗議するが、玲人は黙って二人の顔を勃起しきった肉棒へと無理矢理近づけた。

 「れ、れいと、しゃん……?」
 「わ……近くで見ると、こんなにおっき……じゃなくって、お兄ちゃん!?」

 いつもの玲人なら絶対にしないであろうその行動に驚く二人に、玲人はにや、と笑って伝えた。

 「俺と一緒に居たいなら、二人仲良く俺のを舐めてくれ。どちらかがやめたら、どちらも俺は選ばない」
 「……っ!?」
 「そ、そんな、お兄ちゃんっ! そんな酷い事言わないでよぉっ!」
 「俺は本気だ。ここで二人が俺のを舐めないのなら、俺はここを出ていく」

 優しい笑顔から豹変し、真剣な表情の玲人にたじろぐ二人だが、視線は精液と愛液まみれの肉棒から目が離せない。目の前にあるのが、愛した相手のモノだから。魔物娘にとって最高のご馳走が今目の前にある。それを理解し、衝動のままに舌で奉仕を始めたのは、菜々乃だった。

 「んあ、れろぉ……❤」
 「……っ!」
 「……ん、こくんっ」

 惜しげもなく出した舌で竿の部分を下から上へと舐めあげ、精液を舌に乗せて、ゆっくりと味わいながら飲み込む。

 「おいひ……❤ せーえき、おいひ、れす❤」

 うっとりとした表情で菜々乃は玲人に微笑み、そして残っている精液を独り占めする為に万遍なく舌を這わせていく。
 ただそれを見ているだけの紗枝子。本当は今すぐにでも舌で奉仕したかった。だが、それには邪魔な者が居る。大百足の菜々乃の存在が、紗枝子の行動を妨げているのだ。彼女さえ居なければ。それは叶わないとわかっているのに。

 「紗枝子。俺のを舐めるのは、嫌か?」
 「うぅ……」
 「嫌なら、俺はもう強要はしない」

 そう言うと玲人は二人から離れて、脱ぎ捨てられた服を着ようとする。当然、至福の時を無理矢理中断させられた菜々乃は玲人の背中に抱き着いてそれを止めた。

 「おねがい、おねがい、れいと、さんっ、もっとなめさせてくだしゃひっ」
 「駄目だ。紗枝子と一緒じゃないなら、俺はここを立ち去る」
 「そん、なぁ……。さえこ、さ、ん……。おねがい、もう、独占したり、しない、からぁ……」
 「う、うぅぅ……っ」

 だが、それを許していいのか。
 愛する者の肉棒を、別の女が舐めていいのか。
 同じように自分も舐めるのか。
 精液を、独り占めする事無く分け合う。それが、本当に正しいのか?

 「……っ」
 「さえこさん……っ!」

 メドゥーサの性質は独占。そして嫉妬。自分だけが恋人の肉棒をしゃぶり、咥えこみ、そして膣内で味わう。他の女になど、指一本も触れさせたくはない。
 だが、現状はその本能を捻じ曲げなければ打開できない。今度こそ、本当に玲人は紗枝子の前から去ってしまう。
 玲人に対する恋愛感情を自覚してからもう何年経ったのか。それがやっと成就すると思ったのに、玲人を他の女と分け合わなければならない。
 どうしても、それだけが許せない。

 「……紗枝子。最後に一つだけ言っておくけど」

 それを悟ったのか、玲人は背中を向けながらも紗枝子に語りかける。

 「俺は菜々乃さんと紗枝子が喧嘩するのは嫌だけれど、競い合うのは許すよ」
 「……え?」
 「……自分で言うの、凄く恥ずかしいけどさ。つまりは、俺を、その」
 「……あぁ、そっかぁ」

 玲人を紗枝子と菜々乃で分け合うのではなく、二人で玲人を奪い合えばいい。時間を問わず、玲人というインキュバスと交わればいい。口で奉仕する時も、自分が相手よりも多く出してもらえればいい。セックスも、自分の方が気持ちいいのだと身体で証明し、何度も膣内で出してもらえればいいだけの話。
 これは勝負なのだ。

 「うん……わかった。お兄ちゃん、私にお兄ちゃんのおちんちん、舐めさせて……」
 「紗枝子……いいんだな」
 「菜々乃さんも一緒に、だよね。いいよ。だったら私が菜々乃さんよりもいっぱいお兄ちゃんの精液、もらうもんっ!」

 そう二人に宣言する事で、心の中に引っかかっていた何かがスッ、と抜け落ちたような気がした。痛みもなく、むしろ残るこの気持ちはとても晴れやかだ。
 晴れやかな気持ちついでに、紗枝子は菜々乃にびし、と指差す。

 「私と菜々乃さん、どっちが先にお兄ちゃんの赤ちゃんを孕むか、競争よっ!」
 「さえこ、さん」

 そして玲人にも堂々と指を刺して、

 「それと、お兄ちゃんもっ!」
 「うん?」
 「一刻も早く、私を妊娠させてよねっ!」
 「……はは。うん、わかった」

 半魔人間だった頃に募らせた淡い気持ちが、魔物娘になった事で増幅し強い恋心になった。それを正面から受け止めた玲人は、優しく笑い頷いた。
 菜々乃も負けじと腕を引っ張る。

 「わた、しも……。れいとくんに、あかちゃん、にんしんさせてほしい、です」
 「うん。菜々乃さんも、沢山するから」
 「……はい❤」

 もう、これで問題は残っていないだろう。玲人が思い描いていた理想の形とは違うが、インキュバスとなった今では菜々乃も紗枝子も愛すると決めた。実の妹だろうと、拒む事はしない。
 それじゃあ、と改めて玲人は二人の前に立ち、その男根を熱く滾らせた。菜々乃と紗枝子はその猛るモノに同時に横からキスをした。
 実の妹、そして同級生が愛おしそうに自分のモノに奉仕する。それだけでまた血液が集まってくる。ぞくぞく、と背中から震えが来てこの倒錯的な光景に興奮している自分が居る。インキュバスとなっただけで、ここまで違うのか、と思っているとむっ、とした表情で紗枝子が蛇の舌をちろちろ、と揺らす。

 「お兄ちゃん? 私たちが……ちゅっ、おしゃぶりしてるんだから……、もっとしっかり見なきゃダメだよ」
 「そうれしゅ……よ。ん、れろ、おちんちん……、ごほうし、もっと、じょうずにしますからぁ……」
 「ああ、ごめんごめん。二人とも、上手だ」

 しかしそう言っても紗枝子はむっ、とした表情のままだ。

 「違うもん。私の方が……っ、じょうふら、もんっ」

 そして長い舌を伸ばし、玲人の肉棒を巻きつけていく。手とは違う、ぬめっとした初めての感触に思わずうっ、と声を漏らした。その反応が嬉しかったのか、紗枝子はラミア種特有の長い舌を駆使して奉仕を続ける。

 「んあっ、さえこさんずるい」
 「わらひのほうは、おひいひゃんをよろこはへるんらもんっ」

 競いながら二人は生々しい水音を立てて、遠慮なく夢中で玲人のモノにしゃぶりつく。二人の口による愛撫で、先端からは透明な蜜が漏れ、そして一番の男の象徴であり、かつインキュバスであるが故に、濃密なフェロモンが溢れて菜々乃と紗枝子をより昂らせる。
 何も考えられない。否、玲人の肉棒の事しか考えられない。

 「ぷぁ……じゅる、じゅるるぅ……、んっ、くちゅっ、ぢゅずず……っ、んぁ、む、ちゅ、ちゅううっ、はぁっ、ぢゅ、ちゅっ」

 巻きついた舌を器用に動かしてしごきつつ裏筋を唇でなぞる紗枝子。

 「ちゅ、ちゅっ、じゅるぅぅぅっ、ちゅぱ、ちゅぱ……っ、ん、ふぅ……、ちゅっぽ、ちゅっぽ……、れろぉぉ……っ」

 そして亀頭を中心に吸い上げながら右手で陰嚢を揉む菜々乃。二人の女性に舐められる感触は、半魔人間の頃にしていた自慰なんかでは比べ物にならない。二人の息遣いと合わせて、玲人の呼吸もだんだん余裕がないペースになっていく。
 今や玲人の男根は菜々乃と紗枝子の唾液でぐちゃぐちゃになってしまっている。びくびく、と腰も震えてくる。

 「おにいひゃ……っ、ちゅるっ、ぢゅぷぷ……おにい、ひゃんっ」
 「れいとしゃん、ん、ちゅっ、れいと、しゃ……っ、ん、ぢゅるるっ」

 心のこもった奉仕に、だんだんと限界が近づいてくる。ただでさえ二人同時の責めだ。本能的に男を悦ばせる事を望む魔物娘の口淫は、玲人を容易く絶頂させるだろう。

 「う、もう、出そうだっ」
 「ふぁい……❤ らひて、くだしゃい❤」
 「いっぱい、いっぱいちょうだぁい……❤」

 そして二人は手を重ねて玲人の男根をしごきながら、亀頭を舌で責める。ぬるぬるとした唾液が潤滑油となり、激しい水音が本殿に響き渡る。

 「くっ、ううっ!!」

 ねっとりとした舌と唇の奉仕から激しい手淫に変わり、玲人はあっけなく、そして容赦なく菜々乃と紗枝子の顔に大量の白濁液をぶちまける。

 「ひゃっ、ああっ❤」
 「素敵……っ❤ こんなに、たくさぁん❤」

 綺麗な二人の顔に精液をかける満足感に思わず笑みを浮かべる。そう、この二人は玲人専用の魔物娘。玲人が望めば一晩中口淫するだろうし、性行為だって喜んで身を差し出すだろう。
 その証拠に、菜々乃と紗枝子は顔にかかった精液を全て口に運ぶ。そして口の中で味わった後は一気に喉へ流し込んだ。それこそが最高のご馳走であると。

 「おいし……、おいしい……お兄ちゃんのせーえき……❤」
 「さいこう、れすぅ……❤」

 玲人の顔を見つめながら、悦に浸る二人に微笑みを返す。
 と、紗枝子が急にしおらしく、もじもじし始めた。左手で何処かを隠すようにしている。すぐにそれに気づいた玲人は、黙って紗枝子の左腕を引っ張る。

 「あっ」
 「……凄いな」

 まだ玲人が触れていないのに、紗枝子の手のひらはべっとりと愛液で濡れていた。先ほどの口淫による興奮と、精液を口にした事で身体が玲人のモノを受け入れる準備が出来てしまったようだ。内股を見れば、過剰に分泌された愛液が隠せないほどに溢れだしていた。
 それも、下着を着けているはずなのに、である。それに気が付いた玲人はスカートをめくり、どうなっているのかを確認した。

 「いやっ、おにいちゃっ!?」
 「紗枝子……こんなに」

 紗枝子の着けていた薄いピンクの下着は今や下着の役目を果たしていなかった。分泌されすぎた蜜によって完全に紗枝子の一番大切な場所、秘裂がくっきりと透けて見えているのだ。蜜液によってぴったりと貼りついた下着はどうしようもなく、玲人を興奮させた。その証拠にびくん、と肉棒が跳ね、硬さが増した。

 「あ、あの……お兄ちゃん……あのっ」
 「何も言わなくていい」

 もじもじとして何かを言いたげにしていた紗枝子を制して、両手で優しく髪を撫でる。
 気持ちよさそうに目を細める紗枝子。そして紗枝子の感情とリンクしている蛇達。その蛇達が玲人の腕に巻きついて離そうとしない。

 「大丈夫」

 落ち着いた玲人の声に安堵したのか、髪の蛇達は玲人の腕に巻きつきながらもすりすりと頭を寄せる。見た目は野生の蛇となんら変わりはないが、態度で感情を示すその様はとても可愛らしいものだ。髪の蛇が玲人の腕にやったように、両手で包み込むように赤く染まった頬を撫でるととろんとした表情になり、嬉しそうに微笑む。

 「あぁ……❤ お兄ちゃんの手、大きくて、好きぃ……」
 「そのまま、目を閉じて」
 「……? あ……。うんっ」

 一瞬だけ言葉の意味を汲み取れなかったが、それに気が付いた時、満面の笑みで紗枝子は目を閉じた。期待に胸を膨らませて、玲人からのキスを待つ紗枝子のまつ毛が微かに震えていて、なんだかとても温かいものが胸に広がった気がした。
 そして、僅かに突き出した薄紅色の小さな唇に狙いを定め…………。

 「……」
 「……?」

 そのまま、キスをしようとしたのだが、髪の蛇達はその様をまじまじと見ている。当の本人はしっかりと目を閉じて今か今かと待っているのだが、髪の蛇達はしっかりと見て今か今かとざわついている。とてもやりにくいのだが、正直に紗枝子に言うのも可哀想である。
 改めて、そっと紗枝子を引き寄せて、口づけた。

 「んはぁ……❤」

 思わず漏れた呼吸音が、紗枝子の喜びを物語っている。玲人も、実の妹のぷるぷるとした瑞々しい唇に吸いつく。実の妹とのキスという実感も、より玲人と紗枝子を興奮させた。半魔人間のままだと絶対にキスをする事もなかっただろう。しかし紗枝子はメドゥーサになり迷いを断ち切り、玲人はインキュバスとなり紗枝子の想いを受け入れる。兄妹という関係でありながらも、口付けを交わし、そしてこれから性交をする。それは元半魔人間であったが為に感じられる背徳感だった。
 ――そんな二人の空気に押されて、指先で自分の唇をいじっている事しか出来ない菜々乃。思えば、先に口づけされたのは菜々乃だったが、二回とも乱暴なキスであり互いの唇の感触と唾液を味わうようなキスはまだだった。時間が経過し、変化した毒も少しずつではあるがまた自分の毒へと戻りつつある。もう一度キスをして玲人の唾液を含んでしまえば、また自分自身の毒が自分自身を犯すと知っていても、愛する者とのキスは甘美なものだった。
 今は紗枝子の番に回ったのだから、紗枝子に譲ろうと決めたはずなのに無意識で菜々乃は玲人の肩をくい、と引っ張ってしまう。
 しかし玲人は紗枝子とのキスを続けている。玲人も気づいていない訳ではない。つながった二人の口内で紗枝子が自身の長く細い舌で玲人の舌を絡ませているのだ。

 「ん、ちゅ、ちゅぅぅ……はむ、んっ、はぁぁ……❤」

 離れようにも、離そうとしない。恍惚とした表情で玲人の唾液を飲み込む紗枝子はただ、実の兄を長年想い続けて夢見たキスをもっと味わいたいが為にやっているだけだ。乳飲み子が母親の乳を欲しがるように、インキュバスが持つ魔力が含まれた甘い唾液をより欲しがろうとする。
 キスをしているつもりだった玲人は、その実メドゥーサの紗枝子の舌に翻弄されていた。ラミア種が持つ特徴、長い舌で玲人の口内を隅から隅まで、舌も歯茎も味わい尽くそうとしている。さらに紗枝子の唾液にも魔力がこもっているらしく、菜々乃の強烈で身を焼くような猛毒とは正反対に、身体の芯から温かくなってくる。果汁のように甘く紗枝子の愛が篭った、優しい媚薬だった。

 「くちゅ、ちゅっぱ……っ、んんんぅ……じゅるるるぅ」
 「んっ、さえ、こ……」
 「むぅぅぅ……っ」

 両腕を蛇に巻きつかれ、舌までも拘束されて肩を揺らす菜々乃に対応できないでいる。ちら、と盗み見れば、まるで捨てられた犬のように悲しそうな瞳をして拗ねた表情を浮かべていた。

 「さえ、こ、すこ、し、待……っ」
 「んむぅ、じゅる……っ、ずぢゅる……、ん、ふぁ」
 「さえこ……っ!」
 「……ふぁ……?」

 漸く紗枝子も玲人の呼びかけに気づき、唾液をすするのを一時中断した。しかし、舌は相変わらず離そうとはせず、そのままだ。

 「した、はな、しっ」
 「ろうひてぇ……?」
 「ななの、さん、が」
 「ふぇ……? あ……」

 玲人しか見ていなかった瞳が、拗ねた菜々乃を捉える。すると、漸く玲人の舌に巻きつけていた舌を離し、菜々乃に微笑みかける。
 菜々のもわかってくれたのだと思い喜ぶが、紗枝子は菜々乃の顔を両手で包んだ後その唇を奪った。

 「んむぅっ!? んむ、むぅうううっ!!?」
 「ん、ぢゅっ、じゅるるっ❤」
 「むううんっ!? ……っぷぁ! はぁ、ああ、しゃえこしゃぁあ……❤」

 紗枝子は菜々乃の唇を奪ったどころか、唾液さえも啜り蹂躙した。その際、口内に残っていた玲人の唾液が紗枝子の毒をまたもや変化させ、自らの毒によって絶頂を繰り返した。
 自分の唇をぺろ、と舐めてから自身の毒に犯される菜々乃を見ながら愉悦の表情を浮かべた。

 「お兄ちゃんの唾液、美味しい?」
 「はひゅっ、はぅぅう……っ」
 「お兄ちゃんの唾液飲みたかったんだもんね?」
 「ちが、こういうことじゃあ……っ」
 「美味しかったでしょ♪」
 「あぅう……」

 これが紗枝子なりの仕返しだった。玲人を誘拐し、あまつさえ童貞までも奪ってしまった事はどうしても許せなかったのだ。
 だらしなくよだれを垂らして変化した自分の毒に悶える菜々乃の唇を指ではじき、優しく微笑んだ後、

 「私、菜々乃さんの唇も好きかもぉ……❤」
 「ひぅっ!?」
 「これからは三人で一緒だもんね……? お兄ちゃんだけじゃなくって、菜々乃さんも愛しちゃえそう……❤」
 「わらひ、そんにゃせいへきもって……っ」
 「…………」
 「んぶっ!」

 またも玲人の唇に吸いつき、分泌される魔力の篭った唾液を啜り、先ほどと同じように菜々乃の唇を奪いながらも玲人の唾液を流し込む。

 「んむぅうぅぅっ!! んんんんぅぅううっ!!」

 くぐもった悲鳴ともんどりうつ菜々乃の身体。膨れ上がる過剰な快楽の拷問に菜々乃は成すすべなく受け入れる事しか出来ない。何せ、体内で生成されている毒を変化させられているのだ。逃れようもない。
 その様子を口づけしながら眺める紗枝子の瞳はまさしく嗜虐者の瞳。メドゥーサとなった紗枝子に宿る性質に、脂汗を流す玲人。魔物娘となっても本質の部分は変わりない。蛇と言えば獲物を丸呑みにする爬虫類だ。今まさに紗枝子は玲人と菜々乃さえも飲み込もうとしていた。

 「うふ……。菜々乃さん、可愛い」
 「はううぅぅ……っ、れいとしゃ、たしゅけへぇ……」
 「だーめ。今は私とお兄ちゃんが愛し合うのぉ」

 そう言って蛇の身体を玲人を捉えて正面から抱きしめ、邪魔な衣類は脱ぎ捨てて全てを曝け出した。元々半魔人間だった紗枝子の身体は、女性的魅力を引き出すように成長している。特に顕著なのは胸のサイズで、紗枝子が中学生の頃には既にFカップだった。

 「どう、お兄ちゃん? 私、メドゥーサになってまたおっぱい大きくなっちゃった❤」
 「そ、そうだったのか」
 「うん、計ったらHカップだって❤」
 「え、えいち……?」

 魔物娘の身体はより男性を魅了する為に自らの肉体を成長させていく。もちろん、相手の好みに合わせたものである。紗枝子はそれを事前に知っていたのだ。玲人が好む女性の肉体像になれるよう、自らの身体を変化させたのだ。

 「お兄ちゃんの部屋に隠してあるえっちな本、おっぱいが大きい人ばっかりだったよねぇ……?」
 「うっ」
 「どう? 目の前にあるおっぱいは、お兄ちゃん好み?」

 挑発的に自分の豊かな胸を下から持ち上げて離す。するとぷるん、と音が聞こえるかのように大きな果実が揺れた。それを見て玲人は思わず生唾を飲み込んだ。
 わかりやすい反応に、破顔して赤ん坊に母乳を与えるかのように乳房を玲人の顔に寄せた。

 「あは……❤ いいよ、お兄ちゃんだけのおっぱい、好きにして❤」
 「紗枝子の……おっぱい……」
 「手で、お口でも、おちんちんをはさんであげる事だって、出来るんだよ❤」
 「ああ、なんて、いやらしいんだ……っ」
 「んッ❤」

 口で乳首を吸い上げ、もう片方はその重さと大きさを確かめるように下から揉みあげる。既に充血していたピンク色の乳首を舌先で弾いては片方の果実を優しく愛撫していく。張りと弾力に富んだそれは、まさしく玲人の中に隠れていた性癖の生き写し。たぷん、と揺れてその形を崩さない。……気が付けば、玲人は紗枝子の胸に夢中になっていた。

 「ん、あ……っ❤ お兄ちゃん、本当におっぱい好きなんだ……❤ 可愛い❤」

 そう言いながら紗枝子は玲人の滾る肉棒をすりすり、と手で撫でる。既に勃起しきったそれは我慢汁や紗枝子と菜々乃の唾液で濡れていた。これなら……と紗枝子は微笑む。

 「おっぱいはお兄ちゃんの好きにさせてあげる、から……はぁん❤ おちんちんは、私の好きにしちゃうねぇ……❤」
 「……あぁ、紗枝子が望むなら」
 「〜〜〜っ❤ お兄ちゃんのおちんちん、いただきまぁす……❤」

 玲人の肉棒を自身の秘裂へと宛がい、紗枝子は玲人の顔をじっと見つめたままゆっくり、ゆっくりと肉棒を呑み込んでいく。兄への恋心を自覚してから、叶わないとはわかっていても夢に見ていたその瞬間。反り返る玲人のソレを自分の膣内へ挿入していくにつれて、胸の奥からじんわりと、満たされていく感覚が広がっていく。
 やがて処女の証へ辿り着くと、紗枝子は玲人の唇に吸いつき、少々の力を込めて腰を下ろした。硬く、大きい玲人の肉棒によって処女地を犯していく感覚は、多少の痛みを伴ったもののそれを覆す程の悦楽が、紗枝子の身体を駆け巡っていった。
 その悦びが言葉では表しきれずに、紗枝子は玲人の唇に何度も何度も、小鳥のように口付けを交わす。だがそれでも溢れる想いが止まらずに、口付けをしながら腰を上下に振っていく。痛みはあっという間になくなり、残ったものは膣内を玲人の肉棒でこすられていくその快楽と、満たされていく感覚。たった一、二度のピストンを行っただけで、既に紗枝子は兄の玲人の肉棒の虜にされていた。

 「ん、ぁあ、あ、はぁぁっ❤ お兄ちゃんのおちんちんっ❤ 気持ちいいよ、たまらないよぉっ❤」
 「紗枝子の中も、くぅ、凄い締め付け、だ……っ」
 「だって、離さない、もんっ❤ 身体もおちんちんも、ぎゅうぅぅって❤」

 紗枝子の言葉の通り、玲人の身体に巻きついたその身体と膣内で離れないように、力を込めてより密着していく。その強烈な責めに、急激な射精感に襲われた。しかしここで出してはいけないと、歯を食いしばって耐える。

 「ひゃ、ぁぅっ❤ おにいちゃんのおちんちん、暴れてるぅっ!」
 「ぐ、う、あっ」

 だが、それがいけなかった。
 歯を食いしばったと同時に股間にも力を入れてしまい、紗枝子の膣内をより強くこすり快感を与えてしまったのだ。おかえしと言わんばかりに紗枝子も玲人の肉棒を強く締め付け、そして……。

 「っ❤ あっ、あっ、あっ❤ おにいちゃ、しゃせ、してるっ❤」
 「……う、ううぅっ」
 「どぷどぷって、いっぱいきたぁ……❤」

 結局、耐えきれずに紗枝子の膣内へ射精してしまった。インキュバスとなった玲人の射精量は人間の比ではなく、勢いもある。射精すらも魔物娘を悦ばせるように出来ているのだ。そして魔物娘もまた、膣内に射精された精液を全て身体に取り込むように出来ている。まるでポンプのように吸い上げては吸収していく。
 そして、玲人の精液を溢さずに全て吸収し終えると、ぺろりと舌で唇を舐め、満足げに溜息を吐いた。

 「ごちそうさま、お兄ちゃん……❤」
 「あ、あぁ……まさかこんなにも早く出るなんて」
 「いいの、その方が私は嬉しいんだもん。それに、まだお兄ちゃんのおちんちん、おっきいし❤」

 紗枝子の膣内に収まっている肉棒は衰えを知らない。射精しても人間のように萎える事無く、さらなる快楽を与え、そして得ようとしているのだ。
 ラミア種もまた、一度だけの射精、一度だけのセックスでは満足しない。強い独占欲はそれだけ相手からの愛を欲する。魔物娘にとって最大限の愛情表現はセックス。よって……。

 「私も、もっともっとお兄ちゃんとしたぁい……」
 「はは、紗枝子がこんなにエロくなるなんてな」

 繋がったまま、また一戦交えるのだ。好色で愛に対して貪欲な魔物娘とそれに応えるかのように何度でも精を放つ事が出来るインキュバス。もう一戦どころか、何度も何度も繰り返していく。それこそ、このまま朝を迎えても、である。
 ちなみに、現時刻は午前九時過ぎ。日が昇ってからまだ三、四時間程度しか経過していない。世間では授業や業務が始まる頃だろうか。だが玲人と紗枝子にとってそんな事は陳腐な事でしかない。

 「んっ、今度はちゅーしたまま射精されたいな……」
 「わかった……それじゃあ、行――――」

 紗枝子に口づけをしようとした瞬間、その背中の向こうから一つの影が動いた。そう、この場には玲人と紗枝子、そしてもう一人魔物娘が居るのだ。紗枝子によって玲人の唾液を口移しされて、悶絶していたはずの大百足、菜々乃が漸く元の状態に戻ったのだ。
 そして玲人が声を出す間もなく、菜々乃は毒液を注入する顎肢をぶすり、と。
 紗枝子の首筋に突き立てたのだ。

 「………………っ!!」
 「さ、紗枝子!?」

 本来なら、その快楽の地獄へと落とす毒液は男性に使われるものだ。しかし、魔物娘が相手でもその効果は健在だ。毒液が紗枝子の体内を駆け巡ると同時に、理性すらも吹き飛ばす程の強烈な快楽が紗枝子を襲った。
 もはやまともに声すら出ない。だが毒液による強制連続絶頂により、紗枝子の膣内は激しく脈動し、それに連動するかのようにまたも玲人は射精をしてしまった。それも、二度連続で。
 毒液、そして膣内射精。流石に魔物娘となった紗枝子でも、この相乗快楽は許容範囲を超え、そのまま気を失ってしまった。しきりに腰や下半身が痙攣している。

 「…………」
 「菜々乃……さん?」

 玲人の呼びかけにも答えず、玲人の身体に巻きついたまま気絶してしまった紗枝子を解き、ゆっくりと寝かせた後、ゆらりと振り返った瞬間――――。
 背筋に走ったのは悪寒。それは天敵に遭遇してしまった草食動物が感じるものと同じだった。捕食者の視界に捉えられてしまったが最期。このまま自分は容赦なく食い殺されるのだという、恐怖と諦観。そう、大百足は旧魔王時代の頃から常に捕食者として君臨していた。魔物娘となった今も、その本質は全く変わらない。むしろ、感情を得てしまった現在の方がより性質が悪いのだ。何せ、菜々乃は今。
 顎肢を何度も何度もギチギチと言わせて、玲人から目を離さずに近づいてきているのだ。
 明らかに、激怒している。

 「………………」
 「あ、あの」
 「………………」
 「菜々乃、さん」
 「………………」
 「その、俺、君を放置したつもりも、忘れたつもりもなくて」

 さながら、命乞いだった。
 これから長い時を一緒に過ごすと決意しても、その大百足の身体は圧倒的な存在感と威圧感がある。そんな相手がじりじりと近づいてくれば、恐怖心が煽られてしまうのも仕方のない事。
 やがて、動きをぴたりと止めて、菜々乃は微笑んだ。
 ――――否。目は全く笑っていない。

 「いただきます」
 「ま、待っ――!?」

 最早、聞く耳を持たず。
 牙を剥き、顎肢を広げて一気に玲人に飛び掛かる。至高の獲物をこの身体で味わう為に、抑え込んだ大百足の本質を解放する。



 こうして。時間の概念すらも忘却しかねない程の長い長い繋がりを菜々乃と過ごす事となった。気絶しそうになっても毒液によって強制覚醒され、恥も何もかもを捨てて淫らに腰を振る菜々乃の姿をただ、見ている事しか出来なかったのだった。
13/12/01 02:33更新 / みやび
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■作者メッセージ
次は後編・下だと言ったな。
あれは嘘だ。

えー……。
サブタイトルでお察しの通り、続きます。
もう、いけるとこまでいってしまおうと。
が、頑張り……ます。

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